説明

貯蔵燐光体パネルの安定化の方法

【課題】
スピード及び像品質を劣化させずに安定性を有する結合剤のない針状貯蔵燐光体パネルを提供する。
【解決手段】
蒸着装置において一つ以上のるつぼ及び/又はるつぼユニットからマトリックス及び/又は活性化剤成分の燐光体プリカーサ原材料を蒸着することによって支持体上に被覆された燐光体層を有する貯蔵燐光体パネルの湿度安定性を増大する方法であって、蒸着の終了後に追加の過剰アニール工程が実施され、前記「過剰アニール」工程が「参照アニール時間(4時間)」を越える時間にわたって「参照アニール温度(170℃)」を越える温度でアニールすることによって行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸着された貯蔵燐光体プレートの内部湿度安定性を改良するための解決策に関する。特に、本発明は湿度に対して通常極めて敏感であるマトリックス成分を有する結合剤のない針状燐光体層を安定化するための方法に関し、前記手段は前記貯蔵燐光体プレート上にいかなる表面保護層もなしで実施される。
【背景技術】
【0002】
燐光体の良く知られた使用はX線像の生成にある。従来の放射線写真システムではX線放射線写真は、X線を対象物に像に従って透過させ、それをいわゆる増感スクリーン又はX線変換スクリーンにおける対応する強度の光に変換することによって得られ、前記スクリーンでは燐光体粒子は透過されたX線を吸収し、それらを可視光及び/又は紫外線に変換する。写真フィルムはX線の直接衝撃に対してより可視光及び/又は紫外線に敏感である。
【0003】
例えばUS−A 3859527に開示されたようなX線パターンを記録及び再生する別の方法によれば、パネルに混入される光刺激性燐光体として知られる特別なタイプの燐光体が使用され、それは入射パターンに従って変調されたX線ビームに露光され、その結果としてX線放射線パターンに含まれるエネルギーを一時的に貯蔵する。露光後、ある間隔で、可視又は赤外光のビームが貯蔵されたエネルギーの光としての放出を刺激し、その光を検出して逐次電気信号に変換し、それを処理して可視像を生成することができる。この目的のため、燐光体は入射X線エネルギーをできるだけ多く貯蔵すべきであり、走査ビームによって刺激されるまで貯蔵されたエネルギーをできるだけ少なく放出するべきである。これは「デジタル放射線写真」又は「コンピュータ放射線写真」と称される。
【0004】
両方の種類の放射線写真において、温度及び湿度のような外部影響に対する感受性に悩まされる必要がなくスピード及び像品質に基づいて使用される燐光体を選択できることが好ましい。
【0005】
特に、湿度に対する感受性は例えばアルカリ金属塩に対してあてはまることが知られている。マトリックス成分としてかかる塩を使用する光刺激性又は貯蔵燐光体は例えばUS−A 6802991に示されるように過去5年間で増大した重要性を取り戻しているので、克服すべき最初の問題の一つは前記パネルを保護層で、例えばUS−A 6710356及びUS出願2003/0038249及び2005/0040340のように耐湿性パリレン(ポリ−p−キシリレン)層で、US出願2004/0183029のように撥水層でカバーすることによって、又はUS出願2003/0152692のような封止法によって湿分からかかる貯蔵燐光体プレートを保護することであった。
【0006】
前記保護を最適化するためのそれと関連したさらなる手段はUS出願2005/0067584に開示され、それはUS−A 6822243及びUS出願2003/0146395のように保護層を与えること及び/又はUS出願2004/0070328に記載されたようにかかるパネルのための包装を与えることである。保護層に使用され、例えばそれに積層される材料として、ポリアルキレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルムなどを使用してもよく、例えばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどが透明度及び強度の側面から好ましい。保護層として、湿分及び酸素の低い透過性を有する材料は例えばシリカ及び/又はアルミナがUS 2004/0108464に記載されたように蒸着されるフィルムである。
【0007】
当業者に極めて良く知られているように及びUS出願2005/0145808で認識されているように、光刺激性燐光体が湿分を吸収するとき潜像の退行になる。結果として、後で湿分に対する外部保護手段を適用する前に燐光体自体に湿分に対する内部の保護を与えるための極めて好適なツールを持つことが望ましいが、前記貯蔵燐光体パネルの使用中の物理的損傷に対して十分な耐性がなお存在しているので、かかる外部保護手段を無視しないことが望ましい。
【0008】
上の開示に従って製造されたスクリーンは極めて良好な全体品質を許容しうるスクリーンを実際に生じるが、良好な内部耐湿性、長期間の使用にわたってのほとんど一定の高いスピード、及びずっと永続する良好な画像品質を併せ持つ貯蔵燐光体スクリーンに対する必要性が存在する。
【0009】
本発明の目的は結合剤のない針状貯蔵燐光体パネルを提供することであり、そこではドープされたアルカリハロゲン化物燐光体、特にCsBr:Eu燐光体はスピード及び画像品質を損なわずに所望の安定性を有する。
【発明の開示】
【0010】
上述の有利な効果は一つ以上のるつぼ及び/又はるつぼユニットからマトリックス及び/又はドーパント又は活性化剤成分の燐光体プリカーサ原材料を蒸着することによって支持体上に被覆された燐光体層を有する貯蔵燐光体パネルの内部湿度安定性を増大するための方法を提供することによって実現される。
【0011】
本発明の様々な好ましい実施態様のための特別な特徴は従属請求項に述べられている。
【0012】
本発明のさらなる利点及び実施態様は以下の記述から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有利な効果として、本発明の方法に従って変更された蒸着工程における同じ被覆量の燐光体について、燐光体層に対して保護層なしで、スピードの百分率減衰として表示される内部湿度安定性が25%未満であるときに燐光体スピードが維持されることを予期せぬことに見出した。前記百分率減衰は相対的に高い温度及び湿度によって規定される状態調節された雰囲気でのエージング処理手順前後に測定されたスピードの差から決定される。より好ましくは約35℃の相対的に高い温度及び約80%の高い(熱帯)相対湿度を有する雰囲気において約6日間(144時間)の間、エージング処理手順後に20%未満の減衰はその蒸着された結合剤のない燐光体層に対して保護層を与えることなしで考えられる。
【0014】
本発明によれば、開示されたような方法は、蒸着の終了後に追加の過剰アニール工程が実施されるとき、蒸着装置において一つ以上のるつぼ及び/又はるつぼユニットからマトリックス及び/又は活性化剤成分の燐光体プリカーサ原材料を蒸着することによって支持体(専用の支持体)上に被覆された燐光体層を有する貯蔵燐光体パネルの増大する湿度安定性を提供する。2005年10月28日出願のEP出願No.05110122に開示されているように、るつぼユニットはるつぼ、ボート又は容器に加えて、少なくともるつぼユニットの一部としての煙突、及び燐光体プリカーサ原材料を蒸発した形で前記るつぼユニットから逃避させ、それを燐光体層として前記支持体上に蒸着させるスリットをさらに含む。
【0015】
アニールは追加のエネルギー処理が蒸着の終了後に与えられる方法として当業者に知られる。追加のエネルギー処理として熱処理が最も多く実施され、それは蒸着後に実施される。「通常の」アニール方法では、US−A 6730243のようなアニール法を適用してもよく、そこでは冷却後、プレートは80℃〜220℃の温度にもたらされ、10分〜15時間その温度で維持される。US−A 2003/186023のように別の実施態様では結晶層の加熱が不活性ガス雰囲気又は少量の酸素もしくは水素を含有する不活性ガス雰囲気において300℃未満50℃以上の温度で1〜8時間行なわれる方法を適用してもよい。さらに、US−A 2003/0218139のようにアニールは50〜600℃の温度で少なくとも一時間実施されてもよい。US−A 2005/0040340のようにアニール工程は80〜300℃の温度、より好ましくは100℃〜200℃の温度で実施されてもよい。さらに、蒸着法が完了した後にUS−A 2005/0133731に記載のように、蒸着された層は熱処理(アニール)を受けてもよく、それは一般に少量の酸素ガス又は水素ガスを含有してもよい不活性ガス雰囲気下で100〜300℃の温度で0.5〜3時間、好ましくは150〜250℃の温度で0.5〜2時間実施される。極めて高い熱処理法がUS−A 2004/0056209に提案され、そこでは雰囲気圧下で400℃より高く700℃より低い温度への加熱は処理されるパネルに優れた耐湿性を与えることに関して好ましいようである。
【0016】
本発明で規定される「過剰アニール」は「参照アニール温度」を越える温度で「参照アニール時間」を越える時間にわたってアニールすることによって行なわれ、そこでは前記「参照アニール時間」は4時間に設定され、前記「参照アニール温度」は170℃に設定される。
【0017】
本発明の方法によれば、その一つの実施態様では、前記過剰アニール工程は「参照アニール温度」を越える温度で「参照アニール時間」を越える時間にわたってアニールすることによって行なわれ、そこでは前記「参照アニール時間」は4時間であり、前記「参照アニール温度」は170℃であり、かつ乾燥状態調節空気の1mあたり10gより多い水が存在する湿度条件においてそれは実施される。
【0018】
実際の適用では、本発明の方法によれば、前記過剰アニール工程中、前記温度は少なくとも180℃であり、かつ/または前記時間は少なくとも4.5時間(即ち4時間30分)である。
【0019】
あるいは、実際の適用では、本発明の方法によれば、前記過剰アニール工程中、前記温度は少なくとも200℃であり、かつ/または前記時間は少なくとも5時間である。
【0020】
本発明の方法に記載された製造方法の適用は25%未満のスピードの百分率減衰(感度減衰)として、より好ましくは20%未満の感度減衰として表示される改良された湿度安定性を与え、前記減衰は前記燐光体層に対して保護層なしで、相対的に高い温度及び湿度によって規定された状態調節された雰囲気においてエージング処理手順前後で測定されたスピードの差から測定される。前記減衰は特別に選択された熱及び湿度条件、例えば35℃及び80%RH(相対湿度)を有する部屋におけるエージング処理手順前後の貯蔵燐光体プレートの感度又はスピード(SAL(即ち走査平均レベル)として得られる)を評価及び比較することによって制御及び計算される。
【0021】
本発明の方法によるさらなる実施態様では前記燐光体層は保護層で被覆される。
【0022】
本発明の方法によれば、前記貯蔵燐光体パネルは7000より大きい「活性化剤被覆重量数」を有し、本発明の方法による別の実施態様では、前記貯蔵燐光体パネルは20000より大きい「活性化剤被覆重量数」を有する。前記「活性化剤被覆重量数」はEP出願No.05110119及び05110120(ともに2005年10月28日に同時出願)に開示されるようにマトリックス成分に対する活性化剤のp.p.m.(μg/g)で表示される前記燐光体層に存在する平均活性化剤量とmg/cmで表示される被覆された燐光体の重量の積として規定される。
【0023】
本発明の方法によれば、燐光体プリカーサ原材料を蒸着する前記工程は多数の蒸発工程によって実施される。多数の蒸発は一つの同じるつぼ又は複数のるつぼから、多数の連続蒸発工程において、前記多数の連続蒸発工程を実施している間、同じ又は異なる組成を有するプリカーサ原材料又はそれらの組み合わせを蒸発することとしてここでは規定される。前記連続工程は燐光体蒸着のためのプリカーサとして前記原材料を漸進的に蒸着する結果としてるつぼ内容物の消耗を補償するために前記原材料又はそれらの組み合わせを加える一つ以上の工程を特徴とする。時間を節約するために連続蒸発工程間では空の又はほとんど空のるつぼのクリーニングが行なわれないことが理解される。るつぼのこの種の「補給」がときどき要求される理由は、るつぼの全体積、前記るつぼが(例えば飛び跳ねを避けるために)原材料で充填されてもよい体積及び前記燐光体が蒸着法によって蒸着される支持体上への燐光体層の被覆厚さと関連する。あるいは補給はUS−A 2004/0224084に記載のように実施されてもよく、そこでは厚さ方向に組成の変化が全くないことが望ましいときであっても、るつぼが物理蒸着工程中に消耗されること及びるつぼの「補給」がさらなる蒸発工程中に均一性(そうでなければ被覆工程がさらに行なわれている間、ドーパント(ユウロピウム)濃度の差が出現しうる)を維持するために、粉末の形態で、粒子もしくは結晶の形で、又は固められた粉末又は粒子混合物を含有するトローチ剤の形で原材料成分を添加することによって与えられるべきであることは明らかである。るつぼを「補給」するために言及され適用可能な方法は、例えばUS−A 4430366,DE−A 19852362及びUS−A 2003/0024479に記載されている。2005年10月28日出願のEP出願No.05110124に記載のような特別な方法では、次の工程の少なくとも一つ又はそれらの組み合わせが実施されてもよく、前記工程は1)前記マトリックス原材料の溶融温度を70℃より多く越える高い温度で一つ以上のるつぼユニットにおいて蒸着し、2)多数の蒸発を実施することであり、所望により前記るつぼ容器における温度に対して前記るつぼユニットの蒸発煙突における温度を増大するさらなる工程が維持されてもよい。
【0024】
特別な実施態様では、本発明の方法では前記多数の蒸発工程は間にクリーニング工程なしで前記るつぼを補給することによって実施される。
【0025】
さらに、本発明の方法によれば、前記プリカーサ原材料はマトリックス成分としてCsXであり、活性化剤成分としてEuX,EuX,EuOX(但し、XはCl,Br,I又はそれらの組み合わせである)又はそれらの混合物である。
【0026】
本発明の方法による別の実施態様では前記プリカーサ原材料はCsEuX′(x+αy)であり、x,y及びαは整数であり、x/yは0.25より大きく、αは少なくとも2であり、X′はCl,Br,I又はそれらの組み合わせを表わす。
【0027】
本発明の方法によれば、前記貯蔵燐光体はCsBr:Euである。
【0028】
本発明の方法による一つの実施態様では、前記蒸着はバッチ法で行なわれる。
【0029】
本発明の方法による別の実施態様では、前記蒸着は連続法で行なわれる。
【0030】
ここで開示されるような本発明による方法では、前記支持体上への前記燐光体の蒸着は物理蒸着、化学蒸着及び噴霧化技術からなる群から選択される方法によって行なわれる。前記方法によって前記燐光体を支持体上に適用することは熱蒸着、電子線蒸着、磁気スパッタリング、高周波スパッタリング及びパルス化レーザ蒸着又は噴霧化技術(例えばスプレー乾燥及び熱スプレー)を含むが、それらに限定されない。
【0031】
本発明の有利な効果として、本発明の方法に従って変更された蒸発工程における同じ被覆量の燐光体について、一つの同じるつぼユニットから多い及び少ない揮発性プリカーサ原材料が蒸発されるときであっても、そしてそれがさらにある時間、熱及び湿度のかなり厳しい条件で状態調節され、それによって「通常の使用状態」を長時間シミュレートするときであっても、増大した燐光体スピードが工程に対して測定されることが予期せぬことに見出された。
【0032】
既に前述したように、本発明の方法はバッチ又は連続法で実施される。
【0033】
それとは独立して本発明による方法が適用される蒸着装置において、前記装置はさらに、好ましい実施態様では、るつぼユニットの煙突出口に対して装着され、かつ前記原材料からの蒸発された粒子が煙突スロット出口を通って逃避するための直接的な通路が全くないように位置される三つの線状煙突加熱要素(煙突ヒータ、有利には赤外ヒータ)を有する。
【0034】
かかる配置はプリカーサ原材料の飛び跳ねを避けるために特に要求され、そこでは煙突ヒータはそらせ板として作用する。別の実施態様では、耐火プレート、例えばタンタルプレートはそらせ煙突ヒータの下でるつぼの内部に装着される。前記るつぼ及び前記プレートは燐光体又はシンチレータ材料の均一な蒸着のために、熱伝導性組立体全体にわたってさらなる均一な加熱を与えるためにさらに電極対の間に装着される。本発明による方法が適用される蒸着装置では、前記(制御可能な)スロット出口は矩形のスロット出口である。本発明による方法が適用される蒸着装置では、前記線状煙突加熱要素は上方又は下方の位置に移動可能であることが特別な利点である。
【0035】
蒸着装置が、一方のキャリアローラが制御された態様でその軸のまわりのモータによって回転する能力を与え、他方のローラが前記一方のローラの動きによって回転し、さらに回転中、ローラ上の可撓性支持体の位置が前記可撓性支持体の位置調整を与える圧力調整シリンダに結合された光学位置センサーによって制御される場合には、燐光体層はEP−A 1460642及びUS−A 2004/224084に記載のように連続蒸着工程で作られる。
【0036】
別の実施態様では前記支持体はバッチ蒸着装置に存在するるつぼユニットから逃避する蒸気流に対して良く規定された角度で傾斜しているか又はそれと平行な軸のまわりに回転する。あるいは、支持体は固定された位置であってもよく、るつぼユニットは前記支持体に垂直な軸に対して良く規定された角度で傾斜しているか又はそれと平行な軸のまわりに回転されてもよい。
【0037】
シンチレータ又は燐光体材料が本発明の方法による蒸着装置において蒸着される支持体材料として、ガラス、セラミック材料、ポリマー材料又は金属、より好ましくはガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、炭素繊維強化プラスチックシート、アルミニウム、Pyrex(登録商標)、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、サファイア、セレン化亜鉛、Zerodur(登録商標)、セラミック層及びアルミニウム、鋼、真ちゅう、チタン及び銅から選択された金属又は合金を使用することができる。原則としてそれらに限定されるべきではなく、本発明の被覆工程で一般に適用されるような程度までエネルギーを付与した後に例えば溶融による不可逆性の変形に耐えるいかなる金属又は合成材料も使用のために好適である。
【0038】
本発明の方法において可撓性支持体として特に好ましいものは支持体全体にわたって完全に均一な温度を可能とする極めて良好な熱伝導性材料としてのアルミニウムである。特に有用なアルミニウム支持体として、限定されないが、増白された陽極酸化アルミニウム、アルミニウム鏡及び酸化物パッケージ及び所望によりパリレン層を有する陽極酸化アルミニウム、銀鏡及び酸化物パッケージ及び所望によりパリレン層を有する陽極酸化アルミニウム(ALANOD,ドイツから入手可能)が推奨される。好ましい可撓性支持体として保護箔でカバーされた陽極酸化アルミニウム支持体層が推奨される。かかる陽極酸化アルミニウム支持体層は50〜500μmの範囲、より好ましくは200〜300μmの範囲の厚さを有してもよい。かかる陽極酸化アルミニウム支持体は蒸着された燐光体又はシンチレータに関する接着特性に対して特に好ましいことが示され、500μm〜1000μmの厚さを有するシンチレータ層で被覆された可撓性アルミニウム支持体が曲げられた場合であってもシンチレータ又は燐光体「フレーク」の「クラック」又は変形を起こさない。実際、本発明の方法が適用される蒸着装置で作られるとき望ましくないクラックの発生に関して問題に遭遇することは全くなかった。
【0039】
蒸着が行なわれている間、前記支持体の温度は約200℃のターゲット温度を考えて、調節可能なヒータによって及び支持体に沿って設置されたアドレス可能冷却ユニットによって150℃〜300℃の範囲、より好ましくは150℃〜250℃、さらにより好ましくは180℃〜220℃の範囲で維持される。ヒータとして、赤外ヒータが有利に使用される。特に、反射スクリーンを背後に有する前記支持体に沿って水平に、例えば縦方向に配置された大きな石英ランプが使用される。
【0040】
連続又はバッチ蒸着法についてのさらなる詳細はEP−A 1460642及びUS出願2004/0224084及びUS−A 6802991にそれぞれ見出すことができる。蒸着された層に十分なドーパントを混入するための能力を与えるために、るつぼにおいて前記プリカーサ原材料を液体形態で加熱する工程は温度Tまで行なわれ、一方るつぼユニットの煙突において前記プリカーサ原材料を蒸発された形で加熱する工程は温度Tまで行なわれ、2005年10月28日に出願されたEP−A 05110122で確立されているように正の温度差[T−T]が維持される。
【0041】
本発明の方法が適用される蒸着装置の容器(るつぼ)における原材料の組成が所望の最終組成又は被覆組成を与えるために選択され、前記組成が存在する原材料の比率によって決定されることは明らかである。原材料の比率は蒸発された原材料の蒸着後に所望の燐光体又はシンチレータの化学組成を与えるために選択される。固体粉末、粒子又は顆粒の形で、又は移動する支持体材料上に被覆された所望の燐光体を与えるために所望の比率の原材料に対応する組成を有するトローチ錠として、るつぼにおいて均一な原料混合物を得るために原材料を混合することが望ましい。微粉砕法が蒸発前の高度の均一性を与えるために好ましく、従って推奨される。異なる成分を既に前に提案したように直列又は並列又は組み合わされた配置で配置された異なるるつぼ又はるつぼユニットから蒸発させてもよい。但し、均一な蒸気雲が蒸気流を介して可撓性支持体に与えられ、前記支持体上への凝縮によって付着されることが条件である。同じ又は異なる原材料含有物又は原材料混合物を有する二つの細長いワンパートボートは例えばウェブの移動方向に直列に存在させてもよい。別の実施態様では、もし均一な被覆プロファイルを与えるなら、ボートは支持体の移動方向に垂直な一つの軸又はそれより多くの軸に並列に配置されてもよい。但し、重なり合う蒸気雲は再び、前記燐光体又はシンチレータの均一な厚さ、組成及び被覆量を有する燐光体又はシンチレータ層において支持体上に蒸着する蒸気流を与えることが条件である。一つより多いるつぼの存在は単位時間あたりに蒸着される燐光体又はシンチレータ材料のより多い量を供給する能力に有利であり、可撓性支持体が支持体の極めて高い温度増加を避けるために十分に高い速度で蒸気流を通過すべきであるときはより一層そうである。支持体が容器を通過する速度は十分な冷却手段が凝縮のために存在しない限り、蒸着を不可能にする支持体の望ましくない局所的な加熱に照らして遅すぎないようにすべきである。それゆえ自己支持又は被支持の支持体は所望の最適な特性を有する蒸着された燐光体又はシンチレータ層を得るために50℃〜300℃の温度を有することが好ましい。
【0042】
エネルギーはるつぼ、トレー又はボートとしても知られる一つ以上の容器に供給され、そこに存在する原材料の蒸気流を起こし、それを封止された真空領域で蒸発させるべきであることは明らかである。エネルギーは熱、電気、又は電磁エネルギー源によってそれに与えられる。電磁エネルギー源の一例としてダイオード、カソードアーク、レーザビーム、電子ビーム、イオンビーム、磁気放射線又は高周波を使用してもよく、それはパルス化されてもされなくてもよい。また、それらに限定されない。電気エネルギーは一般に抵抗加熱によって与えられ、それは熱エネルギーに変換するための構成で容器又はるつぼのまわりに巻かれた抵抗コイルを使用し、それによって蒸発されるべき原材料を充填された容器又はるつぼへの熱伝達を与える。容器又はるつぼを550℃〜900℃の範囲の温度まで加熱する程度のエネルギー供給が極めて望ましい。それらの温度では、容器は腐食抵抗性を有するべきであることは明らかであり、従って耐火容器が好ましい。好ましい容器又はるつぼ材料はタングステン、タンタル、モリブデン及び他の好適な耐火金属である。前述のようなエネルギー供給源はるつぼ中の原材料の混合物を450℃以上、好ましくは550℃以上、さらにより好ましくは550℃〜900℃、例えば約700℃に加熱する。
【0043】
ターゲット原材料から生じる蒸発された材料の雲は容器又はるつぼからの移動する支持体の方向の流れの形の雲として逃避し、被覆された層は凝縮によって形成される。上記から、考えられるような均一な被覆プロファイルを得るために、均一性が液化原材料に与えられるときにしか均一な雲が実現されないことは明らかである。結果として、容器に対して供給されたエネルギーの均一な分布は厳しい要求である。好ましい実施態様では、均一性のために、るつぼは前記るつぼ上を移動する可撓性支持体の幅に相当する最大寸法を有する単一の細長い「ボート」の形であり、従ってその表面領域の各点において瞬間的な速度の大きさは一定である。もし蒸着工程中又は後に必要なら、酸素を不活性(アルゴン)ガス入口を介して酸素ガスの形で真空蒸着室中に導入することができる。特に、二つの蒸着工程間又は燐光体蒸着の終わりのアニール工程は有用でありうる。
【0044】
本発明の方法が適用される蒸着装置において支持体上で得られる被覆プロファイルに関する重要な要因は容器と移動する支持体の間の距離である。その距離は可撓性支持体の位置の蒸気雲のプロファイルを決定するからである。るつぼと支持体の間の最小距離の平均値は5〜10cmの範囲であることが好ましい。但し、20〜25cmまでのさらなる距離は支持体の好ましい温度制御として除外されない。距離が大きすぎると、材料の損失及び工程の収率の低下に導き、一方距離が小さすぎると、支持体の高すぎる温度に導くだろう。さらに、「スポットエラー」又は「ピット」を避けることに関して注意を払うべきであり、それらは加熱された容器に存在する液化原材料の飛び跳ねによる燐光体又はシンチレータの不均一な蒸着を生じる。それゆえ、前記原材料から蒸発された粒子がるつぼ又はるつぼユニットのスロット出口を通って逃避し、貯蔵燐光体プレート又はパネル上に望ましくないスポットの付着を生じるための直接的な通路を避けるような手段がとられる。
【0045】
本発明の方法が適用される蒸着装置では、前記燐光体又はシンチレータ組成物の蒸着は一つ以上のるつぼからの原材料の蒸気流によって開始され、前記蒸気流は熱、電気、又は電磁エネルギー又はそれらの組み合わせによって前記原材料及び前記容器にエネルギーを加えることによって発生される。前記燐光体又はシンチレータ組成物の蒸着は物理蒸着、化学蒸着又は物理蒸着と化学蒸着の組み合わせによって行なうことが有利である。これらの技術、特に物理蒸着と関連するものは例えば「Handbook of Physical Vapor Deposition Processing」,1988,William Andrew Publに記載のように適用されることができる。
【0046】
本発明の方法が適用される蒸着装置で得られる被覆された燐光体に関して、前記燐光体は一つの実施態様では光刺激性燐光体である。本発明の方法が適用される蒸着装置においてうまく蒸着される極めて重要な光刺激性(貯蔵)燐光体はCsBr:Eu燐光体である。CsBr:Eu貯蔵燐光体プレート又はパネルの製造に使用される原材料はCsBr及び10−3〜5mol%のユウロピウム化合物であり、前記ユウロピウム化合物はEuX′,EuX′及びEuOX′からなる群から選択され、X′はF,Cl,Br及びIからなる群から選択されるハロゲン化物である(PCT出願WO 01/03156に開示された製造方法で使用)。CsBr及びEuOBr原材料から選択されたCsBr:Eu燐光体の結合剤のない被覆がさらに好ましく、前記燐光体はその特定の針状形態を特徴とする。高い結晶化度はUS出願2001/0007352に示されるように特定のXRDスペクトルを与えるX線回折技術によって容易に分析される。それゆえCsBr及びEuOBrがるつぼにおける原材料混合物として与えられ、両原材料間の比率は通常、約90重量%の安価なCsBr及び約10重量%の高価なEuOBrである。しかしながら、被覆(蒸発)温度の関数として組成の変化を生じずに低い材料及び製造コストのために比率を適応できることが示された:従って、99.5重量%のCsBr及び0.5重量%のEuOBrの比率量の原材料混合物について高い蒸発温度でも前述と同じ結果を与える。
【0047】
本発明の方法が適用される蒸着装置において針状燐光体として蒸着後に得られた好ましいCsBr:Eu2+燐光体は針状結晶間の間隙を特徴とする。それらの間隙を満たすためには、間隙がポリマー化合物で部分的に充填されるUS出願2003/0168611に記載のような、好ましいβ−Cu−フタロシアニンナノ結晶染料化合物のように蒸着された顔料が前記間隙を満たしているUS出願2003/0183777のような、又は間隙がシラザン及びシロキサザン型ポリマー化合物、それらの混合物及び前記シラザン又はシロキサザン型ポリマー化合物と適合しうるポリマー化合物の混合物からなる群から選択されるポリマー化合物で少なくとも部分的に満たされるUS出願2004/0228963のような手段をとることができる。特に、前記染料又は顔料に関して、その蒸着は本発明による製造方法の構成に使用される真空蒸着室で実施されることができる。
【0048】
好ましいCsBr:Eu2+燐光体を与えられたシート又はパネルを作るために、本発明の方法が適用される蒸着装置は燐光体プリカーサとして少なくともCsEuX′(x+αy)を含むるつぼにおける混合された原材料で開始し、CsEuX′(x+αy)は活性化剤プリカーサ材料であり、x,y及びαは整数であり、x/yは0.25より大きく、αは少なくとも2であり、X′はCl,Br,I又はそれらの組み合わせを表わす。
【0049】
別の実施態様では前記原材料の混合物は燐光体プリカーサとして少なくともCsBr及びCsEuX′(x+αy)を含み、x/yは0.25より大きく、αは少なくとも2であり、X′はCl,Br及びI又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物である。前述のようなプリカーサを使用する所望のCsBr:Eu燐光体を製造し被覆するための方法はUS出願2005/0184250及び2005/0186329のそれぞれに記載されている。
【0050】
蒸着のときに、本発明の方法が適用される蒸着装置で作られる好ましい刺激性燐光体又はシンチレータ層は結合剤のない層である。これは十分に理解することができる。なぜならばそれらの高い温度では、容器中の燐光体又はシンチレータ原材料に加えて追加の結合剤の存在は実際的でないからである。しかしながら、例えば支持体と燐光体又はシンチレータ層の間又は被覆層における好ましい燐光体又はシンチレータ針状結晶の間で結合剤材料として作用するために蒸発される能力を示すポリマーを使用することは除外されない。さらに、ポリマー層を蒸着された層上に積層するとき、ポリマー材料がそれらの針状結晶間の間隙を少なくとも部分的に満たすことは除外されない。さらに、燐光体又はシンチレータシート又はパネルに所望のフォーマットに切断する前又は切断した後に、耐湿性層を与え、湿分感受性の燐光体層を劣化から保護することは除外されない。特に好ましい層は例えばUS-A 6710356に記載されたようにパリレン(p−キシリレン)層であり、それはUS出願2004/0164251に記載されたようにシラザン又はシロキサザン型ポリマー化合物又はそれらの混合物の透明有機層で上塗りされてもされなくてもよい。保護パリレン層を燐光体又はシンチレータ被覆に「パリレン層」として適用する方法では、ハロゲン含有層が好ましい。より好ましくは前記「パリレン層」はパリレンD、パリレンC及びパリレンHT層からなる群から選択される。
【0051】
特別な場合において架橋ポリマー層は燐光体スクリーン材料上に形成されることが有利であり、前記ポリマー材料層は少なくとも一つの成分の反応によって形成され、それによって自己縮合ポリマーを形成する。反応性モノマーは支持体上に所望の縮合ポリマーを形成するために加熱された蒸気の形で与えられ、前記縮合ポリマーは燐光体スクリーン支持体上のp−キシリレン又は「パリレン」層の形である。これらの「パリレン」層の例はポリ−p−キシリレン(パリレン−N)、ポリモノクロロ−p−キシリレン(パリレン−C)及びポリジクロロ−p−キシリレン(パリレン−D)である。顔料をJP−A 62−135520に記載されたようにポリ−p−キシリレンの薄膜に存在させてもよい。光刺激性燐光体層を別として、即発ルミネセント燐光体を本発明の方法が適用される蒸着装置において被覆することができる。かかるルミネセント燐光体は例えばスクリーン/フィルム放射線写真に使用される増感スクリーンに使用するために好適である。
【0052】
CR及びDRと関連した特定の用途に関して、画像品質、特にシャープネスに照らして、前述のような結合剤のない燐光体又はシンチレータ層が好ましいことは明らかである。それに関して、所望のシンチレータ又は燐光体層を形成するために、本発明の方法が適用される蒸着装置における原材料の蒸発が好ましい技術であることは明らかである。但し、層は可撓性支持体上に蒸着されることが条件であり、そこでは特定のCR及びDR用途のために適した、すぐ使用できる平坦なシート又はパネルを得るために可撓性支持体を変形することが考えられる。本発明の方法に従って有利に製造される好ましいCsBr:Eu燐光体に加えて他の吸湿性燐光体又はシンチレータ層は例えば増感スクリーンに使用されるBaFCl:Eu,BaFBr:Eu及びGdOBr:Tm、例えばBaFBr:Eu,BaFI:Eu,(Ba,Sr)F(Br,I):Eu,RbBr:Tl,CsBr:Eu,CsCl:Eu及びRbBr:EuのようなCRに使用するために好適なシンチレータパネル及び貯蔵燐光体に適用されるCsI:Na、又はUS出願2004/0262536及び2005/0002490のそれぞれに開示されるようなDRカセットに使用するために特に好適であるCsI:Tl,LuS:xM及びLuSi:xM(式中、MはEu,Pr及びSmからなる希土類元素からなる群から選択され、xは0.0001〜0.2である)である。
【実施例】
【0053】
本発明はその好ましい実施態様と関連して以下に記載されるが、本発明をそれらの実施態様に限定することを意図しないことが理解されるだろう。
【0054】
可撓性の陽極酸化されたアルミニウムを有するCsBr:Eu光刺激性燐光体スクリーンを、原材料としてCsBr及びEuOBrの混合物から出発して熱蒸着工程によって真空室で作った。前記可撓性の陽極酸化されたアルミニウム支持体上への前記蒸着工程は前記支持体が速度の瞬間的な大きさがその面積の各点において一定であるように回転するような方法で実施された。
【0055】
電気加熱されたオーブン及び耐火トレー又はボートに160〜200gのCsBr及びEuOBrの混合物(99.5重量%/0.5重量%のCsBr/EuOBrの百分率割合)を原材料として存在させ、蒸発した。
【0056】
るつぼは60mmの長さ、45mmの幅及び40mmの高さを有する細長いボートであり、それは0.5mmの厚さを有する「タンタル」から構成された。その三つの集積部分は:るつぼ容器、内部加熱される煙突、及び制御可能な出口である。長手方向の部分は漏れを克服するために一つの連続的なタンタルベースプレートから折り曲げられ、ヘッド部分は溶接された。
【0057】
真空室へのアルゴンガスの連続入口によって維持された真空圧力(2×10−3mbarに等価な2×10−1Paの圧力)下で、そして蒸気源(720℃)の十分に高い温度で、得られた蒸気を移動するシート支持体の方に向け、前記支持体が蒸気流上で回転している間に連続的にその上に付着した。
【0058】
280μmの厚さ、18cmの幅及び24cmの長さを有する陽極酸化されたアルミニウム支持体を、支持体とるつぼ蒸気出口スリットの間を22cmの距離にして燐光体が蒸着される側に位置させた。
【0059】
前に説明した「過剰アニール」の効果を示すために、前述のようにして作られた貯蔵燐光体プレートに対して表1にまとめられた実験が実施された。表中、高いスピード(SAL%)は約200p.p.m.からの範囲のユウロピウムドーパント濃度に対して既に達成された。
【0060】
その表1ではアニールを実施している間のR(相対)H(湿度)条件(表1に示されるように%RHで計算−第4欄)に加えて、続く第5欄は前記アニール条件を実施している間の1mあたりに存在する水の絶対量について表示する。
【0061】
SAL%*1は前記プレートをアニール工程に供さず、かつ状態調節された部屋におけるエージング処理を行なわずに、貯蔵燐光体プレートにおける走査平均レベルから測定されたスピードについて表示する。
【0062】
SAL%*2は前記プレートをアニール工程に供した後の同じプレートから測定されたスピードについて表示する。
【0063】
表1の最後の欄では前記アニールされたプレートに対して保護層の不存在下で前もってアニールされたプレートで35℃及び80%RHで144時間状態調節された部屋でエージング処理を実施した結果としてのスピードの損失を示す減衰百分率が記入された。
【0064】

【0065】
表1のようにさらに厳しいエージング環境では、25%未満、さらに20%未満の減衰は(4時間の参照時間及び170℃の参照温度を越える)過剰アニールに対する望ましい条件が満たされるときにだけ達成されることができるが、過剰アニールは例えばCB52233/12(本発明例)からのSAL%2値とCB52233/21及びCB52233/22(比較例)で測定されたものを比較するときに示されるように初期SAL%(SAL%2)においてわずかな損失に導きうる。
【0066】
乾燥空気の1mあたり10g未満の水含有量が前記アニール中に存在するアニール条件(例えばCB52228/12について180℃で5時間)では、後のエージング処理によって生じるSAL%減衰は25%より低いレベルに減少されることができないが、時間及び温度は少なくとも前記減衰を25〜30%の範囲のレベルまで減少するためのものでありうる。
【0067】
評価手順において、即ちプレート上で燐光体層を保護せずに(即ち保護被覆層なしで)厳しい環境でのエージング処理後に行われたように、前記減衰を20%未満のレベルまで減少するために、アニール時間及び温度条件は標準的な時間(4時間)及び/又は標準的な温度(170℃)を越えるべきである。
【0068】
しかしながら、過剰アニール工程が行なわれる環境では乾燥空気の1mあたり10gより多い水含有量まで絶対水含有量を増大することが好ましいことが示される。
【0069】
有利な効果として、過剰アニール工程は最大の達成可能なスピード(例えばCBプレート52233/21をCBプレート52233/12と比較)を越えるSAL%に導きうるが、本発明に規定されたように数日の長時間にわたって高い温度及び高い相対湿度の条件でエージング処理した後のそのスピードの評価は前記貯蔵燐光体プレートが保護カバー層によって湿分に対して保護されないときであっても得られたスピード減衰に反映されているようにかくして作られた貯蔵燐光体プレートのスピードに対して顕著に良好な安定性に導きうることが本発明の実施例において明らかに示された。
【0070】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱せずに多数の変更をその中でなしうることが当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着装置において一つ以上のるつぼ及び/又はるつぼユニットからマトリックス及び/又は活性化剤成分の燐光体プリカーサ原材料を蒸着することによって支持体上に被覆された燐光体層を有する貯蔵燐光体パネルの湿度安定性を増大する方法であって、蒸着の終了後に追加の過剰アニール工程が実施され、前記「過剰アニール」工程が「参照アニール時間」を越える時間にわたって「参照アニール温度」を越える温度でアニールすることによって行なわれ、前記「参照アニール時間」が4時間であり、前記「参照アニール温度」が170℃である場合において、前記「過剰アニール」工程が、乾燥状態調節空気の1mあたり10gより多い水が存在する湿度条件で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記過剰アニール工程において前記温度が少なくとも200℃でありおよび/または前記時間が少なくとも5時間である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スピードの百分率減衰として表示される前記湿度安定性が25%未満であり、前記減衰が、前記燐光体層に対して保護層なしで、相対的に高い温度及び湿度によって規定された、状態調節された雰囲気におけるエージング処理手順前後に測定されたスピードの差から決定される請求項1又は2に記載の方法。

【公開番号】特開2007−155710(P2007−155710A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302450(P2006−302450)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(591023136)アグファ・ゲヴェルト・ナームロゼ・ベンノートチャップ (20)
【氏名又は名称原語表記】AGFA−GEVAERT NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】