説明

貴重品輸送システム

【課題】 GPS衛星からの電波を利用して取得した位置情報をもとに収容箱の開錠可否を判定し、屋内で開錠する場合も建屋の工事を行わずに収容箱の開錠判定を行うことができる、位置情報による開錠方法を利用した貴重品輸送システムを提供する。
【解決手段】 貴重品を目的地に搬送する場合、事前に目的地情報(開錠時刻範囲、目的地位置情報、誤差範囲)を収容箱に設定する。目的地に到着後、現在時刻が開錠時刻範囲内であること、および最後にGPS衛星から取得した現在位置情報が目的地設定範囲よりも内側(目的地位置情報の誤差範囲内)であること、および開錠時にGPS衛星からの電波を受信していない場合に、収容箱の開錠を許可する開錠方法を利用した貴重品輸送システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴重品の輸送において、GPS機能を備えた開錠システムを利用して、屋内においても安全に収容箱を開錠する開錠方法を利用した貴重品輸送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貴重品の輸送において、所定の時刻に所定の位置でのみ開錠できるようにする方式として、GPS衛星を利用する方式があった。この方式は、目的地以外での開錠を許可しない手段としてGPS衛星から取得する位置データを利用しており、事前に設定した目的地の緯度経度データと、GPS受信機から算出した現在位置の緯度経度データを照合し、収容箱の開錠可否を判断するものである。
また、この方式では電波の届かない屋内では開錠することができないが、屋内で開錠する手段として、屋外にGPSアンテナを設置し、位置データを屋内に出力して開錠する方法もあった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2003−221955号公報(図4、第4頁〜第5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屋外に設置したGPSアンテナからのデータを屋内に出力するためには建屋の工事が必要になると共に、貴重品の受け渡しは窓もない密室で行われることも多く、屋内へのGPS出力のための工事を行うには費用が高額になるという課題があった。
このため、屋内で収容箱を開錠できる場所は限定され、汎用的に使用することが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上述の様な課題に鑑みてなされたものであり、建屋の工事を実施することなく、GPSデータを利用して屋内においての利用を可能とする位置データによる開錠方法を利用した、貴重品輸送システムおよび貴重品輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による、貴重品を目的地に安全に輸送する貴重品輸送システムは、この貴重品を収容する収容箱に、GPS衛星からのGPS電波を受信するGPSアンテナと、収容箱を開錠する開錠装置と、目的地の位置を示す目的地位置データを入力する入力コネクタと、更に、GPSアンテナからGPSデータを受信するGPS受信機と、入力コネクタから目的地データを受信する入力部と、開錠装置から開錠を要求する開錠要求データを受信し、収容箱が開錠可能か否かを確認後、収容箱の開錠を許可する開錠許可データを開錠装置に送信する開錠装置インタフェース部と、目的地データを記憶する目的地データ記憶部と、GPSデータから収容箱の現在位置データを計算する現在位置データ計算部と、現在位置データ計算部から得られる現在位置データを格納する現在位置データ記憶部と、目的地データと現在位置データとを比較する位置データ比較部と、GPS受信機の受信状態の良/不良を記憶する受信状態記憶部と、を有する位置データ処理装置とを備え、位置データ処理装置は、現在位置データ計算部の現在位置データが、目的地データ記憶部の目的地データの所定の位置誤差範囲内であり、GPS受信機からのGPS電波受信が不良状態時に、収容箱を開錠する様にしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、建屋の工事を実施することなく、GPSを利用して屋内で安全に貴重品の受け渡しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における位置データによる開錠システムを備えた貴重品輸送システムおよび貴重品輸送方法について説明する。
【0009】
図1は、この発明の実施の形態1における貴重品輸送システムおよび貴重品輸送方法の全体概略図であり、図2は、この発明の実施の形態1における貴重品輸送システムおよび貴重品輸送方法において適用可能な収容箱のブロック図であり、図3は、この発明の実施の形態1における位置データによる開錠システムの移動時における位置データの記憶処理を示す処理フロー図であり、図4は、この発明の実施の形態1における位置データによる貴重品輸送方法の開錠手順の処理フロー図である。
【0010】
図1において、1は位置データによる開錠システムを備えた収容箱、2は収容箱1を搬送する搬送者、3はGPS衛星、4は収容箱1の搬送先である建屋、5は建屋4の中にある密室、6は目的地設定範囲を示す。
【0011】
収容箱1は、事前に設定された目的地位置データを記憶し、搬送者2による目的地への移動中にGPS衛星3からの電波を受信して現在位置データを計算し記憶する。
【0012】
建屋4は、収容箱1の運搬先であり、GPS衛星3からの電波が届かない密室5を備える。収容箱1を開錠する場合は、事前に設定された目的地位置データと最後に記憶した位置データを比較し、緯度経度の差が設定値の目的地設定範囲6の内側であること、および事前に設定された開錠時刻範囲T1〜T1’と現在時刻を比較し、現在時刻が開錠時刻範囲T1からT1’の内側であること、さらにGPS衛星3からの電波を受信していない場合に、収容箱1の開錠を許可する。
【0013】
図2において、収容箱1は、位置データ処理装置10と、GPS衛星3からのGPS電波を受信するGPSアンテナ11と、目的地で収容箱1を開錠するため収容箱1の外部からボタン押下が可能な開錠要求ボタン12が付帯している開錠装置13と、予め目的地データを入力するための入力コネクタ14を備えている。
【0014】
更に、位置データ処理装置10は、GPSアンテナ11からのGPSデータを受信するGPS受信機101と、入力コネクタ14から上記目的地データとして開錠設定データを受信する入力部102と、開錠要求ボタン12の押下により開錠要求となる開錠装置13からの開錠要求データを受信する開錠装置インタフェース部103と、予め設定する目的地データに基づく開錠設定データ(目的地位置データ、開錠時刻範囲、夫々の誤差範囲)を記憶する目的地データ記憶部104と、GPS受信機101のGPSデータから現在位置データを計算する現在位置データ計算部105と、現在位置データ計算部105から得られる現在位置データを格納する現在位置データ記憶部106と、開錠装置インタフェース部103から開錠許可の可否確認をする開錠許可確認データを受けて目的地データ記憶部104と現在位置データ記憶部106の位置データの比較を行う位置データ比較部107と、GPS受信機101の現在の受信状態(良/不良)を記憶する受信状態記憶部108と、現在時刻を計算する現在時刻計算部109を備える。
【0015】
次に、図3を用いて、位置データによる開錠システムの移動時における位置データの記憶処理を示す処理フローを説明する。
【0016】
ステップS101において、入力部102で受信した開錠設定データ(目的地位置データ、開錠時刻範囲、夫々の誤差範囲)を目的地データ記憶部104に格納し、ステップS102において位置データ更新のループを開始する。
【0017】
ステップS103において、GPS受信機101のGPS電波受信結果がYES(受信している)であれば、ステップS104において、GPS電波受信状態として受信状態記憶部108に“良”を設定し、ステップS105において、現在位置データを現在位置データ計算部105で計算した結果により現在位置データ記憶部106の値を更新する。これを収容箱1が開錠されるまでステップS102からステップS106までの位置データ更新ループを繰り返す。
【0018】
また、ステップS103において、GPS受信機101のGPS電波受信結果がNO(受信していない)であれば、ステップS107において、GPS電波受信状態として受信状態記憶部108に“不良”を設定し、収容箱1が開錠されるまでステップS102からステップS106までの位置データ更新ループを繰り返し、開錠時に位置データの記憶処理を終了する。
【0019】
次に、図4を用いて、位置データによる開錠システムの収容箱1の開錠手順を示す処理フローを説明する。
【0020】
ステップS201において、開錠装置インタフェース部103は、開錠装置13からの開錠要求データを受信して、開錠許可可能か否かを確認するための開錠許可確認データを生成すると共に、現在時刻計算部109にて現在時刻を計測し、ステップS202において目的地データ記憶部104に格納された設定時刻に該当する(YES)場合にステップS203に進み、設定時刻に該当しない(NO)場合は開錠処理を終了する。
【0021】
次に、ステップS203において、受信状態記憶部108のデータを検証し、結果が“良”(YES)の場合、ステップS204において“照合不良”の結果データを開錠装置インタフェース部103に送信して開錠処理を終了する。
開錠装置インタフェース部103は、照合不良の結果データを受信した場合は収容箱1の開錠を許可しない。
【0022】
また、ステップS203において、受信状態記憶部108のデータを検証し、結果が“不良”(NO)の場合、ステップS205において現在位置データ記憶部106に格納された位置データを取得し、ステップS206において目的地データ記憶部104に格納された目的地の位置データを取得し、ステップS207において、ステップS205とステップS206で取得した位置データから位置データ比較部107で緯度経度の比較を行う。
この結果、ステップS208において緯度経度の差が目的地データ記憶部104に設定された誤差範囲内(YES)であれば、ステップS209において、開錠許可の判定結果として開錠許可判定結果データを開錠装置インタフェース部103に送信して開錠処理を終了する。
開錠装置インタフェース部103は、開錠許可判定結果データを受信した場合は、開錠許可データを開錠装置1に送信し、収容箱1の開錠を許可する。開錠装置1は、この開錠許可データの受信に基づいて、収容箱1が開錠される。
【0023】
更に、ステップS208において、緯度経度の差が目的地データ記憶部104に設定された誤差範囲外(NO)であれば、ステップS204において照合不良の結果データを開錠装置インタフェース部103に送信して開錠処理を終了する。
【0024】
なお、図1では収容箱1を“かばん状”の形態として説明しているが、必ずしもこの形態であるとは限らず、収容スペースを備える何がしかの固体であれば、同様に適用できるものである。
【0025】
この実施の形態1によれば、建屋の工事を実施することなく、GPSを利用して屋内で安全に貴重品の受け渡しを行うことができる。
【0026】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2における貴重品輸送システムについて説明する。
【0027】
実施の形態1は、位置データ処理装置10に目的地を1つ設定する構成としていたが、この実施の形態2では、1つの位置データ処理装置10に対して複数の目的地を設定する形態である。
【0028】
図5は、この発明の実施の形態2による貴重品輸送システムにおける位置データによる開錠方法の概略図であり、複数の目的地設定範囲および開錠時刻範囲を設定した場合に該当する。
また、図6は、この発明の実施の形態2における貴重品輸送システムにおいて、複数の目的地設定範囲および開錠時刻範囲を設定した場合の設定イメージ図である。
【0029】
図5において、第1の建屋である建屋4、目的地設定範囲6および開錠時刻範囲T1〜T1’は実施の形態1と同じであり、第2の建屋である建屋2:24、および第3の建屋である建屋3:34は、予め設定する目的地となる建屋を示し、目的地設定範囲2:26および目的地設定範囲3:36は、建屋2:24および建屋3:34それぞれに対して開錠可能な目的地設定範囲を示し、開錠時刻範囲T2〜T2’および開錠時刻範囲T3〜T3’は、建屋24および建屋34それぞれに対して開錠可能な開錠時刻範囲である。
【0030】
この実施の形態2は、3箇所の第1、第2、第3の目的地を設定する事例であり、それぞれにおいて、位置データによる開錠システムの収容箱1の開錠手順に基づき、開錠判断処理が実行される。
【0031】
なお、建屋、目的地設定範囲および開錠時刻範囲はこの実施の形態2に示した3つに限定するものではなく、複数設定することが可能である。
【0032】
次に、図6を用いて、目的地設定範囲および開錠時刻範囲を複数設定する場合の設定イメージを説明する。
【0033】
図6において、目的地データ記憶部設定イメージ201は、目的地設定範囲および開錠時刻範囲を複数設定した場合の設定イメージであり、設定内容は、任意の目的地設定範囲に対して、複数の開錠時刻範囲を設定することや、複数の目的地設定範囲に対して、同一の開錠時刻範囲を設定することも可能である。
例えば、設定1と設定4は、目的地設定範囲6に対して開錠時刻範囲は時刻T1〜T1’と、時刻T4〜T4’のそれぞれの時間に開錠可能な設定である。
また、設定5と設定6は、開錠時刻範囲T5〜T5’の間であれば、目的地設定範囲26および目的地設定範囲36のどちらでも開錠可能とする設定である。
【0034】
この実施の形態2によれば、貴重品の輸送を複数の場所で安全に授受することが可能であり、建屋の工事を実施することなく、GPSを利用して屋内で安全に貴重品の受け渡しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施の形態1による貴重品輸送システムの全体概略図である。
【図2】この発明の実施の形態1による貴重品輸送システムに適用可能な収容箱のブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による貴重品輸送システムにおける位置データによる開錠システムの移動時における位置データの記憶処理を示す処理フロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1による貴重品輸送システムにおける位置データによる開錠手順の処理フロー図である。
【図5】この発明の実施の形態2による貴重品輸送システムにおける位置データによる開錠方法の概略図である。
【図6】この発明の実施の形態2による貴重品輸送システムにおける複数の目的地設定範囲および開錠時刻範囲を設定した場合の設定イメージ図である。
【符号の説明】
【0036】
1 収容箱、2 搬送者、3 GPS衛星、4 建屋、5 密室、
6 目的地設定範囲、10 位置データ処理装置、11 GPSアンテナ、
12 開錠要求ボタン、13 開錠装置、14 入力コネクタ、24 建屋2、
26 目的地設定範囲2、34 建屋3、36 目的地設定範囲3、
101 GPS受信機、102 入力部、
103 開錠装置インタフェース部、104 目的地データ記憶部、
105 現在位置データ計算部、106 現在位置データ記憶部、
107 位置データ比較部、108 受信状態記憶部、
201 目的地データ記憶部設定イメージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重品を目的地に安全に輸送する貴重品輸送システムにおいて、
この貴重品を収容する収容箱に、
GPS衛星からのGPS電波を受信
上記目的地の位置を示す目的地位置データを入力する入力コネクタと、
更に、
上記GPSアンテナからGPSデータを受信するGPS受信機と、
上記入力コネクタから上記目的地データを受信する入力部と、
上記開錠装置から開錠を要求する開錠要求データを受信し、上記収容箱が開錠可能か否かを確認後、上記収容箱の開錠を許可する開錠許可データを上記開錠装置に送信する開錠装置インタフェース部と、
上記目的地データを記憶する目的地データ記憶部と、
上記GPSデータから上記収容箱の現在位置データを計算する現在位置データ計算部と、
この現在位置データ計算部から得られる現在位置データを格納する現在位置データ記憶部と、
上記目的地データと上記現在位置データとを比較する位置データ比較部と、
上記GPS受信機の受信状態の良/不良を記憶する受信状態記憶部と、
を有する位置データ処理装置とを備え、
この位置データ処理装置は、上記現在位置データ計算部の上記現在位置データが、上記目的地データ記憶部の上記目的地データの所定の位置誤差範囲内であり、上記GPS受信機からのGPS電波受信が不良状態時に、上記収容箱を開錠する様にしたことを特徴とする貴重品輸送システム。
【請求項2】
上記位置データ処理装置は、更に、現在時刻を計算する現在時刻計算部を備え、
上記目的地データは、目的地の位置を示す目的地位置データ及び開錠時刻の範囲を示す開錠時刻範囲データを含む目ものであり、
現在の開錠時刻が予め設定した上記目的地データの開錠時刻に対する所定の時刻誤差範囲内である場合に、上記収容箱を開錠する様にしたことを特徴とする、請求項1に記載の貴重品輸送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228231(P2009−228231A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71734(P2008−71734)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】