説明

貼り合せ板状体検査装置及び方法

【課題】接着剤中に散在する多くの気泡について、精度良くそのサイズを表し得る情報を得ることのできる貼り合せ板状体検査装置を提供することである。
【解決手段】ラインセンサカメラ50と、貼り合せ板状体10を介してラインセンサカメラ50に向けて照明する照明手段51、52と、前記照明手段により照明がなされている状態でラインセンサカメラが前記貼り合せ板状体走査する際に当該ラインセンサカメラから出力される映像信号を処理する処理ユニットとを有し、前記処理ユニットは、前記ラインセンサカメラからの映像信号に基づいて生成される画素単位の濃淡値からなる検査画像情報から得られる暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の検査画像上での距離に基づいて気泡サイズ情報を生成する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する2枚の板状体が接着剤にて貼り合わされてなる貼り合せ板状体を撮影して得られる検査画像情報に基づいて前記接着剤中の気泡についての検査を行う貼り合せ板状体検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示される気泡検査装置が知られている。この気泡検査装置は、一方の面に糊(接着剤)の塗布された透明な偏光フィルム(板状体)を当該糊によってガラス基板(板状体)に貼り付けた構造の被検査体(貼り合せ板状体)における前記糊中の気泡についての検査を行う。具体的には、被検査体の偏光フィルムに対向するように照明装置及びCCDカメラが配置され、照明装置により照明がなされている状態でCCDカメラが被検査体を偏光フィルム側から撮影する。そして、CCDカメラから出力される映像信号が所定の閾値をもって二値化される。糊中の気泡の表面では、照明装置からの光が反射するので、前記二値化によって得られる映像データによって表される画像では、気泡部分全面が明るく観察される。そして、その画像上において全面が明るく表される気泡部分の面積が対応する気泡の形状特徴量として計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−189903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来の気泡検査装置では、CCDカメラからの映像信号を所定の閾値をもって二値化することにより映像データを生成しているので、映像信号中において前記閾値のレベルより低いレベルで表れる気泡については検出することができない。例えば、CCDカメラのフォーカス位置及びその近傍にない気泡については、鮮明に撮影されずに映像信号中において前記閾値のレベルより低いレベルで表されるようになる。このため、接着剤(糊)中に散在する多くの気泡を精度よく検出できない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透光性を有する2つの板状体を接着する接着剤中に散在する多くの気泡について精度良くそのサイズを表し得る情報を得ることのできる貼り合せ板状体検査装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る貼り合せ板状体検査装置は、透光性を有する2枚の板状体が接着剤にて貼り合わされてなる貼り合せ板状体を撮影して得られる検査画像情報に基づいて前記接着剤中の気泡についての検査を行う貼り合せ板状体検査装置であって、前記貼り合せ板状体の一方の板状体に対向して配置されるラインセンサカメラと、前記貼り合せ板状体の他方の板状体側から前記ラインセンサカメラに向けて照明する照明手段と、前記照明手段により照明がなされている状態で前記ラインセンサカメラが前記貼り合せ板状体を走査する際に当該ラインセンサカメラから出力される映像信号を処理する処理ユニットとを有し、前記処理ユニットは、前記ラインセンサカメラからの映像信号に基づいて画素単位の濃淡値からなる検査画像情報を生成する検査画像情報生成手段を有し、前記照明手段及び前記ラインセンサカメラの光学的条件が、前記画素単位の濃淡値からなる前記検査画像情報にて表される検査画像において気泡部分が明背景中に暗リングとして表れるように調整され、前記処理ユニットは、更に、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の前記検査画像上での距離に基づいて気泡のサイズを表す気泡サイズ情報を検査結果情報として生成する気泡サイズ情報生成手段を有する構成となる。
【0007】
また、本発明に係る貼り合せ板状体検査方法は、透光性を有する2枚の板状体が接着剤にて貼り合わされてなる貼り合せ板状体の一方の板状体に対向して配置されるラインセンサカメラと、前記貼り合せ板状体の他方の板状体側から前記ラインセンサカメラに向けて照明する照明手段と、前記照明手段により照明がなされている状態で前記ラインセンサカメラが前記貼り合せ板状体を走査する際に当該ラインセンサカメラから出力される映像信号を処理する処理ユニットとを有する貼り合せ板状体検査装置を用い、前記接着剤中の気泡についての検査を行う貼り合せ板状体検査方法であって、前記処理ユニットが前記ラインセンサカメラからの映像信号に基づいて画素単位の濃淡値からなる検査画像情報を生成する検査画像情報生成ステップを有し、前記照明手段及び前記ラインセンサカメラの光学的条件が、前記画素単位の濃淡値からなる前記検査画像情報にて表される検査画像において気泡部分が明背景中に暗リングとして表れるように調整されており、前記処理ユニットが、更に、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の距離に基づいて気泡のサイズを表す気泡サイズ情報を検査結果情報として生成する気泡サイズ情報生成ステップを有する構成となる。
【発明の効果】
【0008】
これら本発明に係る貼り合せ板状体検査装置及び方法によれば、透光性を有する2つの板状体を接着する接着剤中に存在する多くの気泡について、精度良くそのサイズを表し得る情報を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】貼り合せ板状体の一例であるセンサパネルアッセンブリの構造を示す断面図である。
【図1B】貼り合せ板状体の一例であるセンサパネルアッセンブリの構造を示す平面図である。
【図1C】図1A及び図1Bに示すセンサパネルアッセンブリと液晶パネルアッセンブリとを接着剤にて貼り合せた構造のタッチパネル式の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。
【図2】センサパネルアッセンブリの断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図3A】本発明の実施の一形態に係る貼り合せ板状体検査装置(センサパネルアッセンブリ検査装置)の側方から見た基本的な構成を示す図である。
【図3B】本発明の実施の一形態に係る貼り合せ板状体検査装置(センサパネルアッセンブリ検査装置)の上方から見た基本的な構成を示す図である。
【図4A】ラインセンサカメラと照明ユニットとの関係を示す図(その1)である。
【図4B】ラインセンサカメラと照明ユニットとの関係を示す図(その2)である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る貼り合せ板状体検査装置(センサパネルアッセンブリ検査装置)の処理系の基本構成を示す図である。
【図6】気泡サイズ情報の生成に係る処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】センサパネルアッセンブリ中を進む照明ユニットからの照明光と該照明光の反射板での反射光の状態(その1)を示す図である。
【図8】センサパネルアッセンブリ中を進む照明ユニットからの照明光と該照明光の反射板での反射光の状態(その2)を示す図である。
【図9】センサパネルアッセンブリ中を進む照明ユニットからの照明光と該照明光の反射板での反射光の状態(その3)を示す図である。
【図10】気泡部分(暗リング)を含む検査画像の一例を示す図である。
【図11A】検査画像に含まれる気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係(その1)を示す図である。
【図11B】検査画像に含まれる気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係(その2)を示す図である。
【図11C】検査画像に含まれる気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係(その3)を示す図である。
【図12】接着剤中においてラインセンサカメラのフォーカス位置にある気泡、及びフォーカス位置の前後にある気泡の例を示す断面図である。
【図13A】ラインセンサカメラのフォーカス位置の手前にある気泡に対応した検査画像の気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係を示す図である。
【図13B】ラインセンサカメラのフォーカス位置にある気泡に対応した検査画像の気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係を示す図である。
【図13C】ラインセンサカメラのフォーカス位置より後にある気泡に対応した検査画像の気泡部分を表す暗リングと、該暗リングを横切る方向(主走査方向)の濃淡値プロファイルとの関係を示す図である。
【図14】気泡部分を表す暗リングを横切る主走査方向の濃淡値プロファイルから求めた気泡サイズと、該暗リングを横切る副走査方向の濃淡値プロファイルから求めた気泡サイズとの関係を示す相関図である。
【図15】検査画像における気泡部分に対応した暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の前記検査画像上での距離を測る方法の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0011】
検査対象となる貼り合せ板状体の一例について図1A〜図1Cを参照して説明する。この例は、タッチパネル式の液晶表示パネルに使用されるセンサパネルアッセンブリである。なお、図1Aは、センサパネルアッセンブリ10の構造を示す断面図であり、図1Bは、センサパネルアッセンブリ10の構造を示す平面図であり、図1Cは、センサパネルアッセンブリ10と液晶パネルアッセンブリ20とを接着剤にて貼り合せた構造のタッチパネル式の液晶表示パネルの構造を示す断面図である。
【0012】
図1A及び図1Bにおいて、このセンサパネルアッセンブリ10は、センサ素子やグリッド等の回路部品が配列形成されたセンサパネル11(板状体)とカバーガラス12(板状体)とが当該センサパネル11の全面に塗布された透光性を有する接着剤13(レジン)によって貼り合わされた構造となっている。センサパネル11は、ガラス基板上に回路部品が形成された構造となり、全体的に透光性を有する透光領域(ただし、回路部品の部分は不透光)となっている。また、カバーガラス12は、周辺部が所定の幅の不透光領域12b(黒色領域)となっており、その内側の領域が透光性を有する透光領域12aとなっている。
【0013】
このような構造のセンサパネルアッセンブリ10は、図1Cに示すように、液晶パネルアッセンブリ20(液晶パネル、色フィルタ、偏光板等で構成される)に透光性を有する接着剤15によって接着されている。このように形成されたタッチパネル式の液晶表示パネルでは、液晶パネルアッセンブリ20によって画像表示がなされるとともに、指でタッチされたカバーガラス12上の位置に対応するセンサパネル11上のセンサ素子から信号が出力されるようになっている。そして、このセンサパネル11の各センサ素子から出力される信号によって液晶パネルアッセンブリ20による画像表示を制御することができる。
【0014】
上述したような構造のセンサパネルアッセンブリ10(貼り合せ板状体)を製造する過程で、例えば、図2に示すように、接着剤13内に気泡BLが発生してしまうことがある。このように接着剤13中に生じた気泡BLについての検査装置、即ち、センサパネルアッセンブリ検査装置は、例えば、図3A及び図3Bに示すように構成される。なお、図3Aは、センサパネルアッセンブリ検査装置の側方から見た基本的な構成を示し、図3Bは、センサパネルアッセンブリ検査装置の上方から見た基本的な構成を示している。
【0015】
図3A及び図3Bにおいて、このセンサパネルアッセンブリ検査装置は、ラインセンサカメラ50、照明ユニット51、反射板52(照明手段)、及び移動機構60を有している。移動機構60は、センサパネル11を上方に、カバーガラス12を下方にそれぞれ向けて移動経路上にセットされたセンサパネルアッセンブリ10を所定の速度にて直線移動させる。ラインセンサカメラ50は、例えばCCD素子列にて構成されたラインセンサ50a及びレンズ群(視野を広げるための引き延ばしレンズを含み得る)等の光学系(図示略)を含み、移動経路上のセンサパネルアッセンブリ10のセンサパネル11に対向するように固定配置されている。そして、ラインセンサカメラ50の姿勢が、ラインセンサ50aの延びる方向がセンサパネルアッセンブリ10の移動方向Aを横切り(例えば、移動方向Aと直交し)、かつ、その光軸AOPT1がセンサパネルアッセンブリ10(センサパネル11)の表面に直交するように調整されている。反射板52は、入射光を乱反射するように加工された反射面を有しており、移動経路上のセンサパネルアッセンブリ10の近傍で、その反射面がセンサパネルアッセンブリ10のカバーガラス12に対向するように固定配置されている。このように配置された反射板52(反射面)での反射光(照明光)により、センサパネルアッセンブリ10のカバーガラス12側からラインセンサカメラ50に向けて照明がなされるようになる。
【0016】
照明ユニット51は、移動経路上のセンサパネルアッセンブリ10の移動方向Aにおけるラインセンサカメラ50の下流側、即ち、後述するラインセンサカメラ50の走査方向Bにおける当該ラインセンサカメラ50の上流側に、センサパネル11に対向するように配置されている。照明ユニット51の姿勢は、センサパネルアッセンブリ10の斜め上方から、具体的には、センサパネルアッセンブリ10(センサパネル11)の表面の法線方向に対してその光軸AOPT2が所定角度αとなる方向からラインセンサカメラ50の光軸AOPT1を横切ることなくセンサパネルアッセンブリ10の表面を照明するように調整されている。そして、照明ユニット51は、図4A及び図4Bに示すように、センサパネルアッセンブリ10の表面におけるラインセンサカメラ50の撮影ラインLcからセンサパネルアッセンブリ10の移動方向Aの下流側(ラインセンサカメラ50の走査方向Bの上流側)に所定距離だけ離れて当該撮影ラインLcに沿った方向に延びる所定領域(以下、照明領域という)Eを照明する。照明ユニット51によるセンサパネルアッセンブリ10の表面での前記照明領域Eの前記センサパネルアッセンブリ10の移動方向Aに直交する方向における中央に位置する照明ラインLとラインセンサカメラ50のセンサパネルアッセンブリ10の表面での前記撮影ラインLcとが所定の間隔に維持され、前記照明領域Eはラインセンサカメラ50の前記撮影領域Eに重なることはない(含まれない)。
【0017】
前述したような構造のセンサパネルアッセンブリ検査装置では、移動機構60によりセンサパネルアッセンブリ10が移動経路上を方向Aに移動することにより、ラインセンサカメラ50と照明ユニット51との相対的な位置関係が維持されつつラインセンサカメラ50が前記移動方向Aと逆方向Bにセンサパネルアッセンブリ10を光学的に走査する。この走査によりラインセンサカメラ50によるセンサパネルアッセンブリ10の撮影がなされる。なお、ラインセンサ50aの長さの制約から、ラインセンサカメラ50の一回の方向Bへの走査によってセンサパネルアッセンブリ10の全面を走査することができない場合は、撮影領域Eを走査方向Bと直交する方向にステップ的に移動させつつ、複数回走査することによって、センサパネルアッセンブリ10の全面についての撮影がなされる。
【0018】
センサパネルアッセンブリ検査装置の処理系は、図5に示すように構成される。
【0019】
図5において、ラインセンサカメラ50、表示ユニット71及び操作ユニット72が処理ユニット70に接続されている。また、処理ユニット70は、移動機構60によるセンサパネルアッセンブリ10の移動に同期してセンサパネルアッセンブリ10を光学的に走査するラインセンサカメラ50からの映像信号に基づいてセンサパネルアッセンブリ10の画像(検査画像)を表す検査画像情報を生成する。つまり、処理ユニット70は、ラインセンサカメラ50からの映像信号に基づいて検査画像情報を生成する検査画像情報生成手段を有する。そして、処理ユニット70は、前記検査画像情報に基づいてセンサパネルアッセンブリ10の検査画像を表示ユニット71に表示させる。この検査画像には、センサパネル11の回路部品やセンサパネルアッセンブリ10の接着剤13中の異物、更に、接着剤13の縁端部とともに、後述するように接着剤13中の気泡が現れ得る。なお、処理ユニット70は、操作ユニット72の操作に応じた各種指示に係る情報を取得するとともに、前記検査画像から各種情報(気泡や異物のサイズ、接着剤13の縁端部の位置等)を生成し、それを検査結果情報として表示ユニット71に表示させることができる。
【0020】
処理ユニット70は、図6に示す手順に従って、センサパネルアッセンブリ10の接着剤13中に存在する気泡のサイズを検出するための処理を実行する。
【0021】
図6において、処理ユニット11は、照明ユニット51からの照明がなされている状態で、移動機構60によってセンサパネルアッセンブリ10を移動させて、ランセンサカメラ50がセンサパネルアッセンブリ10を光学的に走査するよう制御する(S11)。その過程で、ラインセンサカメラ50の撮影領域Eがカバーガラス12の透光領域12aに対応する部分を移動する際には、センサパネル11の表面に所定角度αをもって斜めに入射する(図3A参照)照明ユニット51からの照明光RL1が、例えば、図7〜図9に示すように、センサパネル11(透光領域)、接着剤13及びカバーガラス12(透光領域12a)内を屈折しつつ通過して反射板52に達する。そして、その照明光RL1が反射板52で乱反射してその反射光の一部が照明光RL2としてセンサパネルアッセンブリ10のカバーガラス12(透光領域12a)側からラインセンサカメラ50に向けて進む。このように、ラインセンサカメラ50は、照明ユニット51によるセンサパネル11側からの照明(照明光RL1)と反射板52によるカバーガラス12側からの照明(照明光RL2)とがなされている状態で、センサパネルアッセンブリ10を走査する。
【0022】
前記走査の過程で、反射板52からの前記照明光RL2(反射光)は、例えば、図7に示すように、センサパネルアッセンブリ10における接着剤13の気泡BLの無い部分を進むとそのままセンサパネル11を通過してラインセンサカメラ50に入射する。反射板52による前記照明光RL2が、例えば、図8に示すように、接着剤13中の気泡BLの外表部を通ると、その照明光RL2は、気泡BLの外表部での屈折や散乱(例えば、ミー散乱)によってラインセンサカメラ50に十分に入射しない。照明光RL2が、例えば、図9に示すように、気泡BLの中央部を通ると、その照明光RL2は、散乱(例えば、ブリルアン散乱)しつつラインセンサカメラ50に入射し得る。
【0023】
図6に戻って、処理ユニット70(処理ユニット70が有する検査画像情報生成手段)は、上述したように、反射板52からの照明光RL2により照明がなされている状態でラインセンサカメラ50がセンサパネルアッセンブリ10を走査する際に当該ラインセンサカメラ50から出力される映像信号に基づいて画素(CCD素子に対応)単位の濃淡値(例えば、256階調)からなる検査画像情報を生成する(S12)。反射板52からの照明光RL2が図7〜図9に示すように接着剤13中の気泡BLの有無によって異なった挙動を示すことから、前記検査画像情報にて表される検査画像Iでは、例えば、図10に示すように、各気泡部分IBL1、IBL2、IBL3のそれぞれが、明背景中に暗リングとして表れる。
【0024】
ランセンサカメラ50の焦点位置は、センサパネルアッセンブリ10の接着剤13の厚さ方向の略中央部に設定されるとともに、ラインセンサカメラ50の他の光学条件(センサパネルアッセンブリ10に対する位置、絞り等)及び照明ユニット51及び反射板52の光学的な条件(センサパネルアッセンブリ10に対する位置、傾き、光量等)は、接着剤中の気泡BLが検査画像Iにおいて前述したように明背景中に暗リングとしてできるだけ明確に表れるように調整されている。
【0025】
処理ユニット70は、上述したように気泡部分が明背景中に暗リングとして表れ得る検査画像Iを表す検査画像情報(画素単位の濃淡値)を生成すると(S12)、得られた検査画像情報から気泡部分を含む検査領域(例えば、矩形領域)を抽出する(S13)。なお、この検査領域は、前記検査画像情報に基づいて表示ユニット71に表示される検査画像上においてユーザが操作ユニット72を用いて特定した領域に基づいて抽出することも、また、前述したような暗リングを含む領域を画像処理することにより抽出することもできる。
【0026】
処理ユニット70は、検査画像情報から抽出された検査領域に含まれる気泡部分を表す暗リングを、例えば、その最大径位置で横切る主走査方向の濃淡値プロファイルから、当該暗リングに対応した2つの暗部間の距離に基づいて当該気泡のサイズを表す第1気泡サイズ情報Dxを生成する(S14)。具体的には、図11A乃至図11Cに示すように、気泡部分IBLS、IBLM、IBLLを表す暗リングをその最大径位置で横切る主走査方向の濃淡値プロファイルPF、PF、PF(256階調の濃淡値プロファイル)から、当該暗リングの2つのボトム値に対応した画素位置PB1、PB2が検出される。そして、その画素位置PB1、PB2間の距離に基づいて第1気泡サイズ情報Dx、Dx、Dxが生成される。この場合、最も小さい気泡部分IBLS(図11A参照)から得られる第1気泡サイズ情報Dxが最も小さい値となり、最も大きい気泡部分IBLL(図11C参照)から得られる第1気泡サイズ情報Dxが最も大きい値となる。そして、最も小さい気泡部分IBLSより大きく、最も大きい気泡部分IBLLより小さい気泡部分IBLM(図11B参照)から得られる第1気泡サイズ情報DxがDxより大きくDxより小さい値となる。
【0027】
次に、処理ユニット70は、前述した主走査方向の場合と同様に、前記検査領域に含まれる気泡部分を表す暗リングをその最大径位置で横切る副走査方向の濃淡プロファイルから、当該暗リングの2つのボトム値に対応した画素位置間の距離に基づいて当該気泡のサイズを表す第2気泡サイズ情報Dyを生成する(S15)。そして、処理ユニット70は、前記第1気泡サイズ情報Dxと前記第2気泡サイズ情報Dyとの差が所定値Δ以下であるか否かを判定する(S16)。前記第1気泡サイズ情報Dxと前記第2気泡サイズ情報Dyとの差が所定値Δ以下であると(S16でYES)、処理ユニット70は、第1気泡サイズ情報Dxを気泡のサイズについての検査結果情報Dとして表示ユニット71に表示(出力)させる。一方、前記第1気泡サイズ情報Dxと前記第2気泡サイズ情報Dyとの差が所定位置Δを越えている場合(S16でNO)、処理ユニット70は、前記第1気泡サイズ情報Dxと前記第2気泡サイズ情報Dyとの平均値情報((Dx+Dy)/2)を気泡のサイズについての検査結果情報として表示ユニット71に表示(出力)させる。つまり、処理ユニット70は、気泡のサイズを表す気泡サイズ情報を検査結果情報として生成する気泡サイズ情報生成手段を有する。
【0028】
処理ユニット70は、前述した処理(S13〜S17、またはS13〜S16、S18)を抽出した各検査画像領域について実行する(S19)。そして、全ての検査画像領域について処理を終えると(S19でYES)、処理ユニット70は、気泡のサイズ検出に係る処理を終了する。
【0029】
ところで、ラインセンサカメラ50の焦点位置は、前述したように、センサパネルアッセンブリ10の接着剤13の厚さ方向の略中央部に設定されている。しかし、接着剤13中には、例えば、図12に示すように、焦点位置SFOCUS上に位置するオン・フォーカス状態の気泡BLONだけでなく、焦点位置SFOCUSよりラインセンサカメラ50に近づいた位置にあるイン・フォーカス状態の気泡BLINや焦点位置SFOCUSよりラインセンサカメラ50から遠ざかった位置にあるアウト・フォーカス状態の気泡BLOUTも存在し得る。このような場合、焦点位置SFOCUSにない気泡BLIN、BLOUTを鮮明に撮影することができない。イン・フォーカス状態の気泡BLINは、例えば、図13Bに示すオン・フォーカス状態の気泡BLON(暗リングIBLON)に比べて、例えば、図13Aに示すように、検査画像上において細い暗リングIBLINとして表れ得る。また、アウト・フォーカス状態の気泡BLOUTについては、前記オン・フォーカス状態の気泡BLON(暗リングIBLON)に比べて、例えば、図13Cに示すように、検査画像上においてうすくボケた暗リングIBLOUTとして表れ得る。
【0030】
このように、気泡の接着剤13中における厚さ方向の位置に応じて検査画像中の気泡部分の濃淡の状態は異なるが、いずれにしても、図13A乃至図13Cに示すように、その気泡部分は、暗リングとして表れ得る。このように、暗リングとして表れ得る限りは、前記イン・フォーカス状態、オン・フォーカス状態及びアウト・フォーカス状態のどのような気泡BLIN、BLON、BLOUTであっても、前述した処理(S13〜S17、またはS13〜S16、S18)に従って、図13A乃至図13Cに示すように、気泡部分IBLIN、IBLON、IBLOUTを表す暗リングをその最大径位置で横切る主走査方向の濃淡値プロファイルPFIN、PFON、PFOUTから、当該暗リングの2つのボトム値に対応した画素位置PB1、PB2が検出される。そして、その画素位置PB1、PB2間の距離に基づいて第1気泡サイズ情報DxIN、DxON、DxOUTが生成される。また、同様にして、暗リングをその最大径位置で横切る副走査方向の濃淡プロファイルから、第2気泡サイズ情報が生成される。
【0031】
上述したような検査装置によれば、センサパネル11とカバーガラス12とが接着剤13にて貼り合わされてなるセンサパネルアッセンブリ10を走査するラインセンサカメラ50からの映像信号に基づいて検査画像情報が生成され、その検査画像情報にて表される検査画像において気泡部分として表れる暗リングを横切る主走査方向(副走査方向)の濃淡プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部(ボトム値位置)間の検査画像上での距離に基づいて気泡のサイズを表す第1気泡サイズ情報Dx(第2気泡サイズ情報Dy)が生成される。これにより、ラインセンサカメラ50の焦点位置SFOCUSにある気泡BLONは勿論、その焦点位置SFOCUSにない種々の気泡BLIN、BLOUTであっても、ラインセンサカメラ50の光学的条件(例えば、焦点位置)を変えることなく、精度良くそのサイズを表し得る情報を得ることができるようになる。
【0032】
また、暗リングをその最大径位置で横切る主走査方向の濃淡プロファイルから得られる第1気泡サイズ情報Dxと当該リングをその最大径位置で横切る副走査方向の濃淡プロファイルから得られる第2気泡サイズ情報Dyとから、気泡のサイズを表し得る情報を生成しているので、気泡のサイズを精度良く表し得る情報を得ることができる。
【0033】
なお、上記検査装置においては、各大きさの気泡に対して、例えば、図14に示すように、主走査方向の濃淡値プロファイルから得られる第1気泡サイズ情報Dxと副走査方向の濃淡値プロファイルから得られる第2気泡サイズ情報Dyとが略等しくなるように、ラインセンサカメラ50の姿勢や位置、照明ユニット51及び反射板52の傾きや位置等を調整することができる。このようにすることによって、第1気泡サイズ情報Dxと第2気泡サイズ情報Dyとの平均値情報(S18参照)を用いることなく、気泡のサイズを比較的高い精度で検査することができるようになる。
【0034】
具体的には、例えば、ラインセンサカメラ50の姿勢や位置を、ラインセンサ50aの延びる方向がセンサパネルアッセンブリ10の移動方向Aを横切り(例えば、移動方向Aと直交し)、かつ、その光軸AOPT1がセンサパネルアッセンブリ10(センサパネル11)の表面と反射板52に直交するように精度よく調整し、照明ユニット51からの照明光RL1とラインセンサカメラ50の光軸AOPT1とが、反射板52の表面で精度良く交差する(図7〜図9参照)ように調整すればよい。このような調整により、例えば、図9に示すように、照明光RL1が反射板52の表面で乱反射し、その反射光の一部である照明光RL2が、ラインセンサカメラ50の光軸AOPT1に沿って進んで気泡BLを真下から照明し、ラインセンサカメラ50は気泡BLの真下から当該気泡BLを通過した照明光RL2を受光するようになる。その結果、ラインセンサカメラ50から出力される映像信号に基づいて生成された検査画像情報において、気泡BLの2方向(主走査方向、副走査方向)の径は略等しくなり得る。これは、気泡BLを完全な球体とみなした場合は勿論のことであるが、多少いびつな形状の気泡BLであっても、その気泡BLが斜め方向から照射される場合に比べて、第1気泡サイズ情報Dxと第2気泡サイズ情報Dyとの差が小さくなり、それらの差が所定値Δ以下になる確率が高くなる。その結果、第1気泡サイズ情報Dxと第2気泡サイズ情報Dyとの平均値情報を用いることなく、気泡のサイズを比較的高い精度で検査することができる確率が高くなる。
【0035】
また、ラインセンサカメラ50の姿勢や位置、照明ユニット51及び反射板52の傾きや位置等を調整する際に、予め球体であると分かっている気泡の存在するセンサパネルアッセンブリ10(貼り合せ基板)を用い、得られる前記第1気泡サイズ情報Dxと前記第2気泡サイズ情報Dyとが略等しければ、精度の良い前記調整がなされたと判断することができる。
【0036】
前述した例では、照明ユニット51からの光を反射する反射板52を照明手段としてカバーガラス12側からセンサパネル11に対向するラインセンサカメラ50に向けて照明がなされているが、照明ユニットをカバーガラス12に対向するように配置し、その照明ユニットが直接カバーガラス12側からラインセンサカメラ50に向けて照明するようにしてもよい。
【0037】
また、暗リングをその最大径位置で横切る主走査方向や副走査方向の濃淡プロファイルから気泡サイズ情報(第1気泡サイズ情報、第2気泡サイズ情報)を得るようにしているが、これに限られず、暗リングを横切る任意の方向の濃淡プロファイルから気泡サイズ情報を得ることも、また、最大径位置以外の所定位置にて横切る方向の濃淡プロファイルから気泡サイズ情報を得ることもできる。
【0038】
更に、前記暗リングの2つのボトム値に対応した画素位置PB1、PB2間の距離が、当該暗リングに対応した2つの暗部間の距離として検出されているが、これに限定されない。例えば、図15に示すように、暗リングをその最大径位置で横切る方向の濃淡プロファイルPFから、当該暗リングの2つの暗部の幅W1、W2を検出し、各幅W1、W2の中心位置P1、P2間の距離を、当該暗リングに対応した2つの暗部間の距離として検出することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 センサパネルアッセンブリ(貼り合せ板状体)
11 センサパネル(板状体)
12 カバーガラス(板状体)
12a 透光領域
12b 不透光領域
13、15 接着剤
20 液晶パネルアッセンブリ
50 ラインセンサカメラ
50a ラインセンサ
51 照明ユニット(照明手段)
52 反射板(照明手段)
60 移動機構
70 処理ユニット
71 表示ユニット
72 操作ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する2枚の板状体が接着剤にて貼り合わされてなる貼り合せ板状体を撮影して得られる検査画像情報に基づいて前記接着剤中の気泡についての検査を行う貼り合せ板状体検査装置であって、
前記貼り合せ板状体の一方の板状体に対向して配置されるラインセンサカメラと、
前記貼り合せ板状体の他方の板状体側から前記ラインセンサカメラに向けて照明する照明手段と、
前記照明手段により照明がなされている状態で前記ラインセンサカメラが前記貼り合せ板状体を走査する際に当該ラインセンサカメラから出力される映像信号を処理する処理ユニットとを有し、
前記処理ユニットは、前記ラインセンサカメラからの映像信号に基づいて画素単位の濃淡値からなる検査画像情報を生成する検査画像情報生成手段を有し、
前記照明手段及び前記ラインセンサカメラの光学的条件が、前記画素単位の濃淡値からなる前記検査画像情報にて表される検査画像において前記気泡部分が明背景中に暗リングとして表れるように調整され、
前記処理ユニットは、更に、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の前記検査画像上での距離に基づいて気泡のサイズを表す気泡サイズ情報を検査結果情報として生成する気泡サイズ情報生成手段を有する貼り合せ板状体検査装置。
【請求項2】
前記気泡サイズ情報生成手段は、前記濃淡値プロファイルから得られる前記暗リングに対応した2つの暗部におけるボトム値に対応する画素位置間の距離を前記2つの暗部間の距離として用いる請求項1記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項3】
前記気泡サイズ情報生成手段は、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る前記ラインセンサカメラの主走査方向の濃淡値プロファイルから前記気泡サイズ情報を生成する請求項1または2記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項4】
前記気泡サイズ情報生成手段は、前記検査結果情報から得られる前記暗リングを横切る前記ラインセンサカメラの副走査方向の濃淡値プロファイルから前記気泡サイズ情報を生成する請求項1または2記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項5】
前記気泡サイズ情報生成手段は、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る複数の方向の濃淡値プロファイルから前記気泡サイズ情報を生成する請求項1または2記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項6】
前記暗リングを横切る複数の方向は、前記ラインセンサカメラの主走査方向及び副走査方向を含む請求項5記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項7】
前記気泡サイズ情報生成手段は、前記複数の方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の前記検査画像上での複数の距離を取得し、該複数の距離に基づいて前記気泡サイズ情報を生成する請求項5または6記載の貼り合せ板状体検査装置。
【請求項8】
透光性を有する2枚の板状体が接着剤にて貼り合わされてなる貼り合せ板状体の一方の板状体に対向して配置されるラインセンサカメラと、前記貼り合せ板状体の他方の板状体側から前記ラインセンサカメラに向けて照明する照明手段と、前記照明手段により照明がなされている状態で前記ラインセンサカメラが前記貼り合せ板状体を走査する際に当該ラインセンサカメラから出力される映像信号を処理する処理ユニットとを有する貼り合せ板状体検査装置を用い、前記接着剤中の気泡についての検査を行う貼り合せ板状体検査方法であって、
前記処理ユニットが前記ラインセンサカメラからの映像信号に基づいて画素単位の濃淡値からなる検査画像情報を生成する検査画像情報生成ステップを有し、
前記照明手段及び前記ラインセンサカメラの光学的条件が、前記画素単位の濃淡値からなる前記検査画像情報にて表される検査画像において前記気泡部分が明背景中に暗リングとして表れるように調整されており、
前記処理ユニットが、更に、前記検査画像情報から得られる前記暗リングを横切る方向の濃淡値プロファイルから、前記暗リングに対応した2つの暗部間の距離に基づいて気泡のサイズを表す気泡サイズ情報を検査結果情報として生成する気泡サイズ情報生成ステップを有す貼り合せ板状体検査方法。
【請求項9】
前記気泡サイズ情報生成ステップは、前記濃淡値プロファイルから得られる前記暗リングに対応した2つの暗部におけるボトム値に対応する画素位置間の距離を前記2つの暗部間の距離として用いる請求項8記載の貼り合せ板体検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−33028(P2013−33028A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129946(P2012−129946)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】