説明

貼付剤用支持体、及び、貼付剤

【課題】へたりがなく、高い伸縮性を有する貼付剤用支持体でありながら、衣類等への色の転写が防止された着色された貼付剤用支持体を提供する。
【解決手段】通気性と柔軟性とを有し、着色された貼付剤用支持体において、繊維からなる支持体層の少なくとも片方の面全体に、目視による識別が不能な大きさの着色部が多数設けられているとともに、該着色部同士が非着色部によって隔てられ、かつ、前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に、ゴム成分が部分的に塗布されてなるゴム成分塗布部が多数設けられている貼付剤用支持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効成分を有する粘着性薬剤からなる層が支持体層によって支持されてなる貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体層の片面に経皮消炎鎮痛剤や湿布剤(温湿布や冷湿布)などの薬効成分を含む粘着性組成物からなる粘着性薬剤層を設けた貼付剤は、家庭薬なども含め広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
これら貼付剤の多くは、皮膚に貼り付けたときに違和感を与えないよう、たとえば、うすだいだい色(ペールオレンジあるいは肌色とも云う)等に、ビーム染色によって染色された支持体を用いてきた。図2にはこのような従来の貼付剤の断面について、モデル的に示す。
【0004】
図中符号1’は通気性と柔軟性とを有し、染色された貼付剤用支持体を示し、その一方の面に粘着性薬剤からなる粘着性薬剤層2、及び、離型フィルム3がこの順に積層されており、離型フィルム3は使用に際しては粘着性薬剤層2から剥がす。
【0005】
一方、貼付剤は皮膚に貼られて用いられるため、その支持体は、編織布または不織布などの通気性と柔軟性とを有する素材からなり、かつ、肘、膝等への貼付にも適応できるよう、柔軟性においては、伸縮性も重要なファクターとして求められていた。
【0006】
ここで、支持体としては、ポリエステルの捲縮糸からなり、水流交絡法により製造された不織布が、安価で、かつ、薄くても充分な強度と、通気性及び柔軟性を備えるものとして広く用いられるようになったが、貼付剤として、例えば肘、膝に貼付したときの皮膚の引きつり感をより軽減できるよう、伸縮性の一段の向上が求められていた。
【0007】
ここで、上記のようなビーム染色による着色では染色の過程で不織布の伸縮性が大きく損なわれるとともに、いわゆる”へたり”が出て、風合いや触感も大きく低下してしまう。
【0008】
ここで、本出願人によって提案された、不織布の薬剤層形成面とは反対面に不連続にインキの点を印刷するグラビアコート法により、優れた伸縮性を有し風合いが保たれた貼付剤が得られた(引用文献2)。
【0009】
しかし、この貼付剤を実際に貼付剤として使用した場合、貼付剤が衣類にこすれたときに衣服へ色の転写が発生してしまうことが判った。ここで、不織布の印刷側面を覆うような保護層を設けた場合、不織布本来の伸縮性や風合いが全く損なわれる。
【0010】
そのために、へたりが生じ、伸縮性が犠牲となるが、色の衣服への転写は起こらない従来の染色法が、依然として貼付剤用支持体として使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−119859号公報
【特許文献2】特開2007−332100公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記した従来の問題点を改善する、すなわち、へたりの発生がなく、高い伸縮性を有する貼付剤用支持体でありながら、衣類等への色の転写が防止された着色された貼付剤用支持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、本発明者は、印刷された不織布から衣服等に色が転写するメカニズムを検討したところ、不織布の表面を摩擦した際、不織布を構成する糸の配列が崩れ、かつ、摩擦に伴って着色部分がもまれることにより、糸の表面に付着したインキの固形分が脱落し、このインキからなる固形分が転写先の衣類等に再付着して色が転写することがわかった。そこで色の転写を防ぐには、不織布を構成する糸が摩擦によりもまれることを防ぐ処理が有効であることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の貼付剤用支持体は前記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、通気性と柔軟性とを有し、着色された貼付剤用支持体において、繊維からなる支持体層の少なくとも片方の面全体に、目視による識別が不能な大きさの着色部が多数設けられているとともに、該着色部同士が非着色部によって隔てられ、かつ、前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に、ゴム成分が部分的に塗布されてなるゴム成分塗布部が多数設けられていることを特徴とする貼付剤用支持体である。
【0015】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の貼付剤用支持体において、前記ゴム成分塗布部が、着色部の上から塗布されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の貼付剤用支持体において、前記支持体層が、不織布であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項4に記載の通り、請求項3の貼付剤用支持体に記載の貼付剤用支持体において、前記不織布が、捲縮糸からなり、かつ、水流交絡法により製造されたものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体において、前記着色部が設けられた面における前記着色部が、前記支持体層の前記着色部が設けられている面に対し面積比で40%以下となるように設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体において、前記着色部の大きさが、100μm以下であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体において、前記着色部が設けられた面における前記ゴム成分塗布部が、前記支持体層の前記着色部が設けられている面に対し面積比で20%以下となるように設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の貼付剤用支持体は請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体において、前記ゴム成分塗布部の大きさが、50μm以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明の貼付剤は、請求項9に記載の通り、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体の一方の面に粘着性薬剤層が形成されていることを特徴とする貼付剤である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の貼付剤用支持体によれば、ゴム成分が繊維からなる支持体層の着色部が設けられている面に塗布されているために支持体層を構成する糸(繊維)同士の接点が固定されているために、摩擦による糸の乱れを防ぐことができ、このように糸の乱れが防止されているために、不織布と衣類等の摩擦の力は不織布の弾力性に吸収され、インキ固形分の脱落は微量に抑えられ、その結果、衣服への色写りが実用上問題ないレベルとなる。
【0024】
請求項2に記載の貼付剤用支持体によれば、上記効果に加え、着色部が、部分的に塗布されたゴム成分により保護されるためにより効果的に衣服への色移りが防止される。
【0025】
また、請求項3に記載の貼付剤用支持体によれば、低コストで薄手の貼付剤用支持体とすることができる。
【0026】
また、請求項4に記載の貼付剤用支持体によれば、薄手でありながら、強度の高い貼付剤用支持体とすることができる。
【0027】
また、請求項5に記載の貼付剤用支持体によれば、前記着色部が、面積比で40%以下となるように設けられているため、より高い伸縮性が確保される。
【0028】
また、請求項6に記載の貼付剤用支持体によれば、着色部の大きさを確実に小さくすることができるので、より高い伸縮性が得られる。
【0029】
また、請求項7に記載の貼付剤用支持体によれば、より高い伸縮性が得られる。
【0030】
また、請求項8に記載の貼付剤用支持体によれば、確実により高い伸縮性が得られる。
【0031】
本発明の貼付剤用支持体によれば、着色による風合いや触感の低下がなく、従来と比べ高い伸縮性が確保された支持体を用いることができ、かつ、衣服への色写りが実用上問題ないレベルとなる。さらにゴム成分が使用されていることにより、支持体層自体の柔軟性が損なわれることがないので、例えば膝や肘などに用いた場合であっても肌の引きつり感が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る貼付剤の1例のモデル断面図である。
【図2】従来の貼付剤のモデル断面図である。
【図3】実施例の貼付剤用支持体B1相当のゴム成分塗布部形成面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は上述のように、通気性と柔軟性とを有し、着色された貼付剤用支持体において、繊維からなる支持体層の少なくとも片方の面全体に、目視による識別が不能な大きさの着色部が多数設けられているとともに、該着色部同士が非着色部によって隔てられ、かつ、前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に、ゴム成分が部分的に塗布されてなるゴム成分塗布部が多数設けられている貼付剤用支持体である。
【0034】
本発明において用いることができる支持体層用材料としては、従来から貼付剤用支持体用として用いられてきた編織布または不織布などの通気性と柔軟性を有する素材をそのまま用いることができる。
【0035】
しかし、そのような支持体層用材料のなかで、肘や膝等の関節部位に使用した場合の伸縮性能を考慮すると編物あるいは不織布からなることが好ましく、さらに肌に優しい風合、触感がえられることを考慮すると、捲縮繊維を水流交絡法により製造した不織布であることが最も好ましい。用いる繊維としては支持体層用材料として一般に用いられている繊維、例えばポリエステル等を用いる。
【0036】
本発明では、このような支持体層の少なくとも一方の面に、目視による識別が不能な大きさの着色部が多数設けられているとともに、該着色部同士が非着色部によって隔てられている貼付剤用支持体を用いる。ここで、着色部としては、貼付剤用支持体としての使用条件での、一般的な目視による識別が不能な大きさであることが必要で、通常は平均直径が100μm以下の大きさとし、このとき、貼付剤用支持体の伸縮性への影響は小さい。好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。このような着色部を設けることにより、貼付剤用支持体の柔軟性を低下させることなく貼付剤用支持体を着色することが可能となるとともに、外観において、従来の染色によって着色された貼付剤用支持体と違和感なく、用いることができる。
【0037】
このような着色部は、例えば、グラビア印刷法で、彫刻線数、版深、及び圧胴硬度と押し込み量を調整することにより、前記の着色部を得ることが可能である。
【0038】
すなわち、例えば彫刻線数が120線(25.4mm(1インチ)当たりのセル列の本数)や175線のグラビアロールを用いて、貼付剤用支持体に対してインクを用いて印刷を行うことで本発明における着色部を実現することができる。なお、貼付剤用支持体は上述のように例えば不織布であるため、構成する繊維による微妙な凹凸があり、そのため、予め検討を行って、適切な着色部の大きさが得られるように圧胴硬度と押し込み量を選択・設定する。
【0039】
このような、印刷という乾式方法により、温度履歴や強い応力履歴も殆どなしに着色され、かつ、印刷によりインクによる点状の着色部が形成されることにより、貼付剤用支持体の表面(ないし表面近く)が不連続に着色されるので、着色による影響はほとんど受けずに、貼付剤用支持体が本来有する風合、触感、通気性及び柔軟性、特に伸縮性が充分に維持される。
【0040】
貼付剤用支持体には、その一方の面に経皮消炎鎮痛剤や湿布剤(温湿布や冷湿布)などの薬効成分を含む粘着性組成物からなる粘着性薬剤層が設けられて貼付剤とされるため、前記着色部は、粘着性薬剤層が設けられない他方の面にのみ形成されれば通常は充分であるが、従来の染色による支持体層による貼付剤との違和感をなくす等、両方の面に着色部を形成しても良く、また、このとき、必要に応じて、支持体の目視される表裏の色が異なるように着色部を形成しても良い。
【0041】
着色部を形成するインクとしては、貼付剤の支持体の着色に適し、粘着性薬剤層の薬効成分を含む粘着性組成物の薬効を損なわないものを適宜選択して用いる。
【0042】
また、前記インクとしては、前記着色された貼付剤用支持体全体の色より暗色(同系列の色であって濃い色)のインクにより形成されていることが望ましい。すなわち、貼付剤用支持体として所望される色より暗色のインクを用いる。
【0043】
このように暗色のインクを用いることにより、着色部の大きさは必然的に上記のように小さくても充分に貼付剤用支持体を所望の色に着色することができ、かつ、着色部同士が非着色部によって隔てられているようになる。あるいは該着色部同士が、非着色部によって隔てられている状態で、かつ、貼付剤用支持体を所望の色に着色しようとすれば、所望の色より暗色のインクを用いることとなる。
【0044】
また、このとき、着色部が設けられた面における着色部が、面積比で40%以下となるように設けられていることが好ましく、30%以下となるように設けられていることがさらに好ましい。この着色部の面積は特開2007−332100公報に記載の方法で評価することができる。
【0045】
すなわち、着色部の大きさは、顕微鏡で観察して、300μm×300μmの範囲で顕微鏡写真をカラー撮影し、得られた写真を目視観察して、その範囲における個々の着色部(不定形)を、目視で同等面積の円へ変形しその直径を測って相加平均して算出する。また、上記範囲の総面積におけるこれら円の面積の総和の比を着色部が設けられた面における前記着色部の面積比として算出する。
【0046】
着色部が小さくなるとともに着色部同士が非着色部によって隔てられていれば、着色部による貼付剤用支持体への物性の影響はより小さくなり、貼付剤用支持体が本来有する風合、触感、通気性及び柔軟性、特に伸縮性がより多く維持される。ここで、例えば、うすだいだい色より暗色である、だいだい色や茶色のインクを用いて白色(無着色)の貼付剤用支持体の着色部を形成することで、うすだいだい色の着色がなされた貼付剤用支持体を得ることができる。
【0047】
さらに、本発明の貼付剤用支持体には、ゴム成分が前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に部分的に塗布されてなる、ゴム成分塗布部が多数設けられている。このように部分的に塗布されていることで、通気性、柔軟性及び伸縮性を損なうことなく、効果的にインキ固形分の脱落を防止できる。
このとき、ゴム成分の塗布後に、上記着色を行ってもよいが、着色後にゴム成分の塗布を行うことで、一部の着色部がゴム成分層により保護されるので、色の衣服への転写がより効果的に防止される。
【0048】
ゴム成分としては天然ゴム、合成ゴムから貼付剤分野に使用可能なものを1種以上選択する。ここで、ゴム成分として天然ゴムとポリイソブチレンとの両者を併せて使用すると繊維との密着性が高くなるので好ましい。
【0049】
また、上記ゴム成分を架橋する架橋剤を配合すると、さらに繊維との密着性が高くなるので好ましい。さらに、塗布に当たって適切な粘度となるようにn−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサンなどの溶媒を添加してゴム組成物としてもよい。なお、このような溶媒中n−ヘプタンは入手しやすいので好ましい。
【0050】
ゴム成分は支持体層の着色部が設けられている面全体に部分的に塗布されたゴム成分塗布部が多数設けられている。全面にゴム成分が塗布されている場合には、充分な柔軟性を得ることができないか、あるいは、柔軟性を確保する目的で塗布目付を低くした場合には充分なインキ固形分の脱落の防止効果が得られない。
【0051】
このような塗布は印刷により容易に行うことができる。さらに着色部形成と同様にグラビア印刷法で行うことができる。ゴム成分に架橋剤を配合したときには、塗布後、加熱などによって架橋反応を行わせるが、ゴム組成物中の溶媒を配合した場合には、このときの加熱により溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0052】
上記のゴム成分の塗布量としては、支持体層材料の通気性と柔軟性とが確保されるように、かつ、充分な効果が得られるように予め検討して調整するが、一般に塗布目付が0.1g/m以上で、2.0g/m以下の範囲である。ここでゴム成分の塗布量は坪量の変化から確認できる。
【0053】
さらにゴム成分塗布部が、支持体層の着色部が設けられている面に対し面積比で20%以下となるように設けられていることが好ましい。20%超であると充分な柔軟性と充分なインキ固形分の脱落の防止効果とを同時に得ることが難しくなる。
【0054】
さらに、ゴム成分塗布部の大きさとしては10μm以上50μm以下であることが好ましい。ここで、ゴム成分塗布部の面積や大きさは、実際にゴム成分を塗布する際の条件と同様の条件で、ただしゴム成分の重量1に対して0.1となるようたとえば緑色や青色などの上記着色部とは区別可能な色の染料を添加・混合して塗布を行い、その緑色に着色された部分を上記着色部同様に観察して測定し、その面積及び大きさをゴム成分塗布部の面積及び大きさとして用いる。
【0055】
このようにして得られた本発明の貼付剤用支持体には、粘着性薬剤層との密着性を向上させるためのアンカーコート層を設けても良い。
【0056】
このようにして得られた、本発明に係る貼付剤用支持体は従来の着色された貼付剤用支持体同様に用いることができる。すなわち、本発明に係る貼付剤用支持体の片面に、必要に応じてアンカーコート層を形成した後に、粘着薬剤層、離型フィルムを積層し、所定の大きさに裁断して貼付剤を得る。
【0057】
このようにして得られた本発明に係る貼付剤の一例を図1にモデル的に示す。図1中、符号1は通気性と柔軟性とを有する貼付剤用支持体からなる貼付剤用支持体層を示し、その一方の面(図中上面)には粘着性薬剤からなる粘着性薬剤層2、及び、離型フィルム3がこの順に積層されている。
【0058】
貼付剤用支持体層1の他方の面全体に、目視による識別が不能な大きさの着色部4が多数設けられているとともに、着色部4同士が非着色部1aによって隔てられ、かつ、前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に、ゴム成分が塗布されてなるゴム成分塗布部5が多数設けられている。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0060】
<貼付剤用支持体の作製>
ポリエステル製捲縮糸からなり、水流交絡法により製造された不織布(目付:80g/m)の両面にグラビア印刷で印刷を行った。インクは、サカタインクス社製インクXWS−400(ブラウン色)を用い、同社製W希釈剤を用いて希釈して使用濃度を4重量%とし、彫刻線数:ヘリオ175線にて印刷を行い、うす橙色に着色された貼付剤用支持体Aを得た。この着色部が設けられた面における着色部が、面積比で25%であり、また、着色部の大きさは20μmであった。
【0061】
次いで上記で印刷を行った面の内の一方の面(貼付剤として使用した際に皮膚側と反対側になる面)に天然ゴム、ポリイソブチレン、架橋剤、n−ヘプタンからなるゴム塗工液(固形分11重量%(天然ゴム:8重量%、ポリイソブチレン:3重量%、及び、架橋剤:0.4重量%))を彫刻線数ヘリオ175線のグラビアロールを用いたグラビアコート法にて天然ゴム及びポリイソブチレンのゴム成分が0.12g/m、0.8g/m、1.6g/m、あるいは、3.2g/mとなるように塗工液の濃度を調整して塗工し、それぞれ貼付剤用支持体B1、B2、B3、及び、B4を得た。
【0062】
また、これら貼付剤用支持体B1、B2、B3、及び、B4と同様にただし、ゴム成分の重量1に対して0.1となるよう緑色の染料を添加・混合して塗布を行い、その緑色に着色された部分を上記着色部同様に観察して測定し、その面積及び大きさを上記着色部同様に測定し、これらの測定結果をそれぞれ貼付剤用支持体B1、B2、B3、及び、B4におけるゴム成分塗布部の面積及び大きさとし、ゴム成分塗布部形成面全体におけるゴム成分塗布部の面積比を算出し、表2にその結果を示した。
【0063】
なお、このときの貼付剤用支持体B1相当のゴム成分塗布部形成面の顕微鏡写真を図3に示す。写真中、白線の楕円により囲まれた部分が、緑色が観察された部分であり、ゴム成分が部分的に塗布されてなるゴム成分塗布部が多数設けられていることが理解される。
【0064】
また、上記貼付剤用支持体Aの一方の面(貼付剤として使用した際に皮膚側と反対側になる面)にサカタインクス社製オーバーコート剤(ウレタン樹脂と溶剤とからなる)を彫刻線数ヘリオ175線のグラビアロールを用いたグラビアコート法にてウレタン樹脂が0.12g/mとなるよう塗工し、貼付剤用支持体Cを得た。
【0065】
また、上記貼付剤用支持体Aの一方の面(貼付剤として使用した際に皮膚側と反対側になる面)全面に上記オーバーコート剤を彫刻線数60線のグラビアロールを用いたグラビアコート法にてウレタン樹脂が4.5g/mとなるよう隙間なく(処理後に顕微鏡観察によって確認。)塗工し、貼付剤用支持体Dを得た。
【0066】
また、上記貼付剤用支持体Aの一方の面(貼付剤として使用した際に皮膚側と反対側になる面)全面に上記ゴム塗工液を彫刻線数60線のグラビアロールを用いたグラビアコート法にてゴム成分が4.5g/mとなるよう隙間なく塗工し、貼付剤用支持体Eを得た。
【0067】
さらに従来の染色法による貼付剤用支持体Fを準備した。
【0068】
色の転写の評価としてJlS L 0849の摩擦に対する染色堅ろう度試験方法による試験を行った。
【0069】
その結果、測定された貼付剤用支持体A〜Fの堅ろう度を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
また、貼付剤用支持体としての伸縮性の評価として、不織布製造時の流れ方向(タテ)の50%伸長時の応力によって評価した。
【0072】
サンプルとしては貼付剤用支持体を50mmX300mmの大きさとし(このときのサンプルの長辺方向が上記の不織布の流れ方向に一致)、定速伸張型引張試験機を用い、つかみ間隔200mm、引張り速度200mm/分で50%伸長時応力を測定した(繰り返し数n=3。平均値を算出した。)。
【0073】
その結果、測定された50%伸長時応力(平均値)を表1に併せて記載する。
【0074】
表1により本発明にかかる貼付剤用支持体は堅牢度が染色品と同レベルでありながら、50%伸長時応力が30N/cm以下と充分に低く、かつ、ゴムの塗工量が0.1g/m以上2g/m以下の範囲では、未塗装品とほぼ同レベルであることが判る。
【符号の説明】
【0075】
1 貼付剤用支持体層
1a 非着色部
2 粘着性薬剤層
3 離型フィルム3
4 目視による識別が不能な大きさの着色部
5 ゴム成分塗布部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性と柔軟性とを有し、着色された貼付剤用支持体において、繊維からなる支持体層の少なくとも片方の面全体に、目視による識別が不能な大きさの着色部が多数設けられているとともに、該着色部同士が非着色部によって隔てられ、かつ、前記支持体層の前記着色部が設けられている面全体に、ゴム成分が部分的に塗布されてなるゴム成分塗布部が多数設けられていることを特徴とする貼付剤用支持体。
【請求項2】
前記ゴム成分塗布部が、着色部の上から塗布されていることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤用支持体。
【請求項3】
前記支持体層が、不織布であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貼付剤用支持体。
【請求項4】
前記不織布が、捲縮糸からなり、かつ、水流交絡法により製造されたものであることを特徴とする請求項3の貼付剤用支持体に記載の貼付剤用支持体。
【請求項5】
前記着色部が設けられた面における前記着色部が、前記支持体層の前記着色部が設けられている面に対し面積比で40%以下となるように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項6】
前記着色部の大きさが、100μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項7】
前記着色部が設けられた面における前記ゴム成分塗布部が、前記支持体層の前記着色部が設けられている面に対し面積比で20%以下となるように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項8】
前記ゴム成分塗布部の大きさが、50μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体。
【請求項9】
前記ゴム成分の塗布量が0.1mg/m以上2mg/m以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の貼付剤用支持体の一方の面に粘着性薬剤層が形成されていることを特徴とする貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−241030(P2010−241030A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93790(P2009−93790)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(510127882)株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】