説明

貼付剤

本発明は、製造方法か簡易であり、かつ長期持続性を有し、さらに皮膚への付着性および追従性に優れたフェンタニル経皮外用貼付剤の提供を目的とする。そして、上記目的は、本発明の支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分であるフェンタニル、粘着基剤および粘着性付与樹脂を含み、該粘着基剤は、ポリイソブチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とからなり、該ポリイソブチレンの配合量は8〜15質量%であり、該ポリイソブチレンとスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との濃度比は、2:3〜3:2である、前記貼付剤によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、フェンタニルを2日以上の長期投与を可能ならしめる貼付剤に関する。具体的には、一定濃度のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)およびポリイソブチレン(PIB)を含有する粘着基剤に、さらにフェンタニルを含有せしめたことを特徴とする経皮吸収貼付剤に関する。
【背景技術】
従来のフェンタニル貼付剤としては、リザーバータイプのフェンタニル貼付剤が(例えば特許文献1参照)、そして薬物塩と有機酸塩とを含有するイオンペアを利用したフェンタニル貼付剤であって、SISおよびPIBを含有する混合粘着基剤が(例えば特許文献2及び3参照)それぞれ開示されている。
しかし、リザーバータイプの貼付剤は、▲1▼薬物貯蔵層に溶液または半固体として薬物を封入するため、その内容物の揮発および漏れが生じないように、精度の高い製造工程が要求されること、および▲2▼構造上薬物放出速度制御膜を必須とするため、製剤を構成するパーツ数が多くなることによって、製造方法が複雑にならざるを得ないという欠点を有している。
また、イオンペアタイプの貼付剤は、▲1▼安定なイオン対形成に多量の有機酸塩を添加する必要があるため、製造工程(粉砕、混合、成膜、乾燥)に対して条件の制限が多く、製造方法が複雑であること、および▲2▼薬物放出性または吸収性が高いため、薬物適用中の薬物の枯渇の進行が早く、1日を越える長期の薬効持続に適さないという欠点を有している。
【特許文献1】 特開昭61−37725号公報(第1〜10頁)
【特許文献2】 特開平10−45570号公報(第1〜10頁)
【特許文献3】 特開2000−44476号公報(第1〜8頁)
したがって、本発明は、製造方法が簡易であり、かつ長期持続性を有し、さらに皮膚への付着性および追従性に優れたフェンタニル経皮外用貼付剤を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、SISおよびPIBの配合量およびそれらの混合比を最適化することによって上記課題が解決されることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分であるフェンタニル、粘着基剤および粘着性付与樹脂を含み、該粘着基剤は、ポリイソブチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とからなり、該ポリイソブチレンの配合量は8〜15質量%であり、該ポリイソブチレンとスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との濃度比は、2:3〜3:2である、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、フェンタニルの濃度が、1〜6質量%である、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、ポリイソブチレンが、高分子量ポリイソブチレンおよび低分子量ポリイソブチレンからなる、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、高分子量ポリイソブチレンの平均分子量が、900,000〜2,500,000である、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、低分子量ポリイソブチレンの平均分子量が、30,000〜65,000である、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、粘着性付与樹脂が、脂環族飽和炭化水素樹脂である前記貼付剤に関する。
またさらに、本発明は、粘着性付与樹脂の配合量が、40〜50質量%である、前記貼付剤に関する。
さらにまた、本発明は、粘着層に、さらに経皮吸収促進剤を含む、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、経皮吸収促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、オレイルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上である、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、適用時に10〜75cmの面積を有する、前記貼付剤に関する。
前記のとおり、本発明のフェンタニル経皮外用貼付剤は、支持体上に粘着基剤を有し、該粘着基剤は、SISおよびPIBを、特定の濃度でほぼ1:1の比で混合せしめ、さらに粘着付与樹脂を含有せしめたことを特徴とする。かかる構成をとることによって、フェンタニルの長期間投与が可能となる。すなわち、本発明の貼付剤によれば、適用48〜72時間後においても、フェンタニルの血中濃度を1ng/ml以上に保つことができる(血中動態試験結果参照)。また、本発明の貼付剤においては、粘着剤の凝集および膏体残りがないため、長期間投与による患者の負担を軽減することができる。
さらに、本発明の貼付剤は、リザーバータイプ貼付剤のように薬物放出速度制御膜粘着層を必要とせず、また、イオンペアタイプ貼付剤より、製造工程(混合、成膜、乾燥)の条件を容易に設定可能であるため、従来のフェンタニル経皮外用貼付剤より簡便な製造方法によって製造することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の貼付剤(実施例2)を貼付した際の雌ウサギにおけるフェンタニルの血漿中濃度の推移を示す図である。
発明を実施するための形態
以下、本発明のフェンタニル経皮外用貼付剤についてさらに詳しく説明する。
本発明のフェンタニル経皮外用貼付剤における薬理活性物質は、フェンタニル自体であって、その塩は含まない。該フェンタニルは、粘着層に含有される。
なお、フェンタニルは、本発明の貼付剤の粘着層全体の重量に基づいて、1〜5質量%の量で配合することが好ましい。配合量を1質量%以上にすることによって、経皮外用貼付剤として充分な透過量を得ることが容易になり、6質量%を以下にすることによって、結晶析出による製剤自体の物性に対する悪影響を確実に排除することができる。
フェンタニルの配合量が1〜6%であれば、高い血中濃度を達成できるので好ましい。また、フェンタニルの配合量が1〜4質量%の場合、製剤物性及び付着性の面でも好ましく、特に2〜4質量%の場合は好ましい。
また、本発明の貼付剤の粘着層は、粘着基剤および粘着性付与樹脂を含む。
前記粘着基剤は、PIBおよびSISとからなる。PIBの配合量は8〜15質量%であり、好ましくは8〜13質量%であり、より好ましくは8〜10質量%である。PIB配合量を8質量%以上にすることによって十分な粘着性を得ることが可能になり、15質量%以下にすることによって、粘着基剤の凝集および膏体残りを避けることができる。
PIBが、高分子量PIBと低分子量PIBとを含むと、粘着剤としての機能を有するようになり粘着物性の面で好適である。
高分子量PIBの平均分子量は、好ましくは900,000〜2,500,000であり、さらに好ましくは900,000〜1,250,000である。
また、低分子量PIBの平均分子量は、好ましくは30,000〜65,000であるり、さらに好ましくは30,000〜53,000である。
粘着基剤には、前記の通りPIBに加えてSISを混合せしめるが、それらの濃度比は2:3〜3:2であり、好ましくは1:1である。該配合量でSISを混合せしめることによって、本発明の目的である長期投与に適した貼付剤の粘着力が得られる。
また、本発明の貼付剤の粘着層の他の必須成分である粘着性付与樹脂としては、脂環族飽和炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂系、石油樹脂系、ロジン系、ロジンエステル系、油溶性フェノール樹脂系を好ましい例として挙げることができる。脂環族飽和炭化水素樹脂は特に好ましく、水素化石油樹脂はさらに好ましい。水素化石油樹脂の例として、アルコンP−100(商品名:荒川化学製)が挙げられる。
粘着性付与樹脂の濃度は、粘着層全体の40〜50質量%が好ましく、より好ましくは42〜50質量%であり、さらに好ましくは44.5〜50質量%である。粘着性付与樹脂の濃度を50質量%以下にすることによって、膏体が硬くなりすぎて皮膚への付着性が低下することを防ぐことが容易になる。また、40質量%以上にすることによって、十分な粘着力を得ることが容易になり、長期投与に適したものになる。
なお、本発明の貼付剤の粘着基剤には、フェンタニルの経皮吸収促進剤を含んでもよい。該経皮吸収促進剤は、薬剤の経皮吸収促進作用が認められている1種または2種以上の化合物であればいずれのものでもよく、例えば炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステルまたはエーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステルまたはエーテルを挙げることができる。さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、アゾン(Azone)またはその誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ショ糖脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
好ましい例としては、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、HCO−60(硬化ヒマシ油)、1−[2−(デシルチオ)エチル]アザシクロペンタン−2−オン(以下、「ピロチオデカン」と略記する。)が挙げられるが、特に脂肪酸エステルおよび脂肪族アルコールは好ましい。中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタンおよびオレイルアルコールは好ましい。
前記吸収促進剤は、本発明の製剤の粘着層全体の重量に基づいて、0.01〜20質量%、さらに0.1〜10質量%、特に0.5〜3質量%の量で配合されることが好ましい。吸収促進剤の配合量を20質量%以下にすることによって、発赤、浮腫等の皮膚への刺激性を防ぐことが可能になり、0.01質量%以上において吸収促進剤の配合の効果が得られる。
さらに、本発明の貼付剤において、皮膚から発生した汗等の水性成分を吸収させるために、必要に応じて親水性ポリマーを配合することもできる。親水性ポリマーとしては、例えば、軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロール(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、デンプン誘導体(プルラン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、酢酸ビニル(VA)、カルボキシビニルポリマー(CVP)、エチル酢酸ビニル(EVA)、オイドラギット、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリイソブチレン無水マレイン酸共重合体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガント、カラヤゴム、ポリビニルメタクリレートが好ましく、特に軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(CMCNa、HPMC、HPC、MC)、オイドラギットが好ましい。親水性ポリマーは、本発明の貼付剤の粘着層全体の重量に基づいて、0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%配合することが好ましい。
また、本発明の貼付剤の粘着層には、所望により架橋剤、防腐剤、抗酸化剤等のその他の成分を配合することができる。架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物等の無機系架橋剤が好ましい。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が好ましい。抗酸化剤としては、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸、ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が好ましい。なお、本発明の貼付剤の粘着層は、非水系の基剤からなることが好ましく、非水系の基剤とすることにより本発明の効果をより有効に得ることができる。
また、本発明の貼付剤の加工性の向上や粘着性の調整のために、粘着層に油脂を軟化剤として配合することもできる。油脂としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油等が好ましく、特に流動パラフィンは好ましい。油脂は、本発明の製剤の粘着層全体の重量に基づいて、1〜70質量%、さらに10〜60質量%、特に20〜50質量%の量で配合されることが好ましい。
本発明の貼付剤の粘着層は、いずれの従来法によっても製造することができる。例えば、溶剤法により製造する場合には、配合されるポリマーの有機溶剤溶液に、他の成分を添加、攪拌後、支持体に伸展し、乾燥させて本製剤を得ることができる。また、配合されるポリマーがホットメルト法により塗工可能であるものである場合には、高温でポリマー成分を溶解させた後、他の成分を添加し、攪拌し、支持体に伸展して本製剤を得ることができる。
また、本発明の貼付剤は、粘着層が上記のような組成から構成され、それを支持する支持体を有するものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されず、いずれの層から構成されるものであってもよい。例えば、本発明の貼付剤は、支持体および粘着層の他、粘着層上に設けられる剥離ライナー層等を含むことができる。
前記支持体は、例えば、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙、アルミニウムシート等またはそれらの複合素材からなることができる。
本発明の貼付剤剤によれば、フェンタニルが皮膚を経由して従来の経皮吸収製剤に比してより長期的に吸収されるため、麻薬性鎮痛剤の経口投与が困難な患者にとって、疼痛緩和のより有力な手段となる。また侵襲的な投与方法である持続皮下投与方法に比して、非侵襲的に投与することができ、患者の負担も軽減することができることは勿論である。
また、投与量についても、製剤を裁断すること等により、患者の症状、年齢、体重、性別等に応じて、容易に調節することができる。適用時の本発明の貼付剤の面積は特に限定されないが、10〜60cmが好ましく、より好ましくは15〜55cmであり、さらに好ましくは20〜50cm−2である。60cm以下にすることによって適用時の扱いが好適なものになり、10cm以上にすることによって、有効成分の十分な血中濃度を維持することが容易になる。
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。なお、実施例中、「%」とあるものは、特に断らない限り「質量%」を意味するものである。
【実施例1】
SIS 8.0%
PIB 8.0%
アルコンP−100 44.5%
流動パラフィン 36.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
これらの組成中、流動パラフィンとフェンタニルを室温で撹拌させた後、基剤のトルエン溶液を添加撹拌し、PETフィルムに伸展し、110℃で15分間乾燥させ、50μmの粘着層を得て、常法により本発明の貼付剤を得た。
実施例2〜4及び比較例1〜4においては、それぞれPIB、SIS及びフェンタニルの含有量を下記及び表1に示すとおりとし、他の成分の含有量をそれに応じて調整したこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【実施例2】
SIS 10.0%
PIB 10.0%
アルコンP−100 46.5%
流動パラフィン 30.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
【実施例3】
SIS 13.0%
PIB 13.0%
アルコンP−100 50.0%
流動パラフィン 21.2%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
【実施例4】
SIS 10.0%
PIB 10.0%
アルコンP−100 46.0%
流動パラフィン 29.2%
フェンタニル 4.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
比較例1
SIS 20.0%
PIB 0.0%
アルコンP−100 46.5%
流動パラフィン 30.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
比較例2
SIS 0.0%
PIB 20.0%
アルコンP−100 46.5%
流動パラフィン 30.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
比較例3
SIS 13.0%
PIB 7.0%
アルコンP−100 46.5%
流動パラフィン 30.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
比較例4
SIS 7.0%
PIB 13.0%
アルコンP−100 46.5%
流動パラフィン 30.7%
フェンタニル 2.0%
ケイ酸アルミニウム 0.8%
全量 100.0%
(試験例)
(方法)
前記各製剤のflux、粘着力、保持力(凝集力)、付着性(製剤柔らかさ、プラセボ使用)および膏体残り(プラセボ使用)を以下の方法によって評価した。また、実施例2において得られた貼付剤の貼付時のフェンタニル血中濃度の推移をウサギを用いて評価した。
(皮膚透過性試験)
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた各貼付剤を用いて以下の試験を行った。
まず、ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター側層として、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に、皮膚の角質層側に貼付剤(製剤適用面積5cm)を貼付し、レセプター層として生理食塩水を用いて5ml/hrで2時間毎に24時間までレセプター溶液をサンプリングし、その流量を測定すると共に、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物濃度を測定した。得られた測定値から1時間当たりの薬物透過速度を算出し、定常状態における皮膚の単位面積当たりの薬物透過速度を求めた。試験開始から24時間までの間に得られた薬物透過速度の最大値(最大皮膚透過速度)を表1に示す。
(製剤物性試験)
実施例1〜4及び比較例1〜4の各貼付剤についてブローブタックテスター及びピール試験機により粘着力を、クリープ測定機により凝集力(保持力)をそれぞれ測定し、以下の標準:
○:十分である
×:不十分である
に基づいて製剤物性を評価した。得られた結果を表1に示す。
(付着性試験)
実施例1〜4及び比較例1〜4の各貼付剤について、それぞれ40cmのプラセボ製剤を健常成人男子10名に胸部に3日間貼付し、剥離時に膏体残りの生じた場合には、その状態を記録した。以下の基準に従って、付着性を評価した。
次に、各製剤毎に評価を平均し、3点以上を付着性○、3点未満を付着性×とした。
4:剥がれなし
3:全体の1/4が剥がれた
2:全体の1/2が剥がれた
1:全体の3/4が剥がれた
(ウサギ血中動態試験法)
実施例2にて得られたテープ製剤を14cmとなるように裁断し、以下の通りウサギの血中動態試験を行った。すなわち背部を剃毛した日本白色種ウサギ(18週齢,メス,体重約3kg)5羽に上記製剤を各1枚貼付し、72時間後に剥離した。製剤貼付後1、2、4、8、12、24、48、72、74、76、80時間後に耳介静脈より採血を行い、得られた血漿中のフェンタニル濃度をLC/MS/MS法より定量した。測定された血漿中フェンタニル濃度の時間推移挙動を平均値±S.D.として図1に示した。
(結果)
表1に示すように、本発明の貼付剤は、粘着力、保持力、付着性および膏体残りのいずれにおいても良好であった。これに対して、比較例1および3においては粘着力と付着性に乏しかった。比較例4は保持力と膏体残りに欠点を有し、また、比較例2は、さらに粘着力も乏しかった。


なお、保持力と膏体残りについては前記のとおり、フェンタニルを含有しないプラセボ間での比較である。しかしながら、フェンタニルがこれらの物理的性質に及ぼす影響は小さいから、フェンタニルを配合した本発明の貼付剤は、付着性及び膏体残りにおいても良好であると考えられる。
また、本発明の貼付剤は、皮膚透過性の指標であるfluxも十分な値を示した(表1)。
以上の結果から、本発明の貼付剤は、フェンタニルの十分な皮膚透過性を与えるのみならず、粘着力、保持力、付着性および膏体残りにおいても優れることが明らかになった。
本発明の貼付剤によってフェンタニルのウサギ血漿中濃度は貼付後約8時間で定常状態に達し、貼付後72時間が経過するまで1ng/ml以上の濃度が保たれた(図1)。
この結果及びヒトに対してフェンタニル貼付剤を貼付した場合の吸収性及び血漿中濃度時間推移は、ウサギに比べ、より穏やかであるという一般的知見(大塚ら、フェンタニルをウサギに皮下および経皮投与後の体内動態、Jpn Pharmacol Ther(薬理と治療)vol.29 no.11 2001 887−897、水口ら、癌性疼痛に対するフェンタニルパッチ(KJK−4263)の臨床評価(1)、医薬ジャーナルVol.37,No.8,2001/p.2389−2402)とから、本願発明の貼付剤により患者への適用48〜72時間後においてもフェンタニルの血中濃度を1ng/ml以上に保つことができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、製造方法が簡易であり、かつ長期持続性を有し、さらに皮膚への付着性および追従性に優れたフェンタニル経皮外用貼付剤が提供される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および該支持体の一方の面に粘着層を有する貼付剤であって、該粘着層は、有効成分であるフェンタニル、粘着基剤および粘着性付与樹脂を含み、該粘着基剤は、ポリイソブチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とからなり、該ポリイソブチレンの配合量は8〜15質量%であり、該ポリイソブチレンとスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体との濃度比は、2:3〜3:2である、前記貼付剤。
【請求項2】
フェンタニルの濃度が、1〜6質量%である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
ポリイソブチレンが、高分子量ポリイソブチレンおよび低分子量ポリイソブチレンからなる、請求項1または2に記載の貼付剤。
【請求項4】
高分子量ポリイソブチレンの平均分子量が、900,000〜2,500,000である、請求項3に記載の貼付剤。
【請求項5】
低分子量ポリイソブチレンの平均分子量が、30,000〜65,000である、請求項3または4に記載の貼付剤。
【請求項6】
粘着性付与樹脂が、脂環族飽和炭化水素樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項7】
粘着性付与樹脂の配合量が、40〜50質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項8】
粘着層に、さらに経皮吸収促進剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項9】
経皮吸収促進剤が、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、オレイルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項8に記載の貼付剤。
【請求項10】
適用時に10〜75cmの面積を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の貼付剤。

【国際公開番号】WO2004/024155
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535959(P2004−535959)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011689
【国際出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】