説明

貼付薬用基材シート及び貼付薬

【課題】
柔軟な風合いを有し、皮膚等の曲面への追従性に優れ、貼付薬とした場合の経時的な寸法安定性に優れ、塩化ビニル系樹脂からなる貼付薬用基材シートの代替材料として好適に用いることができる貼付薬用基材シート、及び、それを用いてなる貼付薬を提供する。
【解決手段】
パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有してなり、上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーの混合物は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、かつ、JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートが2.0〜4.0g/10分である貼付薬用基材シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付薬用基材シート及び貼付薬に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から皮膚刺激剤や消炎鎮痛剤等の薬剤を含有する粘着剤を基材シート上に積層してなる貼付薬が医療用途に広く使用されている。このような貼付薬用基材シートには、貼付薬を皮膚に貼付した際に、皮膚へのなじみが良く、皮膚に充分に追従するような優れた柔軟性、粘着剤中の薬剤が基材シートを透過し、その表面から揮散することがないような優れたバリヤ機能、貼付薬の保管中に基材シートが薬剤の作用によって変形したり、膨潤したりすることがないような優れた耐薬剤性を有することが要求される。
【0003】
このため、貼付薬用基材シートとして、柔軟で皮膚へのなじみが良く、優れた耐薬剤性を有し、風合いも良いポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが一般的に広く使用されていたが、塩化ビニル系樹脂は塩素を含むものであるため、焼却による廃棄処理に際して、有害物質が発生することが問題視されている。
【0004】
このため、環境や人体への悪影響を防止する観点から、塩化ビニル系製品から非塩素化材料への代替が要求されるようになっており、特に経済性や安全性を考慮して、ポリエチレンやポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等のポリオレフィン系樹脂が塩化ビニル系基材シートの代替材料として有力視されている。
【0005】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は、耐薬剤性に劣るものである。このため、ポリオレフィン系樹脂及び粘着剤が積層されている貼付薬を長期間保管すると、薬剤又は粘着剤中の添加剤によりポリオレフィン系樹脂からなる基材シートが経時的に膨潤してしまい、基材シートの寸法安定性が悪いという問題がある。そして、その結果、貼付薬の外観が損なわれることがあり、製品価値が著しく低下する場合がある。
【0006】
従って、貼付薬とした場合の経時的な寸法安定性に優れるとともに、柔軟な風合い、皮膚等の曲面への優れた追従性を有し、塩化ビニル系樹脂からなる貼付薬用基材シートの代替材料として好適に用いることができる貼付薬用基材シートの開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、柔軟な風合いを有し、皮膚等の曲面への追従性に優れ、貼付薬とした場合の経時的な寸法安定性に優れ、塩化ビニル系樹脂からなる貼付薬用基材シートの代替材料として好適に用いることができる貼付薬用基材シート、及び、それを用いてなる貼付薬を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有してなり、上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーの混合物は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、かつ、JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートが2.0〜4.0g/10分であることを特徴とする貼付薬用基材シートである。
【0009】
上記貼付薬用基材シートにおいて、上記直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、上記パラフィン系オイル、上記スチレン系エラストマー及び上記直鎖状低密度ポリエチレンの合計量100質量%中において、10〜50質量%であることが好ましい。
上記貼付薬用基材シートは、厚さが、50〜200μmであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記貼付薬用基材シート及び粘着剤層を積層してなることを特徴とする貼付薬でもある。
【0011】
上記貼付薬において、上記粘着剤層は、スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体を含有するものであることが好ましい。
上記貼付薬において、上記粘着剤層は、薬剤を含有するものであることが好ましい。
以下、本発明の詳細に説明する。
【0012】
本発明の貼付薬用基材シートは、皮膚刺激剤や消炎鎮痛剤等の薬剤を含有する粘着剤層を有する貼付薬の基材シートとして用いるものであり、従来の塩化ビニル系樹脂製基材シートの代替材料として、好適に用いることができるものである。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートと薬剤等の成分を含有する粘着剤層とを積層してなる貼付薬を長期間保管すると、経時的に基材シートの寸法が変化するという問題が生じてしまう。これは、長期間の保管中に、粘着剤層中に含まれるパラフィン系オイルや、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の共重合体や、メントール、サリチル酸エステル誘導体等の薬剤や、他の添加剤が基材シートへ移行することにより、経時的に基材シートが膨潤し、その結果、基材シートの寸法が変化しているものと推察される。
【0014】
これに対して、本発明の貼付薬用基材シートは、パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有するものであり、また、上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーの混合物は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分であり、更に、上記直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、かつ、JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートが2.0〜4.0g/10分である。
【0015】
即ち、本発明の貼付薬用基材シートは、上述した構成よりなるものであり、粘着剤、薬剤、添加剤等の粘着剤中に含まれる成分によって、既に膨潤したような状態となっているものと推察される。このため、上記貼付薬用基材シートと粘着剤層とを積層してなる貼付薬を長期間保管した場合であっても、粘着剤層中に含まれる成分が基材シートへ移行して、経時的に基材シートが膨潤してしまうことを充分に防止することができる。従って、本発明の貼付薬用基材シートと粘着剤層とを積層してなる貼付薬は、経時的な寸法安定性に極めて優れたものである。
【0016】
また、上記貼付薬用基材シートは、上述した構成よりなるものであるため、貼付薬を皮膚に貼付した際に、皮膚へのなじみが良く、皮膚等の曲面への充分な追従性を有し、優れた柔軟性を有するものであり、また、柔軟な風合いを有するものである。更に、塩化ビニル系樹脂を使用しないものであるため、環境面から好ましいものである。従って、塩化ビニル系樹脂製基材シートの代替材料として好適に使用することができるものである。
【0017】
上記貼付薬用基材シートは、パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有するものである。
上記パラフィン系オイルは、スチレン系エラストマーを可塑化し、加熱時の流動性、粘着性付与等に寄与する成分である。
【0018】
上記パラフィン系オイルとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。上記パラフィン系オイルは、石油精製等において生産されるものであり、通常、純粋なものではなく、アロマ系オイルを含んだものであってもよいが、上記アロマ系オイルの含有量は、10質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えると、アロマ系特有の臭気が強くなるおそれがある。
【0019】
上記パラフィン系オイルの含有量は、上記貼付薬用基材シート中に含まれるパラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンの合計量(固形分)100質量%中において、10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、薬剤及び粘着剤中の添加物による膨潤が発生するおそれがある。50質量%を超えると、薬剤及び粘着剤中の添加物の吸収量が多くなり、樹脂中に保持できず、オイルがブリードするおそれがある。より好ましくは、20〜36質量%である。
【0020】
上記スチレン系エラストマーは、スチレンと他の重合性モノマーとを共重合したエラストマーを広く包含するものである。上記他の重合性モノマーとしては、スチレンと共重合することができるモノマーであれば特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記スチレン系エラストマーは、貼付薬での寸法安定性に優れる点から、スチレン−オレフィンブロック共重合体であることが好ましい。上記スチレン−オレフィンブロック共重合体とは、1分子の両末端にポリスチレンブロック相をもち、中間相にオレフィン系エラストマー相を導入したものである。
【0022】
上記スチレン−オレフィンブロック共重合体としては、例えば、中間相がポリブタジエン系であるスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、中間相がポリイソプレン系であるスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、中間相が水素添加型のポリオレフィンであるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等を挙げることができる。また、これらの他に、スチレン−エチレン・プロピレンのジブロック構造の共重合体(SEP)や水添ブタジエンラバー(HSBR)等を挙げることもできる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記パラフィン系オイル、上記スチレン系エラストマーは、別々のものとして配合してもよく、両者の混合物を用いることもできる。混合物として、パラフィン系オイルを含有するスチレン系エラストマーの市販品を用いることもでき、例えば、住友TPE SB2710(住友化学社製)等を挙げることができる。
【0024】
上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーを用いると、貼付薬の粘着剤中の薬剤やパラフィンオイル、粘着付与剤等の添加剤の貼付薬用基材シートへの移行に起因する基材シートの膨潤を防止することができる。このため、例えば、薬剤が経皮投与薬の場合、安定した薬剤投与の制御を行うことができる。
【0025】
上記貼付薬用基材シートにおいて、上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーの混合物は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分である。0.5g/10分未満であると、フィルムの表面平滑性が損なわれるおそれがある。2.0g/10分を超えると、粘度が低く、カレンダー加工により成型する場合、ロールから引き剥がしにくくなるおそれがある。より好ましくは、0.9〜2.0g/10分である。なお、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートとは、温度230℃、荷重2.16kgの条件下での測定値である。
【0026】
上記貼付薬用基材シートにおいて、上記スチレン系エラストマーの含有量は、上記貼付薬用基材シート中に含まれるパラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンの合計量(固形分)100質量%中において、50〜90質量%であることが好ましい。50質量%未満であると、薬剤による膨潤が発生するおそれがある。90質量%を超えると、ブリードが発生するおそれがある。より好ましくは60〜80質量%である。
【0027】
上記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)は、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。上記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を添加することにより、成型性、成型したシートの面状態を向上させることができる。上記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、モノマー成分をメタロセン系触媒の存在下、気相法、スラリー液相法又は高圧法によって重合することにより得ることができる。
【0028】
上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1等を挙げることができる。なかでも、本発明の効果をより発揮させることができる点から、炭素数4〜10のα−オレフィンが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記重合の際に使用することができるメタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル誘導体及び/又はインデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物からなる触媒成分と、アルキルアルミノキサンを含む助触媒とを含むものであることが好ましい。上記シクロペンタジエニル誘導体及び/又は上記インデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物の遷移金属は、原子周期律表第IVB族から選択されるものであることが好ましく、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウムを挙げることができる。
【0030】
上記シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物としては、例えば、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1−メチル−3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、1−メチル−1エチリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド等を挙げることができる。
【0031】
上記インデニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物としては、例えば、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、1,2−エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ハフニウムジクロライド等を挙げることができる。
【0032】
上記アルキルアルミノキサンとしては、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等を挙げることができる。アルキルアルミノキサンの添加量は、メタロセン系触媒に対して、金属原子数比(アルミニウム原子/メタロセン系触媒の遷移金属原子)が100〜1000であることが好ましい。また、重合系内に使用されるメタロセン系触媒量としては、重合系の容積1リットルに対して、1×10−8〜1×10−3グラム原子の量で使用されることが好ましい。また、必要に応じて、重合活性を高める目的で、従来公知のプロトン酸、ルイス酸、ルイス酸性化合物を触媒系中に併用してもよい。上記プロトン酸、ルイス酸、ルイス酸性化合物の種類は特に限定されないが、、ホウ素系化合物を用いることが好ましい。
【0033】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートが2.0〜4.0g/10分である。2.0g/10分未満であると、フィルムの表面平滑性が悪くなるおそれがある。4.0g/10分を超えると、粘度が低く、カレンダー加工により成型する場合、ロールから引き剥がしにくくなるおそれがある。なお、上記JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートとは、温度190℃、荷重21.2Nの条件下での測定値である。
上記直鎖状低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、カーネルKF271(日本ポリケム社製)等を挙げることができる。
【0034】
上記貼付薬用基材シートにおいて、上記直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、上記パラフィン系オイル、上記スチレン系エラストマー及び上記直鎖状低密度ポリエチレンの合計量(固形分)100質量%中において、10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、過剰なオイルを吸収できず、ブリードが発生するおそれがある。50質量%を超えると、上記貼付薬用基材シートを用いた貼付薬において、粘着剤層中の添加剤、パラフィン系オイル、薬剤等によって、基材シートの寸法変化が生じるおそれがある。
【0035】
上記貼付薬用基材シートは、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂を含有するものであってもよい。また、上記貼付薬用基材シートは、酸化防止剤、滑剤、顔料等の一般的に樹脂に添加される公知の添加剤を適量添加することもできる。
【0036】
上記貼付薬用基材シートは、50%モジュラスが、縦、横方向とも10N/cm以下であることが好ましい。これにより、柔軟な風合いをだすことができる。50%モジュラスの測定方法は、JIS K 7113準拠の試験機にて、次の条件で実施する方法である。なお、50%モジュラスの測定条件は、サンプルサイズ:19mm巾短冊、チャック間:50mm、標線間:25mm、引張速度:50mm/分である。
【0037】
上記貼付薬用基材シートと粘着剤層とを積層してなる貼付薬において、貼付薬用基材シートのフィルムの流れ方向(縦方向)、横方向の寸法変化率が、3%以下であることが好ましい。3%を超えると、貼付薬の製品価値が低下するおそれがある。上記寸法変化率は、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましい。
【0038】
上記寸法変化率(%)は、アルミニウム/ポリエチレンフィルムパックに入れて熱ラミネートし、40℃のオーブンで1ヶ月間放置した後のフィルムの流れ方向(縦方向)、横方向の寸法変化率を測定することにより得られる値である。
【0039】
上記貼付薬用基材シートの製造方法としては特に限定されず、例えば、押し出し成型、カレンダー成型、プレス成型等によりフィルム状に成型することができる。上記カレンダー成型に用いられるカレンダー形式は、特に限定されないが、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等を挙げることができる。
【0040】
上記貼付薬用基材シートは、厚さが、50〜200μmであることが好ましい。50μm未満であると、支持体の強度がなく、貼付しにくくなるおそれがあり、また、ハンドリング性が悪くなるおそれがある。200μmを超えると、基材シートが硬く、風合い、皮膚等の曲面への追従性が悪くなるおそれがある。70〜130μmであることがより好ましい。
【0041】
上記貼付薬用基材シート及び粘着剤層を積層してなる貼付薬は、上述した貼付薬用基材シートを用いたものであるため、基材シートの寸方安定性に優れ、柔軟な風合いを有し、皮膚等の曲面への追従性に優れたものである。このような貼付薬もまた、本発明の1つである。
【0042】
上記粘着剤層に含まれる粘着剤としては特に限定されないが、貼付薬を皮膚に貼付した際の優れた粘着性、肌へのなじみ性、適度の弾性等を有するのみならず、剥離時に皮膚に刺激を与えず、容易に剥離し得る点から、スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。また、スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体を用いる場合には、本発明の貼付薬において、粘着剤中の成分の基材シートへの移行に起因する基材シートの膨潤を充分に防止することができ、基材シートに優れた寸法安定性を付与することができる。
【0043】
上記スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記粘着剤層は、薬剤を含有するものであってもよい。
上記薬剤としては、経皮的に体内に吸収されて薬理効果を発現するものであれば特に限定されず、例えば、抗炎症剤、鎮痛剤、局所刺激剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、抗菌性剤、冠血管拡張剤等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記抗炎症剤、鎮痛剤、局所刺激剤としては特に限定されず、例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、イソソルビドジナイトレート、メントール等を主成分とするものを挙げることができる。
【0046】
上記抗ヒスタミン剤としては特に限定されず、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチベンジル、クロルフェニラミン等を挙げることができる。上記冠血管拡張剤としては特に限定されず、例えば、ニトログリセリン、ニトログリコール、ペンタエリスリトールテトラナイトレート、イソソルビドジナイトレート等を挙げることができる。
【0047】
上記粘着剤層は、粘着付与剤を含有するものであってもよい。
上記粘着付与剤としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンの共重合体やその水素化誘導体、ポリテルペン樹脂やフェノール系変性テルペン樹脂及びその水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、上記粘着剤層は、上述した成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲内おいて、必要に応じて、可塑剤、充填剤、老化防止剤等、種々の添加剤を含有するものであってもよい。
【0049】
上記粘着剤層は、厚みが、20〜100μmであることが好ましい。20μm未満であると、接着力が充分でなく、剥れ等の問題が発生するおそれがある。100μmを超えると、塗工性が悪く、コストアップとなるおそれがある。30μm〜90μmであることがより好ましい。
【0050】
本発明の貼付薬は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、薬剤を含有する粘着剤層を、上記貼付薬用基材シート上に塗工することによって製造することができる。
【0051】
上記貼付薬用基材シートが上述した構成であるため、本発明の貼付薬においては、従来の貼付薬では必要とされていた接着剤層(プライマー層)を設けなくても、充分な耐油性、優れた寸法安定性を付与することができる。このため、接着剤層を設けない貼付薬でも、好適に使用することができるが、接着層を有するものであっても構わない。
【0052】
上記接着層の形成に用いることができる接着剤としては、特に限定されず、上記貼付薬用基材シートと、上記粘着剤層とを接着することができるものであれば特に限定されることなく用いることができ、例えば、ポリエステルポリウレタン接着剤等の一液型又は二液型ポリウレタン接着剤を使用することができる。
【0053】
上記貼付薬は、着色層又は印刷層を有するものであってもよい。上記着色層、上記印刷層は、例えば、貼付薬用基材シート上に設けることができる。
【0054】
上記着色層又は上記印刷層は、上記貼付薬用基材シート上に、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、シルクスクリーン印刷法等の公知の印刷法で形成することができ、例えば、上記貼付薬用基材シート上に、木目等の任意の絵柄を印刷したり、アルミニウムペーストを混入して調製したインキを用いることにより金属調の印刷絵柄を形成することができる。また、アクリル樹脂に代表される透明材料に、染料や顔料を添加した透明着色フィルムを着色層とすることもできる。更に、上記貼付薬は、エンボスを施したものであってもよい。着色層、印刷層、エンボス加工により、様々な意匠、機能を付与することができる。
【0055】
上記貼付薬は、製造、運搬、保管中に粘着剤層が、器具、容器等に接着することを防止すること、製剤の劣化を防止することを目的として、皮膚面への貼付の直前までは粘着剤層の露出面を、離型シートにて被覆、保護することが好ましい。そして、使用時にこれを剥離して、粘着剤層の面を露出させ、皮膚に貼付して使用する。
【0056】
上記離型シートとしては、使用時に粘着剤層から容易に剥離されるものであれば特に限定されず、例えば、粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施されたポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等を挙げることができる。上記離型シートの厚さは、通常12〜200μm、好ましくは50〜100μmである。
【0057】
本発明の貼付薬の例を図1及び図2として示した。
図1、2は、本発明の貼付薬の概略図の一例を示した図である。図1で示された貼付薬は、貼付薬用基材シート1及び粘着剤層2が積層されているものである。図2で示された貼付薬は、貼付薬用基材シート1、粘着剤層2及び離型シート3が積層されているものである。図1、2で示された貼付薬は、寸法安定性に優れ、柔軟な風合い、皮膚等の曲面への追従性に優れるものであるため、好適に用いることができるものである。
【0058】
本発明の貼付薬用基材シートは、パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー、及び、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られる直鎖状低密度ポリエチレンを含有するものであり、上記パラフィン系オイル及び上記スチレン系エラストマーの混合物と、上記直鎖状低密度ポリエチレンとが、特定のメルトフローレートを有するものである。このため、上記貼付薬用基材シートと粘着剤層とが積層されてなる貼付薬は、経時的に、粘着剤層中の成分が基材シートへ移行することを充分に抑制することができ、基材シートが優れた寸法安定性を有するものである。また、上記貼付薬用基材シートは、柔軟な風合いを有し、皮膚等の曲面への追従性に優れたものである。更に、塩化ビニル系樹脂を使用しないものであるため、環境面から好ましいものである。従って、従来から広く使用されている塩化ビニル系樹脂製基材シートの代替材料として好適に使用することができるものである。
【発明の効果】
【0059】
本発明の貼付薬用基材シートは、上記構成よりなるので、これを用いてなる貼付薬を長期間保管した後であっても、寸法変化が極めて少ないものであり、優れた寸法安定性を有するものである。また、柔軟な風合いを有し、皮膚等の曲面への追従性にも優れたものである。従って、貼付薬用基材シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0061】
実施例1
(基材シートの作製)
オイル含有スチレン系エラストマー(住友TPE SB2710、住友化学社製)90質量部、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(カーネルKF271、日本ポリケム社製)を10質量部、酸化防止剤としてアンチオクス10(日本油脂社製)を0.1質量部をバンバリーミキサーで溶融混錬後、カレンダー本体の各ロールを通し、エンボス加工後の厚みが0.07mmのフィルムを作製した。
【0062】
(皮膚貼付薬シートの作製)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(カリフレックスTR−1107、シェル化学社製)30質量部、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製 YSレジン)35質量部、流動パラフィン10質量部を混合して粘着剤とし離型紙上に厚み30μmになるように塗工した。次いで、上記で得られた基材シートのポリエチレンフィルム表面に、粘着剤層を設けた離型紙を粘着剤層がポリエチレンフィルムに対向するように重ね、2kg/10cm巾のローラーで押圧し、粘着シートを作製した。
【0063】
実施例2〜3、比較例1〜3
使用した材料を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、基材シート、皮膚貼付薬シートを作製した。
【0064】
〔評価方法〕
実施例、比較例で得られた基材シート、皮膚貼付薬シートを以下の方法によって評価した。結果を表1に示した。
【0065】
(基材シートの寸法安定性)
得られた皮膚貼付薬シートを離型紙に貼った状態で10cm角にし、アルミニウム/ポリエチレンフィルムパックに入れて熱ラミネートし、40℃のオーブンで1ヶ月間放置した。放置後のフィルムの流れ方向(縦方向)、横方向それぞれの寸法変化率(%)を測定した。
【0066】
(粘着剤中の成分の基材シートへのブリード状態)
得られた基材シートの寸法安定性の評価後のフィルムを、目視にて、表面にパラフィンオイル、粘着付与剤等のブリード状態を判断した。
○:表面に変化はなく、ブリードしていない。
×:表面にブリードしている。
【0067】
(基材シートの伸縮柔軟性、風合い)
得られた基材シートを手の甲上に置き、その追従性、密着性、なじみ性、折れ曲がり性を目視及び手触りにて、総合的に判断し、評価した。
○:手の甲に沿って充分に追従し、密着性、なじみ性、皮膚への適合性に優れ、風合いが良い。
△:やや硬い感触があるが実用上は問題ない。
×:硬く、実用性が無い。
【0068】
(基材シートの50%モジュラス)
得られた基材シートの50%モジュラス(単位N/19mm)をJIS K 7113準拠の試験機にて測定した。なお、50%モジュラスの測定条件は、サンプルサイズ:19mm巾短冊、チャック間:50mm、標線間:25mm、引張速度:50mm/分であった。
【0069】
【表1】

表1から、実施例で得られた基材シートは、寸法安定性に優れるものであり、伸縮柔軟性、風合いにも優れるものであった。また、実施例で得られた皮膚貼付薬は、粘着剤中の成分の基材表面へのブリードが充分に抑制されたものであった。また、実施例で得られた基材シートは、50%モジュラスも良好な値を示すものであるため、皮膚等の曲面への追従性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の貼付薬用基材シートは、従来から広く用いられている塩化ビニル系樹脂製基材シートの代替材料として好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の貼付薬の概略図の一例を示した図である。
【図2】本発明の貼付薬の概略図の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0072】
1 貼付薬用基材シート
2 粘着剤層
3 離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン系オイル、スチレン系エラストマー及び直鎖状低密度ポリエチレンを含有してなり、
前記パラフィン系オイル及び前記スチレン系エラストマーの混合物は、JIS K 7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、かつ、JIS K 6760に準拠して測定されたメルトフローレートが2.0〜4.0g/10分である
ことを特徴とする貼付薬用基材シート。
【請求項2】
直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、前記パラフィン系オイル、前記スチレン系エラストマー及び前記直鎖状低密度ポリエチレンの合計量100質量%中において、10〜50質量%である請求項1記載の貼付薬用基材シート。
【請求項3】
厚さは、50〜200μmである請求項1又は2記載の貼付薬用基材シート。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の貼付薬用基材シート及び粘着剤層を積層してなることを特徴とする貼付薬。
【請求項5】
粘着剤層は、スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体を含有するものである請求項4記載の貼付薬。
【請求項6】
粘着剤層は、薬剤を含有するものである請求項4又は5記載の貼付薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−102358(P2006−102358A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296129(P2004−296129)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】