説明

貼合装置

【課題】二つの部材を貼り合わせる際、この二つの部材のかたさの違いにより、加圧ローラーの材質の適正が問題になり、うまく貼り合せられるかどうかはこのローラーの材質に左右される。昨今、少量多品種生産の形が増加の傾向にある。その場合、従来は量産用に使用していた貼合機の貼りあわせ条件を変えたりすることで対応していたが、不良率が高く、採算が取れなかったりすることが多かった。
【解決手段】連続したフィルムとフィルム、あるいはフィルムと板材を貼合する貼合装置において、少なくとも、それぞれ性質の異なる複数の貼合ローラーと、前記複数の貼合ローラーのうち1つをフィルムの貼り合せのために選択する手段と、を含むことを特徴とする貼合装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続したフィルムとフィルム、又はフィルムと板材等とを各種接着剤を用いて、1対の貼合ローラーを用いて貼り合わせる貼合装置(以下、ラミネータとも言う)に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のフィルム用のラミネータや、枚葉の板材とフィルムを貼り合わせるラミネータは、使用目的が単一のため、貼合する一対のラミネートローラーの材質は決定されており、他のものを貼りあわせたい場合はまたそれにあったラミネータを入手しなければならなかった。
【0003】
二つの部材を貼り合わせる際、この二つの部材の硬度の違いにより、加圧ローラーの材質の選択が問題になり、貼り合せの結果はこのローラーの材質に左右されていた。
【0004】
通常、ラミネータや貼合装置でフィルムどうしやフィルムと板材などを張り合わせる際、ひとつの生産工程の中では同じものを大量に作り続けることが多いため一つの装置で専用に作り続けることが出来る。
【0005】
また、通常、ラミネータの貼合部のローラーは2本一対のローラーから構成され、必要に応じて圧着、開放の動作や回転、連れ回りの動作を行ったり、加熱をすることができた。
しかし、昨今、大量生産ばかりではなく客先のニーズに合わせての少量多品種生産の形が増加の傾向にある。
【0006】
その場合、従来は量産用に使用していた貼合機の貼りあわせ条件を変えたりすることで対応していたが、不良率が高く、採算が取れなかったりすることが多かった。最後にはその条件にあった貼合機を少量生産のために新規に入れ替えるなどして費用が嵩む上、生産性が悪化する問題があった。
【0007】
また、貼りあわせのローラーのみを貼り合せる部材の条件に合わせて交換できる装置もあったが、印刷機の版ローラーを交換するのと同様の手間がかかり、交換後の調整なども大変手間がかかり、生産性を大きく改善するものではなかった。以下、従来のラミネータの例として、特許文献1及び特許文献2を挙げた。
【特許文献1】特開2005−67144号公報
【特許文献2】特開2006−88409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、従来では、二つの部材を貼り合わせる際、この二つの部材のかたさの違いにより、加圧ローラーの材質の適正が問題になり、うまく貼り合せられるかどうかはこのローラーの材質に左右される。昨今、少量多品種生産の形が増加の傾向にある。その場合、従来は量産用に使用していた貼合機の貼りあわせ条件を変えたりすることで対応していたが、不良率が高く、採算が取れなかったりすることが多かった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような問題にかんがみ、本発明は、従来のラミネータに対し、この二本一対のローラーを各々回転可能なターレット式の複数本ローラーを装備できるユニットを組み込んだものである。この発明によれば、ラミネータのターレット式のこのユニットを必要に応じて回転させることができ、所望のローラーを選択し貼合位置でターレットを固定し、それぞれ貼合ローラーとして用いることができる。
【0010】
また、このターレット状のローラー配置の中心がユニットの回転中心であるので、ここに動力伝達軸をクラッチを介して設け、そこから個々のローラーにプラネタリーギヤを介して回転力を伝えるようにすることもできる。
【0011】
さらに、本発明では、各ローラーの中心には個々にヒーターが設けられることができ、このようにすることで必要に応じて任意のローラーの加熱が可能である。
【0012】
各ローラーの圧着、解除機構は、このローラーユニット全体を上下動させるのが最も単純であるが、所望のローラーが貼合位置に選択されてセットされた位置でのみ一本だけ上下動作、すなわち圧着解除動作ができるような構造とすると、ロール変更の際の時間効率の点からさらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルムどうしの貼りあわせや、板材とフィルムとの貼りあわせ等の際に、貼合装置のローラーユニットを回転させて、所望のローラーに変更し、固定することで、様々な貼合媒体に簡単な操作で対応することができ、結果として貼り合せたフィルムの品質と、貼り合せの生産性を合わせて向上することが可能となった。
【0014】
本発明の貼合ローラーとして、フィルムとフィルム、フィルムと板材などの各々の組み合わせによって様々なものを選択することができる。例えば、貼合ローラーの一例として、ゴムローラー、金属ローラー等を用いることができる。また、例えば、ゴムの場合では、ゴム硬度が高いほうが良い場合もあれば硬度が低くてやわらかい方が良い場合のいずれのケースも考えられる。想定される貼り合せ対象に合わせて、予め条件に見合った貼合ローラーをセットすることが望ましい。
【0015】
このようにすることで、貼合の対象が変わっても、予めセットされたローラーのセットから最も好適なものを選択して使用すればよいので、ローラーを交換などをしなくても、また、新しく装置を導入することなく対応が可能となった。
【0016】
また、貼合条件の不明な貼合媒体のときでも、従来は同一の装置で、圧力、温度、速度を変えて貼合条件を探ってきたが、この発明によれば、さらに貼合ローラーの材質を同時に変更することにより、貼合条件を正確かつ容易に発見することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に使用することができるターレット式、あるいはレボルバー式のローラーユニットの最良の形態として、図1に示すように今回は2本の貼合ローラーを配置したものを使用することができる。なお、貼合ローラーは2本に限定されるものでない。本発明では以下、2本の例について説明する。
【0018】
通常、従来の貼合装置やラミネータでは、ローラーユニットに貼合ローラー一本しか装着されていない。本発明では、この部分に回転可能な複数本ローラーをセットできるローラーユニットを設ける。
【0019】
この例では、複数本の貼合ローラーは、同一円周上に配置されている。ここでユニットの回転中心設けられた歯車に全ての貼合ローラーの駆動ギアがかみ合い、すべての貼合ローラーが同時に回転する構造となっている。
【0020】
この回転中心の歯車は動力モーターの軸とクラッチにより断続され、駆動力がかかったりかからなかったりを任意にコントロールできる。フリーローラーとして使用する場合、クラッチにより動力をきればよい。
【0021】
同一円周上に配置されるローラーとしては、金属ローラー、ゴムローラー、ゴム硬度の異なるゴムローラー等、二本から四本程度が想定できる。あまり多種のローラーを配置すると、このユニットが大きくなりフィルムパスがしにくくなったり、またそれによる弊害もでることがあるので、多くても四本程度が望ましい。
【0022】
この回転可能なターレット式のローラーユニットに配置された個々のローラーは全て前述の方法で回転させることができる。一方でユニット全体もユニットの回転中心を中心として回転加納であって、所望の個々のローラーが貼合位置に来た場合、その位置でユニットを回転しないよう固定できる。
【0023】
この動作はモーターにより自動で行うこともできるが、頻繁に動作させない場合など手動でもかまわない。
【0024】
また、この各々の貼合ローラーの中にはヒーターが設けられており、必要に応じて貼合ローラーの温度調節が可能である。一個のヒーターでユニット全体を温めてしまう方法もあるが、効率が悪く不経済であり、時間もかかってしまう。このため、貼合ローラーごとに温度調節することが望ましい。
【0025】
貼合時の圧着の駆動方式としてはユニット全体を上下動させて加圧する方法や、この圧着駆動ユニットを貼合部にのみユニットとは別に設け、貼合ローラーとして選択されたローラーが貼合部にセットされたときのみ、そのローラーに圧着駆動動作がかかる様にする方法がある。前者の方法が簡単であるというメリットがある。一方、後者の方法の方が効率の点でメリットがある。
【0026】
このような構造をもつローラーユニットを二セット、通常は上下に一対配置し、下側圧着ローラーと上側圧着ローラーとしてそれぞれの貼合ローラーとする。
【0027】
多くの場合、下側の圧着ローラーは上下動することなく、フィルムや板材のパスライン上に合わせて位置固定されている。本発明に於いては、これに限定されるものではなく、下側のみを可動とする構成や上下ともに可動とする構成が考えられる。
【実施例】
【0028】
以下にこのターレット式の貼合ローラーを用いた、フィルムとフィルム、フィルムと板材の両方に対応できる貼合装置の実施例を示す。
図1に、この貼合装置に使用される回転選択式の貼合ローラーユニットの詳細を示す。この例では、貼合用ローラーとして金属製のローラーとローラー表面をゴム製としたゴムローラーの、二本を組み込んだものを示す。
【0029】
図1中、1で示されたローラーユニットの側板二枚(片側省略)に金属ローラー2とゴムローラー3がそれぞれ歯車4、5とともに回転可能な状態で支持されている。
【0030】
そして、このユニットの回転中心にはモーターからの動力を伝える歯車6があり、この歯車6の動力はアイドルギア7を介して、それぞれ貼合ローラーに伝えられる。
【0031】
アイドルギア7は、それぞれ中心軸と貼合ローラー軸から揺動アーム8、9により揺動可能な状態で支持される。
【0032】
この構造により、貼合ローラーが圧着動作のための上下動をしても、揺動するアイドルギア7は中心軸からの動力を各ローラーに伝えることが出来る。
【0033】
また、ユニット中心にある歯車6はモーターからの動力をクラッチ10により断続することが可能で、動力を絶ったときはフリーローラー(連れ回り)として使用することが出来る。
【0034】
次に、貼合時の圧着動作であるが、通常貼合動作をしないでローラーが退避している際は図2の引っ張りばね13により揺動アーム8,9とアイドルギア7が引っ張られることにより、貼合ローラーはユニット回転半径内に収まっている。
【0035】
貼合動作をする際は、この回転半径の外に設置されているエアーシリンダー11の先端部が12の位置までせり出し、揺動アームとアイドルギアを引っ張りばねと反対方向に力をかけたとき、貼合ローラーはユニットの外周から半径方向にせり出し、圧着貼合どうさをする。
【0036】
次に、図3に前記貼合ローラーユニットを用いた多目的ラミネータの例を示す。これは何種類かのフィルムと接着剤(粘着剤)付きフィルム、あるいは接着剤(粘着剤)付きフィルムと板材とを前記貼合ローラーユニットを一対用い、貼合ローラーを金属あるいはゴムにかえて対応し、ラミネート、貼合できる装置である。
【0037】
二種類のフィルムとして、接着剤つきフィルム21と接着剤のないフィルム22が巻き出し上下二箇所にセットされている。フィルム等の進行方向は図示左から右である。
【0038】
まず、接着剤付きフィルム21は23の保護フィルム巻取りで保護フィルムが剥ぎ取られて接着面がむき出しになり、そのまま貼合部に搬送され、下方のパスで搬送されてきたフィルムと貼合され、26の搬送ローラーを介して27の巻き取り部に巻き取られる。
【0039】
次に、フィルムと板材の場合、パス上部の接着剤付きフィルムはそのままであるが、下部のフィルムパスはなく、代わりに28の搬送ローラー上を板材が搬送されてくる。
【0040】
この板材が貼合ユニットに差し掛かった際、図示はしていないが、センサーやタイマーを使い適当なタイミングで貼合ローラーを圧着することで、板材の先端からフィルムがはりつけられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のローラーユニットの形態の一例を示す説明図である。
【図2】本発明のローラーユニットの形態の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の貼合ローラーユニットを用いた多目的ラミネータの例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ローラーユニット
2・・・金属ローラー
3・・・ゴムローラー
4、5・・・歯車
6・・・歯車
7・・・アイドルギア
8、9・・・揺動アーム
10・・・クラッチ
11・・・エアーシリンダー
12・・・先端部
13・・・引っ張りばね
21・・・接着剤付きフィルム
22・・・接着剤のないフィルム
23・・・保護フィルム
24・・・転向ローラー
25・・・圧着搬送ローラー
26・・・搬送ローラー
27・・・巻き取り部
28・・・搬送ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続したフィルムとフィルム、あるいはフィルムと板材を貼合する貼合装置において、
少なくとも、それぞれ性質の異なる複数の貼合ローラーと、
前記複数の貼合ローラーのうち1つをフィルムの貼り合せのために選択する手段と、を含むことを特徴とする貼合装置。
【請求項2】
前記複数の貼合ローラーを格納する収納部材を備え、この収納部材がローラーを選択的に回転させて、任意のローラーを選択できることを特徴とする請求項1に記載の貼合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234197(P2009−234197A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86408(P2008−86408)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】