説明

質量分析計

【目的】イオンガイド6の上流に配置される質量選択性イオントラップまたは質量分析器4を含む質量分析計を提供する。
【構成】イオンは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へ走査され、イオンガイド6内に生成または形成される1つ以上の軸方向ポテンシャル井戸により受け取られる。イオンガイド6の長さに沿って平行移動される複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、1つ以上の過渡DC電圧または電位がイオンガイド6に印加されることが好ましい。イオンは、イオンガイド6の出口からパケットとして放出され、比較的高いデューティサイクルで、直交加速飛行時間質量分析器13のドリフトまたはフライト領域へと直交加速される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計および質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ同一のエネルギーを有するイオンを直交加速場が周期的に印加される空間を通過させる直交加速飛行時間質量分析器が知られている。直交加速領域の長さ、イオンのエネルギー、および直交加速場の印加頻度により、飛行時間質量分析器における分析のためにイオンをサンプリングするサンプリングデューティサイクル(sampling duty cycle)が決定される。ほぼ同一のエネルギーを有するものの質量電荷比が異なるイオンは、異なる速度を有するため、異なるサンプリングデューティサイクルを有することとなる。
【0003】
連続したイオンビームとともに用いられる場合の従来の設計による直交加速飛行時間質量分析器の最大イオンサンプリングデューティサイクルは、典型的には約20〜25%である。これは、最大質量電荷比を有するイオンにのみ当てはまり、より低い質量電荷比を有するイオンに対するイオンサンプリングデューティサイクルはより低くなる。最大質量電荷比を有するイオンの質量電荷比をmo、これらのイオンに対するサンプリングデューティサイクルをDcoとすると、質量電荷比mを有するイオンに対するサンプリングデューティサイクルDcは、以下のようになる。
【0004】
【数1】

【0005】
平均サンプリングデューティサイクルは、最大サンプリングデューティサイクルDcoの2/3に等しいことがわかる。よって、最大サンプリングデューティサイクルが22.5%の場合、平均サンプリングデューティサイクルは15%となる。
【0006】
イオンが、直交加速飛行時間質量分析器の上流でイオントラップに保持され、連続して流されるのではなく一連のパケットとして質量分析器内へ放出される場合、押出し電極(pusher electrode)の電圧印加は、イオンの各パケットの放出と同期させることが可能である。しかし、同一のエネルギーを有するものの質量電荷比が異なるイオンは、異なる速度で質量分析器に入る。よって、質量電荷比が異なるイオンは押出し電極に隣接する直交加速領域に異なる時間に到達する。イオンの放出と、その後の押出し電極への電圧印加との間の遅延時間により、直交加速され、質量分析器の直交加速ドリフト領域へと移送されるイオンの質量電荷比が決定される。これらのイオンに対しては、デューティサイクルを実質的に100%まで向上できる。しかし、他の質量電荷比を有するイオンは、押出し電極が電圧印加される際に押出し電極に隣接するように構成されてないため、これらのイオンに対するサンプリング効率は低くなる。質量電荷比がまったく異なるイオンのサンプリング効率はゼロとなることもある。
【0007】
他の手法として、3D四重極またはポールイオントラップ等の質量選択性イオントラップにイオンをトラップおよび保持する手法がある。このようなイオントラップは、選択された質量電荷比または質量電荷比の範囲を有するイオンのみを質量選択性イオントラップから排出するように作動させうる。従って、質量電荷比の範囲が比較的狭いイオンをイオントラップから排出する構成が可能となる。イオントラップからのイオンパケットの排出と押出し電極の電圧印加との間の遅延時間は、イオントラップから放出されるイオンの質量電荷比の範囲に必要な時間に設定可能である。他の質量電荷比を有するイオンは、イオントラップ内に保持され、イオントラップから放出されるイオンの後続パケットとして放出されることが可能である。各サイクルで、異なる質量電荷比の範囲を有するイオンをイオントラップから放出可能であり、それぞれの質量電荷比の範囲に対して適切な遅延時間を設定可能である。最終的に、イオントラップ内の全てのイオンを放出し、質量分析することができる。
【0008】
2つの異なる方法により四重極イオントラップを走査して質量選択的にイオンを排出する。1つ目は、RF電圧およびDC電圧のいずれかまたは両方を走査して、安定イオン運動のレジーム(regimes)から不安定イオン運動のレジームへとイオンを順次動かすものである。これは、質量選択不安定法(mass−selective instabilty)として知られている。2つ目は、補助AC電圧(ティックル電圧(tickle voltage))を四重極イオントラップのエンドキャップに印加して、特定の質量電荷比値を有するイオンを共鳴的に励起し最終的には排出するものである。これは、共鳴排出法(resonance ejection)として知られている。ACティックル電圧のRF電圧または周波数を走査して、異なる質量電荷比を有するイオンを順次排出することができる。
【0009】
質量電荷比における降順の走査は非常に迅速に行うことが望ましい。質量選択不安定法を用いて、逆の順序で軸方向にイオンを放出するには、イオンが安定領域のβz=0境界を順次横切るように走査を行うことが必要である。これは、イオントラップの中央リングとエンドキャップとの間に逆のDC電圧を漸進的に印加すること、またはDC電圧およびRF電圧の両方を走査することによって実現可能となる。
【0010】
質量電荷比の逆の順序でイオンを排出する他の方法として、イオントラップのエンドキャップ間に小さいDCダイポール(DC dipole)を印加する方法がある。βz値が最小となるイオンは、負キャップへと移される。この電圧が増加するのに伴って、比較的高い質量電荷比を有するイオンが最初に、次いで、比較的低い質量電荷比を有するイオンが排出される。この方法は、イオンを1つの軸方向のみに排出するという利点を有する。共鳴排出法を用いて、質量電荷比の逆の順序でイオンを排出してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の公知の構成では、比較的高いエネルギーおよび比較的大きいエネルギー拡散(spread)で、四重極イオントラップからイオンが共鳴的に排出されてしまう。イオンのエネルギーおよびエネルギー拡散は、走査の正確な方法によっては、数十電子ボルトから数百電子ボルトにまでなる場合がある。さらに、イオンのエネルギーおよびエネルギー拡散は、走査の方法によっては、質量電荷比とともに変化する。
【0012】
全てのイオンが直交加速領域にほぼ同一のエネルギーで到達することが望ましいため、上記公知の手法には問題があることが理解されるだろう。
【0013】
よい質量分解能を実現するためには、直交加速飛行時間分析器の直交加速領域を通過する際に、イオンビームがきちんと平行となることが望ましい。四重極イオントラップから排出されるイオンは、比較的大きいエネルギーおよび比較的大きいエネルギー拡散を有するため、イオンビームを狭く平行にするには、従来、これらイオンのかなりの割合を排除することが通常必要であった。このことにより、感度が低下する。
【0014】
改良された質量分析計を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一の態様によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器と、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置され、質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンを受け取るように構成され、複数の電極を含む第1のイオンガイドと、
第1の動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から受け取られたイオンが、第1のイオンガイドの別々の領域または部分に保持され、閉じ込められ、輸送され、および/または平行移動されるように、1つ以上の電圧または1つ以上の電圧波形を、複数の電極に印加するように構成および適合される第1の電圧手段と、
第1のイオンガイドの下流に配置される質量分析器とを含む質量分析計が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、3D四重極もしくはポールイオントラップまたは質量分析器を含んでもよい。3Dもしくはポールイオントラップまたは質量分析器は、リング電極と、2つの双曲(hyperbolic)エンドキャップ電極とを含むことが好ましい。
【0017】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、2Dもしくはリニア四重極イオントラップまたは質量分析器を含んでもよい。2Dもしくはリニア四重極イオントラップまたは質量分析器は、四重極ロッドセットイオントラップまたは質量分析器を含むことが好ましい。
【0018】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、円筒型イオントラップまたは質量分析器を含むことが好ましい。円筒型イオントラップまたは質量分析器は、円筒型電極と、1つ以上の平面エンドキャップ電極を含むことが好ましい。
【0019】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、キュービック(cubic)イオントラップまたは質量分析器を含むことが好ましい。キュービックイオントラップまたは質量分析器は、6つの平面電極を含むことが好ましい。イオントラップまたは質量分析器は、3位相ACまたはRF電圧源をさらに含み、1対以上の対向する平面電極が、3位相ACまたはRF電圧源の3位相の1つに接続または供給されることが好ましい。
【0020】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内に径方向にイオンを閉じ込めるACまたはRF電圧手段と、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内に軸方向にイオンを閉じ込めるDC電圧手段とを含む。
【0021】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、ペニング(Penning)イオントラップを含む。ペニングイオントラップは、イオンが円軌跡に沿って進む際に、イオンを径方向に閉じ込める磁界手段を含むことが好ましい。ペニングイオントラップは、ペニングイオントラップ内に軸方向にイオンを閉じ込めるDC電界手段、および/またはACもしくはRF電界手段をさらに含むことが好ましい。
【0022】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップは、静電またはオービトラップ(orbitrap)質量分析器を含む。静電またはオービトラップ質量分析器は、静電またはオービトラップ質量分析器内にイオンを閉じ込めるDC電界手段をさらに含むことが好ましい。静電またはオービトラップ質量分析器は、静電またはオービトラップ質量分析器の圧力を<10-9mbarに維持する手段をさらに含むことが好ましい。
【0023】
一の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器に、ACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段が提供される。ACまたはRF電圧手段は、(i)<50Vピークトゥピーク(peak to peak)、ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合されることが好ましい。ACまたはRF電圧手段は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合されることが好ましい。
【0024】
一の実施形態によると、動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器を、(i)<1.0×10-1mbar、(ii)<1.0×10-2mbar、(iii)<1.0×10-3mbar、(iv)<1.0×10-4mbar、(v)<1.0×10-5mbar、(vi)<1.0×10-6mbar、(vii)<1.0×10-7mbar、(viii)<1.0×10-8mbar、(ix)<1.0×10-9mbar、および(x)<1.0×10-10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段が提供される。
【0025】
一の実施形態によると、動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器を、(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-3〜10-2mbar、および(x)10-4〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段が提供される。
【0026】
動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内で、イオンはトラップされるが実質的には断片化されないことが好ましい。
【0027】
他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内で、イオンを実質的に断片化するように構成および適合される手段が提供されてもよい。
【0028】
質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを共鳴的にかつ/または質量選択的に排出するように構成および適合される排出手段をさらに含むことが好ましい。
【0029】
質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを非共鳴的にかつ/または質量選択的に排出するように構成および適合される排出手段を含んでもよい。
【0030】
質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを軸方向および/または径方向に排出または出射するように構成および適合される排出手段をさらに含むことが好ましい。
【0031】
排出手段は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、質量選択不安定法によりイオンを排出するために、質量選択性イオントラップまたは質量分析器に印加されるACまたはRF電圧の周波数および/または振幅を調整するように構成および適合されてもよい。
【0032】
排出手段は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、共鳴排出法によりイオンを排出するために、複数の電極にACまたはRF追加波形または電圧を重畳する手段をさらに含んでもよい。
【0033】
排出手段は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器からイオンを排出するために、質量選択性イオントラップまたは質量分析器にDCバイアス電圧を印加する手段をさらに含んでもよい。
【0034】
質量分析計は、0〜5ms、5〜10ms、10〜15ms、15〜20ms、20〜25ms、25〜30ms、30〜35ms、35〜40ms、40〜45ms、45〜50ms、または>50ms毎に1回、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へイオンをパルス状に入れる手段をさらに含むことが好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態によると、第1のイオンガイドは、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント(segemented)多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオンファンネル、または
(iii)平面、平板、もしくはメッシュ電極のスタックもしくはアレイとを含むことが好ましい。
【0036】
一の実施形態によると、質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流に配置される第2のイオンガイドをさらに含むことが好ましい。
【0037】
第2のイオンガイドは、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオンファンネル、または
(iii)平面、平板、もしくはメッシュ電極のスタックもしくはアレイとを含むことが好ましい。
【0038】
第1および/または第2のイオンガイドの多重極ロッドセットまたはセグメント多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8つより多くのロッドを含むロッドセットとを含んでもよい。
【0039】
第1および/または第2のイオンガイドのイオントンネルまたはイオンファンネルは、使用中にイオンが移送される開口を有する複数の電極、または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100の電極を含み、電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、実質的に同一のサイズまたは面積である開口を有するか、または、サイズもしくは面積が漸進的に増加および/もしくは減少する開口を有してもよい。電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法(dimensions)を有することが好ましい。
【0040】
一の実施形態によると、第1および/または第2のイオンガイドの平面、平板、またはメッシュ電極のスタックまたはアレイは、一般的に使用中にイオンが進行する平面に配置される複数、または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20の平面、平板、またはメッシュ電極を含み、平面、平板、またはメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、一般的に使用中にイオンが進行する平面に配置されてもよい。
【0041】
質量分析計は、第1および/または第2のイオンガイドの複数の平面、平板、またはメッシュ電極にACまたはRF電圧を供給するACまたはRF電圧手段をさらに含み、隣接する平面、平板、またはメッシュ電極には、前記ACまたはRF電圧の逆位相が供給されることが好ましい。
【0042】
第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドは、複数の軸方向セグメント(axial segment)、または少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100の軸方向セグメントを含むことが好ましい。
【0043】
質量分析計は、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドの軸方向長さ(axial length)の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って少なくともいくつかのイオンを駆動するために、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドを形成する電極に、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位(potential)、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形を印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含むことが好ましい。
【0044】
質量分析計は、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って少なくともいくつかのイオンを駆動するために、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドを形成する電極に、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段を含んでもよい。
【0045】
一の実施形態によると、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、および(xvi)>300mmからなる群から選択される軸方向長さを有してもよい。
【0046】
第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイド内に径方向にイオンを閉じ込めるために、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドの複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に、ACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含むことが好ましい。
【0047】
ACまたはRF電圧手段は、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドの複数の電極に、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合されることが好ましい。ACまたはRF電圧手段は、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドの複数の電極に、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合されることが好ましい。
【0048】
一の実施形態によると、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、または900〜1000の範囲にある質量電荷比を有する一価イオンは、第1のイオンガイドおよび/または第2のイオンガイドを通過するドリフトまたは通過時間が(i)0〜10μs、(ii)10〜20μs、(iii)20〜30μs、(iv)30〜40μs、(v)40〜50μs、(vi)50〜60μs、(vii)60〜70μs、(viii)70〜80μs、(ix)80〜90μs、(x)90〜100μs、(xi)100〜110μs、(xii)110〜120μs、(xiii)120〜130μs、(xiv)130〜140μs、(xv)140〜150μs、(xvi)150〜160μs、(xvii)160〜170μs、(xviii)170〜180μs、(xix)180〜190μs、(xx)190〜200μs、(xxi)200〜210μs、(xxii)210〜220μs、(xxiii)220〜230μs、(xxiv)230〜240μs、(xxv)240〜250μs、(xxvi)250〜260μs、(xxvii)260〜270μs、(xxviii)270〜280μs、(xxix)280〜290μs、(xxx)290〜300μs、および(xxxi)>300μsの範囲にあることが好ましい。
【0049】
一の実施形態によると、質量分析計は、第1のイオンガイドの少なくとも一部分を、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbar、および(viii)0.001〜0.01mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む。
【0050】
質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンを、第1のイオンガイドへと加速するように構成および適合される加速手段をさらに含み、第2の動作モードにおいて、イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%が、第1のイオンガイドに入ると断片化されることが好ましい。加速手段は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンが第1のイオンガイドへと移送される際に、イオンの運動エネルギーを漸進的に変化または増加させるように構成および適合されることが好ましい。
【0051】
前記加速手段は、電位差が維持される領域を含み、前記電位差は時間とともに漸進的に変化または増加することが好ましい。
【0052】
一の実施形態によると、質量分析計は、第1のイオンガイドに入るとイオンが実質的に断片化される高断片化動作モードと、第1のイオンガイドに入ると、イオンが実質的にほとんどまたは全く断片化されない低断片化動作モードとの間で、第1のイオンガイドに入る前にイオンが通過する電位差の切り替えまたは反復的な切り替えを行うように構成および適合される制御システムをさらに含むことが好ましい。
【0053】
高断片化動作モードにおいて、第1のイオンガイドに入るイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vからなる群から選択される電位差により加速されることが好ましい。
【0054】
低断片化動作モードにおいて、第1のイオンガイドに入るイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vからなる群から選択される電位差により加速されることが好ましい。
【0055】
制御システムは、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、または10s毎に少なくとも1回、第1のイオンガイドを高断片化動作モードと低断片化動作モードとの間で切替えるように構成および適合されることが好ましい。
【0056】
第1のイオンガイドは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンビームを受け取り、任意の特定の時間に第1のイオンガイドに少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の別々のイオンのグループまたはパケットが閉じ込められ、かつ/または分離されるようにイオンビームを変換または分割するように構成および適合され、各イオンのグループまたはパケットは、第1のイオンガイドに形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸に別々に閉じ込められ、かつ/または分離されることが好ましい。
【0057】
一の実施形態によると、第1のイオンガイドに閉じ込められ、かつ/または分離されるイオンのグループまたはパケットのそれぞれにおけるイオンの平均質量電荷比は、時間とともに漸進的に増加または減少し、かつ/または第1のイオンガイドの出口領域から第1のイオンガイドの入口領域へ向かって漸進的に増加または減少する。
【0058】
第1の電圧手段は、第1のイオンガイドの長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って実質的に同時に平行移動される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の別々の軸方向ポテンシャル井戸を生成するように構成および適合されることが好ましい。
【0059】
第1のイオンガイドは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンを保持、閉じ込め、および/または分割し、かつ、(i)質量選択性イオントラップまたは質量分析器からイオンが出てくる順序および/または忠実度(fidelity)を実質的に維持しながら、かつ/または(ii)第1のイオンガイドに沿って1つ以上のイオンのグループまたはパケットが平行移動する際に、イオンの組成を実質的に維持しながら、第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って、1つ以上のイオンのグループまたはパケットのイオンを平行移動するように構成および適合されることが好ましい。
【0060】
一の実施形態によると、第1のイオンガイドは、第1のイオンガイド内で、イオンの運動エネルギーを、衝突により冷却化、実質的に熱中性子化(thermalise)、または実質的に減少させるように構成および適合される。
【0061】
質量分析計は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流にイオントラップをさらに含むことが好ましい。
【0062】
イオントラップは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へ、反復的にイオンをパルス状に入れるように構成および適合されることが好ましい。
【0063】
第2のイオンガイドは、(i)質量選択性イオントラップまたは質量分析器のサイクル時間または走査時間に実質的に対応する、または(ii)質量選択性イオントラップまたは質量分析器のサイクル時間または走査時間と実質的に異なるサイクル時間を有することが好ましい。第2のイオンガイドは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器と同期または非同期で作動させてもよい。
【0064】
動作モードにおいて、第2のイオンガイドは、第2のイオンガイドの出口寄り、出口近傍、または実質的に出口に位置するイオントラップ領域にイオンをトラップ、保持、または蓄積するように構成および適合されることが好ましい。
【0065】
イオンは、第2のイオンガイドのイオントラップ領域から周期的に放出され、質量選択性イオントラップまたは質量分析器へと渡され、移送され、または排出されることが好ましい。
【0066】
質量分析計は、第2のイオンガイドの少なくとも一部分を、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbar、および(viii)0.001〜0.01mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含むことが好ましい。
【0067】
一の実施形態によると、少なくともいくつかのイオンが、第2のイオンガイドに入ると断片化されるように、第2のイオンガイド内へイオンを加速するように構成および適合される加速手段をさらに含むことが好ましい。
【0068】
質量分析計は、イオンが実質的に最適に断片化されるように、第2のイオンガイドに入る前にイオンのエネルギーを最適化するように構成および適合される手段をさらに含むことが好ましい。
【0069】
質量分析計は、第2のイオンガイドに入るとイオンが実質的に断片化される第1の動作モードと、第2のイオンガイドに入るとイオンが実質的にほとんどまたは全く断片化されない第2の動作モードとの間で、第2のイオンガイドに入る前にイオンが通過する電位差の切り替えまたは反復的な切り替えを行うように構成および適合される制御システムをさらに含むことが好ましい。
【0070】
第1の動作モードにおいて、第2のイオンガイドに入るイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vからなる群から選択される電位差により加速されることが好ましい。
【0071】
第2の動作モードにおいて、第2のイオンガイドに入るイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vからなる群から選択される電位差により加速される。
【0072】
制御システムは、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、または10s毎に少なくとも1回、第2のイオンガイドを第1の動作モードと第2の動作モードとの間で切替えるように構成および適合されることが好ましい。
【0073】
質量分析計は、ガスまたは他の分子との衝突または衝撃による衝突誘起解離(「CID」)によりイオンを断片化するフラグメンテーションまたは衝突セルをさらに含むことが好ましい。
【0074】
質量分析計は、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーション装置(device)、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーション装置、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外放射誘起解離装置、(viii)紫外放射誘起解離装置、(ix)ノズル−スキマー間(nozzle−skimmer)インターフェースフラグメンテーション装置、(x)イオン源フラグメンテーション装置、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xii)熱または温度源フラグメンテーション装置、(xiii)電場誘起フラグメンテーション装置、(xiv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応装置、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応装置、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応装置、および(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応装置からなる群から選択される衝突、フラグメンテーション、または反応装置をさらに含んでもよい。
【0075】
なお、反応装置とは、イオン、原子、または分子が再配置される(rearranged)か、または反応することにより新たな種のイオン、原子、または分子が形成される装置を含むと解釈される。X−Y反応フラグメンテーション装置は、XとYとを結合させて生成物を形成し、次いでその生成物を断片化する装置を意味する。これは、フラグメンテーション装置とは、本質的に、最初に生成物を形成することなく、イオンが断片化されてもよいという点で異なる。X−Y反応装置は、XとYとを結合させて生成物を形成するが、その後その生成物は必ずしも断片化されるとは限らない装置を意味する。
【0076】
質量分析計は、第2のイオンガイドの上流および/または下流に配置される、質量フィルタ、四重極ロッドセット質量フィルタもしくは分析器、飛行時間質量フィルタもしくは質量分析器、ウィーンフィルタ(Wein filter)、または扇形磁場質量フィルタもしくは質量分析器を含んでもよい。
【0077】
一の実施形態によると、第1のイオンガイドと質量分析器との間に配置される、移動装置、アインツェルレンズ、またはイオン光学レンズ装置が備えられる。
【0078】
質量分析計は、イオン源をさらに含むことが好ましい。イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン
【0079】
イオンガイドから飛行時間質量分析器内へ最初のタイミングで放出され、押出しおよび/または引き込み電極(puller electrode)の付近の領域に到達し、次いで、押出しおよび/または引き込み電極が、最初のタイミングに続く遅延時間後、電圧印加されることが好ましい。
【0080】
質量分析器は、遅延時間が漸進的に変化、増加、または減少するように構成および適合されてもよい。
【0081】
遅延時間は、所望の荷電状態を有するイオンが実質的に直交加速され、不必要な荷電状態を有するイオンが実質的に直交加速されないように設定され、所望の荷電状態および/または不必要な荷電状態は、(i)一価イオン、(ii)二価イオン、(iii)三価イオン、(iv)四価イオン、(v)五価イオン、(vi)5よりも大きい価数のイオン、および(vii)多価イオンからなる群から選択されてもよい。
【0082】
第1の複数のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられ、第2の複数のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられる前に、押出しおよび/または引き込み電極は、少なくともx回電圧印加され、xは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250からなる群から選択されることが好ましい。
【0083】
押出しおよび/または引き込み電極は、0〜10μs、10〜20μs、20〜30μs、30〜40μs、40〜50μs、50〜60μs、60〜70μs、70〜80μs、80〜90μs、90〜100μs、100〜110μs、110〜120μs、120〜130μs、130〜140μs、140〜150μs、150〜160μs、160〜170μs、170〜180μs、180〜190μs、190〜200μs、200〜210μs、210〜220μs、220〜230μs、230〜240μs、240〜250μs、250〜260μs、260〜270μs、270〜280μs、280〜290μs、290〜300μs、または>300μs毎に1回、電圧印加されることが好ましい。
【0084】
押出しおよび/または引き込み電極は、第1のイオンガイドからイオンが出射、または、そうでなければ排出されるように、第1のイオンガイドの端部へ平行移動される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または>20の軸方向ポテンシャル井戸毎に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または>20回電圧印加されることが好ましい。
【0085】
一の実施形態によると、第1の複数のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられ、第2の複数のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられる前に、少なくともyの別々の軸方向ポテンシャル井戸が、第1のイオンガイド内に生成もしくは形成、および/または第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って平行移動され、yは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250からなる群から選択される。
【0086】
質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2Dまたはリニア四重極質量分析器、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、および(xi)フーリエ変換質量分析器からなる群から選択されてもよい。
【0087】
一の実施形態によると、(i)一価イオン、(ii)二価イオン、(iii)三価イオン、(iv)四価イオン、(v)五価イオン、(vi)5よりも大きい価数のイオン、および(vii)多価イオンに関する質量スペクトルデータを含む質量スペクトルが生成されるように、質量分析器により得られた質量スペクトルデータをフィルタするように構成および適合される処理手段をさらに含むことが好ましい。
【0088】
本発明の一態様によると、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンを、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置され、複数の電極を含む第1のイオンガイドで受け取る工程と、
第1の動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から受け取られたイオンが、第1のイオンガイドの別々の領域または部分に保持され、閉じ込められ、、輸送され、および/または平行移動されるように、1つ以上の電圧または1つ以上の電圧波形を、第1のイオンガイドの電極に印加する工程と、
第1のイオンガイドの下流に質量分析器を備える工程とを含む質量分析方法が提供される。
【0089】
本発明の一態様によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、使用中に、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形がイオンガイドに印加される質量分析計が提供される。
【0090】
本発明の一態様によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、使用中に、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧がイオンガイドに印加される質量分析計が提供される。
【0091】
本発明の一態様によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、使用中に、複数の軸方向ポテンシャル井戸が、イオンガイドに生成され、かつ/またはイオンガイドに沿って平行移動される質量分析計が提供される。
【0092】
本発明の一態様によると、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形をイオンガイドに印加する工程とを含む質量分析方法が提供される。
【0093】
本発明の一態様によると、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧をイオンガイドに印加する工程とを含む質量分析方法が提供される。
【0094】
本発明の一態様によると、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成し、かつ/またはイオンガイドに沿って複数の軸方向ポテンシャル井戸が平行移動する工程とを含む質量分析方法が提供される。
【0095】
好適な実施形態によると、特定の質量電荷比を有するイオンは質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的に排出または出射され、異なる質量電荷比を有する他のイオンは質量選択性イオントラップまたは質量分析器内にトラップされたままであることが好ましい。実質的に、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から排出または出射された全てのイオンが、次いで直交加速飛行時間質量分析器の直交加速ドリフトまたはフライト領域へと直交加速されることが好ましい。
【0096】
好適な本実施形態の方法は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出射された少なくともいくつかのイオンをイオンガイドへと集める工程とを含むことが好ましい。イオンは、イオンガイドの電極へ不均一ACまたはRF電界を印加することにより、イオンガイド内に径方向に閉じ込められることが好ましい。好適な本実施形態によると、イオンは、イオンガイド内のイオンの各グループまたはパケットを分離することが好ましい一連のポテンシャルの山または障壁により、グループまたはパケットに分割されることが好ましい。イオンは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器からの排出時間に応じて、種々のグループまたはパケットへと分割または分離されることが好ましい。各軸方向ポテンシャル井戸内のイオンの平均質量電荷比は、異なることが好ましい。
【0097】
イオンは、イオンガイド内で衝突により冷却化されることが好ましい。イオンは、イオンガイドの軸または軸方向長さに沿って移動、または、そうでなければ平行移動されるように構成されることが好ましい一連のポテンシャルの山または障壁によって前方へと推進されることにより、イオンガイドに沿って、またはイオンガイドを通って輸送されることが好ましい。
【0098】
一の実施形態によると、質量スペクトルは、飛行時間質量分析器を用いて得られることが好ましい。質量分析器は、イオンガイドの長さに沿って平行移動されたイオンの1つ以上のグループまたはパケットに含まれるイオンの質量電荷比を質量分析することが好ましい。
【0099】
直交加速飛行時間質量分析器を含む従来の質量分析計においては、ほぼ同一のエネルギーを有するイオンは、直交加速場が周期的に印加される直交加速領域を通過するように構成されていた。直交加速領域の長さ、直交加速領域を通過する際のイオンのエネルギー、および直交加速電場の印加頻度によって、飛行時間質量分析器による後続の分析のためにイオンをサンプリングするサンプリングデューティサイクルが決定される。
【0100】
ほぼ同一のエネルギーを有するものの質量電荷比が異なるイオンは、異なる速度を有するため、異なるサンプリングデューティサイクルを有することとなる。
【0101】
好適な本実施形態の一態様によると、イオンは、各イオンパケットのイオンが比較的狭い範囲の質量電荷比ひいては速度を有するように、イオンガイドから一連のパケットとして放出されるように構成されることが好ましい。従って、イオンパケットに含まれる全てのイオンは、直交加速電場が印加されると実質的に全てのイオンが飛行時間質量分析器のドリフトまたはフライト領域へと直交加速されるように、直交加速領域に到達するように構成されることが好ましい。結果として、高いサンプリングデューティサイクルが実現可能である。
【0102】
高いサンプリングデューティサイクルを実現するために、各イオンパケット内のイオンの質量電荷比の範囲は、比較的狭くなるように構成されることが好ましい。この構成は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の走査またはステッピング(stepping)率を適切に選択することによって実現してもよい。
【0103】
各イオンパケット内のイオンのエネルギー拡散は、比較的低くなるように構成されることが好ましい。この構成は、例えば、イオンガイド内のイオンを衝突により冷却することによって実現してもよい。
【0104】
各イオンパケットは、イオンが飛行時間質量分析器の直交加速領域に到達する時間が、好ましくは比較的短くなるように、飛行時間質量分析器の上流のイオンガイドから放出されることが好ましい。従って、イオンには、分散する時間があまりないことが好ましい。結果的に、イオンガイドから放出された各イオンパケットのイオンは、飛行時間質量分析器の直交加速領域の長さよりも小さい範囲で、軸方向に分散することが好ましい。この構成は、イオンガイドからのイオンの放出ポイントから飛行時間質量分析器の直交加速領域までの距離を、イオンガイドから放出される各イオンパケット内のイオンのエネルギーおよび質量電荷比の範囲を前提として比較的短くすることによって実現してもよい。
【0105】
好適な本実施形態によると、飛行時間質量分析器の直交加速領域にわたって印加されることが好ましい直交加速電場は、直交加速領域へのイオンの到達と同期させて印加されることが好ましい。
【0106】
好適な本実施形態によると、飛行時間質量分析器の上流のイオンガイドから放出されるイオンパケットの全てのイオンに対して、実質的に100%のサンプリングデューティサイクルが実現可能である。同一または最適な条件が、イオンガイドから放出される各イオンパケットに適用されるように構成される場合、イオンガイドから放出される全てのイオンパケットの全てのイオンに対して、実質的に100%のサンプリングデューティサイクルが実現できる。
【0107】
好適な本実施形態は、比較的高いまたは実質的に100%のサンプリングデューティサイクルを提供するために、直交加速飛行時間質量分析器に連結される質量選択性イオントラップまたは質量分析器を含む。イオンガイドが、質量選択性イオントラップまたは質量分析器と直交加速飛行時間質量分析器との間に配置されることが好ましい。
【0108】
好適な本実施形態によると、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形が、イオンガイドの電極に印加されることが好ましい。イオンは、イオンガイドの軸に沿って移動、または、そうでなければ平行移動されるように構成されることが好ましい一連のポテンシャルの山または障壁によって、イオンガイドに沿って輸送されることが好ましい。
【0109】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器とイオンガイドとは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の出口に出てくるイオンが、質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てきたのと実質的に同一の順序で、イオンガイドに沿って、一連のパケットとして好ましくは輸送されるように、十分密接に連結されていることが好ましい。
【0110】
直交加速飛行時間質量分析器は、イオンガイドの下流に位置することが好ましい。イオンガイドと直交加速飛行時間質量分析器とは、イオンガイドから放出される各イオンパケットが、好ましくは、実質的に100%サンプリングデューティサイクルで直交加速飛行時間質量分析計にサンプリングされるように、十分密接に連結されていることが好ましい。
【0111】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、比較的狭い質量電荷比の範囲を有するイオンを、一連の不連続パケットとして放出するように構成されてもよい。また、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、質量電荷比に応じて順番にイオンを放出するように走査されてもよい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、比較的低い質量電荷比値から比較的高い質量電荷比値へと走査されてもよい。また、質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、比較的高い質量電荷比値から比較的低い質量電荷比値へと走査されてもよい。
【0112】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の走査時間は、1msから1sの間、好ましくは5から200msの間、より好ましくは10から100msの間であってもよい。飛行時間質量測定試験におけるサイクル時間は、10から250μsの間、好ましくは20から125μsの間、さらに好ましくは約50μsであってもよい。
【0113】
一の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の走査時間は、20msに設定されてもよい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンが、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイド内で連続して生成されることが好ましい400のパケットまたは軸方向ポテンシャル井戸の1つに集められるように構成されてもよい。イオンガイド内で生成される各軸方向ポテンシャル井戸は、サイクル時間50μsを有するように構成されてもよい。イオンガイドの長さに沿って平行移動される各ポテンシャル井戸に対して、飛行時間質量分析器の直交加速またはドリフト領域へのイオンの直交加速または噴射の対応するサイクルがあることが好ましい。
【0114】
イオンガイドからのイオンパケットの放出と、直交加速領域への直交加速電場の印加(すなわち、押出しおよび/または引き込み電極への押出し電圧の印加)との間の遅延時間は、イオンガイドから放出される各パケットの対象イオンの質量電荷比に応じて、サイクル毎に、漸進的に変化するように構成されてもよい。
【0115】
イオン源が、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流に配置されてもよい。イオン源は、レーザ脱離イオン化(「LDI」)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、またはシリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源等のパルス化イオン源であってもよい。
【0116】
また、連続イオン源を備えてもよく、その場合、イオンを保持し、質量選択性イオントラップまたは質量分析器に周期的に放出するイオントラップをさらに備えてもよい。連続イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、電子衝撃(「EI」)イオン源、大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、化学イオン化(「CI」)イオン源、高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、電界イオン化(「FI」)イオン源、または電界脱離(「FD」)イオン源を含んでもよい。また、他の連続イオン源または擬似連続イオン源が用いられてもよい。
【0117】
質量フィルタが、イオン源の下流かつイオントラップの上流に配置されてもよい。この質量フィルタは、単一の質量電荷比または特定の質量電荷比の範囲を有する親または前駆イオンを移送するのに用いることができる。質量フィルタは、多重極ロッドセット、四重極質量フィルタ、飛行時間質量フィルタ、ウィーンフィルタ、または扇形磁場質量フィルタを含んでもよい。
【0118】
質量分析計は、イオントラップの上流に、衝突、フラグメンテーション、または反応装置を含んでもよい。ある動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーション、または反応装置に入る少なくともいくつかのイオンは、断片化または反応させられることが好ましい。
【0119】
以下に本発明の種々の実施形態を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【0120】
本発明の第1の実施形態を、図1を参照して説明する。好ましくはイオンビーム1を生成するエレクトロスプレーイオン源等の連続イオン源が備えられることが好ましい。イオンビーム1は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の上流に配置されることが好ましい第1のイオントラップ2へと渡されることが好ましい。イオンは、第1のイオントラップ2にトラップされることが好ましく、次いで、第1のイオントラップ2の出口または下流に配置されることが好ましいイオンゲート3に引出電圧を印加することによって、第1のイオントラップ2の外へパルス状に出されることが好ましい。
【0121】
第1のイオントラップ2は、四重極ロッドセットまたは他の多重極ロッドセットを含んでもよい。第1のイオントラップ2は、約75mmの長さを有することが好ましい。特に好適な実施形態によると、第1のイオントラップ2は、使用中にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含むイオントンネルイオントラップを含んでもよい。開口は、全て同一のサイズであることが好ましい。他の実施形態においては、第1のイオントラップ2の電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、実質的に同一のサイズの開口を有する。第1のイオントラップ2は、約50の電極を含むことが好ましい。第1のイオントラップ2の隣接する電極は、使用中にイオンが径方向に第1のイオントラップ2内に閉じ込められるように、2位相ACまたはRF電圧源の逆位相に接続されることが好ましい。ACまたはRF電圧源は、0.1〜3.0MHz、好ましくは0.3〜2.0MHz、さらに好ましくは0.5〜1.5MHzの範囲の周波数を有することが好ましい。
【0122】
好適な本実施形態においては、第1のイオントラップ2の電極は、DC電圧Vrf1に維持されることが好ましい。第1のイオントラップ2の下流に配置されるイオンゲート3は、第1のイオントラップ2の電極が維持されることが好ましい電圧Vrf1よりも高いDC電圧Vtrapに、通常保たれることが好ましい。イオンゲート3に印加される電圧は、電圧Vrf1よりも低いことが好ましい電圧Vextractへと、周期的に降下させることが好ましい。結果的に、イオンは、第1のイオントラップ2の外へ加速され、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4へと入れられることが好ましい。イオンゲート3に印加される電圧は、イオンが、実質的にパルスとして第1のイオントラップ2から排出され、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の内へ好ましくはパルス状に入れられるように、比較的短い時間で降下させてもよい。
【0123】
好ましさが劣る好ましい実施形態においては、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、またはレーザ脱離イオン化イオン源等のパルス化イオン源を、連続イオン源の代わりに用いてもよい。パルス化イオン源が用いられる場合、第1のイオントラップ2およびそれに付随するイオンゲート3は、なくてもよい。
【0124】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、質量電荷比に応じて、質量選択的にイオンを排出または出射するように構成されることが好ましい。図1に示すように、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、3D四重極またはポールイオントラップ質量分析器で構成されることが好ましい。また、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、円筒型イオントラップまたは質量分析器、キュービックイオントラップまたは質量分析器、2Dもしくはリニア四重極イオントラップまたは質量分析器、あるいは、DCおよびRFイオン閉じ込め電界の両方を用いる種々の構成を含んでもよい。
【0125】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の典型的な走査時間は、数ミリ秒から数百ミリ秒の程度の時間であってもよい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、質量電荷比に応じて、イオンを順次排出または出射するように構成されることが好ましい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、イオンを共鳴的に励起して共鳴的に排出することが好ましい。全てのイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から排出された後、好ましくは新たな動作サイクルを開始する質量選択性イオントラップまたは質量分析器4へと、新たなパルスイオンが入れられることが好ましい。1回の試験における運転で多くのサイクルが実施されてもよい。
【0126】
差動ポンピング開口部(differemtial pumping aperture)5が、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置されてもよい。イオンガイド6が、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4および差動ポンピング開口部5の下流に配置されることが好ましい。イオンガイド6は、使用中にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含むことが好ましい。イオンガイド6を形成する電極の開口は、全て同一のサイズであることが好ましい。他の実施形態においては、電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、実質的に同一のサイズの開口を有する。隣接する電極は、2位相ACまたはRF源の逆位相に接続されることが好ましい。
【0127】
1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形が、イオンガイド6の1つ以上の電極に印加されることが好ましい。1つ以上のポテンシャルの山または障壁が、イオンガイド6内に生成されることが好ましい。1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは電位は、1つ以上のポテンシャルの山または障壁がイオンガイド6の軸に沿って好ましくは移動することによりイオンがイオンガイド6の出口に向かって推進されるように、イオンガイド6の一連の電極に漸進的に印加されることが好ましい。
【0128】
イオンガイド6は、使用中に、0.001〜0.01mbarの範囲の圧力に維持されることが好ましい真空室に備えられていることが好ましい。好ましさが劣る好ましい実施形態によると、真空室は、0.01mbarより高い圧力から、1mbarまたはそれに近い圧力に維持されていてもよい。また、好ましさが劣る好ましい他の実施形態によると、真空室は、0.001mbarより低い圧力に維持されていてもよい。
【0129】
イオンガイド6内のガス圧力は、イオン運動の衝突減衰を起こすのに十分であるものの、イオンの動きに過剰な粘性抵抗をかけるのには十分ではないことが好ましい。イオンガイド6に沿って平行移動されることが好ましい1つ以上のポテンシャルの山または障壁の振幅および平均速度は、イオンがポテンシャルの山または障壁から滑り落ちる(slip)ことのないものであることが好ましい。イオンは、質量、質量電荷比、またはイオン移動度に関係なく、進行するポテンシャルの各山または障壁より前に輸送されることが好ましい。
【0130】
他の動作モードにおいては、イオンは、十分にエネルギーを有し、イオンガイド6に入った時に、イオンガイド6に存在するガス分子と衝突してフラグメントまたは娘イオン(生成イオン)へと断片化するように構成されてもよい。その後のフラグメントまたは娘イオンの質量分析により、1つまたは複数の親イオンに関する貴重な質量スペクトル情報がもたらされる。
【0131】
一の実施形態によると、イオンは、実質的に断片化されないように十分に低いエネルギーでイオンガイド6に入るように構成されてもよい。
【0132】
イオンガイド6に入るイオンのエネルギーは、例えば、イオンガイド6に入る前のイオンにかかる電圧または電位差のレベルを設定することによって制御可能である。電圧差は好ましくはほぼ即時に切り替え可能であるため、実質上、イオンガイド6は、比較的高い断片化動作モードと比較的低い断片化動作モードとの間で切り替え可能であると考えられる。
【0133】
イオンガイド6に入る前のイオンにかかる電圧または電位差は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へのイオンの走査中に変化させてもよい。電圧または電位差は、1つ以上の種のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てきてイオンガイド6へと前方に移送される際に、そのイオンに対して衝突エネルギーが最適化されるように設定されてもよい。また、衝突エネルギーは、各種のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てきてイオンガイド6へと好ましくは加速される際に、そのイオンに対して衝突エネルギーがほぼ最適化されるように、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へのイオンの走査中に漸進的に変化させてもよい。
【0134】
イオンガイド6に入る前のイオンにかかる電圧または電位差は、他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へのイオンの走査の連続したサイクルにおいて、比較的低い値と比較的高い値との間で切替えられてもよい。イオンガイド6に入る前のイオンにかかる高い値の電圧または電位差は、各種のイオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てくる際に、そのイオンに対して衝突エネルギーがほぼ最適化されるように、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へのイオンの走査中に漸進的に変化させてもよい。
【0135】
好適な実施形態によると、差動ポンピング開口部7が、イオンガイド6の下流に配置されてもよい。もう1つの差動ポンピング開口部9を通って、質量分析器を含むことが好ましい分析室へとイオンを加速およびガイドするために、1つ以上のイオン光学レンズ8が、イオンガイド6および差動ポンピング開口部7の下流に配置されることが好ましい。
【0136】
質量分析器は、直交加速ドリフトまたはフライト領域にイオンを噴射する押出しおよび/または引き込み電極10を含む直交加速飛行時間質量分析器13を含むことが好ましい。直交加速ドリフトまたはフライト領域を進行するイオンを、押出しおよび/または引き込み電極10に比較的近接して位置することが好ましいイオン検出器12へと反射させるリフレクトロン11が、ドリフトまたはフライト領域の一端に配置されることが好ましい。当該分野においては周知であるように、直交加速飛行時間質量分析器に入るイオンパケットの少なくともいくつかのイオンは、直交加速ドリフトまたはフライト領域へと直交加速されることが好ましい。
【0137】
イオンは、質量電荷比に応じて、直交加速ドリフトまたはフライト領域で、一時的に分離されることが好ましい。より低い質量電荷比を有するイオンは、比較的高い質量電荷比を有するイオンよりも急速にドリフトまたはフライト領域を進行する。したがって、比較的低い質量電荷比を有するイオンは、比較的高い質量電荷比を有するイオンよりも先にイオン検出器12へ到達する。イオンがドリフトまたはフライト領域内を流れてイオン検出器12へ到達するのにかかる時間を用いて、対象イオンの質量電荷比を正確に決定することができる。イオン強度およびそれに対応する質量電荷比を用いて、質量スペクトルを作成することが可能である。
【0138】
図2Aは、イオントラップ2のいくつかの電極、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4、イオンガイド6、光学レンズ8、および飛行時間質量分析器13の押出し電極10を概略的に示す。図2Bは、イオントラップ2、およびイオントラップ2と質量選択性イオントラップまたは質量分析器4との間に配置されるイオンゲート3に印加されることが好ましい静的および過渡DC電圧、ならびに質量選択性イオントラップまたは質量分析器4、イオンガイド6、および光学レンズ8の電極が保たれている相対電位を示す。質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置されるイオンガイド6の電極に印加される複数の過渡DC電圧または電位を概略的に示す。イオン光学レンズ8にわたって維持される静的電位または電圧差も示す。
【0139】
イオンをイオントラップに保持し、イオントラップからイオンを排出して、直交加速飛行時間質量分析器へとイオンを移送することが知られている。イオントラップから排出されるイオンパケットのイオンは、飛行時間質量分析器の押出し電極に隣接して配置される直交加速領域に到達する時間によって、空間的に分散する。比較的低い質量電荷比を有するイオンは、比較的高い質量電荷比を有するイオンよりも先に直交加速領域へ到達する。押出し電極は、イオントラップからイオンがまず放出されてからの所定の時間後に、直交加速飛行時間質量分析器へとイオンを噴射するように構成されてもよい。イオンの直交加速領域への到達時間はイオンの質量電荷比に左右されるため、遅延時間を適切に設定することにより、約100%のサンプリングデューティサイクルで、特定の質量電荷比を有するイオンが直交加速飛行時間質量分析器へと押出し電極により噴射される構成が可能となる。
【0140】
図3は、特定の質量電荷比M2を有する全てのイオンが、飛行時間質量分析器の直交加速ドリフトまたはフライト領域へと直交加速されるように、飛行時間質量分析器の押出し電極10への電圧印加のタイミングを構成する方法を示す。
【0141】
時間T=0において、イオンパケットは、飛行時間質量分析器の直交加速領域の上流に配置されるイオントラップから非質量選択的に放出される。一定の時間Td後、質量電荷比M2を有するイオンは、飛行時間質量分析器の押出し電極の中心に隣接する領域に到達している。次いで、押出し電極10は、質量電荷比M2を有するイオンが飛行時間質量分析器の直交ドリフトまたはフライト領域へと噴射または直交加速されるように、電圧印加されることが好ましい。質量電荷比M2を有するイオンに対するデューティサイクルは、実質的に100%になり得る。
【0142】
M2よりも大きい質量電荷比M4を有するイオンは、押出し電極10が電圧印加される時間までに、直交加速領域に到達していない。従って、質量電荷比M4を有するイオンは、直交加速飛行時間質量分析器のドリフトまたはフライト領域へと噴射または直交加速されない。同様に、M2よりも小さい質量電荷比M0を有するイオンは、押出し電極10が電圧印加される時間までには、押出し電極10を通過している。従って、質量電荷比M0を有するイオンも、直交加速飛行時間質量分析器のドリフトまたはフライト領域へと噴射または直交加速されない。
【0143】
M2よりもわずかに大きい質量電荷比M3を有するイオンおよびM2よりもわずかに小さい質量電荷比M1を有するイオンは、飛行時間質量分析器の直交ドリフトまたはフライト領域へと部分的に噴射または直交加速される。
【0144】
遅延時間Tdを調整することにより、いかなる特定の質量電荷比を有するイオンの移送または直交加速も所望どおりに最適化することが可能である。
【0145】
図4は、特定の質量電荷比M2を有するイオンが100%近いデューティサイクルで直交加速され、他の質量電荷比を有するイオンのデューティサイクルがかなり急速に0%にまで減少する上記したデューティサイクルを増加させる公知の方法の、サンプリングデューティサイクルを示す。図4は、連続したイオンビームが飛行時間質量分析器の直交加速領域へと入れられ、押出し電極が反復的にパルス化を行うことによって得られる、0%と約20%との間で変化するデューティサイクルも示す。
【0146】
好適な本実施形態によると、いくつかのイオンのみに対してではなく、対象となりうる質量電荷比を有する全てのイオンに対して有利に、比較的高いデューティサイクルを得ることが可能である。
【0147】
ここで、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形が印加されるイオンガイド6に連結される質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の組み合わせが、従来の構成と比較して、どのようにデューティサイクルを向上できるかを説明する。イオンガイド6は、直交加速飛行時間質量分析器13に密接に連結されていることが好ましい。好適な実施形態によると、直交加速飛行時間質量分析器13は、特定の荷電状態または荷電状態の範囲を有する実質的に全てのイオンがイオンガイド6から出てくる際に、それらのイオンを取得および分析するように構成されることが好ましい。
【0148】
図5は、イオンガイド6の端部に到達した軸方向ポテンシャル井戸から放出された実質的に全てのイオンが直交加速されるような、飛行時間質量分析器の押出し電極10への電圧印加のタイミングを構成する方法を示す。1つ以上の過渡DC電圧または電位が、イオンガイド6に印加されることが好ましい。イオンは、イオンガイド6で質量電荷比に応じてグループ化されることが好ましい。L1は、イオンガイド6またはイオンガイド6の下流に配置される開口7の出口から、押出し電極10の中心への距離を表す。Wbは押出し電極10の幅を表す。時間T=0において、質量電荷比M2を有するイオンパケットは、イオンガイド6の出口領域に到達したポテンシャル井戸から放出される。時間Td後、質量電荷比M2を有するイオンは、押出し電極10に対向する直交加速領域へ到達している。次いで、押出し電極10は、質量電荷比M2を有するイオンが飛行時間質量分析器13の直交ドリフトまたはフライト領域へと好ましくは噴射されるように、電圧印加されることが好ましい。適切な短い距離L1を選択し、押出し電極10が適切な広い幅Wbを有するように構成することによって、質量電荷比M2のイオンが押出し電極10に隣接する領域に到達する際の、これらのイオンの空間的拡散が、押出し電極10の幅Wbよりも小さくなるように構成されることが好ましい。従って、押出し電極10が電圧印加されると、実質的に全てのイオンが直交加速される。これにより、質量電荷比M2を有するイオンに対して、実質的に100%のサンプリングデューティサイクルが得られることとなる。イオンガイド6から放出されるイオンパケットの全てのイオンの質量電荷比の範囲が十分に小さい場合、これらイオンパケットの全てのイオンは、押出し電極10の幅Wbよりも小さい空間を占めることが理解されよう。従って、イオンガイド6の端部に平行移動された軸方向ポテンシャル井戸から放出された全てのイオンに対して、実質的に100%のサンプリングデューティサイクルを得ることが可能となる。
【0149】
イオンパケットがイオンガイド6から放出された後、これらのイオンを噴射するために、所定の遅延時間Td後、押出し電極10が電圧印加されることが好ましい。所定の遅延時間Tdは、イオンガイド6から好ましくは放出される次のイオンパケットのための要求どおりに調整されることが好ましい。例えば、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の1回の走査中に、400パケットのイオンがイオンガイド6から放出される実施形態が実施されてもよい。説明のためのみに、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の走査時間は20msとし、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から排出されるイオンは、イオンガイド6において生成されることが好ましく、イオンガイド6の長さに沿って平行移動されることが好ましい400の別々のパケットまたはポテンシャル井戸の1つに集められるとする。イオンガイド6内で生成される各軸方向ポテンシャル井戸は50μsのサイクル時間を有する。イオンガイド6内で生成される各軸方向ポテンシャル井戸に対して、直交加速飛行時間質量分析器の対応するサイクルまたは電圧印加があることが好ましい。イオンガイド6からのイオンパケットの放出と、直交加速押出し電圧との間の遅延時間Tdは、イオンガイド6内における各パケットに含まれる対象イオンの質量電荷比に応じて、サイクル毎に、漸進的に変化または増加させることが好ましい。
【0150】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器4は、質量電荷比において昇順または降順の走査を行ってもよい。遅延時間Tdは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の走査法則、および/またはイオンガイド6内の各パケットまたはポテンシャル井戸のイオンの質量電荷比に応じて、設定可能である。
【0151】
図6は、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、第1の実施形態と類似するが、第1の実施形態においては質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の上流に配置されうるイオントラップ2が、第2のイオンガイド14に置き換えられていることが好ましい点で、第1の実施形態と異なることが好ましい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器4、および質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置されるイオンガイド6は、本発明の第1の実施形態に関して上記に記載されたいずれの形態をとってもよい。同様に、第1の実施形態に関して上記に記載されたイオン源を、第2の実施形態に関しても用いることができる。
【0152】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の上流に配置される第2のイオンガイド14を形成する電極の開口は、全て同一のサイズであることが好ましい。他の実施形態においては、電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、実質的に同一のサイズの開口を有する。第2のイオンガイド14の隣接する電極は、2位相ACまたはRF源の逆位相に接続されることが好ましい。1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形が、第2のイオンガイド14の長さに沿って平行移動されることが好ましい1つ以上のポテンシャルの山または障壁を形成または生成するために、第2のイオンガイド14を形成する1つ以上の電極に印加されることが好ましい。
【0153】
1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形は、イオンが推進または駆動される方向に第2のイオンガイド14の軸に沿って1つ以上のポテンシャルの山または障壁が好ましく移動するように、第2のイオンガイド14の一連の電極に漸進的に印加されることが好ましい。
【0154】
第2のイオンガイド14は、使用中に、0.001〜0.01mbarの範囲の圧力に維持されることが好ましい真空室に備えられていることが好ましい。好ましさが劣る好ましい実施形態によると、真空室は、0.01mbarより高い圧力から、1mbarまたはそれに近い圧力に維持されていてもよい。好ましさが劣る好ましい他の実施形態によると、真空室は、0.001mbarより低い圧力に維持されていてもよい。
【0155】
ガス圧力は、イオン運動の衝突減衰を起こすのに十分であるものの、イオンの動きに過剰な粘性抵抗をかけるのには十分ではないことが好ましい。第2のイオンガイド14に沿って平行移動されることが好ましい1つ以上のポテンシャルの山または障壁の振幅および平均速度は、好ましくはポテンシャルの山または障壁からイオンが滑り落ちたり、または、そうでなければ通り越したりしないように設定されることが好ましい。イオンは、質量、質量電荷比、またはイオン移動度に関係なく、進行するポテンシャルの各山または障壁より前に輸送されることが好ましい。
【0156】
イオンは、第2のイオンガイド14中を輸送されることが好ましく、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4内へまたはそれに向かって、パケットとして放出されることが好ましい。第2のイオンガイド14の波サイクル(wave cycle)時間は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の走査時間または走査サイクルと等しくなるように構成されることが好ましい。
【0157】
また、イオンは、第2のイオンガイド14の出口近傍に配置されることが好ましいイオントラップ領域内に、蓄積および保持されてもよく、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の各走査の開始時に、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4へと放出されてもよい。この動作モードにおいて、第2のイオンガイド14の波サイクル時間は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4のものとは異なっていてもよい。
【0158】
一の動作モードにおいて、イオンは、十分にエネルギーを有しているために、第2のイオンガイド14に入った時に、第2のイオンガイド14に存在するガス分子と衝突してフラグメントまたは娘イオンへと断片化されるように構成されてもよい。結果として生じるフラグメントまたは娘イオンは、次いで、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4へと前方に移送されてもよい。フラグメントまたは娘イオンは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4内にトラップされるように構成されてもよい。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、好ましくは質量選択的に、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4外へ漸進的に走査されてもよい。よって、娘またはフラグメントイオンは、質量電荷比に応じて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から分離または順次排出されてもよい。
【0159】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から好ましくは排出される娘またはフラグメントイオンは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置されることが好ましい第1のイオンガイド6によって輸送されることが好ましい。フラグメントまたは娘イオンは、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置されることが好ましい第1のイオンガイド6の長さに沿って平行移動されることが好ましい多数の軸方向ポテンシャル井戸によって、受け取られることが好ましい。イオンは、第1のイオンガイド6の出口からイオンパケットとして放出されることが好ましく、第1のイオンガイド6から放出される各イオンパケットのイオンは、第1のイオンガイド6の下流に配置されることが好ましい直交加速飛行時間質量分析器13によって質量分析されるように構成されることが好ましい。
【0160】
一の実施形態によると、イオンは、断片化されないような比較的低いエネルギーで第2のイオンガイド14に入るように構成されてもよい。第2のイオンガイド14に入るイオンのエネルギーは、例えば、第2のイオンガイド14に入る前のイオンにかかる電圧差のレベルを設定することによって制御可能である。電圧差は、ほぼ即時に切り替え可能であるため、実質上、第2のイオンガイド14は、比較的高い断片化動作モードと比較的低い断片化動作モードとの間で切り替え可能であると考えられる。
【0161】
第2のイオンガイド14に入る前のイオンにかかる電圧差は、他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の連続した走査において、比較的低い値と比較的高い値との間で切替えられてもよい。
【0162】
さらに他の動作モードにおいて、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から排出されるフラグメントまたは娘イオンは、十分にエネルギーを有しているために、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置される第1のイオンガイド6に入った時に、イオンガイド6に存在するガス分子と衝突して第2世代のフラグメントまたは娘イオン(すなわち、孫娘イオン(grand−daughter ion))へと断片化されるように構成されてもよい。孫娘イオンを引き続いて質量分析することにより、これに関連付けられた娘またはフラグメントイオン、および関連する親または前駆イオンに関する貴重な質量スペクトル情報がもたらされる。
【0163】
イオンは、実質的に断片化されないような比較的低いエネルギーで、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置される第1のイオンガイド6に入るように構成されてもよい。質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の下流に配置される第1のイオンガイド6に入るイオンのエネルギーは、例えば、第1のイオンガイド6に入る前のイオンにかかる電圧差のレベルを設定することによって制御可能である。電圧差は、ほぼ即時に切り替え可能であるため、実質上、第1のイオンガイド6は、比較的高い断片化動作モードと比較的低い断片化動作モードとの間で切り替え可能であると考えられる。
【0164】
第1のイオンガイド6に入る前のイオンにかかる電圧差は、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の走査中に変化させてもよい。1つ以上のフラグメントまたは娘イオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てくる際に、そのフラグメントまたは娘イオンに対して衝突エネルギーが最適化されるように設定されてもよい。
【0165】
また、衝突エネルギーは、各フラグメントまたは娘イオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てくる際に、そのイオンに対して衝突エネルギーがほぼ最適化されるように、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の質量走査中に漸進的に変化させてもよい。
【0166】
第1のイオンガイド6に入る前のフラグメントまたは娘イオンにかかる電圧差は、他の実施形態によると、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の連続した走査において、比較的低い値と比較的高い値との間で切替えられてもよい。
【0167】
第1のイオンガイド6に入る前のフラグメントまたは娘イオンにかかる高い値の電圧差は、各フラグメントまたは娘イオンが質量選択性イオントラップまたは質量分析器4から出てくる際に、そのイオンに対して衝突エネルギーがほぼ最適化されるように、質量選択性イオントラップまたは質量分析器4の走査中に漸進的に変化させてもよい。
【0168】
本発明について好適な実施形態を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細において種々の変更が可能であることが当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、イオントラップ、質量選択性イオントラップまたは質量分析器、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイド、およびイオンガイドの下流に配置される直交加速飛行時間質量分析器を含む本発明の第1の実施形態を示す。
【図2】図2Aは、好適な実施形態によるイオントラップ、質量選択性イオントラップまたは質量分析器、イオンガイド、および直交加速飛行時間質量分析器の直交加速領域を示す。図2Bは、イオントラップ、質量選択性イオントラップまたは質量分析器、およびイオンガイドを通じて印加または維持されることが好ましい種々のDC電圧勾配および過渡DC電圧を示す。
【図3】図3は、直交加速飛行時間質量分析器の上流に配置されるイオントラップからイオンを非質量選択的に放出し、所定の遅延時間後、直交加速飛行時間質量分析器の押出し電極に電圧印加することにより、狭い質量電荷比の範囲を有するイオンに対するデューティサイクルを増加させる公知の方法を示す。
【図4】図4は、直交加速飛行時間質量分析器の上流に配置されるイオントラップからイオンを非質量選択的に放出し、所定の遅延時間後、直交加速飛行時間質量分析器の押出し電極が電圧印加されるように構成することにより得られるサンプリングデューティサイクルM2を示し、連続したイオンビームを飛行時間質量分析器に通過させることにより得られる、最大約22.5%に到達する比較的低いサンプリングデューティサイクルと対比している。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による直交加速飛行時間質量分析器の上流に配置されるイオンガイドから狭い質量電荷比の範囲を有するイオンを放出する方法を示す。ここで、イオンガイドから放出されるイオンは、直交加速飛行時間質量分析器の直交加速領域にイオンが到達する時間によって空間的に有意に分散されない。
【図6】図6は、第2のまたは追加のイオンガイドが、質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流に配置されることが好ましい本発明の第2の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器と、
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置され、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンを受け取るように構成され、複数の電極を含む第1のイオンガイドと、
第1の動作モードにおいて、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から受け取られたイオンが、前記第1のイオンガイドの別々の領域または部分に保持され、閉じ込められ、輸送され、および/または平行移動されるように、1つ以上の電圧または1つ以上の電圧波形を前記複数の電極に印加するように構成および適合される第1の電圧手段と、
前記第1のイオンガイドの下流に配置される質量分析器とを含む質量分析計。
【請求項2】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、3D四重極もしくはポールイオントラップまたは質量分析器を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
前記3Dもしくはポールイオントラップまたは質量分析器は、リング電極と、2つの双曲エンドキャップ電極とを含む請求項2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、2Dもしくはリニア四重極イオントラップまたは質量分析器を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記2Dもしくはリニア四重極イオントラップまたは質量分析器は、四重極ロッドセットイオントラップまたは質量分析器を含む請求項4に記載の質量分析計。
【請求項6】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、円筒型イオントラップまたは質量分析器を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記円筒型イオントラップまたは質量分析器は、円筒型電極と、1つ以上の平面エンドキャップ電極とを含む請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、キュービックイオントラップまたは質量分析器を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記キュービックイオントラップまたは質量分析器は、6つの平面電極を含む請求項8に記載の質量分析計。
【請求項10】
3位相ACまたはRF電圧源をさらに含み、1対以上の対向する平面電極が、前記3位相ACまたはRF電圧源の3位相の1つに接続または供給される請求項9に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内に径方向にイオンを閉じ込めるACまたはRF電圧手段と、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内に軸方向にイオンを閉じ込めるDC電圧手段とを含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器は、ペニングイオントラップを含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記ペニングイオントラップは、イオンが円軌跡に沿って進む際に、イオンを径方向に閉じ込める磁界手段を含む請求項12に記載の質量分析計。
【請求項14】
前記ペニングイオントラップは、前記ペニングイオントラップ内に軸方向にイオンを閉じ込めるDC電界手段、および/またはACもしくはRF電界手段を含む請求項12または13に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記質量選択性イオントラップは、静電またはオービトラップ質量分析器を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記静電またはオービトラップ質量分析器は、前記静電またはオービトラップ質量分析器内にイオンを閉じ込めるDC電界手段をさらに含む請求項15に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記静電またはオービトラップ質量分析器の圧力を<10-9mbarに維持する手段をさらに含む請求項15または16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器にACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項19】
前記ACまたはRF電圧手段は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合される請求項18に記載の質量分析計。
【請求項20】
前記ACまたはRF電圧手段は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合される請求項18または19に記載の質量分析計。
【請求項21】
動作モードにおいて、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器を、(i)<1.0×10-1mbar、(ii)<1.0×10-2mbar、(iii)<1.0×10-3mbar、(iv)<1.0×10-4mbar、(v)<1.0×10-5mbar、(vi)<1.0×10-6mbar、(vii)<1.0×10-7mbar、(viii)<1.0×10-8mbar、(ix)<1.0×10-9mbar、および(x)<1.0×10-10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項22】
動作モードにおいて、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器を、(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-3〜10-2mbar、および(x)10-4〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項23】
動作モードにおいて、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内で、イオンはトラップされるが実質的には断片化されない先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項24】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内で、イオンを実質的に断片化するように構成および適合される手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項25】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを共鳴的にかつ/または質量選択的に排出するように構成および適合される排出手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを非共鳴的にかつ/または質量選択的に排出するように構成および適合される排出手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項27】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、イオンを軸方向および/または径方向に排出または出射するように構成および適合される排出手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項28】
前記排出手段は、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、質量選択不安定法によりイオンを排出するために、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器に印加されるACまたはRF電圧の周波数および/または振幅を調整するように構成および適合される請求項27に記載の質量分析計。
【請求項29】
前記排出手段は、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、共鳴排出法によりイオンを排出するために、前記複数の電極にACまたはRF追加波形または電圧を重畳する手段をさらに含む請求項27または28に記載の質量分析計
【請求項30】
前記排出手段は、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器からイオンを排出するために、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器にDCバイアス電圧を印加する手段をさらに含む請求項27、28または29に記載の質量分析計。
【請求項31】
0〜5ms、5〜10ms、10〜15ms、15〜20ms、20〜25ms、25〜30ms、30〜35ms、35〜40ms、40〜45ms、45〜50ms、または>50ms毎に1回、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へイオンをパルス状に入れる手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項32】
前記第1のイオンガイドは、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオンファンネル、または
(iii)平面、平板、もしくはメッシュ電極のスタックもしくはアレイを含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項33】
前記多重極ロッドセットまたはセグメント多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8つより多くのロッドを含むロッドセットを含む請求項32に記載の質量分析計。
【請求項34】
前記イオントンネルまたはイオンファンネルは、使用中にイオンが移送される開口を有する複数の電極、または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは100の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、実質的に同一のサイズまたは面積である開口を有するか、または、サイズもしくは面積が漸進的に増加および/もしくは減少する開口を有する請求項32に記載の質量分析計。
【請求項35】
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する請求項34に記載の質量分析計。
【請求項36】
前記平面、平板、またはメッシュ電極のスタックまたはアレイは、一般的に使用中にイオンが進行する平面に配置される複数、または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20の平面、平板、またはメッシュ電極を含み、前記平面、平板、またはメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%は、一般的に使用中にイオンが進行する平面に配置される請求項32に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記複数の平面、平板、またはメッシュ電極にACまたはRF電圧を供給するACまたはRF電圧手段をさらに含み、隣接する平面、平板、またはメッシュ電極には、前記ACまたはRF電圧の逆位相が供給される請求項36に記載の質量分析計。
【請求項38】
前記第1のイオンガイドは、複数の軸方向セグメント、または少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは100の軸方向セグメントを含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項39】
前記第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って少なくともいくつかのイオンを駆動するために、前記第1のイオンガイドを形成する電極に、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形を印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項40】
前記第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って少なくともいくつかのイオンを駆動するために、前記第1のイオンガイドを形成する電極に、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項41】
前記第1のイオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、および(xvi)>300mmからなる群から選択される軸方向長さを有する先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項42】
前記第1のイオンガイドは、前記第1のイオンガイド内に径方向にイオンを閉じ込めるために、前記第1のイオンガイドの前記複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に、ACまたはRF電圧を印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項43】
前記ACまたはRF電圧手段は、前記第1のイオンガイドの前記複数の電極に、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合される請求項42に記載の質量分析計。
【請求項44】
前記ACまたはRF電圧手段は、前記第1のイオンガイドの前記複数の電極に、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を供給するように構成および適合される請求項42または43に記載の質量分析計。
【請求項45】
1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、または900〜1000の範囲にある質量電荷比を有する一価イオンが前記第1のイオンガイドを通過する、ドリフトまたは通過時間が(i)0〜10μs、(ii)10〜20μs、(iii)20〜30μs、(iv)30〜40μs、(v)40〜50μs、(vi)50〜60μs、(vii)60〜70μs、(viii)70〜80μs、(ix)80〜90μs、(x)90〜100μs、(xi)100〜110μs、(xii)110〜120μs、(xiii)120〜130μs、(xiv)130〜140μs、(xv)140〜150μs、(xvi)150〜160μs、(xvii)160〜170μs、(xviii)170〜180μs、(xix)180〜190μs、(xx)190〜200μs、(xxi)200〜210μs、(xxii)210〜220μs、(xxiii)220〜230μs、(xxiv)230〜240μs、(xxv)240〜250μs、(xxvi)250〜260μs、(xxvii)260〜270μs、(xxviii)270〜280μs、(xxix)280〜290μs、(xxx)290〜300μs、および(xxxi)>300μsの範囲にある先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項46】
前記第1のイオンガイドの少なくとも一部分を、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbar、および(viii)0.001〜0.01mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項47】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンを、前記第1のイオンガイドへと加速するように構成および適合される加速手段をさらに含み、第2の動作モードにおいて、前記イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%が、前記第1のイオンガイドに入ると断片化される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項48】
前記加速手段は、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンが前記第1のイオンガイドへと移送される際に、イオンの運動エネルギーを漸進的に変化または増加させるように構成および適合される請求項47に記載の質量分析計。
【請求項49】
前記加速手段は、電位差が維持される領域を含み、前記電位差は、時間とともに漸進的に変化または増加する請求項47または48に記載の質量分析計。
【請求項50】
前記第1のイオンガイドに入るとイオンが実質的に断片化される高断片化動作モードと、前記第1のイオンガイドに入ると、イオンが実質的にほとんどまたは全く断片化されない低断片化動作モードとの間で、前記第1のイオンガイドに入る前にイオンが通過する電位差の切り替えまたは反復的な切り替えを行うように構成および適合される制御システムをさらに含む請求項47、48、および49のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項51】
前記高断片化動作モードにおいて、前記第1のイオンガイドに入るイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vからなる群から選択される電位差により加速される請求項50に記載の質量分析計。
【請求項52】
前記低断片化動作モードにおいて、前記第1のイオンガイドに入るイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vからなる群から選択される電位差により加速される請求項50または51に記載の質量分析計。
【請求項53】
前記制御システムは、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、または10s毎に少なくとも1回、前記第1のイオンガイドを前記高断片化動作モードと前記低断片化動作モードとの間で切替えるように構成および適合される請求項50、51、および52のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項54】
前記第1のイオンガイドは、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンビームを受け取り、任意の特定の時間に前記第1のイオンガイドに少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の別々のイオンのグループまたはパケットが閉じ込められ、かつ/または分離されるように前記イオンビームを変換または分割するように構成および適合され、各イオンのグループまたはパケットは、前記第1のイオンガイドに形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸に別々に閉じ込められ、かつ/または分離される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項55】
前記第1のイオンガイドに閉じ込められ、かつ/または分離される前記イオンのグループまたはパケットのそれぞれにおけるイオンの平均質量電荷比は、時間とともに漸進的に増加または減少し、かつ/または第1のイオンガイドの出口領域から前記第1のイオンガイドの入口領域へ向かって漸進的に増加または減少する請求項54に記載の質量分析計。
【請求項56】
前記第1の電圧手段は、前記第1のイオンガイドの長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って実質的に同時に平行移動される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の別々の軸方向ポテンシャル井戸を生成するように構成および適合される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項57】
前記第1のイオンガイドは、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から出てくるイオンを保持、閉じ込め、および/または分割し、かつ、(i)前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器からイオンが出てくる順序および/または忠実度を実質的に維持しながら、かつ/または(ii)前記第1のイオンガイドに沿って1つ以上のイオンのグループまたはパケットが平行移動する際に、イオンの組成を実質的に維持しながら前記第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%に沿って、1つ以上のイオンのグループまたはパケットのイオンを平行移動するように構成および適合される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項58】
前記第1のイオンガイドは、前記第1のイオンガイド内で、イオンの運動エネルギーを、衝突により冷却化、実質的に熱中性子化、または実質的に減少させるように構成および適合される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項59】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流に配置されるイオントラップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項60】
前記イオントラップは、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へ、反復的にイオンをパルス状に入れるように構成および適合される請求項59に記載の質量分析計。
【請求項61】
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器の上流に配置される第2のイオンガイドをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項62】
前記第2のイオンガイドは、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオンファンネル、または
(iii)平面、平板、もしくはメッシュ電極のスタックもしくはアレイを含む請求項61に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記第2のイオンガイドは、(i)前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器のサイクル時間または走査時間に実質的に対応する、または(ii)前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器のサイクル時間または走査時間と実質的に異なるサイクル時間を有する請求項61または62に記載の質量分析計。
【請求項64】
動作モードにおいて、前記第2のイオンガイドは、前記第2のイオンガイドの出口寄り、出口近傍、または実質的に出口に位置するイオントラップ領域にイオンをトラップ、保持、または蓄積するように構成および適合される請求項61、62、および63のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項65】
イオンが、前記第2のイオンガイドの前記イオントラップ領域から周期的に放出され、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器へと渡され、移送され、または排出される請求項64に記載の質量分析計。
【請求項66】
前記第2のイオンガイドの少なくとも一部分を、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbar、および(viii)0.001〜0.01mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む請求項61〜65のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項67】
少なくともいくつかのイオンが、前記第2のイオンガイドに入ると断片化されるように、前記第2のイオンガイド内へイオンを加速するように構成および適合される加速手段をさらに含む請求項61〜66のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項68】
前記イオンが実質的に最適に断片化されるように、前記第2のイオンガイドに入る前にイオンのエネルギーを最適化するように構成および適合される手段をさらに含む請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記第2のイオンガイドに入るとイオンが実質的に断片化される第1の動作モードと、前記第2のイオンガイドに入るとイオンが実質的にほとんどまたは全く断片化されない第2の動作モードとの間で、前記第2のイオンガイドに入る前にイオンが通過する電位差の切り替えまたは反復的な切り替えを行うように構成および適合される制御システムをさらに含む請求項67または68に記載の質量分析計。
【請求項70】
前記第1の動作モードにおいて、前記第2のイオンガイドに入るイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vからなる群から選択される電位差により加速される請求項69に記載の質量分析計。
【請求項71】
前記第2の動作モードにおいて、前記第2のイオンガイドに入るイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vからなる群から選択される電位差により加速される請求項69または70に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記制御システムは、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、または10s毎に少なくとも1回、第2のイオンガイドを第1の動作モードと第2の動作モードとの間で切替えるように構成および適合される請求項69、70および71のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項73】
ガスまたは他の分子との衝突または衝撃による衝突誘起解離(「CID」)によりイオンを断片化するフラグメンテーションまたは衝突セルをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項74】
(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーション装置、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーション装置、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外放射誘起解離装置、(viii)紫外放射誘起解離装置、(ix)ノズル−スキマー間インターフェースフラグメンテーション装置、(x)イオン源フラグメンテーション装置、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xii)熱または温度源フラグメンテーション装置、(xiii)電場誘起フラグメンテーション装置、(xiv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応装置、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応装置、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応装置、および(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応装置からなる群から選択される衝突、フラグメンテーション、または反応装置をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項75】
前記第2のイオンガイドの上流および/または下流に配置される、質量フィルタ、四重極ロッドセット質量フィルタもしくは分析器、飛行時間質量フィルタもしくは質量分析器、ウィーンフィルタ、または扇形磁場質量フィルタもしくは質量分析器をさらに含む請求項61〜74のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項76】
前記第1のイオンガイドと前記質量分析器との間に配置される、移動装置、アインツェルレンズ、またはイオン光学レンズ装置をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項77】
イオン源をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項78】
前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)サーモスプレーイオン源からなる群から選択される請求項77に記載の質量分析計。
【請求項79】
前記イオン源は、パルス化または連続イオン源を含む請求項77または78に記載の質量分析計。
【請求項80】
前記質量分析器は、飛行時間質量分析器、または軸方向もしくは直交加速飛行時間質量分析器を含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項81】
前記質量分析器は、押出しおよび/または引き込み電極を含み、イオンが前記第1のイオンガイドから前記飛行時間質量分析器内へ最初のタイミングで放出され、前記押出しおよび/または引き込み電極の付近の領域に到達し、次いで、前記押出しおよび/または引き込み電極が、前記最初のタイミングに続く遅延時間後、電圧印加される請求項80に記載の質量分析計。
【請求項82】
前記質量分析器は、前記遅延時間が漸進的に変化、増加、または減少するように構成および適合される請求項81に記載の質量分析計。
【請求項83】
前記遅延時間は、所望の荷電状態を有するイオンは実質的に直交加速され、不必要な荷電状態を有するイオンは実質的に直交加速されないように設定され、前記所望の荷電状態および/または前記不必要な荷電状態は、(i)一価イオン、(ii)二価イオン、(iii)三価イオン、(iv)四価イオン、(v)五価イオン、(vi)5よりも大きい価数のイオン、および(vii)多価イオンからなる群から選択される請求項81または82に記載の質量分析計。
【請求項84】
第1の複数のイオンが前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられ、第2の複数のイオンが前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられる前に、前記押出しおよび/または引き込み電極は、少なくともx回電圧印加され、xは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250からなる群から選択される請求項81、82、または83に記載の質量分析計。
【請求項85】
前記押出しおよび/または引き込み電極は、0〜10μs、10〜20μs、20〜30μs、30〜40μs、40〜50μs、50〜60μs、60〜70μs、70〜80μs、80〜90μs、90〜100μs、100〜110μs、110〜120μs、120〜130μs、130〜140μs、140〜150μs、150〜160μs、160〜170μs、170〜180μs、180〜190μs、190〜200μs、200〜210μs、210〜220μs、220〜230μs、230〜240μs、240〜250μs、250〜260μs、260〜270μs、270〜280μs、280〜290μs、290〜300μs、または>300μs毎に1回、電圧印加される請求項81〜84のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項86】
前記押出しおよび/または引き込み電極は、前記第1のイオンガイドからイオンが出射、または、そうでなければ排出されるように、前記第1のイオンガイドの端部へ平行移動される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または>20の軸方向ポテンシャル井戸毎に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または>20回電圧印加される請求項81〜85のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項87】
第1の複数のイオンが前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられ、第2の複数のイオンが前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器内へパルス状に入れられる前に、少なくともyの別々の軸方向ポテンシャル井戸が、前記第1のイオンガイド内に生成もしくは形成、および/または前記第1のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って平行移動され、yは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250からなる群から選択される先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項88】
前記質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2Dまたはリニア四重極質量分析器、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、および(xi)フーリエ変換質量分析器からなる群から選択される請求項1〜79のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項89】
(i)一価イオン、(ii)二価イオン、(iii)三価イオン、(iv)四価イオン、(v)五価イオン、(vi)5よりも大きい価数のイオン、および(vii)多価イオンに関する質量スペクトルデータを含む質量スペクトルが生成されるように、前記質量分析器により得られた質量スペクトルデータをフィルタするように構成および適合される処理手段をさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項90】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器から、質量選択的にイオンを排出する工程と、
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器からのイオンを、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置され、複数の電極を含む第1のイオンガイドで受け取る工程と、
第1の動作モードにおいて、前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から受け取られたイオンが、前記第1のイオンガイドの別々の領域または部分に保持され、閉じ込められ、輸送され、および/または平行移動されるように、1つ以上の電圧または1つ以上の電圧波形を、前記第1のイオンガイドの前記電極に印加する工程と、
前記第1のイオンガイドの下流に質量分析器を備える工程とを含む質量分析方法。
【請求項91】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、前記イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、使用中に、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形が前記イオンガイドに印加される質量分析計。
【請求項92】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、前記イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、使用中に、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧が前記イオンガイドに印加される質量分析計。
【請求項93】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流に配置されるイオンガイドを含み、使用中に、複数の軸方向ポテンシャル井戸が、前記イオンガイドに生成され、かつ/または前記イオンガイドに沿って平行移動される質量分析計。
【請求項94】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
前記イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位、または1つ以上の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記イオンガイドに印加する工程とを含む質量分析方法。
【請求項95】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
前記イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を前記イオンガイドに印加する工程とを含む質量分析方法。
【請求項96】
質量選択性イオントラップまたは質量分析器の下流にイオンガイドを備える工程と、
前記質量選択性イオントラップまたは質量分析器から質量選択的にイオンを排出する工程と、
前記イオンガイドに複数の軸方向ポテンシャル井戸を生成し、かつ/または前記イオンガイドに沿って複数の軸方向ポテンシャル井戸が平行移動する工程とを含む質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−523554(P2008−523554A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544978(P2007−544978)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004724
【国際公開番号】WO2006/061625
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】