説明

赤外反射フィルム及びそれを用いた赤外反射体

【課題】基体に対する接着性に優れ、剥離時の糊残りが無く、赤外反射性に優れた赤外反射フィルムと、それを用いた赤外反射体を提供する。
【解決手段】基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有する赤外反射フィルムにおいて、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有することを特徴とする赤外反射フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の異なる層を交互に積層して構成された赤外反射層積層体と、それに隣接した位置に粘着層を有する赤外反射フィルムと、その赤外反射フィルムを適用した赤外反射体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の窓ガラス面に貼合する窓貼り用フィルムが多く利用されている。その中の一つは、赤外線の建物内への侵入を抑え、建物室内の温度が過剰に上昇するのを防ぐ機能を有する熱線遮断用フィルムがあり、冷房の使用量を低減し、省エネルギー化に貢献している。
【0003】
赤外線を反射するフィルムとしては、例えば、蒸着法やスパッタ法な等のドライ成膜法を用いて屈折率の異なる層を交互積層する方法(例えば、特許文献1参照。)や、塗布液を基材上にコーティングし積層する塗布法(例えば、特許文献2参照。)により、屈折率の異なる層を交互積層する方法が開示されている。
【0004】
これらのフィルムは窓ガラスに貼合するため、基体のいずれか一方の表面に粘着層を設け、ガラスに貼り付ける方法が用いられ、また、粘着層を形成した面とは反対側の面には、外的要因からフィルムが傷つくのを防ぐため、通常最表面にハードコート層、あるいはそれと同等の効果を有するフィルムまたはコート層を積層することが多い。
【0005】
上記の様な構成を有するフィルムにおいては、ハードコート層を有していても、何らかの要因により、フィルム自身に傷がついた場合には、一度貼ったフィルムを基体から剥離し、再度新しいフィルムを貼り付ける場合がある。
【0006】
しかしながら、フィルム剥離の際、粘着層が含有する粘着剤と、基材フィルムとの密着力が低すぎることで、粘着剤が基材フィルムから剥離しガラス板に残ってしまう問題がある。
【0007】
上記課題に対し、特定構造のマレイミド系化合物、および特定の共重合性単量体で構成された粘着剤を用いることにより、ガラス面から容易に剥がせるフィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、フィルムとの密着性も低くなることでガラスに糊残りが発生し、十分な解決には至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2007−331296号公報
【特許文献3】特開2007−77387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、基体に対する接着性に優れ、剥離時の糊残りが無く、赤外反射性に優れた赤外反射フィルムと、それを用いた赤外反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有する赤外反射フィルムにおいて、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有することを特徴とする赤外反射フィルム。
【0012】
2.前記反応性官能基を有する水溶性樹脂が、ゼラチン類であることを特徴とする前記1に記載の赤外反射フィルム。
【0013】
3.前記粘着層における架橋剤の単位面積当たりの含有量(g/m)が、前記粘着層に接する赤外反射層積層体を構成する層が含有する反応性官能基を有する水溶性樹脂の含有量(g/m)の0.01倍以上、0.30倍以下であることを特徴とする前記1または2に記載の赤外反射フィルム。
【0014】
4.基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有し、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有する赤外反射フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けたことを特徴とする赤外反射体。
【0015】
5.前記反応性官能基を有する水溶性樹脂が、ゼラチン類であることを特徴とする前記4に記載の赤外反射体。
【0016】
6.前記赤外反射フィルムを、前記基体上に水貼り法を用いて貼り合わせて作製したことを特徴とする前記4または5に記載の赤外反射体。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、窓ガラス等の基体に対する接着性に優れ、剥離時の糊残りが無く、赤外反射性に優れた赤外反射フィルムと、それを用いた赤外反射体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有する赤外反射フィルムにおいて、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有することを特徴とする赤外反射フィルムにより、窓ガラス等の基体に対する接着性に優れ、剥離時の糊残りが無く、赤外反射性に優れた赤外反射フィルムを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
本発明の赤外反射フィルムにおいては、窓ガラス等の基体に貼合する方法としては、水貼り法が好ましく用いられる。水貼り時、粘着層が湿潤することで、粘着層が含有する架橋剤が隣接する赤外反射層積層体まで拡散し、赤外反射層積層体の水溶性樹脂と反応硬化することにより、粘着層と赤外反射層積層体との密着性が飛躍的に向上する。そのため、赤外反射フィルムを剥がす際、窓ガラス面に粘着層の糊残りが発生しない、優れた赤外反射フィルムが提供できる。また、赤外反射層積層体を構成する水溶性樹脂を硬化することにより、赤外反射層積層体内の層間界面の乱れが起こりにくくなり、反射率の低下を抑制することができた。
【0021】
以下、本発明の赤外反射フィルムの詳細について説明する。
【0022】
《赤外反射フィルム》
本発明の赤外反射フィルムは、基材上に低屈折率材料を有する層(以下、低屈折率層ともいう)と、高屈折率材料を有する層(以下、高屈折率層ともいう)とを交互に積層することで形成した赤外反射層積層体を有し、該赤外反射層積層体と隣接する位置に粘着層を有する構成を有することを特徴とし、赤外反射層積層体のうち粘着層に接する層には、反応性官能基を有する水溶性の樹脂を含有し、かつ粘着層に該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有することを特徴とする赤外反射フィルムである。
【0023】
本発明の赤外反射フィルムの基本光学特性としては、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては50%以上で、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有し、かつ波長900nm〜1400nmの領域の透過率が10%以下であることが好ましい。
【0024】
〔基材〕
本発明に係る基材(以下、支持体ともいう)としては、透明の有機材料で形成された基材であれば、特に限定されるものではなく、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
【0025】
基材の厚さは5〜200μmの範囲が好ましく、更に好ましくは15〜150μmである。
【0026】
また、本発明に係る基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることが、赤外反射フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を、50%以上にすることができる観点から好ましい。
【0027】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、又は基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0029】
また、本発明に用いられる基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、更に寸法安定性が良好になる。
【0030】
本発明に係る基材は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明において、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることができ、何れも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0031】
〔赤外反射層積層体〕
本発明の赤外反射フィルムにおいて、基材上に形成する赤外反射層積層体とは、低屈折率材料を有する層(低屈折率層)と、高屈折率材料を有する層(高屈折率層)を交互に積層された構成からなる積層体である。
【0032】
赤外反射フィルムとしては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも2つ積層し、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。特に好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.4以上である。
【0033】
低屈折層と高屈折層をそれぞれ積層した2層構成を1ユニットとしたとき、ユニット数としては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差にもよるが、好ましくは40ユニット以下、より好ましくは20ユニット以下であり、さらに好ましくは10ユニット(20層)以下である。
【0034】
本発明において、本発明に係る高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0035】
はじめに、基材上に屈折率の測定対象である各屈折率層を単層で塗設、製膜したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求めることができる。
【0036】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止する処理を施した後、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より、平均屈折率を求める。
【0037】
本発明に係る高屈折率層の好ましい屈折率としては1.70〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0038】
本発明の赤外反射フィルムにおいては、基材に隣接する層が酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
【0039】
本発明に係る高屈折層及び低屈折率層は、いずれも金属酸化物粒子と水溶性樹脂を含有して形成されることが好ましい態様であるが、少なくとも最表層、すなわち粘着層と隣接する層には、反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有することを特徴の一つとする。
【0040】
(金属酸化物)
本発明に係る高屈折層及び低屈折率層に適用することのできる金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズを挙げることができる。
【0041】
金属酸化物の含有量は、50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上、90質量%以下がより好ましい。金属酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、金属酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、赤外遮断フィルムを形成することの容易となる。
【0042】
また、各屈折率層において、金属酸化物粒子(F)と各層を構成するバインダーである水溶性樹脂(B)との質量比(F/B)としては、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
【0043】
本発明に係る高屈折率層で用いる金属酸化物としては、TiO、ZnO、ZrO等の高屈折率を有する金属酸化物が好ましく、高屈折率層を形成するための後述の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点では、TiO(二酸化チタンゾル)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
【0044】
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0045】
また、その他の二酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照にすることができる。
【0046】
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、4nm〜50nmであり、より好ましくは4nm〜30nmである。
【0047】
本発明に係る低屈折率層においては、金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素粒子を用いることが好ましく、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。
【0048】
本発明に係る二酸化ケイ素粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0049】
本発明に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在する酸化チタン粒子の集団において、粒子1個当りの体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0050】
(反応性官能基を有する水溶性樹脂)
本発明の赤外反射フィルムにおいては、少なくとも粘着層と隣接する赤外反射層積層体を構成する1層には、反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有することを特徴の1つとし、その他の赤外反射層積層体を構成する層にも水溶性樹脂を含有することが好ましい。
【0051】
本発明でいう反応性官能基とは、例えば、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、水酸基、イミノ基、ニトロ基、エポシキ基等が挙げられるが、その中でも架橋剤との反応速度を制御するためには、アミノ基、カルボキシル基、水酸基が好ましい。
【0052】
これらの反応性官能基を有する水溶性樹脂としては、例えば、ゼラチン、合成樹脂、無機ポリマー、増粘多糖類等が挙げられ、本発明においては、ゼラチンが特に好ましい。ただし、反応性官能基を有する水溶性ポリマーであれば特に限定は無く、1種類または複数種類の混合でもよい。
【0053】
本発明に係る水溶性樹脂でいう「水溶性」とは、水媒体に対し、40℃で1.0質量%以上溶解する高分子化合物である。
【0054】
本発明に係る高屈折層あるいは低屈折率層の形成に用いる各塗布液における水溶性樹脂の濃度としては、1.0〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0055】
以下、各水溶性樹脂の詳細について説明する。
【0056】
〈ゼラチン〉
本発明に係る反応性官能基を有する水溶性樹脂として、ゼラチンを用いることが特に好ましい。
【0057】
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
【0058】
本発明に適用可能なゼラチンの一つとしては、低分子量ゼラチンまたはコラーゲンペプチドを挙げることができる。本発明でいう低分子ゼラチンとは、平均分子量が3万以下のゼラチンである。また、本発明でいうコラーゲンペプチドとは、ゼラチンに低分子化処理を施して、ゾルゲル変化を発現させなくしたタンパク質であると定義する。
【0059】
本発明に係る低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドは、平均分子量が3万以下のものであるが、より好ましくは2,000〜30,000であり、特に好ましくは5,000〜25,000である。
【0060】
低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドの平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンあるいはコラーゲンペプチドは、通常用いられる平均分子量10万程度の高分子ゼラチンの水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0061】
また、本発明においては、ゼラチンの1種として、平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを用いることもでき、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等を挙げることができる。
【0062】
本発明において、ゼラチンの平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。ゼラチンの分子量分布及び平均分子量についても、一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラ法(GPC法)によって測定することができる。
【0063】
ゼラチンの分子量については、D.Lorry and M.Vedrines,Proceedings of the 4th IAG Conference,Sept.1983,P.35、大野隆司、小林裕幸、水澤伸也、日本写真学会誌、47,237(1984)等に記載されているように、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分、単量体である高分子両性分、更にはこれらの成分が不規則に切断された低分子量成分からなるのが一般的である。
【0064】
本発明に係る平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンとしては、上記各成分の中でも、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分が主体のゼラチンである。
【0065】
また、本発明に係る平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンの製法としては、例えば、下記の方法などが挙げられる。
【0066】
1)ゼラチン製造中の抽出操作で、抽出後期の抽出物を使用して抽出初期のもの(低分子量成分)は排除する。
【0067】
2)前記製法において、抽出以後乾燥までの工程において、処理温度を40℃未満とする。
【0068】
3)ゼラチンを冷水(15℃)透析する。
【0069】
上記の方法を単独又は併用して用いることにより、平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを得ることができる。
【0070】
〈合成樹脂〉
本発明に適用可能な反応性官能基を有する水溶性樹脂の一つとして、合成樹脂を挙げることができる。本発明に適用可能な合成樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルアルコール類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
【0071】
上記合成樹脂の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上、40,000以下がより好ましい。
【0072】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0073】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0074】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0075】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0076】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0077】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0078】
本発明においては、これらのポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0079】
〈無機ポリマー〉
本発明に係る反応性官能基を有する水溶性樹脂の1つとしては、ジルコニウム原子含有化合物あるいはアルミニウム原子含有化合物等の無機ポリマーを用いることが好ましい。
【0080】
本発明に適用可能なジルコニウム原子を含む化合物は、酸化ジルコニウムを除くものであり、その具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウム等が挙げられる。
【0081】
これらの化合物の中でも、塩化ジルコニル、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、ステアリン酸ジルコニルが好ましく、更に好ましくは、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、塩化ジルコニルであり、特に好ましくは、炭酸ジルコニルアンモニウム、塩化ジルコニル、酢酸ジルコニルである。上記化合物の具体的商品名としては、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZA−20(酢酸ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZC−2(塩化ジルコニル)、第一稀元素化学工業製のジルコゾールZN(硝酸ジルコニル)等が挙げられる。
【0082】
上記ジルコニル原子を含む無機ポリマーの内、代表的な化合物の構造式を下記に示す。
【0083】
【化1】

【0084】
ただし、s、tはそれぞれ1以上の整数を表す。
【0085】
ジルコニル原子を含む無機ポリマーは、単独で用いても良いし、異なる2種類以上の化合物を併用してもよい。
【0086】
また、本発明で用いることのできる分子内にアルミニウム原子を含む化合物には、酸化アルミニウムは含まず、その具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(例えば、ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸珪酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。
【0087】
これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸珪酸アルミニウムが好ましく、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウムが最も好ましい。上記化合物の具体的商品名としては、多木化学製のポリ塩化アルミニウム(PAC)であるタキバイン#1500、浅田化学(株)製のポリ水酸化アルミニウム(Paho)、(株)理研グリーン製のピュラケムWTが挙げられ、各種グレードのものが入手することができる。
【0088】
下記に、タキバイン#1500の構造式を示す。
【0089】
【化2】

【0090】
ただし、s、t、uは、それぞれ1以上の整数を表す。
【0091】
〈増粘多糖類〉
本発明においては、反応性官能基を有する水溶性樹脂として、増粘多糖類を用いることも好ましい。
【0092】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0093】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり、低温時の粘度と高温時との粘度差を助長する特性を備えている。さらに、本発明に係る増粘多糖類を、金属酸化物微粒子を含む塗布液に添加することにより、粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加により15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0094】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0095】
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0096】
増粘多糖類の含有量としては、塗布液の全質量に対し、5質量%以上、50質量%以下が好ましく、10質量%以上、40質量%以下がより好ましい。但し、その他の水溶性樹脂やエマルジョン樹脂等と併用する場合には、3質量%以上含有すればよい。
【0097】
増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0098】
(界面活性剤)
本発明に係る高屈折層、低屈折率層には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤種としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれの種類の界面活性剤を使用することができる。特に、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤及びフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0099】
また、本発明に係る界面活性剤の添加量としては、それぞれの塗布液を100質量%としたとき、固形分として0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、更には0.01〜0.10質量%であることが好ましい。
【0100】
(その他の添加剤〕
次いで、赤外反射層積層体に適用可能なその他の添加剤について説明する。
【0101】
〈アミノ酸類〉
本発明においては、必要に応じて、アミノ酸類を添加することができる。
【0102】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよいが、等電点が6.5以下のアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸類には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、等電点が6.5以下のいずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0103】
本発明に適用可能なアミノ酸類に関する詳しい解説は、化学大辞典1 縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0104】
本発明において、好ましいアミノ酸として、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができ、水溶液として使用するためには、等電点における溶解度が、水100に対し、3g以上が好ましく、たとえば、グリシン、アラニン、セリン、ヒスチジン、リジン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが好ましく用いられ、金属酸化物粒子が、バインダーと緩やかな水素結合を有する観点から、水酸基を有する、セリン、ヒドロキシプロリンを用いることがさらに好ましい。
【0105】
〈リチウム化合物〉
本発明においては、高屈折層あるいは低屈折率層は、金属酸化物粒子及び水溶性樹脂と共に、リチウム化合物を含有することができる。
【0106】
本発明に適用可能なリチウム化合物としては、特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、オロト酸リチウム、クエン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、塩化リチウム、水素化リチウム、水酸化リチウム、臭化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、ステアリン酸リチウム、リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリエチルホウ酸リチウム、水素化トリエトキシアルミニウムリチウム、タンタル酸リチウム、次亜塩素酸リチウム、酸化リチウム、炭化リチウム、窒化リチウム、ニオブ酸リチウム、硫化リチウム、ホウ酸リチウム、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等が挙げられ、その中でも水酸化リチウムが、本願発明の効果を十分に発揮できる観点から好ましい。
【0107】
本発明において、リチウム化合物の添加量としては、屈折率層に存在する金属酸化物粒子1g当たり、0.005〜0.05gの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.03gである。
【0108】
〈エマルジョン樹脂〉
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または低屈折率層には、エマルジョン樹脂を含有することができる。
【0109】
本発明でいうエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0110】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0111】
また、水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0112】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0113】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0114】
〈その他の添加剤〉
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。
【0115】
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0116】
《粘着層》
本発明の赤外反射フィルムは、赤外反射層積層体に粘着層が隣接している構成であることを特徴とする。
【0117】
(粘着剤)
本発明に係る粘着層を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示できる。
【0118】
本発明の赤外反射フィルムを窓ガラス等の基体に貼り合わせて、本発明の赤外反射体を構成する場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に本発明の赤外反射フィルムの粘着層を貼り合わせる方法、いわゆる水貼り法が好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱いアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0119】
本発明で使用するアクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系のいずれであっても良いが、粘着力等を高め易い観点から、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合により得られた溶剤系粘着剤が好ましい。このようなアクリル溶剤系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクリルアクリレート等のアクリル酸エステルが挙げられ、凝集力を向上させるためのコモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等が挙げられ、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。本発明の赤外反射フィルムの粘着層には、主ポリマーとして、特に、高タック性を要するため、ブチルアクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有するものが特に有用である。
【0120】
本発明に係る粘着層には、添加剤として、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、本発明のように窓貼用として使用する場合は、紫外線による赤外反射フィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。
【0121】
(架橋剤)
本発明においては、赤外反射層積層体の水溶性樹脂と反応しうる架橋剤を、粘着層に添加することを特徴とする。
【0122】
本発明の赤外反射フィルムを窓ガラスに貼合する方法として、水貼り法が好ましく用いられる。本発明でいう水貼り法とは、本発明の赤外反射フィルムの粘着層面、あるいは基体面に水を付与した後、本発明の赤外反射フィルムと基体、例えば、窓ガラスと加圧下で貼合する方法である。
【0123】
水貼り時、粘着層が湿潤することで、架橋剤が隣接する赤外反射層積層体まで拡散し、赤外反射層積層体の水溶性樹脂との硬化反応を生じることにより、粘着層と赤外反射層積層体との密着性が飛躍的に向上する。そのため、赤外反射フィルムを剥がす際、窓ガラス面側に、接着剤等の糊残りが発生しない、優れた赤外反射フィルムが提供できる。
【0124】
本発明に係る粘着層に好適な架橋剤としては、水溶性樹脂が有する反応性基と架橋反応を起こすものであれば、特に制限はないが、例えば、水溶性樹脂がゼラチンの場合には、アルデヒド系硬化剤、活性ハロゲン系硬化剤、活性ビニル系化合物等が好ましく、水溶性樹脂がポリビニルアルコールである場合には、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性樹脂が有する反応性基と反応しうる化合物であり、水溶性樹脂の種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0125】
架橋剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられ、これらを単独、または複数種を併用しても構わない。
【0126】
また、本発明においては、バインダーである水溶性樹脂を硬化させるため、上記架橋剤を赤外反射層に使用することもできる。
【0127】
本発明においては、粘着層における架橋剤の単位面積当たりの含有量(g/m)が、粘着層に接する赤外反射層積層体を構成する層が含有する水溶性樹脂の含有量(g/m)の0.01倍以上、0.30倍以下であることが好ましい。粘着層における架橋剤の単位面積当たりの含有量(g/m)が0.01倍以上であれば、赤外反射フィルムを窓ガラスから剥がす際の糊残りの抑制効果が大きく、0.30倍以下であれば赤外反射層の反射率低下抑制に効果的である。
【0128】
《赤外反射フィルムのその他の構成層》
本発明の赤外反射フィルムにおいては、上記説明した本発明に係る高屈折率層、低屈折率層、粘着層の他に、必要に応じて、各種の構成層を設けることができる。
【0129】
〔赤外吸収層〕
本発明における赤外反射フィルムは、任意の位置に赤外吸収層を有することができる。
【0130】
赤外吸収層の一例としては、紫外線硬化樹脂、光重合開始剤、赤外吸収剤を含有する層である。
【0131】
紫外線硬化樹脂は、他の樹脂より硬度、平滑性、更にはITO、ATOや熱伝導性の金属酸化物の分散性の点でも有利である。紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、硬度、平滑性、透明性の観点からアクリル系樹脂を用いることができる。
【0132】
本発明において、アクリル系樹脂は、硬度、平滑性、透明性の観点から、国際公開第2008/035669号明細書に記載されているような、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むことが好ましい。ここで、光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。また重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。ここで、反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、透明性、平滑性、硬度をバランスよく満たすことができる。
【0133】
また、アクリル系樹脂には、屈折率を調整するできる点で、含フッ素ビニルモノマーを用いることもできる。含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0134】
また、光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0135】
本発明においては、無機赤外線吸収剤として、可視光線透過率、赤外線吸収性、樹脂中への分散適性等の点から、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、6硼化ランタン(LaB)、酸化タングステンセシウム等が好ましく、これらを単独、あるいは併用しても構わない。平均粒径としては、5〜100nmが好ましく、特に10〜50nmが好ましい。5nm未満であると樹脂中の分散性や、赤外線吸収性が劣化してしまう。一方、100nmより大きいと、可視光線透過率が劣化して好ましくない。本発明における平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば50個の粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
【0136】
上記無機赤外吸収材料の赤外吸収層における含有量は、上記層全体含有量によるが、層全体の含有%で表した場合、1〜80質量%、特に5〜50質量%の範囲であることが好ましい。含有量が1質量%以上であれば、十分な赤外線吸収効果が現れ、80質量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0137】
本発明においては、本発明の効果を奏する範囲内で、上記以外の金属酸化物や、有機系、金属錯体等の他赤外線吸収剤を併用することもできる。例えば、ジイモニウム系化合物、アルミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等を併用することもできる。
【0138】
赤外吸収層の厚みは0.1μm〜50μmが好ましく、さらに好ましくは1〜20μmである。0.1μmより厚くなると赤外吸収能力が向上する傾向にあり、逆に50μmより薄くなると塗膜の耐クラック性が向上する。
【0139】
〔ハードコート層〕
本発明の赤外反射フィルムにおいては、耐擦過性を高めるための表面保護層として、基材を介して粘着層を塗設した面とは反対側の面の最上層に、熱や紫外線などで硬化する樹脂からなるハードコート層を積層することが好ましい。
【0140】
ハードコート層で使用する硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を挙げることができ、成形が容易なことから、紫外線硬化型樹脂、特にその中でも鉛筆硬度が少なくとも2Hのものが好ましい。
【0141】
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールを有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、並びに、ジイソシアネートおよび多価アルコールを有するアクリル酸やメタクリル酸から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらに、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂またはポリチオールポリエン樹脂等も好適に使用することができる。
【0142】
また、これらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ夕)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマーやオリゴマー、並びに、N−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及ビそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α一メチルスチレンまたはアクリル酸等の単官能モノマーが挙げられ、これらは1種に限らず、2種以上を併用しても良い。
【0143】
また、これらの樹脂の光増感剤(ラジカル重合開始剤)としては、ペンゾイン、べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンジルメチルケタールなどのべンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノべンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。
【0144】
これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。これらの有機過酸化物や光重合開始剤の使用量は、樹脂組成物の重合性成分100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部である。
【0145】
なお、上述の硬化型樹脂は、必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を配合しても良い。例えば、レベリングや表面スリップ性等を付与するシリコーン系化合物やフッソ系化合物は、硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は、前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。
【0146】
また、ハードコート層には無機微粒子を含有することが好ましい。好ましい無機粒子としては、チタン、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛または錫などを含む無機化合物の微粒子が挙げられる。この無機微粒子の粒径は、可視光線の透過性を確保することから、1000nm以下、特に10〜500nmの範囲にあるものが好ましい。また、無機微粒子は、ハードコート層を形成する硬化型樹脂との結合力が高いほうが、ハードコート層からの脱落を抑制できることから、単官能または多官能のアクリレートなどの光重合反応性を有する感光性基を、表面に導入していることが好ましい。
【0147】
なお、ハードコート層は、上述の赤外吸収層を兼ねてもよい。
【0148】
《赤外反射フィルムの製造方法》
本発明の赤外反射フィルムは、基材上に高屈折率層と低屈折率層から構成されユニットを積層して構成されるが、具体的には水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを交互に湿式方式で塗布、乾燥して、赤外反射層積層体を形成することが好ましい。
【0149】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号明細書、同第2,761,791号明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0150】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0151】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0152】
塗布および乾燥方法としては、水系の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0153】
粘着層の塗工方法としては、任意の公知の方法が使用でき、例えば、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、デップコート法等が好ましく挙げられ、単独または組合せて用いることができる。これらは適宜、粘着剤を溶解できる溶媒に溶解して塗布液を塗工する方法、あるいは粘着剤を分散させた塗布液を用いて塗工する方法を用いることができ、溶媒としては公知の物を使用することができる。
【0154】
粘着層の形成は、前記先の屈折率層の形成に用いることのできる湿式塗布方式を用いて、直接赤外反射層積層体上に塗布しても良く、また、一度剥離紙に塗工して乾燥させた後、プラスチックフィルムを貼り合せて粘着剤を、赤外反射層積層体表面に転写させても良い。この時の乾燥温度は、残留溶剤ができるだけ少なくなることが好ましく、そのためには乾燥温度や時間は特定されないが、好ましくは50〜150℃の温度で、10秒〜5分の乾燥時間を設けることが良い。また、粘着剤は流動性があるため、加熱乾燥直後はまだ反応が完結しておらず、その反応を完了させ、安定した粘着力を得るためにも養生が必要である。一般的には、室温で約1週間以上、加熱した場合、例えば、50℃位であると3日以上が好ましい。加熱の場合、温度を上げすぎるとプラスチックフィルムの平面性が悪化するおそれがあるため、あまり上げすぎない方が良い。
【0155】
本発明に係る粘着層の厚みは、1〜500μmの範囲が好ましく、5〜50μmの範囲がさらに好ましい。粘着力は粘着層の厚みに依存するため、粘着層の厚みはある程度必要であり、1.0μm未満であると、赤外反射フィルムの厚みムラと相まって、部分的に、例えば、窓ガラスとの接触が不十分となり、必要な粘着力が得られにくい。また、粘着層の厚みが500μmを越える場合には、コストが高くなるだけでなく、窓ガラスに貼り付けた後、剥がした時に粘着層間で凝集破壊が生じ、粘着剤が残ってしまう。
【0156】
赤外吸収層、ハードコート層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0157】
紫外線照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0158】
《赤外反射フィルムの応用》
本発明の赤外反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0159】
特に、本発明の赤外反射フィルムがガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0160】
接着層は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、赤外反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の赤外反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【実施例】
【0161】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0162】
《赤外反射層積層体の作製》
〔赤外反射層積層体1の作製〕
(低屈折率層用塗布液1の調製)
純水の87質量部に、水溶性樹脂として酸処理ゼラチン(等電点:9.5、平均分子量:2万)の3質量部を添加し、室温でしばらく膨潤させた後、40℃に昇温し撹拌混合することでゼラチンを溶解することで、ゼラチン水溶液を得た。
【0163】
次いで、平均粒径が5nmのシリカ微粒子を含む10.0質量%の酸性シリカゾル(スノーテックスOXS:日産化学社製)の10質量部中に、上記ゼラチン水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合した。更に、フッ素系カチオン活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.02質量部添加することで、低屈折率層用塗布液1を調製した。
【0164】
なお、下記の方法に従って基材上に低屈折率層用塗布液1を塗布する直前に、水溶性樹脂であるゼラチンの架橋剤として、ホルマリン(関東化学社製)を0.1g添加した。
【0165】
(高屈折率層用塗布液1の調製)
純水の82質量部に、水溶性樹脂として酸処理ゼラチン(等電点:9.5、平均分子量:2万)3質量部を添加し、室温でしばらく膨潤させた後、40℃に昇温して、撹拌、混合することでゼラチンを溶解して、ゼラチン水溶液を得た。
【0166】
次いで、平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を20.0質量%の比率で含む酸化チタンゾルの15質量部中に、上記ゼラチン水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合した。更に、フッ素系カチオン活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.07質量部添加することで高屈折率層用塗布液1を調製した。
【0167】
なお、下記の方法に従って基材上に高屈折率層用塗布液1を塗布する直前に、水溶性樹脂であるゼラチンの架橋剤として、ホルマリン(関東化学社製)を0.1g添加した。
【0168】
(赤外反射層積層体の形成)
21層同時重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1を用い、基材に近い側を低屈折率層、その上に高屈折率層を形成し、それぞれ交互に低屈折率層は11層、高屈折率層は10層、計21層から構成となるようにして、45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、同時重層塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に21層からなる赤外反射層積層体1を形成した。なお、SEMにより塗布膜の断面を観察したところ、低屈折率層の膜厚は165〜183nm(平均膜厚170nm)、高屈折率層の膜厚は124〜141nm(平均膜厚133nm)であった。
【0169】
〔赤外反射層積層体2の作製〕
(低屈折率層用塗布液2の調製)
上記低屈折率層塗布液1の調製において、酸処理ゼラチンをポリビニルアルコール樹脂(PVA217:クラレ社製)に変更し、さらにホウ酸を1.0質量部を加えた以外は同様にして、低屈折率層用塗布液2を調製した。なお、低屈折率層1の形成に用いたホルマリンは、低屈折率用層2の形成時には添加しなかった。
【0170】
(高屈折率層用塗布液2の調製)
上記高屈折率層塗布液1の調製において、酸処理ゼラチンをポリビニルアルコール樹脂(PVA217:クラレ社製)に変更し、さらにホウ酸1.0質量部を加えた以外は同様にして、高屈折率層用塗布液2を調製した。なお、高屈折率層1の形成に用いたホルマリン添加は、高屈折率用層2の形成には用いなかった。なお、高屈折率層1の形成に用いたホルマリンは、高屈折率層2に形成時には添加しなかった。
【0171】
(赤外反射層積層体の形成)
上記赤外反射層積層体1の形成において、低屈折率塗布液1と高屈折率塗布液1に代えて、上記調製した低屈折率塗布液2と高屈折率塗布液2を用いた以外は同様にして、赤外反射層積層体2を形成した。
【0172】
〔赤外反射層積層体3の作製:比較例〕
(低屈折率層用塗布液3の調製)
上記低屈折率層塗布液1の調製において、酸処理ゼラチンをポリビニルピロリドン樹脂(PVP K−85:日本触媒社製)に変更した以外は同様にして、低屈折率層用塗布液3を調製した。なお、低屈折率層1の形成に用いたホルマリンは、低屈折率用層3の形成時には添加しなかった。
【0173】
(高屈折率層用塗布液3の調製)
上記高屈折率層塗布液1の調製において、酸処理ゼラチンをポリビニルピロリドン樹脂(PVP K−85:日本触媒社製)に変更した以外は同様にして、高屈折率層用塗布液3を調製した。なお、高屈折率層1の形成に用いたホルマリンは、高屈折率用層3の形成時には添加しなかった。
【0174】
(赤外反射層積層体3の形成)
上記赤外反射層積層体1の形成において、低屈折率塗布液1と高屈折率塗布液1に代えて、上記調製した低屈折率塗布液3と高屈折率塗布液3を用いた以外同様にして、赤外反射層積層体3を得た。
【0175】
なお、これら形成した各塗布層の屈折率を、下記の屈折率層の測定方法により計測したところ、低屈折率層1は1.40、低屈折率層2は1.43、低屈折率層3は1.45、高屈折率層1は1.80、高屈折率層2は1.76、高屈折率層3は1.74であった。
【0176】
〈屈折率の測定方法〉
基材上に屈折率の測定対象である各屈折率層を単層で塗設、製膜したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求めた。
【0177】
U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止する処理を施した後、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より、平均屈折率を求め、これを各層の屈折率とした。
【0178】
《粘着層付フィルムの作製》
〔粘着層付フィルム1の作製〕
(粘着層塗布液1の調製)
酢酸エチルの60質量部とトルエンの20質量部を混合し、更に、アクリル系粘着剤(アロンタックM−300:東亞合成社製)を20g添加して、粘着層塗布液1を調製した。
【0179】
(粘着層付フィルムの作製)
セパレータフィルムとして25μm厚のポリエステルフィルム(セラピール:東洋メタライジング社製)を用い、セパレータフィルムの上に、上記調製した粘着剤塗布液2をワイヤーバーにより、乾燥後の固形分量が5g/mとなる条件で塗布し、80℃で、2分間乾燥して、粘着層付フィルム1を作製した。
【0180】
〔粘着層付フィルム2の作製〕
上記粘着層塗布液1の調製において、アクリル系粘着剤(アロンタックM−300、東亞合成社製)を、同量のアクリル系粘着剤(アロンタックSCL−200、東亞合成社製)に変更した以外は同様にして、粘着層塗布液2を調製した。
【0181】
次いで、上記粘着層付フィルム1の作製において、粘着層塗布液1に代えて、上記調製した粘着層塗布液2を用いた以外は同様にして、粘着層付フィルム2を作製した。
【0182】
〔粘着層付フィルム3の作製〕
上記粘着層塗布液1の調製において、下記架橋剤A(ビニルスルホン系架橋剤)を、0.0166g添加した以外は同様にして、粘着層塗布液3を調製した。
【0183】
【化3】

【0184】
次いで、前記粘着層付フィルム1の作製において、粘着層塗布液1に代えて、上記調製した粘着層塗布液3を用いた以外は同様にして、粘着層付フィルム3を作製した。粘着層付フィルム3における架橋剤Aの塗設量は、4.15mg/mである。
【0185】
〔粘着層付フィルム4〜7の作製〕
上記粘着層塗布液3の調製において、前記架橋剤Aの添加量を、表1に記載の量に変更した以外は同様にして、粘着層塗布液4〜7を調製した。
【0186】
次いで、前記粘着層付フィルム3の作製において、粘着層塗布液3に代えて、上記調製した粘着層塗布液4〜7を用いた以外は同様にして、粘着層付フィルム4〜7を作製した。粘着層付フィルム4〜7における架橋剤Aの塗設量は、表1に記載したとおりである。
【0187】
〔粘着層付フィルム8、9の作製〕
上記粘着層塗布液5の調製において、前記架橋剤A(ビニルスルホン系架橋剤)を、それぞれ同量の下記架橋剤B(エポキシ系架橋剤)、架橋剤C(アルデヒド系架橋剤)に変更した以外は同様にして、粘着層塗布液8、9を調製した。
【0188】
【化4】

【0189】
次いで、前記粘着層付フィルム5の作製において、粘着層塗布液5に代えて、上記調製した粘着層塗布液8、9をそれぞれ用いた以外は同様にして、粘着層付フィルム8、9を作製した。
【0190】
〔粘着層付フィルム10、11、12の作製〕
上記粘着層塗布液5、8、9の調製において、接着剤種をアクリル系粘着剤(アロンタックM−300、東亞合成社製)から、同量のアクリル系粘着剤(アロンタックSCL−200、東亞合成社製)に変更した以外は同様にして、粘着層塗布液10、11、12を調製した。
【0191】
次いで、前記粘着層付フィルム5の作製において、粘着層塗布液5に代えて、上記調製した粘着層塗布液10、11、12をそれぞれ用いた以外は同様にして、粘着層付フィルム10、11、12を作製した。
【0192】
【表1】

【0193】
《赤外反射フィルムの作製》
〔赤外反射フィルム1の作製〕
上記作製した赤外反射層積層体1と、粘着層付フィルム1を用いて、赤外反射フィルム1を作製した。
【0194】
赤外反射層積層体1の赤外反射層積層体面と、粘着層付フィルム1の粘着層面とを対向させて、貼合機を用いて、赤外反射層積層体1側の貼合時張力を線圧として98N/mとし、粘着層付きフィルム1の貼合時張力を線圧として294N/mとして、貼り合わせて、赤外反射フィルム1を作製した。
【0195】
〔赤外反射フィルム2〜19の作製〕
上記赤外反射フィルム1の作製において、赤外反射層積層体と粘着層付フィルムを、表2に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、赤外反射フィルム2〜19を作製した。
【0196】
《赤外反射フィルムの評価》
上記作製した赤外反射フィルム1〜19について、下記の方法に従って、粘着力の測定、糊残り耐性の評価及び赤外反射率の測定を行った。
【0197】
〔接着力の測定〕
上記作製した各赤外反射フィルムを、幅20mm、長さ100mmに断裁した後、接着層上のセパレータフィルム(25μm厚のポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス 白縁磨」)に、ガラス板面に水を付与し、水貼り法により貼り合わせた後、直径が15.2cm(6インチ)、幅が45mmのロール上に、厚さ6mmのゴムで被覆した鋼ローラーを使用し、ローラーの自重のみが赤外反射フィルム面にかかるように、ローラーでフィルムとガラスを圧着した。
【0198】
次いで、ガラス板に赤外反射フィルムを貼付してから48時間後に、90°ピール粘着力を測定した。なお、90°ピール粘着力の測定条件は、剥離角度を90°とし、引張速度が300mm/min、温度が23℃、湿度が50%RHとし、ガラス板より、ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせられた粘着シートを剥離することにより、90°ピール粘着力(N/20mm)を測定した。
【0199】
〔糊残り耐性の評価〕
上記接着力の測定において、ピール法により赤外反射フィルムを剥離した後のガラス板面の粘着成分の残存(糊残り)の有無を目視観察し、下記の基準に従って、糊残り耐性を評価した。なお、実用に耐えうるランクは、4及び5である。
【0200】
5:剥離後、ガラス面に粘着成分が全く残存していない(糊残りなし)
4:わずかに糊残りが認められるが、ガーゼで拭けば簡単に落とせる
3:ガラス面積の1/4程度に糊残りが観測され、ガーゼで拭いても落ちない
2:ガラス面積の1/2程度の面積に糊残りが観測され、ガーゼで拭いても落ちない
1:全面に糊残りが観測され、ガーゼで拭いても落ちない
〔赤外反射率の測定〕
上記粘着力の評価と同様にして、基体として窓ガラスに貼り付けた赤外反射フィルムを、分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、800〜1400nmの領域における反射率を測定した。測定は3回行い、その平均値を求め、赤外反射率とした。
【0201】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0202】
【表2】

【0203】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の赤外反射フィルムあるいはそれを用いた赤外反射体は、比較例に比較し、基体に対する接着力が高く、かつ剥離時に糊残りが無く、赤外反射率が高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有する赤外反射フィルムにおいて、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有することを特徴とする赤外反射フィルム。
【請求項2】
前記反応性官能基を有する水溶性樹脂が、ゼラチン類であることを特徴とする請求項1に記載の赤外反射フィルム。
【請求項3】
前記粘着層における架橋剤の単位面積当たりの含有量(g/m)が、前記粘着層に接する赤外反射層積層体を構成する層が含有する反応性官能基を有する水溶性樹脂の含有量(g/m)の0.01倍以上、0.30倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外反射フィルム。
【請求項4】
基材上に、低屈折率材料を有する層と高屈折率材料を有する層とを交互に積層して形成した赤外反射層積層体と、該赤外反射層積層体に隣接する位置に粘着層とを有し、該粘着層に接する該赤外反射層積層体を構成する層が反応性官能基を有する水溶性樹脂を含有し、かつ該粘着層が該水溶性樹脂の反応性官能基と反応しうる架橋剤を有する赤外反射フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けたことを特徴とする赤外反射体。
【請求項5】
前記反応性官能基を有する水溶性樹脂が、ゼラチン類であることを特徴とする請求項4に記載の赤外反射体。
【請求項6】
前記赤外反射フィルムを、前記基体上に水貼り法を用いて貼り合わせて作製したことを特徴とする請求項4または5に記載の赤外反射体。

【公開番号】特開2012−131130(P2012−131130A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285521(P2010−285521)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】