赤外染料における可視光の吸収を最小限にする方法
本発明は、IR吸収染料における可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。該方法は、ネットページおよびハイパーラベルシステムとともに特に好適に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、赤外(IR)染料における可視光の吸収を最小限にする方法に関する。それは、主として、IRインクにおける望ましくない着色を回避するため、より詳細には、IRインクで印刷またはたタグ付けされた基体(substrate)の望ましくない着色を回避するために開発された。
【0002】
[関連技術の説明]
IR吸収染料は、光記録システム、熱記録ディスプレイ、レーザフィルタ、赤外線写真、医療用途および印刷などの多くの用途を有する。典型的には、これらの用途に使用される染料は、半導体レーザの発光波長(例えば約700nmと2000nmの間、好ましくは700nmと100nmの間)に近赤外の強い吸収を有するのが望ましい。例えば、光記録技術では、ガリウムアルミニウム砒素(GaAlAs)およびリン化インジウム(InP)ダイオードレーザが光源として広く使用されている。
【0003】
IR染料の他の重要な用途は、印刷インクなどのインクである。デジタル情報の印刷形態での記憶および検索は、特に重要である。この技術のよく知られている例は、印刷された走査可能バーコードの使用である。バーコードは、特定の製品に付随するタグまたはラベルに典型的に印刷され、その識別情報および価格等のその製品に関する情報を含む。バーコードは、目に見える黒色インクの複数の直線上で通常印刷され、スキャナからの可視光を使用して検出される。スキャナは、LEDまたはレーザ(例えば、633nmの光を放射するHeNeレーザ)光源と、反射光を検出するためのフォトセルとを典型的に備える。バーコードインクに好適に使用される黒色染料は、例えば国際公開第03/074613号パンフレットに記載されている。
【0004】
しかし、この技術の他の用途(例えばセキュリティタグ付け)ではバーコード、または裸眼には不可視であるが、UVまたはIR光の下では検出することが可能であるインクで印刷された他の明瞭標示を有することが望ましい。
【0005】
検出可能な不可視インクの特に重要な用途は、自動識別システム、特に「ネットページ」および「Hyperlabel(商標)」システムである。ネットページシステムは、いずれも参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
【0006】
[相互参照]
本発明に関する様々な方法、システムおよび装置は、本出願の出願人または譲受人によって出願された以下の同時係属出願に記載されている。
10/409,876; 10/409,848; 10/409,845; 09/575,197; 09/575,195;
09/575,159; 09/575,132; 09/575,123; 09/575,148; 09/575,130;
09/575,165; 09/575,153; 09/693,415; 09/575,118; 09/609,139;
09/608,970; 09/575,116; 09/575,144; 09/575,139; 09/575,186;
09/575,185; 09/609,039; 09/663,579; 09/663,599; 09/607,852;
09/575,191; 09/693,219; 09/575,145; 09/607,656; 09/693,280;
09/609/132; 09/693,515; 09/663,701; 09/575,192; 09/663,640;
09/609,303; 09/610,095; 09/609,596; 09/693,705; 09/693,647;
09/721,895; 09/721,894; 09/607,843; 09/693,690; 09/607,605;
09/608,178; 09/609,553; 09/609,233; 09/609,149; 09/608,022;
09/575,181; 09/722,174; 09/721,896; 10/291,522; 10/291,517;
10/291,523; 10/291,471; 10/291,470; 10/291,819; 10/291,481;
10/291,509; 10/291,825; 10/291,519; 10/291,575; 10/291,557;
10/291,661; 10/291,558; 10/291,587; 10/291,818; 10/291,576;
10/291,589; 10/291,526; 6,644,545; 6,609,653; 6,651,879;
10/291,555; 10/291,510; 19/291,592; 10/291,542; 10/291,820;
10/291,516; 10/291,363; 10/291,487; 10/291,520; 10/291,521;
10/291,556; 10/291,821; 10/291,525; 10/291,586; 10/291,822;
10/291,524; 10/291,553; 10/291,511; 10/291,585; 10/291,374;
10/685,523; 10/685,583; 10/685,455; 10/685,584; 10/757,600;
09/575,193; 09/575,156; 09/609,232; 09/607,844; 09/607,657;
09/693,593; 10/743,671; 09/928,055; 09/927,684; 09/928,108;
09/927,685; 09/927,809; 09/575,183; 09/575,160; 09/575,150;
09/575,169; 6,644,642; 6,502,614; 6,622,999; 09/575,149;
10/322,450; 6,549,935; NPN004US; 09/575,187; 09/575,155;
6,591,884; 6,439,706; 09/575,196; 09/575,198; 09/722,148;
09/722,146; 09/721,861; 6,290,349; 6,428,155; 09/575,146;
09/608,920; 09/721,892; 09/722,171; 09/721,858; 09/722,142;
10/171,987; 10/202,021; 10/291,724; 10/291,512; 10/291,554;
10/659,027; 10/659,026; 09/693,301; 09/575,174; 09/575,163;
09/693,216; 09/693,341; 09/693,473; 09/722,087; 09/722,141;
09/722,175; 09/722,147; 09/575,168; 09/722,172; 09/693,514;
09/721,893; 09/722,088; 10/291,578; 10/291,823; 10/291,560;
10/291,366; 10/291,503; 10/291,469; 10/274,817; 09/575,154;
09/575,129; 09/575,124; 09/575,188; 09/721,862; 10/120,441;
10/291,577; 10/291,718; 10/291,719; 10/291,543; 10/291,494;
10/292,608; 10/291,715; 10/291,559; 10/291,660; 10/409,864;
10/309,358; 10/410,484; 10/683,151; 10/683,040; 09/575,189;
09/575,162; 09/575,172; 09/575,170; 09/575,171; 09/575,161;
10/291,716; 10/291,547; 10/291,538; 10/291,717; 10/291,827;
10/291,548; 10/291,714; 10/291,544; 10/291,541; 10/291,584;
10/291,579; 10/291,824; 10/291,713; 10/291,545; 10/291,546;
09/693,388; 09/693,704; 09/693,510; 09/693,336; 09/693,335;
10/181,496; 10/274,119; 10/309,185; 10/309,066; 10/778,090;
10/778,056; 10/778,058; 10/778,060; 10/778,059; 10/778,063;
10/778,062; 10/778,061; 10/778,057; 10/782,894; 10/782,895;
10/786,631; 10/793,933; 10/804,034; 10/815,621; 10/815,612;
10/815,630; 10/815,637; 10/815,637; 10/815,640; 10/815,642;
10/815,643; 10/815,644; 10/815,618; 10/815,639; 10/815,635;
10/815,647; 10/815,634; 10/815,632; 10/815,631; 10/815,648;
10/815,641; 10/815,645; 10/815,646; 10/815,617; 10/815,620;
10/815,615; 10/815,613; 10/815,633; 10/815,619; 10/815,616;
10/815,614; 10/815,636; 10/815,649; 10/815,609; 10/815,627;
10/815,626; 10/815,610; 10/815,611; 10/815,623; 10/815,622;
10/815,629; 10/815,625; 10/815,624; 10/815,628; 10/831,232;
10/831,242; 10/846,895; 6,889,896; 10/853,782; 10/853,379;
【0007】
これらの同時係属特許/特許出願のすべての開示内容が、参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの特許出願は、それらの整理番号によって一時的に識別される。これは、利用可能である場合は対応する出願番号に代えられることになる。
【0008】
概して、ネットページシステムは、ネットページの製造、およびネットページと人間の対話に依存する。これらは、普通紙に印刷されたテキスト、図形および画像のページであるが、対話式ウェブページのように機能する。人間の裸眼には実質的に不可視であるインクを使用して、情報が各ページ上に符号化される。しかし、インク、そしてそれにより符号化データを、光学撮像ペンで感知し、ネットページシステムに送信することが可能である。
【0009】
各ページ上の活性ボタンおよびハイパーリンクをペンでクリックして、ネットワークからの情報、またはネットワークサーバへの信号選択を要求することができる。いくつかの形態において、ネットページに手で書いたテキストを自動的に認識し、ネットページシステムでコンピュータテキストに変換して、書式を埋めることができる。他の形態において、ネットページに記録された署名を自動的に検証し、電子商取引を安全に認証させることができる。
【0010】
ネットページは、その上にネットページネットワークが構築される基礎である。それらは、公開された情報に対する紙ベースのユーザインターフェース、および対話サービスを提供することができる。
【0011】
ネットページは、ページのオンライン記述を基準として不可視的にタグ付けされた印刷ページ(または他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバによって永続的に維持される。ページ記述は、テキスト、図形および画像を含むページの可視的なレイアウトおよび内容を記述する。ボタン、ハイパーリンクおよび入力フィールドを含むページ上の入力要素をも記述する。ネットページは、ネットページペンで表面に作成された標示を同時に取り込み、ネットページシステムで処理することを可能にする。
【0012】
多数のネットページが、同一のページ記述を共用することが可能である。しかし、さもなければ同一のページを介する入力を区別させるために、各ネットページが固有のページ識別子に割り当てられる。このページIDは、非常に多数のネットページを区別するのに十分な精度を有する。
【0013】
ページ識別子に対する各基準は、印刷タグで符号化される。タグは、それが表示される固有のページを識別することにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、また、ページ上のその位置を識別する。
【0014】
タグは、普通紙などの赤外線反射性の任意の基体上に赤外線吸収性インクで印刷される。近赤外波長は、人間の目には不可視であるが、適切なフィルタを有する固体画像センサによって容易に感知される。
【0015】
タグは、ネットページペンにおけるエリア画像センサによって感知され、タグデータは、最も近いネットページプリンタを介してネットページシステムに送信される。ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してネットページプリンタと通信する。タグは、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。タグは、誤差補正可能に符号化されて、表面損傷に対して部分的に耐性が与えられる。
【0016】
ネットページページサーバは、印刷ネットページ毎に固有のページインスタンスを維持して、印刷ネットページ毎に、入力フィールドに対するユーザ供給値の異なる集合体を維持することを可能にする。
【0017】
Hyperlabel(商標)は、Silverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である。概して、Hyperlabel(商標)システムは、不可視の(例えば赤外線)タグスキームを用いて、品目を一意的に識別する。これは、製品のパッケージまたはラベルのグラフィックデザインに影響することなく、製品の全表面またはその大部分をタグ付けすることを可能にするという大きな利点を有する。製品の全表面がタグ付けされる(「全面タグ付けされる」)と、製品の配向によってその走査性が影響されない、すなわち可視バーコードの目視線の欠点の大部分が解消される。また、タグがコンパクトで、大量に(「オムニタグが」)複製される場合は、ラベル損傷により走査が阻止されることがなくなる。
【0018】
したがって、ハイパーラベリングは、光学的に読取り可能な不可視タグを有する製品の表面の大部分を被覆することからなる。タグが、赤外スペクトルにおける反射または吸収を利用するときは、赤外識別(IRID)タグと呼ばれる。各Hyperlabel(商標)は、それが表示される製品を一意的に識別する。タグは、品目の製品コードを直接符号化するか、または次に検出可能検索を介して製品コードを識別する代理IDを符号化することができる。各タグは、また、品目の表面のその位置を場合によって識別して、ネットページ対話の下流消費者利益をもたらす。
【0019】
Hyperlabels(商標)は、デジタルプリンタ、好ましくはインクジェットプリンタを使用して、製品製造および/または梱包時に適用される。これらは、テキストおよび図形が他の手段で印刷された後にタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよいし、標識、テキストおよび図形を同時に印刷する統合カラーおよび赤外プリンタであってもよい。
【0020】
適切な近赤外周波数を有する光源を使用すること以外はバーコードと同様の技術を用いて、Hyperlabels(商標)を検出することが可能である。光源は、レーザ(例えば、830nmの光を放射するGaAlAsレーザ)であってもよいし、LEDであってもよい。
【0021】
以上から、可視IR検出可能インクは、ネットページおよびHyperlabel(商標)システムの重要な成分であることが容易に理解される。IR吸収インクが、これらのシステムで良好に機能するためには、理想的にはいくつかの基準を満たす必要がある。
(i)インクジェットプリンタとの適合性
(ii)インクジェットインクに使用される水性溶媒とのIR染料の相溶性
(iii)近赤外領域における強い吸収(例えば700から1000nm)
(iv)可視吸収がない、または低い
(v)耐光性
(vi)熱安定性
(vii)毒性がない、または低い
(viii)製造コストが低い
(ix)紙および他の媒体に対する接着性が良好
(x)印刷時のインクの裏抜けがない、またはにじみが最小限に抑えられる
【0022】
したがって、上記基準の少なくとも一部および好ましくは全部を満たすIR染料およびインク組成物を開発することが望まれる。ネットページおよびHyperlabel(商標)システムを完成するために、当該インクが望まれる。
【0023】
いくつかのIR染料は、Epolin Products、Avecia InksおよびH.W.Sands Corp.などの様々な供給源から市販されている。
【0024】
加えて、先行技術には、様々なIR染料が記載されている。例えば、米国特許第5,460,646号には、着色剤、媒体および溶媒を含み、着色剤はシリコン(IV)2,3−ナフタロシアニンビストリアルキルシリルオキシドである赤外印刷インクが記載されている。
【0025】
米国特許第5,282,894号には、金属を含有しないフタロシアニン、複合フタロシアニン、金属を含有しないナフタロシアニン、複合ナフタロシアニン、ニッケルジチオレン、アミニウム化合物、メチン化合物またはアズレンスクアリン酸を含む溶媒系印刷インクが記載されている。
【0026】
しかし、先行技術の染料は、いずれもネットページまたはHyperlabel(商標)システムに好適に使用される組成物に調合できない。特に、市販および/または先行技術のインクには、近赤外センサにより検出に適さない波長での吸収、水性溶媒系に対する溶解性または分散性が低いこと、またはスペクトルの可視部分における吸収が許容できないほど高いことのいずれかの問題がある。
【0027】
典型的なネットページでは、1ページのハイパーリンクの数が多く、それに応じてIRインクで印刷されるページ部分が比較的多くなりうる。Hyperlabel(商標)システムでは、製品のパッケージの大部分を不可視インクで印刷できる。したがって、使用されるインクは、裸眼で見えず、残留色が最小限であることが特に望ましい。
【0028】
さらに、インクジェット印刷は、ネットページおよびHyperlabel(商標)を生成するのに好ましい手段である。インクジェット印刷は、主として高速および低コストであるため好ましい。インクジェットインクは、低コスト、低毒性および低引火性という理由から、典型的には水系である。熱バブルジェットプリンタでは、インクは、印刷処理時に急速に蒸発する必要がある。印刷処理時のインクのこの急速な蒸発には、水系インク組成物が必要である。よって、ネットページおよびHyperlabel(商標)インクに使用されるIR染料は、水性インク組成物への調合に好適であり、インクジェットプリンタに適合する。
【0029】
ネットページシステムに使用されるIR染料のさらなる基本的要件は、ネットページペンにおけるIRセンサの周波数に相補的な周波数でIR放射線を吸収すべきことである。好ましくは、インクは、IRセンサの周波数で強く吸収する染料を含むのがよい。よって、ネットページシステムに使用される染料は、近赤外領域、すなわち700から1000nm、好ましくは750から900nm、より好ましくは780から850nmで強く吸収するのがよい。
【0030】
[発明の概要]
第1の態様において、本発明は、IR吸収染料における可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0031】
第2の態様において、本発明は、IR吸収染料を含むインクジェットインクにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0032】
第3の態様において、本発明は、IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0033】
第4の態様において、印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の識別情報および書式の複数の基準点を示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、書式の識別情報、および書式に対する感知デバイスの位置に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、書式に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、かつ指示データから、書式の少なくとも1つのフィールドを識別するステップと、
コンピュータシステムにおいて、少なくとも1つのフィールドに関する指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0034】
第5の態様において、印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の少なくとも1つのフィールドを示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、少なくとも1つのフィールドに関するとともに、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含む指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して前記少なくとも1つのフィールドに関するデータを生成し、書式に対するデバイスの移動に関するデータを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィールドに関する前記指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0035】
第6の実施形態において、品目を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を記録するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0036】
第7の態様において、品目を介してコンピュータシステムからデータを検索することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を検索するステップと、
(c)コンピュータシステムから出力デバイスに対して、品目に関する情報を出力するステップであって、出力デバイスは、表示デバイスおよび印刷デバイスを含む群から選択されるステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0037】
[詳細な説明]
(IR吸収染料)
本明細書に用いられているように、「IR吸収染料」という用語は、赤外放射線を吸収し、そのため赤外センサによる検出に好適である染料基体を意味する。好ましくは、IR吸収染料は、近赤外領域で吸収し、好ましくは700から1000nm、より好ましくは750から900nm、より好ましくは780から850nmの範囲のλmaxを有する。この範囲のλmaxを有する染料は、ガリウムアルミニウム砒素ダイオードレーザなどの半導体レーザによる検出に特に好適である。
【0038】
先行技術のIR吸収染料化合物は、少なくともある程度は、スペクトルの可視領域で吸収することが本発明者等によって認識された。実際、先行技術において知られているIR吸収染料化合物の大多数は黒色である。この可視吸収は、「不可視」IRインク、特にネットページまたはHyperlabel(商標)システムに使用されるIRインクにおいては明らかに望ましくない。
【0039】
IR吸収染料化合物、特にIR吸収金属−リガンド錯体のIRスペクトルにおける可視帯域の存在は、主に隣り合う分子間の分子間相互作用によるものである。
【0040】
典型的には、IR吸収化合物は、分子の少なくとも一部に実質的に平面の部分(moiety)を形成するπ系を含む。隣り合う分子における平面のπ系は、π−π堆積として知られる分子間π相互作用を介して積み重なる自然の傾向がある。したがって、IR吸収化合物は、分子間π相互作用を介して集合し、比較的弱く結合した二量体および三量体等を生成する自然の傾向を有する。理論に束縛されることを望むのではなく、本発明者等は、IR吸収化合物は、さもなければ対応する単量体化合物に存在しない、それらのIRスペクトルにおける可視吸収帯域の生成に大きく貢献しているものと理解する。この可視吸収は、π系が積み重なり、π軌道が相互作用して、それぞれのエネルギー順位に小さな変化をもたらす場合のIR吸収帯域の広がりによるものと理解される。IR吸収帯域の広がりは、2つの点で望ましくない。第1に、IR領域における吸収の強度を低減し、第2に、IR吸収帯域は、可視領域の末端について、強く着色した化合物を生成する傾向がある。
【0041】
また、π−π相互作用を介する着色二量体および三量体等の形成は、固体および溶液の双方に生じる。しかし、拡大されたπ堆積オリゴマーの形成を阻害する溶媒分子が存在しない固体では特に問題である。許容される溶液特性を有するIR染料は、紙に印刷された場合に強く着色した固体にとどまることができる。理想的な「不可視」IR染料は、溶媒が蒸発または紙に吸い込まれた場合に不可視となる。
【0042】
また、局所的電荷、またはイオンなどの部分帯電原子によるπ軌道の相互作用は大きく、これによって可視領域にさらなる吸収が導入されうる。
【0043】
先行技術は、いずれも、π−π堆積の形態の分子間相互作用を低減するように特異的に構成された染料分子を設計・合成することによってIRインクにおける可視吸収の問題を扱っていない。
【0044】
分子間相互作用を低減するのに好適な部分の具体例については、以下により詳細に記載されている。しかし、隣り合う染料分子の分子間π−π相互作用二重分に干渉することができる任意の部分または基は、可視吸収を最小限にするのに好適であるため、本発明に好適に使用されることを上記から理解されるであろう。
【0045】
好ましくは、分子間相互作用を低減するように構成された部分は、立体反発効果によりこれらの相互作用を低減する。したがって、好適に位置する立体反発基を有する染料分子を提供することによって、潜在的に相互作用するπ系の間の距離を長くすることによって、π−π堆積を最小限にすることが可能である。
【0046】
好ましくは、分子間相互作用を低減するように構成された部分は、染料分子の周囲、または実質的に平面のπ系の少なくとも周囲に位置する。典型的には、分子間π相互作用は、π系の表面の重なりに起因する。それらの部分を染料分子の周囲に位置させることによって、部分は、重なりの度合いを低減する上で最大限の効果を有する。
【0047】
一般に、隣り合う分子のπ系間の平均距離が、約3.5Å、より好ましくは約4Å、より好ましくは約5Åを上回るように、染料分子を構成するのが好ましい。隣り合う分子のπ系間のこの好ましい距離は、理論的計算に基づく。本発明者等による理論的研究から、π−π相互作用は、3.5Å以下の距離で大きくなることが理解される。
【0048】
好ましくは、分子間相互作用を低減するための部分は、実質的に平面のπ系の平面から延びる。例えば、シアニン型染料は、分子の主平面を形成するπ系を典型的に含む。この主平面は通常、共役ヘテロ芳香族および/または芳香族環で構成される。同様に、ジチオレン染料(例えばニッケルジチオレン)は、中央のニッケル原子、二対の硫黄原子、および硫黄原子が隣接結合する一対の二重結合によって定められる実質的に平面のπ系を典型的に有する。その部分が好ましくは構成され、またはこの平面から延び、近隣の染料分子に対して立体反発を発揮するような配座に少なくとも折り込まれる。π系の平面から延びる部分が大きいほど、分子間相互作用が低減されることになる。
【0049】
好ましくは、分子間相互作用を低減するための部分は、三次元構造を有する。「三次元構造」とは、部分が、すべての配座において三次元空間の体積を占めることを意味する。好ましくは、部分は、三次元のC3〜C30ヒドロカルビルまたはC3〜C30ヒドロカルビレン基である。
【0050】
当業者であれば理解するように、三次元ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基の正確な性質は、その基が分子間相互作用を阻害する十分な三次元構造を有するのであれば、本発明にとって重要でない。しかし、分子間相互作用を低減するのに好適な好ましい部分は、C3〜C30架橋環状基である。上記のように、そのような基は、好ましくは、それらの重なり阻害効果を最大限にするπ系の周囲に位置する。
【0051】
架橋環状基などの三次元ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基を含む染料分子の代替(または追加)として、分子間相互作用を低減するための1つまたは複数のポリマー置換基を含むことができる。本発明の脈絡において、「ポリマー」という用語は、2つ以上の繰返し単量体単位を有する基を記載するのに用いられる。例えば、分子間相互作用を低減するためのポリマー置換基は、2から5000、より好ましくは2から1000、より好ましくは2から100、より好ましくは2から50の繰返し単量体単位を含むことができる。
【0052】
理論に束縛されることを望むのではなく、本発明者等は、ポリマー置換基は、ポリマーの少なくとも一部が、隣り合う染料分子のπ系の間に位置する配座に折り込まれることによってπ−π相互作用に干渉する。これにより、分子間π−π相互作用が阻害されるため、ポリマー置換基は、π系が重なり、相互作用する傾向を低減することができる。
【0053】
ポリマー置換基が立体反発を提供できるのであれば、その正確な性質は本発明にとって重要ではないことが容易に理解されるであろう。よって、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリアルケン等の任意の種類のポリマーを含んでいてもよい。
【0054】
ポリマー基は、デンドリマーの形態の複数のポリマー鎖、すなわちそこから複数のポリマー鎖が放射状に広がる芯または鋳型を含んでいてもよい。デンドリマー分子の分枝性は、それらのポリマー鎖が三次元空間における大きな体積を占めることができることを意味する。この大きな三次元の体積は、それぞれの染料分子間の立体反発を強め、それにより分子間相互作用を低減するのに有利である。
【0055】
立体反発を提供するのに加えて、ポリマー置換基は、染料分子にさらなる特性を付与することができる。例えば、ポリマー置換基を適切に選択すると、分子に親水性を付与するのに使用することができる。エチレングリコール(PEG鎖)の繰返し単位を含むポリマー置換基は、分子間π相互作用を低減するばかりでなく、親水性を提供するのに特に好適である。
【0056】
好ましくは、染料分子は、親水基を含む。親水基は、染料分子に水分散性または水溶解性を付与するために好ましい。本発明の染料分子は、インクジェットインク組成物、好ましくは水性インクジェットインク組成物に使用されることを目的としている。したがって、親水基の提供は、本発明の染料分子を水性インクジェットインク組成物に分散することを可能にするための1つの手段である。
【0057】
好ましくは、親水基は、親水性ポリマー鎖、アンモニウム基、その塩を含む酸基、またはスルホンアミド基から選択される。
【0058】
親水性ポリマー鎖の例は、エチレングリコールの2から5000の繰返し単位を含んでいてもよいPEG鎖である。他の親水性ポリマー鎖は、当業者であれば容易に理解されるであろう。親水性ポリマー鎖は、染料分子上の置換基(または置換基の一部)であってもよい。
【0059】
アンモニウム基は、一般式:−N+(Ra)(Rb)(Rc)または−U(式中、Ra、Rb、Rcは、同じであっても異なっていてもよく、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびナフチル等)から独立に選択され、Uは、ピリジニウム、イミダゾリニウムまたはピロリニウムである)の基を含む置換基として存在していてもよい。あるいは、アンモニウム基は、染料分子において四元化されたN原子の形態で存在していてもよい。例えば、染料分子におけるヘテロ芳香族N原子を、知られている手順に従って、C1〜C8アルキルまたはC6〜C12アリールアルキル基で四元化することができる。
【0060】
酸基は、式:−CO2Z、−SO3Z、−OSO3Z、−PO3Z2または−OPO3Z2(式中、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基を含む置換基として存在していてもよい。好ましくは、Zは、Li+、Na+またはK+から選択される。上記の方法などの酸基を導入する方法を当業者であればよく知っているであろう。例えば、染料分子におけるオレフィンまたはヒドロキシル基を酸化することによってカルボン酸基を導入することができる。あるいは、例えばオレウムまたはクロロスルホン酸を使用するスルホン化によって染料分子における芳香族部分にスルホン酸基(−SO3H)を導入することができる。例えば金属水酸化物試薬(例えばLiOH、NaOHまたはKOH)または金属重炭酸塩(例えばNaHCO3)を使用して、酸基のその塩形態への変換を行うことが可能である。例えば水酸化アンモニウム(例えばBu4NOHおよびNH4OH等)を使用して非金属塩を調製することもできる。
【0061】
スルホンアミド基は、一般式:−SO2NRpRq(式中、RpおよびRqは、H、C1〜C8アルキル(例えば、メチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、−(CH2CH2O)eRe(式中、eは2から5000の整数であり、ReはH、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキル)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびメトキシフェニル等)から独立に選択される)の基を含む置換基として存在していてもよい。
【0062】
スペクトルの可視部における吸収の問題は、IR吸収金属−リガンド錯体における特殊な問題である。金属−リガンド染料分子(例えばニッケルジチオレン、金属フタロシアニンおよび金属ナフタロシアニン)は、当該技術分野で知られている。したがって、本発明は、その好ましい形態において、IR吸収金属−リガンド錯体における分子間相互作用を低減する。
【0063】
本明細書に用いられるように、「金属」という用語は、金属−リガンド錯体を形成することが可能な任意の金属または半金属(SiまたはGe)を含む。当該金属のいくつかの例は、Si、Ge、Ga、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Pb、Zr、PdおよびPtである。金属は、金属−リガンド錯体を形成するための任意の好適な酸化状態であってもよい。金属−シアニン染料の場合は、金属は、好ましくはSi、Ge、Al、Mn、Ti、V、ZnまたはSnである。金属−ジチオレン染料の場合は、金属は、好ましくはNi、PdまたはPt、より好ましくはNiである。
【0064】
金属−リガンド錯体は、四配位(例えば平面四角形)、五配位(例えば錐体四角形)または六配位(例えば八面体)構造などの任意のリガンド配位構造を有していてもよい。金属−リガンド錯体の構造は、リガンドおよび金属の性質、ならびに金属の酸化状態に依存することになる。
【0065】
好ましくは、金属−リガンド錯体は、少なくとも1つの多歯状リガンドを含む。「多歯状リガンド」とは、複数の配位原子を有するリガンドを意味する。
【0066】
多歯状リガンドは、それらの金属との錯体が、単歯状リガンドより通常は熱力学的に安定するため、好ましい。さらに、多歯状リガンドは、その配位ヘテロ原子、および配位ヘテロ原子と共役されたリガンドにおけるπ結合を介して、金属−リガンド錯体の中央の金属原子と大きなIR吸収π系を形成することが可能である。
【0067】
本発明の好ましい方法において、金属−リガンド染料は、リガンドが、実質的に平面のπ系の平面から延びる少なくとも1つの部分を有するように予め選択される。その構造部分は、相でなければ実質的に平面の染料分子に三次元構造を提供する。好ましくは、金属−リガンド染料は、少なくとも1つのリガンドが架橋環状基を含むように予め選択される。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、染料分子は、赤道結合四歯状シアニン型リガンドを有する金属−リガンド錯体である。特にそのような場合には、錯体の空の軸位置を利用して、さらなる官能基を金属−リガンド錯体に導入することができる。よって、本発明のいくつかの形態において、金属−リガンド染料は、少なくとも1つの軸配位子が、分子間相互作用を低減するための基を含むように予め選択される。軸配位子は、例えば1つまたは複数のポリマー基を含んでいてもよい。上述したように、ポリマー基は、隣り合う染料分子のπ系が相互作用する傾向を低減する配座に存在しうる。したがって、ポリマー軸配位子は、分子間相互作用の低減をさらに支援することが可能である。
【0069】
好ましくは、軸配位子は、染料分子のπ面を効果的に「保護」または遮断するように配座を採用する(または構成される)。π系上に「傘」を形成し、隣り合う染料分子の分子間相互作用を低減することができる軸配位子は、本発明に特に好適に使用される。
【0070】
軸配位子が最大限の立体反発を有するように、デンドリマー、すなわち複数の鎖が放射状に広がる中央の芯または鋳型の形態のポリマー鎖などの複数の鎖を含んでいてもよい。デンドリマーは、当業者によく知られており、以下により詳細に説明されている。
【0071】
分子間相互作用を低減する軸配位子の有利な使用にもかかわらず、軸配位子は、染料分子に親水性を与えることもできる。例えば、軸配位子が1つまたは複数の親水基を含む場合は、染料分子に水分散性を与えることになる。上述のように、染料分子を水性インクジェットインク組成物に使用できるため、水分散性は有利である。親水基の例は、PEG鎖、アンモニウム基および酸基(その塩を含む)である。よって、親水基を有するデンドリマーを含む軸配位子は、(1)分子間相互作用の低減および(2)染料分子の水分散性の向上の二重特異性を付与することになる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、染料は、式(I)の錯体または式(II)の化合物から予め選択されるシアニン型染料である。
【0073】
【化1】
【0074】
式中、
Q1、Q2、Q3およびQ4は、同一または異なっており、C3〜C20アリレン基またはC3〜C20ヘテロアリレン基から独立に選択され、前記C3〜C20アリレンまたはC3〜C20ヘテロアリレン基は、分子間相互作用を低減するのに好適な少なくとも1つの置換基を含み、
Mは、Si(A1)(A2)、Ge(A1)(A2)、Ga(A1)、Mg、Al(A1)、TiO、Ti(A1)(A2)、ZrO、Zr(A1)(A2)、VO、V(A1)(A2)、Mn、Mn(A1)、Fe、Fe(A1)、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sn(A1)(A2)、Pb、Pb(A1)(A2)、PdおよびPtから選択され、
A1およびA2は、同一であっても異なっていてもよく、−OH、ハロゲン、−OR3、親水性リガンドおよび/または分子間相互作用を低減するのに好適なリガンドから選択され、
R3は、C1〜C12アルキル、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキルまたはSi(Rx)(Ry)(Rz)から選択され、
Rx、RyおよびRzは、同一であっても異なっていてもよく、C1〜C12アルキル、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C12アリールオキシまたはC5〜C12アリールアルコキシから選択される。
【0075】
Q1、Q2、Q3およびQ4は、同一であっても異なっていてもよい。一般に、シアニン型染料は、大環状環を形成するための近隣のシアノ基の直列結合によって合成された対称構造体である。例えば、一般式(1)の4つのジシアノ化合物または式(2)の4つのイミジン化合物の直列塩基触媒結合によって、上記式(I)の染料を調製することができる。
【0076】
【化2】
【0077】
直列塩基触媒反応を金属鋳型によって促進させることができ、または金属の不在下で進行させることができる。よって、シアニン型化合物のこの好ましい合成の性質により、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、通常は同一であるか、または同一の芯構造単位を少なくとも有することになる。しかし、大環形成後に化合物が官能化される場合には、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、異なっていてもよい。例えば、大環状形成に続く芳香族部分の官能化は、完全対称的に行われなくてもよく、その場合には、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、置換基の数が異なることにより互いに異なっていてもよい。
【0078】
好ましくは、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、以下の式(i)から(vii)のアリレンまたはヘテロアリレン基から選択される。
【0079】
【化3】
【0080】
式中、
R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ、アミノ、C1〜C12アルキルアミノ、ジ(C1〜C12アルキル)アミノ、ハロゲン、シアノ、チオール、C1〜C12アルキルチオ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C12アルキルカルボニル、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アルキルカルボニルオキシまたはC1〜C12アルキルカルボニルアミノから選択され、
Tは、ポリマー鎖を含む置換基、または三次元構造を有するC3〜C30ヒドロカルビル基から選択される。
Wは、親水基であり、
Eは、−OH、−O−、C1〜C6アルキル、カルボキシ−C1〜C6アルキル、スルホ−C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C5〜C12アリールアルキル、C1〜C6アルキルカルボニル、C5〜C12アリールアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニルまたはC5〜C12アリールアルコキシカルボニルから選択され、
mは、0、1または2であり、
nは、1または2であり、
pは、0、1または2である。
【0081】
好ましくは、Q1、Q2、Q3およびQ4は、式(v)で表される。
【0082】
R1およびR2で表される基は、主として、染料のλmaxの波長を変更または「調整」するためのものである。これらの位置における電子供与性置換基(例えばアルコキシ、アルキルアミノ)は、染料におけるレッドシフトを生成しうる。逆に、これらの位置における電子球引性置換基(例えばシアノ、カルボキシ、ニトロ)は、染料におけるブルーシフトを生成しうる。これらの置換基を変えることによって、染料を特定のレーザ検出器の周波数に合わせて「調整」することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、R1およびR2は、ともにC1〜C8アルコキシ基、好ましくはブトキシである。ブトキシ置換基は、有利には、λmaxを市販のレーザによる検出に好ましい近赤外のより長い波長にシフトさせる。
【0084】
代替的な好ましい実施形態において、R1およびR2は、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ基である。親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ基は、(i)染料の吸収波長を調整する機能および(ii)親水性を提供して水分散性を支援する機能の二重機能を提供するため有利である。親水基は、上述のように、親水性ポリマー鎖、アンモニウム基、その塩を含む酸基、またはスルホアミド基であってもよい。親水性基は、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アミノ、保護アミノ、チオール、保護チオール、シアノ、エステル、ハロゲンまたはアルケニル基であってもよい。そのような基は、親水基に容易に変換されうる。例えば、ヒドロキシル基をカルボン酸基(その塩を含む)に酸化することができ、ヒドロキシル基をPEG鎖に結合させることができ、例えばヨウ化メチルを使用してアミノ基を四元化することができ、チオール基をスルホン酸基(その塩を含む)またはスルホンアミドに酸化することができ、シアノおよびエステル基をカルボン酸基(その塩を含む)に加水分解することができ、アルケニル基を(例えばオゾン分解または過マンガン酸酸化によって)酸化開裂させて、カルボン酸基(その塩を含む)を提供することができる。保護ヘテロ原子の場合は、保護基は、親水基への変換前に除去される。したがって、R1およびR2は、ともに、−O(CH2)4OHなどのヒドロキシアルコキシ基であってもよい。
【0085】
Tで表される基は、染料分子間の分子間相互作用を低減する。Tnにおける添字nおよびTpにおける添字pは、T置換基の数を示す。2つのT置換基が存在する場合は、これらを結合して、環状構造を形成することができる。好ましくは、Tは、上述のようなC3〜C30架橋炭素環を含む置換基である。あるいは、Tは、上述のようなポリマー鎖を含む置換基である。いずれの場合も、染料は、分子間相互作用を低減するのに好適な少なくとも1つの部分を含む。
【0086】
Wで表される基は、存在する場合は、親水性を染料分子に付与する。Tmにおける添字mは、W置換基の数を示す。Q1、Q2、Q3およびQ4の各々は、例えば非対称的なスルホン化から生じる異なる数のW置換基を有していてもよい。好ましくは、Wは、PEG鎖を含む置換基、アンモニウム基を含む置換基、その塩を含む酸基を含む置換基、またはスルホンアミド基を含む置換基から選択される。Wは、上述の好ましい親水基のいずれか1つであってもよい。好ましくは、−SO3H、またはLi、Na+、K+、NH4+等のその水溶性塩である。例えばオレウムまたはクロロスルホン酸を使用するスルホン化によって、スルホン酸基を芳香族構造体(i)〜(v)のいずれかに容易に導入することができる。あるいは(または加えて)、N原子を四元化することによって親水性を染料分子に付与することができる。これは、ヘテロ原子部分(vi)および(vii)に示されている。
【0087】
好ましくは、染料分子は、中央の金属原子を含み、式(I)の化合物に対応する。式(I)の金属−リガンド染料分子は、分子の吸収λmaxを好ましい波長に合わせて調整するのに金属原子(またはイオン)を使用できるため好ましい。例えば、Mn、VおよびSnなどの特定の金属は、λmaxにおいて大きなレッドシフトを生成することができる。この脈絡において、レッドシフトは、金属を含まない化合物に比べて、λmaxのより長い波長へのシフトを意味する。
【0088】
レッドシフトの度合いは、金属の酸化状態に影響されうる。高酸化状態(例えばV(IV)、Mn(III)およびSn(IV))は、大きいレッドシフトを生成する傾向があるのに対して、低酸化状態(例えばMn(II)およびSn(II)は、より小さいレッドシフトを生成する傾向がある。
【0089】
1つまたは複数の軸配位子を有する金属原子を本発明に使用することができる。上述のように、追加または補足的な機能を染料分子に導入するための手段として軸配位子を使用することができる。よって、Mは、好ましくは、Ti(A1)(A2)、Zr(A1)(A2)、V(A1)(A2)、Si(A1)(A2)、Ge(A1)(A2)、Ga(A1)、Al(A1)、Mn(A1)、Fe(A1)、Sn(A1)(A2)またはPb(A1)(A2)である。Si(A1)(A2)は、コストおよび毒性が低いため、特に好ましい。Mn(A1)も、その軸配位子を介して染料分子を官能化する潜在性に加えて、レッドシフトが大きいという利点をもたらすため好ましい。2つの軸配位子が存在する場合には、これらは反対面に存在していてもよいし、分子間であってもよい。リガンドの構造は、金属およびその好ましい結合構造に広く支配される。
【0090】
A1およびA2を選択して、軸立体的嵩を染料分子に付加することによって、分子間相互作用をさらに低減することができる。
【0091】
あるいは(または加えて)、A1および/またはA2を選択して、親水性を染料分子に付加することができる。したがって、A1および/またはA2は、上記Wとして定めた基のいずれか1つなどの親水基を含んでいてもよい。
【0092】
軸立体的嵩を導入し、および/または親水性を向上させるために、A1および/またはA2は、好ましくはデンドリマーである。1つの好ましい形態において、A1および/またはA2は、式(IIIa)のリガンドである。
【0093】
【化4】
【0094】
式中、
C1は、2つ以上の分枝位置を有する芯単位を示し、
各P1は、H、親水部分または分枝部分から独立に選択され、
g1は、2から8の整数であり、
q1は、0または1から6の整数であり、
各p1は、0または1から6の整数から独立に選択される。
【0095】
好ましくは、芯単位C1は、C原子、N原子、Si原子、C1〜C8アルキル残基、C3〜C8シクロアルキル残基、またはフェニル残基から選択される。芯単位C1は、少なくとも2つの分枝位置を有し、分枝位置の数はg1の値に対応する。したがって、3つの分枝位置および1つの炭素原子芯(すなわちg1=3;C1=C原子)を有する軸配位子は、例えば、式(A)のペンタエリスリトール誘導体であってもよい。
【0096】
【化5】
【0097】
式(IIIa)における各P1基は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、(3つの分枝位置を有する)ペンタエリスリトール誘導体において、末端ヒドロキシル基(−CH2OH;P1=H)を担持する2つの腕と、硫酸基(−CH2OSO3Z;P1=SO3Z)を担持する1つの腕とが存在していてもよい。
【0098】
好ましくは、P1は、親水部分である。親水部分は、酸基(その塩を含む)、スルホンアミド基、親水性ポリマー鎖またはアンモニウム基であってもよい。
【0099】
よって、P1は、PEG鎖などの親水性ポリマー鎖を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は式:(CH2CH2O)vR6(式中、vは2から5000(好ましくは2から1000、好ましくは2から100)であり、R6は、H、C1〜C6アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)であってよい。
【0100】
あるいは、P1は、スルホン酸、硫酸塩、リン酸、リン酸塩、カルボン酸およびカルボン酸塩等の酸基(その塩を含む)を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は、式:SO3Z、PO3Z1、C1〜C12アルキル−CO2Z、C1〜C12アルキル−SO3ZまたはC1〜C12アルキル−PO3Z2、C1〜C12アルキル−OSO3ZまたはC1〜C12アルキル−OPO3Z2(式中、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基であってもよい。水溶性陽イオンの例は、Li+、Na+、K+およびNH4+等である。
【0101】
あるいは、P1は、四級アンモニウム基などのアンモニウム基を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は、式:C1〜C12アルキル−N+(Ra)(Rb)(Rc)またはC1〜C12アルキル−U(式中、Ra、RbおよびRc)は、同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、またはC6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)、またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびナフチル等)から独立に選択され、Uは、ピリジニウム、イミダゾリウムまたはピロリニウムである)の基であってもよい。
【0102】
あるいは、P1は、一般式:−SO2NRpRq(式中、RpおよびRqは、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、−(CH2CH2O)eRe(式中、eは、2から5000の整数であり、Reは、H、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびメトキシフェニル等)から独立に選択される)の基などのスルホンアミド基を含んでいてもよい。
【0103】
上述のような分枝構造は、デンドリマーとして広く知られている。デンドリマーは、それらの分枝鎖が軸配位子の有効三次元体積を最大限にするのに加えて、複数の親水基を染料分子に導入する潜在性を提供するため有利である。式(A)に示されるペンタエリスリトール構造体は、本発明に好適に使用される単純なデンドリマーの例である。さらなる例は、トリエタノールアミン誘導体(B)、フロログルシノール誘導体(C)および3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール誘導体(D)である。
【0104】
【化6】
【0105】
代替的な実施形態において、P1基のいずれかは、それ自体が分枝部分である。分枝部分は、式(IIIb)の部分などの、軸配位子にさらなる分枝を添加する任意の構造体であってもよい。
【0106】
【化7】
【0107】
式中、
C2は、2つ以上の分枝位置を有する芯単位を示し、
P2は、Hまたは親水部分を示し、
g2は、2から8の整数を示し、
q2は、0、または1から6の整数を示し、
p2は、0、または1から6の整数を示す。
【0108】
C2およびP2の好ましい形態は、上記のC1およびP1の好ましい形態に対応する。P1が式(IIIb)の分枝部分である軸配位子の具体例は、ジペンタエリスリトール誘導体(E)である。
【0109】
【化8】
【0110】
あるいは、分枝部分は、アルキレンまたはエーテル鎖によって結合された芯単位のモチーフに基づく多数の無秩序の分枝鎖を含んでいてもよい。例えば、さらなるペンタエリスリトール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコールまたはトリエタノールアミン成分でペンタエリスリトールを順次エーテル化することによって、無秩序のデンドリマー構造体を迅速に構築できることが容易に理解されるであろう。デンドリマー状の1つまたは複数のヒドロキシル基を上述の親水基のいずれかなどの親水基でキャップすることができる。その範囲の親水性キャッピングを用いて、染料分子の水溶性を制御することができる。
【0111】
正確な構造式を用いて無秩序の分枝構造を容易に例示できないことが理解されるであろう。しかし、すべての分枝デンドリマー状構造が、A1およびA2の上記定義の範囲に含まれるものと考えられる。
【0112】
本発明の他の実施形態において、金属リガンド染料は、式(X)の金属ジチオレンから予め選択される。
【0113】
【化9】
【0114】
M2は、Ni、PdまたはPt(好ましくはNi)から選択され、
jは、1、2、3または4から選択され、
kは、1、2、3または4から選択され、
nは、0、1または2から選択され、
Wは、上述の親水基であり、
炭素環における3つ以下の−(CH2)−基を、−C(O)−、−NH−、−S−および−O−から独立に選択される基によって場合によって置換することができ、
炭素環における3つ以下の−CH−基を−N−で場合によって置換することができ、
炭素環における4つ以下のH原子を、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアミノから独立に選択される基で場合によって置換することができる。
【0115】
この好ましい染料は、ジチオレンリガンドが架橋炭素環であることを特徴とする。
【0116】
1つの好ましい形態において、jは1であり、kは2である。さらに、染料分子は、好ましくは、−C(Me)2−架橋基を含む。換言すれば、リガンドは、好ましくはボルネン誘導体である。ボルネン誘導体は、比較的低コストで商業的に容易に入手可能であるため有利である。
【0117】
Wで表される基は、親水性を染料分子に付与する。好ましくは、Wは、式:−(CH2)t−SO3Z(式中、tは0、または1から6の整数であり、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基である。より好ましくは、本発明の本実施形態において、Wは、式:−CH2SO3H、−CH2SO3Naまたは−CH2SO3Kの基である。
【0118】
本発明による特に好ましい染料分子を以下の式(III)に示す。
【0119】
【化10】
【0120】
この化合物は、スペクトルの可視領域における吸収が最小限であることと相俟って優れた水分散性を有する。この化合物は、781nmのλmaxの近赤外領域で強く吸収する。
【0121】
「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書では、一般には炭素と水素からなる一価の基を意味するように用いられる。したがって、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基(直鎖および分枝鎖形態)、炭素環基(ビシクロオクチルおよびアダマンチルなどのポリシクロアルキル基を含む)およびアリール基、ならびにアルキルシクロアルキル、アルキルポリシクロアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、シクロアルキルアリールおよびシクロアルケニルアリール基などの前述の基の組合せを含む。同様に、「ヒドロカルビレン」という用語は、上述の一価のヒドロカルビル基に対応する二価の基を意味する。
【0122】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基における4つ以下の−C−C−および/または−C−H部分は、−O−、−NRw−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NRw−、−S(O)−、−SO2−、−SO2O−および−SO2NRw−(式中、Rwは、H、C1〜C12アルキル、C6〜C12アリールまたはC6〜C12アリールアルキルから選択される基である)から選択される1つまたは複数の部分で場合によって置換されていてもよい。
【0123】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基が1つまたは複数の−C=C−部分を含有する場合は、4つ以下の−C=C−部分は、−C=N−で場合によって置換されていてもよい。したがって、「ヒドロカルビル」という用語は、ヘテロアリール、エーテル、チオエーテル、カルボキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、チオール、アミド、エステル、ケトン、スルホキシド、スルホン酸塩およびスルホアミド等の部分を含むことができる。
【0124】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、上記に定めた親水基(例えば−SO3H、−SO3K、−CO2Na、−NH3+および−NMe3+等)、または上記に定めたポリマー基(例えばポリエチレングリコールから誘導されたポリマー基)から独立に選択される4つ以下の置換基を含んでいてもよい。
【0125】
本明細書に用いられるように、「架橋環状基」という用語は、1、2、3または4の架橋原子を含有するC4〜C30の炭素環(好ましくはC6〜C20の炭素環)を含む。架橋炭素環基の例は、ボルニルおよびトリプチセニル、ならびにそれらの誘導体である。「架橋環状基」という用語は、アダマンテニルおよびトリシクロ[5.2.1.0]デカニル、ならびにそれらの誘導体などの基を含む架橋多環状基をも含む。
【0126】
特に指定がなければ、「架橋環状基」という用語は、1、2、3または4の炭素原子が、N、SまたはOから選択されるヘテロ原子で置換される架橋炭素環(すなわち架橋ヘテロ環)をも含む。炭素環における炭素原子が、ヘテロ原子で置換されるという場合は、−CH−が−N−で置換され、−CH2−が−O−で置換され、または−CH2−が−S−で置換されることを意味する。したがって、「架橋環状基」という用語は、キヌクリジニルおよびトロパニルなどの架橋ヘテロ環状基を含む。特に指定がなければ、架橋環状基のいずれか、上述の置換基のうちの1、2、3または4つの置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0127】
「アリール」という用語は、本明細書では、フェニル、ナフチルまたはトリプチセニルなどの芳香族基を意味するように用いられる。C6〜C12アリールは、例えば、あらゆる置換基を除いて、6から12の炭素原子を有する芳香族基を意味する。「アリレン」という用語は、勿論、上述の一価のアリール基に対応する二価の基を意味する。アリールの言及は、適宜アリレンを暗示的に含む。
【0128】
「ヘテロアリール」という用語は、1、2、3または4つの炭素原子が、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で置換されたアリール基を意味する。ヘテロアリール(またはヘテロ芳香族)基の例としては、ピリジル、ベンズイミダゾール、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリニル、イソインドリニル、インドリル、イソインドリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソキサゾロニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピペリジニル、モルホニリル、ピロリジニル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾピリミジニル、ベンゾトリアゾール、キノキサリニル、ピリダジルおよびクマリニル等が挙げられる。「ヘテロアリレン」という用語は、勿論、上述の一価のヘテロアリール基に対応する二価の基を意味する。ヘテロアリールの言及は、適宜ヘテロアリレンを含む。
【0129】
特に指定がなければ、アリール、アリレン、ヘテロアリールおよびヘテロアリレン基は、以下に記載される置換基のうちの1、2、3、4または5つの置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0130】
場合によって置換されている基(例えば、架橋環状基、アリール基またはヘテロアリール基に関して)が言及される場合は、随意の置換基は、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、−(OCH2CH2)dORd(式中、dは2から5000の整数であり、RdはH、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)、シアノ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、チオール、−SRv、−NRuRv、ニトロ、フェニル、フェノキシ、−CO2Rv、−C(O)Rv、−OCORv、−SO2Rv、−OSO2Rv、−SO2ORv、−NHC(O)Rv、−CONRuRv、−CONRuRvおよび−SO2NRuRv(式中、RuおよびRvは、水素、C1〜C12アルキル、フェニルまたはフェニル−C1〜C8アルキル(例えばベンゼン)から独立に選択される)から独立に選択される。例えば、基が複数の置換基を含有する場合は、異なる置換基が、異なるRuまたはRv基を有することができる。例えば、ナフチル基は、3つの置換基、すなわち−SO2NHPh、−CO2Me基および−NH2で置換されていてもよい。
【0131】
「アルキル」という用語は、本明細書では、直鎖および分枝形態のアルキル基を意味するように用いられる。アルキル基は、O、NまたはSから選択される1、2または3つのヘテロ原子に割り込まれていてもよい。アルキル基は、1、2または3つの二重および/または三重結合に割り込まれていてもよい。しかし、「アルキル」という用語は、ヘテロ原子の割込みまたは二重もしくは三重結合の割込みの内アルキル基を通常意味する。「アルケニル」基が具体的に言及される場合は、これは、上記「アルキル」の定義を制限するものと見なされることを意図するものではない。
【0132】
例えばC1〜C12アルキルが言及される場合は、そのアルキル基は、1と12の間の任意の数の炭素原子を有していてもよいことを意味する。特に指定がなければ、「アルキル」の言及は、C1〜C12アルキル、好ましくはC1〜C6アルキルを意味する。
【0133】
「アルキル」という用語は、シクロアルキル基をも含む。本明細書に用いられているように、「シクロアルキル」という用語は、シクロアルキル、ポリシクロアルキルおよびシクロアルケニル基、ならびにシクロアルキルアルキル基などのこれらと直鎖状アルキル基との組合せを含む。シクロアルキル基は、O、NまたはSから選択される1、2または3つのヘテロ原子に割り込まれていてもよい。しかし、「シクロアルキル」という用語は、ヘテロ原子割込みのないシクロアルキル基を通常意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルメチルおよびアダマンチル基が挙げられる。
【0134】
「アリールアルキル」という用語は、ベンジル、フェニルエチルおよびナフチルメチルなどの基を意味する。
【0135】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のいずれかを意味するように使用される。しかし、通常は、塩素またはフッ素置換基を意味する。
【0136】
「・・・を含む置換基」(例えば「親水基を含む置換基」、「酸基(その塩を含む)を含む置換基」および「ポリマー鎖を含む置換基」等)が言及される場合は、問題の置換基は、全面的または部分的に特定の基から構成されていてもよい。例えば、「酸基(その塩を含む)を含む置換基」は、式:−(CH2)j−SO3K(式中、jは、0または1から6の整数である)の基であってもよい。したがって、この脈絡において、「置換基」という用語は、例えば、特定の基が結合されたアルキル基であってもよい。しかし、特定の基が存在するのであれば、置換基の正確な性質は所望の機能にとって重要でないことが容易に理解されるであろう。
【0137】
本明細書に記載されているキラル化合物は、立体記述子が与えられていなかった。しかし、化合物が立体異性体形態で存在しうる場合は、そのすべての可能な立体異性体および混合物(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、およびラセミ混合物等を含むすべての組合せ)が含まれる。
【0138】
同様に、化合物が、いくつかの位置異性体形態で存在しうる場合は、そのすべての可能な位置異性体および混合物が含まれる。
【0139】
疑問を回避するために、「1つの・・・を含む」などの句における1つの(「a」(または「an」))という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、「1つおよびただ1つ」を意味するものではない。「少なくとも1つ」という用語が具体的に用いられる場合は、「1つ(a)」の定義を制限するものと見なされるべきではない。
【0140】
明細書を通じて、「含んでいる」という用語、または「含む」などの変型は、指定の要素、整数または工程を含むものと見なされるべきであるが、他の要素、整数または工程を除外するものと見なされるべきではない。
【0141】
(インクジェットインク)
本発明の方法は、インクジェットインク組成物、好ましくは水系インクジェットインクに特に好適に用いられる。したがって、本発明は、IR吸収染料を含むインクジェットにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0142】
水系インクジェットインク組成物は、文献でよく知られており、水に加えて、補助溶媒、殺生剤、金属封鎖剤、保湿剤、pH調節剤、粘度改質剤、浸透剤、湿潤剤および界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0143】
補助溶媒は、典型的には水溶性有機溶媒である。好適な水溶性有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよび2−プロパノールなどのC1〜C4アルキルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビトール、ソルビタン、モノ酢酸グリセロール、二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロールおよびスルホン酸塩、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0144】
他の有用な水溶性有機溶媒としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、e−カプロラクタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、モルホリン、N−エチルモルホリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびそれらの組合せなどの極性溶媒が挙げられる。
【0145】
インクジェットインクは、保水性および湿潤特性をインク組成物に付与するための湿潤剤または保湿剤として機能することができる高沸点水溶性有機溶媒を含有していてもよい。当該高沸点水溶性有機溶媒は、沸点が180℃以上の溶媒を含む。沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、分子量が2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0146】
インクジェットインクにおける全水溶性有機溶媒含有量は、全インク組成物に対して、好ましくは約5から50重量%、より好ましくは10から30重量%である。
【0147】
他の好適な湿潤剤または保湿剤としては、糖類(単糖類、オリゴ糖類および多糖類を含む)およびそれらの誘導体(例えばマルチトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸塩、アルドン酸およびウロン酸等)が挙げられる。
【0148】
インクジェットインクは、水性インクの記録媒体への浸透を加速させるための浸透剤を含んでいてもよい。好適な浸透剤としては、多価アルコールアルキルエーテル(グリコールエーテル)および/または1,2−アルキルジオールが挙げられる。好適な多価アルコールアルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。好適な1,2−アルキルジオールの例は、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールである。浸透剤は、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよび1,8−オクタンジオールなどの直鎖炭化水素ジオールから選択されうる。グリセロールを浸透剤として使用してもよい。
【0149】
浸透剤の量は、全インク組成物に対して好ましくは1から20重量%、より好ましくは1から10重量%の範囲である。
【0150】
インクジェットインクは、界面活性剤、特に陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤を含有していてもよい。有用な陰イオン界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アシルメチルタウリンおよびジアルキルスルホスクシン酸などのスルホン酸型;アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;例えば脂肪酸塩およびアルキルサルコシン塩のようなカルボン酸型;ならびにアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩およびグリセロリン酸エステル塩などのリン酸エステル型が挙げられる。陰イオン界面活性剤の具体例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウムおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩である。
【0151】
好適な非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルおよびポリオキシエチレンアルキルアミドなどの酸化エチレン付加物型;グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルおよび糖アルキルエステルなどのポリオールエステル型;多価アルコールアルキルエーテルなどのポリエーテル型;ならびにアルカノールアミン脂肪酸アミドなどのアルカノールアミド型が挙げられる。非イオン界面活性剤の具体例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル;ならびにオレイン酸ポリオキシエチレン、オレイン酸ポリオキシエチレンエステル、ジステアリン酸ポリオキシエチレン、ラウリル酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンおよびステアリン酸ポリオキシエチレンである。2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールまたは3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール界面活性剤を使用してもよい。
【0152】
インクジェットインクは、そのpHを7から9に調節するためのpH調節剤を含有していてもよい。好適なpH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムおよび酒石酸水素カリウムなどの塩基性化合物;アンモニア;ならびにメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、塩酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリンおよびプロパノールアミンなどのアミンが挙げられる。
【0153】
インクジェットインクは、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オンまたは4,4−ジメチルオキサゾリジンなどの殺生剤を含んでいてもよい。
【0154】
インクジェットインクは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属イオン封鎖剤を含有していてもよい。
【0155】
インクジェットインクは、一重項酸素失活剤を含有していてもよい。インク中に一重項酸素失活剤が存在すると、IR吸収染料が分解する傾向が低減する。失活剤は、染料分子の近傍で生成されるあらゆる一重項酸素を消費するため、染料分子の分解を最小限にする。過剰の一重項酸素失活剤は、染料の分解を最小限にし、そのIR吸収特性を長時間保持するのに有利である。好ましくは、一重項酸素失活剤は、アスコルビン酸、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、アジド(例えばアジドナトリウム)、ヒスチジンまたはトリプトファンから選択される。
【0156】
(インクジェットプリンタ)
上記方法におけるインクジェットインクをインクジェットプリンタのプリントヘッドと流動連絡するインク溜めに収容することができる。
【0157】
熱バブルジェットおよび圧電式プリンタなどのインクジェットプリンタは、当該技術分野でよく知られており、当業者の一般常識の一部を形成する。プリンタは、高速インクジェットプリンタであってもよい。プリンタは、好ましくは、ページ幅プリンタである。本発明に使用される好ましいインクジェットプリンタおよびプリントヘッドは、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
【0158】
第10/302,274号;
第6692108号;
第6672709号;
第10/303,348号;
第6672710号;
第6669334号;
第10/302,668号;
第10/302,577号;
第6669333号;
第10/302,618号;
第10/302,617号;
第10/302,297号;
【0159】
(プリントヘッド)
Memjetプリンタは、互いに隣り合わせに取りつけられてページ幅プリントヘッドを形成する2つのプリントヘッド集積回路を一般に有する。典型的には、プリントヘッドICは、2インチから8インチのサイズ幅を有することができるため、いくつかの組合せを使用して、所謂A4ページ幅プリントヘッドを製造することが可能である。例えば、7および3インチ、2および4インチまたは5および5インチの2つのプリントヘッドICを使用して、A4プリントヘッドを作ることが可能である(表示は7:3)。同様に、6および4(6:4)または5および5(5:5)の組合せを使用することが可能である。例えば、8および6インチプリントヘッド集積回路からA3プリントヘッドを構成することが可能である。写真印刷では、特にカメラにおいて、より小さいプリントヘッドを使用することが可能である。単一のプリントヘッド回路、または3つ以上の当該回路を使用して、必要なプリントヘッド幅を達成できることも理解されるであろう。
【0160】
次に、図17および18を参照して、プリントヘッドの好ましいプリントヘッド実施形態について説明する。プリントヘッド420は、長形部の形態をとる。図18に最もよく示されるように、プリントヘッド420の部品としては、支持部材421、フレキシブルPCB422、インク分配型423、インク分配板424、第1および第2のプリントヘッド集積回路(IC)425および426を含むMEMSプリントヘッド、およびバスバー427が挙げられる。
【0161】
支持部材421を金属またはプラスチックなどの任意の好適な材料から形成することができ、他の方法で押し出し、成形し、形成することができる。支持部材421は、他の部品を互いに相対的に適切な配列に保持しながら、プリントヘッド全体を硬化・強化するのに十分な強度を有している必要がある。
【0162】
フレキシブルPCBは、プリントヘッド420の長さを拡張し、第1および第2の電気部品428および429を含む。電気部品428および429は、フレキシブルコネクタ(不図示)に対応する。電気コネクタは、使用に際して、SoPECチップ(不図示)からの対応する出力コネクタと接触して配置される接触部450および460を含む。SoPECチップからのデータは、電気コネクタ428および429に沿って送られ、第1および第2のプリントヘッドICs425および426のそれぞれの端部に分配される。
【0163】
図19に示されるように、インク分配型423は、流体(すなわち着色インク、赤外インクおよび固着材)およびエアポンプからの加圧空気をプリントヘッド420(図18)の長さに沿って分配する複数の長形導管430を含む。インク分配型423の長さに沿って配置された流体孔431集合体(図20)は、流体および空気を導管430からインク分配型424に分配する。流体および空気は、プリンタ内の対応するソケット(不図示)に差し込まれるプラグ441(図21)に形成されたノズル440を介して供給される。
【0164】
(図20に示されるように)分配板424は、流体孔431から局所的に供給された流体を受け取り、より小さい分配孔432を通してプリントヘッドIC425および426に分配するように構成された多層構造体である。
【0165】
プリントヘッドIC425および426は、直列に配置され、より小さい分配孔432からのインクをプリントヘッドIC425および426における対応する孔(不図示)に供給できるように分配板424に接触して保持される。
【0166】
バスバー427は、プリントヘッドノズルのアクチュエータに駆動電流を供給するように配置された比較的高容量の導体である(以下により詳細に説明されている)。図20に最もよく示されるように、バスバー427は、一端がソケット433によって所定位置に保持され、両端がフレキシブルPCB422の循環翼434によって保持されている。バスバーは、プリントヘッドIC425を所定位置に保持する役割も果たしている。
【0167】
図18に最もよく示されるように、組み立てられると、フレキシブルPCB422は、他の部品に効果的に巻きつけられることによって、それらを互いに接触して保持する。この結合効果にもかかわらず、支持部材421は、プリントヘッド420全体の必要な硬度および強度の大部分を提供する。
【0168】
次に、上述のプリントヘッドに好適に使用されるプリントヘッドノズルの2つの形態(「熱屈曲アクチュエータ」および「バブル成形ヒータ素子アクチュエータ」)を説明する。
【0169】
(熱屈曲アクチュエータ)
熱屈曲アクチュエータにおいて、インクを含むノズル室、および室内に配置されたパドルに接続された熱屈曲アクチュエータを有するノズル機構が典型的に設けられる。熱アクチュエータデバイスは、ノズル室からインクを排出するように作動される。好ましい実施形態は、伝導トレースから伝導熱を供給するための一連のテーパ単位を含む特定の熱屈曲アクチュエータである。アクチュエータは、ノズル室の溝付き壁を通じて受け取られるアームを介してパドルに接続される。アクチュエータアームは、ノズル室壁の溝の表面に実質的に接合するように接合形を有する。
【0170】
最初に図22(a)〜(c)を参照すると、本実施形態のノズル機構の基本動作の概略図が示されている。ノズル室501が配置されたウェハ基体を通じてエッチングされうるインク導入チャネル503によって、ノズル室501にインク502が充填される。ノズル室501は、その周りにインクメニスカスが形成されるインク排出口504をさらに含む。
【0171】
ノズル室501の内部には、ノズル室501の壁の水を通じてアクチュエータ508に相互接続されるパドル型デバイス507が存在する。アクチュエータ508は、ヒータ手段、例えば支柱510の端部に隣接するヒータ手段509を含む。支柱510は基体に固定される。
【0172】
液滴をノズル室501から排出するのが望ましい場合は、図22(b)に示されるように、ヒータ手段509は、熱膨張するように加熱される。好ましくは、ヒータ手段509自体、またはアクチュエータ508の他の部分は、屈曲効率が以下の式で定められる場合の高い屈曲効率を有する材料から構成される。
【0173】
屈曲効率=ヤング率×(熱膨張係数)/(密度×比熱容量)
【0174】
ヒータ素子に好適な材料は、ガラス材料を屈曲させるように形成されうる銅ニッケル合金である。
【0175】
ヒータ手段509は、支柱510付近の小さい熱膨張によってパドル端部が大きく移動するように、活性化の効果がパドル端部507で拡大されるように、理想的には支柱510の端部に隣接して配置される。
【0176】
ヒータ手段509およびそれによるパドルの移動は、急速に図22(b)に示されるように膨張するインクメニスカス505の周りの圧力を全体的に上昇させる。ヒータ電流が押し出され、インクがインクチャネル503から流入するのに加えて、口504から排出される。
【0177】
続いて、パドル507は、不活性化されて、再び休止位置に戻る。その不活性化により、インクが全体的にノズル室に再流入する。ノズルリム外側のインクの順方向移動、および対応する逆流により、印刷媒体に進む液滴512が全体的に絞られ、離脱する。メニスカス505の崩壊により、インクが、インク流動チャネル503を介してノズル室502へ全体的に吸引される。そのうちに、図22(a)の位置に再び到達され、続いて、インクの他の液滴の排出に向けてノズル室の用意が調うように、ノズル室501を再び満たす。
【0178】
図23は、ノズル機構の側面斜視図を示す図である。図24は、図23のノズル機構のアレイに沿う断面図を示す図である。これらの図において、先に導入された要素の番号が保持されている。
【0179】
第1に、アクチュエータ508は、一連のテーパアクチュエータ単位、例えば窒化チタン層517の上部に形成された上部ガラス部(非晶質二酸化珪素)516を含むアクチュエータ単位515を含む。あるいは、より高い屈曲効率を有する銅ニッケル合金層(以降キュプロニッケルと呼ぶ)を利用することが可能である。
【0180】
窒化チタン層517は、テーパ形態であり、そのため支柱510の端部付近で抵抗加熱が生じる。隣り合う窒化チタン/ガラス部515は、アクチュエータ508を機械構造的に支持するブロック部519で相互接続される。
【0181】
ヒータ手段509は、理想的には、長形であり、加熱すると、アクチュエータ508の軸に沿って発揮される屈曲力を最大にするように離れて配置される複数のテーパアクチュエータ単位515を含む。溝は、隣り合うテーパ単位515の間に定められ、隣り合うアクチュエータ508に対する各アクチュエータ508のわずかな差動作に対応する。
【0182】
ブロック部519は、アーム520に相互接続される。アーム520は、溝、例えばノズル室501の側面に形成された溝522によって、ノズル室501の内側のパドル507に接続される。溝522は、アーム520の周りのインクの流出を最小限にするように、アーム520の表面に接合するように全体的に設計される。インクは、溝522の周りの表面張力効果によって、ノズル室501内に全体的に保持される。
【0183】
アーム520を作動することが望まれる場合は、必要な力を提供し、ノズル機構の回路を制御する下方CMOS層506に接続するブロック部519内のバイアを介して、窒化チタン層517に伝導電流が流される。伝導電流によって、支柱510に隣接する窒化物層517が加熱され、それにより、アーム20が全体的に上方に屈曲し、その結果インクがノズル504から排出される。排出された液滴は、先述のように、インクジェットプリンタに対する通常の様式でページ上に印刷される。
【0184】
単一のプリントヘッドを作るようにノズル機構のアレイを形成することが可能である。例えば、図24には、プリントヘッドアレイを形成するように介在配列線でレイアウトされた図23の多数のインク排出ノズル機構を含む部分的に分画された様々なアレイ図が示されている。勿論、完全色アレイ等を含む異なるタイプのアレイを構築することも可能である。
【0185】
その内容が相互参照により全面的に組み込まれている本出願人の「Image Creation Method and Apparatus(画像作成方法および装置)(IJ41)」という名称の米国第6,243,113号に記載されているステップの好適な修正を通じて、標準的なMEMS技術を利用して、記載のプリントヘッドシステムの構成を進めることが可能である。
【0186】
(バブル成形ヒータ素子アクチュエータ)
図17を参照して、バブル成形ヒータ素子アクチュエータの単位セル1001は、ノズルリム1004を有するノズル1003を内部に有するノズル板1002と、ノズル板を貫通する開口1005とを備える。ノズル板1002は、次にエッチングされる犠牲材料上に、化学蒸着(CVD)によって蒸着された窒化シリコン構造体からプラズマエッチングされる。
【0187】
プリントヘッドは、また、エッチノズル1003に対して、ノズル板を支持する側壁1006と、壁およびノズル板1002で定められる室1007と、多層基体1008と、多層基体を通って基体の遠方側(不図示)に延びる導入路1009とを含む。輪状長形ヒータ素子1010が、懸垂ビームの形態をとるように室1007内に懸垂される。図示されたプリントヘッドは、リソグラフ法によって形成されるマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)構造体である。
【0188】
プリントヘッドが使用される場合は、インク溜め(不図示)からのインク1011は、室を満たすように、導入路1009を介して室1007に浸入する。その後、ヒータ素子1010は、1マイクロ秒より幾分短い時間にわたって加熱されるため、加熱は熱パルスの形態をとる。ヒータ素子1010は、素子が加熱されると、インクに蒸気バブルが生成されるように、室1007内でインク1011と熱接触することが理解されるであろう。よって、インク1011は、バブル成形液を構成する。
【0189】
バブル1012は、生成されると、室1007内の圧力を上昇させ、それによって、インク1011の液滴1016がノズル1003を通じて排出される。リム1004は、液滴が方向を誤る可能性を最小にするように排出される液滴1016の誘導を支援する。
【0190】
1つの導入路1009にノズル1003および室1007が1つしか存在しない理由は、素子1010の加熱およびバブル1012の形成に応じて室内で生成された圧力波が、隣接する室および対応するノズルに影響を与えないようにするためである。
【0191】
室1007内の圧力の上昇により、インク1011がノズル1003を通じて押し出されるばかりでなく、一部のインクが導入路1009を通じて逆流する。しかし、導入路1009は、長さが約200から300ミクロンであり、直径が約16ミクロンである。したがって、実質的に粘性抵抗力が存在する。その結果、室1007の圧力上昇の支配的な効果は、インクを、導入路9を通じて逆流させずに、ノズル1003を通じて排出液滴1016として追い出すことである。
【0192】
図17に示されるように、インク液滴1016の排出は、液滴が離脱する前にその「絞り段階」中に示される。この段階において、バブル1012は、最大経に既に達しており、次いで崩壊点1017に向かって崩壊を開始している。
【0193】
崩壊点1017に向かうバブル1012の崩壊によって、ノズル1003内(液滴の側面1018)から一部のインク1011が引き込まれ、一部が導入路1009から崩壊点に向かって引き込まれる。このようにして引き込まれたインク1011の大半は、ノズル1003から引き込まれ、離脱する前に液滴16の基部に環状ネック1019を形成する。
【0194】
液滴1016は、離脱するために、表面張力を克服するのに一定の運動量を必要とする。インク1011がバブル1012の崩壊によりノズル1003から引き込まれると、ネック1019の直径が小さくなることにより、液滴を保持している全表面張力の量を低下させるため、ノズルから排出される液滴の運動量は、液滴を離脱させるのに十分なものとなる。
【0195】
液滴1016が離脱すると、バブル1012が崩壊点1017まで崩壊するのに伴って、矢印1020で示されるようにキャビテーション力が生じる。キャビテーションが効果を発揮しうる崩壊点1017の近くには固体表面が存在しないことがわかるであろう。
【0196】
(インクジェットカートリッジ)
上記の方法におけるインクジェットインクは、インクカートリッジに収容されていてもよい。インクジェットプリンタ用インクカートリッジは、当該技術分野でよく知られており、多くの形態で入手可能である。好ましくは、インクジェットインクカートリッジは、交換可能である。本発明に好適に使用されるインクジェットカートリッジは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
第6428155号;
第10/171,987号;
【0197】
1つの好ましい形態において、インクカートリッジは、
複数の貯蔵部を定める筐体であって、貯蔵部の少なくとも1つは、人間の目に見える印刷情報のための着色剤を収容し、他の貯蔵部の少なくとも1つは、上述のインクジェットインクを収容する筐体を備える。
【0198】
好ましくは、各貯蔵部は、いくつかの印刷ページに対する意図された印刷範囲に相対的な内容の期待されたレベルの使用に対応してサイズ設定される。
【0199】
次に、典型的なインクカートリッジを簡単に説明する。図12は、交換可能なインクカートリッジ627の完成組立品を示す図である。それは、固着材644、接着剤630、シアン631、マゼンタ632、イエロー633、ブラック634および赤外635インクを貯蔵するための袋または室を有する。カートリッジ627は、ベース型637にマイクロエアフィルタ636をも収容する。図9に示されるように、マイクロエアフィルタ636は、ハウス639を介してプリンタ内部のエアポンプ638と接続する。これは、濾過空気をプリントヘッド705に供給して、ノズルを詰まらせる恐れのある微粒子のMemjet(商標)プリントヘッド705への侵入を防止する。カートリッジ627内にエアフィルタ636を組み込むことによって、フィルタの動作寿命がカートリッジの寿命に効果的に関連づけられる。これにより、必要な間隔でフィルタを洗浄または交換するユーザに頼るのではなく、フィルタをカートリッジとともに交換されることになる。また、接着剤および赤外インクは、可視インクおよびエアフィルタとともに補給されることによって、消費材の消耗によるプリンタ動作の中断の頻度が低減される。
【0200】
カートリッジ627は、薄肉ケース640を有する。インク袋631〜635および固着剤袋644は、カートリッジを留めるピン645によってケース内に懸垂される。単一の接着剤袋630は、ベース型637に収容される。これは、3000ページ(1500シート)を印刷・接着する能力を有する完全にリサイクル可能な製品である。
【0201】
(基体)
上述のように、本発明の方法は、Hyperlabel(商標)およびネットページシステムと特に好適に併用される。当該システムは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている上記の特許出願に詳述されている。
【0202】
したがって、本発明は、IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0203】
好ましくは、基体は、界面を含む。好ましくは、染料は、ネットページおよび/またはHyperlabel(商標)システムに好適に使用される符号化データの形態で配置される。例えば、符号化データは、品目の識別情報を示していてもよい。好ましくは、符号化データは、基体の界面の実質的な部分(基体の20%、50%または90%を上回る部分)に配置される。
【0204】
好ましくは、基体は、その上に配置された染料を感知デバイスで検出できるようにIR反射性を有する。基体は、プラスチック(例えばポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミド等)、紙、金属またはそれらの組合せなどの任意の好適な材料で構成されていてもよい。
【0205】
ネットページ用途では、基体は、好ましくは紙である。Hyperlabel(商標)用途では、基体は、好ましくはタグ、ラベル、包装材料、または品目の表面である。典型的には、タグおよびラベルは、プラスチック、紙、またはそれらの組合せで構成される。
【0206】
本発明のHyperlabel(商標)用途によれば、基体は、感知デバイスおよびコンピュータシステムを介してユーザと対話するように構成された対話式製品であってもよく、対話式製品は、
識別情報を有する品目と、
品目に付随し、品目に関する情報、および品目の識別情報を示す符号化データが表示された界面であって、前記符号化データは、上述のIR吸収染料を含む界面とを備える。
【0207】
(ネットページおよびHyperlabel(商標))
本発明のネットページ用途については、上記の本発明の第4および第5の態様で概ね説明されている。本発明のHyperlabel(商標)用途については、上記の本発明の第6および第7の態様で概ね説明されている。
【0208】
次に、ネットページおよびHyperlabel(商標)を詳細に説明する(注:Memjet(商標)およびHyperlabel(商標)は、Silverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である)。すべての実施態様が、基本システムについて以下に考察する具体的な内容および範囲のすべてまたは大半を必ずしも具体化するものでないことが理解されるであろう。しかし、本発明の好ましい実施形態および態様が機能する脈絡を理解することを試みる際に、外部参照の必要性を抑えるために、システムを最も完全な形態で説明する。
【0209】
簡潔に要約すると、ネットページシステムの好ましい形態は、マップ表面、すなわちコンピュータシステムに維持された表面のマップの参照を含む物理的表面の形態のコンピュータインターフェースを採用する。マップ参照は、適切な感知デバイスによって検索されうる。具体的な実施態様に応じて、マップ参照を可視的または不可視的に符号化することができ、マップ表面に対する局所的検索により、マップ内およびマップ間での明瞭なマップ参照が生成されるように定めることができる。コンピュータシステムは、マップ表面の特徴に関する情報を収容することが可能であり、マップ表面とともに使用される感知デバイスによって供給されるマップ参照に基づいて当該情報を検索することが可能である。したがって、検索された情報は、オペレータの表面特徴との対話に応じて、オペレータの代わりにコンピュータシステムによって開始される行動の形態をとることが可能である。
【0210】
その好ましい形態において、ネットページシステムは、ネットページの生成、および人間によるネットページとの対話に依存する。これらは、普通紙に印刷されるテキスト、図形および画像であるが、対話式ウェブページのように機能する。情報は、人間の裸眼には実質的に不可視のインクを使用して各ページに符号化される。しかし、インク、そして符号化データを光撮像ペンによって感知し、ネットページシステムに送信することが可能である。
【0211】
好ましい形態において、各ページ上の活性ボタンおよびハイパーリンクをペンでクリックして、ネットワークからの情報を要求し、または参照をネットワークサーバに伝えることが可能である。一実施形態において、ネットページ上に手で書かれたテキストが自動的に認識され、ネットページシステムにおけるコンピュータテキストに変換されて、書式を埋めることを可能にする。他の実施形態において、ネットページに記録された署名が、自動的に検証されて、電子商取引を安全に認証することを可能にする。
【0212】
図1に示されるように、印刷ネットページ1は、印刷ページに物理的に、かつペンとネットページシステムの間の通信を介して、「電気的に」、ユーザが埋めることができる対話式書式を表すことが可能である。例は、氏名および住所欄、ならびに提出ボタンを含む「申請」書式を示している。ネットページは、可視インクを使用して印刷された図形データ2と、不可視インクを使用してタグ4の集合体として印刷された符号化データ3とからなる。ネットページネットワーク上に格納された対応するページ記述5は、ネットページの個々の要素を記述する。特に、各対話式要素(すなわち例におけるテキスト欄またはボタン)の種類および空間的範囲(ゾーン)を記述して、ネットページシステムが、ネットページを介して入力を精確に解釈することを可能にする。例えば、提出ボタン6は、対応する図形8の空間的範囲に対応するゾーン7を有する。
【0213】
図2に示されるように、その好ましい形態が図6および7に示され、以下により詳細に記載されているネットページペン101は、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェブ端末75またはネットページプリンタ601と連係して働く。ネットページプリンタは、家庭、事務所またはモバイル用途のためのインターネット接続印刷機器である。ペンは、無線であり、短距離無線リンク9を介してネットページネットワークと安全に通信する。短距離通信は、PC、ウェブ端末またはネットページプリンタに埋め込まれるか、または個別の中継デバイス44によって提供されるローカル中継機能によってネットページネットワークに中継される。中継機能は、短距離および長距離通信機能の双方を組み込む移動電話または他のデバイスによっても提供されうる。
【0214】
他の実施形態において、ネットページペンは、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタまたは中継デバイスに対するUSBまたは他の直列接続などの有線接続を利用する。
【0215】
その好ましい形態が図9から11に示され、以下により詳細に記載されているネットページプリンタ601は、いずれも対話式ネットページとして高品質に印刷された個人化新聞、雑誌、カタログ、パンフレットおよび他の刊行物を周期的またはオンデマンドで配信することができる。パーソナルコンピュータと異なり、ネットページプリンタは、ユーザの台所内、朝食の食卓付近、または家庭の一日の出発点付近などの朝のニュースが最初に消費される場所の近くに例えば壁掛けされうる機器である。それは、テーブルトップ、デスクトップ、携帯およびミニチュアバージョンの形でも入手される。
【0216】
それらの消費点で印刷されたネットページは、紙の使いやすさと、適時性および対話式媒体との対話性とを兼ね備える。
【0217】
図2に示されるように、ネットページペン101は、印刷ネットページ1(または品目201)上の符号化データと対話し、その対話を短距離無線リンク9を介して中継器に伝達する。中継器は、その対話を解釈に向けて該当するネットページページサーバ10に送る。適切な状況において、ページサーバは、対応するメッセージをネットページアプリケーションサーバ13上で実行されるアプリケーションコンピュータソフトウェアに送る。次に、アプリケーションサーバは、発信元プリンタで印刷される応答を送ることができる。
【0218】
代替的な実施形態において、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタまたは中継デバイスは、ローカルまたは遠隔ウェブサーバを含むローカルまたは遠隔アプリケーションソフトウェアと直接通信することができる。関連して、出力は、ネットページプリンタによる印刷に限定されない。出力をPCまたはウェブ端末に表示することも可能であり、対話は、紙ベースではなく、画面ベース、またはそれらの組合せでありうる。
【0219】
ネットページシステムは、高速マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ベースのインクジェット(Memjet(商標))プリンタと併用することによって、好ましい実施形態においてはるかに便利になる。この技術の好ましい形態において、比較的高速および高品質印刷が、消費者にとってより手頃になる。その好ましい形態において、ネットページ刊行物は、容易なナビゲーションおよび快適な操作のために装丁された、両側に完全色で印刷された一連の文字サイズ光沢ページなどの、伝統的なニュース雑誌の物理的特徴を有する。
【0220】
ネットページプリンタは、可用性が増大するブロードバンドインターネットアクセスを利用する。米国の家庭の95%が、ケーブルサービスを利用することができ、そのうちの20%が、ブロードバンドインターネットアクセスを提供するケーブルモデムサービスを既に利用できる。ネットページプリンタは、より低速の接続で動作することも可能であるが、配信時間が長く、画質も低下する。実際、既存の消費者向けインクジェットおよびレーザプリンタを使用してネットページシステムを使用可能にできるが、システムが、より低速になるため、消費者の立場からはより受け入れがたいものとなる。他の実施形態において、ネットページシステムは、プライベートイントラネット上で運用される。さらに他の実施形態において、ネットページシステムは、単一のコンピュータ、またはプリンタなどのコンピュータ動作可能デバイス上で運用される。
【0221】
ネットページネットワーク上のネットページパブリケーションサーバ14は、印刷品質の刊行物をネットページプリンタに配信するように構成される。定期刊行物は、ポイントキャスティングおよびマルチキャスティングインターネットプロトコルを介して、購読するネットページプリンタに自動的に配信される。個人化刊行物は、フィルタリングされ、個々のユーザプロフィルに応じてフォーマットされる。
【0222】
ネットページプリンタを任意の数のペンを支えるように構成することが可能であり、ペンは、任意の数のネットページプリンタとともに機能することが可能である。好ましい実施態様において、各ネットページペンは、固有の識別子を有する。家庭は、家族の各メンバーに1つずつ割り当てられる着色ネットページの集合を有することができる。これにより、各ユーザは、ネットページパブリケーションサーバまたはアプリケーションサーバに対して特異的なプロフィルを維持することが可能になる。
【0223】
ネットページペンをネットペ−ジ登録サーバ11で登録し、1つまたは複数の支払カード勘定とリンクさせることも可能である。これにより、ネットページペンを使用して、電子商取引の支払を安全に認証することが可能になる。ネットページ登録サーバは、ネットページペンで取り込まれた署名を既に登録されている署名と比較して、電子商取引サーバに対するユーザの識別情報を認証することを可能にする。他の生体計測を用いて、識別情報を検証することも可能である。ある種のネットページペンは、ネットページ登録サーバによる方法と同様にして検証される指紋走査を含む。
【0224】
ネットページプリンタは、ユーザ干渉を介さずに朝刊などの刊行物を配信することができるが、不要な迷惑メールを配信しないように構成することが可能である。その好ましい形態において、申し込まれた、または認証された発信源からの刊行物のみを配信する。この点において、ネットページプリンタは、電話番号または電子メールアドレスを知っている迷惑メーラに見えるファクシミリまたは電子メール取引とは異なる。
【0225】
(1.ネットページシステムアキテクチャ)
システムにおける各オブジェクトモデルは、統一モデリング言語(UML)クラスダイアグラムを用いて記述される。クラスダイアグラムは、関係によって接続されたオブジェクトクラスの集合体からなり、ここでは2種類の関係、すなわち連合および総合が対象となる。連合は、オブジェクト間のある種の関係、すなわちクラスのインスタンス間の関係を表す。総合は、実際のクラスに関し、以下のように理解することができる。クラスがそのクラスのすべてのオブジェクトの集合体であると考えられ、クラスAがクラスBの総合である場合は、Bは、単にAの部分集合である。UMLは、二次的なモデリング、すなわちクラスのクラスを直接支えることはない。
【0226】
各クラスは、クラスの名称がラベルされた長方形である。それには、水平線によって名称と分離されたクラスの属性のリスト、および水平線によって属性リストと分離されたクラスの動作のリストが収容される。しかし、続くクラスダイアグラムでは、動作がモデル化されることはない。
【0227】
連合は、それぞれの末端が連合の多重度で場合によってラベルされた、2つのクラスを合わせる線として描かれる。デフォルト多重度は1である。星印(*)は、「多く」の多重度、すなわち0以上を示す。各連合は、その名称で場合によってラベルされ、それぞれの末端が対応するクラスの役割で場合によってラベルされる。開いた菱形は、凝集連合(「の一部である」)を示し、連合線の凝集物末端に描かれる。
【0228】
総合関係(「である」)は、2つのクラスを合わせる実線として描かれ、総合末端に矢印(開いた三角形の形態)が存在する。
【0229】
クラスダイアグラムが多数のダイアグラムに分解される場合は、複製される任意のクラスが、それを定める主要ダイアグラムを除いてすべて破線の輪郭で示される。それは、定められる場合にのみ属性で示される。
【0230】
(1.1 ネットページ)
ネットページは、その上にネットページネットワークが構築される土台である。ネットページは、公開された情報および対話式サービスに対する紙ベースのユーザインターフェースを提供する。
【0231】
ネットページは、ページのオンライン記述に関して不可視的にタグ付けされた印刷ページ(または他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバによって永続的に維持される。ページ記述は、テキスト、図形および画像を含むページの可視的なレイアウトおよび内容を記述する。それは、ボタン、ハイパーリンクおよび入力フィールドを含むページ上の入力要素をも記述する。ネットページは、ネットページペンでその表面に作成されたマークをネットページシステムによって同時に取り込み、処理することを可能にする。
【0232】
多数のネットページが、同一のページ記述を共用することが可能である。しかし、さもなければ同一のページを介する入力を区別することを可能にするために、各ネットページが固有のページ識別子に割り当てられる。このページIDは、非常に多くのネットページを区別するのに十分な精度を有する。
【0233】
ページ記述に対する各参照が、印刷タグで符号化される。タグは、それが表示される固有のページを識別することにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、ページ上のそれ自体の位置をも識別する。
【0234】
タグは、普通紙などの赤外反射性の任意の基体上に赤外吸収性インクで印刷される。近赤外波長は人間の目に不可視であるが、適切なフィルタを有する固体画像センサによって容易に感知される。
【0235】
タグは、ネットページペンにおけるエリア画像センサによって感知され、タグデータは、最も近いネットページプリンタを介してネットページシステムに送信される。ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してネットページプリンタと通信する。タグは、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。タグは、誤差補正可能に符号化されて、表面損傷に対して部分的に耐性が与えられる。
【0236】
ネットページページサーバは、印刷ネットページ毎に固有のページインスタンスを維持して、印刷ネットページ毎に、ページ記述での入力フィールドに対するユーザ供給値の異なる集合体を維持することを可能にする。
【0237】
ページ記述と、ページインスタンスと、印刷ネットページの関係を図4に示す。印刷ネットページは、印刷ネットページ文書45の一部であってもよい。ページインスタンスは、それを印刷したネットページプリンタ、および知られている場合は、それを要求したネットページユーザの双方に対応づけられる。
【0238】
図4に示されるように、1つまたは複数のネットページを、例えば、品目のラベル、包装または実質的な表面に印刷する場合は、物理的なオブジェクトに対応づけることもできる。
【0239】
(1.2 ネットページタグ)
(1.2.1 タグデータコンテンツ)
好ましい形態において、各タグは、それが表示される領域、その領域内におけるそのタグの場所を識別する。タグは、領域全体またはタグに関するフラグを含んでいてもよい。1つまたは複数のフラグビットは、例えば、タグ感知デバイスに信号を送って、タグの直接的な部分に対応づけられる機能を示すフィードバックを提供することができ、感知デバイスが、領域の記述を参照する必要がなくなる。ネットページペンは、例えば、ハイパーリンクのゾーンに存在するときは「活性部」LEDを照明することができる。
【0240】
以下のより明確に説明されるように、好ましい実施形態において、各タグは、初期検出を支援し、表面、または感知処理によって誘発された任意の反りの影響を最小限にする上で役立つ、容易に認識される不変構造体を含む。タグは、好ましくは、ページ全体を埋め、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。
【0241】
好ましい実施形態において、タグが示す領域は、ページ全体と一致するため、タグで符号化された領域IDは、タグが表示されるページのページIDと同義である。他の実施形態において、タグが示す領域は、ページまたは他の表面の任意の小領域でありうる。例えば、それは、対話式要素のゾーンと一致し、その場合は、領域IDは、対話式要素を直接識別することが可能である。
【0242】
好ましい形態において、各タグは、120ビットの情報を含む。領域IDは、典型的には、100ビットまでが割り当てられ、タグIDは、少なくとも16ビットが割り当てられ、残りのビットは、フラグ等に割り当てられる。タグ密度が、1平方インチ当たり64であると仮定すると、16ビットタグは、1024平方インチまでの領域サイズを支える。接合領域およびマップを単に使用することによって、タグID精度を高めることなく、より大きい領域を連続的にマッピングすることが可能である。100ビット領域IDは、2100(約1030または無数)の異なる領域を一意的に識別することを可能にする。
【0243】
(1.2.2 タグデータ符号化)
一実施形態において、(15,5)リードソロモン符号を用いて、120ビットのタグデータが冗長に符号化される。これによって、それぞれ6コードワードの15の4ビット記号からなる360の符号化ビットが生成される。(15,5)コードは、5つまでの記号誤差をコードワード毎に補正することを可能にする。すなわち、コードワード毎に33%までの記号誤差率を許容する。
【0244】
各4ビット記号は、タグにおいて空間干渉的に表され、6つのコードワードの記号が、タグ内で空間的に介在される。これにより、突発的誤差(空間的に隣り合う多数のビットに影響する誤差)により損傷を受ける全体の記号の数、およびいずれか1つのコードワードにおける記号の数が最小限に抑えられるため、突発的誤差を完全に補正できる確率が最大になる。
【0245】
(15,5)リードソロモン符号の代わりに、任意の好適な誤差補正符号、例えば、同一または異なる記号およびコードワードサイズを有する多少冗長性を伴うリードソロモン符号、他のブロック符号、または畳込み符号(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれているStephen B.Wicker;Error Control Systems for Digital Communication and Storage、Prentice−Hall 1995参照)などの異なる種類の符号を用いることが可能である。
【0246】
感知デバイスを介するタグ化領域との「単一クリック」対話を支えるために、感知デバイスは、それがどの領域に、またはどの方向に位置しようとも、少なくとも1つのタグ全体をその視野にとらえることができなければならない。したがって、感知デバイスの視野の必要な直径は、タグのサイズおよび間隔の関数である。
【0247】
(1.2.3 タグ構造)
図5aは、4つの透視目標17を有するタグ726の形態でタグ4を示す図である。タグ726は、合計で240ビットに対応する60の4ビットリードソロモン記号747を表す。タグは、マクロドットと呼ばれるマーク748の存在により各「1」、および対応するマクロドットの不在による各「0」を表す。図5cは、例示を目的としていずれも「1」ビットを含む9つのタグの正方形タイリング728を示す図である。透視目標は、隣り合うタグ間で共用されるように設計されることに留意する。図5dは、16のタグの正方形タイリング、および2つのタグにまたがる対応する最小視野193を示す図である。
【0248】
(15,7)リードソロモン符号を用いて、112ビットのタグデータを冗長に符号化して、240の符号化ビットを生成する。4つのコードワードが、タグ内で空間的に介在されて、突発的誤差の回復力を最大限にする。先述のように16ビットタグIDを想定すると、92ビットまでの領域IDが可能になる
【0249】
タグのデータ担持マクロドット748は、タグ群が、目標に類似した構造体を生成できないように、隣同士で重ならないように設計される。これによってインクも節約される。透視目標か、タグの検出を可能にするため、さらなる目標を必要としない。
【0250】
タグは、センサに対して相対的なタグの4つの可能な方向の明確化を可能にする方向特徴を含むが、本発明は、タグデータへの方向データの埋込みに関わる。例えば、各タグ方向(回転方向)が、図5aに示されるように、その方向に配置される1つのコードワードを含み、各記号が、そのコードワードの番号(1〜4)およびコードワード内の記号の位置(A〜O)でラベル付けされるように4つのコードワードを配列することが可能である。次いで、タグ復号は、各回転方向で1つのコードワードを復号することからなる。各コードワードは、それが第1のコードワードかどうかを示す単一ビット、またはそれがどのコードワードかを示す2つのビットを含むことができる。後者のアプローチは、所謂、1つのコードワードのみのデータコンテンツが必要とされる場合は、所望のデータを得るのに最大でも2つのコードワードを復号すればよいという利点がある。これは、領域IDがストローク内で変化することが想定されず、ストロークの開始時にのみ復号される場合に当てはまる。ストローク内では、タグIDを含むコードワードのみが望まれる。また、感知デバイスの回転は、ストローク内でゆっくりと周期的に変化するため、典型的には、フレーム毎に1つのコードワードのみを復号すればよい。
【0251】
透視目標を一切不要とし、その代わりに、データ表現が自己登録であることに依存することが可能である。この場合、各ビット値(または多ビット値)は、典型的には、明示的なグリフによって表現される。すなわち、ビット値は、グリフの不在によって表現されない。これにより、データグリッドが良好に取り込まれるため、グリッドを確実に識別することが可能になり、その透視歪が検出され、続いてデータサンプリング中に補正される。タグ境界を検出することを可能にするために、各タグデータは、マーカパターンを含み、これらは、確実な検出を可能にするために、冗長に符号化されなければならない。当該マーカパターンのオーバヘッドは、明示的透視目標のオーバヘッドに類似している。様々な当該スキームが、2001年10月11日に出願された本出願人の同時係属出願PCT出願PCT/AU01/01274に記載されている。
【0252】
図5cの配置728は、正方形タグ726を使用して、任意のサイズの平面を完全に埋める、または埋め尽くす、すなわち間隙や重複がないように埋めることができることを示している。
【0253】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されているタグ付けスキームは、単一の非差別化マクロドットの存在または不在を利用して単一データを符号化するが、2001年10月11日に出願された本出願人の同時係属PCT出願PCT/AU01/01274に示されたグリフの集合体などの差別化されたグリフの集合体を使用して、単一ビットまたは多ビット値を表すことも可能である。
【0254】
(1.3 ネットページネットワーク)
好ましい実施形態において、ネットページネットワークは、図3に示すように、インターネットなどのネットワーク19を介して接続されたネットページページネットサーバ10、ネットページ登録サーバ11、ネットページIDサーバ12、ネットページアプリケーションサーバ13、ネットページパブリケーションサーバ14、ウェブ端末75、ネットページプリンタ601および中継デバイス44の分散集合体からなる。
【0255】
ネットページ登録サーバ11は、ユーザ、ペン、プリンタ、アプリケーションおよびパブリケーションの間の関係を記録することによって、様々なネットワーク活動を許可するサーバである。それは、ユーザを認証し、アプリケーショントランザクションにおいて、認証されたユーザの代わりに署名代理人として働く。手書き認知サービスをも提供する。上述のように、ネットページページサーバ10は、ページ記述およびページインスタンスに関する永続的情報を維持する。ネットページネットワークは、それぞれがページインスタンスの部分集合体を扱う任意の数のページサーバを含む。ページサーバは、ページインスタンス毎のユーザ入力値をも維持するため、ネットページプリンタなどのクライアントは、ネットページ入力を適切なページサーバに直接送る。ページサーバは、対応するページの記述に対して任意の当該入力を解釈する。
【0256】
ネットページIDサーバ12は、文書ID51をオンデマンドで割り当て、ID割当てスキームを介してページサーバの負荷平衡を提供する。
【0257】
ネットページプリンタは、インターネット分散ネームシステム(DNS)等を使用して、対応するページインスタンスを扱うネットページページサーバのネットワークアドレスにネットページページID50を分解する。
【0258】
ネットページアプリケーションサーバ13は、対話式ネットページアプリケーションのホストとなるサーバである。ネットページパブリケーションサーバ14は、ネットページ文書をネットページプリンタに発行するアプリケーションサーバである。
【0259】
ネットページサーバは、IBM、Hewlet−PackardおよびSunなどの製造元からの様々なネットワークサーバプラットフォーム上で動作することが可能である。多数のネットページサーバが、単一のホスト上で同時に動作することが可能であり、単一のサーバをいくつかのホストに分散させることが可能である。ネットページサーバによって提供された機能、特にIDサーバおよびページサーバによって提供された機能を、ネットページプリンタなどのネットページ機器、コンピュータワークステーション、またはローカルネットワークに直接設けることも可能である。
【0260】
(1.4 ネットページプリンタ)
ネットページプリンタ601は、ネットページシステムに登録され、オンデマンドおよび購読を介してネットページ文書を印刷する機器である。各プリンタは、固有のプリンタID62を有し、インターネットなどのネットワークを介して、理想的にはブロードバンド接続を介して、ネットページネットワークに接続される。
【0261】
不揮発性メモリにおける識別情報およびセキュリティ設定とは別に、ネットページプリンタは、永続的な記憶を含まない。ユーザに関する限り、「ネットワークはコンピュータである」。ネットページは、特定のネットページプリンタから独立して、分散ネットページページサーバ10を利用して、空間および時間を通じて対話的に機能する。
【0262】
ネットページプリンタは、ネットページパブリケーションサーバ14から購読ネットページ文書を受け取る。各文書は、2つの部分、すなわちページレイアウトと、ページを占める実際のテキストおよび画像オブジェクトに分散される。個人化により、ページレイアウトは、典型的には、特定の購読者に固有のものであるため、適切なページサーバを介して購読者のプリンタにポイントキャストされる。一方、テキストおよび画像オブジェクトは、典型的には、他の購読者に共用されるため、すべての購読者のプリンタおよび適切なページサーバにマルチキャストされる。
【0263】
ネットページパブリケーションサーバは、文書コンテンツのポイントキャストおよびマルチキャストへの分割を最適化する。文書のページレイアウトのポイントキャストを受け取った後に、プリンタは、マルチキャストがあれば、どのマルチキャストに注目すべきかを把握する。
【0264】
プリンタが、印刷すべき文書を定める完全なページレイアウトおよびオブジェクトを受け取ると、文書を印刷することが可能になる。
【0265】
プリンタは、奇数ページおよび偶数ページをラスタ化し、シートの両面に同時に印刷する。それは、二重印刷エンジンコントローラ760、およびこの目的でMemjet(商標)プリントヘッド350を利用するプリントエンジンを含む。
【0266】
印刷処理は、2つの分離段階、すなわちページ記述子のラスタ化、およびページ画像の拡大および印刷からなる。ラスタ画像プロセッサ(RIP)は、並列動作する1つまたは複数の標準DSP757からなる。二重印刷エンジンコントローラは、プリントエンジンにおけるプリントヘッドの動作に同期して、ページ画像をリアルタイムで拡大、縮小、印刷するカスタムプロセッサからなる。
【0267】
IR印刷に使用できないプリンタは、IR吸収黒色インクを使用してタグを印刷するオプションを有するが、これは、タグをそうでなければページの空の部分に限定する。当該ページは、IR印刷ページより機能が制限されるが、それでもネットページとして分類される。
【0268】
通常のネットページプリンタは、紙にネットページを印刷する。より特殊化されたネットページプリンタは、球体などのより特殊化された表面に印刷することができる。各プリンタは、少なくとも1つの表面型をサポートし、各表面型について、少なくとも1つのタグタイリングスキーム、そしてタグマップをサポートする。文書を印刷するのに実際に用いられるタグタイリングを記述するタグマップ811は、文書のタグを精確に解釈できるように、その文書に対応づけられる。
【0269】
図2は、ネットページネットワーク上で登録サーバ11によって維持されるプリンタ関連情報を反映するネットページプリンタクラスダイアグラムを示す図である。
【0270】
(1.5 ネットページペン)
ネットページシステムの活性感知デバイスは、典型的には、埋込みコントローラ134を使用して、画像センサを介して、ページからのIR位置タグを取り込み、復号することができるペン101である。画像センサは、近赤外波長でのみ感知を可能にする適切なフィルタが設けられた固体デバイスである。以下により詳細に記載するように、システムは、ニブがいつ表面に接触するかを感知し、ペンは、人間による手書きを取り込むのに十分な測度(すなわち200dpi以上で、100Hz以上)でタグを感知することができる。ペンによって取り込まれた情報は、暗号化され、プリンタ(または基地局)に無線送信され、プリンタまたは基地局は、(知られている)ページ構造に対してデータを解釈する。
【0271】
ネットページペンの好ましい実施形態は、通常のマーキングインクペンとしても、非マーキングスタイラスとしても動作する。しかし、マーキング態様は、インターネットインターフェースとして使用される場合等は、ブラウジングシステムとしてネットページシステムを使用するのに必要ではない。各ネットページペンは、ネットページシステムに登録され、固有のペンID61を有する。図14は、登録サーバ11によりネットページネットワーク上に維持されるペン関連情報を反映するネットページペンクラスダイアグラムを示す図である。
【0272】
いずれかのニブがネットページに接触すると、ペンは、ページに対するその位置および方向を確認する。ニブは、力覚センサに結合され、ニブに対する力は、閾値に対して相対的に解釈されて、ペンが「上向き」であるか「下向き」であるかを示す。これは、所謂ネットワークからの情報を要求するために、ページ上の対話式要素をペンニブで押し下げることによって「クリック」することを可能にする。また、力を連続値として取り込んで、所謂、署名の全動態を検証することを可能にする。
【0273】
ペンは、ニブ付近のページの部分193を赤外スペクトルにおいて撮像することによって、ネットページ上のそのニブの位置および方向を確認する。ペンは、最も近いタグを復号し、撮像タグ上の観察された透視歪、およびペン光学素子の知られている幾何学構造から、タグに対するニブの位置を計算する。タグの位置解像度が低くても、ページ上のタグ密度は、タグサイズに逆比例するため、調節された位置解像度は極めて高く、正確な手書き認識に必要とされる最小限の解像度を上回る。
【0274】
ネットページに対するペン作用は、一連のストロークとして取り込まれる。ストロークは、ペン下げ事象によって開始され、ペン上げ事象によって終了するページ上の刻時ペン位置のシーケンスからなる。ストロークは、また、通常の状況下ではストロークの開始時のページIDの変化が生じると常にネットページのページID50でタグ付けされる。
【0275】
各ネットページペンは、カレントセレクション826が対応づけられており、ユーザが、コピーアンドペースト処理等を行うことを可能にする。セレクションは、規定時間後にシステムがそれを破棄することができるように、刻時されている。カレントセレクションは、ページインスタンスの領域を記述する。それは、ページの背景部に対してペンを通じて取り込まれた最近のデジタルインクストロークからなる。それは、選択ハイパーリンク活性化を介してアプリケーションに提出されると、アプリケーションに特異的に解釈される。
【0276】
各ペンは、カレントニブ824を有する。ペンによってシステムに最後に通知されたニブである。上述のデフォルトネットページペンの場合は、マーキング黒色インクニブも非マーキングスタイラスニブもカレントである。各ペンは、カレントニブスタイル825をも有する。これは、例えば、ユーザがパレットから色を選択するのに応じて、アプリケーションによりペンに最後に対応づけられたニブスタイルである。デフォルトニブスタイルは、カレントニブに対応づけられたニブスタイルである。ペンを通じて取り込まれたストロークは、カレントニブスタイルでタグ付けられる。続いてストロークが再現されるときは、それらにタグ付けされるニブスタイルで再現される。
【0277】
ペンが、通信できるプリンタの範囲内にあるときは、常に、ペンはその「オンライン」LEDをゆっくりと点滅させる。ペンが、ページに対するストロークの復号に失敗すると、即座に「エラー」LEDを活性化させる。ペンが、ページに対するストロークの復号に成功すると、即座に「ok」LEDを活性化させる。
【0278】
取り込まれたストロークのシーケンスをデジタルインクと呼ぶ。デジタルインクは、手書きのオンライン認識、および署名のオンライン検証のための描画および手書きのデジタル交換の基礎を形成する。
【0279】
ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してデジタルインクをネットページプリンタに送信する。送信されたデジタルインクは、プライバシおよびセキュリティのために暗号化され、効率的な送信のためにパケット化されるが、プリンタにおける適時的な操作を保証するために、ペン上げ事象に応じて常に流れている。
【0280】
ペンが、プリンタの範囲外にあるときは、10分間以上の連続的な手書きの能力を有する内部メモリにデジタルインクをバッファリングする。ペンが、再びプリンタの範囲に入ると、バッファリングされたデジタルインクを転送する。
【0281】
ペンは、任意の数のプリンタに登録されうるが、すべての状態データが紙およびネットワークの双方に残留するため、特定時間にペンがどのプリンタと通信するかは重要ではない。
【0282】
図6から8を参照して、ペンの好ましい実施形態を以下により詳細に説明する。
【0283】
(1.6 ネットページ対話)
ネットページプリンタ601は、ペンがネットページ1との対話に使用されるときにペン101からストロークに関するデータを受け取る。タグ4の符号化データ3は、ストロークなどの移動を実行するのに使用されるときにペンによって読み取られる。そのデータは、特定のページおよびそれに対応づけられる対話式要素の識別情報を確認し、ページに対するペンの相対位置の指示を得ることを可能にする。その指示データは、プリンタに送信され、そこで、DNSを介して、ストロークのページID50を、対応するページインスタンス830を維持するネットページページサーバ10のネットワークアドレスに分解する。次いで、ストロークをページサーバに送信する。ページが最近より早いストロークで識別された場合は、プリンタは、そのキャッシュに該当するページサーバを既に有することができる。各ネットページは、ネットページページサーバによって永続的に維持されるコンパクトページレイアウトからなる(以下参照)。ページレイアウトとは、典型的にはネットページネットワーク上の他の場所に記憶された画像などのオブジェクト、テキストのフォントおよびピースを意味する。
【0284】
ページサーバは、ペンからストロークを受け取ると、ストロークが適応するページ記述を検索し、ページ記述のどの要素にストロークが交差するかを確認する。次いで、該当する要素の種類の脈絡でストロークを解釈することができる。
【0285】
「クリック」は、ペン下げ位置と続くペン上げ位置の間の距離および時間が、ともにある小さい最大値を下回る場合のストロークである。クリックによって活性化されるオブジェクトは、典型的には、クリックを活性化することを必要とし、応じてより長いストロークが無視される。「スロッピー」クリックなどのペン作用の登録の失敗は、ペンの「ok」LEDからの応答の欠如によって示される。
【0286】
ネットページページ記述には、ハイパーリンクと書式フィールドの2種類の入力要素がある。書式フィールドを介する入力は、対応づけられるハイパーリンクの活性化を誘発することも可能である。
【0287】
(2.ネットページペンの説明)
(2.1 ペン機構)
図6および7を参照すると、参照番号101で一般に示されるペンは、ペン部品を取りつけるための内部空間104を定める壁103を有するプラスチック型の形態の筐体102を含む。ペン上部105は、動作に際して筐体102の一端106に回転可能に取りつけられる。半透明カバー107は、筐体102の反対側の端部108に固定される。カバー107も成型プラスチック製であり、筐体102内に取りつけられているLEDの状態をユーザが見ることができるように半透明材料から形成される。カバー107は、筐体102の端部108を実質的に取り囲む主部109と、主部109から後方に突出し、筐体102の壁103に形成された対応する溝111内に嵌合する突出部110とを含む。ラジオアンテナ112は、筐体102内の突出部110の背後に取りつけられる。カバー107上の開口113Aを取り囲むねじ山113は、対応するねじ山115を含む金属端ピース114を受けるように構成されている。金属端ピース114は、インクカートリッジ交換を可能にするために取り外し可能になっている。
【0288】
カバー107内部には、屈曲PCB117上に三色状態LED116も取りつけられている。アンテナ112も屈曲PCB117上に取りつけられている。状態LED116は、包括的な可視性を良好にするために、ペン101の上部に取りつけられている。
【0289】
ペンは、通常のマーキングインクペンとしても、非マーキングスタイラスとしても動作することが可能である。ニブ119を有するインクペンカートリッジ118およびスタイラスニブ121を有するスタイラス120は、筐体102内で並列に取りつけられている。ペン上部105の回転によって、インクカートリッジニブ119またはスタイラスニブ121を、金属端ピース114の開放端122を通じて前方に動かすことができる。それぞれのスライダブロック123および124は、それぞれインクカートリッジ118およびスタイラス120に取りつけられる。回転可能カム筒125は、動作に際してペン上部105に固定され、その内部で回転するように構成される。カム筒125は、カム筒の壁181内の溝の形態のカム126を含む。スライダブロック123および124から突出するカムフォロア127および128は、カム溝126内に嵌合する。カム筒125が回転すると、スライダブロック123または124は、互いに相対的に移動して、金属端ピース114における孔122からペンニブ119またはスタイラスニブ121を突出させる。ペン101は、3つの動作状態を有する。上部105を90度ずつ回転させることによって、3つの状態は、以下のようになる。
・スタイラス120ニブ121アウト
・インクカートリッジ118ニブ119アウト
・インクカートリッジ118ニブ119アウトでもなく、スタイラス120ニブ121アウトでもない
【0290】
第2の屈曲PCB129は、筐体102内に位置する電子シャーシ130に取りつけられている。第2の屈曲PCB129は、表面に投射するための赤外放射線を供給するための赤外LED131を取りつける。画像センサ132は、表面から反射放射線を受けるために第2の屈曲PCB129に取りつけられている。第2の屈曲PCB129は、RFトランスミッタおよびRFレシーバを含む無線周波チップ133、およびペン101の動作を制御するためのコントローラチップ134をも取りつける。(成型透明プラスチックから形成された)光学素子ブロック135は、カバー107内に位置し、赤外線ビームを表面に投射し、画像を画像センサ132上に受け取る。給電ワイヤ136は、第2の屈曲PCB129上の部品を、カム筒125内に取りつけられている電池接触子137に接続する。端末138は、電池接触子137およびカム筒125に接続する。3ボルト充電式電池139は、電池接触子に接触して、カム筒125内に位置する。誘導充電コイル140は、第2の屈曲PCB129の周りに取りつけられて、誘導を介する電池139の充電を可能にする。第2の屈曲PCB129は、ペンニブ119またはスタイラスニブ121によって表面に加えられている力の測定を可能にするために、スタイラス120またはインクカートリッジ118が筆記に使用されているときにカム筒125における変位を検出するための赤外LED143および赤外フォトダイオード144をも取りつける。IRフォトダイオード144は、スライダブロック123および124に取りつけられた反射体(不図示)を介するIR LED143からの光を検出する。
【0291】
ゴム製把持パッド141および142は、筐体102の端部108に向かって設けられ、ペン101を把持するのを支援し、上部105は、ペン101をポケットに留めるためのクリップ142をも含む。
【0292】
(3.2 ペンコントローラ)
ペン101は、ニブの近傍の表面の部分を赤外スペクトルにおいて撮像することによって、そのニブ(スタイラスニブ121またはインクカートリッジニブ119)の位置を確認するように構成される。それは、最も近くの所在タグからの所在データを記録し、光学素子135およびコントローラチップ134を利用して、所在タグからのニブ121または119の距離を計算するように構成される。コントローラチップ134は、ペンの方向、および撮像タグに観察された透視歪からのニブ−タグ距離を計算する。
【0293】
ペン101は、RFチップ133およびアンテナ112を利用して、(セキュリティのために暗号化され、効率的な送信のために梱包された)デジタルインクデータをコンピューティングシステムに送信することが可能である。
【0294】
ペンが、レシーバの範囲にあるときは、デジタルインクデータは、形成されると送信される。ペン101が、範囲外に移動したときは、デジタルインクデータは、ペン101内にバッファリングされ(ペン101回路は、表面上の約12分間のペン運動に対するデジタルインクデータを記憶するように構成されたバッファを含む)、後に送信されうる。
【0295】
コントローラチップ134は、ペン101における第2の屈曲PCB129に取りつけられる。図8は、コントローラチップ134のアキテクチャをより詳細に示す構成図である。図8は、RFチップ133、画像センサ132、三色状態LED116、IR照明LED131、IR力覚センサLED143および力覚センサフォトダイオード144の図をも示す。
【0296】
ペンコントローラチップ134は、制御プロセッサ145を含む。バス146は、コントローラチップ134の部品の間のデータの交換を可能にする。フラッシュメモリ147および512KB DRAM148も含まれる。アナログ−デジタル変換器149は、力覚センサフォトダイオード144からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0297】
画像センサインターフェース152は、画像センサ132とインターフェースする。RF回路155、ならびにアンテナ112に接続されたRF共振器および誘発器156を含むRFチップ133とインターフェースするトランシーバコントローラ153およびベースバンド回路154も含まれる。
【0298】
制御プロセッサ145は、画像センサ132を介して表面からタグからの所在データを取り込んで、復号し、力覚センサフォトダイオード144を監視し、LED116、131および143を制御し、無線トランシーバ153を介して短距離ラジオ通信を操作する。それは、中能力(約40MHz)汎用RISCプロセッサである。
【0299】
プロセッサ145、デジタルトランシーバ部品(トランシーバコントローラ153およびベースバンド回路154)、画像センサインターフェース152、フラッシュメモリ147および512KB DRAM148は、単一コントローラASICに統合される。アナログRF部品(RF回路155ならびにRF共振器および誘発器156)は、個別のRFチップに設けられる。
【0300】
画像センサは、CCDまたはCMOS画像センサである。タグ付けスキームに応じて、約100×100画素から200×200画素の範囲のサイズを有する。多くの小型CMOS画像センサは、National Semiconductor LM9630を含めて市販されている。
【0301】
コントローラASIC134は、ペン101が表面に接触していないときは、不活性期間後に休止状態に入る。力覚センサフォトダイオード144を監視する専用回路150を組み込み、ペン下げ事象に際してパワーマネージャ151を介してコントローラ134を起動させる。
【0302】
無線トランシーバは、コードレス電話で通常使用される無認可の900MHzバンド、あるいは無認可の2.4GHz工業、科学および医療(ISM)バンドで通信し、周波数ホッピングおよび衝突検出を用いて、無干渉通信を提供する。
【0303】
代替的な実施形態において、ペンは、基地局またはネットページプリンタとの短距離通信のために、赤外線データ通信機能標準化協会(IrDA)インターフェースを組み込む。
【0304】
さらなる実施形態において、ペン101は、ペン101軸の直角平面に取りつけられた一対の直交加速度計を含む。加速度計190は、図7および8にゴースト輪郭で示されている。
【0305】
加速度計を設けることにより、ペン101の本実施形態が、表面所在タグを参照せずに、運動を感知することが可能になり、所在タグをより低速でサンプリングすることが可能になる。次いで、各所在タグIDは、表面上の位置ではなく、対象となるオブジェクトを識別することが可能である。例えば、オブジェクトがユーザインターフェース入力要素(例えばコマンドボタン)である場合は、入力要素の部分内の各所在タグのタグIDは、入力要素を直接識別することが可能である。
【0306】
加速度計で測定されたxおよびy方向の各々における加速度は、時間について積算されて、瞬間速度および位置が求められる。
【0307】
ストロークの開始位置が知られているため、ストローク内の相対位置のみが計算される。位置集積は、感知された加速度計に誤差を蓄積させるが、加速度計は、典型的には高分解能を有し、誤差が蓄積するストロークの継続時間は短い。
【0308】
(3.ネットページプリンタの説明)
(3.1 プリンタ機構)
垂直に取りつけられたネットページ壁掛け式プリンタ601が完全に組み立てられた状態で図9に示されている。そのプリンタは、図10および10aに示されるように、二重8・1/2”Memjet(商標)印刷エンジン602および603を使用して、レター/A4サイズ媒体にネットページを印刷する。それは、完全色および完全ブリードで、シートの両面を同時に印刷する二重印刷エンジン602および603を紙604が通る直線状の紙経路を使用する。
【0309】
一体の製本組立品605は、各印刷シートの一端に沿って一片の接着剤を塗布し、押すとシートが前のシートに接着することを可能にする。これにより、1シートから数百シートの範囲の厚さを有することができる最終的な製本文書618が作られる。
【0310】
二重印刷エンジンに結合した図12に示される交換可能インクカートリッジ627は、固着剤、接着剤、ならびにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックおよび赤外インクを格納するための袋または室を有する。カートリッジは、ベース型のマイクロエアフィルタをも含む。マイクロエアフィルタは、ホース639を介してプリンタ内部のエアポンプ638とインターフェースする。これは、濾過空気をプリントヘッドに供給して、そうでなければプリントヘッドノズルを詰まらせる恐れがある微粒子のMemjet(商標)プリントヘッド350への侵入を防止する。カートリッジ内にエアフィルタを組み込むことによって、フィルタの動作寿命がカートリッジの寿命に効果的に関連づけられる。インクカートリッジは、3000ページ(1500シート)を印刷・接着する能力を有する完全にリサイクル可能な製品である。
【0311】
図10を参照すると、電動式媒体ピックアップローラ組立品626は、最上部のシートを媒体トレイから第1の印刷エンジン602上の紙センサを通して二重Memjet(商標)プリントヘッド組立品に押し込む。2つのMemjet(商標)印刷エンジン602および603が、直線状紙経路に沿って対向インライン順次構成で取りつけられる。紙604は、一体の動力ピックアップローラローラ626によって第1の印刷エンジン602に引き込まれる。紙604の位置およびサイズが感知され、完全ブリード印刷が開始する。固着剤が、できるだけ短時間の乾燥を支援するために同時に印刷される。
【0312】
紙は、ゴム製ローラに作用する動力出口スパイクホイール(直線状紙経路に沿って整列する)の集合体を通って第1のMemjet(商標)印刷エンジン602を出る。これらのスパイクホイールは、「濡れた」印刷面に接触し、シート604を第2のMemjet(商標)印刷エンジン603に連続的に供給する。
【0313】
図10および10aを参照すると、紙604は、二重印刷エンジン602および603から製本組立品605内に移動する。印刷ページは、繊維状支持ローラによる動力スパイクホイール軸670と、スパイクホイールおよび瞬間作用接着剤ホイールによる他の可動軸との間を移動する。可動軸/接着剤組立品673は、金属支持ブラケットに取りつけられ、前方に輸送されて、カムシャフトの作用により、歯車を介して動力軸670とインターフェースする。別個のモータが、このカムシャフトに動力を与える。
【0314】
接着剤ホイール組立品673は、インクカートリッジ627からの接着剤供給ホース641に対する回転連結器を有する部分中空軸679からなる。この軸679は、放射状の穴を通じて毛細管作用により接着剤を吸収する接着剤ホイールに接続する。成型筐体682は、接着剤ホイールを取り囲み、前方に開口部を有する。枢軸側方型および弾性外扉は、金属ブラケットに接合され、組立品673の残りが前方に押し出されたときに、側方に開く。この作用は、成型筐体682の前方を通じて接着剤ホイールを露出させる。引張ばねは、組立品を閉鎖し、不活性期間中に、接着剤ホイールを効果的に覆う。
【0315】
シート604がホイール組立品673内に移動すると、製本組立品605内に輸送されるのに伴って、接着剤が(文書の第1のシートから離れた)前面の1つの垂直方向エッジに塗布される。
【0316】
(4.製品タグ付け)
自動識別とは、手動キーイングを用いずにデータ処理システムに対するオブジェクトを(半)自動的に識別するバーコード、磁性ストライブカード、スマートカードおよびRFトランスポンダなどの技術を用いることを意味する。
【0317】
自動識別を目的として、品目は、印刷バーコードの形態で機械読取り可能に符号化された12桁の統一商品コード(UPC)によって一般に識別される。最も一般的なUPCナンバリングシステムは、5桁の製造元番号および5桁の品目番号である。その精度が限られているため、UPCは、個々の品目ではなく、製品群を識別するのに用いられる。統一コード委員会およびEANインターナショナルは、UPCおよび関連符号を14桁の世界貿易品目番号(GTIN)の部分集合体として規定・管理している。
【0318】
供給連鎖管理内では、個々の品目を一意的に識別することによって追跡できるように、UPCスキームの拡大または更新に大きな関心がもたれている。個々の品目のタグ付けは、商品の紛失、盗難または破損による「目減り」を抑え、デマンド誘導型の製造および供給の効率性を向上させ、製品仕様のプロファイリングを容易にし、顧客経験を向上させることが可能である。
【0319】
個々の品目のタグ付けについては主たる2つの競合物、すなわち所謂二次元バーコードの形態の光学的タグと無線周波識別(RFID)タグが存在する。RFIDタグの詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているKlaus Finkenzeller、RFID Handbook、John Wiley & Son(1999)を参照されたい。光学的タグは、安価であるという利点を有するが、読み取るために光学的視準線を必要とする。RFIDタグは、全方向の読取りをサポートするという利点があるが、比較的高価である。金属または液体の存在は、RFIDタグ性能に激しく干渉して、全方向読取りの利点を損なう可能性がある。受動的(リーダが動力を与える)RFIDタグは、2003年の末までに、数百万単位で1つ当たり10セントに価格設定されることが見込まれ、その後すぐに5セントになることが見込まれるが、食品雑貨のような低価格品目に対する1セント未満という業界目標にはまだ及ばない。たいていの光学的タグの読取り専用性も、品目が供給連鎖を進行するときの状態変化をタグに記すことができないため、短所として言及されてきた。しかし、読取り専用タグは、ネットワーク上で動的に維持される情報を意味しうるという事実によってこの欠点は緩和される。
【0320】
マサチューセッツ工科大学(MIT)自動IDセンターは、インターネットベースのオブジェクトネームサービス(ONS)および商品マーク付け言語(PML)と連係する96ビットの電子商品コード(EPC)に対する規格を開発した。EPCは、走査され、または取得されると、PMLでポータブルに符号化された対応製品情報を、恐らくはONSを介して調べるのに使用される。EPCは、8ビットのヘッダ、28ビットのEPCマネージャ、24ビットのオブジェクトクラスおよび36ビットの一連番号からなる。EPCについての詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、The Electronic Product Code(EPC)、MIT自動IDセンター(2001年1月)を参照されたい。自動IDセンターは、EPCへのGTINのマッピングを規定して、EPCと現行の方法との適合性を実証した(その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、Integrating the Electronic Product Code(EPC)and the Global Trade Item Number(GTIN)、MIT自動IDセンター(2001年11月))。EPCは、EAN−UCC合弁事業であるEPCglobalによって管理されている。
【0321】
EPCは、技術的に中立であり、多くの形態で符号化され、担持されうる。自動IDセンターは、EPCを担持するのに低コストの受動的RFIDタグを使用することを提唱しており、RFIDタグのコストを短期間で最小限にすることを可能にするために、EPCの64ビットバージョンを規定した。低コストRFIDタグの特性の詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているSarma、S.、Towards the 5c Tag、MIT自動IDセンター(2001年11月)を参照されたい。市販の低コストの受動的RFIDタグの説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれている915 MHz RFID Tag、Alien Technology(2002)を参照されたい。64ビットのEPCについては、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、The Compact Electronic Product Code、MIT自動IDセンター(2001年11月)を参照されたい。
【0322】
EPCは、単に固有の品目レベルのタグ付けおよび追跡だけではなく、ケースレベルおよびパレットレベルのタグ付け、ならびにコンテナおよびトラックなどの出荷および輸送の他の流通単位のタグ付けをも意図している。分散型PMLデータベースは、品目と、梱包、出荷および輸送階層におけるより高レベルのコンテナとの動的な関係を記録する。
【0323】
(4.1 供給連鎖におけるオムニタグ付け)
不可視(例えば赤外)タグ付けスキームを用いて、品目を一意的に識別することは、製品の全表面またはその有意な部分を、製品の包装またはラベルのグラフィックデザインを損なうことなくタグ付けすることを可能にするという大きな利点を有する。製品の全表面がタグ付けされると、製品の走査性がその方向に影響されることがなくなるため、可視バーコードの視準線の欠点の大部分が除かれる。また、タグは小さく、大量に複製されるため、ラベル損傷が走査を妨害することがなくなる。
【0324】
次いで、オムニタグ付けは、品目の表面の大部分を光学的に読取り可能な不可視タグで覆うことからなる。各オムニタグは、それが表示される品目を一意的に識別する。オムニタグは、品目の製品コード(例えばEPC)を直接符号化することができ、または次にデータベース検索を介して製品コードを識別する代理IDを符号化することができる。各オムニタグは、品目の表面のそれ自体の位置をも場合によって識別して、先に述べたネットページ対話性についての下流の消費者の利益を提供する。
【0325】
オムニタグは、製品製造中および/または包装中にデジタルプリンタを使用して貼付される。これらは、テキストおよび図形が他の手段によって印刷された後にオムニタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよく、またはオムニタグ、テキストおよび図形を同時に印刷する統合的なカラーおよび赤外プリンタであってもよい。デジタル印刷されたテキストおよび図形は、ラベルまたは包装にあらゆるものを含んでいてもよく、または可変部のみから構成され、他の部分が他の手段によって印刷されていてもよい。
【0326】
(4.2 オムニタグ付け)
図13に示されるように、製品の固有の品目ID215は、特殊な種類の固有のオブジェクトID210と見なすことできる。電子商品コード(EPC)220は、品目IDに対する1つの新しい規格である。品目IDは、典型的には、製品ID214および一連番号213からなる。製品IDは、製品群を識別するのに対して、一連番号は、その群の特定のインスタンス、すなわち個々の品目を識別する。そこで、製品IDは、典型的には、製造元番号211および製品群番号212からなる。最もよく知られている製品IDは、EAN.UCC統一商品コード(UPC)221およびその変形である。
【0327】
図14に示されるように、オムニタグ202は、ページID(または領域ID)50および二次元(2D)位置86を符号化する。領域IDは、タグを含む表面領域を識別し、位置は、二次元領域内のタグの位置を識別する。問題の表面は、物理的品目201の表面であるため、領域IDと固有オブジェクトID210、より具体的には品目の品目ID215との一対一のマッピングを定めることが有用である。しかし、オムニタグの実用性を損なうことなく、マッピングを多対一とすることができることに留意されたい。例えば、品目の各パネルの包装は、異なる領域ID50を有することが可能である。逆に、オムニタグは、品目IDを直接符号化することができ、その場合は、領域IDは、全体的なネットページ領域ID割当てから品目ID割当てを分離させるように好適に予め固定された品目IDを含む。領域IDは、世界的ネットページシステム内で識別された他のすべての表面領域から対応する表面領域を一意的に区別することに留意されたい。
【0328】
品目ID215は、オムニタグとEPC担持RFIDタグの間の直接的な適合性をもたらすことから、自動IDセンターが提案しているEPC220であることが好ましい。
【0329】
図14において、位置86がオプションとして示されている。これは、供給連鎖におけるオムニタグの実用性の多くが、領域ID50から導かれることを示すものであり、特定の製品に対して望ましくなければ位置を省略してもよい。
【0330】
ネットページシステムとの相互操作性については、オムニタグ202は、ネットページタグ4である。すなわち、それは、ネットページタグの論理構造、物理的レイアウトおよび意味を有する。
【0331】
ネットページペン101などのネットページ感知デバイスがオムニタグを撮像・復号するときは、視野におけるタグの位置および方向を用い、これをタグで符号化された位置と組み合わせて、タグに対するそれ自体の位置を算出する。感知デバイスは、ハイパーラベル化表面領域に対して移動するに従って、それによってその領域に対するそれ自体の位置を追跡し、その時間変化経路を表す刻時位置サンプルの集合体を生成することができる。感知デバイスがペンである場合は、経路は、ストロークのシーケンスからなり、各ストロークは、ペンが表面に接触したときに開始し、ペンが表面との接触を解除したときに終了する。
【0332】
ストロークが、領域IDを担当するページサーバ10まで進められると、サーバは、領域IDによって鍵をかけられた領域の記述を検索し、その記述に関してストロークを解釈する。例えば、記述がハイパーリンクを含み、ストロークがハイパーリンクのゾーンと交差する場合は、サーバは、ストロークをハイパーリンクの記述として解釈し、ハイパーリンクを活性化することができる。
【0333】
(4.3 オムニタグ印刷)
オムニタグプリンタは、製品の製造および/または組立の前、最中または後に製品のラベル、包装または実際の表面にオムニタグを印刷するデジタルプリンタである。これは、ネットページプリンタ601の特殊な例である。それは、典型的には近赤外吸収性インクを使用して、オムニタグの連続パターンを表面に印刷することが可能である。高速環境では、そのプリンタは、タグ描画を加速させるハードウェアを含む。これは、典型的には、タグ位置などの可変タグデータのリアルタイムのリードソロモン符号化、およびプリントヘッドのドット解像度における実際のタグパターンのリアルタイムのテンプレートベースの描画を含む。
【0334】
プリンタは、テキストおよび図形が他の手段によって印刷された後にオムニタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよく、またはオムニタグ、テキストおよび図形を同時に印刷する統合的なカラーおよび赤外プリンタであってもよい。デジタル印刷されたテキストおよび図形は、ラベルまたは包装にあらゆるものを含んでいてもよく、または可変部のみから構成され、他の部分が他の手段によって印刷されていてもよい。したがって、赤外およびブラック印刷機能を有するオムニタグプリンタは、従来の熱転写またはインクジェットプリンタなどの可変データ印刷に使用される既存のデジタルプリンタに取って代わることが可能である。
【0335】
以下の議論の目的として、品目ラベルへの印刷の言及は、概して品目包装への印刷、または品目表面への直接的な印刷を含むことを意図するものである。また、品目ID215の言及は、領域ID50(またはパネル毎の領域idの集合)、またはその成分を含むことを意図するものである。
【0336】
プリンタは、典型的には、プリンタに固定および/または可変テキストおよび図形、ならびにオムニタグに含めるための品目idを供給するホストコンピュータによって制御される。ホストは、プリンタに対してリアルタイム制御を行うことができ、それによって、印刷が進行しているときにプリンタにリアルタイムでデータを供給する。最適化として、ホストは、印刷が開始する前に固定データを供給し、可変データのみをリアルタイムで供給することができる。プリンタは、ホストにより供給されたパラメータに基づいて、品目毎の可変データを生成することが可能であってもよい。例えば、ホストは、印刷前に、プリンタに基本品目IDを供給することができ、プリンタは、基本品目IDを単にインクリメントして、連続的な品目idを生成することができる。あるいは、インクカートリッジのメモリ、またはプリンタに挿入された他の記憶媒体が、固有品目idの源を供給することができ、その場合は、プリンタは、品目idの割当てをホストコンピュータに報告し、ホストによって記録される。
【0337】
あるいは、固有IDが、前の製造工程中に何らかの形態でラベルに貼付されたと仮定すると、プリンタは、オムニタグが印刷されているラベルから予め存在する品目IDを読み取ることが可能であってもよい。例えば、品目IDは、可視2Dバーコードの形態で既に存在していてもよいし、RFIDタグで符号化されてもよい。前者の場合は、プリンタは、光バーコードスキャナを含むことができる。後者の場合は、RFIDリーダを含むことができる。
【0338】
プリンタは、他の形態で品目IDを描画することが可能であってもよい。例えば、2Dバーコードの形態で品目IDを印刷することが可能であってもよく、1Dバーコードの形態で品目IDの製品ID成分を印刷することが可能であってもよく、または品目IDを書き込み可能にもしくはwrite−onceRFIDタグに書き込むことが可能であってもよい。
【0339】
(4.4 オムニタグ走査)
品目情報は、例えば、品目が出荷に際して在庫目録に走査されるとき、品目が小売店の棚に配置されているとき、および品目が販売時点で走査されるときに、典型的には、存在する走査事象に応答して製品サーバに流れる。ネットページペンで採用したのと同様または同一の技術を用い、レーザベースの2D走査および2D画像センサベースのスキャナの両方を使用して、オムニタグ付け品目を走査するのに固定およびハンドヘルドスキャナの両方を使用することができる。
【0340】
図16に示されるように、固定スキャナ254およびハンドヘルドスキャナ252は、いずれも走査データを製品サーバ251に伝達する。製品サーバは、次に、品目事象データを、関連する製品サーバとのデータの共用を実現することができる同位の製品サーバ(不図示)または製品アプリケーションサーバ250に伝達することができる。例えば、小売店内の在庫の動きを小売店の製品サーバ上に局所的に記録することができるが、品目が販売されると、製造元の製品サーバに通知することができる。
【0341】
(4.5 オムニタグベースのネットページ対話)
そのラベル、包装または実際の表面がオムニタグ付けされた製品は、他のネットページと同レベルの対話性を与える。
【0342】
ネットページ適合性製品タグ付けに対して有望な事例が得られる。ネットページは、任意の印刷表面を、ウェブページに類似した細かく分化されたグラフィカルユーザインターフェースに変え、製品の表面に見事にマッピングされる多くのアプリケーションが存在する。これらのアプリケーションは、様々な種類の製品情報(栄養情報、料理情報、レシピ、関連製品、使用期限、使用説明、リコール通知)を得ること、ゲームを行うこと、コンペに参加すること、所有権を管理すること(登録、商品が盗まれた場合等の問合せ、移転)、製品フィードバックを提供すること、メッセージを送ること、および間接的なデバイス制御を含む。一方、製品タグ付けが、未分化2DバーコードまたはRFID担持品目IDの場合のように、未分化である場合は、情報ナビゲーションの負担は、ユーザ経験の複雑さ、または配信デバイスユーザインターフェースの精巧化の必要性を有意に高めうる情報配信デバイスに移される。
【0343】
次に、以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。しかし、添付の請求項の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、多くの他の形態で本発明を具現化できることが当然理解されるであろう。
【0344】
(実施例)
以下の実施例において、紫外可視スペクトルは、従来通りに最初に吸収波長を記載し、その後に括弧に含められた対応するlogεmaxを記載することによって報告される。例えば、「760(5.11)」は、5.11のlogεmaxを有する760nmにおける吸収を表す。
【0345】
(実施例1)
(a)金属を含まないフタロシアニン−H2Pc(dib)4(OBu)8
【0346】
【化11】
【0347】
n−ブタノール(10mL)にフタロニトリル(203mg;0.49mmol)を溶解させた煮沸溶液にリチウム金属(78.2mg;11mmol)を一滴ずつ添加した。45分間後に、反応混合物を冷却し、水(20mL)および酢酸(5mL)で希釈した。濃色の混合物を水(200mL)に注ぎ、クロロホルム(3×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を(Na2SO4)乾燥させ、溶媒を高真空下で除去した。粗フタロシアニンをカラムクロマトグラフィ[アルミナ(活性グレードI)、トルエン]で精製して、澄んだ黄緑色の粉末としての純粋な生成物(90mg;47%)を与えた。λmax 760(5.11),732(5.07),693(4.54),660(4.48),402(4.61),331(4.62);1H NMRスぺクトル(CDCl3)δ−0.20(2H,s,NH),1.16(24H,t,J=7.3 Hz,8×CH3),1.69(16H,六重線,J=7.3 Hz,8×CH2),2.20(16H,qnt,J=7.3 Hz,8×CH2),4.93(16H,t,J=7.3 Hz,8×CH2O),6.50(8H,s,8×CH),7.10−7.13(16H,m,Ar−H),7.63−7.65(16H,m,Ar−H)。
【0348】
(実施例2)
(b)バナジルオクタブトキシフタロシアニン
【0349】
【化12】
【0350】
H2Pc(dib)4(OBu)3(113mg;0.071mmol)を乾燥DMF(5mL)に懸濁し、次いでバナジルアセチルアセトナト(97mg;0.37mmol)およびトリブチルアミン(500μL)を連続的に撹拌しながら添加した。得られた混合物を還流下で一晩加熱し、冷却し、ジクロロメタン(200mL)で希釈した。溶液を水(100mL)、HCl(0.1M;2×100mL)および飽和NaHCO3(100mL)で洗浄し、(MgSO4)乾燥させた。溶媒を除去すると、濃緑色の固体が残り、それをトルエンに溶解させ、中性アルミナ(トルエン)上でカラムクロマトグラフィにより精製した。最初の緑色の帯体は生成物を含有しており、溶媒を除去すると、緑色の粉末(90mg;76%)を与えた。1H NMR(CDCl3)(全シグナルが広幅)δ1.15−1.26;1.67−1.76;2.1−2.4;4.9−5.0;6.4−6.7;7.10−7.23;7.64−7.70;λmax 768(5.2),688(4.6),401(4.6),357(4.6),331(4.7)nm。
【0351】
(実施例3)
(c)VOPc(dtb)4(OBu)8のVOPc(dib)4(OBu)8S8へのスルホン化
【0352】
【化13】
【0353】
オレウム(1.5mL)にVOPc(dib)4(OBu)8(22.7mg;13.7μmol)を含めたものを室温で1時間撹拌した。(VOPc(dib)4(OBu)8S8と想定される)スルホン化誘導体を含有する濃青色の溶液を、一定分量を採取し、それをDMSOで希釈することによって最初に分析して、10μM溶液を与えた。得られた紫色の溶液は、λmax843、746nmを有していた。反応液の残りを慎重に氷(5g)に添加し、硫酸(98%、0.5mL)で洗浄することによって急冷して、6mLの全体積を与えた。この溶液の一定分量(4×1mL)を水(2×サンプル)またはインクベース(2×サンプル)で5mLに希釈した。各対のサンプルの1つを固体NaHCO3をpH7〜8まで中和し、他のサンプルを酸性のままとした(表1)。各サンプルの最終濃度は、約4mg/5mL(約0.1%w/v)であった。各溶液を普通紙(80gsm)にブラシで塗布し、積分球でCary 5E分光計に記録した。
【0354】
【表1】
【0355】
【表2】
【0356】
(実施例4)
(ニッケルジチオレン樟脳硫酸二カリウム塩)
五硫化リン(12.5g;0.028mol)を新たに蒸留したジオキサン(150mL)中で樟脳キノン硫酸一水和物(5.1g;0.019mol)の溶液に添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下で還流しながら2時間にわたって加熱した。このときまでに、反応混合物をわずかに冷却し、まだかなり暖かいうちに、焼結ガラス漏斗で濾過して、未反応のP4S10を除去した。水(100mL)に塩化ニッケル六水和物(8.2g;0.034mol)を含めたものを濾液に添加し、得られた混合物を還流下で2時間加熱した。この間に、色が緑色/ベージュ色から黒色に変化した。反応混合物を連続的に冷却し、水(200mL)で希釈し、水酸化テトラブチルアンモニウム(40%、50mL)で処理し、ジクロロメタン(3×250mL)で抽出した。ジクロロメタンを蒸発によって除去し、残渣をエタノール(500mL)に溶解させた。エタノール溶液を、DOWEX−H+樹脂を含有する焼結ガラス漏斗に通し、テトラブチルアンモニウム塩を遊離酸に変換するためにさらなるエタノールで洗浄した。黒色のエタノール溶液を、カリウムtertブトキシド(2g;0.018mol)をエタノール(50mL)に含めたもので撹拌しながら処理した。得られた濁った褐色混合物を濾過し、エタノール、高温エタノール、高温エーテル、そして最後に高温アセトンで連続的に洗浄して、濃紫色の固体としてのニッケルジチオレンにカリウム塩(3.14g;44%)を与えた。λmax 781(4.11)、541(2.95);MS(ESI)m/z:651[(M−K)−、27%),306[(M−2K)2−、100];HRMS:m/z calcd for C20H26NiO6S62−(M+−2K)2−305.9708、found 305.9711。
【0357】
(実施例5)
(ニッケルジチオレン樟脳硫酸二ナトリウム塩)
樟脳キノン硫酸一水和物(4.12g、0.016mol)と五硫化リン(10.3g、0.023mol)の混合物をジオキサン(100mL)に含めたものを環流しながら2時間加熱した。過剰の五硫化リンを濾去し、ジオキサン(50mL)で洗浄した。塩化ニッケル(II)六水和物(8.10g、0.034mol)を水(50mL)に溶解させた溶液をジオキサン溶液に添加し、黒色の反応混合物を還流しながら2時間加熱した。得られた濃マゼンタ色の溶液を水(500mL)で希釈し、濾過し、クロロホルム(2×200mL)で抽出した。水層を水酸化テトラブチルアンモニウム(40%、60mL)でpH8に塩基性化し、クロロホルム(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を水(1×200mL)で洗浄し、減圧下で溶媒を除去した。テトラブチルアンモニウム塩をエタノールに溶解し、DOWEX−H+樹脂を通じて溶出して、遊離酸を与えた。次いで、このエタノール溶液を、Amberlite IRP−64樹脂(Na+形)のカラムを通じて溶出し、溶媒を除去して、濃紫色の粉末としてのナトリウム塩を与えた。λmax 783 nm;(ESI)m/z:635[(M−Na)−,27%),306[(M−2Na)2−,100];HRMS:m/z calcd for C20H26NiO6S62−(M+−2Na)2−305.9708,found 305.9723。
【0358】
(実施例6)
(パラジウムジチオレン樟脳硫酸二カリウム塩)
新たに蒸留したジオキサン(30mL)に樟脳キノン硫酸一水和物(0.59g;2.2mmol)を溶解させた溶液に五硫化リン(1.97g;4.4mmol)を添加した。反応混合物を還流下で2時間加熱し、濾過した。濾液を、酢酸パラジウム(0.25g;1.1mmol)を水(10mL)に含めたもので撹拌しながら処理すると、反応混合物が濁り、次いで濃紫色になった。全体を還流下で2時間加熱し、水(300mL)で希釈した。水酸化テトラブチルアンモニウム溶液(40%、5mL)を添加し、次いで混合物をクロロホルム(3×100mL)で抽出した。溶媒を蒸発によって除去し、紫色の残渣をエタノール(50mL)に溶解させてから、DOWEX−H+カラムに通した。DOWEXを無色になるまでエタノール(150mL)で洗浄した。得られたエタノール溶液をt−ブトキシド(1g;8.9mmol)で処理し、冷却して、紫色の固体を分離させた。固体を濾過し、エタノール(100mL)で洗浄し、乾燥させることによって、紫色の固体としてのパラジウム錯体(0.382g;50%)を与えた。λmax831nm。
【図面の簡単な説明】
【0359】
【図1】サンプル印刷ネットページとそのオンラインページ記述との関係の概略図である。
【図2】ネットページペンと、ウェブ端末と、ネットページプリンタと、ネットページ中継器と、ネットページサーバと、ネットページアプリケーションサーバと、ウェブサーバの対話の概略図である。
【図3】ネットワークを介して接続されたネットページサーバ、ウェブ端末および中継器の集合を示す図である。
【図4】印刷ネットページおよびそのオンラインページ記述の高レベル構造の概略図である。
【図5a】タグの4つのコードワードの符号のインターリーブおよび回転を示す平面図である。
【図5b】図5aに示されるタグに対するマクロドットレイアウトを示す平面図である。
【図5c】目標が、隣り合うタグ間で共用される、図5aおよび図5bに示されるタグのうちの9つの配置を示す平面図である。
【図5d】図5aに示されるタグの集合体と、ネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との関係を示す平面図である。
【図6】ネットページペン、およびそれに伴うタグ感知視野円錐体の斜視図である。
【図7】図6に示されるネットページペンの斜視分解図である。
【図8】図6および7に示されるネットページペンに対するペンコントローラの概略構成図である。
【図9】壁掛け式ネットページプリンタの斜視図である。
【図10】図9のネットページプリンタの長さに沿う断面図である。
【図10a】二重印刷エンジンおよび接着剤ホイール組立品ノブ分を示す図10の拡大部分である。
【図11】インクカートリッジ、インク、空気および接着剤経路、ならびに図9および10のネットページプリンタの印刷エンジンの詳細図である。
【図12】インクカートリッジの分解図である。
【図13】品目IDの構造の概略図である。
【図14】全タグの構造の概略図である。
【図15】ペンクラスダイアグラムの概略図である。
【図16】品目と、固定製品スキャナと、携帯式製品スキャナと、スキャナ中継器と、製品サーバと、製品アプリケーションサーバの対話の概略図である。
【図17】バイリシックプリントヘッドの斜視図である。
【図18】図17のバイリシックプリントヘッドの分解斜視図である。
【図19】図17のバイリシックプリントヘッドの一端に沿う断面図である。
【図20】図17のバイリシックプリントヘッドに沿う縦方向断面図である。
【図21(a)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(b)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(c)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(d)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図22(a)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図22(b)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図22(c)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図23】図22に従って構成された単一インクジェットノズル機構の立体図である。
【図24】図23に示されるノズル機構のアレイを示す図である。
【図25】バブル成形ヒータ素子アクチュエータの単位セルのインクチャンバに沿う概略断面図である。
【図26】実施例1に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図27】実施例2に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図28】実施例3に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図29】(1a−d)は、普通紙(80gsm)にスルホン化バナジルオクタブトキシフタロシアニンを含むインク溶液の反射スペクトルを示す図である。
【図30】実施例4に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図31】実施例5に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図32】実施例6に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、赤外(IR)染料における可視光の吸収を最小限にする方法に関する。それは、主として、IRインクにおける望ましくない着色を回避するため、より詳細には、IRインクで印刷またはたタグ付けされた基体(substrate)の望ましくない着色を回避するために開発された。
【0002】
[関連技術の説明]
IR吸収染料は、光記録システム、熱記録ディスプレイ、レーザフィルタ、赤外線写真、医療用途および印刷などの多くの用途を有する。典型的には、これらの用途に使用される染料は、半導体レーザの発光波長(例えば約700nmと2000nmの間、好ましくは700nmと100nmの間)に近赤外の強い吸収を有するのが望ましい。例えば、光記録技術では、ガリウムアルミニウム砒素(GaAlAs)およびリン化インジウム(InP)ダイオードレーザが光源として広く使用されている。
【0003】
IR染料の他の重要な用途は、印刷インクなどのインクである。デジタル情報の印刷形態での記憶および検索は、特に重要である。この技術のよく知られている例は、印刷された走査可能バーコードの使用である。バーコードは、特定の製品に付随するタグまたはラベルに典型的に印刷され、その識別情報および価格等のその製品に関する情報を含む。バーコードは、目に見える黒色インクの複数の直線上で通常印刷され、スキャナからの可視光を使用して検出される。スキャナは、LEDまたはレーザ(例えば、633nmの光を放射するHeNeレーザ)光源と、反射光を検出するためのフォトセルとを典型的に備える。バーコードインクに好適に使用される黒色染料は、例えば国際公開第03/074613号パンフレットに記載されている。
【0004】
しかし、この技術の他の用途(例えばセキュリティタグ付け)ではバーコード、または裸眼には不可視であるが、UVまたはIR光の下では検出することが可能であるインクで印刷された他の明瞭標示を有することが望ましい。
【0005】
検出可能な不可視インクの特に重要な用途は、自動識別システム、特に「ネットページ」および「Hyperlabel(商標)」システムである。ネットページシステムは、いずれも参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
【0006】
[相互参照]
本発明に関する様々な方法、システムおよび装置は、本出願の出願人または譲受人によって出願された以下の同時係属出願に記載されている。
10/409,876; 10/409,848; 10/409,845; 09/575,197; 09/575,195;
09/575,159; 09/575,132; 09/575,123; 09/575,148; 09/575,130;
09/575,165; 09/575,153; 09/693,415; 09/575,118; 09/609,139;
09/608,970; 09/575,116; 09/575,144; 09/575,139; 09/575,186;
09/575,185; 09/609,039; 09/663,579; 09/663,599; 09/607,852;
09/575,191; 09/693,219; 09/575,145; 09/607,656; 09/693,280;
09/609/132; 09/693,515; 09/663,701; 09/575,192; 09/663,640;
09/609,303; 09/610,095; 09/609,596; 09/693,705; 09/693,647;
09/721,895; 09/721,894; 09/607,843; 09/693,690; 09/607,605;
09/608,178; 09/609,553; 09/609,233; 09/609,149; 09/608,022;
09/575,181; 09/722,174; 09/721,896; 10/291,522; 10/291,517;
10/291,523; 10/291,471; 10/291,470; 10/291,819; 10/291,481;
10/291,509; 10/291,825; 10/291,519; 10/291,575; 10/291,557;
10/291,661; 10/291,558; 10/291,587; 10/291,818; 10/291,576;
10/291,589; 10/291,526; 6,644,545; 6,609,653; 6,651,879;
10/291,555; 10/291,510; 19/291,592; 10/291,542; 10/291,820;
10/291,516; 10/291,363; 10/291,487; 10/291,520; 10/291,521;
10/291,556; 10/291,821; 10/291,525; 10/291,586; 10/291,822;
10/291,524; 10/291,553; 10/291,511; 10/291,585; 10/291,374;
10/685,523; 10/685,583; 10/685,455; 10/685,584; 10/757,600;
09/575,193; 09/575,156; 09/609,232; 09/607,844; 09/607,657;
09/693,593; 10/743,671; 09/928,055; 09/927,684; 09/928,108;
09/927,685; 09/927,809; 09/575,183; 09/575,160; 09/575,150;
09/575,169; 6,644,642; 6,502,614; 6,622,999; 09/575,149;
10/322,450; 6,549,935; NPN004US; 09/575,187; 09/575,155;
6,591,884; 6,439,706; 09/575,196; 09/575,198; 09/722,148;
09/722,146; 09/721,861; 6,290,349; 6,428,155; 09/575,146;
09/608,920; 09/721,892; 09/722,171; 09/721,858; 09/722,142;
10/171,987; 10/202,021; 10/291,724; 10/291,512; 10/291,554;
10/659,027; 10/659,026; 09/693,301; 09/575,174; 09/575,163;
09/693,216; 09/693,341; 09/693,473; 09/722,087; 09/722,141;
09/722,175; 09/722,147; 09/575,168; 09/722,172; 09/693,514;
09/721,893; 09/722,088; 10/291,578; 10/291,823; 10/291,560;
10/291,366; 10/291,503; 10/291,469; 10/274,817; 09/575,154;
09/575,129; 09/575,124; 09/575,188; 09/721,862; 10/120,441;
10/291,577; 10/291,718; 10/291,719; 10/291,543; 10/291,494;
10/292,608; 10/291,715; 10/291,559; 10/291,660; 10/409,864;
10/309,358; 10/410,484; 10/683,151; 10/683,040; 09/575,189;
09/575,162; 09/575,172; 09/575,170; 09/575,171; 09/575,161;
10/291,716; 10/291,547; 10/291,538; 10/291,717; 10/291,827;
10/291,548; 10/291,714; 10/291,544; 10/291,541; 10/291,584;
10/291,579; 10/291,824; 10/291,713; 10/291,545; 10/291,546;
09/693,388; 09/693,704; 09/693,510; 09/693,336; 09/693,335;
10/181,496; 10/274,119; 10/309,185; 10/309,066; 10/778,090;
10/778,056; 10/778,058; 10/778,060; 10/778,059; 10/778,063;
10/778,062; 10/778,061; 10/778,057; 10/782,894; 10/782,895;
10/786,631; 10/793,933; 10/804,034; 10/815,621; 10/815,612;
10/815,630; 10/815,637; 10/815,637; 10/815,640; 10/815,642;
10/815,643; 10/815,644; 10/815,618; 10/815,639; 10/815,635;
10/815,647; 10/815,634; 10/815,632; 10/815,631; 10/815,648;
10/815,641; 10/815,645; 10/815,646; 10/815,617; 10/815,620;
10/815,615; 10/815,613; 10/815,633; 10/815,619; 10/815,616;
10/815,614; 10/815,636; 10/815,649; 10/815,609; 10/815,627;
10/815,626; 10/815,610; 10/815,611; 10/815,623; 10/815,622;
10/815,629; 10/815,625; 10/815,624; 10/815,628; 10/831,232;
10/831,242; 10/846,895; 6,889,896; 10/853,782; 10/853,379;
【0007】
これらの同時係属特許/特許出願のすべての開示内容が、参照により本明細書に組み込まれている。いくつかの特許出願は、それらの整理番号によって一時的に識別される。これは、利用可能である場合は対応する出願番号に代えられることになる。
【0008】
概して、ネットページシステムは、ネットページの製造、およびネットページと人間の対話に依存する。これらは、普通紙に印刷されたテキスト、図形および画像のページであるが、対話式ウェブページのように機能する。人間の裸眼には実質的に不可視であるインクを使用して、情報が各ページ上に符号化される。しかし、インク、そしてそれにより符号化データを、光学撮像ペンで感知し、ネットページシステムに送信することが可能である。
【0009】
各ページ上の活性ボタンおよびハイパーリンクをペンでクリックして、ネットワークからの情報、またはネットワークサーバへの信号選択を要求することができる。いくつかの形態において、ネットページに手で書いたテキストを自動的に認識し、ネットページシステムでコンピュータテキストに変換して、書式を埋めることができる。他の形態において、ネットページに記録された署名を自動的に検証し、電子商取引を安全に認証させることができる。
【0010】
ネットページは、その上にネットページネットワークが構築される基礎である。それらは、公開された情報に対する紙ベースのユーザインターフェース、および対話サービスを提供することができる。
【0011】
ネットページは、ページのオンライン記述を基準として不可視的にタグ付けされた印刷ページ(または他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバによって永続的に維持される。ページ記述は、テキスト、図形および画像を含むページの可視的なレイアウトおよび内容を記述する。ボタン、ハイパーリンクおよび入力フィールドを含むページ上の入力要素をも記述する。ネットページは、ネットページペンで表面に作成された標示を同時に取り込み、ネットページシステムで処理することを可能にする。
【0012】
多数のネットページが、同一のページ記述を共用することが可能である。しかし、さもなければ同一のページを介する入力を区別させるために、各ネットページが固有のページ識別子に割り当てられる。このページIDは、非常に多数のネットページを区別するのに十分な精度を有する。
【0013】
ページ識別子に対する各基準は、印刷タグで符号化される。タグは、それが表示される固有のページを識別することにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、また、ページ上のその位置を識別する。
【0014】
タグは、普通紙などの赤外線反射性の任意の基体上に赤外線吸収性インクで印刷される。近赤外波長は、人間の目には不可視であるが、適切なフィルタを有する固体画像センサによって容易に感知される。
【0015】
タグは、ネットページペンにおけるエリア画像センサによって感知され、タグデータは、最も近いネットページプリンタを介してネットページシステムに送信される。ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してネットページプリンタと通信する。タグは、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。タグは、誤差補正可能に符号化されて、表面損傷に対して部分的に耐性が与えられる。
【0016】
ネットページページサーバは、印刷ネットページ毎に固有のページインスタンスを維持して、印刷ネットページ毎に、入力フィールドに対するユーザ供給値の異なる集合体を維持することを可能にする。
【0017】
Hyperlabel(商標)は、Silverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である。概して、Hyperlabel(商標)システムは、不可視の(例えば赤外線)タグスキームを用いて、品目を一意的に識別する。これは、製品のパッケージまたはラベルのグラフィックデザインに影響することなく、製品の全表面またはその大部分をタグ付けすることを可能にするという大きな利点を有する。製品の全表面がタグ付けされる(「全面タグ付けされる」)と、製品の配向によってその走査性が影響されない、すなわち可視バーコードの目視線の欠点の大部分が解消される。また、タグがコンパクトで、大量に(「オムニタグが」)複製される場合は、ラベル損傷により走査が阻止されることがなくなる。
【0018】
したがって、ハイパーラベリングは、光学的に読取り可能な不可視タグを有する製品の表面の大部分を被覆することからなる。タグが、赤外スペクトルにおける反射または吸収を利用するときは、赤外識別(IRID)タグと呼ばれる。各Hyperlabel(商標)は、それが表示される製品を一意的に識別する。タグは、品目の製品コードを直接符号化するか、または次に検出可能検索を介して製品コードを識別する代理IDを符号化することができる。各タグは、また、品目の表面のその位置を場合によって識別して、ネットページ対話の下流消費者利益をもたらす。
【0019】
Hyperlabels(商標)は、デジタルプリンタ、好ましくはインクジェットプリンタを使用して、製品製造および/または梱包時に適用される。これらは、テキストおよび図形が他の手段で印刷された後にタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよいし、標識、テキストおよび図形を同時に印刷する統合カラーおよび赤外プリンタであってもよい。
【0020】
適切な近赤外周波数を有する光源を使用すること以外はバーコードと同様の技術を用いて、Hyperlabels(商標)を検出することが可能である。光源は、レーザ(例えば、830nmの光を放射するGaAlAsレーザ)であってもよいし、LEDであってもよい。
【0021】
以上から、可視IR検出可能インクは、ネットページおよびHyperlabel(商標)システムの重要な成分であることが容易に理解される。IR吸収インクが、これらのシステムで良好に機能するためには、理想的にはいくつかの基準を満たす必要がある。
(i)インクジェットプリンタとの適合性
(ii)インクジェットインクに使用される水性溶媒とのIR染料の相溶性
(iii)近赤外領域における強い吸収(例えば700から1000nm)
(iv)可視吸収がない、または低い
(v)耐光性
(vi)熱安定性
(vii)毒性がない、または低い
(viii)製造コストが低い
(ix)紙および他の媒体に対する接着性が良好
(x)印刷時のインクの裏抜けがない、またはにじみが最小限に抑えられる
【0022】
したがって、上記基準の少なくとも一部および好ましくは全部を満たすIR染料およびインク組成物を開発することが望まれる。ネットページおよびHyperlabel(商標)システムを完成するために、当該インクが望まれる。
【0023】
いくつかのIR染料は、Epolin Products、Avecia InksおよびH.W.Sands Corp.などの様々な供給源から市販されている。
【0024】
加えて、先行技術には、様々なIR染料が記載されている。例えば、米国特許第5,460,646号には、着色剤、媒体および溶媒を含み、着色剤はシリコン(IV)2,3−ナフタロシアニンビストリアルキルシリルオキシドである赤外印刷インクが記載されている。
【0025】
米国特許第5,282,894号には、金属を含有しないフタロシアニン、複合フタロシアニン、金属を含有しないナフタロシアニン、複合ナフタロシアニン、ニッケルジチオレン、アミニウム化合物、メチン化合物またはアズレンスクアリン酸を含む溶媒系印刷インクが記載されている。
【0026】
しかし、先行技術の染料は、いずれもネットページまたはHyperlabel(商標)システムに好適に使用される組成物に調合できない。特に、市販および/または先行技術のインクには、近赤外センサにより検出に適さない波長での吸収、水性溶媒系に対する溶解性または分散性が低いこと、またはスペクトルの可視部分における吸収が許容できないほど高いことのいずれかの問題がある。
【0027】
典型的なネットページでは、1ページのハイパーリンクの数が多く、それに応じてIRインクで印刷されるページ部分が比較的多くなりうる。Hyperlabel(商標)システムでは、製品のパッケージの大部分を不可視インクで印刷できる。したがって、使用されるインクは、裸眼で見えず、残留色が最小限であることが特に望ましい。
【0028】
さらに、インクジェット印刷は、ネットページおよびHyperlabel(商標)を生成するのに好ましい手段である。インクジェット印刷は、主として高速および低コストであるため好ましい。インクジェットインクは、低コスト、低毒性および低引火性という理由から、典型的には水系である。熱バブルジェットプリンタでは、インクは、印刷処理時に急速に蒸発する必要がある。印刷処理時のインクのこの急速な蒸発には、水系インク組成物が必要である。よって、ネットページおよびHyperlabel(商標)インクに使用されるIR染料は、水性インク組成物への調合に好適であり、インクジェットプリンタに適合する。
【0029】
ネットページシステムに使用されるIR染料のさらなる基本的要件は、ネットページペンにおけるIRセンサの周波数に相補的な周波数でIR放射線を吸収すべきことである。好ましくは、インクは、IRセンサの周波数で強く吸収する染料を含むのがよい。よって、ネットページシステムに使用される染料は、近赤外領域、すなわち700から1000nm、好ましくは750から900nm、より好ましくは780から850nmで強く吸収するのがよい。
【0030】
[発明の概要]
第1の態様において、本発明は、IR吸収染料における可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0031】
第2の態様において、本発明は、IR吸収染料を含むインクジェットインクにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0032】
第3の態様において、本発明は、IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0033】
第4の態様において、印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の識別情報および書式の複数の基準点を示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、書式の識別情報、および書式に対する感知デバイスの位置に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、書式に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、かつ指示データから、書式の少なくとも1つのフィールドを識別するステップと、
コンピュータシステムにおいて、少なくとも1つのフィールドに関する指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0034】
第5の態様において、印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の少なくとも1つのフィールドを示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、少なくとも1つのフィールドに関するとともに、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含む指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して前記少なくとも1つのフィールドに関するデータを生成し、書式に対するデバイスの移動に関するデータを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィールドに関する前記指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0035】
第6の実施形態において、品目を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を記録するステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0036】
第7の態様において、品目を介してコンピュータシステムからデータを検索することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を検索するステップと、
(c)コンピュータシステムから出力デバイスに対して、品目に関する情報を出力するステップであって、出力デバイスは、表示デバイスおよび印刷デバイスを含む群から選択されるステップとを含み、
前記符号化データは、上記方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法が提供される。
【0037】
[詳細な説明]
(IR吸収染料)
本明細書に用いられているように、「IR吸収染料」という用語は、赤外放射線を吸収し、そのため赤外センサによる検出に好適である染料基体を意味する。好ましくは、IR吸収染料は、近赤外領域で吸収し、好ましくは700から1000nm、より好ましくは750から900nm、より好ましくは780から850nmの範囲のλmaxを有する。この範囲のλmaxを有する染料は、ガリウムアルミニウム砒素ダイオードレーザなどの半導体レーザによる検出に特に好適である。
【0038】
先行技術のIR吸収染料化合物は、少なくともある程度は、スペクトルの可視領域で吸収することが本発明者等によって認識された。実際、先行技術において知られているIR吸収染料化合物の大多数は黒色である。この可視吸収は、「不可視」IRインク、特にネットページまたはHyperlabel(商標)システムに使用されるIRインクにおいては明らかに望ましくない。
【0039】
IR吸収染料化合物、特にIR吸収金属−リガンド錯体のIRスペクトルにおける可視帯域の存在は、主に隣り合う分子間の分子間相互作用によるものである。
【0040】
典型的には、IR吸収化合物は、分子の少なくとも一部に実質的に平面の部分(moiety)を形成するπ系を含む。隣り合う分子における平面のπ系は、π−π堆積として知られる分子間π相互作用を介して積み重なる自然の傾向がある。したがって、IR吸収化合物は、分子間π相互作用を介して集合し、比較的弱く結合した二量体および三量体等を生成する自然の傾向を有する。理論に束縛されることを望むのではなく、本発明者等は、IR吸収化合物は、さもなければ対応する単量体化合物に存在しない、それらのIRスペクトルにおける可視吸収帯域の生成に大きく貢献しているものと理解する。この可視吸収は、π系が積み重なり、π軌道が相互作用して、それぞれのエネルギー順位に小さな変化をもたらす場合のIR吸収帯域の広がりによるものと理解される。IR吸収帯域の広がりは、2つの点で望ましくない。第1に、IR領域における吸収の強度を低減し、第2に、IR吸収帯域は、可視領域の末端について、強く着色した化合物を生成する傾向がある。
【0041】
また、π−π相互作用を介する着色二量体および三量体等の形成は、固体および溶液の双方に生じる。しかし、拡大されたπ堆積オリゴマーの形成を阻害する溶媒分子が存在しない固体では特に問題である。許容される溶液特性を有するIR染料は、紙に印刷された場合に強く着色した固体にとどまることができる。理想的な「不可視」IR染料は、溶媒が蒸発または紙に吸い込まれた場合に不可視となる。
【0042】
また、局所的電荷、またはイオンなどの部分帯電原子によるπ軌道の相互作用は大きく、これによって可視領域にさらなる吸収が導入されうる。
【0043】
先行技術は、いずれも、π−π堆積の形態の分子間相互作用を低減するように特異的に構成された染料分子を設計・合成することによってIRインクにおける可視吸収の問題を扱っていない。
【0044】
分子間相互作用を低減するのに好適な部分の具体例については、以下により詳細に記載されている。しかし、隣り合う染料分子の分子間π−π相互作用二重分に干渉することができる任意の部分または基は、可視吸収を最小限にするのに好適であるため、本発明に好適に使用されることを上記から理解されるであろう。
【0045】
好ましくは、分子間相互作用を低減するように構成された部分は、立体反発効果によりこれらの相互作用を低減する。したがって、好適に位置する立体反発基を有する染料分子を提供することによって、潜在的に相互作用するπ系の間の距離を長くすることによって、π−π堆積を最小限にすることが可能である。
【0046】
好ましくは、分子間相互作用を低減するように構成された部分は、染料分子の周囲、または実質的に平面のπ系の少なくとも周囲に位置する。典型的には、分子間π相互作用は、π系の表面の重なりに起因する。それらの部分を染料分子の周囲に位置させることによって、部分は、重なりの度合いを低減する上で最大限の効果を有する。
【0047】
一般に、隣り合う分子のπ系間の平均距離が、約3.5Å、より好ましくは約4Å、より好ましくは約5Åを上回るように、染料分子を構成するのが好ましい。隣り合う分子のπ系間のこの好ましい距離は、理論的計算に基づく。本発明者等による理論的研究から、π−π相互作用は、3.5Å以下の距離で大きくなることが理解される。
【0048】
好ましくは、分子間相互作用を低減するための部分は、実質的に平面のπ系の平面から延びる。例えば、シアニン型染料は、分子の主平面を形成するπ系を典型的に含む。この主平面は通常、共役ヘテロ芳香族および/または芳香族環で構成される。同様に、ジチオレン染料(例えばニッケルジチオレン)は、中央のニッケル原子、二対の硫黄原子、および硫黄原子が隣接結合する一対の二重結合によって定められる実質的に平面のπ系を典型的に有する。その部分が好ましくは構成され、またはこの平面から延び、近隣の染料分子に対して立体反発を発揮するような配座に少なくとも折り込まれる。π系の平面から延びる部分が大きいほど、分子間相互作用が低減されることになる。
【0049】
好ましくは、分子間相互作用を低減するための部分は、三次元構造を有する。「三次元構造」とは、部分が、すべての配座において三次元空間の体積を占めることを意味する。好ましくは、部分は、三次元のC3〜C30ヒドロカルビルまたはC3〜C30ヒドロカルビレン基である。
【0050】
当業者であれば理解するように、三次元ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基の正確な性質は、その基が分子間相互作用を阻害する十分な三次元構造を有するのであれば、本発明にとって重要でない。しかし、分子間相互作用を低減するのに好適な好ましい部分は、C3〜C30架橋環状基である。上記のように、そのような基は、好ましくは、それらの重なり阻害効果を最大限にするπ系の周囲に位置する。
【0051】
架橋環状基などの三次元ヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン基を含む染料分子の代替(または追加)として、分子間相互作用を低減するための1つまたは複数のポリマー置換基を含むことができる。本発明の脈絡において、「ポリマー」という用語は、2つ以上の繰返し単量体単位を有する基を記載するのに用いられる。例えば、分子間相互作用を低減するためのポリマー置換基は、2から5000、より好ましくは2から1000、より好ましくは2から100、より好ましくは2から50の繰返し単量体単位を含むことができる。
【0052】
理論に束縛されることを望むのではなく、本発明者等は、ポリマー置換基は、ポリマーの少なくとも一部が、隣り合う染料分子のπ系の間に位置する配座に折り込まれることによってπ−π相互作用に干渉する。これにより、分子間π−π相互作用が阻害されるため、ポリマー置換基は、π系が重なり、相互作用する傾向を低減することができる。
【0053】
ポリマー置換基が立体反発を提供できるのであれば、その正確な性質は本発明にとって重要ではないことが容易に理解されるであろう。よって、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリアルケン等の任意の種類のポリマーを含んでいてもよい。
【0054】
ポリマー基は、デンドリマーの形態の複数のポリマー鎖、すなわちそこから複数のポリマー鎖が放射状に広がる芯または鋳型を含んでいてもよい。デンドリマー分子の分枝性は、それらのポリマー鎖が三次元空間における大きな体積を占めることができることを意味する。この大きな三次元の体積は、それぞれの染料分子間の立体反発を強め、それにより分子間相互作用を低減するのに有利である。
【0055】
立体反発を提供するのに加えて、ポリマー置換基は、染料分子にさらなる特性を付与することができる。例えば、ポリマー置換基を適切に選択すると、分子に親水性を付与するのに使用することができる。エチレングリコール(PEG鎖)の繰返し単位を含むポリマー置換基は、分子間π相互作用を低減するばかりでなく、親水性を提供するのに特に好適である。
【0056】
好ましくは、染料分子は、親水基を含む。親水基は、染料分子に水分散性または水溶解性を付与するために好ましい。本発明の染料分子は、インクジェットインク組成物、好ましくは水性インクジェットインク組成物に使用されることを目的としている。したがって、親水基の提供は、本発明の染料分子を水性インクジェットインク組成物に分散することを可能にするための1つの手段である。
【0057】
好ましくは、親水基は、親水性ポリマー鎖、アンモニウム基、その塩を含む酸基、またはスルホンアミド基から選択される。
【0058】
親水性ポリマー鎖の例は、エチレングリコールの2から5000の繰返し単位を含んでいてもよいPEG鎖である。他の親水性ポリマー鎖は、当業者であれば容易に理解されるであろう。親水性ポリマー鎖は、染料分子上の置換基(または置換基の一部)であってもよい。
【0059】
アンモニウム基は、一般式:−N+(Ra)(Rb)(Rc)または−U(式中、Ra、Rb、Rcは、同じであっても異なっていてもよく、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびナフチル等)から独立に選択され、Uは、ピリジニウム、イミダゾリニウムまたはピロリニウムである)の基を含む置換基として存在していてもよい。あるいは、アンモニウム基は、染料分子において四元化されたN原子の形態で存在していてもよい。例えば、染料分子におけるヘテロ芳香族N原子を、知られている手順に従って、C1〜C8アルキルまたはC6〜C12アリールアルキル基で四元化することができる。
【0060】
酸基は、式:−CO2Z、−SO3Z、−OSO3Z、−PO3Z2または−OPO3Z2(式中、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基を含む置換基として存在していてもよい。好ましくは、Zは、Li+、Na+またはK+から選択される。上記の方法などの酸基を導入する方法を当業者であればよく知っているであろう。例えば、染料分子におけるオレフィンまたはヒドロキシル基を酸化することによってカルボン酸基を導入することができる。あるいは、例えばオレウムまたはクロロスルホン酸を使用するスルホン化によって染料分子における芳香族部分にスルホン酸基(−SO3H)を導入することができる。例えば金属水酸化物試薬(例えばLiOH、NaOHまたはKOH)または金属重炭酸塩(例えばNaHCO3)を使用して、酸基のその塩形態への変換を行うことが可能である。例えば水酸化アンモニウム(例えばBu4NOHおよびNH4OH等)を使用して非金属塩を調製することもできる。
【0061】
スルホンアミド基は、一般式:−SO2NRpRq(式中、RpおよびRqは、H、C1〜C8アルキル(例えば、メチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、−(CH2CH2O)eRe(式中、eは2から5000の整数であり、ReはH、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキル)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびメトキシフェニル等)から独立に選択される)の基を含む置換基として存在していてもよい。
【0062】
スペクトルの可視部における吸収の問題は、IR吸収金属−リガンド錯体における特殊な問題である。金属−リガンド染料分子(例えばニッケルジチオレン、金属フタロシアニンおよび金属ナフタロシアニン)は、当該技術分野で知られている。したがって、本発明は、その好ましい形態において、IR吸収金属−リガンド錯体における分子間相互作用を低減する。
【0063】
本明細書に用いられるように、「金属」という用語は、金属−リガンド錯体を形成することが可能な任意の金属または半金属(SiまたはGe)を含む。当該金属のいくつかの例は、Si、Ge、Ga、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Pb、Zr、PdおよびPtである。金属は、金属−リガンド錯体を形成するための任意の好適な酸化状態であってもよい。金属−シアニン染料の場合は、金属は、好ましくはSi、Ge、Al、Mn、Ti、V、ZnまたはSnである。金属−ジチオレン染料の場合は、金属は、好ましくはNi、PdまたはPt、より好ましくはNiである。
【0064】
金属−リガンド錯体は、四配位(例えば平面四角形)、五配位(例えば錐体四角形)または六配位(例えば八面体)構造などの任意のリガンド配位構造を有していてもよい。金属−リガンド錯体の構造は、リガンドおよび金属の性質、ならびに金属の酸化状態に依存することになる。
【0065】
好ましくは、金属−リガンド錯体は、少なくとも1つの多歯状リガンドを含む。「多歯状リガンド」とは、複数の配位原子を有するリガンドを意味する。
【0066】
多歯状リガンドは、それらの金属との錯体が、単歯状リガンドより通常は熱力学的に安定するため、好ましい。さらに、多歯状リガンドは、その配位ヘテロ原子、および配位ヘテロ原子と共役されたリガンドにおけるπ結合を介して、金属−リガンド錯体の中央の金属原子と大きなIR吸収π系を形成することが可能である。
【0067】
本発明の好ましい方法において、金属−リガンド染料は、リガンドが、実質的に平面のπ系の平面から延びる少なくとも1つの部分を有するように予め選択される。その構造部分は、相でなければ実質的に平面の染料分子に三次元構造を提供する。好ましくは、金属−リガンド染料は、少なくとも1つのリガンドが架橋環状基を含むように予め選択される。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、染料分子は、赤道結合四歯状シアニン型リガンドを有する金属−リガンド錯体である。特にそのような場合には、錯体の空の軸位置を利用して、さらなる官能基を金属−リガンド錯体に導入することができる。よって、本発明のいくつかの形態において、金属−リガンド染料は、少なくとも1つの軸配位子が、分子間相互作用を低減するための基を含むように予め選択される。軸配位子は、例えば1つまたは複数のポリマー基を含んでいてもよい。上述したように、ポリマー基は、隣り合う染料分子のπ系が相互作用する傾向を低減する配座に存在しうる。したがって、ポリマー軸配位子は、分子間相互作用の低減をさらに支援することが可能である。
【0069】
好ましくは、軸配位子は、染料分子のπ面を効果的に「保護」または遮断するように配座を採用する(または構成される)。π系上に「傘」を形成し、隣り合う染料分子の分子間相互作用を低減することができる軸配位子は、本発明に特に好適に使用される。
【0070】
軸配位子が最大限の立体反発を有するように、デンドリマー、すなわち複数の鎖が放射状に広がる中央の芯または鋳型の形態のポリマー鎖などの複数の鎖を含んでいてもよい。デンドリマーは、当業者によく知られており、以下により詳細に説明されている。
【0071】
分子間相互作用を低減する軸配位子の有利な使用にもかかわらず、軸配位子は、染料分子に親水性を与えることもできる。例えば、軸配位子が1つまたは複数の親水基を含む場合は、染料分子に水分散性を与えることになる。上述のように、染料分子を水性インクジェットインク組成物に使用できるため、水分散性は有利である。親水基の例は、PEG鎖、アンモニウム基および酸基(その塩を含む)である。よって、親水基を有するデンドリマーを含む軸配位子は、(1)分子間相互作用の低減および(2)染料分子の水分散性の向上の二重特異性を付与することになる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、染料は、式(I)の錯体または式(II)の化合物から予め選択されるシアニン型染料である。
【0073】
【化1】
【0074】
式中、
Q1、Q2、Q3およびQ4は、同一または異なっており、C3〜C20アリレン基またはC3〜C20ヘテロアリレン基から独立に選択され、前記C3〜C20アリレンまたはC3〜C20ヘテロアリレン基は、分子間相互作用を低減するのに好適な少なくとも1つの置換基を含み、
Mは、Si(A1)(A2)、Ge(A1)(A2)、Ga(A1)、Mg、Al(A1)、TiO、Ti(A1)(A2)、ZrO、Zr(A1)(A2)、VO、V(A1)(A2)、Mn、Mn(A1)、Fe、Fe(A1)、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Sn(A1)(A2)、Pb、Pb(A1)(A2)、PdおよびPtから選択され、
A1およびA2は、同一であっても異なっていてもよく、−OH、ハロゲン、−OR3、親水性リガンドおよび/または分子間相互作用を低減するのに好適なリガンドから選択され、
R3は、C1〜C12アルキル、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキルまたはSi(Rx)(Ry)(Rz)から選択され、
Rx、RyおよびRzは、同一であっても異なっていてもよく、C1〜C12アルキル、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキル、C1〜C12アルコキシ、C5〜C12アリールオキシまたはC5〜C12アリールアルコキシから選択される。
【0075】
Q1、Q2、Q3およびQ4は、同一であっても異なっていてもよい。一般に、シアニン型染料は、大環状環を形成するための近隣のシアノ基の直列結合によって合成された対称構造体である。例えば、一般式(1)の4つのジシアノ化合物または式(2)の4つのイミジン化合物の直列塩基触媒結合によって、上記式(I)の染料を調製することができる。
【0076】
【化2】
【0077】
直列塩基触媒反応を金属鋳型によって促進させることができ、または金属の不在下で進行させることができる。よって、シアニン型化合物のこの好ましい合成の性質により、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、通常は同一であるか、または同一の芯構造単位を少なくとも有することになる。しかし、大環形成後に化合物が官能化される場合には、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、異なっていてもよい。例えば、大環状形成に続く芳香族部分の官能化は、完全対称的に行われなくてもよく、その場合には、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、置換基の数が異なることにより互いに異なっていてもよい。
【0078】
好ましくは、Q1、Q2、Q3およびQ4で表される基は、以下の式(i)から(vii)のアリレンまたはヘテロアリレン基から選択される。
【0079】
【化3】
【0080】
式中、
R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ、アミノ、C1〜C12アルキルアミノ、ジ(C1〜C12アルキル)アミノ、ハロゲン、シアノ、チオール、C1〜C12アルキルチオ、ニトロ、カルボキシ、C1〜C12アルキルカルボニル、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アルキルカルボニルオキシまたはC1〜C12アルキルカルボニルアミノから選択され、
Tは、ポリマー鎖を含む置換基、または三次元構造を有するC3〜C30ヒドロカルビル基から選択される。
Wは、親水基であり、
Eは、−OH、−O−、C1〜C6アルキル、カルボキシ−C1〜C6アルキル、スルホ−C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C5〜C12アリールアルキル、C1〜C6アルキルカルボニル、C5〜C12アリールアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニルまたはC5〜C12アリールアルコキシカルボニルから選択され、
mは、0、1または2であり、
nは、1または2であり、
pは、0、1または2である。
【0081】
好ましくは、Q1、Q2、Q3およびQ4は、式(v)で表される。
【0082】
R1およびR2で表される基は、主として、染料のλmaxの波長を変更または「調整」するためのものである。これらの位置における電子供与性置換基(例えばアルコキシ、アルキルアミノ)は、染料におけるレッドシフトを生成しうる。逆に、これらの位置における電子球引性置換基(例えばシアノ、カルボキシ、ニトロ)は、染料におけるブルーシフトを生成しうる。これらの置換基を変えることによって、染料を特定のレーザ検出器の周波数に合わせて「調整」することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、R1およびR2は、ともにC1〜C8アルコキシ基、好ましくはブトキシである。ブトキシ置換基は、有利には、λmaxを市販のレーザによる検出に好ましい近赤外のより長い波長にシフトさせる。
【0084】
代替的な好ましい実施形態において、R1およびR2は、親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ基である。親水または親水性基を担持するC1〜C12アルコキシ基は、(i)染料の吸収波長を調整する機能および(ii)親水性を提供して水分散性を支援する機能の二重機能を提供するため有利である。親水基は、上述のように、親水性ポリマー鎖、アンモニウム基、その塩を含む酸基、またはスルホアミド基であってもよい。親水性基は、ヒドロキシル、保護ヒドロキシル、アミノ、保護アミノ、チオール、保護チオール、シアノ、エステル、ハロゲンまたはアルケニル基であってもよい。そのような基は、親水基に容易に変換されうる。例えば、ヒドロキシル基をカルボン酸基(その塩を含む)に酸化することができ、ヒドロキシル基をPEG鎖に結合させることができ、例えばヨウ化メチルを使用してアミノ基を四元化することができ、チオール基をスルホン酸基(その塩を含む)またはスルホンアミドに酸化することができ、シアノおよびエステル基をカルボン酸基(その塩を含む)に加水分解することができ、アルケニル基を(例えばオゾン分解または過マンガン酸酸化によって)酸化開裂させて、カルボン酸基(その塩を含む)を提供することができる。保護ヘテロ原子の場合は、保護基は、親水基への変換前に除去される。したがって、R1およびR2は、ともに、−O(CH2)4OHなどのヒドロキシアルコキシ基であってもよい。
【0085】
Tで表される基は、染料分子間の分子間相互作用を低減する。Tnにおける添字nおよびTpにおける添字pは、T置換基の数を示す。2つのT置換基が存在する場合は、これらを結合して、環状構造を形成することができる。好ましくは、Tは、上述のようなC3〜C30架橋炭素環を含む置換基である。あるいは、Tは、上述のようなポリマー鎖を含む置換基である。いずれの場合も、染料は、分子間相互作用を低減するのに好適な少なくとも1つの部分を含む。
【0086】
Wで表される基は、存在する場合は、親水性を染料分子に付与する。Tmにおける添字mは、W置換基の数を示す。Q1、Q2、Q3およびQ4の各々は、例えば非対称的なスルホン化から生じる異なる数のW置換基を有していてもよい。好ましくは、Wは、PEG鎖を含む置換基、アンモニウム基を含む置換基、その塩を含む酸基を含む置換基、またはスルホンアミド基を含む置換基から選択される。Wは、上述の好ましい親水基のいずれか1つであってもよい。好ましくは、−SO3H、またはLi、Na+、K+、NH4+等のその水溶性塩である。例えばオレウムまたはクロロスルホン酸を使用するスルホン化によって、スルホン酸基を芳香族構造体(i)〜(v)のいずれかに容易に導入することができる。あるいは(または加えて)、N原子を四元化することによって親水性を染料分子に付与することができる。これは、ヘテロ原子部分(vi)および(vii)に示されている。
【0087】
好ましくは、染料分子は、中央の金属原子を含み、式(I)の化合物に対応する。式(I)の金属−リガンド染料分子は、分子の吸収λmaxを好ましい波長に合わせて調整するのに金属原子(またはイオン)を使用できるため好ましい。例えば、Mn、VおよびSnなどの特定の金属は、λmaxにおいて大きなレッドシフトを生成することができる。この脈絡において、レッドシフトは、金属を含まない化合物に比べて、λmaxのより長い波長へのシフトを意味する。
【0088】
レッドシフトの度合いは、金属の酸化状態に影響されうる。高酸化状態(例えばV(IV)、Mn(III)およびSn(IV))は、大きいレッドシフトを生成する傾向があるのに対して、低酸化状態(例えばMn(II)およびSn(II)は、より小さいレッドシフトを生成する傾向がある。
【0089】
1つまたは複数の軸配位子を有する金属原子を本発明に使用することができる。上述のように、追加または補足的な機能を染料分子に導入するための手段として軸配位子を使用することができる。よって、Mは、好ましくは、Ti(A1)(A2)、Zr(A1)(A2)、V(A1)(A2)、Si(A1)(A2)、Ge(A1)(A2)、Ga(A1)、Al(A1)、Mn(A1)、Fe(A1)、Sn(A1)(A2)またはPb(A1)(A2)である。Si(A1)(A2)は、コストおよび毒性が低いため、特に好ましい。Mn(A1)も、その軸配位子を介して染料分子を官能化する潜在性に加えて、レッドシフトが大きいという利点をもたらすため好ましい。2つの軸配位子が存在する場合には、これらは反対面に存在していてもよいし、分子間であってもよい。リガンドの構造は、金属およびその好ましい結合構造に広く支配される。
【0090】
A1およびA2を選択して、軸立体的嵩を染料分子に付加することによって、分子間相互作用をさらに低減することができる。
【0091】
あるいは(または加えて)、A1および/またはA2を選択して、親水性を染料分子に付加することができる。したがって、A1および/またはA2は、上記Wとして定めた基のいずれか1つなどの親水基を含んでいてもよい。
【0092】
軸立体的嵩を導入し、および/または親水性を向上させるために、A1および/またはA2は、好ましくはデンドリマーである。1つの好ましい形態において、A1および/またはA2は、式(IIIa)のリガンドである。
【0093】
【化4】
【0094】
式中、
C1は、2つ以上の分枝位置を有する芯単位を示し、
各P1は、H、親水部分または分枝部分から独立に選択され、
g1は、2から8の整数であり、
q1は、0または1から6の整数であり、
各p1は、0または1から6の整数から独立に選択される。
【0095】
好ましくは、芯単位C1は、C原子、N原子、Si原子、C1〜C8アルキル残基、C3〜C8シクロアルキル残基、またはフェニル残基から選択される。芯単位C1は、少なくとも2つの分枝位置を有し、分枝位置の数はg1の値に対応する。したがって、3つの分枝位置および1つの炭素原子芯(すなわちg1=3;C1=C原子)を有する軸配位子は、例えば、式(A)のペンタエリスリトール誘導体であってもよい。
【0096】
【化5】
【0097】
式(IIIa)における各P1基は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、(3つの分枝位置を有する)ペンタエリスリトール誘導体において、末端ヒドロキシル基(−CH2OH;P1=H)を担持する2つの腕と、硫酸基(−CH2OSO3Z;P1=SO3Z)を担持する1つの腕とが存在していてもよい。
【0098】
好ましくは、P1は、親水部分である。親水部分は、酸基(その塩を含む)、スルホンアミド基、親水性ポリマー鎖またはアンモニウム基であってもよい。
【0099】
よって、P1は、PEG鎖などの親水性ポリマー鎖を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は式:(CH2CH2O)vR6(式中、vは2から5000(好ましくは2から1000、好ましくは2から100)であり、R6は、H、C1〜C6アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)であってよい。
【0100】
あるいは、P1は、スルホン酸、硫酸塩、リン酸、リン酸塩、カルボン酸およびカルボン酸塩等の酸基(その塩を含む)を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は、式:SO3Z、PO3Z1、C1〜C12アルキル−CO2Z、C1〜C12アルキル−SO3ZまたはC1〜C12アルキル−PO3Z2、C1〜C12アルキル−OSO3ZまたはC1〜C12アルキル−OPO3Z2(式中、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基であってもよい。水溶性陽イオンの例は、Li+、Na+、K+およびNH4+等である。
【0101】
あるいは、P1は、四級アンモニウム基などのアンモニウム基を含んでいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、P1は、式:C1〜C12アルキル−N+(Ra)(Rb)(Rc)またはC1〜C12アルキル−U(式中、Ra、RbおよびRc)は、同一であっても異なっていてもよく、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、またはC6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)、またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびナフチル等)から独立に選択され、Uは、ピリジニウム、イミダゾリウムまたはピロリニウムである)の基であってもよい。
【0102】
あるいは、P1は、一般式:−SO2NRpRq(式中、RpおよびRqは、H、C1〜C8アルキル(例えばメチル、エチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、tert−ブチルおよびイソプロピル等)、−(CH2CH2O)eRe(式中、eは、2から5000の整数であり、Reは、H、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)、C6〜C12アリールアルキル(例えばベンジルおよびフェニルエチル等)またはC6〜C12アリール(例えばフェニルおよびメトキシフェニル等)から独立に選択される)の基などのスルホンアミド基を含んでいてもよい。
【0103】
上述のような分枝構造は、デンドリマーとして広く知られている。デンドリマーは、それらの分枝鎖が軸配位子の有効三次元体積を最大限にするのに加えて、複数の親水基を染料分子に導入する潜在性を提供するため有利である。式(A)に示されるペンタエリスリトール構造体は、本発明に好適に使用される単純なデンドリマーの例である。さらなる例は、トリエタノールアミン誘導体(B)、フロログルシノール誘導体(C)および3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール誘導体(D)である。
【0104】
【化6】
【0105】
代替的な実施形態において、P1基のいずれかは、それ自体が分枝部分である。分枝部分は、式(IIIb)の部分などの、軸配位子にさらなる分枝を添加する任意の構造体であってもよい。
【0106】
【化7】
【0107】
式中、
C2は、2つ以上の分枝位置を有する芯単位を示し、
P2は、Hまたは親水部分を示し、
g2は、2から8の整数を示し、
q2は、0、または1から6の整数を示し、
p2は、0、または1から6の整数を示す。
【0108】
C2およびP2の好ましい形態は、上記のC1およびP1の好ましい形態に対応する。P1が式(IIIb)の分枝部分である軸配位子の具体例は、ジペンタエリスリトール誘導体(E)である。
【0109】
【化8】
【0110】
あるいは、分枝部分は、アルキレンまたはエーテル鎖によって結合された芯単位のモチーフに基づく多数の無秩序の分枝鎖を含んでいてもよい。例えば、さらなるペンタエリスリトール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコールまたはトリエタノールアミン成分でペンタエリスリトールを順次エーテル化することによって、無秩序のデンドリマー構造体を迅速に構築できることが容易に理解されるであろう。デンドリマー状の1つまたは複数のヒドロキシル基を上述の親水基のいずれかなどの親水基でキャップすることができる。その範囲の親水性キャッピングを用いて、染料分子の水溶性を制御することができる。
【0111】
正確な構造式を用いて無秩序の分枝構造を容易に例示できないことが理解されるであろう。しかし、すべての分枝デンドリマー状構造が、A1およびA2の上記定義の範囲に含まれるものと考えられる。
【0112】
本発明の他の実施形態において、金属リガンド染料は、式(X)の金属ジチオレンから予め選択される。
【0113】
【化9】
【0114】
M2は、Ni、PdまたはPt(好ましくはNi)から選択され、
jは、1、2、3または4から選択され、
kは、1、2、3または4から選択され、
nは、0、1または2から選択され、
Wは、上述の親水基であり、
炭素環における3つ以下の−(CH2)−基を、−C(O)−、−NH−、−S−および−O−から独立に選択される基によって場合によって置換することができ、
炭素環における3つ以下の−CH−基を−N−で場合によって置換することができ、
炭素環における4つ以下のH原子を、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C5〜C12アリール、C5〜C12アリールアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアミノから独立に選択される基で場合によって置換することができる。
【0115】
この好ましい染料は、ジチオレンリガンドが架橋炭素環であることを特徴とする。
【0116】
1つの好ましい形態において、jは1であり、kは2である。さらに、染料分子は、好ましくは、−C(Me)2−架橋基を含む。換言すれば、リガンドは、好ましくはボルネン誘導体である。ボルネン誘導体は、比較的低コストで商業的に容易に入手可能であるため有利である。
【0117】
Wで表される基は、親水性を染料分子に付与する。好ましくは、Wは、式:−(CH2)t−SO3Z(式中、tは0、または1から6の整数であり、Zは、Hまたは水溶性陽イオンである)の基である。より好ましくは、本発明の本実施形態において、Wは、式:−CH2SO3H、−CH2SO3Naまたは−CH2SO3Kの基である。
【0118】
本発明による特に好ましい染料分子を以下の式(III)に示す。
【0119】
【化10】
【0120】
この化合物は、スペクトルの可視領域における吸収が最小限であることと相俟って優れた水分散性を有する。この化合物は、781nmのλmaxの近赤外領域で強く吸収する。
【0121】
「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書では、一般には炭素と水素からなる一価の基を意味するように用いられる。したがって、ヒドロカルビル基は、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基(直鎖および分枝鎖形態)、炭素環基(ビシクロオクチルおよびアダマンチルなどのポリシクロアルキル基を含む)およびアリール基、ならびにアルキルシクロアルキル、アルキルポリシクロアルキル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、シクロアルキルアリールおよびシクロアルケニルアリール基などの前述の基の組合せを含む。同様に、「ヒドロカルビレン」という用語は、上述の一価のヒドロカルビル基に対応する二価の基を意味する。
【0122】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基における4つ以下の−C−C−および/または−C−H部分は、−O−、−NRw−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)NRw−、−S(O)−、−SO2−、−SO2O−および−SO2NRw−(式中、Rwは、H、C1〜C12アルキル、C6〜C12アリールまたはC6〜C12アリールアルキルから選択される基である)から選択される1つまたは複数の部分で場合によって置換されていてもよい。
【0123】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基が1つまたは複数の−C=C−部分を含有する場合は、4つ以下の−C=C−部分は、−C=N−で場合によって置換されていてもよい。したがって、「ヒドロカルビル」という用語は、ヘテロアリール、エーテル、チオエーテル、カルボキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、チオール、アミド、エステル、ケトン、スルホキシド、スルホン酸塩およびスルホアミド等の部分を含むことができる。
【0124】
特に指定がなければ、ヒドロカルビル基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、上記に定めた親水基(例えば−SO3H、−SO3K、−CO2Na、−NH3+および−NMe3+等)、または上記に定めたポリマー基(例えばポリエチレングリコールから誘導されたポリマー基)から独立に選択される4つ以下の置換基を含んでいてもよい。
【0125】
本明細書に用いられるように、「架橋環状基」という用語は、1、2、3または4の架橋原子を含有するC4〜C30の炭素環(好ましくはC6〜C20の炭素環)を含む。架橋炭素環基の例は、ボルニルおよびトリプチセニル、ならびにそれらの誘導体である。「架橋環状基」という用語は、アダマンテニルおよびトリシクロ[5.2.1.0]デカニル、ならびにそれらの誘導体などの基を含む架橋多環状基をも含む。
【0126】
特に指定がなければ、「架橋環状基」という用語は、1、2、3または4の炭素原子が、N、SまたはOから選択されるヘテロ原子で置換される架橋炭素環(すなわち架橋ヘテロ環)をも含む。炭素環における炭素原子が、ヘテロ原子で置換されるという場合は、−CH−が−N−で置換され、−CH2−が−O−で置換され、または−CH2−が−S−で置換されることを意味する。したがって、「架橋環状基」という用語は、キヌクリジニルおよびトロパニルなどの架橋ヘテロ環状基を含む。特に指定がなければ、架橋環状基のいずれか、上述の置換基のうちの1、2、3または4つの置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0127】
「アリール」という用語は、本明細書では、フェニル、ナフチルまたはトリプチセニルなどの芳香族基を意味するように用いられる。C6〜C12アリールは、例えば、あらゆる置換基を除いて、6から12の炭素原子を有する芳香族基を意味する。「アリレン」という用語は、勿論、上述の一価のアリール基に対応する二価の基を意味する。アリールの言及は、適宜アリレンを暗示的に含む。
【0128】
「ヘテロアリール」という用語は、1、2、3または4つの炭素原子が、N、OまたはSから選択されるヘテロ原子で置換されたアリール基を意味する。ヘテロアリール(またはヘテロ芳香族)基の例としては、ピリジル、ベンズイミダゾール、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリニル、イソインドリニル、インドリル、イソインドリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソキサゾロニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピペリジニル、モルホニリル、ピロリジニル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ベンゾピリミジニル、ベンゾトリアゾール、キノキサリニル、ピリダジルおよびクマリニル等が挙げられる。「ヘテロアリレン」という用語は、勿論、上述の一価のヘテロアリール基に対応する二価の基を意味する。ヘテロアリールの言及は、適宜ヘテロアリレンを含む。
【0129】
特に指定がなければ、アリール、アリレン、ヘテロアリールおよびヘテロアリレン基は、以下に記載される置換基のうちの1、2、3、4または5つの置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0130】
場合によって置換されている基(例えば、架橋環状基、アリール基またはヘテロアリール基に関して)が言及される場合は、随意の置換基は、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、−(OCH2CH2)dORd(式中、dは2から5000の整数であり、RdはH、C1〜C8アルキルまたはC(O)C1〜C8アルキルである)、シアノ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、チオール、−SRv、−NRuRv、ニトロ、フェニル、フェノキシ、−CO2Rv、−C(O)Rv、−OCORv、−SO2Rv、−OSO2Rv、−SO2ORv、−NHC(O)Rv、−CONRuRv、−CONRuRvおよび−SO2NRuRv(式中、RuおよびRvは、水素、C1〜C12アルキル、フェニルまたはフェニル−C1〜C8アルキル(例えばベンゼン)から独立に選択される)から独立に選択される。例えば、基が複数の置換基を含有する場合は、異なる置換基が、異なるRuまたはRv基を有することができる。例えば、ナフチル基は、3つの置換基、すなわち−SO2NHPh、−CO2Me基および−NH2で置換されていてもよい。
【0131】
「アルキル」という用語は、本明細書では、直鎖および分枝形態のアルキル基を意味するように用いられる。アルキル基は、O、NまたはSから選択される1、2または3つのヘテロ原子に割り込まれていてもよい。アルキル基は、1、2または3つの二重および/または三重結合に割り込まれていてもよい。しかし、「アルキル」という用語は、ヘテロ原子の割込みまたは二重もしくは三重結合の割込みの内アルキル基を通常意味する。「アルケニル」基が具体的に言及される場合は、これは、上記「アルキル」の定義を制限するものと見なされることを意図するものではない。
【0132】
例えばC1〜C12アルキルが言及される場合は、そのアルキル基は、1と12の間の任意の数の炭素原子を有していてもよいことを意味する。特に指定がなければ、「アルキル」の言及は、C1〜C12アルキル、好ましくはC1〜C6アルキルを意味する。
【0133】
「アルキル」という用語は、シクロアルキル基をも含む。本明細書に用いられているように、「シクロアルキル」という用語は、シクロアルキル、ポリシクロアルキルおよびシクロアルケニル基、ならびにシクロアルキルアルキル基などのこれらと直鎖状アルキル基との組合せを含む。シクロアルキル基は、O、NまたはSから選択される1、2または3つのヘテロ原子に割り込まれていてもよい。しかし、「シクロアルキル」という用語は、ヘテロ原子割込みのないシクロアルキル基を通常意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルメチルおよびアダマンチル基が挙げられる。
【0134】
「アリールアルキル」という用語は、ベンジル、フェニルエチルおよびナフチルメチルなどの基を意味する。
【0135】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、本明細書では、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のいずれかを意味するように使用される。しかし、通常は、塩素またはフッ素置換基を意味する。
【0136】
「・・・を含む置換基」(例えば「親水基を含む置換基」、「酸基(その塩を含む)を含む置換基」および「ポリマー鎖を含む置換基」等)が言及される場合は、問題の置換基は、全面的または部分的に特定の基から構成されていてもよい。例えば、「酸基(その塩を含む)を含む置換基」は、式:−(CH2)j−SO3K(式中、jは、0または1から6の整数である)の基であってもよい。したがって、この脈絡において、「置換基」という用語は、例えば、特定の基が結合されたアルキル基であってもよい。しかし、特定の基が存在するのであれば、置換基の正確な性質は所望の機能にとって重要でないことが容易に理解されるであろう。
【0137】
本明細書に記載されているキラル化合物は、立体記述子が与えられていなかった。しかし、化合物が立体異性体形態で存在しうる場合は、そのすべての可能な立体異性体および混合物(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、およびラセミ混合物等を含むすべての組合せ)が含まれる。
【0138】
同様に、化合物が、いくつかの位置異性体形態で存在しうる場合は、そのすべての可能な位置異性体および混合物が含まれる。
【0139】
疑問を回避するために、「1つの・・・を含む」などの句における1つの(「a」(または「an」))という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、「1つおよびただ1つ」を意味するものではない。「少なくとも1つ」という用語が具体的に用いられる場合は、「1つ(a)」の定義を制限するものと見なされるべきではない。
【0140】
明細書を通じて、「含んでいる」という用語、または「含む」などの変型は、指定の要素、整数または工程を含むものと見なされるべきであるが、他の要素、整数または工程を除外するものと見なされるべきではない。
【0141】
(インクジェットインク)
本発明の方法は、インクジェットインク組成物、好ましくは水系インクジェットインクに特に好適に用いられる。したがって、本発明は、IR吸収染料を含むインクジェットにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0142】
水系インクジェットインク組成物は、文献でよく知られており、水に加えて、補助溶媒、殺生剤、金属封鎖剤、保湿剤、pH調節剤、粘度改質剤、浸透剤、湿潤剤および界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0143】
補助溶媒は、典型的には水溶性有機溶媒である。好適な水溶性有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよび2−プロパノールなどのC1〜C4アルキルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビトール、ソルビタン、モノ酢酸グリセロール、二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロールおよびスルホン酸塩、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0144】
他の有用な水溶性有機溶媒としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、e−カプロラクタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、モルホリン、N−エチルモルホリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびそれらの組合せなどの極性溶媒が挙げられる。
【0145】
インクジェットインクは、保水性および湿潤特性をインク組成物に付与するための湿潤剤または保湿剤として機能することができる高沸点水溶性有機溶媒を含有していてもよい。当該高沸点水溶性有機溶媒は、沸点が180℃以上の溶媒を含む。沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、分子量が2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0146】
インクジェットインクにおける全水溶性有機溶媒含有量は、全インク組成物に対して、好ましくは約5から50重量%、より好ましくは10から30重量%である。
【0147】
他の好適な湿潤剤または保湿剤としては、糖類(単糖類、オリゴ糖類および多糖類を含む)およびそれらの誘導体(例えばマルチトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸塩、アルドン酸およびウロン酸等)が挙げられる。
【0148】
インクジェットインクは、水性インクの記録媒体への浸透を加速させるための浸透剤を含んでいてもよい。好適な浸透剤としては、多価アルコールアルキルエーテル(グリコールエーテル)および/または1,2−アルキルジオールが挙げられる。好適な多価アルコールアルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。好適な1,2−アルキルジオールの例は、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールである。浸透剤は、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよび1,8−オクタンジオールなどの直鎖炭化水素ジオールから選択されうる。グリセロールを浸透剤として使用してもよい。
【0149】
浸透剤の量は、全インク組成物に対して好ましくは1から20重量%、より好ましくは1から10重量%の範囲である。
【0150】
インクジェットインクは、界面活性剤、特に陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤を含有していてもよい。有用な陰イオン界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アシルメチルタウリンおよびジアルキルスルホスクシン酸などのスルホン酸型;アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;例えば脂肪酸塩およびアルキルサルコシン塩のようなカルボン酸型;ならびにアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩およびグリセロリン酸エステル塩などのリン酸エステル型が挙げられる。陰イオン界面活性剤の具体例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウムおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩である。
【0151】
好適な非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルおよびポリオキシエチレンアルキルアミドなどの酸化エチレン付加物型;グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルおよび糖アルキルエステルなどのポリオールエステル型;多価アルコールアルキルエーテルなどのポリエーテル型;ならびにアルカノールアミン脂肪酸アミドなどのアルカノールアミド型が挙げられる。非イオン界面活性剤の具体例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル;ならびにオレイン酸ポリオキシエチレン、オレイン酸ポリオキシエチレンエステル、ジステアリン酸ポリオキシエチレン、ラウリル酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンおよびステアリン酸ポリオキシエチレンである。2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールまたは3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール界面活性剤を使用してもよい。
【0152】
インクジェットインクは、そのpHを7から9に調節するためのpH調節剤を含有していてもよい。好適なpH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムおよび酒石酸水素カリウムなどの塩基性化合物;アンモニア;ならびにメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、塩酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリンおよびプロパノールアミンなどのアミンが挙げられる。
【0153】
インクジェットインクは、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン、3,4−イソチアゾリン−3−オンまたは4,4−ジメチルオキサゾリジンなどの殺生剤を含んでいてもよい。
【0154】
インクジェットインクは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属イオン封鎖剤を含有していてもよい。
【0155】
インクジェットインクは、一重項酸素失活剤を含有していてもよい。インク中に一重項酸素失活剤が存在すると、IR吸収染料が分解する傾向が低減する。失活剤は、染料分子の近傍で生成されるあらゆる一重項酸素を消費するため、染料分子の分解を最小限にする。過剰の一重項酸素失活剤は、染料の分解を最小限にし、そのIR吸収特性を長時間保持するのに有利である。好ましくは、一重項酸素失活剤は、アスコルビン酸、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(DABCO)、アジド(例えばアジドナトリウム)、ヒスチジンまたはトリプトファンから選択される。
【0156】
(インクジェットプリンタ)
上記方法におけるインクジェットインクをインクジェットプリンタのプリントヘッドと流動連絡するインク溜めに収容することができる。
【0157】
熱バブルジェットおよび圧電式プリンタなどのインクジェットプリンタは、当該技術分野でよく知られており、当業者の一般常識の一部を形成する。プリンタは、高速インクジェットプリンタであってもよい。プリンタは、好ましくは、ページ幅プリンタである。本発明に使用される好ましいインクジェットプリンタおよびプリントヘッドは、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
【0158】
第10/302,274号;
第6692108号;
第6672709号;
第10/303,348号;
第6672710号;
第6669334号;
第10/302,668号;
第10/302,577号;
第6669333号;
第10/302,618号;
第10/302,617号;
第10/302,297号;
【0159】
(プリントヘッド)
Memjetプリンタは、互いに隣り合わせに取りつけられてページ幅プリントヘッドを形成する2つのプリントヘッド集積回路を一般に有する。典型的には、プリントヘッドICは、2インチから8インチのサイズ幅を有することができるため、いくつかの組合せを使用して、所謂A4ページ幅プリントヘッドを製造することが可能である。例えば、7および3インチ、2および4インチまたは5および5インチの2つのプリントヘッドICを使用して、A4プリントヘッドを作ることが可能である(表示は7:3)。同様に、6および4(6:4)または5および5(5:5)の組合せを使用することが可能である。例えば、8および6インチプリントヘッド集積回路からA3プリントヘッドを構成することが可能である。写真印刷では、特にカメラにおいて、より小さいプリントヘッドを使用することが可能である。単一のプリントヘッド回路、または3つ以上の当該回路を使用して、必要なプリントヘッド幅を達成できることも理解されるであろう。
【0160】
次に、図17および18を参照して、プリントヘッドの好ましいプリントヘッド実施形態について説明する。プリントヘッド420は、長形部の形態をとる。図18に最もよく示されるように、プリントヘッド420の部品としては、支持部材421、フレキシブルPCB422、インク分配型423、インク分配板424、第1および第2のプリントヘッド集積回路(IC)425および426を含むMEMSプリントヘッド、およびバスバー427が挙げられる。
【0161】
支持部材421を金属またはプラスチックなどの任意の好適な材料から形成することができ、他の方法で押し出し、成形し、形成することができる。支持部材421は、他の部品を互いに相対的に適切な配列に保持しながら、プリントヘッド全体を硬化・強化するのに十分な強度を有している必要がある。
【0162】
フレキシブルPCBは、プリントヘッド420の長さを拡張し、第1および第2の電気部品428および429を含む。電気部品428および429は、フレキシブルコネクタ(不図示)に対応する。電気コネクタは、使用に際して、SoPECチップ(不図示)からの対応する出力コネクタと接触して配置される接触部450および460を含む。SoPECチップからのデータは、電気コネクタ428および429に沿って送られ、第1および第2のプリントヘッドICs425および426のそれぞれの端部に分配される。
【0163】
図19に示されるように、インク分配型423は、流体(すなわち着色インク、赤外インクおよび固着材)およびエアポンプからの加圧空気をプリントヘッド420(図18)の長さに沿って分配する複数の長形導管430を含む。インク分配型423の長さに沿って配置された流体孔431集合体(図20)は、流体および空気を導管430からインク分配型424に分配する。流体および空気は、プリンタ内の対応するソケット(不図示)に差し込まれるプラグ441(図21)に形成されたノズル440を介して供給される。
【0164】
(図20に示されるように)分配板424は、流体孔431から局所的に供給された流体を受け取り、より小さい分配孔432を通してプリントヘッドIC425および426に分配するように構成された多層構造体である。
【0165】
プリントヘッドIC425および426は、直列に配置され、より小さい分配孔432からのインクをプリントヘッドIC425および426における対応する孔(不図示)に供給できるように分配板424に接触して保持される。
【0166】
バスバー427は、プリントヘッドノズルのアクチュエータに駆動電流を供給するように配置された比較的高容量の導体である(以下により詳細に説明されている)。図20に最もよく示されるように、バスバー427は、一端がソケット433によって所定位置に保持され、両端がフレキシブルPCB422の循環翼434によって保持されている。バスバーは、プリントヘッドIC425を所定位置に保持する役割も果たしている。
【0167】
図18に最もよく示されるように、組み立てられると、フレキシブルPCB422は、他の部品に効果的に巻きつけられることによって、それらを互いに接触して保持する。この結合効果にもかかわらず、支持部材421は、プリントヘッド420全体の必要な硬度および強度の大部分を提供する。
【0168】
次に、上述のプリントヘッドに好適に使用されるプリントヘッドノズルの2つの形態(「熱屈曲アクチュエータ」および「バブル成形ヒータ素子アクチュエータ」)を説明する。
【0169】
(熱屈曲アクチュエータ)
熱屈曲アクチュエータにおいて、インクを含むノズル室、および室内に配置されたパドルに接続された熱屈曲アクチュエータを有するノズル機構が典型的に設けられる。熱アクチュエータデバイスは、ノズル室からインクを排出するように作動される。好ましい実施形態は、伝導トレースから伝導熱を供給するための一連のテーパ単位を含む特定の熱屈曲アクチュエータである。アクチュエータは、ノズル室の溝付き壁を通じて受け取られるアームを介してパドルに接続される。アクチュエータアームは、ノズル室壁の溝の表面に実質的に接合するように接合形を有する。
【0170】
最初に図22(a)〜(c)を参照すると、本実施形態のノズル機構の基本動作の概略図が示されている。ノズル室501が配置されたウェハ基体を通じてエッチングされうるインク導入チャネル503によって、ノズル室501にインク502が充填される。ノズル室501は、その周りにインクメニスカスが形成されるインク排出口504をさらに含む。
【0171】
ノズル室501の内部には、ノズル室501の壁の水を通じてアクチュエータ508に相互接続されるパドル型デバイス507が存在する。アクチュエータ508は、ヒータ手段、例えば支柱510の端部に隣接するヒータ手段509を含む。支柱510は基体に固定される。
【0172】
液滴をノズル室501から排出するのが望ましい場合は、図22(b)に示されるように、ヒータ手段509は、熱膨張するように加熱される。好ましくは、ヒータ手段509自体、またはアクチュエータ508の他の部分は、屈曲効率が以下の式で定められる場合の高い屈曲効率を有する材料から構成される。
【0173】
屈曲効率=ヤング率×(熱膨張係数)/(密度×比熱容量)
【0174】
ヒータ素子に好適な材料は、ガラス材料を屈曲させるように形成されうる銅ニッケル合金である。
【0175】
ヒータ手段509は、支柱510付近の小さい熱膨張によってパドル端部が大きく移動するように、活性化の効果がパドル端部507で拡大されるように、理想的には支柱510の端部に隣接して配置される。
【0176】
ヒータ手段509およびそれによるパドルの移動は、急速に図22(b)に示されるように膨張するインクメニスカス505の周りの圧力を全体的に上昇させる。ヒータ電流が押し出され、インクがインクチャネル503から流入するのに加えて、口504から排出される。
【0177】
続いて、パドル507は、不活性化されて、再び休止位置に戻る。その不活性化により、インクが全体的にノズル室に再流入する。ノズルリム外側のインクの順方向移動、および対応する逆流により、印刷媒体に進む液滴512が全体的に絞られ、離脱する。メニスカス505の崩壊により、インクが、インク流動チャネル503を介してノズル室502へ全体的に吸引される。そのうちに、図22(a)の位置に再び到達され、続いて、インクの他の液滴の排出に向けてノズル室の用意が調うように、ノズル室501を再び満たす。
【0178】
図23は、ノズル機構の側面斜視図を示す図である。図24は、図23のノズル機構のアレイに沿う断面図を示す図である。これらの図において、先に導入された要素の番号が保持されている。
【0179】
第1に、アクチュエータ508は、一連のテーパアクチュエータ単位、例えば窒化チタン層517の上部に形成された上部ガラス部(非晶質二酸化珪素)516を含むアクチュエータ単位515を含む。あるいは、より高い屈曲効率を有する銅ニッケル合金層(以降キュプロニッケルと呼ぶ)を利用することが可能である。
【0180】
窒化チタン層517は、テーパ形態であり、そのため支柱510の端部付近で抵抗加熱が生じる。隣り合う窒化チタン/ガラス部515は、アクチュエータ508を機械構造的に支持するブロック部519で相互接続される。
【0181】
ヒータ手段509は、理想的には、長形であり、加熱すると、アクチュエータ508の軸に沿って発揮される屈曲力を最大にするように離れて配置される複数のテーパアクチュエータ単位515を含む。溝は、隣り合うテーパ単位515の間に定められ、隣り合うアクチュエータ508に対する各アクチュエータ508のわずかな差動作に対応する。
【0182】
ブロック部519は、アーム520に相互接続される。アーム520は、溝、例えばノズル室501の側面に形成された溝522によって、ノズル室501の内側のパドル507に接続される。溝522は、アーム520の周りのインクの流出を最小限にするように、アーム520の表面に接合するように全体的に設計される。インクは、溝522の周りの表面張力効果によって、ノズル室501内に全体的に保持される。
【0183】
アーム520を作動することが望まれる場合は、必要な力を提供し、ノズル機構の回路を制御する下方CMOS層506に接続するブロック部519内のバイアを介して、窒化チタン層517に伝導電流が流される。伝導電流によって、支柱510に隣接する窒化物層517が加熱され、それにより、アーム20が全体的に上方に屈曲し、その結果インクがノズル504から排出される。排出された液滴は、先述のように、インクジェットプリンタに対する通常の様式でページ上に印刷される。
【0184】
単一のプリントヘッドを作るようにノズル機構のアレイを形成することが可能である。例えば、図24には、プリントヘッドアレイを形成するように介在配列線でレイアウトされた図23の多数のインク排出ノズル機構を含む部分的に分画された様々なアレイ図が示されている。勿論、完全色アレイ等を含む異なるタイプのアレイを構築することも可能である。
【0185】
その内容が相互参照により全面的に組み込まれている本出願人の「Image Creation Method and Apparatus(画像作成方法および装置)(IJ41)」という名称の米国第6,243,113号に記載されているステップの好適な修正を通じて、標準的なMEMS技術を利用して、記載のプリントヘッドシステムの構成を進めることが可能である。
【0186】
(バブル成形ヒータ素子アクチュエータ)
図17を参照して、バブル成形ヒータ素子アクチュエータの単位セル1001は、ノズルリム1004を有するノズル1003を内部に有するノズル板1002と、ノズル板を貫通する開口1005とを備える。ノズル板1002は、次にエッチングされる犠牲材料上に、化学蒸着(CVD)によって蒸着された窒化シリコン構造体からプラズマエッチングされる。
【0187】
プリントヘッドは、また、エッチノズル1003に対して、ノズル板を支持する側壁1006と、壁およびノズル板1002で定められる室1007と、多層基体1008と、多層基体を通って基体の遠方側(不図示)に延びる導入路1009とを含む。輪状長形ヒータ素子1010が、懸垂ビームの形態をとるように室1007内に懸垂される。図示されたプリントヘッドは、リソグラフ法によって形成されるマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)構造体である。
【0188】
プリントヘッドが使用される場合は、インク溜め(不図示)からのインク1011は、室を満たすように、導入路1009を介して室1007に浸入する。その後、ヒータ素子1010は、1マイクロ秒より幾分短い時間にわたって加熱されるため、加熱は熱パルスの形態をとる。ヒータ素子1010は、素子が加熱されると、インクに蒸気バブルが生成されるように、室1007内でインク1011と熱接触することが理解されるであろう。よって、インク1011は、バブル成形液を構成する。
【0189】
バブル1012は、生成されると、室1007内の圧力を上昇させ、それによって、インク1011の液滴1016がノズル1003を通じて排出される。リム1004は、液滴が方向を誤る可能性を最小にするように排出される液滴1016の誘導を支援する。
【0190】
1つの導入路1009にノズル1003および室1007が1つしか存在しない理由は、素子1010の加熱およびバブル1012の形成に応じて室内で生成された圧力波が、隣接する室および対応するノズルに影響を与えないようにするためである。
【0191】
室1007内の圧力の上昇により、インク1011がノズル1003を通じて押し出されるばかりでなく、一部のインクが導入路1009を通じて逆流する。しかし、導入路1009は、長さが約200から300ミクロンであり、直径が約16ミクロンである。したがって、実質的に粘性抵抗力が存在する。その結果、室1007の圧力上昇の支配的な効果は、インクを、導入路9を通じて逆流させずに、ノズル1003を通じて排出液滴1016として追い出すことである。
【0192】
図17に示されるように、インク液滴1016の排出は、液滴が離脱する前にその「絞り段階」中に示される。この段階において、バブル1012は、最大経に既に達しており、次いで崩壊点1017に向かって崩壊を開始している。
【0193】
崩壊点1017に向かうバブル1012の崩壊によって、ノズル1003内(液滴の側面1018)から一部のインク1011が引き込まれ、一部が導入路1009から崩壊点に向かって引き込まれる。このようにして引き込まれたインク1011の大半は、ノズル1003から引き込まれ、離脱する前に液滴16の基部に環状ネック1019を形成する。
【0194】
液滴1016は、離脱するために、表面張力を克服するのに一定の運動量を必要とする。インク1011がバブル1012の崩壊によりノズル1003から引き込まれると、ネック1019の直径が小さくなることにより、液滴を保持している全表面張力の量を低下させるため、ノズルから排出される液滴の運動量は、液滴を離脱させるのに十分なものとなる。
【0195】
液滴1016が離脱すると、バブル1012が崩壊点1017まで崩壊するのに伴って、矢印1020で示されるようにキャビテーション力が生じる。キャビテーションが効果を発揮しうる崩壊点1017の近くには固体表面が存在しないことがわかるであろう。
【0196】
(インクジェットカートリッジ)
上記の方法におけるインクジェットインクは、インクカートリッジに収容されていてもよい。インクジェットプリンタ用インクカートリッジは、当該技術分野でよく知られており、多くの形態で入手可能である。好ましくは、インクジェットインクカートリッジは、交換可能である。本発明に好適に使用されるインクジェットカートリッジは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている以下の特許出願に記載されている。
第6428155号;
第10/171,987号;
【0197】
1つの好ましい形態において、インクカートリッジは、
複数の貯蔵部を定める筐体であって、貯蔵部の少なくとも1つは、人間の目に見える印刷情報のための着色剤を収容し、他の貯蔵部の少なくとも1つは、上述のインクジェットインクを収容する筐体を備える。
【0198】
好ましくは、各貯蔵部は、いくつかの印刷ページに対する意図された印刷範囲に相対的な内容の期待されたレベルの使用に対応してサイズ設定される。
【0199】
次に、典型的なインクカートリッジを簡単に説明する。図12は、交換可能なインクカートリッジ627の完成組立品を示す図である。それは、固着材644、接着剤630、シアン631、マゼンタ632、イエロー633、ブラック634および赤外635インクを貯蔵するための袋または室を有する。カートリッジ627は、ベース型637にマイクロエアフィルタ636をも収容する。図9に示されるように、マイクロエアフィルタ636は、ハウス639を介してプリンタ内部のエアポンプ638と接続する。これは、濾過空気をプリントヘッド705に供給して、ノズルを詰まらせる恐れのある微粒子のMemjet(商標)プリントヘッド705への侵入を防止する。カートリッジ627内にエアフィルタ636を組み込むことによって、フィルタの動作寿命がカートリッジの寿命に効果的に関連づけられる。これにより、必要な間隔でフィルタを洗浄または交換するユーザに頼るのではなく、フィルタをカートリッジとともに交換されることになる。また、接着剤および赤外インクは、可視インクおよびエアフィルタとともに補給されることによって、消費材の消耗によるプリンタ動作の中断の頻度が低減される。
【0200】
カートリッジ627は、薄肉ケース640を有する。インク袋631〜635および固着剤袋644は、カートリッジを留めるピン645によってケース内に懸垂される。単一の接着剤袋630は、ベース型637に収容される。これは、3000ページ(1500シート)を印刷・接着する能力を有する完全にリサイクル可能な製品である。
【0201】
(基体)
上述のように、本発明の方法は、Hyperlabel(商標)およびネットページシステムと特に好適に併用される。当該システムは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている上記の特許出願に詳述されている。
【0202】
したがって、本発明は、IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法を提供する。
【0203】
好ましくは、基体は、界面を含む。好ましくは、染料は、ネットページおよび/またはHyperlabel(商標)システムに好適に使用される符号化データの形態で配置される。例えば、符号化データは、品目の識別情報を示していてもよい。好ましくは、符号化データは、基体の界面の実質的な部分(基体の20%、50%または90%を上回る部分)に配置される。
【0204】
好ましくは、基体は、その上に配置された染料を感知デバイスで検出できるようにIR反射性を有する。基体は、プラスチック(例えばポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミド等)、紙、金属またはそれらの組合せなどの任意の好適な材料で構成されていてもよい。
【0205】
ネットページ用途では、基体は、好ましくは紙である。Hyperlabel(商標)用途では、基体は、好ましくはタグ、ラベル、包装材料、または品目の表面である。典型的には、タグおよびラベルは、プラスチック、紙、またはそれらの組合せで構成される。
【0206】
本発明のHyperlabel(商標)用途によれば、基体は、感知デバイスおよびコンピュータシステムを介してユーザと対話するように構成された対話式製品であってもよく、対話式製品は、
識別情報を有する品目と、
品目に付随し、品目に関する情報、および品目の識別情報を示す符号化データが表示された界面であって、前記符号化データは、上述のIR吸収染料を含む界面とを備える。
【0207】
(ネットページおよびHyperlabel(商標))
本発明のネットページ用途については、上記の本発明の第4および第5の態様で概ね説明されている。本発明のHyperlabel(商標)用途については、上記の本発明の第6および第7の態様で概ね説明されている。
【0208】
次に、ネットページおよびHyperlabel(商標)を詳細に説明する(注:Memjet(商標)およびHyperlabel(商標)は、Silverbrook Research Pty Ltd(オーストラリア)の商標である)。すべての実施態様が、基本システムについて以下に考察する具体的な内容および範囲のすべてまたは大半を必ずしも具体化するものでないことが理解されるであろう。しかし、本発明の好ましい実施形態および態様が機能する脈絡を理解することを試みる際に、外部参照の必要性を抑えるために、システムを最も完全な形態で説明する。
【0209】
簡潔に要約すると、ネットページシステムの好ましい形態は、マップ表面、すなわちコンピュータシステムに維持された表面のマップの参照を含む物理的表面の形態のコンピュータインターフェースを採用する。マップ参照は、適切な感知デバイスによって検索されうる。具体的な実施態様に応じて、マップ参照を可視的または不可視的に符号化することができ、マップ表面に対する局所的検索により、マップ内およびマップ間での明瞭なマップ参照が生成されるように定めることができる。コンピュータシステムは、マップ表面の特徴に関する情報を収容することが可能であり、マップ表面とともに使用される感知デバイスによって供給されるマップ参照に基づいて当該情報を検索することが可能である。したがって、検索された情報は、オペレータの表面特徴との対話に応じて、オペレータの代わりにコンピュータシステムによって開始される行動の形態をとることが可能である。
【0210】
その好ましい形態において、ネットページシステムは、ネットページの生成、および人間によるネットページとの対話に依存する。これらは、普通紙に印刷されるテキスト、図形および画像であるが、対話式ウェブページのように機能する。情報は、人間の裸眼には実質的に不可視のインクを使用して各ページに符号化される。しかし、インク、そして符号化データを光撮像ペンによって感知し、ネットページシステムに送信することが可能である。
【0211】
好ましい形態において、各ページ上の活性ボタンおよびハイパーリンクをペンでクリックして、ネットワークからの情報を要求し、または参照をネットワークサーバに伝えることが可能である。一実施形態において、ネットページ上に手で書かれたテキストが自動的に認識され、ネットページシステムにおけるコンピュータテキストに変換されて、書式を埋めることを可能にする。他の実施形態において、ネットページに記録された署名が、自動的に検証されて、電子商取引を安全に認証することを可能にする。
【0212】
図1に示されるように、印刷ネットページ1は、印刷ページに物理的に、かつペンとネットページシステムの間の通信を介して、「電気的に」、ユーザが埋めることができる対話式書式を表すことが可能である。例は、氏名および住所欄、ならびに提出ボタンを含む「申請」書式を示している。ネットページは、可視インクを使用して印刷された図形データ2と、不可視インクを使用してタグ4の集合体として印刷された符号化データ3とからなる。ネットページネットワーク上に格納された対応するページ記述5は、ネットページの個々の要素を記述する。特に、各対話式要素(すなわち例におけるテキスト欄またはボタン)の種類および空間的範囲(ゾーン)を記述して、ネットページシステムが、ネットページを介して入力を精確に解釈することを可能にする。例えば、提出ボタン6は、対応する図形8の空間的範囲に対応するゾーン7を有する。
【0213】
図2に示されるように、その好ましい形態が図6および7に示され、以下により詳細に記載されているネットページペン101は、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェブ端末75またはネットページプリンタ601と連係して働く。ネットページプリンタは、家庭、事務所またはモバイル用途のためのインターネット接続印刷機器である。ペンは、無線であり、短距離無線リンク9を介してネットページネットワークと安全に通信する。短距離通信は、PC、ウェブ端末またはネットページプリンタに埋め込まれるか、または個別の中継デバイス44によって提供されるローカル中継機能によってネットページネットワークに中継される。中継機能は、短距離および長距離通信機能の双方を組み込む移動電話または他のデバイスによっても提供されうる。
【0214】
他の実施形態において、ネットページペンは、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタまたは中継デバイスに対するUSBまたは他の直列接続などの有線接続を利用する。
【0215】
その好ましい形態が図9から11に示され、以下により詳細に記載されているネットページプリンタ601は、いずれも対話式ネットページとして高品質に印刷された個人化新聞、雑誌、カタログ、パンフレットおよび他の刊行物を周期的またはオンデマンドで配信することができる。パーソナルコンピュータと異なり、ネットページプリンタは、ユーザの台所内、朝食の食卓付近、または家庭の一日の出発点付近などの朝のニュースが最初に消費される場所の近くに例えば壁掛けされうる機器である。それは、テーブルトップ、デスクトップ、携帯およびミニチュアバージョンの形でも入手される。
【0216】
それらの消費点で印刷されたネットページは、紙の使いやすさと、適時性および対話式媒体との対話性とを兼ね備える。
【0217】
図2に示されるように、ネットページペン101は、印刷ネットページ1(または品目201)上の符号化データと対話し、その対話を短距離無線リンク9を介して中継器に伝達する。中継器は、その対話を解釈に向けて該当するネットページページサーバ10に送る。適切な状況において、ページサーバは、対応するメッセージをネットページアプリケーションサーバ13上で実行されるアプリケーションコンピュータソフトウェアに送る。次に、アプリケーションサーバは、発信元プリンタで印刷される応答を送ることができる。
【0218】
代替的な実施形態において、PC、ウェブ端末、ネットページプリンタまたは中継デバイスは、ローカルまたは遠隔ウェブサーバを含むローカルまたは遠隔アプリケーションソフトウェアと直接通信することができる。関連して、出力は、ネットページプリンタによる印刷に限定されない。出力をPCまたはウェブ端末に表示することも可能であり、対話は、紙ベースではなく、画面ベース、またはそれらの組合せでありうる。
【0219】
ネットページシステムは、高速マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ベースのインクジェット(Memjet(商標))プリンタと併用することによって、好ましい実施形態においてはるかに便利になる。この技術の好ましい形態において、比較的高速および高品質印刷が、消費者にとってより手頃になる。その好ましい形態において、ネットページ刊行物は、容易なナビゲーションおよび快適な操作のために装丁された、両側に完全色で印刷された一連の文字サイズ光沢ページなどの、伝統的なニュース雑誌の物理的特徴を有する。
【0220】
ネットページプリンタは、可用性が増大するブロードバンドインターネットアクセスを利用する。米国の家庭の95%が、ケーブルサービスを利用することができ、そのうちの20%が、ブロードバンドインターネットアクセスを提供するケーブルモデムサービスを既に利用できる。ネットページプリンタは、より低速の接続で動作することも可能であるが、配信時間が長く、画質も低下する。実際、既存の消費者向けインクジェットおよびレーザプリンタを使用してネットページシステムを使用可能にできるが、システムが、より低速になるため、消費者の立場からはより受け入れがたいものとなる。他の実施形態において、ネットページシステムは、プライベートイントラネット上で運用される。さらに他の実施形態において、ネットページシステムは、単一のコンピュータ、またはプリンタなどのコンピュータ動作可能デバイス上で運用される。
【0221】
ネットページネットワーク上のネットページパブリケーションサーバ14は、印刷品質の刊行物をネットページプリンタに配信するように構成される。定期刊行物は、ポイントキャスティングおよびマルチキャスティングインターネットプロトコルを介して、購読するネットページプリンタに自動的に配信される。個人化刊行物は、フィルタリングされ、個々のユーザプロフィルに応じてフォーマットされる。
【0222】
ネットページプリンタを任意の数のペンを支えるように構成することが可能であり、ペンは、任意の数のネットページプリンタとともに機能することが可能である。好ましい実施態様において、各ネットページペンは、固有の識別子を有する。家庭は、家族の各メンバーに1つずつ割り当てられる着色ネットページの集合を有することができる。これにより、各ユーザは、ネットページパブリケーションサーバまたはアプリケーションサーバに対して特異的なプロフィルを維持することが可能になる。
【0223】
ネットページペンをネットペ−ジ登録サーバ11で登録し、1つまたは複数の支払カード勘定とリンクさせることも可能である。これにより、ネットページペンを使用して、電子商取引の支払を安全に認証することが可能になる。ネットページ登録サーバは、ネットページペンで取り込まれた署名を既に登録されている署名と比較して、電子商取引サーバに対するユーザの識別情報を認証することを可能にする。他の生体計測を用いて、識別情報を検証することも可能である。ある種のネットページペンは、ネットページ登録サーバによる方法と同様にして検証される指紋走査を含む。
【0224】
ネットページプリンタは、ユーザ干渉を介さずに朝刊などの刊行物を配信することができるが、不要な迷惑メールを配信しないように構成することが可能である。その好ましい形態において、申し込まれた、または認証された発信源からの刊行物のみを配信する。この点において、ネットページプリンタは、電話番号または電子メールアドレスを知っている迷惑メーラに見えるファクシミリまたは電子メール取引とは異なる。
【0225】
(1.ネットページシステムアキテクチャ)
システムにおける各オブジェクトモデルは、統一モデリング言語(UML)クラスダイアグラムを用いて記述される。クラスダイアグラムは、関係によって接続されたオブジェクトクラスの集合体からなり、ここでは2種類の関係、すなわち連合および総合が対象となる。連合は、オブジェクト間のある種の関係、すなわちクラスのインスタンス間の関係を表す。総合は、実際のクラスに関し、以下のように理解することができる。クラスがそのクラスのすべてのオブジェクトの集合体であると考えられ、クラスAがクラスBの総合である場合は、Bは、単にAの部分集合である。UMLは、二次的なモデリング、すなわちクラスのクラスを直接支えることはない。
【0226】
各クラスは、クラスの名称がラベルされた長方形である。それには、水平線によって名称と分離されたクラスの属性のリスト、および水平線によって属性リストと分離されたクラスの動作のリストが収容される。しかし、続くクラスダイアグラムでは、動作がモデル化されることはない。
【0227】
連合は、それぞれの末端が連合の多重度で場合によってラベルされた、2つのクラスを合わせる線として描かれる。デフォルト多重度は1である。星印(*)は、「多く」の多重度、すなわち0以上を示す。各連合は、その名称で場合によってラベルされ、それぞれの末端が対応するクラスの役割で場合によってラベルされる。開いた菱形は、凝集連合(「の一部である」)を示し、連合線の凝集物末端に描かれる。
【0228】
総合関係(「である」)は、2つのクラスを合わせる実線として描かれ、総合末端に矢印(開いた三角形の形態)が存在する。
【0229】
クラスダイアグラムが多数のダイアグラムに分解される場合は、複製される任意のクラスが、それを定める主要ダイアグラムを除いてすべて破線の輪郭で示される。それは、定められる場合にのみ属性で示される。
【0230】
(1.1 ネットページ)
ネットページは、その上にネットページネットワークが構築される土台である。ネットページは、公開された情報および対話式サービスに対する紙ベースのユーザインターフェースを提供する。
【0231】
ネットページは、ページのオンライン記述に関して不可視的にタグ付けされた印刷ページ(または他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバによって永続的に維持される。ページ記述は、テキスト、図形および画像を含むページの可視的なレイアウトおよび内容を記述する。それは、ボタン、ハイパーリンクおよび入力フィールドを含むページ上の入力要素をも記述する。ネットページは、ネットページペンでその表面に作成されたマークをネットページシステムによって同時に取り込み、処理することを可能にする。
【0232】
多数のネットページが、同一のページ記述を共用することが可能である。しかし、さもなければ同一のページを介する入力を区別することを可能にするために、各ネットページが固有のページ識別子に割り当てられる。このページIDは、非常に多くのネットページを区別するのに十分な精度を有する。
【0233】
ページ記述に対する各参照が、印刷タグで符号化される。タグは、それが表示される固有のページを識別することにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、ページ上のそれ自体の位置をも識別する。
【0234】
タグは、普通紙などの赤外反射性の任意の基体上に赤外吸収性インクで印刷される。近赤外波長は人間の目に不可視であるが、適切なフィルタを有する固体画像センサによって容易に感知される。
【0235】
タグは、ネットページペンにおけるエリア画像センサによって感知され、タグデータは、最も近いネットページプリンタを介してネットページシステムに送信される。ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してネットページプリンタと通信する。タグは、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。タグは、誤差補正可能に符号化されて、表面損傷に対して部分的に耐性が与えられる。
【0236】
ネットページページサーバは、印刷ネットページ毎に固有のページインスタンスを維持して、印刷ネットページ毎に、ページ記述での入力フィールドに対するユーザ供給値の異なる集合体を維持することを可能にする。
【0237】
ページ記述と、ページインスタンスと、印刷ネットページの関係を図4に示す。印刷ネットページは、印刷ネットページ文書45の一部であってもよい。ページインスタンスは、それを印刷したネットページプリンタ、および知られている場合は、それを要求したネットページユーザの双方に対応づけられる。
【0238】
図4に示されるように、1つまたは複数のネットページを、例えば、品目のラベル、包装または実質的な表面に印刷する場合は、物理的なオブジェクトに対応づけることもできる。
【0239】
(1.2 ネットページタグ)
(1.2.1 タグデータコンテンツ)
好ましい形態において、各タグは、それが表示される領域、その領域内におけるそのタグの場所を識別する。タグは、領域全体またはタグに関するフラグを含んでいてもよい。1つまたは複数のフラグビットは、例えば、タグ感知デバイスに信号を送って、タグの直接的な部分に対応づけられる機能を示すフィードバックを提供することができ、感知デバイスが、領域の記述を参照する必要がなくなる。ネットページペンは、例えば、ハイパーリンクのゾーンに存在するときは「活性部」LEDを照明することができる。
【0240】
以下のより明確に説明されるように、好ましい実施形態において、各タグは、初期検出を支援し、表面、または感知処理によって誘発された任意の反りの影響を最小限にする上で役立つ、容易に認識される不変構造体を含む。タグは、好ましくは、ページ全体を埋め、一回のクリックでも少なくとも1つのタグをページ上に確実に撮像できるように十分に小さく、かつ密に配置される。対話は無国籍であるため、ペンは、ページとの対話毎にページIDおよび位置を認識することが重要である。
【0241】
好ましい実施形態において、タグが示す領域は、ページ全体と一致するため、タグで符号化された領域IDは、タグが表示されるページのページIDと同義である。他の実施形態において、タグが示す領域は、ページまたは他の表面の任意の小領域でありうる。例えば、それは、対話式要素のゾーンと一致し、その場合は、領域IDは、対話式要素を直接識別することが可能である。
【0242】
好ましい形態において、各タグは、120ビットの情報を含む。領域IDは、典型的には、100ビットまでが割り当てられ、タグIDは、少なくとも16ビットが割り当てられ、残りのビットは、フラグ等に割り当てられる。タグ密度が、1平方インチ当たり64であると仮定すると、16ビットタグは、1024平方インチまでの領域サイズを支える。接合領域およびマップを単に使用することによって、タグID精度を高めることなく、より大きい領域を連続的にマッピングすることが可能である。100ビット領域IDは、2100(約1030または無数)の異なる領域を一意的に識別することを可能にする。
【0243】
(1.2.2 タグデータ符号化)
一実施形態において、(15,5)リードソロモン符号を用いて、120ビットのタグデータが冗長に符号化される。これによって、それぞれ6コードワードの15の4ビット記号からなる360の符号化ビットが生成される。(15,5)コードは、5つまでの記号誤差をコードワード毎に補正することを可能にする。すなわち、コードワード毎に33%までの記号誤差率を許容する。
【0244】
各4ビット記号は、タグにおいて空間干渉的に表され、6つのコードワードの記号が、タグ内で空間的に介在される。これにより、突発的誤差(空間的に隣り合う多数のビットに影響する誤差)により損傷を受ける全体の記号の数、およびいずれか1つのコードワードにおける記号の数が最小限に抑えられるため、突発的誤差を完全に補正できる確率が最大になる。
【0245】
(15,5)リードソロモン符号の代わりに、任意の好適な誤差補正符号、例えば、同一または異なる記号およびコードワードサイズを有する多少冗長性を伴うリードソロモン符号、他のブロック符号、または畳込み符号(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれているStephen B.Wicker;Error Control Systems for Digital Communication and Storage、Prentice−Hall 1995参照)などの異なる種類の符号を用いることが可能である。
【0246】
感知デバイスを介するタグ化領域との「単一クリック」対話を支えるために、感知デバイスは、それがどの領域に、またはどの方向に位置しようとも、少なくとも1つのタグ全体をその視野にとらえることができなければならない。したがって、感知デバイスの視野の必要な直径は、タグのサイズおよび間隔の関数である。
【0247】
(1.2.3 タグ構造)
図5aは、4つの透視目標17を有するタグ726の形態でタグ4を示す図である。タグ726は、合計で240ビットに対応する60の4ビットリードソロモン記号747を表す。タグは、マクロドットと呼ばれるマーク748の存在により各「1」、および対応するマクロドットの不在による各「0」を表す。図5cは、例示を目的としていずれも「1」ビットを含む9つのタグの正方形タイリング728を示す図である。透視目標は、隣り合うタグ間で共用されるように設計されることに留意する。図5dは、16のタグの正方形タイリング、および2つのタグにまたがる対応する最小視野193を示す図である。
【0248】
(15,7)リードソロモン符号を用いて、112ビットのタグデータを冗長に符号化して、240の符号化ビットを生成する。4つのコードワードが、タグ内で空間的に介在されて、突発的誤差の回復力を最大限にする。先述のように16ビットタグIDを想定すると、92ビットまでの領域IDが可能になる
【0249】
タグのデータ担持マクロドット748は、タグ群が、目標に類似した構造体を生成できないように、隣同士で重ならないように設計される。これによってインクも節約される。透視目標か、タグの検出を可能にするため、さらなる目標を必要としない。
【0250】
タグは、センサに対して相対的なタグの4つの可能な方向の明確化を可能にする方向特徴を含むが、本発明は、タグデータへの方向データの埋込みに関わる。例えば、各タグ方向(回転方向)が、図5aに示されるように、その方向に配置される1つのコードワードを含み、各記号が、そのコードワードの番号(1〜4)およびコードワード内の記号の位置(A〜O)でラベル付けされるように4つのコードワードを配列することが可能である。次いで、タグ復号は、各回転方向で1つのコードワードを復号することからなる。各コードワードは、それが第1のコードワードかどうかを示す単一ビット、またはそれがどのコードワードかを示す2つのビットを含むことができる。後者のアプローチは、所謂、1つのコードワードのみのデータコンテンツが必要とされる場合は、所望のデータを得るのに最大でも2つのコードワードを復号すればよいという利点がある。これは、領域IDがストローク内で変化することが想定されず、ストロークの開始時にのみ復号される場合に当てはまる。ストローク内では、タグIDを含むコードワードのみが望まれる。また、感知デバイスの回転は、ストローク内でゆっくりと周期的に変化するため、典型的には、フレーム毎に1つのコードワードのみを復号すればよい。
【0251】
透視目標を一切不要とし、その代わりに、データ表現が自己登録であることに依存することが可能である。この場合、各ビット値(または多ビット値)は、典型的には、明示的なグリフによって表現される。すなわち、ビット値は、グリフの不在によって表現されない。これにより、データグリッドが良好に取り込まれるため、グリッドを確実に識別することが可能になり、その透視歪が検出され、続いてデータサンプリング中に補正される。タグ境界を検出することを可能にするために、各タグデータは、マーカパターンを含み、これらは、確実な検出を可能にするために、冗長に符号化されなければならない。当該マーカパターンのオーバヘッドは、明示的透視目標のオーバヘッドに類似している。様々な当該スキームが、2001年10月11日に出願された本出願人の同時係属出願PCT出願PCT/AU01/01274に記載されている。
【0252】
図5cの配置728は、正方形タグ726を使用して、任意のサイズの平面を完全に埋める、または埋め尽くす、すなわち間隙や重複がないように埋めることができることを示している。
【0253】
好ましい実施形態では、本明細書に記載されているタグ付けスキームは、単一の非差別化マクロドットの存在または不在を利用して単一データを符号化するが、2001年10月11日に出願された本出願人の同時係属PCT出願PCT/AU01/01274に示されたグリフの集合体などの差別化されたグリフの集合体を使用して、単一ビットまたは多ビット値を表すことも可能である。
【0254】
(1.3 ネットページネットワーク)
好ましい実施形態において、ネットページネットワークは、図3に示すように、インターネットなどのネットワーク19を介して接続されたネットページページネットサーバ10、ネットページ登録サーバ11、ネットページIDサーバ12、ネットページアプリケーションサーバ13、ネットページパブリケーションサーバ14、ウェブ端末75、ネットページプリンタ601および中継デバイス44の分散集合体からなる。
【0255】
ネットページ登録サーバ11は、ユーザ、ペン、プリンタ、アプリケーションおよびパブリケーションの間の関係を記録することによって、様々なネットワーク活動を許可するサーバである。それは、ユーザを認証し、アプリケーショントランザクションにおいて、認証されたユーザの代わりに署名代理人として働く。手書き認知サービスをも提供する。上述のように、ネットページページサーバ10は、ページ記述およびページインスタンスに関する永続的情報を維持する。ネットページネットワークは、それぞれがページインスタンスの部分集合体を扱う任意の数のページサーバを含む。ページサーバは、ページインスタンス毎のユーザ入力値をも維持するため、ネットページプリンタなどのクライアントは、ネットページ入力を適切なページサーバに直接送る。ページサーバは、対応するページの記述に対して任意の当該入力を解釈する。
【0256】
ネットページIDサーバ12は、文書ID51をオンデマンドで割り当て、ID割当てスキームを介してページサーバの負荷平衡を提供する。
【0257】
ネットページプリンタは、インターネット分散ネームシステム(DNS)等を使用して、対応するページインスタンスを扱うネットページページサーバのネットワークアドレスにネットページページID50を分解する。
【0258】
ネットページアプリケーションサーバ13は、対話式ネットページアプリケーションのホストとなるサーバである。ネットページパブリケーションサーバ14は、ネットページ文書をネットページプリンタに発行するアプリケーションサーバである。
【0259】
ネットページサーバは、IBM、Hewlet−PackardおよびSunなどの製造元からの様々なネットワークサーバプラットフォーム上で動作することが可能である。多数のネットページサーバが、単一のホスト上で同時に動作することが可能であり、単一のサーバをいくつかのホストに分散させることが可能である。ネットページサーバによって提供された機能、特にIDサーバおよびページサーバによって提供された機能を、ネットページプリンタなどのネットページ機器、コンピュータワークステーション、またはローカルネットワークに直接設けることも可能である。
【0260】
(1.4 ネットページプリンタ)
ネットページプリンタ601は、ネットページシステムに登録され、オンデマンドおよび購読を介してネットページ文書を印刷する機器である。各プリンタは、固有のプリンタID62を有し、インターネットなどのネットワークを介して、理想的にはブロードバンド接続を介して、ネットページネットワークに接続される。
【0261】
不揮発性メモリにおける識別情報およびセキュリティ設定とは別に、ネットページプリンタは、永続的な記憶を含まない。ユーザに関する限り、「ネットワークはコンピュータである」。ネットページは、特定のネットページプリンタから独立して、分散ネットページページサーバ10を利用して、空間および時間を通じて対話的に機能する。
【0262】
ネットページプリンタは、ネットページパブリケーションサーバ14から購読ネットページ文書を受け取る。各文書は、2つの部分、すなわちページレイアウトと、ページを占める実際のテキストおよび画像オブジェクトに分散される。個人化により、ページレイアウトは、典型的には、特定の購読者に固有のものであるため、適切なページサーバを介して購読者のプリンタにポイントキャストされる。一方、テキストおよび画像オブジェクトは、典型的には、他の購読者に共用されるため、すべての購読者のプリンタおよび適切なページサーバにマルチキャストされる。
【0263】
ネットページパブリケーションサーバは、文書コンテンツのポイントキャストおよびマルチキャストへの分割を最適化する。文書のページレイアウトのポイントキャストを受け取った後に、プリンタは、マルチキャストがあれば、どのマルチキャストに注目すべきかを把握する。
【0264】
プリンタが、印刷すべき文書を定める完全なページレイアウトおよびオブジェクトを受け取ると、文書を印刷することが可能になる。
【0265】
プリンタは、奇数ページおよび偶数ページをラスタ化し、シートの両面に同時に印刷する。それは、二重印刷エンジンコントローラ760、およびこの目的でMemjet(商標)プリントヘッド350を利用するプリントエンジンを含む。
【0266】
印刷処理は、2つの分離段階、すなわちページ記述子のラスタ化、およびページ画像の拡大および印刷からなる。ラスタ画像プロセッサ(RIP)は、並列動作する1つまたは複数の標準DSP757からなる。二重印刷エンジンコントローラは、プリントエンジンにおけるプリントヘッドの動作に同期して、ページ画像をリアルタイムで拡大、縮小、印刷するカスタムプロセッサからなる。
【0267】
IR印刷に使用できないプリンタは、IR吸収黒色インクを使用してタグを印刷するオプションを有するが、これは、タグをそうでなければページの空の部分に限定する。当該ページは、IR印刷ページより機能が制限されるが、それでもネットページとして分類される。
【0268】
通常のネットページプリンタは、紙にネットページを印刷する。より特殊化されたネットページプリンタは、球体などのより特殊化された表面に印刷することができる。各プリンタは、少なくとも1つの表面型をサポートし、各表面型について、少なくとも1つのタグタイリングスキーム、そしてタグマップをサポートする。文書を印刷するのに実際に用いられるタグタイリングを記述するタグマップ811は、文書のタグを精確に解釈できるように、その文書に対応づけられる。
【0269】
図2は、ネットページネットワーク上で登録サーバ11によって維持されるプリンタ関連情報を反映するネットページプリンタクラスダイアグラムを示す図である。
【0270】
(1.5 ネットページペン)
ネットページシステムの活性感知デバイスは、典型的には、埋込みコントローラ134を使用して、画像センサを介して、ページからのIR位置タグを取り込み、復号することができるペン101である。画像センサは、近赤外波長でのみ感知を可能にする適切なフィルタが設けられた固体デバイスである。以下により詳細に記載するように、システムは、ニブがいつ表面に接触するかを感知し、ペンは、人間による手書きを取り込むのに十分な測度(すなわち200dpi以上で、100Hz以上)でタグを感知することができる。ペンによって取り込まれた情報は、暗号化され、プリンタ(または基地局)に無線送信され、プリンタまたは基地局は、(知られている)ページ構造に対してデータを解釈する。
【0271】
ネットページペンの好ましい実施形態は、通常のマーキングインクペンとしても、非マーキングスタイラスとしても動作する。しかし、マーキング態様は、インターネットインターフェースとして使用される場合等は、ブラウジングシステムとしてネットページシステムを使用するのに必要ではない。各ネットページペンは、ネットページシステムに登録され、固有のペンID61を有する。図14は、登録サーバ11によりネットページネットワーク上に維持されるペン関連情報を反映するネットページペンクラスダイアグラムを示す図である。
【0272】
いずれかのニブがネットページに接触すると、ペンは、ページに対するその位置および方向を確認する。ニブは、力覚センサに結合され、ニブに対する力は、閾値に対して相対的に解釈されて、ペンが「上向き」であるか「下向き」であるかを示す。これは、所謂ネットワークからの情報を要求するために、ページ上の対話式要素をペンニブで押し下げることによって「クリック」することを可能にする。また、力を連続値として取り込んで、所謂、署名の全動態を検証することを可能にする。
【0273】
ペンは、ニブ付近のページの部分193を赤外スペクトルにおいて撮像することによって、ネットページ上のそのニブの位置および方向を確認する。ペンは、最も近いタグを復号し、撮像タグ上の観察された透視歪、およびペン光学素子の知られている幾何学構造から、タグに対するニブの位置を計算する。タグの位置解像度が低くても、ページ上のタグ密度は、タグサイズに逆比例するため、調節された位置解像度は極めて高く、正確な手書き認識に必要とされる最小限の解像度を上回る。
【0274】
ネットページに対するペン作用は、一連のストロークとして取り込まれる。ストロークは、ペン下げ事象によって開始され、ペン上げ事象によって終了するページ上の刻時ペン位置のシーケンスからなる。ストロークは、また、通常の状況下ではストロークの開始時のページIDの変化が生じると常にネットページのページID50でタグ付けされる。
【0275】
各ネットページペンは、カレントセレクション826が対応づけられており、ユーザが、コピーアンドペースト処理等を行うことを可能にする。セレクションは、規定時間後にシステムがそれを破棄することができるように、刻時されている。カレントセレクションは、ページインスタンスの領域を記述する。それは、ページの背景部に対してペンを通じて取り込まれた最近のデジタルインクストロークからなる。それは、選択ハイパーリンク活性化を介してアプリケーションに提出されると、アプリケーションに特異的に解釈される。
【0276】
各ペンは、カレントニブ824を有する。ペンによってシステムに最後に通知されたニブである。上述のデフォルトネットページペンの場合は、マーキング黒色インクニブも非マーキングスタイラスニブもカレントである。各ペンは、カレントニブスタイル825をも有する。これは、例えば、ユーザがパレットから色を選択するのに応じて、アプリケーションによりペンに最後に対応づけられたニブスタイルである。デフォルトニブスタイルは、カレントニブに対応づけられたニブスタイルである。ペンを通じて取り込まれたストロークは、カレントニブスタイルでタグ付けられる。続いてストロークが再現されるときは、それらにタグ付けされるニブスタイルで再現される。
【0277】
ペンが、通信できるプリンタの範囲内にあるときは、常に、ペンはその「オンライン」LEDをゆっくりと点滅させる。ペンが、ページに対するストロークの復号に失敗すると、即座に「エラー」LEDを活性化させる。ペンが、ページに対するストロークの復号に成功すると、即座に「ok」LEDを活性化させる。
【0278】
取り込まれたストロークのシーケンスをデジタルインクと呼ぶ。デジタルインクは、手書きのオンライン認識、および署名のオンライン検証のための描画および手書きのデジタル交換の基礎を形成する。
【0279】
ペンは、ワイヤレスであり、短距離無線リンクを介してデジタルインクをネットページプリンタに送信する。送信されたデジタルインクは、プライバシおよびセキュリティのために暗号化され、効率的な送信のためにパケット化されるが、プリンタにおける適時的な操作を保証するために、ペン上げ事象に応じて常に流れている。
【0280】
ペンが、プリンタの範囲外にあるときは、10分間以上の連続的な手書きの能力を有する内部メモリにデジタルインクをバッファリングする。ペンが、再びプリンタの範囲に入ると、バッファリングされたデジタルインクを転送する。
【0281】
ペンは、任意の数のプリンタに登録されうるが、すべての状態データが紙およびネットワークの双方に残留するため、特定時間にペンがどのプリンタと通信するかは重要ではない。
【0282】
図6から8を参照して、ペンの好ましい実施形態を以下により詳細に説明する。
【0283】
(1.6 ネットページ対話)
ネットページプリンタ601は、ペンがネットページ1との対話に使用されるときにペン101からストロークに関するデータを受け取る。タグ4の符号化データ3は、ストロークなどの移動を実行するのに使用されるときにペンによって読み取られる。そのデータは、特定のページおよびそれに対応づけられる対話式要素の識別情報を確認し、ページに対するペンの相対位置の指示を得ることを可能にする。その指示データは、プリンタに送信され、そこで、DNSを介して、ストロークのページID50を、対応するページインスタンス830を維持するネットページページサーバ10のネットワークアドレスに分解する。次いで、ストロークをページサーバに送信する。ページが最近より早いストロークで識別された場合は、プリンタは、そのキャッシュに該当するページサーバを既に有することができる。各ネットページは、ネットページページサーバによって永続的に維持されるコンパクトページレイアウトからなる(以下参照)。ページレイアウトとは、典型的にはネットページネットワーク上の他の場所に記憶された画像などのオブジェクト、テキストのフォントおよびピースを意味する。
【0284】
ページサーバは、ペンからストロークを受け取ると、ストロークが適応するページ記述を検索し、ページ記述のどの要素にストロークが交差するかを確認する。次いで、該当する要素の種類の脈絡でストロークを解釈することができる。
【0285】
「クリック」は、ペン下げ位置と続くペン上げ位置の間の距離および時間が、ともにある小さい最大値を下回る場合のストロークである。クリックによって活性化されるオブジェクトは、典型的には、クリックを活性化することを必要とし、応じてより長いストロークが無視される。「スロッピー」クリックなどのペン作用の登録の失敗は、ペンの「ok」LEDからの応答の欠如によって示される。
【0286】
ネットページページ記述には、ハイパーリンクと書式フィールドの2種類の入力要素がある。書式フィールドを介する入力は、対応づけられるハイパーリンクの活性化を誘発することも可能である。
【0287】
(2.ネットページペンの説明)
(2.1 ペン機構)
図6および7を参照すると、参照番号101で一般に示されるペンは、ペン部品を取りつけるための内部空間104を定める壁103を有するプラスチック型の形態の筐体102を含む。ペン上部105は、動作に際して筐体102の一端106に回転可能に取りつけられる。半透明カバー107は、筐体102の反対側の端部108に固定される。カバー107も成型プラスチック製であり、筐体102内に取りつけられているLEDの状態をユーザが見ることができるように半透明材料から形成される。カバー107は、筐体102の端部108を実質的に取り囲む主部109と、主部109から後方に突出し、筐体102の壁103に形成された対応する溝111内に嵌合する突出部110とを含む。ラジオアンテナ112は、筐体102内の突出部110の背後に取りつけられる。カバー107上の開口113Aを取り囲むねじ山113は、対応するねじ山115を含む金属端ピース114を受けるように構成されている。金属端ピース114は、インクカートリッジ交換を可能にするために取り外し可能になっている。
【0288】
カバー107内部には、屈曲PCB117上に三色状態LED116も取りつけられている。アンテナ112も屈曲PCB117上に取りつけられている。状態LED116は、包括的な可視性を良好にするために、ペン101の上部に取りつけられている。
【0289】
ペンは、通常のマーキングインクペンとしても、非マーキングスタイラスとしても動作することが可能である。ニブ119を有するインクペンカートリッジ118およびスタイラスニブ121を有するスタイラス120は、筐体102内で並列に取りつけられている。ペン上部105の回転によって、インクカートリッジニブ119またはスタイラスニブ121を、金属端ピース114の開放端122を通じて前方に動かすことができる。それぞれのスライダブロック123および124は、それぞれインクカートリッジ118およびスタイラス120に取りつけられる。回転可能カム筒125は、動作に際してペン上部105に固定され、その内部で回転するように構成される。カム筒125は、カム筒の壁181内の溝の形態のカム126を含む。スライダブロック123および124から突出するカムフォロア127および128は、カム溝126内に嵌合する。カム筒125が回転すると、スライダブロック123または124は、互いに相対的に移動して、金属端ピース114における孔122からペンニブ119またはスタイラスニブ121を突出させる。ペン101は、3つの動作状態を有する。上部105を90度ずつ回転させることによって、3つの状態は、以下のようになる。
・スタイラス120ニブ121アウト
・インクカートリッジ118ニブ119アウト
・インクカートリッジ118ニブ119アウトでもなく、スタイラス120ニブ121アウトでもない
【0290】
第2の屈曲PCB129は、筐体102内に位置する電子シャーシ130に取りつけられている。第2の屈曲PCB129は、表面に投射するための赤外放射線を供給するための赤外LED131を取りつける。画像センサ132は、表面から反射放射線を受けるために第2の屈曲PCB129に取りつけられている。第2の屈曲PCB129は、RFトランスミッタおよびRFレシーバを含む無線周波チップ133、およびペン101の動作を制御するためのコントローラチップ134をも取りつける。(成型透明プラスチックから形成された)光学素子ブロック135は、カバー107内に位置し、赤外線ビームを表面に投射し、画像を画像センサ132上に受け取る。給電ワイヤ136は、第2の屈曲PCB129上の部品を、カム筒125内に取りつけられている電池接触子137に接続する。端末138は、電池接触子137およびカム筒125に接続する。3ボルト充電式電池139は、電池接触子に接触して、カム筒125内に位置する。誘導充電コイル140は、第2の屈曲PCB129の周りに取りつけられて、誘導を介する電池139の充電を可能にする。第2の屈曲PCB129は、ペンニブ119またはスタイラスニブ121によって表面に加えられている力の測定を可能にするために、スタイラス120またはインクカートリッジ118が筆記に使用されているときにカム筒125における変位を検出するための赤外LED143および赤外フォトダイオード144をも取りつける。IRフォトダイオード144は、スライダブロック123および124に取りつけられた反射体(不図示)を介するIR LED143からの光を検出する。
【0291】
ゴム製把持パッド141および142は、筐体102の端部108に向かって設けられ、ペン101を把持するのを支援し、上部105は、ペン101をポケットに留めるためのクリップ142をも含む。
【0292】
(3.2 ペンコントローラ)
ペン101は、ニブの近傍の表面の部分を赤外スペクトルにおいて撮像することによって、そのニブ(スタイラスニブ121またはインクカートリッジニブ119)の位置を確認するように構成される。それは、最も近くの所在タグからの所在データを記録し、光学素子135およびコントローラチップ134を利用して、所在タグからのニブ121または119の距離を計算するように構成される。コントローラチップ134は、ペンの方向、および撮像タグに観察された透視歪からのニブ−タグ距離を計算する。
【0293】
ペン101は、RFチップ133およびアンテナ112を利用して、(セキュリティのために暗号化され、効率的な送信のために梱包された)デジタルインクデータをコンピューティングシステムに送信することが可能である。
【0294】
ペンが、レシーバの範囲にあるときは、デジタルインクデータは、形成されると送信される。ペン101が、範囲外に移動したときは、デジタルインクデータは、ペン101内にバッファリングされ(ペン101回路は、表面上の約12分間のペン運動に対するデジタルインクデータを記憶するように構成されたバッファを含む)、後に送信されうる。
【0295】
コントローラチップ134は、ペン101における第2の屈曲PCB129に取りつけられる。図8は、コントローラチップ134のアキテクチャをより詳細に示す構成図である。図8は、RFチップ133、画像センサ132、三色状態LED116、IR照明LED131、IR力覚センサLED143および力覚センサフォトダイオード144の図をも示す。
【0296】
ペンコントローラチップ134は、制御プロセッサ145を含む。バス146は、コントローラチップ134の部品の間のデータの交換を可能にする。フラッシュメモリ147および512KB DRAM148も含まれる。アナログ−デジタル変換器149は、力覚センサフォトダイオード144からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0297】
画像センサインターフェース152は、画像センサ132とインターフェースする。RF回路155、ならびにアンテナ112に接続されたRF共振器および誘発器156を含むRFチップ133とインターフェースするトランシーバコントローラ153およびベースバンド回路154も含まれる。
【0298】
制御プロセッサ145は、画像センサ132を介して表面からタグからの所在データを取り込んで、復号し、力覚センサフォトダイオード144を監視し、LED116、131および143を制御し、無線トランシーバ153を介して短距離ラジオ通信を操作する。それは、中能力(約40MHz)汎用RISCプロセッサである。
【0299】
プロセッサ145、デジタルトランシーバ部品(トランシーバコントローラ153およびベースバンド回路154)、画像センサインターフェース152、フラッシュメモリ147および512KB DRAM148は、単一コントローラASICに統合される。アナログRF部品(RF回路155ならびにRF共振器および誘発器156)は、個別のRFチップに設けられる。
【0300】
画像センサは、CCDまたはCMOS画像センサである。タグ付けスキームに応じて、約100×100画素から200×200画素の範囲のサイズを有する。多くの小型CMOS画像センサは、National Semiconductor LM9630を含めて市販されている。
【0301】
コントローラASIC134は、ペン101が表面に接触していないときは、不活性期間後に休止状態に入る。力覚センサフォトダイオード144を監視する専用回路150を組み込み、ペン下げ事象に際してパワーマネージャ151を介してコントローラ134を起動させる。
【0302】
無線トランシーバは、コードレス電話で通常使用される無認可の900MHzバンド、あるいは無認可の2.4GHz工業、科学および医療(ISM)バンドで通信し、周波数ホッピングおよび衝突検出を用いて、無干渉通信を提供する。
【0303】
代替的な実施形態において、ペンは、基地局またはネットページプリンタとの短距離通信のために、赤外線データ通信機能標準化協会(IrDA)インターフェースを組み込む。
【0304】
さらなる実施形態において、ペン101は、ペン101軸の直角平面に取りつけられた一対の直交加速度計を含む。加速度計190は、図7および8にゴースト輪郭で示されている。
【0305】
加速度計を設けることにより、ペン101の本実施形態が、表面所在タグを参照せずに、運動を感知することが可能になり、所在タグをより低速でサンプリングすることが可能になる。次いで、各所在タグIDは、表面上の位置ではなく、対象となるオブジェクトを識別することが可能である。例えば、オブジェクトがユーザインターフェース入力要素(例えばコマンドボタン)である場合は、入力要素の部分内の各所在タグのタグIDは、入力要素を直接識別することが可能である。
【0306】
加速度計で測定されたxおよびy方向の各々における加速度は、時間について積算されて、瞬間速度および位置が求められる。
【0307】
ストロークの開始位置が知られているため、ストローク内の相対位置のみが計算される。位置集積は、感知された加速度計に誤差を蓄積させるが、加速度計は、典型的には高分解能を有し、誤差が蓄積するストロークの継続時間は短い。
【0308】
(3.ネットページプリンタの説明)
(3.1 プリンタ機構)
垂直に取りつけられたネットページ壁掛け式プリンタ601が完全に組み立てられた状態で図9に示されている。そのプリンタは、図10および10aに示されるように、二重8・1/2”Memjet(商標)印刷エンジン602および603を使用して、レター/A4サイズ媒体にネットページを印刷する。それは、完全色および完全ブリードで、シートの両面を同時に印刷する二重印刷エンジン602および603を紙604が通る直線状の紙経路を使用する。
【0309】
一体の製本組立品605は、各印刷シートの一端に沿って一片の接着剤を塗布し、押すとシートが前のシートに接着することを可能にする。これにより、1シートから数百シートの範囲の厚さを有することができる最終的な製本文書618が作られる。
【0310】
二重印刷エンジンに結合した図12に示される交換可能インクカートリッジ627は、固着剤、接着剤、ならびにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックおよび赤外インクを格納するための袋または室を有する。カートリッジは、ベース型のマイクロエアフィルタをも含む。マイクロエアフィルタは、ホース639を介してプリンタ内部のエアポンプ638とインターフェースする。これは、濾過空気をプリントヘッドに供給して、そうでなければプリントヘッドノズルを詰まらせる恐れがある微粒子のMemjet(商標)プリントヘッド350への侵入を防止する。カートリッジ内にエアフィルタを組み込むことによって、フィルタの動作寿命がカートリッジの寿命に効果的に関連づけられる。インクカートリッジは、3000ページ(1500シート)を印刷・接着する能力を有する完全にリサイクル可能な製品である。
【0311】
図10を参照すると、電動式媒体ピックアップローラ組立品626は、最上部のシートを媒体トレイから第1の印刷エンジン602上の紙センサを通して二重Memjet(商標)プリントヘッド組立品に押し込む。2つのMemjet(商標)印刷エンジン602および603が、直線状紙経路に沿って対向インライン順次構成で取りつけられる。紙604は、一体の動力ピックアップローラローラ626によって第1の印刷エンジン602に引き込まれる。紙604の位置およびサイズが感知され、完全ブリード印刷が開始する。固着剤が、できるだけ短時間の乾燥を支援するために同時に印刷される。
【0312】
紙は、ゴム製ローラに作用する動力出口スパイクホイール(直線状紙経路に沿って整列する)の集合体を通って第1のMemjet(商標)印刷エンジン602を出る。これらのスパイクホイールは、「濡れた」印刷面に接触し、シート604を第2のMemjet(商標)印刷エンジン603に連続的に供給する。
【0313】
図10および10aを参照すると、紙604は、二重印刷エンジン602および603から製本組立品605内に移動する。印刷ページは、繊維状支持ローラによる動力スパイクホイール軸670と、スパイクホイールおよび瞬間作用接着剤ホイールによる他の可動軸との間を移動する。可動軸/接着剤組立品673は、金属支持ブラケットに取りつけられ、前方に輸送されて、カムシャフトの作用により、歯車を介して動力軸670とインターフェースする。別個のモータが、このカムシャフトに動力を与える。
【0314】
接着剤ホイール組立品673は、インクカートリッジ627からの接着剤供給ホース641に対する回転連結器を有する部分中空軸679からなる。この軸679は、放射状の穴を通じて毛細管作用により接着剤を吸収する接着剤ホイールに接続する。成型筐体682は、接着剤ホイールを取り囲み、前方に開口部を有する。枢軸側方型および弾性外扉は、金属ブラケットに接合され、組立品673の残りが前方に押し出されたときに、側方に開く。この作用は、成型筐体682の前方を通じて接着剤ホイールを露出させる。引張ばねは、組立品を閉鎖し、不活性期間中に、接着剤ホイールを効果的に覆う。
【0315】
シート604がホイール組立品673内に移動すると、製本組立品605内に輸送されるのに伴って、接着剤が(文書の第1のシートから離れた)前面の1つの垂直方向エッジに塗布される。
【0316】
(4.製品タグ付け)
自動識別とは、手動キーイングを用いずにデータ処理システムに対するオブジェクトを(半)自動的に識別するバーコード、磁性ストライブカード、スマートカードおよびRFトランスポンダなどの技術を用いることを意味する。
【0317】
自動識別を目的として、品目は、印刷バーコードの形態で機械読取り可能に符号化された12桁の統一商品コード(UPC)によって一般に識別される。最も一般的なUPCナンバリングシステムは、5桁の製造元番号および5桁の品目番号である。その精度が限られているため、UPCは、個々の品目ではなく、製品群を識別するのに用いられる。統一コード委員会およびEANインターナショナルは、UPCおよび関連符号を14桁の世界貿易品目番号(GTIN)の部分集合体として規定・管理している。
【0318】
供給連鎖管理内では、個々の品目を一意的に識別することによって追跡できるように、UPCスキームの拡大または更新に大きな関心がもたれている。個々の品目のタグ付けは、商品の紛失、盗難または破損による「目減り」を抑え、デマンド誘導型の製造および供給の効率性を向上させ、製品仕様のプロファイリングを容易にし、顧客経験を向上させることが可能である。
【0319】
個々の品目のタグ付けについては主たる2つの競合物、すなわち所謂二次元バーコードの形態の光学的タグと無線周波識別(RFID)タグが存在する。RFIDタグの詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているKlaus Finkenzeller、RFID Handbook、John Wiley & Son(1999)を参照されたい。光学的タグは、安価であるという利点を有するが、読み取るために光学的視準線を必要とする。RFIDタグは、全方向の読取りをサポートするという利点があるが、比較的高価である。金属または液体の存在は、RFIDタグ性能に激しく干渉して、全方向読取りの利点を損なう可能性がある。受動的(リーダが動力を与える)RFIDタグは、2003年の末までに、数百万単位で1つ当たり10セントに価格設定されることが見込まれ、その後すぐに5セントになることが見込まれるが、食品雑貨のような低価格品目に対する1セント未満という業界目標にはまだ及ばない。たいていの光学的タグの読取り専用性も、品目が供給連鎖を進行するときの状態変化をタグに記すことができないため、短所として言及されてきた。しかし、読取り専用タグは、ネットワーク上で動的に維持される情報を意味しうるという事実によってこの欠点は緩和される。
【0320】
マサチューセッツ工科大学(MIT)自動IDセンターは、インターネットベースのオブジェクトネームサービス(ONS)および商品マーク付け言語(PML)と連係する96ビットの電子商品コード(EPC)に対する規格を開発した。EPCは、走査され、または取得されると、PMLでポータブルに符号化された対応製品情報を、恐らくはONSを介して調べるのに使用される。EPCは、8ビットのヘッダ、28ビットのEPCマネージャ、24ビットのオブジェクトクラスおよび36ビットの一連番号からなる。EPCについての詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、The Electronic Product Code(EPC)、MIT自動IDセンター(2001年1月)を参照されたい。自動IDセンターは、EPCへのGTINのマッピングを規定して、EPCと現行の方法との適合性を実証した(その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、Integrating the Electronic Product Code(EPC)and the Global Trade Item Number(GTIN)、MIT自動IDセンター(2001年11月))。EPCは、EAN−UCC合弁事業であるEPCglobalによって管理されている。
【0321】
EPCは、技術的に中立であり、多くの形態で符号化され、担持されうる。自動IDセンターは、EPCを担持するのに低コストの受動的RFIDタグを使用することを提唱しており、RFIDタグのコストを短期間で最小限にすることを可能にするために、EPCの64ビットバージョンを規定した。低コストRFIDタグの特性の詳細な説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているSarma、S.、Towards the 5c Tag、MIT自動IDセンター(2001年11月)を参照されたい。市販の低コストの受動的RFIDタグの説明については、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれている915 MHz RFID Tag、Alien Technology(2002)を参照されたい。64ビットのEPCについては、その内容が相互参照により本明細書に組み込まれているBrock、D.L.、The Compact Electronic Product Code、MIT自動IDセンター(2001年11月)を参照されたい。
【0322】
EPCは、単に固有の品目レベルのタグ付けおよび追跡だけではなく、ケースレベルおよびパレットレベルのタグ付け、ならびにコンテナおよびトラックなどの出荷および輸送の他の流通単位のタグ付けをも意図している。分散型PMLデータベースは、品目と、梱包、出荷および輸送階層におけるより高レベルのコンテナとの動的な関係を記録する。
【0323】
(4.1 供給連鎖におけるオムニタグ付け)
不可視(例えば赤外)タグ付けスキームを用いて、品目を一意的に識別することは、製品の全表面またはその有意な部分を、製品の包装またはラベルのグラフィックデザインを損なうことなくタグ付けすることを可能にするという大きな利点を有する。製品の全表面がタグ付けされると、製品の走査性がその方向に影響されることがなくなるため、可視バーコードの視準線の欠点の大部分が除かれる。また、タグは小さく、大量に複製されるため、ラベル損傷が走査を妨害することがなくなる。
【0324】
次いで、オムニタグ付けは、品目の表面の大部分を光学的に読取り可能な不可視タグで覆うことからなる。各オムニタグは、それが表示される品目を一意的に識別する。オムニタグは、品目の製品コード(例えばEPC)を直接符号化することができ、または次にデータベース検索を介して製品コードを識別する代理IDを符号化することができる。各オムニタグは、品目の表面のそれ自体の位置をも場合によって識別して、先に述べたネットページ対話性についての下流の消費者の利益を提供する。
【0325】
オムニタグは、製品製造中および/または包装中にデジタルプリンタを使用して貼付される。これらは、テキストおよび図形が他の手段によって印刷された後にオムニタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよく、またはオムニタグ、テキストおよび図形を同時に印刷する統合的なカラーおよび赤外プリンタであってもよい。デジタル印刷されたテキストおよび図形は、ラベルまたは包装にあらゆるものを含んでいてもよく、または可変部のみから構成され、他の部分が他の手段によって印刷されていてもよい。
【0326】
(4.2 オムニタグ付け)
図13に示されるように、製品の固有の品目ID215は、特殊な種類の固有のオブジェクトID210と見なすことできる。電子商品コード(EPC)220は、品目IDに対する1つの新しい規格である。品目IDは、典型的には、製品ID214および一連番号213からなる。製品IDは、製品群を識別するのに対して、一連番号は、その群の特定のインスタンス、すなわち個々の品目を識別する。そこで、製品IDは、典型的には、製造元番号211および製品群番号212からなる。最もよく知られている製品IDは、EAN.UCC統一商品コード(UPC)221およびその変形である。
【0327】
図14に示されるように、オムニタグ202は、ページID(または領域ID)50および二次元(2D)位置86を符号化する。領域IDは、タグを含む表面領域を識別し、位置は、二次元領域内のタグの位置を識別する。問題の表面は、物理的品目201の表面であるため、領域IDと固有オブジェクトID210、より具体的には品目の品目ID215との一対一のマッピングを定めることが有用である。しかし、オムニタグの実用性を損なうことなく、マッピングを多対一とすることができることに留意されたい。例えば、品目の各パネルの包装は、異なる領域ID50を有することが可能である。逆に、オムニタグは、品目IDを直接符号化することができ、その場合は、領域IDは、全体的なネットページ領域ID割当てから品目ID割当てを分離させるように好適に予め固定された品目IDを含む。領域IDは、世界的ネットページシステム内で識別された他のすべての表面領域から対応する表面領域を一意的に区別することに留意されたい。
【0328】
品目ID215は、オムニタグとEPC担持RFIDタグの間の直接的な適合性をもたらすことから、自動IDセンターが提案しているEPC220であることが好ましい。
【0329】
図14において、位置86がオプションとして示されている。これは、供給連鎖におけるオムニタグの実用性の多くが、領域ID50から導かれることを示すものであり、特定の製品に対して望ましくなければ位置を省略してもよい。
【0330】
ネットページシステムとの相互操作性については、オムニタグ202は、ネットページタグ4である。すなわち、それは、ネットページタグの論理構造、物理的レイアウトおよび意味を有する。
【0331】
ネットページペン101などのネットページ感知デバイスがオムニタグを撮像・復号するときは、視野におけるタグの位置および方向を用い、これをタグで符号化された位置と組み合わせて、タグに対するそれ自体の位置を算出する。感知デバイスは、ハイパーラベル化表面領域に対して移動するに従って、それによってその領域に対するそれ自体の位置を追跡し、その時間変化経路を表す刻時位置サンプルの集合体を生成することができる。感知デバイスがペンである場合は、経路は、ストロークのシーケンスからなり、各ストロークは、ペンが表面に接触したときに開始し、ペンが表面との接触を解除したときに終了する。
【0332】
ストロークが、領域IDを担当するページサーバ10まで進められると、サーバは、領域IDによって鍵をかけられた領域の記述を検索し、その記述に関してストロークを解釈する。例えば、記述がハイパーリンクを含み、ストロークがハイパーリンクのゾーンと交差する場合は、サーバは、ストロークをハイパーリンクの記述として解釈し、ハイパーリンクを活性化することができる。
【0333】
(4.3 オムニタグ印刷)
オムニタグプリンタは、製品の製造および/または組立の前、最中または後に製品のラベル、包装または実際の表面にオムニタグを印刷するデジタルプリンタである。これは、ネットページプリンタ601の特殊な例である。それは、典型的には近赤外吸収性インクを使用して、オムニタグの連続パターンを表面に印刷することが可能である。高速環境では、そのプリンタは、タグ描画を加速させるハードウェアを含む。これは、典型的には、タグ位置などの可変タグデータのリアルタイムのリードソロモン符号化、およびプリントヘッドのドット解像度における実際のタグパターンのリアルタイムのテンプレートベースの描画を含む。
【0334】
プリンタは、テキストおよび図形が他の手段によって印刷された後にオムニタグを印刷するアドオン赤外プリンタであってもよく、またはオムニタグ、テキストおよび図形を同時に印刷する統合的なカラーおよび赤外プリンタであってもよい。デジタル印刷されたテキストおよび図形は、ラベルまたは包装にあらゆるものを含んでいてもよく、または可変部のみから構成され、他の部分が他の手段によって印刷されていてもよい。したがって、赤外およびブラック印刷機能を有するオムニタグプリンタは、従来の熱転写またはインクジェットプリンタなどの可変データ印刷に使用される既存のデジタルプリンタに取って代わることが可能である。
【0335】
以下の議論の目的として、品目ラベルへの印刷の言及は、概して品目包装への印刷、または品目表面への直接的な印刷を含むことを意図するものである。また、品目ID215の言及は、領域ID50(またはパネル毎の領域idの集合)、またはその成分を含むことを意図するものである。
【0336】
プリンタは、典型的には、プリンタに固定および/または可変テキストおよび図形、ならびにオムニタグに含めるための品目idを供給するホストコンピュータによって制御される。ホストは、プリンタに対してリアルタイム制御を行うことができ、それによって、印刷が進行しているときにプリンタにリアルタイムでデータを供給する。最適化として、ホストは、印刷が開始する前に固定データを供給し、可変データのみをリアルタイムで供給することができる。プリンタは、ホストにより供給されたパラメータに基づいて、品目毎の可変データを生成することが可能であってもよい。例えば、ホストは、印刷前に、プリンタに基本品目IDを供給することができ、プリンタは、基本品目IDを単にインクリメントして、連続的な品目idを生成することができる。あるいは、インクカートリッジのメモリ、またはプリンタに挿入された他の記憶媒体が、固有品目idの源を供給することができ、その場合は、プリンタは、品目idの割当てをホストコンピュータに報告し、ホストによって記録される。
【0337】
あるいは、固有IDが、前の製造工程中に何らかの形態でラベルに貼付されたと仮定すると、プリンタは、オムニタグが印刷されているラベルから予め存在する品目IDを読み取ることが可能であってもよい。例えば、品目IDは、可視2Dバーコードの形態で既に存在していてもよいし、RFIDタグで符号化されてもよい。前者の場合は、プリンタは、光バーコードスキャナを含むことができる。後者の場合は、RFIDリーダを含むことができる。
【0338】
プリンタは、他の形態で品目IDを描画することが可能であってもよい。例えば、2Dバーコードの形態で品目IDを印刷することが可能であってもよく、1Dバーコードの形態で品目IDの製品ID成分を印刷することが可能であってもよく、または品目IDを書き込み可能にもしくはwrite−onceRFIDタグに書き込むことが可能であってもよい。
【0339】
(4.4 オムニタグ走査)
品目情報は、例えば、品目が出荷に際して在庫目録に走査されるとき、品目が小売店の棚に配置されているとき、および品目が販売時点で走査されるときに、典型的には、存在する走査事象に応答して製品サーバに流れる。ネットページペンで採用したのと同様または同一の技術を用い、レーザベースの2D走査および2D画像センサベースのスキャナの両方を使用して、オムニタグ付け品目を走査するのに固定およびハンドヘルドスキャナの両方を使用することができる。
【0340】
図16に示されるように、固定スキャナ254およびハンドヘルドスキャナ252は、いずれも走査データを製品サーバ251に伝達する。製品サーバは、次に、品目事象データを、関連する製品サーバとのデータの共用を実現することができる同位の製品サーバ(不図示)または製品アプリケーションサーバ250に伝達することができる。例えば、小売店内の在庫の動きを小売店の製品サーバ上に局所的に記録することができるが、品目が販売されると、製造元の製品サーバに通知することができる。
【0341】
(4.5 オムニタグベースのネットページ対話)
そのラベル、包装または実際の表面がオムニタグ付けされた製品は、他のネットページと同レベルの対話性を与える。
【0342】
ネットページ適合性製品タグ付けに対して有望な事例が得られる。ネットページは、任意の印刷表面を、ウェブページに類似した細かく分化されたグラフィカルユーザインターフェースに変え、製品の表面に見事にマッピングされる多くのアプリケーションが存在する。これらのアプリケーションは、様々な種類の製品情報(栄養情報、料理情報、レシピ、関連製品、使用期限、使用説明、リコール通知)を得ること、ゲームを行うこと、コンペに参加すること、所有権を管理すること(登録、商品が盗まれた場合等の問合せ、移転)、製品フィードバックを提供すること、メッセージを送ること、および間接的なデバイス制御を含む。一方、製品タグ付けが、未分化2DバーコードまたはRFID担持品目IDの場合のように、未分化である場合は、情報ナビゲーションの負担は、ユーザ経験の複雑さ、または配信デバイスユーザインターフェースの精巧化の必要性を有意に高めうる情報配信デバイスに移される。
【0343】
次に、以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。しかし、添付の請求項の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、多くの他の形態で本発明を具現化できることが当然理解されるであろう。
【0344】
(実施例)
以下の実施例において、紫外可視スペクトルは、従来通りに最初に吸収波長を記載し、その後に括弧に含められた対応するlogεmaxを記載することによって報告される。例えば、「760(5.11)」は、5.11のlogεmaxを有する760nmにおける吸収を表す。
【0345】
(実施例1)
(a)金属を含まないフタロシアニン−H2Pc(dib)4(OBu)8
【0346】
【化11】
【0347】
n−ブタノール(10mL)にフタロニトリル(203mg;0.49mmol)を溶解させた煮沸溶液にリチウム金属(78.2mg;11mmol)を一滴ずつ添加した。45分間後に、反応混合物を冷却し、水(20mL)および酢酸(5mL)で希釈した。濃色の混合物を水(200mL)に注ぎ、クロロホルム(3×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を(Na2SO4)乾燥させ、溶媒を高真空下で除去した。粗フタロシアニンをカラムクロマトグラフィ[アルミナ(活性グレードI)、トルエン]で精製して、澄んだ黄緑色の粉末としての純粋な生成物(90mg;47%)を与えた。λmax 760(5.11),732(5.07),693(4.54),660(4.48),402(4.61),331(4.62);1H NMRスぺクトル(CDCl3)δ−0.20(2H,s,NH),1.16(24H,t,J=7.3 Hz,8×CH3),1.69(16H,六重線,J=7.3 Hz,8×CH2),2.20(16H,qnt,J=7.3 Hz,8×CH2),4.93(16H,t,J=7.3 Hz,8×CH2O),6.50(8H,s,8×CH),7.10−7.13(16H,m,Ar−H),7.63−7.65(16H,m,Ar−H)。
【0348】
(実施例2)
(b)バナジルオクタブトキシフタロシアニン
【0349】
【化12】
【0350】
H2Pc(dib)4(OBu)3(113mg;0.071mmol)を乾燥DMF(5mL)に懸濁し、次いでバナジルアセチルアセトナト(97mg;0.37mmol)およびトリブチルアミン(500μL)を連続的に撹拌しながら添加した。得られた混合物を還流下で一晩加熱し、冷却し、ジクロロメタン(200mL)で希釈した。溶液を水(100mL)、HCl(0.1M;2×100mL)および飽和NaHCO3(100mL)で洗浄し、(MgSO4)乾燥させた。溶媒を除去すると、濃緑色の固体が残り、それをトルエンに溶解させ、中性アルミナ(トルエン)上でカラムクロマトグラフィにより精製した。最初の緑色の帯体は生成物を含有しており、溶媒を除去すると、緑色の粉末(90mg;76%)を与えた。1H NMR(CDCl3)(全シグナルが広幅)δ1.15−1.26;1.67−1.76;2.1−2.4;4.9−5.0;6.4−6.7;7.10−7.23;7.64−7.70;λmax 768(5.2),688(4.6),401(4.6),357(4.6),331(4.7)nm。
【0351】
(実施例3)
(c)VOPc(dtb)4(OBu)8のVOPc(dib)4(OBu)8S8へのスルホン化
【0352】
【化13】
【0353】
オレウム(1.5mL)にVOPc(dib)4(OBu)8(22.7mg;13.7μmol)を含めたものを室温で1時間撹拌した。(VOPc(dib)4(OBu)8S8と想定される)スルホン化誘導体を含有する濃青色の溶液を、一定分量を採取し、それをDMSOで希釈することによって最初に分析して、10μM溶液を与えた。得られた紫色の溶液は、λmax843、746nmを有していた。反応液の残りを慎重に氷(5g)に添加し、硫酸(98%、0.5mL)で洗浄することによって急冷して、6mLの全体積を与えた。この溶液の一定分量(4×1mL)を水(2×サンプル)またはインクベース(2×サンプル)で5mLに希釈した。各対のサンプルの1つを固体NaHCO3をpH7〜8まで中和し、他のサンプルを酸性のままとした(表1)。各サンプルの最終濃度は、約4mg/5mL(約0.1%w/v)であった。各溶液を普通紙(80gsm)にブラシで塗布し、積分球でCary 5E分光計に記録した。
【0354】
【表1】
【0355】
【表2】
【0356】
(実施例4)
(ニッケルジチオレン樟脳硫酸二カリウム塩)
五硫化リン(12.5g;0.028mol)を新たに蒸留したジオキサン(150mL)中で樟脳キノン硫酸一水和物(5.1g;0.019mol)の溶液に添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下で還流しながら2時間にわたって加熱した。このときまでに、反応混合物をわずかに冷却し、まだかなり暖かいうちに、焼結ガラス漏斗で濾過して、未反応のP4S10を除去した。水(100mL)に塩化ニッケル六水和物(8.2g;0.034mol)を含めたものを濾液に添加し、得られた混合物を還流下で2時間加熱した。この間に、色が緑色/ベージュ色から黒色に変化した。反応混合物を連続的に冷却し、水(200mL)で希釈し、水酸化テトラブチルアンモニウム(40%、50mL)で処理し、ジクロロメタン(3×250mL)で抽出した。ジクロロメタンを蒸発によって除去し、残渣をエタノール(500mL)に溶解させた。エタノール溶液を、DOWEX−H+樹脂を含有する焼結ガラス漏斗に通し、テトラブチルアンモニウム塩を遊離酸に変換するためにさらなるエタノールで洗浄した。黒色のエタノール溶液を、カリウムtertブトキシド(2g;0.018mol)をエタノール(50mL)に含めたもので撹拌しながら処理した。得られた濁った褐色混合物を濾過し、エタノール、高温エタノール、高温エーテル、そして最後に高温アセトンで連続的に洗浄して、濃紫色の固体としてのニッケルジチオレンにカリウム塩(3.14g;44%)を与えた。λmax 781(4.11)、541(2.95);MS(ESI)m/z:651[(M−K)−、27%),306[(M−2K)2−、100];HRMS:m/z calcd for C20H26NiO6S62−(M+−2K)2−305.9708、found 305.9711。
【0357】
(実施例5)
(ニッケルジチオレン樟脳硫酸二ナトリウム塩)
樟脳キノン硫酸一水和物(4.12g、0.016mol)と五硫化リン(10.3g、0.023mol)の混合物をジオキサン(100mL)に含めたものを環流しながら2時間加熱した。過剰の五硫化リンを濾去し、ジオキサン(50mL)で洗浄した。塩化ニッケル(II)六水和物(8.10g、0.034mol)を水(50mL)に溶解させた溶液をジオキサン溶液に添加し、黒色の反応混合物を還流しながら2時間加熱した。得られた濃マゼンタ色の溶液を水(500mL)で希釈し、濾過し、クロロホルム(2×200mL)で抽出した。水層を水酸化テトラブチルアンモニウム(40%、60mL)でpH8に塩基性化し、クロロホルム(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を水(1×200mL)で洗浄し、減圧下で溶媒を除去した。テトラブチルアンモニウム塩をエタノールに溶解し、DOWEX−H+樹脂を通じて溶出して、遊離酸を与えた。次いで、このエタノール溶液を、Amberlite IRP−64樹脂(Na+形)のカラムを通じて溶出し、溶媒を除去して、濃紫色の粉末としてのナトリウム塩を与えた。λmax 783 nm;(ESI)m/z:635[(M−Na)−,27%),306[(M−2Na)2−,100];HRMS:m/z calcd for C20H26NiO6S62−(M+−2Na)2−305.9708,found 305.9723。
【0358】
(実施例6)
(パラジウムジチオレン樟脳硫酸二カリウム塩)
新たに蒸留したジオキサン(30mL)に樟脳キノン硫酸一水和物(0.59g;2.2mmol)を溶解させた溶液に五硫化リン(1.97g;4.4mmol)を添加した。反応混合物を還流下で2時間加熱し、濾過した。濾液を、酢酸パラジウム(0.25g;1.1mmol)を水(10mL)に含めたもので撹拌しながら処理すると、反応混合物が濁り、次いで濃紫色になった。全体を還流下で2時間加熱し、水(300mL)で希釈した。水酸化テトラブチルアンモニウム溶液(40%、5mL)を添加し、次いで混合物をクロロホルム(3×100mL)で抽出した。溶媒を蒸発によって除去し、紫色の残渣をエタノール(50mL)に溶解させてから、DOWEX−H+カラムに通した。DOWEXを無色になるまでエタノール(150mL)で洗浄した。得られたエタノール溶液をt−ブトキシド(1g;8.9mmol)で処理し、冷却して、紫色の固体を分離させた。固体を濾過し、エタノール(100mL)で洗浄し、乾燥させることによって、紫色の固体としてのパラジウム錯体(0.382g;50%)を与えた。λmax831nm。
【図面の簡単な説明】
【0359】
【図1】サンプル印刷ネットページとそのオンラインページ記述との関係の概略図である。
【図2】ネットページペンと、ウェブ端末と、ネットページプリンタと、ネットページ中継器と、ネットページサーバと、ネットページアプリケーションサーバと、ウェブサーバの対話の概略図である。
【図3】ネットワークを介して接続されたネットページサーバ、ウェブ端末および中継器の集合を示す図である。
【図4】印刷ネットページおよびそのオンラインページ記述の高レベル構造の概略図である。
【図5a】タグの4つのコードワードの符号のインターリーブおよび回転を示す平面図である。
【図5b】図5aに示されるタグに対するマクロドットレイアウトを示す平面図である。
【図5c】目標が、隣り合うタグ間で共用される、図5aおよび図5bに示されるタグのうちの9つの配置を示す平面図である。
【図5d】図5aに示されるタグの集合体と、ネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との関係を示す平面図である。
【図6】ネットページペン、およびそれに伴うタグ感知視野円錐体の斜視図である。
【図7】図6に示されるネットページペンの斜視分解図である。
【図8】図6および7に示されるネットページペンに対するペンコントローラの概略構成図である。
【図9】壁掛け式ネットページプリンタの斜視図である。
【図10】図9のネットページプリンタの長さに沿う断面図である。
【図10a】二重印刷エンジンおよび接着剤ホイール組立品ノブ分を示す図10の拡大部分である。
【図11】インクカートリッジ、インク、空気および接着剤経路、ならびに図9および10のネットページプリンタの印刷エンジンの詳細図である。
【図12】インクカートリッジの分解図である。
【図13】品目IDの構造の概略図である。
【図14】全タグの構造の概略図である。
【図15】ペンクラスダイアグラムの概略図である。
【図16】品目と、固定製品スキャナと、携帯式製品スキャナと、スキャナ中継器と、製品サーバと、製品アプリケーションサーバの対話の概略図である。
【図17】バイリシックプリントヘッドの斜視図である。
【図18】図17のバイリシックプリントヘッドの分解斜視図である。
【図19】図17のバイリシックプリントヘッドの一端に沿う断面図である。
【図20】図17のバイリシックプリントヘッドに沿う縦方向断面図である。
【図21(a)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(b)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(c)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図21(d)】図17のバイリシックプリントヘッドの側面図、平面図、反対側側面図および裏側平面図を示す図である。
【図22(a)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図22(b)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図22(c)】熱屈曲アクチュエータの基本動作原理を示す図である。
【図23】図22に従って構成された単一インクジェットノズル機構の立体図である。
【図24】図23に示されるノズル機構のアレイを示す図である。
【図25】バブル成形ヒータ素子アクチュエータの単位セルのインクチャンバに沿う概略断面図である。
【図26】実施例1に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図27】実施例2に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図28】実施例3に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図29】(1a−d)は、普通紙(80gsm)にスルホン化バナジルオクタブトキシフタロシアニンを含むインク溶液の反射スペクトルを示す図である。
【図30】実施例4に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図31】実施例5に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【図32】実施例6に従って調製された染料の吸収スペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR吸収染料における可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減することを含む方法。
【請求項2】
染料は、実質的に平面のπ系を含み、分子間相互作用は、π−π相互作用である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分子間相互作用は、立体反発によって低減される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
染料分子は、実質的に平面のπ系の平面から延びる少なくとも1つの部分を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
分子間相互作用は、架橋環状基を使用して低減される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分子間相互作用は、ポリマー基を使用して低減される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー基は、デンドリマーである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー基は、PEG鎖を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
IR吸収染料は、金属−リガンド染料である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
IR吸収染料は、金属−シアニン染料である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
IR吸収染料は、金属−ジチオレン染料である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、架橋環状基を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、ポリマー基を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、デンドリマーを含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、PEG鎖を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項16】
IR吸収染料を含むインクジェットインクにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法。
【請求項17】
前記インクジェットインクは、一重項酸素失活剤をさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インクジェットインクは、インクジェットプリンタのプリントヘッドと流動連絡するインク溜めに収容される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記プリントヘッドは、
複数のノズルと、
ノズルの各々にそれぞれ対応し、排出可能な液体を収容するように構成されたバブル成形室と、
バブル成形室の各々にそれぞれ配置されたヒータ素子であって、排出可能な液体の沸点を上回る温度にヒータ素子を加熱すると、排出可能な液体の液滴をノズルから排出させる気泡が形成されるように、排出可能な液体に熱接触するように構成されたヒータ素子とを備え、
ヒータ素子は、使用中に、ヒータ素子の少なくとも一部が排出可能な流体に取り囲まれ、かつ直接接触するようにインク室に懸垂される
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記インクジェットインクは、インクカートリッジに収容される請求項16に記載の方法。
【請求項21】
IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法。
【請求項22】
前記染料は、符号化データの形態で配置される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基体は、界面を含み、符号化データは、前記界面の実質的な部分に対して配置される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記基体は、紙シート、ラベル、タグ、包装材または品目である請求項21に記載の方法。
【請求項25】
印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の識別情報および書式の複数の基準点を示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、書式の識別情報、および書式に対する感知デバイスの位置に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、書式に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、かつ指示データから、書式の少なくとも1つのフィールドを識別するステップと、
コンピュータシステムにおいて、少なくとも1つのフィールドに関する指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項26】
少なくとも1つのフィールドは、書式の少なくとも1つのゾーンに対応づけられ、識別するステップは、感知デバイスの位置が少なくとも1つのゾーン内にあることを確認することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
指示データは、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含み、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して移動データを生成し、識別するステップは、感知デバイスの移動が、少なくとも部分的に少なくとも1つのゾーン内であることを確認することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の少なくとも1つのフィールドを示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、少なくとも1つのフィールドに関するとともに、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含む指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して前記少なくとも1つのフィールドに関するデータを生成し、書式に対するデバイスの移動に関するデータを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィールドに関する前記指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項29】
感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して移動データを生成する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのフィールドは、テキストフィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部をテキストに変換することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのフィールドは、描画フィールドである請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのフィールドは、チェックボックスフィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部をチェックマークと解釈することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのフィールドは、署名フィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部が、感知デバイスに対応づけられたユーザの署名を表すことを確認することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つのフィールドは、動作フィールドであり、解釈するステップは、動作フィールドに対応づけられたアプリケーションにメッセージを送ることを含む請求項25または28に記載の方法。
【請求項35】
動作フィールドは、書式提出動作フィールドであり、メッセージは、書式の少なくとも1つの他のフィールドから導かれた書式データを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
品目を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を記録するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項37】
品目を介してコンピュータシステムからデータを検索することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を検索するステップと、
(c)コンピュータシステムから出力デバイスに対して、品目に関する情報を出力するステップであって、出力デバイスは、表示デバイスおよび印刷デバイスを含む群から選択されるステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項38】
符号化データは、複数の符号化データ部から形成され、各符号化データ部は、品目の識別情報を示す請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
符号化データは、品目に対応づけられたUPCおよびEPCの少なくとも一方を示す請求項36または37に記載の方法。
【請求項40】
書式は、品目の表面に配置され、符号化データは品目の識別情報を示す請求項25または28に記載の方法。
【請求項41】
符号化データは、複数の符号化データ部から形成され、各符号化データ部は、品目の識別情報を示す請求項40に記載の方法。
【請求項42】
符号化データは、品目に対応づけられたUPCおよびEPCの少なくとも一方を示す請求項40に記載の方法。
【請求項43】
符号化データは、人間の裸眼には実質的に不可視である請求項25、28、36および37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
IR吸収染料における可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減することを含む方法。
【請求項2】
染料は、実質的に平面のπ系を含み、分子間相互作用は、π−π相互作用である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分子間相互作用は、立体反発によって低減される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
染料分子は、実質的に平面のπ系の平面から延びる少なくとも1つの部分を含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
分子間相互作用は、架橋環状基を使用して低減される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分子間相互作用は、ポリマー基を使用して低減される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー基は、デンドリマーである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー基は、PEG鎖を含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
IR吸収染料は、金属−リガンド染料である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
IR吸収染料は、金属−シアニン染料である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
IR吸収染料は、金属−ジチオレン染料である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、架橋環状基を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、ポリマー基を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、デンドリマーを含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
金属−リガンド染料を予め選択するステップであって、少なくとも1つのリガンドが、PEG鎖を含むステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項16】
IR吸収染料を含むインクジェットインクにおける可視光の吸収を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法。
【請求項17】
前記インクジェットインクは、一重項酸素失活剤をさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インクジェットインクは、インクジェットプリンタのプリントヘッドと流動連絡するインク溜めに収容される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記プリントヘッドは、
複数のノズルと、
ノズルの各々にそれぞれ対応し、排出可能な液体を収容するように構成されたバブル成形室と、
バブル成形室の各々にそれぞれ配置されたヒータ素子であって、排出可能な液体の沸点を上回る温度にヒータ素子を加熱すると、排出可能な液体の液滴をノズルから排出させる気泡が形成されるように、排出可能な液体に熱接触するように構成されたヒータ素子とを備え、
ヒータ素子は、使用中に、ヒータ素子の少なくとも一部が排出可能な流体に取り囲まれ、かつ直接接触するようにインク室に懸垂される
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記インクジェットインクは、インクカートリッジに収容される請求項16に記載の方法。
【請求項21】
IR吸収染料が配置された基体の可視着色を最小限にする方法であって、隣り合う染料分子間の分子間相互作用を低減するステップを含む方法。
【請求項22】
前記染料は、符号化データの形態で配置される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基体は、界面を含み、符号化データは、前記界面の実質的な部分に対して配置される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記基体は、紙シート、ラベル、タグ、包装材または品目である請求項21に記載の方法。
【請求項25】
印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の識別情報および書式の複数の基準点を示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、書式の識別情報、および書式に対する感知デバイスの位置に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、書式に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、かつ指示データから、書式の少なくとも1つのフィールドを識別するステップと、
コンピュータシステムにおいて、少なくとも1つのフィールドに関する指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項26】
少なくとも1つのフィールドは、書式の少なくとも1つのゾーンに対応づけられ、識別するステップは、感知デバイスの位置が少なくとも1つのゾーン内にあることを確認することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
指示データは、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含み、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して移動データを生成し、識別するステップは、感知デバイスの移動が、少なくとも部分的に少なくとも1つのゾーン内であることを確認することを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
印刷書式を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、書式は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含み、符号化データは、書式の少なくとも1つのフィールドを示す方法であって、
コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、少なくとも1つのフィールドに関するとともに、書式に対する感知デバイスの移動に関する移動データを含む指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して前記少なくとも1つのフィールドに関するデータを生成し、書式に対するデバイスの移動に関するデータを生成するステップと、
コンピュータシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィールドに関する前記指示データの少なくとも一部を解釈するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小限にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項29】
感知デバイスは、符号化データの少なくとも一部を使用して移動データを生成する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのフィールドは、テキストフィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部をテキストに変換することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのフィールドは、描画フィールドである請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのフィールドは、チェックボックスフィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部をチェックマークと解釈することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのフィールドは、署名フィールドであり、解釈するステップは、移動データの少なくとも一部が、感知デバイスに対応づけられたユーザの署名を表すことを確認することを含む請求項26、27および28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つのフィールドは、動作フィールドであり、解釈するステップは、動作フィールドに対応づけられたアプリケーションにメッセージを送ることを含む請求項25または28に記載の方法。
【請求項35】
動作フィールドは、書式提出動作フィールドであり、メッセージは、書式の少なくとも1つの他のフィールドから導かれた書式データを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
品目を介してコンピュータシステムにデータを入力することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を記録するステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項37】
品目を介してコンピュータシステムからデータを検索することを可能にする方法であって、品目は、人間が読取り可能な情報および機械が読取り可能な符号化データを含む印刷表面を有し、符号化データは、品目の識別情報を示す方法であって、
(a)コンピュータシステムにおいて、かつ感知デバイスから、品目の識別情報に関する指示データを受信するステップであって、感知デバイスは、品目に対する動作位置に配置されると、符号化データの少なくとも一部を使用して指示データを生成するステップと、
(b)コンピュータシステムにおいて、かつ指示データを使用して、品目に関する情報を検索するステップと、
(c)コンピュータシステムから出力デバイスに対して、品目に関する情報を出力するステップであって、出力デバイスは、表示デバイスおよび印刷デバイスを含む群から選択されるステップとを含み、
前記符号化データは、請求項1に記載の方法によって可視吸収が最小にされるIR吸収染料を含む方法。
【請求項38】
符号化データは、複数の符号化データ部から形成され、各符号化データ部は、品目の識別情報を示す請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
符号化データは、品目に対応づけられたUPCおよびEPCの少なくとも一方を示す請求項36または37に記載の方法。
【請求項40】
書式は、品目の表面に配置され、符号化データは品目の識別情報を示す請求項25または28に記載の方法。
【請求項41】
符号化データは、複数の符号化データ部から形成され、各符号化データ部は、品目の識別情報を示す請求項40に記載の方法。
【請求項42】
符号化データは、品目に対応づけられたUPCおよびEPCの少なくとも一方を示す請求項40に記載の方法。
【請求項43】
符号化データは、人間の裸眼には実質的に不可視である請求項25、28、36および37のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10a】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21(a)】
【図21(b)】
【図21(c)】
【図21(d)】
【図22(a)】
【図22(b)】
【図22(c)】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10a】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21(a)】
【図21(b)】
【図21(c)】
【図21(d)】
【図22(a)】
【図22(b)】
【図22(c)】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2008−509256(P2008−509256A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525122(P2007−525122)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001136
【国際公開番号】WO2006/015407
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001136
【国際公開番号】WO2006/015407
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
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