説明

赤外線人体検出装置

【課題】空間の背景温度と異なる温度をもつ熱源を検出し、その熱源が人であるかどうかを識別し、人と判断した熱源の位置座標、発熱体の大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、熱源周辺の背景温度を出力する。
【解決手段】2次元に配置された赤外線検出素子を用い空間の温度分布を計測し、その背景温度と異なる温度をもつ発熱体が空間に存在した場合、その発熱体の重心を求め、重心の位置座標を記憶していき、順次検出した発熱体の重心座標を中心とする設定エリア内に記憶された重心座標の数が設定値を超えたとき、その発熱体は人である情報と共に、発熱体の位置座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、熱源周辺の背景温度を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元に配置された赤外線検出素子を具備し、空間の温度検出を行って発熱物体を検出し、検出発熱体の位置情報、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、背景温度を出力。さらに、その発熱物体が人であるかその他の発熱体であるか判断し、人であると判断した場合、その発熱体が人であると示す情報、位置座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、発熱体周辺の背景温度を出力する赤外線人体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の人体検出装置は2次元状に配置された複数のサーモパイル素子で空間の各領域の温度を計測し、異なった計測時間での差分温度より人の存在を検出する人体検出装置が従来技術として知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3805165公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で示される従来の人体検出装置では検出エリア内にテレビ等の電源を入れてから発熱を始める発熱体が存在した場合、テレビ等の温度上昇とともに時間軸での差分温度が発生してしまい、テレビ等を人体と誤検出してしまう問題がある。誤検出を長時間続けないために、長時間熱源のダイナミックな移動が無い場合人体検知情報はキャンセルされてしまい長時間のデスクワークをしている人体は検出できなくなってしまい無人の部屋となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る人体検出装置は、2次元に配置された赤外線検出素子を用いて繰り返し空間及び背景より放射される赤外線を検出し、赤外線量を温度換算することで空間の温度分布を計測し、その背景温度と異なる温度をもつ発熱体が空間に存在した場合、その発熱体の重心をもとめ、重心の位置座標を記録、マッピング処理を行っていき、検出した発熱体の重心座標を中心とする設定エリア内に記録された重心座標の数が設定値を超えたとき、その重心座標は人が長時間活動する場所であるとし、そこで検出した発熱体は人であると判断し、発熱体の位置座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、熱源周辺の背景温度を出力するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、人体検出空間内に存在し温度変動する発熱体に惑わされることなく人体位置を検出することができ、且つ、人体の位置座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、熱源周辺の背景温度を得ることで、人体の活動状況、静止している人体であれば時系列での人体表面温度の変化と背景温度の変化により、人体が置かれている環境が快適な環境であるのか、不快な環境であるのか、または、快適な環境に移行しているのか、不快な環境に移行しているのか判断する情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置のブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置で計測した空間の温度分布を記憶部3に記憶し、2次元配列の状態で表した図。
【図3】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置の記憶部2に記憶されたラベリング処理後の2次元配列の状態を表した図。
【図4】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置の記憶部3に記憶された重心の軌跡を記録した2次元配列の状態を表した図。
【図5】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置で計測を開始し、一定時間が経過した後の検出空間の温度分布を記憶部1に記憶し、2次元配列の状態で表した図。
【図6】本発明の実施例に係る赤外線人体検出装置で計測を開始し、一定時間が経過した後の重心の軌跡を記憶部3に記憶し、2次元配列の状態で表した図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は本発明の実施の形態を示す赤外線人体検出装置の説明図である。2次元赤外線検出素子100が16×16、計256個の赤外線検出素子の場合を例にとり示す。2次元赤外線検出装置は検出空間を縦16、横16の256空間に分割し、分割された検出空間から放出される赤外線を個々の赤外線検出素子で検出する。
【0009】
まず、CPU102は2次元赤外線検出素子のマトリクススイッチを切り替え、個々の赤外線検出素子からの出力信号を信号処理回路101に出力する。信号処理回路101はこの赤外線検出素子からの信号を増幅、A/D変換を行いCPU102にデジタルデータとして出力する。CPU102は得られたデータを温度換算式に基づき温度データに変換後、記憶部1、103に順次記憶していく。記憶部1、103へは16×16=256個を2次元配列データとして図2で示すように記憶していく。
【0010】
CPU102は検出空間全体256個のデータの記憶部1,103への記憶が終了すると記憶部1,103の温度データのヒストグラムを求める。図2で示す例の場合、分布が最大となる温度25℃を背景温度とする。
CPU102は得られた背景温度を用い、熱源を検出するための閾値温度を変換テーブルまたは計算式より求め、記憶部1,103のデータと比較演算、2値化、ラベリング処理を行い記憶部2、104にラベリング処理結果を記憶する(図3参照)。同時に各熱源の重心座標も計算する。図3の例では左上の熱源の重心座標が(a5,b3)、右下の熱源の重心座標が(a11,b10)と求まる。この時の各ラベルNOの数が抽出した熱源の大きさとなる。
【0011】
次にCPU102は各熱源の重心座標と同じ記憶部3、105の座標に重心座標の軌跡のマッピング処理として(a5、b3)、(a11、b10)に1を書き込む(図4参照)。
【0012】
次にCPU102は重心(a5,b3)の周辺(a3,b1)から(a7,b5)の範囲に、また、(a11,b10)の周辺(a9,b6)から(a13,b12)の範囲に過去に記録した重心が何ポイントあるか数える。図4の場合各熱源とも1ポイントであり、人体検出の閾値数が10ポイント以上と設定されていれば、2つの熱源は人体と認識されない。まだ、その熱源が人体かどうかはわかっていないので、赤外線人体検知装置は、人体ではないというマーク信号を送出後、熱源の重心座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、背景温度を出力する。
【0013】
本発明の赤外線人体検出装置は以上の処理を繰り返し行い、上記処理を繰り返す過程で動きのある熱源、すなわち人体であれば記憶部3、105にマッピングされた重心の軌跡は少しずつ拡大していき、動きの無い熱源は熱の揺らぎで重心の軌跡が多少拡大はするが熱源の範囲を超え大きく拡大することは無い。この時、記憶部3、105に記憶した重心の周辺を調べる範囲及び人体と判断する重心の数は、赤外線検出素子の数および人体検出を目的とする用途、検出範囲によってあらかじめ決定されている。
【0014】
処理を繰り返す過程で図5のような2つの熱源を抽出した場合、重心座標(a5,b3)、(a10,b10)を得ることができ、この座標の軌跡は図6で示す記憶部3、105に重ね書きされると同時に、その周辺の重心の軌跡の数がカウントされる。重心座標(a5,b3)を持つ熱源のカウント数は2であり、あらかじめ設定された10より少ないため、この場所は人が活動する場所ではなく、検出された熱源は人体と認識しない。重心座標(a5,b3)で抽出した熱源は、人体ではないとのマーク信号を送出後、重心座標データ(a5,b3)、大きさ9、平均温度30℃、最大温度30℃、最小温度30℃、背景温度25℃を出力する。
重心座標(a10,b10)を持つ熱源は周辺の重心の軌跡の数のカウント数が10となりこの場所は人が活動する場所であり、この場所で検出された熱源は人体と判定し、CPU102は接続された外部機器に対し人体であるとのマーク信号を送出後、重心座標データ(a10,b10)、熱源の大きさ9、熱源内の平均温度30℃、最高温度30℃、最低温度30度、背景温度25℃を出力する。
本発明による赤外線人体検出装置は座標(a5,b3)に存在する熱源の温度が変化しても重心座標は大きく変化しないため人の活動場所ではないと判断され、長時間この場所で検出する熱源を人体と間違って検出することは無い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の赤外線人体検出装置を空気調和装置のセンサとして利用した場合、検出した背景温度情報より人体にとって快適な温度環境であるかどうかの判断を行い、たとえば背景温度が30℃以上である不快な環境であれば最短で快適な環境温度となるように最大出力で空調をおこない。人体ではない熱源の位置、大きさ、温度、そして、人体の位置の抽出、人体の表面温度の分布の状態、人体周辺の背景温度を時順次得ることで、過剰に人体周辺の温度を下げたりすることなく、いち早く快適で省エネルギーな運転状態へ移行することが可能となる。
また、本発明の赤外線検出装置の2次元に配列された赤外線検出素子の画素数を増やせば、より細かな人体の重心座標の変化追跡が可能となり、一定の座標間を移動するような動きと、時間帯とで、就寝状態の人体であると判断でき、検出面積の変動、重心位置の変動を追跡することで人体の寝返り等の動きが検出でき、レム睡眠状態であるか、ノンレム睡眠状態であるかの判定を行うことができると共に、空気調和装置の室温コントロールの結果が快適な眠りを提供できているかの判定も行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0016】
100 2次元に配列された赤外線検出素子。
101 赤外線検出素子からの信号を増幅しA/D変換を行いデータとして出力する信号処理回路部。
102 赤外線検出素子100、信号処理回路部をコントロールし、各種演算処理をおこなう制御部。
103 赤外線検出素子からの信号を温度データに変換し記憶する記憶部1。
104 記憶部1に記憶された温度データを2値化、ラベリング処理した結果を記憶する記憶部2。
105 記憶部2に記憶したデータの重心を計算し、重心の軌跡データとしてマッピング情報を記憶する記憶部3。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも16×16素子以上の2次元に配列された赤外線検出素子を備え、各素子が検出した空間から放射される赤外線強度を温度に換算し、各空間の温度として記憶する記憶手段を備え、計測した空間温度全体のヒストグラムをとり、分布の中心温度を背景温度として背景温度と設定温度以上の温度差のある空間を熱源として抽出し、抽出した熱源の重心座標を求め、重心座標記憶する記憶手段を備え、これらの処理を繰り返しながら、新たに抽出した熱源の重心座標周辺の設定エリア内に記憶されている重心の数が設定値以上になった時に熱源を検出した場所は人の活動する場所であるとし、抽出された熱源は人体であると判断する人体検出手段を備えたことを特徴とする赤外線人体検出装置。
【請求項2】
人体であると判断した場合、人体であるというマーク信号を送出後、人体の座標、大きさ、熱源の平均温度、最大温度、最小温度、熱源周辺の背景温度を出力することを特徴とする請求項1に記載の赤外線人体検出装置。
【請求項3】
抽出した熱源が人体と判断していない熱源であっても、人体ではないというマーク信号を送出後、各抽出した熱源の座標、大きさ、平均温度、最大温度、最小温度、背景温度の情報を出力することを特徴とする請求項1項に記載の人体検出装置。
【請求項4】
前記熱源を抽出する際の背景温度との温度差は、計測される背景温度によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の人体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37408(P2012−37408A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178393(P2010−178393)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】