説明

赤外線低反射加工織編物

【課題】布帛の風合いを損なわずに目的とする赤外領域の反射率を達成できる迷彩加工織編物を提供する。
【解決手段】ポリアミド繊維からなる織編物またはポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物を、硫化物および還元剤を含まず且つ硫黄の二重結合をもたない硫化染料を用いて無地染めして、600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の赤外線反射率を示す織編物とし、ポリアミド繊維からなる織編物に対しては酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物に対しては分散染料と顔料を用いて多段階の赤外線反射率を示す迷彩柄に染色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線領域における迷彩効果を有する織編物であって、迷彩衣服、迷彩個人装具などに好適に適用し得る赤外線低反射加工織編物、迷彩加工織編物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軍隊などの野戦偽装などの存在を識別するために赤外線が利用され、迷彩識別用眼鏡、赤外線写真、夜間赤外線探知装置などが使用されている。一方、これら赤外線による識別方法から逃れる目的で、周囲環境と同じような赤外線反射能を有するカバー、迷彩服および個人装具品などが開発されている。
【0003】
さらに、高度な赤外線探知法に対抗する方法として、可視光線および赤外線領域ともに任意にその反射率を制御することが望まれている。従来の可視光線および赤外線領域の反射率を制御する方法として次のようなものが記載されている。
【0004】
特許文献1には、ビニロン系織物に建染染料、硫化染料を用いて3段階の異なる赤外線反射率を示す迷彩プリント加工をする方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリアミド系織物に直接染料、酸性染料、含金属染料などのアニオン染料、バット染料、硫化染料および顔料・バインダーを用いてプリントする際、布総面積の70〜95%がアニオン染料および/またはバット染料で着色され、同5〜30%が染料・バインダーでプリントされている、3段階以上の異なる赤外線領域の反射率を有する迷彩加工布が記載されている。
また、特許文献3には、近赤外線透過率50%以上の合成繊維織物表面に染料および/または顔料でプリントし、裏面に顔料および/または赤外線吸収剤を含有する樹脂膜で被覆した迷彩加工布帛が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のいずれの方法も、迷彩柄を構成する各色の柄が、可視光線領域および赤外線領域の反射率をそれぞれ所望の値になるように染料および/または顔料を選択し、色糊を作製した後柄として印捺し、発色あるいは固着させる方法である。
【0006】
特許文献1の場合は建染染料を用いているので染色の還元時に強い還元剤を使用しなくてはならず、還元剤による繊維が劣化するおそれがある。
【0007】
また、特許文献2においても、建染染料を用いた部分は繊維が劣化するおそれがあり、また、顔料のみをバインダー樹脂糊で付与される部分は風合いが硬く、しかも洗濯耐久性に欠けるという欠点がある。
【0008】
また、特許文献3においては、布帛に染料と顔料をもちいて着色し、更に布帛の裏面に顔料および/または赤外線吸収材を含有する樹脂膜で被覆することが記載されており、そのため布帛全体の風合いが損なわれるおそれがある。
【0009】
また、従来の方法では、布帛の素材の種類、配色、染料特性などの要求品質を満足させ、且つ可視光線および赤外線領域の反射率をそれぞれ所望の値にするには、制限された染料および/または顔料の中から、さらに選択せざるをえないのが現状である。
【0010】
【特許文献1】特開平2−154084号公報
【特許文献2】特開平5−60496号公報
【特許文献3】特開2001−55669号公報
【0011】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決することにあり、特に布帛の風合いを損なわずに赤外領域の反射率を達成でき、且つ吸光蓄熱性を有する迷彩加工衣料等に好適な赤外線低反射加工織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1に硫化物および還元剤を含まず、且つ硫黄の二重結合をもたない硫化染料を用いて無地染めしたポリアミド繊維またはポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物であって、600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の赤外線反射率を示すことを特徴とする赤外線低反射加工織編物である。
【0013】
本発明は、第2に、硫化染料が下記の化学式1で示されることを特徴とする上記赤外線低反射織編物である。
【化1】

【0014】
本発明は、第3に、該硫化染料で無地染めした上に、ポリアミド繊維からなる織編物に対しては酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物に対しては分散染料と顔料を用いて染色し、多段階の赤外線反射率を示す迷彩柄を有する上記の赤外線低反射加工織編物である。
【0015】
本発明は、第4に、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物のポリアミド繊維の混率が5〜70%である上記の赤外線低反射加工織編物である。
【0016】
本発明は、第5に、JIS L 0217 103法にて10回洗濯後の変退色が4級以上で、ライトグリーン部の1000〜1200nmの赤外線反射率の洗濯前からの低下率が1%以内であり、吸光蓄熱性評価方法において、300秒後に10℃以上の吸光蓄熱性を有する上記の赤外線低反射率加工織編物である。
【0017】
本発明は、第6に、ポリアミド繊維からなる織編物またはポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物を、硫化物および還元剤を含まず且つ硫黄の二重結合をもたない硫化染料を用いて無地染めして、600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の赤外線反射率を示す織編物とし、次いで該織編物を、ポリアミド繊維からなる織編物に対しては酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物に対しては分散染料と顔料を用いて600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の多段階の赤外線反射率を示す迷彩柄に染色すること特徴とする迷彩加工織編物の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硫化染料で無地染めして600〜1200nmで赤外線の反射率を65%以下に下げた布帛に、染料および顔料を用いて迷彩柄を形成するので、用いる染料や顔料の使用量を減らすことができ、更にバインダー樹脂などの使用量を少なくすることができるので、布帛の風合いを損なうことなく、耐光堅牢度、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度に優れ、赤外領域において優れた迷彩効果を有すると共に吸光蓄熱性を有する織編物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明で使用する織編物の素材としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維100%からなる織編物、または、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維との交編織、もしくは混紡布帛が使用される。ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させるとは、織編物の面積に亘ってポリアミド繊維が偏り無く分布し、ほぼ均一に織編み込まれた状態をいう。
また、本発明の織編物には異形断面糸を用いることもできる。異形断面のものを用いることにより織編物に吸汗性を付与することができる。
【0020】
ポリアミド繊維とポリエステル繊維の交編織や混紡品におけるポリアミド繊維の割合は5〜70%、好ましくは15〜60%である。ポリアミド繊維の割合が5%より少ないと硫化染料で染色された部分が少なく赤外線反射率を65%以下にすることが難しくなり、70%より多くなると外衣に用いたときに十分な強度を保つことが難しくなるおそれがある。
【0021】
肌着やTシャツなどの中衣用途には、ポリアミド繊維100%からなる織編物を用い、優れた耐光性、耐候性や強度が必要な外衣などにはポリアミド繊維とポリエステル繊維を用いた交編織布帛などを用いることが好ましい。
【0022】
また、本発明の織編物は、天竺、両面スムース、鹿の子、またはこれらの変化編みなどの組織を用いたポリアミド繊維を均一に分布させた各種の組織の編物や、ポリアミド繊維を織物に均一に分布させた各種の組織の織物を用いることができる。特に、ポリアミド繊維とポリエステル繊維の交織編物の場合は、織編物の裏面にポリアミド繊維が均一にまたは全面に露出し、他方表面にポリエステルが多く露出する、例えば二重織編物のような組織であることが好ましい。
【0023】
これらの織編物をまず、所定の硫化染料にて液流染色法等による浸染、パディングまたは捺染により無地染め染色する。使用する染料としては、硫化物や還元剤を含まず硫黄の二重結合をもたない硫化染料が使用され、特に下記の化学式1で示されるものが好ましい。
【0024】
本発明で用いる硫化染料は硫化物、還元剤や硫黄の二重結合を含まないので、織編物の脆化を抑えることができる。また、一般に、硫化染料はいくつかの構造の混合物であり、染料製造工程で用いる還元剤などの不純物を含んでいるため染色時の色の再現性に劣るところがあるが、本発明で用いる化学式1の硫化染料は単一構造でかつ硫化物や還元剤を含まないため染色の色再現性にすぐれている。
【0025】
更に、硫化染料で無地染めした上にポリアミド繊維のみで構成された織編物の場合は酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維で構成された布帛は分散染料と顔料を用いて、捺染やインクジェット捺染などの方法により染色し、迷彩加工を施すことが好ましい。なお、染色後の仕上げ加工剤として、赤外線吸収性を有する加工剤を使用することも可能である。
【0026】
【化2】

【0027】
染法が類似のものとして建染染料がある。建染染料も赤外線吸収効果があり、ポリアミド繊維に染色でき、染料を還元して繊維に固着させ酸化することで染色を行うが、建染染料は還元電位が高いため強い還元剤を用いなくてはならず、還元剤により繊維が劣化するおそれがあった。これに対し硫化染料は還元電位が低いので、強い還元剤を併用する必要がなく、繊維の劣化が抑えられる。
【0028】
また、硫化染料や建染染料は多くのベンゼン環が縮合した化学構造を持ち、可溶化後、繊維に固着させ、不溶化して高い染色堅牢度を持つ染料であるが、本発明で用いる硫化染料は、硫化物や還元剤を含まず硫黄の二重結合をもたず、ベンゼン環が連続して且つ側鎖のない構造を持ち分子量の高い硫黄分子を含む、硫黄の二重結合のない分子量の大きな化学式1の化学構造を持つ染料で、光エネルギーを効率的に、熱エネルギーに交換する性能が大きいと考えられる。硫化染料の分子量は400以上が好ましい。
【0029】
また、本発明で用いられる酸性染料としては、例えば、Acid Blue 258、Acid Blue 40、Acid Blue 296、Acid Blue 232、Acid Blue 120、Acid Blue 113、Acid Blue 171、Acid Green 25、Acid Green 73、Acid Green 103、Acid Green 28、Acid Green 109、Acid Black 132、Acid Black 194、Acid Black 112、Acid Black 58、Acid Black 170、Acid Black 222、Acid Orenge 149、Acid Orenge 56などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、本発明で用いられる分散染料としては、例えば、Disperse Yellow 114、Disperse Yellow 192、Disperse Yellow 211、Disperse Red 167:1、Disperse Red 343、Disperse Blue 60、Disperse Blue 79、Disperse Blue 343などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
また、本発明で用いられる顔料としては、適宜の有機系顔料や無機系顔料を挙げることができるが、カーボンブラックやシアニンブルーなどが好ましく用いられる。これらの顔料を、アクリル酸エステル共重合エマルジョンとイソシアネート系化合物とからなる糊(バインダー樹脂糊)に練り込んで、これをプリントして固着することができる。
【0032】
上記の硫化染料を用いて浸染、パディングまたは捺染により織編物の600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって赤外線反射率を65%以下にした上で、更に顔料および酸性染料または分散染料を用いて多段階の迷彩柄を形成するので、可視光領域および赤外線領域に亘る多段階の迷彩加工を施すことができる。また、硫化染料で染色し、赤外線の反射率を65%以下に下げ、その上に酸性染料や分散染料や顔料を用いて可視光領域および赤外領域における多段階赤外線反射率を有する迷彩柄を形成するため、該染料や顔料の使用量を少なくすることができ、更にバインダー樹脂糊の使用量を少なくできるため、顔料やコーティングのみによる着色物と比較して風合いが柔らかく、洗濯耐久性にすぐれた迷彩加工織編物を得ることができる。ここで多段階とは、2段階以上をいい、たとえば3〜5段階が典型例として挙げられるが、勿論これらに限定されない。
【0033】
以下、本発明を実施例に従って詳細に説明する。
測定方法
〔赤外線反射率〕
株式会社島津製作所製UV−3100を用いて生地の可視光および赤外線領域の反射率を測定した。
〔摩擦堅牢度〕
JIS L 0849に準じて測定した。
〔耐光堅牢度〕
JIS L 0842に準じて測定した。
〔洗濯耐久性〕
JIS L 0217の103法に準じて10回繰り返し洗濯した。洗濯前後の布帛表面の変退色程度から判定した。
【0034】
〔風合い〕
試料を官能検査にて評価した。
○ 柔らかい
△ 普通
× 硬い
〔赤外線反射率耐久性〕
JIS L 0217103法に準じて10回繰り返し洗濯した後の1000〜1200nmにおける平均赤外線反射率の上昇値を測定した。
【0035】
〔吸光蓄熱性〕
試料を2×3cmの袋状にし、熱電対温度計(ティアンドディ社製 TR−71S)の測定部を包み、発泡スチロールの上に置いた。室温20℃、湿度65%に保たれた室内で、光源にレフランプ(300W)を用い、60cmの高さから試料の表面を300秒間照射し試料の温度を測定し、温度上昇差により蓄熱効果を評価した。この値の大きいものほど吸光蓄熱性が優れる。
【実施例1】
【0036】
表地ポリエステル長繊維100%、裏地ナイロン6長繊維40%ポリエステル長繊維60%からなる目付け150g/mの編物に精練、ヒートセットを施したものを用い、化学式1の硫化染料を用いて、浸染により、窒素雰囲気下で下記処方1を用い、95℃で40分間ナイロン6の染色を行った。
処方1
硫化染料
(Diresul Black 4GEV クラリアントジャパン(株)製)
8%owf
ソーダ灰 24%owf
二酸化チオ尿素 18%owf
無水芒硝 30g/L
【0037】
その後、硫化染料で染色した編物をメタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ5g/L溶液中で60℃で20分間洗浄後、界面活性剤2g/L、ソーダ灰2g/L、ハイドロサルファイト2g/L溶液中で90℃で10分間洗浄後、水洗し乾燥を行った。この生地の表面をライトグリーン、ダークグリーン、ブラウン、ブラックの領域に分割分布するような意匠を、下記の処方の色糊にて、表地のポリエステル繊維を捺染し、迷彩柄を作製した。
ライトグリーン
Disperse Yellow 114 0.4部
Disperse Red 167:1 0.25部
Disperse Blue 60 0.5部
捺染元糊 55部
水 44.3部
【0038】
ダークグリーン
Disperse Yellow 114 1.4部
Disperse Red 167:1 0.4部
Disperse Blue 60 1.2部
カーボンブラック顔料 0.04部
捺染元糊 30部
バインダー 8部
(エステル系ウレタン樹脂 大日本インキ化学工業(株)製)
糊改質剤 0.8部
(非イオン系界面活性剤)
ターペン 8部
架橋剤 0.8部
(ブラック化イソシアネート化合物 大日本インキ化学工業(株)製)
水 50部
【0039】
ブラウン
Disperse Yellow 114 1.6部
Disperse Red 167:1 1.1部
Disperse Blue 60 0.6部
カーボンブラック顔料 0.16部
捺染元糊 30部
バインダー 8部
糊改質剤 0.8部
ターペン 8部
架橋剤 0.8部
水 46部
【0040】
ブラック
DISPERSE BLACK P−4 8.0部
(紀和化学工業(株)製)
カーボンブラック顔料 2.5部
捺染元糊 30部
バインダー 8部
糊改質剤 0.8部
ターペン 8部
架橋剤 0.8部
水 41部
【0041】
印捺後120℃で5分間乾燥した後、高温スチーマーにより175℃で7分間加熱蒸熱処理を行った。次いで水洗後、アニオン活性剤2g/L、ソーダ灰3g/L、ハイドロサルファイト3g/Lからなる水溶液で80℃で10分間洗浄した後、水洗、乾燥を行った。得られた布帛の風合い、染色堅牢度等を表1に、赤外線反射率耐久性について表2に、吸光蓄熱性能を表3に、赤外領域の反射率を図1に示す。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1と同様の編物を精錬し、ヒートセットを行った。この生地の表面をライトグリーン、ダークグリーン、ブラウン、ブラックの領域に分割分布するような意匠を、下記の処方の色糊にて、表地のポリエステル繊維を捺染し、迷彩柄を作製した。
【0043】
ライトグリーン
Disperse Yellow 114 0.4部
Disperse Red 167:1 0.25部
Disperse Blue 60 0.5部
カーボンブラック顔料 0.05部
捺染元糊 30部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 46部
【0044】
ダークグリーン
Disperse Yellow 114 1.0部
Disperse Red 167:1 0.4部
Disperse Blue 60 1.2部
カーボンブラック顔料 0.1部
捺染元糊 30部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 46部
【0045】
ブラウン
Disperse Yellow 114 1.6部
Disperse Red 167:1 1.1部
Disperse Blue 60 0.6部
カーボンブラック顔料 0.3部
捺染元糊 30部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 46部
【0046】
ブラック
DISPERSE BLACK P−4 8.0部
カーボンブラック顔料 3.5部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 40部
【0047】
120℃で5分間乾燥した後、高温スチーマーにより175℃で7分間加熱蒸熱処理を行った。次いで水洗後、アニオン活性剤2g/L、ソーダ灰3g/L、ハイドロサルファイト3g/Lからなる水溶液で80℃で10分間洗浄した後、水洗、乾燥を行った。得られた布帛の風合い、染色堅牢度等を表1に、赤外線反射率耐久性について表2に、吸光蓄熱性能を表3に、赤外領域の反射率を図2に示す。
【0048】
〔比較例2〕
実施例1と同様の布帛を精錬し、ヒートセットを施した。
この生地の表面をライトグリーン、ダークグリーン、ブラウン、ブラックの領域に分割分布するような意匠を、下記の処方の色糊にて、表地のポリエステル繊維を捺染し、迷彩柄を作製した。
【0049】
ライトグリーン
Disperse Yellow 114 0.4部
Disperse Red 167:1 0.25部
Disperse Blue 60 0.5部
捺染元糊 55部
水 44.3部
【0050】
ダークグリーン
Disperse Yellow 114 1.0部
Disperse Red 167:1 0.4部
Disperse Blue 60 1.2部
捺染元糊 55部
水 42.4部
【0051】
ブラウン
Disperse Yellow 114 1.6部
Disperse Red 167:1 1.1部
Disperse Blue 60 0.6部
捺染元糊 55部
水 41.4部
【0052】
ブラック
DISPERSE BLACK P−4 8.0部
捺染元糊 55部
水 37部
【0053】
120℃で5分間乾燥した後、高温スチーマーにより175℃で7分間加熱蒸滅処理を行った。次いで水洗後、アニオン活性剤2g/L、ソーダ灰3g/L、ハイドロサルファイト3g/Lからなる水溶液で80℃で10分間洗浄した後、水洗、乾燥を行った。得られた布帛の風合い、染色堅牢度等を表1に、吸光蓄熱性能を表3に、赤外領域の反射率を図3に示す。
【実施例2】
【0054】
ナイロン6長繊維100%からなる目付け140g/平方mの編物に、精練、ヒートセットを施したものを用い、化学式1の硫化染料を用いて、浸染により、窒素雰囲気下で下記処方2を用い、95℃で40分間ナイロン6の染色を行った。
処方2
硫化染料
(Diresul Black 4GEV クラリアントジャパン(株)製
1%owf
ソーダ灰 24%owf
二酸化チオ尿素 18%owf
無水芒硝 30g/L
【0055】
その後、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ5g/L溶液中で60℃で20分間洗った後、界面活性剤2g/L、ソーダ灰2g/L溶液中で90℃で10分間洗い水洗、乾燥を行った。この生地の表面をライトグリーン、ダークグリーン、ブラウン、ブラックの領域に分割分布するような意匠を、下記の処方の色糊にて、表地のポリエステル繊維を捺染し、迷彩柄を作製した。
【0056】
ライトグリーン
Acid Yellow 127 0.3部
Acid Red 266 0.1部
Acid Blue 120 0.2部
捺染元糊 55部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
【0057】
ダークグリーン
Acid Yellow 127 1.5部
Acid Red 266 0.2部
Acid Blue 120 0.5部
カーボンブラック顔料 0.04部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 8部
糊改質剤 0.8部
ターペン 8部
架橋剤 0.8部
水 43部
【0058】
ブラウン
Acid Yellow 127 1.7部
Acid Red 266 1.0部
Acid Blue 120 0.2部
カーボンブラック顔料 0.16部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 8部
糊改質剤 0.8部
ターペン 8部
架橋剤 0.8部
水 43部
【0059】
ブラック
Acid Black 194 8.0部
カーボンブラック顔料 2.5部
捺染元糊 30部
尿素 5.0部
染料溶解剤 2.0部
バインダー 8.0部
糊改質剤 0.8部
ターペン 8.0部
架橋剤 0.8部
水 35部
【0060】
次いで120℃で5分間乾燥させた後、高温スチーマーにより105℃で20分間加熱蒸熱処理した後、水洗後、界面活性剤1g/L、ソーダ灰1g/Lからなる水溶液で60℃で10分間洗浄し、ナイロン用固着剤2g/L、酢酸0.3g/Lからなる水溶液で60℃で5分間処理した後、水洗、乾燥を行った。得られた布帛の風合い、染色堅牢度等を表1に、赤外線反射率耐久性について表2に、赤外領域の反射率を図4に示す。
【0061】
〔比較例3〕
実施例2の編物を精錬し、ヒートセットを施した。この生地の表面をライトグリーン、ダークグリーン、ブラウン、ブラックの領域に分割分布するような意匠を、下記の処方の色糊にて、表地のポリエステル繊維を捺染し、迷彩柄を作製した。
【0062】
ライトグリーン
Acid Yellow 127 0.3部
Acid Red 266 0.1部
Acid Blue 120 0.2部
カーボンブラック顔料 0.05部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 39部
【0063】
ダークグリーン
Acid Yellow 127 1.5部
Acid Red 266 0.2部
Acid Blue 120 0.5部
カーボンブラック顔料 0.1部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 39部
【0064】
ブラウン
Acid Yellow 127 1.7部
Acid Red 266 1.0部
Acid Blue 120 0.2部
カーボンブラック顔料 0.3部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 39部
【0065】
ブラック
Acid Black 194 8.0部
カーボンブラック顔料 3.5部
捺染元糊 30部
尿素 5部
染料溶解剤 2部
バインダー 10部
糊改質剤 1部
ターペン 10部
架橋剤 1部
水 33部
【0066】
次いで120℃で5分間乾燥した後、高温スチーマーにより105℃で20分間加熱蒸熱処理を行い、水洗後、界面活性剤1g/L、ソーダ灰1g/Lからなる水溶液で60℃で10分間洗浄し、ナイロン用固着剤2g/L、酢酸0.3g/Lからなる水溶液で60℃で5分間処理した後、水洗、乾燥を行った。得られた布帛の風合い、染色堅牢度等を表1に、赤外線反射率耐久性について表2に、赤外領域の反射率を図5に示す。
【実施例3】
【0067】
実施例2の編物を精錬、ヒートセットを施した。化学式1の硫化染料を用いて、浸染により、窒素雰囲気下で下記処方2を用い、95℃で40分間ナイロン6の染色を行った。
処方2
硫化染料
(Diresul Black 4GEV クラリアントジャパン(株)製
0.2%owf
ソーダ灰 24%owf
二酸化チオ尿素 18%owf
無水芒硝 30g/L
【0068】
その後、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ5g/L溶液中で60℃で20分間洗った後、界面活性剤2g/L、ソーダ灰2g/L溶液中で90℃で10分間洗い水洗、乾燥を行った。得られた布帛の吸光蓄熱性能およびL値を表4に示す。
【実施例4】
【0069】
実施例2の編物を精錬、ヒートセットを施した。化学式1の硫化染料を用いて、浸染により、窒素雰囲気下で下記処方2を用い、95℃で40分間ナイロン6の染色を行った。
処方2
硫化染料
(Diresul Black 4GEV クラリアントジャパン(株)製
1%owf
ソーダ灰 24%owf
二酸化チオ尿素 18%owf
無水芒硝 30g/L
【0070】
その後、メタニトロベンゼンスルホン酸ソーダ5g/L溶液中で60℃で20分間洗った後、界面活性剤2g/L、ソーダ灰2g/L溶液中で90℃で10分間洗い水洗、乾燥を行った。得られた布帛の吸光蓄熱性能およびL値を表4に示す。
【0071】
〔比較例4〕
実施例1の編物を精錬、ヒートセットを施した。浸染により、下記処方3を用い、100℃で30分間ナイロン6の染色を行った。
処方3
Acid Black 194 0.5%owf
アニオン/弱カチオン活性剤配合物 0.3g/L
酢酸 0.5cc/L
【0072】
その後界面活性剤1g/L、ソーダ灰1g/L、ハイドロサルファイト1g/L溶液中で90℃で10分間洗い水洗、乾燥を行った。得られた布帛の吸光蓄熱性能およびL値を表4に示す。
【0073】
〔比較例5〕
実施例1の編物を精錬、ヒートセットを施した。浸染により、下記処方4を用い、130℃で30分間ポリエステルの染色を行った。
処方4
Disperse Orenge 73 0.56%owf
Disperse Red 167:1 0.10%owf
Disperse Blue 79 0.24%owf
均染剤 0.3g/L
酢酸 0.5cc/L
【0074】
その後界面活性剤1g/L、ソーダ灰1g/L溶液中で80℃で10分間洗い水洗、乾燥を行った。得られた布帛の吸光蓄熱性能およびL値を表4に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例1における各色の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図2】比較例1における各色の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図3】比較例2における各色の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図4】実施例2における各色の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図5】比較例3における各色の波長に対する反射率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1.ライトグリーン
2.ダークグリーン
3.ブラウン
4.ブラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物および還元剤を含まず、且つ硫黄の二重結合をもたない硫化染料を用いて無地染めしたポリアミド繊維からなる織編物またはポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物であって、600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の赤外線反射率を示すことを特徴とする赤外線低反射加工織編物。
【請求項2】
硫化染料が下記の化学式1で示されることを特徴とする請求項1記載の赤外線低反射織編物。
【化1】

【請求項3】
該硫化染料で無地染めした上に、ポリアミド繊維からなる織編物に対しては酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物に対しては分散染料と顔料を用いて染色し、多段階の赤外線反射率を示す迷彩柄を有する請求項1または2記載の赤外線低反射加工織編物。
【請求項4】
ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物のポリアミド繊維の混率が5〜70%である請求項1乃至3のいずれか1項記載の赤外線低反射加工織編物。
【請求項5】
JIS L 0217 103法にて10回洗濯後の変退色が4級以上で、ライトグリーン部の1000〜1200nmの赤外線反射率の洗濯前からの低下率が1%以内であり、吸光蓄熱性評価方法において、300秒後に10℃以上の吸光蓄熱性を有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の赤外線低反射率加工織編物。
【請求項6】
ポリアミド繊維からなる織編物またはポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物を、硫化物および還元剤を含まず且つ硫黄の二重結合をもたない硫化染料を用いて無地染めして、600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の赤外線反射率を示す織編物とし、次いで該織編物を、ポリアミド繊維からなる織編物に対しては酸性染料と顔料、ポリアミド繊維を織編物に均一に分布させたポリエステル繊維からなる織編物に対しては分散染料と顔料を用いて600〜1200nmの赤外線波長領域にわたって65%以下の多段階の赤外線反射率を示す迷彩柄に染色すること特徴とする迷彩加工織編物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−176941(P2006−176941A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373668(P2004−373668)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】