説明

赤外線分光測定装置

【課題】消費電力量の低減、および小型化を図りつつ、検出精度を十分に高める。
【解決手段】赤外線を透過可能な支持基板11と、支持基板11における一方の面側に形成されたフィルタ部12と、支持基板11における他方の面側に形成されたセンサ部13とが一体的に構成されて、フィルタ部12および支持基板11を透過した測定光IRをセンサ部13によって検出可能に構成され、フィルタ部12は、透過波長固定型の第1光学フィルタ21と、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタ22とを備え、第1光学フィルタ21は、測定光IRの透過を規制する透過規制波長領域と、測定光IRの透過を許容する透過許容波長領域とが第1波長から第2波長までの間に規定されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定光としての赤外線を検出可能に構成された赤外線分光測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の赤外線分光測定装置として、人体から発せられる赤外線を検出することで血糖値を測定可能に構成された放射分光濃度計が特開2007−151641号公報に開示されている。この放射分光濃度計は、放射赤外線を伝達するための赤外線導波管が中心部に設けられて外耳道に挿入可能に構成された挿入ガイドと、モータによって回転させられる回転板を有する赤外線チョッパーと、赤外線を検出する赤外線センサとを備えている。この場合、上記の赤外線チョッパーは、アルミニウム、銅およびステンレスなどの金属材料で形成された回転板に4つの開口が設けられると共に、透過波長が互いに相違する4つの分光フィルタが各開口部にそれぞれ取り付けられて構成されている。また、各分光フィルタは、一例として、Si、GeおよびZnSeなどで構成された基板上に屈折率の異なる複数の材料を蒸着またはスパッタ法によって積層した狭帯域フィルタで構成されている。
【0003】
この放射分光濃度計によって血糖値を測定する際には、まず、挿入ガイドの先端部を外耳道に挿入すると共に、赤外線チョッパーの回転板をモータによって回転させる。この場合、挿入ガイド内に設けられた赤外線導波管の先に存在する鼓膜は、その温度に応じた赤外線を放射する赤外線放射体であり、血液中のグルコースの濃度(血糖値)に関する情報を有する放射スペクトル(赤外線)を放射する。一方、鼓膜から放射されて赤外線導波管を通過した赤外線は、赤外線チョッパーに到達する。この際に、モータによって回転板が回転させられているため、赤外線導波管の延在方向に回転板の開口が位置しているときにだけ、その開口に取り付けられている分光フィルタを透過して、特定波長の赤外線だけが赤外線センサに到達する。これにより、赤外線チョッパーにおいて、鼓膜から発せられた赤外線のチョッピング、および赤外線センサに入射させる波長の選択の2つの処理が同時に実行される。この後、赤外線センサが、入射した赤外線(放射スペクトル)の強度に応じた電気信号を出力し、この電気信号の信号レベルに基づいて血糖値が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−151641号公報(第4−10頁、第1−9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の放射分光濃度計には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の放射分光濃度計では、透過波長が互いに相違する分光フィルタが取り付けられた複数の開口を有する回転板を挿入ガイド(赤外線導波管)と赤外線センサとの間においてモータによって回転させることで、赤外線センサに入射させる赤外線をチョッピングする構成が採用されている。この場合、挿入ガイド(赤外線導波管)と赤外線センサとの間において回転板を回転させるには、挿入ガイドや赤外線センサに対する回転板の接触を回避するために、挿入ガイド(赤外線導波管)と回転板との間、および赤外線センサと回転板との間の双方に、ある程度大きな隙間を設ける必要がある。このため、従来の放射分光濃度計には、上記の隙間の存在に起因して、小型化が困難となっているという問題点がある。
【0006】
また、従来の放射分光濃度計における赤外線チョッパーでは、モータによって回転板を回転させる構成が採用されている。このため、従来の放射分光濃度計では、回転板を回転させるためにモータによって消費される電力量が多く、例えば濃度計をバッテリ駆動タイプとするときに、使用可能時間を長時間化するのが困難となるという問題点がある。さらに、従来の放射分光濃度計では、モータや、モータによって回転させられる回転板に生じる振動に起因して、赤外線センサから出力される電気信号にノイズが混入することがあり、赤外線の検出精度が低下しているという問題点もある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、消費電力量の低減、および小型化を図りつつ、赤外線の検出精度を十分に高めることが可能な赤外線分光測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の赤外線分光測定装置は、赤外線を透過可能な支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成されたフィルタ部と、前記支持基板における他方の面側に形成された薄膜赤外線センサ部とが一体的に構成されて、前記フィルタ部および前記支持基板を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている。
【0009】
また、請求項2記載の赤外線分光測定装置は、請求項1記載の赤外線分光測定装置において、前記フィルタ部は、前記第1光学フィルタおよび前記第2光学フィルタが前記支持基板の側からこの順で形成されて構成されている。
【0010】
さらに、請求項3記載の赤外線分光測定装置は、請求項2記載の赤外線分光測定装置において、前記第1光学フィルタが前記支持基板における前記一方の面に接し、かつ、前記薄膜赤外線センサ部が当該支持基板における前記他方の面に接するように形成されている。
【0011】
また、請求項4記載の赤外線分光測定装置は、支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成された薄膜赤外線センサ部と、当該薄膜赤外線センサ部における前記支持基板との対向面の裏面側に形成されたフィルタ部とが一体的に構成されて、前記フィルタ部を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている。
【0012】
また、請求項5記載の赤外線分光測定装置は、請求項4記載の赤外線分光測定装置において、前記フィルタ部は、前記第1光学フィルタおよび前記第2光学フィルタが前記薄膜赤外線センサ部の側からこの順で形成されて構成されている。
【0013】
さらに、請求項6記載の赤外線分光測定装置は、請求項5記載の赤外線分光測定装置において、前記薄膜赤外線センサ部が前記支持基板における前記一方の面に接し、かつ、前記第1光学フィルタが当該薄膜赤外線センサ部における前記裏面に接するように形成されている。
【0014】
また、請求項7記載の赤外線分光測定装置は、赤外線を透過可能な支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成されたフィルタ部と、当該フィルタ部における前記支持基板との対向面の裏面側に形成された薄膜赤外線センサ部とが一体的に構成されて、前記支持基板および前記フィルタ部を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている。
【0015】
また、請求項8記載の赤外線分光測定装置は、前記第1光学フィルタは、前記第1波長から前記第2波長までの間に不連続の複数の前記透過許容波長領域が規定された多波長光学フィルタで構成されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の赤外線分光測定装置では、測定光の透過を規制する透過規制波長領域、および測定光の透過を許容する透過許容波長領域が第1波長から第2波長までの間に規定された透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備えてフィルタ部が構成されると共に、赤外線を透過可能な支持基板における一方の面側にフィルタ部を形成され、かつ、支持基板における他方の面側に薄膜赤外線センサ部を形成されて、支持基板、フィルタ部および薄膜赤外線センサ部が一体的に構成されている。
【0017】
また、請求項4記載の赤外線分光測定装置では、測定光の透過を規制する透過規制波長領域、および測定光の透過を許容する透過許容波長領域が第1波長から第2波長までの間に規定された透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備えてフィルタ部が構成されると共に、支持基板における一方の面側に薄膜赤外線センサ部が形成され、かつ、薄膜赤外線センサ部における支持基板との対向面の裏面側にフィルタ部が形成されて、支持基板、フィルタ部および薄膜赤外線センサ部が一体的に構成されている。
【0018】
さらに、請求項7記載の赤外線分光測定装置では、測定光の透過を規制する透過規制波長領域、および測定光の透過を許容する透過許容波長領域が第1波長から第2波長までの間に規定された透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備えてフィルタ部が構成されると共に、赤外線を透過可能な支持基板における一方の面側にフィルタ部が形成され、かつ、フィルタ部における支持基板との対向面の裏面側に薄膜赤外線センサ部が形成されて、支持基板、フィルタ部および薄膜赤外線センサ部が一体的に構成されている。
【0019】
したがって、請求項1,4,7記載の赤外線分光測定装置によれば、モータによって回転板を回転させることで、赤外線をチョッピングする構成の赤外線チョッパーを備えた従来の放射分光濃度計とは異なり、第2光学フィルタを構成する各層の間に電圧を印加して各層を接離させることによって第2光学フィルタの透過波長領域を変化させるだけで、測定光をチョッピングすることができるため、その消費電力を十分に低減することができる。また、挿入ガイド(赤外線導波管)と回転板との間、および赤外線センサと回転板との間の双方に大きな隙間を設ける必要のある従来の放射分光濃度計とは異なり、チョッピング機構としてのフィルタ部の破損を招くことなく、フィルタ部を支持基板や薄膜赤外線センサ部に対して十分に接近させる(または、密着させる)ことができる結果、十分に小型化することができる。さらに、モータによって回転板を回転させる構成の従来の従来の放射分光濃度計とは異なり、モータや回転板に生じる振動に起因するノイズが薄膜赤外線センサ部から出力される電気信号に混入することがないため、測定光の検出精度を十分に高めることができる。
【0020】
また、請求項2記載の赤外線分光測定装置では、第1光学フィルタおよび第2光学フィルタが支持基板の側からこの順で形成されてフィルタ部が構成されている。さらに、請求項5記載の赤外線分光測定装置では、第1光学フィルタおよび第2光学フィルタが薄膜赤外線センサ部の側からこの順で形成されてフィルタ部が構成されている。したがって、請求項2,5記載の赤外線分光測定装置によれば、第2光学フィルタを構成する各層のうちの一方が、支持基板、薄膜赤外線センサ部および他の層に密着していないため、第2光学フィルタの透過波長を変化させる際に、この一方の層を小さな力で確実かつ容易に移動させる(第2光学フィルタを構成する各層を接離させる)ことができる結果、その消費電力を一層低減することができる。また、第2光学フィルタの透過波長を正確に変化させることができる結果、測定光の検出精度を一層高めることができる。
【0021】
また、請求項3記載の赤外線分光測定装置では、第1光学フィルタが支持基板における一方の面に接し、かつ、薄膜赤外線センサ部が支持基板における他方の面に接するように形成されている。さらに、請求項6記載の赤外線分光測定装置では、薄膜赤外線センサ部が支持基板における一方の面に接し、かつ、第1光学フィルタが薄膜赤外線センサ部における裏面に接するように形成されている。したがって、請求項3,6記載の赤外線分光測定装置によれば、フィルタ部と支持基板との間や、薄膜赤外線センサ部と支持基板との間に極く小さな隙間が生じるように支持基板、フィルタ部および薄膜赤外線センサ部を一体化した構成と比較して、赤外線分光測定装置全体としての厚みを十分に薄厚にすることができるだけでなく、赤外線分光測定装置体としての物理的強度を十分に高めることができる。
【0022】
さらに、請求項8記載の赤外線分光測定装置によれば、第1波長から第2波長までの間に不連続の複数の透過許容波長領域が規定された多波長光学フィルタで第1光学フィルタを構成したことにより、第2光学フィルタの透過波長領域を第1波長から第2波長まで(または、第2波長から第1波長まで)変化させることで、第1光学フィルタに規定されている複数の透過許容波長領域の測定光を薄膜赤外線センサ部に順次入射させて、波長が相違する複数種類の測定光を薄膜赤外線センサ部に検出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】赤外線分光測定装置1の構成を示す断面図である。
【図2】赤外線分光測定装置1,1A,1Bの動作原理について説明するための説明図である。
【図3】赤外線分光測定装置1Aの構成を示す断面図である。
【図4】赤外線分光測定装置1Bの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る赤外線分光器および赤外線分光測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1に示す赤外線分光測定装置1は、液体や気体等の試料に含まれる測定対象成分の濃度を測定する濃度測定装置や、未知の試料に検出対象の物質(成分)が含まれているかを判定する定性測定装置(定性分析装置)などの各種装置に搭載されて、波長2μm〜20μmの範囲内の予め規定された波長の測定光(赤外線)IRを検出し、その検出レベルに応じた検出信号を出力可能に構成されている。この赤外線分光測定装置1は、支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13を備えて、これらが一体化されて1枚の平板状に構成されると共に、フィルタ部12やセンサ部13が図示しない処理部に接続されている。
【0026】
支持基板11は、一例としてSiによって厚み500μm程度の平板状に形成されて、この赤外線分光測定装置1の検出対象である上記の波長領域を含む十分に広い波長領域の測定光IRを透過可能に構成されている。この場合、支持基板11を形成する材料はSiに限定されず、センサ部13による検出対象の波長領域の測定光IRを透過可能であれば、任意の材料を使用することができる。具体的には、一例として、Ge、Si、ZnSおよびAl等によって形成することができる。また、支持基板11の厚みは、赤外線分光測定装置1全体としての物理的な強度を確保できる範囲内において任意に変更することができる。
【0027】
フィルタ部12は、いわゆる「赤外線分光器」として機能する光学部品であって、この赤外線分光測定装置1では、測定光IRのチョッピング、およびセンサ部13に入射させる測定光IRの波長の選択の2つの処理をフィルタ部12において実行する構成が採用されている。このフィルタ部12は、支持基板11における一方の面側(同図における上面側)に第1光学フィルタ21および第2光学フィルタ22がこの順で形成されて構成されている。なお、この赤外線分光測定装置1では、フィルタ部12の第1光学フィルタ21が支持基板11における一方の面に接し、かつ、フィルタ部12の第2光学フィルタ22が第1光学フィルタ21における支持基板11側の面の裏面に接するようにフィルタ部12が形成されている。
【0028】
第1光学フィルタ21は、透過波長固定型の光学フィルタであって、図2に実線で示すように、波長Waを中心とする波長領域、および波長Wbを中心とする波長領域の2つの波長領域の光の透過を許容し、その他の波長の光の透過を規制する光学特性(実線で示す透過率特性)を有する多波長光学フィルタで構成されている。なお、上記の波長Wa,Wbは、赤外線分光測定装置1を搭載した測定装置において濃度等を測定する測定対象成分の赤外線透過特性に応じて規定された波長であって、この波長Wa,Wbの測定光IRの検出量に基づき、測定対象成分の濃度等が測定される。
【0029】
この第1光学フィルタ21は、一例として、GeやSi等の高屈折率材料の層と、ZnSやZnSe等の低屈折率材料の層とを交互に積層した積層体で構成されて、支持基板11に対して密着するように配設されている。この場合、高屈折率材料の層および低屈折率材料の層の積層数や、第1光学フィルタ21全体としての厚みについては、第1光学フィルタ21に求められる光学的特性に応じて適宜規定される。なお、「第1光学フィルタ」については、支持基板11に密着した状態に形成されたものに限定されず、支持基板11との間に極く小さな隙間が生じるように配置する構成を採用することもできる。
【0030】
この第1光学フィルタ21では、「波長Waを中心とする波長領域」および「波長Wbを中心とする波長領域」の2つの波長領域が「不連続の複数の透過許容波長領域」に相当すると共に、「波長Waを中心とする透過許容波長領域と、波長Wbを中心とする透過許容波長領域との間の領域(波長Wcを中心とする波長領域)」、「波長Waを中心とする透過許容波長領域よりも長い波長の領域」および「波長Wbを中心とする透過許容波長領域よりも短い波長の領域」の3つの波長領域が「透過規制波長領域」に相当する。この場合、「第1光学フィルタ」については、例えば、上記の第1光学フィルタ21における「波長Waを中心とする透過許容波長領域よりも長い波長の領域」および「波長Wbを中心とする透過許容波長領域よりも短い波長の領域」のいずれか、または双方を透過規制波長領域とすることもできる(「透過規制波長領域」が2つ以下の構成の例)。
【0031】
一方、第2光学フィルタ22は、透過波長可変型の光学フィルタであって、一例として、ファブリペロ光学フィルタで構成されて、後述するように、処理部の制御に従い、図2に示す波長W1を中心とする波長領域(第1波長の一例)から波長W2を中心とする波長領域(第2波長の一例)までの間において透過許容波長領域を変化させる。具体的には、図1に示すように、第2光学フィルタ22は、GeやSi等の高屈折率材料の層と、ZnSやZnSe等の低屈折率材料の層とを交互に積層してそれぞれ形成した積層体22a,22bを備え、この第2光学フィルタ22では、積層体22aが第1光学フィルタ21の表面に密着させられている。この場合、高屈折率材料の層および低屈折率材料の層の積層数や、各積層体22a,22bの厚みについては、第2光学フィルタ22に求められる光学的特性に応じて適宜規定される。なお、積層体22a(第2光学フィルタ22)と第1光学フィルタ21との間に極く小さな隙間が生じるように配置する構成を採用することもできる。
【0032】
この第2光学フィルタ22は、常態(処理部によって電圧が印加されていない状態)において両積層体22a,22bの間に厚み方向で隙間Sが生じるように互いに離間させられている。また、第2光学フィルタ22は、処理部によって両積層体22a,22b間に電圧が印加されることで静電引力によって積層体22bが積層体22a側に引き寄せられて(隙間Sが小さくなるように積層体22bが積層体22aに接近させられて)透過波長領域を変化させる構成が採用されている。なお、この第2光学フィルタ22では、図外の両端部において積層体22a,22bの間にスペーサ層(支持層:一例として、Siの層や有機膜(有機高分子化合物の膜))が設けられ、このスペーサ層によって積層体22a,22bが支持されて、常態において互いに離間させられている。この場合、上記の第2光学フィルタ22における両積層体22a,22bを常態において極く近距離に接近させる(または、互いに接した状態にする)と共に、両積層体22a,22bの間に電圧を印加することで、両積層体22a,22bを互いに離間させる構成を採用することもできる。
【0033】
センサ部13は、「薄膜赤外線センサ部」に相当し、支持基板11における他方の面側(同図における下面側)に配設されて、フィルタ部12およびセンサ部13を透過した測定光IRを受光して(検出して)、その受光レベル(検出レベル)に応じた検出信号を出力する。この場合、この赤外線分光測定装置1では、一例として、支持基板11の表面に、カーボン、ポリイミドおよびアルミニウム等の各種材料によって、表面平滑性がある程度低下するように形成した極く薄厚の発熱膜(赤外線吸収膜)が設けられると共に、この発熱膜を覆うようにしてPZTやTiBA等の強誘電体材料の層を形成することで「焦電型赤外線センサ」の一例であるセンサ部13が支持基板11に対して接した状態(密着した状態)で形成されている。このセンサ部13は、フィルタ部12および支持基板11を透過した測定光IRが上記の発熱膜に照射されることにより、照射された測定光IRの強度に応じて発熱膜が発熱し、この熱によって強誘電体材料の層が加熱されることで、発熱膜に生じた熱量、すなわち、測定光IRの受光量に応じた電圧の検出信号が出力される。
【0034】
なお、上記の発熱膜については、一例として、真空蒸着法、めっき法、およびスピンコーティング法などの公知の成膜方法に従って形成することができる。また、上記の強誘電体材料の層については、一例として、スパッタ法、ゾルゲル法、およびMO−CVD法などの公知の成膜方法に従って形成することができる。さらに、支持基板11に対して発熱膜および強誘電体材料の層をこの順で形成する製法に限定されず、支持基板11とは別体に形成したセンサ部13を支持基板11の表面に貼り付けて一体化する(支持基板11に密着させる)こともできる。また、「薄膜赤外線センサ部」については、支持基板11に密着した状態に形成されたものに限定されず、支持基板11とは別体に形成したものを、支持基板11との間に極く小さな隙間が生じるように支持基板11に対して離間して配置することもできる。
【0035】
この赤外線分光測定装置1の製造に際しては、公知の半導体製造方法と同様の製法に従ってフィルタ部12やセンサ部13を形成する。具体的には、一例として、支持基板11における一方の面に第1光学フィルタ21を構成する各層を形成する。この際に、第1光学フィルタ21において支持基板11に接する層(以下、「最下層」ともいう)の屈折率と、支持基板11の屈折率とが大きく相違する場合には、支持基板11と第1光学フィルタ21との界面において測定光IRが反射する事態を回避するために、その屈折率が、支持基板11の屈折率と、第1光学フィルタ21における最下層の屈折率との間の範囲内で、測定光IRの透過が可能な任意の材料を用いて、支持基板11と第1光学フィルタ21との間に反射防止層を設けることが好ましい。
【0036】
次いで、第1光学フィルタ21の表面に第2光学フィルタ22における積層体22aを形成する。この際に、第1光学フィルタ21において第2光学フィルタ22(積層体22a)に接する層(以下、「最上層」ともいう)の屈折率と、積層体22aの屈折率とが大きく相違する場合には、第1光学フィルタ21と第2光学フィルタ22(積層体22a)との界面において測定光IRが反射する事態を回避するために、その屈折率が、第1光学フィルタ21における最上層の屈折率と、積層体22aの屈折率との間の範囲内で、測定光IRの透過が可能な任意の材料を用いて、第1光学フィルタ21と第2光学フィルタ22(積層体22a)との間に反射防止層を設けることが好ましい。
【0037】
続いて、積層体22a,22bの間に隙間Sを生じさせるための犠牲層(その一部が前述したスペーサ層として機能する層:図示せず)を形成する。この際に、積層体22aと犠牲層との間に極く薄厚の保護層を設けることで、完成状態の赤外線分光測定装置1における積層体22a,22bの接触に起因する積層体22aの傷付きや、酸化を防止することができる。次いで、犠牲層の表面に積層体22bを形成する。この際にも、犠牲層と積層体22bとの間に極く薄厚の保護層を設けることで、完成状態の赤外線分光測定装置1における積層体22a,22bの接触に起因する積層体22bの傷付きや、酸化を防止することができる。また、積層体22bにおける犠牲層側とは反対側にも極く薄厚の保護層を設けることで、完成状態の赤外線分光測定装置1における積層体22bの酸化を防止することができる。
【0038】
次いで、支持基板11における他方の面に、上記の発熱膜および強誘電体材料の層をこの順で形成することでセンサ部13を形成する。この際には、センサ部13(強誘電体材料の層)における支持基板11側とは反対側に極く薄厚の保護層を設けることで、完成状態の赤外線分光測定装置1におけるセンサ部13の傷付きや酸化を防止することができる。この後、エッチング用ガスを用いたドライエッチング処理を実行することにより、前述したスペーサ層として残すべき部位を除いて、積層体22a,22bの間の犠牲層を除去する。これにより、支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13が一体化した状態で赤外線分光測定装置1が完成する。
【0039】
この赤外線分光測定装置1を用いて、例えば液体中の測定対象成分の濃度を測定する際には、図示しない光源(赤外線波長領域の光を出射するランプ等)と、赤外線分光測定装置1との間に、測定対象成分が含まれた液体を配置する。次いで、光源を点灯させた状態において、赤外線分光測定装置1による赤外線の検出処理を実行する。この場合、この赤外線分光測定装置1では、図1に示すように、フィルタ部12から支持基板11に向かう向きで測定光IRを入射させると共に、入射させた測定光IRを第2光学フィルタ22において反射または透過させることで、測定光IRのチョッピング、およびセンサ部13に入射させる波長の選択を実行する構成が採用されている。
【0040】
具体的には、この赤外線分光測定装置1では、フィルタ部12における第2光学フィルタ22の両積層体22a,22bが電極として機能するように図示しない処理部に接続されている。また、処理部は、両積層体22a,22bの間に電圧を印加することにより、積層体22a,22bの間に静電引力を生じさせて隙間Sを変化させる。これにより、第2光学フィルタ22の透過波長領域が、「第1波長(この例では、図2に示す波長W1を中心とする一点鎖線の波長領域)」から「第2波長(この例では、図2に示す波長W2を中心とする二点鎖線の波長領域)」まで変化する。この際に、この赤外線分光測定装置1では、2つの透過波長領域(この例では、図2に示す波長Waを中心とする波長領域、および波長Wbを中心とする波長領域)以外の波長領域において測定光IRの透過を規制するように構成されている。
【0041】
したがって、第2光学フィルタ22の透過波長領域が「第1波長」から「第2波長」に向かって変化させられているときに、第2光学フィルタ22の透過波長領域が第1光学フィルタ21の透過波長領域と一致したときにだけ(この例では、第1光学フィルタ21の透過波長領域が、波長Waを中心とする波長領域となったとき、および波長Wbを中心とする波長領域となったときの2回)、測定光IRがフィルタ部12を透過する。この結果、波長Waを中心とする波長領域、および波長Wbを中心とする波長領域以外の測定光IRがフィルタ部12において反射され、波長Waを中心とする波長領域、および波長Wbを中心とする波長領域の測定光IRだけがセンサ部13に入射される。なお、第2光学フィルタ22の透過波長領域を、波長Waを中心とする波長領域から波長Wbを中心とする波長領域に向かって変化させる構成(方法)について説明したが、波長Wbを中心とする波長領域を「第1の波長」とし、波長Waを中心とする波長領域を「第2の波長」として、第2光学フィルタ22の透過波長領域を、波長Wbを中心とする波長領域から波長Waを中心とする波長領域に向かって変化させる構成(方法)を採用することもできる。
【0042】
また、波長Waを中心とする波長領域の測定光IR、および波長Wbを中心とする波長領域の測定光IRがセンサ部13に入射したときには、その入射レベルに応じてセンサ部13の発熱膜が発熱し、この熱によって強誘電体材料の層が加熱されることで、発熱膜に生じた熱量、すなわち、測定光IRの受光量に応じた電圧の検出信号が強誘電体材料の層から処理部に出力される。これに応じて、処理部は、検出信号と、測定用基準データとに基づき、液体中の測定対象成分の濃度を演算する。これにより、処理部による演算結果(測定された濃度)が図示しない表示部に表示される。
【0043】
このように、この赤外線分光測定装置1では、測定光IRの透過を規制する透過規制波長領域(この例では、「波長Waを中心とする透過許容波長領域と、波長Wbを中心とする透過許容波長領域との間の領域」、「波長Waを中心とする透過許容波長領域よりも長い波長の領域」および「波長Wbを中心とする透過許容波長領域よりも短い波長の領域」の3つの波長領域)、および測定光IRの透過を許容する透過許容波長領域(この例では、波長Waを中心とする波長領域」および「波長Wbを中心とする波長領域」の2つの波長領域)が第1波長(この例では、波長W1を中心とする波長領域)から第2波長(この例では、波長W2を中心とする波長領域)までの間に規定された透過波長固定型の第1光学フィルタ21と、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタ22とを備えてフィルタ部12が構成されると共に、赤外線を透過可能な支持基板11における一方の面側にフィルタ部12が形成され、かつ、支持基板11における他方の面側にセンサ部13が形成されて、支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13が一体的に構成されている。
【0044】
したがって、この赤外線分光測定装置1によれば、モータによって回転板を回転させることで、赤外線をチョッピングする構成の赤外線チョッパーを備えた従来の放射分光濃度計とは異なり、第2光学フィルタ22を構成する各積層体22a,22bの間に電圧を印加して各積層体22a,22bを接離させることによって第2光学フィルタ22の透過波長領域を変化させるだけで、測定光IRをチョッピングすることができるため、その消費電力を十分に低減することができる。また、挿入ガイド(赤外線導波管)と回転板との間、および赤外線センサと回転板との間の双方に大きな隙間を設ける必要のある従来の放射分光濃度計とは異なり、チョッピング機構としてのフィルタ部12の破損を招くことなく、フィルタ部12を支持基板11に対して十分に接近させる(この例では、フィルタ部12を支持基板11に密着させる)ことができる結果、十分に小型化することができる。さらに、モータによって回転板を回転させる構成の従来の従来の放射分光濃度計とは異なり、モータや回転板に生じる振動に起因するノイズがセンサ部13から出力される電気信号に混入することがないため、測定光IRの検出精度を十分に高めることができる。
【0045】
また、この赤外線分光測定装置1によれば、第1光学フィルタ21および第2光学フィルタ22を支持基板11の側からこの順で形成してフィルタ部12を構成したことにより、第2光学フィルタ22を構成する各積層体22a,22bのうちの一方(この例では、積層体22b)が、支持基板11、センサ部13および他方の層(この例では、積層体22a)に密着していないため、第2光学フィルタ22の透過波長を変化させる際に、この積層体22bを小さな力で確実かつ容易に移動させる(積層体22aに対して接離させる)ことができる結果、その消費電力を一層低減することができる。また、第2光学フィルタ22の透過波長を正確に変化させることができる結果、測定光IRの検出精度を一層高めることができる。
【0046】
さらに、この赤外線分光測定装置1によれば、フィルタ部12における第1光学フィルタ21が支持基板11における一方の面に接し、かつ、センサ部13が支持基板11における他方の面に接するように形成したことにより、フィルタ部12と支持基板11との間や、センサ部13と支持基板11との間に極く小さな隙間が生じるように支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13を一体化した構成と比較して、赤外線分光測定装置1全体としての厚みを十分に薄厚にすることができるだけでなく、赤外線分光測定装置1体としての物理的強度を十分に高めることができる。
【0047】
また、この赤外線分光測定装置1によれば、第1波長から第2波長までの間に不連続の複数の透過許容波長領域(この例では、波長Waを中心とする波長領域」および「波長Wbを中心とする波長領域」の2つの波長領域)が規定された多波長光学フィルタで第1光学フィルタ21を構成したことにより、第2光学フィルタ22の透過波長領域を第1波長から第2波長まで(または、第2波長から第1波長まで)変化させることで、第1光学フィルタ21に規定されている複数の透過許容波長領域の測定光IRをセンサ部13に順次入射させて、波長が相違する複数種類の測定光IRをセンサ部13に検出させることができる。
【0048】
なお、「赤外線分光測定装置」の構成は、上記の赤外線分光測定装置1の構成に限定されない。例えば、支持基板11の一方の面(この例では、図1における上面)に第1光学フィルタ21および第2光学フィルタ22をこの順で形成した赤外線分光測定装置1を例に挙げて説明したが、支持基板11の一方の面に第2光学フィルタ22および第1光学フィルタ21をこの順で形成してもよい(図示せず)。このような構成を採用した赤外線分光測定装置においても、前述した赤外線分光測定装置1と同様にして、その消費電力を十分に低減することができると共に、十分に小型化することができ、かつ、測定光IRの検出精度を十分に高めることができる。
【0049】
また、支持基板11の一方の面側にフィルタ部12を形成すると共に、支持基板11の他方の面側にセンサ部13を形成した赤外線分光測定装置1を例に挙げて説明したが、「支持基板」に対する「フィルタ部」および「薄膜赤外線センサ部」の位置関係は、赤外線分光測定装置1における支持基板11に対するフィルタ部12およびセンサ部13の位置関係に限定されない。例えば、図3に示す赤外線分光測定装置1Aのように、支持基板11の一方の面側(この例では、同図における上面側)にセンサ部13およびフィルタ部12をこの順で形成して、フィルタ部12を透過させた測定光IRをセンサ部13によって検出する構成を採用することもできる。なお、この赤外線分光測定装置1A、および後述する赤外線分光測定装置1B(図4参照)において、前述した赤外線分光測定装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。この赤外線分光測定装置1Aは、フィルタ部12の形成に先立って支持基板11の一方の面側にセンサ部13を形成する点を除き、前述した赤外線分光測定装置1と同様の製造方法に従って製造される。なお、この赤外線分光測定装置1Aにおける「支持基板」については、上記の支持基板11とは異なり、測定光IRの透過率が低い材料で形成することもできる。
【0050】
この赤外線分光測定装置1Aでは、支持基板11における一方の面側にセンサ部13が形成され、かつ、センサ部13における支持基板11との対向面の裏面側にフィルタ部12が形成されて、支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13が一体的に構成されている。したがって、この赤外線分光測定装置1Aによれば、前述した赤外線分光測定装置1と同様にして、第2光学フィルタ22を構成する各積層体22a,22bの間に電圧を印加して各積層体22a,22bを接離させることによって第2光学フィルタ22の透過波長領域を変化させるだけで、測定光IRをチョッピングすることができるため、その消費電力を十分に低減することができる。また、挿入ガイド(赤外線導波管)と回転板との間、および赤外線センサと回転板との間の双方に大きな隙間を設ける必要のある従来の放射分光濃度計とは異なり、チョッピング機構としてのフィルタ部12の破損を招くことなく、フィルタ部12をセンサ部13に対して十分に接近させる(この例では、フィルタ部12をセンサ部13に密着させる)ことができる結果、十分に小型化することができる。さらに、モータによって回転板を回転させる構成の従来の従来の放射分光濃度計とは異なり、モータや回転板に生じる振動に起因するノイズがセンサ部13から出力される電気信号に混入することがないため、測定光IRの検出精度を十分に高めることができる。
【0051】
また、この赤外線分光測定装置1Aによれば、第1光学フィルタ21および第2光学フィルタ22をセンサ部13の側からこの順で形成してフィルタ部12を構成したことにより、前述した赤外線分光測定装置1と同様にして、第2光学フィルタ22を構成する各積層体22a,22bのうちの一方(この例では、積層体22b)が、支持基板11、センサ部13および他方の層(この例では、積層体22a)に密着していないため、第2光学フィルタ22の透過波長を変化させる際に、積層体22bを小さな力で確実かつ容易に移動させる(積層体22aに対して接離させる)ことができる結果、その消費電力を一層低減することができる。また、第2光学フィルタ22の透過波長を正確に変化させることができる結果、測定光IRの検出精度を一層高めることができる。
【0052】
さらに、この赤外線分光測定装置1Aによれば、薄膜赤外線センサ部が支持基板11における一方の面に接し、かつ、第1光学フィルタ21が薄膜赤外線センサ部における裏面に接するように形成したことにより、前述した赤外線分光測定装置1と同様にして、フィルタ部12と支持基板11との間や、センサ部13と支持基板11との間に極く小さな隙間が生じるように支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13を一体化した構成と比較して、赤外線分光測定装置1全体としての厚みを十分に薄厚にすることができるだけでなく、赤外線分光測定装置1体としての物理的強度を十分に高めることができる。
【0053】
また、この赤外線分光測定装置1Aによれば、第1波長から第2波長までの間に不連続の複数の透過許容波長領域が規定された多波長光学フィルタで第1光学フィルタ21を構成したことにより、前述した赤外線分光測定装置1と同様にして、第2光学フィルタ22の透過波長領域を第1波長から第2波長まで(または、第2波長から第1波長まで)変化させることで、第1光学フィルタ21に規定されている複数の透過許容波長領域の測定光IRをセンサ部13に順次入射させて、波長が相違する複数種類の測定光IRをセンサ部13に検出させることができる。
【0054】
また、図4に示す赤外線分光測定装置1Bのように、支持基板11の一方の面側(この例では、同図における下面側)にフィルタ部12およびセンサ部13をこの順で形成して、支持基板11およびフィルタ部12を透過させた測定光IRをセンサ部13によって検出する構成を採用することもできる。この赤外線分光測定装置1Bは、フィルタ部12を構成する第1光学フィルタ21および第2光学フィルタ22の形成順序や、センサ部13の形成位置が相違する点を除き、前述した赤外線分光測定装置1と同様の製造方法に従って製造される。
【0055】
この赤外線分光測定装置1Bでは、赤外線を透過可能な支持基板11における一方の面側にフィルタ部12が形成され、かつ、フィルタ部12における支持基板11との対向面の裏面側にセンサ部13が形成されて、支持基板11、フィルタ部12およびセンサ部13が一体的に構成されている。したがって、この赤外線分光測定装置1Bによれば、前述した赤外線分光測定装置1,1Aと同様にして、第2光学フィルタ22を構成する各積層体22a,22bの間に電圧を印加して各積層体22a,22bを接離させることによって第2光学フィルタ22の透過波長領域を変化させるだけで、測定光IRをチョッピングすることができるため、その消費電力を十分に低減することができる。また、挿入ガイド(赤外線導波管)と回転板との間、および赤外線センサと回転板との間の双方に大きな隙間を設ける必要のある従来の放射分光濃度計とは異なり、チョッピング機構としてのフィルタ部12の破損を招くことなく、フィルタ部12を支持基板11やセンサ部13に対して十分に接近させる(この例では、フィルタ部12を支持基板11やセンサ部13に密着させる)ことができる結果、十分に小型化することができる。さらに、モータによって回転板を回転させる構成の従来の従来の放射分光濃度計とは異なり、モータや回転板に生じる振動に起因するノイズがセンサ部13から出力される電気信号に混入することがないため、測定光IRの検出精度を十分に高めることができる。
【0056】
また、この赤外線分光測定装置1Bによれば、第1波長から第2波長までの間に不連続の複数の透過許容波長領域が規定された多波長光学フィルタで第1光学フィルタ21を構成したことにより、前述した赤外線分光測定装置1,1Aと同様にして、第2光学フィルタ22の透過波長領域を第1波長から第2波長まで(または、第2波長から第1波長まで)変化させることで、第1光学フィルタ21に規定されている複数の透過許容波長領域の測定光IRをセンサ部13に順次入射させて、波長が相違する複数種類の測定光IRをセンサ部13に検出させることができる。
【0057】
また、多波長光学フィルタで構成した第1光学フィルタ21を有するフィルタ部12を備えた赤外線分光測定装置1,1A,1Bを例に挙げて説明したが、「透過波長固定型の第1光学フィルタ」については、「透過波長可変型の第2光学フィルタ」が「測定光」を変化させる「第1波長」から「第2波長」までの間に少なくとも1つの「透過規制波長領域」と、少なくとも1つの「透過許容波長領域」とが規定されていればよい。例えば、「第1波長」から「第2波長」までの間に「透過規制波長領域」および「透過許容波長領域」がそれぞれ1つずつ規定された「第1光学フィルタ」を採用した場合においても、「第2光学フィルタ」の透過波長を「第1波長」から「第2波長」の範囲内で変化させることで、「第2光学フィルタ」の透過波長が「第1光学フィルタ」の「透過規制波長領域」の範囲内の波長となったときに測定光の透過が規制され、「第2光学フィルタ」の透過波長が「第1光学フィルタ」の「透過許容波長領域」の範囲内の波長となったときに測定光の透過が許容されるため、測定光を確実にチョッピングすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 赤外線分光測定装置
11 支持基板
12 フィルタ部
13 センサ部
21 第1光学フィルタ
22 第2光学フィルタ
22a,22b 積層体
IR 測定光
S 隙間
W1,W2,Wa〜Wc 波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を透過可能な支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成されたフィルタ部と、前記支持基板における他方の面側に形成された薄膜赤外線センサ部とが一体的に構成されて、前記フィルタ部および前記支持基板を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、
前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、
前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている赤外線分光測定装置。
【請求項2】
前記フィルタ部は、前記第1光学フィルタおよび前記第2光学フィルタが前記支持基板の側からこの順で形成されて構成されている請求項1記載の赤外線分光測定装置。
【請求項3】
前記第1光学フィルタが前記支持基板における前記一方の面に接し、かつ、前記薄膜赤外線センサ部が当該支持基板における前記他方の面に接するように形成されている請求項2記載の赤外線分光測定装置。
【請求項4】
支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成された薄膜赤外線センサ部と、当該薄膜赤外線センサ部における前記支持基板との対向面の裏面側に形成されたフィルタ部とが一体的に構成されて、前記フィルタ部を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、
前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、
前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている赤外線分光測定装置。
【請求項5】
前記フィルタ部は、前記第1光学フィルタおよび前記第2光学フィルタが前記薄膜赤外線センサ部の側からこの順で形成されて構成されている請求項4記載の赤外線分光測定装置。
【請求項6】
前記薄膜赤外線センサ部が前記支持基板における前記一方の面に接し、かつ、前記第1光学フィルタが当該薄膜赤外線センサ部における前記裏面に接するように形成されている請求項5記載の赤外線分光測定装置。
【請求項7】
赤外線を透過可能な支持基板と、当該支持基板における一方の面側に形成されたフィルタ部と、当該フィルタ部における前記支持基板との対向面の裏面側に形成された薄膜赤外線センサ部とが一体的に構成されて、前記支持基板および前記フィルタ部を透過した測定光を前記薄膜赤外線センサ部によって検出可能に構成され、
前記フィルタ部は、透過波長固定型の第1光学フィルタと、第1波長から第2波長まで透過波長を変化可能な透過波長可変型の第2光学フィルタとを備え、
前記第1光学フィルタは、前記測定光の透過を規制する透過規制波長領域と、当該測定光の透過を許容する透過許容波長領域とが前記第1波長から前記第2波長までの間に規定されて構成されている赤外線分光測定装置。
【請求項8】
前記第1光学フィルタは、前記第1波長から前記第2波長までの間に不連続の複数の前記透過許容波長領域が規定された多波長光学フィルタで構成されている請求項1から7のいずれかに記載の赤外線分光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63239(P2012−63239A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207485(P2010−207485)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】