説明

赤外線反射層及び積層体

【課題】不要な熱線(赤外線)のみを選択的に反射させ、有用な光を透過させる赤外線反射層を提供することにあり、更には、光電変換素子等の素子やデバイス自体の温度上昇を防ぎ、発電効率を維持できる光電変換デバイス(特に太陽電池)を提供すること。
【解決手段】赤外線反射層として、下記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含んでなり、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの、該重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量が0.1〜10質量部である重合性組成物を重合させた重合物を用いる。


尚、上記一般式(1)の具体的な内容については、本願明細書に記載の通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する重合性光学活性イミド化合物を用いることで、光線(特に太陽光線)が照射された場合、熱線(赤外線)のみを反射させる特性を有する赤外線反射層及びその積層体に関し、更には、該赤外線反射層及びその積層体を用いた光電変換デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ、ビデオカメラのモニター等の液晶表示装置は、低消費電力化、低電圧駆動化が求められている。これらの要請に対し、液晶性物質の配向性、屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用した位相差板、偏光板、光偏向プリズム、反射板等の光学異方体を応用することで、光源の利用率を高める方法や液晶表示素子の視野角特性を向上させる方法が検討されている。
【0003】
これらの光学異方体は、重合性部位を有する液晶化合物又は重合性部位を有する液晶化合物を含む重合性組成物を配向させた状態で、紫外線等のエネルギー線を照射して重合させる方法によって得られる。つまり、得られる光学異方体は、分子配向性を保った状態で固定化されたものであり、高次構造的に制御された光学活性部位の効果によって、光学的異方性を示す重合体である。特許文献1及び2には、重合性基を有する光学活性化合物が開示されている。
【0004】
また、近年、持続的に利用でき、資源が枯渇せず、環境汚染が小さい太陽光発電(太陽電池)が盛んに検討されている。太陽光発電において、発電に用いられる波長は主に1200nmより短波長の領域であり、1200nmより長波長の領域は不要であるだけでなく、熱線として太陽電池の温度を上昇させてしまう。太陽電池の発電効率は、温度上昇と共に低下することが知られており(特許文献3)、不要な熱線(赤外線)のみを反射させ、有用な光を透過させる赤外線反射層が望まれている。特許文献4には、赤外線反射層をバックシートに用い、近赤外領域の太陽光を反射させ、発電効率を高めることが開示され、特許文献5及び6には、液晶性組成物を用いた赤外線反射フィルタが開示されている。
しかしながら、未だ充分な性能を示す赤外線反射層が得られていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−189604号公報
【特許文献2】特開2010−70482号公報
【特許文献3】特開昭58−049860号公報
【特許文献4】特開2009−178851号公報
【特許文献5】国際公開WO1999/036809パンフレット
【特許文献6】特開2005−031170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、不要な熱線(赤外線)のみを選択的に反射させ、有用な光を透過させる赤外線反射層を提供することにあり、更には、光電変換素子等の素子やデバイス自体の温度上昇を防ぎ、発電効率を維持できる光電変換デバイス(特に太陽電池)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合性光学活性イミド化合物、液晶化合物及びラジカル重合開始剤を特定の配合比で混合した重合性組成物を重合させるることで、赤外線のみを選択的に反射させ、有用な光を透過させる赤外線反射層が得られることを知見し、また、該赤外線反射層を光電変換デバイスに用いることで、光電変換素子等の素子やデバイス自体の温度上昇を防ぎ、発電効率を維持できること知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含んでなり、
上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの、該重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量が0.1〜10質量部(好ましくは1〜5質量部)である重合性組成物を重合させた重合物からなり、赤外線を反射することを特徴とする赤外線反射層(好ましくは、800nm〜2000nmの赤外線を反射し、特に好ましくは1200nm〜1800nmの赤外線を反射する赤外線反射層)を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【化1】

(式(1)中、環A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、該ベンゼン環及びナフタレン環中の炭素原子は、窒素原子で置換されていてもよく、
1及びM2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
1は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、R1中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、R1中のメチレン基は、−O−、−COO−又は−OCO−で中断されていてもよく、
1は、直接結合、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−又は−L1O−CO−O−を表し、L1及びL2は、それぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基は酸素原子で1〜3回中断されていてもよく、
2及びX5は、それぞれ独立に、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、該アルキレン基は酸素原子で1〜3回中断されていてもよく、
3は、直接結合、−CO−、−L2−、−OL2−、−O−COL2−、−CO−OL2−又は−O−CO−OL2−を表し、
4は、直接結合、−CO−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−又は−L1O−CO−O−を表し、
6は、直接結合、−L2−、−OL2−、−O−COL2−、−CO−OL2−又は−O−CO−OL2−を表し、n及びmは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
【0008】
また、本発明は、上記液晶化合物(B)が重合性官能基を有する液晶化合物であることを特徴とする上記赤外線反射層を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記重合性官能基を有する液晶化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする上記赤外線反射層を提供するものである。
【化2】

(式中、環A11、A12及びA13は、それぞれ独立に、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環を表し、
11、L12及びL13は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−X15−O−CO−CM13=CH2、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜10のアルキルカルボニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基又は炭素原子数1〜10のアルキルカルボニルオキシ基を表し、
11、M12及びM13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
11、X12、X13、X14及びX15は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−CO−、−CO−S−、−O−CO−O−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−O(CH2r−、−(CH2sO−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CR11−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CY1=CY1−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−又は単結合を表し、R11は、水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Y1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、メチル基又はエチル基を表し、r及びsは、それぞれ独立に1〜6の整数を表し、o、p及びqは、それぞれ0〜4の整数を表す。)
【0010】
また、本発明は、上記赤外線反射層を少なくとも一つ含んでなる積層体(好ましくは、(i)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が下記一般式(2)で表わされる化合物である赤外線反射層と、(ii)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が下記一般式(3)で表される化合物である赤外線反射層とを少なくとも一組み含んでなる積層体)を提供するものである。
【化3】

(式中、環A1〜A4、M1、M2、R1、X1〜X6、n及びmは上記一般式(1)と同じである)
【化4】

(式中、環A1〜A4、M1、M2、R1、X1〜X6、n及びmは上記一般式(1)と同じである)
【0011】
また、本発明は、上記赤外線反射層及び積層体を用いた光電変換デバイスを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不要な熱線(赤外線)のみを反射させ、有用な光を透過させる赤外線反射層を提供できる。また、本発明によれば、光電変換素子等の素子やデバイス自体の温度上昇を防ぎ、発電効率を維持できる光電変換デバイスを提供できる。該光電変換デバイスは、太陽電池に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の積層体の好ましい一実施形態を示す断面図であり、図1(b)は、本発明の積層体の好ましい別の一実施形態を示す断面図であり、図1(c)は、本発明の積層体の好ましい更に別の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、実施例5及び7における積層体の製造工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の赤外線反射層を有する積層体を使用してなる光電変換デバイスの好ましい一実施形態を示す断面図であり、図3(b)は、本発明の赤外線反射層を有する積層体を使用してなる光電変換デバイスの好ましい別の一実施形態を示す断面図である。
【図4】図4は、実施例1で作製した積層体No.1の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図5】図5は、実施例2で作製した積層体No.2の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図6】図6は、実施例4で作製した積層体No.4の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図7】図7は、実施例5で作製した積層体No.5の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図8】図8は、実施例6で作製した積層体No.6の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図9】図9は、実施例7で作製した積層体No.7の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図10】図10は、実施例10で作製した積層体No.10の反射・透過スペクトルを示す図である。
【図11】図11は、実施例11で作製した積層体No.11の反射・透過スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の赤外線反射層、積層体、及び該赤外線反射層又は積層体を使用してなる光電変換デバイスについて、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0015】
先ず、本発明の赤外線反射層について説明する。本発明の赤外線反射層は、重合性組成物から重合させた重合物からなる。該重合物を構成する重合性組成物は、上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含んでなる。以下、各成分について順に説明する。
【0016】
<上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)>
上記一般式(1)中、R1で表される炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル等が挙げられ、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられ、上記R1の水素原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されていてもよく、上記R1のメチレン基は、−O−、−COO−又は−OCO−で中断されていてもよい。
【0017】
上記一般式(1)中、L1及びL2で表される分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、1,3−ブタンジイル、2−メチル−1,3−プロパンジイル、2−メチル−1,3−ブタンジイル、2,4−ペンタンジイル、1,4−ペンタンジイル、3−メチル−1,4−ブタンジイル、2−メチル−1,4−ペンタンジイル、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン等の直鎖の又は分岐を有するアルキレン基が挙げられ、これらの基は酸素原子で1〜3回中断されてもよい。
上記一般式(1)中、X2及びX5で表される分岐を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、上記L1及びL2の説明で例示した基のほか、これらの基のアルキレン(アルキル)部分が不飽和結合で中断された基等が挙げられ、これらの基は酸素原子で1〜3回中断されてもよい。
【0018】
上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)は、光学活性を有する化合物である。光学活性とは、旋光性を有することであり、直線偏光が通過する際に回転を起こさせる化合物のことをいう。即ち、本発明に用いられる重合性光学活性イミド化合物(A)は、上記一般式(1)で表される化合物のうち、旋光度を測定した際に、右旋性又は左旋性を示す化合物であり、具体的には、上記一般式(2)で表わされる化合物又はそのエナンチオマー体である上記一般式(3)で表わされる化合物の何れか一方、又はこれらの混合物であって光学活性を有するものである。
【0019】
上記一般式(2)で表される化合物の具体的な構造としては、下記に示す化合物No.1〜No.34等が挙げられる。また、上記一般式(3)で表される化合物の具体的な構造としては、下記に示す化合物それぞれのエナンチオマー体が挙げられる。但し、本発明はこれらの化合物により制限を受けるものではない。
【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
上記一般式(1)で表わされる重合性光学活性イミド化合物(A)の中でも、上記一般式(1)中、X3及びX4が共に−CO−である重合性光学活性イミド化合物は、製造面で有利であり、化学的及び熱的に安定性が高いため好ましく、上記一般式(1)中、環A2及びA3が共にナフタレン環である重合性光学活性イミド化合物、又は環A1、A2、A3及びA4が全てベンゼン環である重合性光学活性イミド化合物は、母液晶との相溶性に優れるため更に好ましい。
【0028】
また、上記一般式(1)中、M1及びM2が、共に水素原子である重合性光学活性イミド化合物は、重合反応性や溶剤溶解性が高いため好ましく、上記一般式(1)中、環A1と環A4及び環A2と環A3がそれぞれ同一の環であり、M1とM2、X1とX6、X2とX5及びX3とX6がそれぞれ同一の基であり、nとmが同一の数である重合性光学活性イミド化合物は、製造面とコストの面で有利であるため好ましい。
【0029】
また、上記一般式(1)中、X1及びX6が分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基である重合性光学活性イミド化合物は、容易に製造可能であるため更に好ましい。
【0030】
また、上記一般式(1)中、R1が、炭素原子数1〜10のアルキル基である重合性光学活性イミド化合物は、高いHTP(らせん誘起力)を有するため好ましく、中でもR1が、メチル基である重合性光学活性イミド化合物は、特に高いHTPを有するため更に好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)は、その製造方法については特に限定されず、公知の反応を応用して製造することができる。例えば、特開2010−70482号公報に記載の方法で製造することができる。
【0032】
本発明に用いられる重合性組成物において、上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と後述する液晶化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたとき、0.1〜10質量部であり、好ましくは、1〜5質量部である。本発明では、上記重合性組成物中の重合性光学活性イミド化合物(A)と液晶化合物(B)の比率を上記の範囲内で変化させることにより、反射する赤外線の波長を調節することができ、所望の波長領域に対して反射特性を有する赤外線反射層を得ることができる。
尚、上記重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量が0.1重量部未満であると、所望のピッチ長(反射特性)が得られず、10質量部超であると、可視光に反射特性を示してしまうため好ましくない。
【0033】
<液晶化合物(B)>
本発明で用いられる液晶化合物(B)には、従来既知の液晶化合物及び液晶類似化合物並びにそれらの混合物が含まれる。
上記液晶化合物(B)としては、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物(B)の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記〔化12〕及び〔化13〕に示す化合物No.35〜No.63等が挙げられる。尚、〔化12〕及び〔化13〕中のW1は、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルケニル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルケニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキニル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキニルオキシ基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルカノイルオキシ基又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基を表し、これらは、ハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、W2は、シアノ基、ハロゲン原子、又はW1で表される基を示し、W3、W4及びW5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
また、本発明に用いられる重合性組成物においては、上記液晶化合物(B)として、重合性官能基を有する液晶化合物が好ましく使用される。該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、フルオロアクリル基、クロロアクリル基、トリフルオロメチルアクリル基、オキシラン環(エポキシ)、オキセタン環、スチレン化合物(スチリル基)、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基、マレイミド基、フェニルマレイミド基等が好ましく、特に、製造が容易であるため、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。該重合性官能基を有する液晶化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報の段落[0172]〜[0314]に記載の化合物、及び下記〔化14〕〜〔化25〕に示す化合物No.64〜No.181A等が挙げられる。
【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
【化18】

【0042】
【化19】

【0043】
【化20】

【0044】
【化21】

【0045】
【化22】

【0046】
【化23】

【0047】
【化24】

【0048】
【化25】

【0049】
【化25−1】

【0050】
これらの液晶化合物(B)の中でも、上記一般式(4)で表される化合物は、重合性及び液晶性に優れるため好ましい。また、(メタ)アクリレート基が2つ以上の液晶化合物は、硬化性、耐熱性及び耐溶剤性に優れるため好ましく、(メタ)アクリレート基が2つ以下の液晶化合物は、溶剤への溶解性に優れるため好ましい。また、液晶化合物中にハイドロキノンジエステル骨格を有するものは、液晶性、溶解性及び生産性に優れるため好ましく、環がベンゼン環のみで形成される液晶化合物は、重合後の硬化物が無色透明であるため好ましく、環がベンゼン環とナフタレン環の組み合わせで形成される液晶化合物は、液晶性に優れるため好ましい。
【0051】
上記一般式(4)中、L11、L12及びL13で表わされる炭素原子数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、t−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、t−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、t−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルキルカルボニル基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、1−カルボニルプロピル、1−カルボニルイソプロピル、シクロペンタンカルボニル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ等が挙げられる。
また、上記一般式(4)中、X11で表わされる炭素原子数1〜12のアルキル基としては、L11、L12及びL13で表わされる炭素原子数1〜10のアルキル基の説明で例示した基と同様の基が挙げられる。
【0052】
<ラジカル重合開始剤(C)>
上記ラジカル重合開始剤(C)としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられ、市販品としては、N−1414、N−1717、N−1919、PZ−408、NCI−831、NCI−930((株)ADEKA社製)、IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE819、IRGACURE184、DAROCUR TPO、IRGACUREOXE01、IRGACUREOXE02(BASF(株)社製)等が挙げられる。これらの中でも、エネルギー線に対するラジカル発生の感度が良好であり、安定性の高い重合膜が製造可能であることから、下記一般式(a)又は(c)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【化26】

(式中、R71、R72及びR73は、それぞれ独立に、R、OR、COR、SR、CONRR’又はCNを表し、R及びR’は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子及び/又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアリールアルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により中断されていてもよく、また、R及びR’は一緒になって環を形成していてもよく、R74は、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R75は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又は下記一般式(b)で表される置換基を表し、gは0〜4の整数であり、gが2以上の時、複数のR74は異なる基でもよい。)
【化27】

(式中、環Mはシクロアルカン環、芳香環又は複素環を表し、X73はハロゲン原子又はアルキル基を表し、Y71は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Z71は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、hは0〜4の整数であり、hが2以上の時、複数のX73は異なる基でもよい。)
【0054】
【化28】

(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、R31、OR31、COR31、SR31、CONR3233又はCNを表し、
31、R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
31、R32及びR33で表わされる置換基の水素原子は、更にOR41、COR41、SR41、NR4243、CONR4243、−NR42−OR43、−NCOR42−OCOR43、−C(=N−OR41)−R42、−C(=N−OCOR41)−R42、CN、ハロゲン原子、又はCOOR41で置換されていてもよく、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
41、R42及びR43で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、
31、R32、R33、R41、R42及びR43で表される置換基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR44−、−NR44COO−、−OCONR44−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、
44は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
31、R32、R33、R41、R42及びR43で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R32とR33及びR42とR43はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子を除くR31、OR31、SR31、COR31、CONR3233、NR32COR31、OCOR31、COOR31、SCOR31、OCSR31、COSR31、CSOR31、NO2、CN、ハロゲン原子又は下記一般式(d)で表わされる基を表し、
a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR5152、CO、NR53又はPR54を表し、
51、R52、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R51、R52、R53及びR54で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R51、R52、R53及びR54は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。)
【化28−1】

(式中、Z21は、結合手であって、−O−、−S−、−NR42−、−NR42CO−、−SO2−、−CS−、−OCO−又は−COO−を表し、
22は、結合手であって、1〜3のR25で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
22で表される結合手のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR42−、−NR42COO−、−OCONR42−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、Z22で表される結合手のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキレンであってもよく。
25は、OR61、SR61、CONR6263、NR62COR63、OCOR61、COOR61、SCOR61、OCSR61、COSR61、CSOR61、CN又はハロゲン原子を表し、
61、R62及びR63は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R61、R62及びR63で表される置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R62とR63は、一緒になって環を形成していてもよく、
cは1〜3の整数を表す。)
【0055】
本発明に用いられる重合性組成物において、上記ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下が更に好ましく、0.1〜3質量部の範囲内が最も好ましい。上記ラジカル開始剤(C)の含有量が、10質量部超であると、層中に析出物が発生することがあり不安定なため好ましくない。
【0056】
また、上記ラジカル重合開始剤(C)は、増感剤と併用することが好ましい。かかる増感剤としては、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤(C)及び上記増感剤を併用する場合、両者は合計量として上記の好ましい含有量の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる重合性組成物は、必要に応じて用いられる他の単量体(エチレン性不飽和結合を有する化合物)と共に、溶剤に溶解して溶液にすることができる。通常、本発明の赤外線反射層を均一で平坦な層として得るには、本発明に用いられる重合性組成物を溶剤に溶解して塗布することが好ましい。
【0058】
上記他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリルオキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ジフェニルメチル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ペンタクロルフェニル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、フェニル−α−ブロモ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0059】
本発明に係る重合性組成物を用いて作製される重合体の耐熱性及び光学特性を確保するために、他の単量体の含有量は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0060】
上記溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチレン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。これらの溶剤は単一化合物であってもよいし、又は混合物であってもよい。これらの溶剤の中でも、沸点が60〜250℃のものが好ましく、60〜180℃のものが特に好ましい。沸点が60〜250℃のものとしては、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを好ましく挙げることができる。溶剤の沸点が60℃より低いと塗布工程で溶剤が揮発して層の厚さにムラが生じやすく、溶剤の沸点が250℃より高いと脱溶剤工程で減圧しても溶剤が残留したり、高温での処理による熱重合を誘起したりして配向性が低下する場合がある。溶剤の使用量は特に制限されるものではないが、溶解性及び塗布性を良好にする観点からは、本発明に用いられる重合性組成物中に固形分(溶剤以外の全成分)が3〜90質量%となるように溶剤を使用することが好ましい。
【0061】
また、本発明に用いられる重合性組成物には、選択反射波長及び液晶化合物との相溶性等を調節することを目的として、他の光学活性化合物を添加することができる。かかる光学活性化合物としては、例えば下記〔化29〕に示される化合物No.182〜No.194等を挙げることができる。上記他の光学活性化合物を添加する場合、その添加量は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対し、0.1〜100質量部の範囲内が好ましく、1〜50質量部の範囲内が更に好ましい。
【0062】
【化29】

【0063】
また、本発明に用いられる重合性組成物には、空気界面側に分布する排除体積効果を有する界面活性剤をさらに添加することができる。該界面活性剤としては、重合性組成物を支持基板等に塗布することを容易にしたり、液晶相の配向を制御したりする等の効果を与えるものが好ましい。かかる界面活性剤としては、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。上記界面活性剤の好ましい添加量は、界面活性剤の種類、組成物の成分比等に依存するが、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内が好ましく、0.05〜1質量部の範囲内が更に好ましい。
【0064】
また、本発明に用いられる重合性組成物には、更に、重合性組成物の特性を調製するための添加剤を添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、微粒子化物、並びに機能性化合物等が挙げられる。
【0065】
上記保存安定剤は、重合性組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる保存安定剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。上記保存安定剤を添加する場合、その添加量は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。
【0066】
上記酸化防止剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等を用いることができる。
【0067】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることが出来る。
【0068】
上記微粒子化物は、光学(屈折率)異方性(Δn)を調整したり、重合体の強度を上げたりするために使用することができる。上記微粒子化物の材質としては、無機物、有機物、金属等が挙げられる。凝集防止のため、上記微粒子化物としては、0.001〜0.1μmの粒子径のものが好ましく、0.001〜0.05μmの粒子径のものが更に好ましい。また、粒子径の分布はシャープであるものが好ましい。上記微粒子化物は、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0069】
上記無機物としては、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、SrCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH)2、Zr(OH)4等が挙げられる。また、炭酸カルシウムの針状結晶等の微粒子は光学異方性を有し、このような微粒子によって重合体の光学異方性を調節できる。上記有機物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0070】
上記機能性化合物として用いられるポリマーは、重合体の電気特性や配向性を制御することができる。上記ポリマーとしては、上記溶剤に可溶性の高分子化合物を好ましく使用することができる。かかる高分子化合物としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエポキサイド、ポリエステル、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0071】
本発明に用いられる重合性組成物において、上記の重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)以外の任意の各種添加剤成分(但し、溶剤を除く)は、特に制限無く、作製される重合体の特性を損なわない範囲で適宜使用することができるが、好ましくは、上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)との合計量100質量部に対して、全添加剤成分の合計で30質量部以下となるようにする。
【0072】
本発明の赤外線反射層は、以上説明した重合性組成物を、重合させた重合物からなる。かかる重合物は、上記の重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)並びに必要に応じて上述の各種添加剤成分を含み、さらに必要に応じて溶剤を加えてそれらを溶解させた重合性組成物を、支持基板上に塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、エネルギー線を照射して、該重合性組成物中の重合性光学活性イミド化合物(A)等の重合性化合物を光重合させて、重合性光学活性イミド化合物(A)等の液晶化合物を配向、固定化することにより製造することができる。支持基板上に形成した該赤外線反射層は、そのまま使用しても良いが、必要に応じて、支持基板から剥離したり、他の支持基板に転写して使用しても良い。
【0073】
上記支持基板としては、特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス板、ポリエチレンテレフタレート(PET)板、トリアセチルセルロース(TAC)板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、シリコン板、反射板、シクロオレフィンポリマー及び方解石板が挙げられる。このような支持基板上に、後述のようにポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜を施したものが特に好ましく使用することができる。
【0074】
上記支持基板に上記重合性組成物の溶液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、該方法としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法及び流延成膜法等が挙げられる。塗布された重合性組成物は、自然乾燥、加熱乾燥等により溶剤を除去し塗膜とすることができる。尚、塗膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.001〜30μm、更に好ましくは0.001〜10μm、特に好ましくは0.005〜8μmの範囲から選択される。
【0075】
上記重合性組成物の重合物からなる赤外線反射層を作製する際に、該重合性組成物中の液晶化合物を配向させる方法としては、例えば、支持基板上に事前に配向処理を施す方法が挙げられる。上記支持基板上に配向処理を施す好ましい方法としては、各種ポリイミド系配向膜又はポリビニルアルコール系配向膜からなる液晶配向層を支持基板上に設け、ラビング等の処理を行う方法が挙げられる。また、上記液晶化合物を配向させる方法としては、支持基板上の重合性組成物中の液晶化合物に対し磁場や電場等を印加する方法等も挙げられる。
【0076】
上記重合性組成物に含まれる重合性光学活性イミド化合物(A)等の重合性化合物を光重合させるために使用する上記エネルギー線の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。更に好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、又はショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、超高圧水銀ランプを使用することが好ましい。光源からの光はそのまま重合性組成物に照射してもよく、層によって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を重合性組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、2〜5000mJ/cm2であり、更に好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、更に好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、更に好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。光を照射するときの温度は、重合性組成物が液晶相を有するように設定できるが、好ましい照射温度は100℃以下である。100℃以上の温度では熱による重合が起こりうるので、良好な配向が得られないときがある。
【0077】
本発明の赤外線反射層の厚みは、用途等に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜15μmの範囲から選択される。
【0078】
以上説明した本発明の赤外線反射層は、単独で、又は赤外線反射層を少なくとも一つ含む積層体として、後述の光電変換デバイスに用いられる他、自動車や建材向けの合わせガラス等に用いられ、温度を向上させずに明るさを確保したい用途に広く使用できる。
【0079】
次に、本発明の積層体について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の赤外線反射層における説明が適宜適用される。
本発明の積層体は、本発明の赤外線反射層を用いている点に特徴があり、その構成に制限はなく、必要に応じて、上述の重合性組成物を用いない赤外線反射層、接着層、配向膜、保護層、潤滑層、光学機能層、反射防止層等の各種機能層を有することができる。また、本発明の積層体における赤外線反射層の大きさ及び形状は、特に制限されず、用途に応じて適宜決定される。
【0080】
上記の重合性組成物を用いない赤外線反射層としては、上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)の代わりに、上記の他の光学活性化合物等を用いた赤外線反射層、無機の微粒子や中空子を用いた赤外線反射層等が挙げられ、用いられる無機の微粒子や中空子としては、Au、Ag、Cu等の貴金属;酸化ケイ素;フッ素添加酸化スズ;ITO等が挙げられる。
【0081】
上記接着層は、本発明の赤外線反射層を複数積層させるときに、特に用いられる。かかる接着層に用いられる材料としては特に限定されないが、可視光等の有用な光の透過を妨げないものが好ましく、例えばエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の光学接着剤等が挙げられる。
【0082】
本発明の積層体は、上記重合性組成物を用いて形成される、本発明の赤外線反射層を少なくとも一つ含んでいればよいものであるが、赤外線に対して高い選択反射性を得ることができることから、下記i)及びii)の赤外線反射層を少なくとも一組み含むものが好ましい。
i)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が上記一般式(2)で表される化合物である赤外線反射層。
ii)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が上記一般式(3)で表される化合物である赤外線反射層。
また、本発明の積層体としては、上記重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量を変えた赤外線反射層を複数設けることで、複数の領域の赤外線を反射する機能を得ることもできる。
【0083】
次に、本発明の積層体のより具体的な構成に関し、その好ましい実施形態の一つである、2つの赤外線反射層を含む積層体について、図面を参照しながら説明する。尚、本発明の積層体は、赤外線反射層の厚み、数及び積層順に関して何ら限定されない。図1(a)に示すように、支持基板1の一方の表面上をラビング処理した後に、赤外線反射層2を形成し、更に赤外線反射層2の上に接着層4を形成する。また、これとは別の支持基板1の表面上に赤外線反射層3を形成する。次いで、赤外線反射層2と赤外線反射層3とを接着層4を介して貼り合わせた後に、接着層4を硬化させる。硬化にて接着させた後、一方の支持基板1を剥離することで積層体を得ることができる。あるいはまた、図1(b)に示すように、支持基板1の一方の表面上をラビング処理した後に、赤外線反射層2を形成し、支持基板1のもう一方の表面上をラビング処理した後に、赤外線反射層3を形成することでも図1(a)と同様の機能を有する積層体を得ることができる。あるいはまた、図1(c)に示すように、例えば、図1(a)で形成された積層体から更に支持基板1を取り除き、赤外線反射層2及び3と接着層4とからなる積層体であってもよい。
尚、赤外線反射層2及び3は、上述したように、上記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含んでなる重合性組成物を上記溶剤に溶解して溶液とした後、支持基板1に塗布して、重合性組成物中の液晶分子を配向させた状態で脱溶剤し、次いでエネルギー線を照射することで得られる。また、各種機能層及び各赤外線反射層の積層方法には粘着剤の使用や光接着にて行うことができる。
【0084】
次に、本発明の赤外線反射層又は積層体を使用してなる光電変換デバイスについて説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の赤外線反射層及び積層体における説明が適宜適用される。
本発明の光電変換デバイスは、光電変換素子と、本発明の赤外線反射層又は積層体とを有していれば特に限定はされず、従来の光電変換デバイスに準じた構成とすることができる。図3(a)及び(b)に、本発明の光電変換デバイスの一例としての太陽電池を示す。図3(a)の太陽電池においては、集光フィルム230上に赤外線反射層260を設けることで、発電に不要な熱線(赤外線)を反射し、光電変換素子240の温度上昇を抑制し、発電効率の低下を抑えることが可能である。あるいはまた、図3(b)の太陽電池においては、透明基板210上に赤外線反射層260を設け、更にその上に表面シート層200を設けることで太陽電池全体の温度上昇を抑制している。
【0085】
本発明の光電変換デバイスとしては、特に限定されないが、例えば単結晶型、多結晶型、アモルファスシリコン型等のシリコン型太陽電池;GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4系、CdTe−CdS系等の化合物系太陽電池;色素増感型、有機薄膜型等の有機系太陽電池等の太陽電池が挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例、比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0087】
〔調製例〕重合性組成物溶液1〜10の調製
シクロペンタノン6.0g(界面活性剤としてKH−40(AGCセイミケミ社製)を375ppm含有)に重合性光学活性イミド化合物((A)成分)及び液晶化合物((B)成分)を下記〔表1〕に従い配合して温湯で完全に溶解した後、更にラジカル重合開始剤((C)成分)としてN−1919(ADEKA社製)90mgを加えて完全に溶解し、0.45μm Dismic Filterを用いてろ過したものを、重合性組成物溶液1〜10とした。
【0088】
【表1】

【0089】
【化30】

【0090】
【化31】

【0091】
〔比較調製例〕比較重合性組成物溶液1及び2の調製
上記調製例における(A)成分を下記比較化合物No.1又は1’(それぞれ93mg)に変更した以外は同様の手順で比較重合性組成物溶液1及び2を得た。
【0092】
【化32】

【0093】
〔実施例1〕
PET基板(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)の一方の面(表面)上を5回ラビング処理した後に、調製例で得られた重合性組成物溶液1をワイヤーバー(R.D.Specialties製:RDS12)にて塗工し、100℃で3分乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射し、塗膜を光硬化させて赤外線反射層を形成し、積層体No.1を得た。
【0094】
〔実施例2〕
実施例1において、重合性組成物溶液1を重合性組成物溶液2に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、積層体No.2を得た。
【0095】
〔実施例3〕
TAC基板1(富士フィルム社製 FT_TDY80UL:厚み80μm)の一方の面(表面)上を5回ラビング処理した後に、調製例で得られた重合性組成物溶液1をワイヤーバー(RDS12)にて塗工し、100℃で3分乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射し、塗膜を光硬化させて赤外線反射層2を形成した。次いで、TAC基板1のもう一方の面(裏面)上に、重合性組成物溶液2を用いて同様の操作で赤外線反射層3を形成し、〔図1(b)〕に相当する積層体No.3を得た。
【0096】
〔実施例4〕
PET基板1(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)の一方の面(表面)上を5回ラビング処理した後に、調製例で得られた重合性組成物溶液1をワイヤーバー(RDS12)にて塗工し、100℃で3分乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜に、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射し、塗膜を光硬化させて赤外線反射層2を形成した。次いで、PET基板1のもう一方の面(裏面)上に、重合性組成物溶液2を用いて同様の操作で赤外線反射層3を形成し、〔図1(b)〕に相当する積層体No.4を得た。
【0097】
〔実施例5〕
〔図2〕に示すように、PET基板1(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)の一方の面(表面)上を5回ラビング処理した後に、調製例で得られた重合性組成物溶液3をワイヤーバー(RDS12)にて塗工し、100℃で3分乾燥して塗膜(光硬化にて赤外線反射層2となる塗膜)を得た。別のPET基板1'(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)上に、重合性組成物溶液4を用いて同様の操作で塗膜(光硬化にて赤外線反射層3となる塗膜)を形成した。赤外線反射層2となる上記塗膜上に、アクリル系接着剤をワイヤーバー(RDS03)で塗工して接着層4を形成し、赤外線反射層3となる上記塗膜を有するPET基板1'を天地反転させて、赤外線反射層2となる上記塗膜と赤外線反射層3となる上記塗膜とを、接着層4を介して貼り合わせた後、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射して、上記塗膜及び接着層4を光硬化させた後、PET基板1'を剥離し、〔図1(a)〕に相当する積層体No.5を得た。
【0098】
〔実施例6〕
実施例5において、重合性組成物溶液3及び4を重合性組成物溶液5及び6に変更した以外は、実施例5と同様の手法で、〔図1(a)〕に相当する積層体No.6を得た。
【0099】
〔実施例7〕
〔図2〕に示すように、実施例5の積層体を得た後、別のPET基板1’’(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)上に、重合性組成物溶液5を用いて同様の操作で塗膜(光硬化にて赤外線反射層3’となる塗膜)を得た。上記実施例5の積層体の赤外線反射層3上に接着層4を形成して、該赤外線反射層3と赤外線反射層3’となる上記塗膜とを、接着層4を介して貼り合わせた後、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射して、上記塗膜及び接着層4を光硬化させた後、PET基板1'’を剥離した。更に、別のPET基板1’’’(東洋紡社製 A4100:厚み100μm)上に、重合性組成物溶液6を用いて同様の操作で塗膜(光硬化にて赤外線反射層3'’となる塗膜)を形成した。上記赤外線反射層3’上に接着層4を形成し、該赤外線反射層3’と赤外線反射層3'’となる上記塗膜とを、接着層4を介して貼り合わせた後、大気下で超高圧水銀ランプにて300mJ/cm2の光を照射して、上記塗膜及び接着層4を光硬化させた後、PET基板1’’’を剥離して、積層体No.7を得た。
【0100】
〔実施例8〕
実施例1において、重合性組成物溶液1を重合性組成物溶液7に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、積層体No.8を得た。
【0101】
〔実施例9〕
実施例1において、重合性組成物溶液1を重合性組成物溶液8に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、積層体No.9を得た。
【0102】
〔実施例10〕
実施例1において、重合性組成物溶液1を重合性組成物溶液9に変更し、乾燥温度を100℃から80℃に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、積層体No.10を得た。
【0103】
〔実施例11〕
実施例1において、重合性組成物溶液1を重合性組成物溶液10に変更し、乾燥温度を100℃から80℃に変更した以外は、実施例1と同様の手法で、積層体No.11を得た。
【0104】
尚、実施例1〜11の積層体No.1〜11における赤外線反射層の厚みは、何れも6.5μmであり、実施例5〜7の積層体No.5〜7における接着層の厚みは、何れも3μmであった。
【0105】
〔実施例12〜14〕
実施例1において、ワイヤーバーをRDS12からそれぞれRDS5、RDS8又はRDS20に変更した以外は実施例1と同様の手法で、積層体No.12〜14を得た。
【0106】
〔比較例1〕
実施例5において、重合性組成物溶液3及び4を、比較重合性組成物溶液1及び2に変更した以外は、実施例5と同様の手法で、〔図1(a)〕の積層体に相当する比較積層体No.1を得た。
【0107】
〔評価例1〜9並びに比較評価例1及び2〕
積層体No.3〜11及び比較積層体No.1を用いて、配向の均質性を下記の評価方法により評価した。結果を〔表2〕に示す。また、積層体No.3〜7及びPET基板(比較評価例2)を用いて赤外線反射性を下記の評価方法により評価した(尚、比較積層体No.1は均質な膜が得られなかったため評価しなかった)。結果を〔表3〕に示す。また、実施例及で得られた積層体No.1、2、4〜7、10及び11の反射・透過スペクトルを測定した。尚、積層体の反射・透過スペクトルは、積層体中の基板(PET又はTAC)のスペクトル(基板表面における10%程度の反射スペクトル)を含む。結果を、〔図4〕〜〔図11〕に示す。
【0108】
<配向の均質性の評価方法>
得られた塗膜を偏光顕微鏡(Nikon社製;OPTIPHOT2−POL)を用いて目視で評価した。配向欠陥が確認されなければ○、結晶化や配向ムラが確認された場合は×とした。
【表2】

【0109】
<赤外線反射性の評価方法>
先ず、一面だけ切り取られた発泡スチロール箱の切り取られた部分に、上記で得られた積層体を赤外線反射層が外側になるように貼り付け、一面だけ赤外線反射層を有する積層体となっている箱を作製した。該積層体面と対向する発泡スチロール面から熱電対を刺し、積層体に触れるようにした。赤外線電球(東芝ライテック社製 IR100)を光源とし、赤外線反射層面と赤外線電球の距離が5cmとなるように設置し、20分照射した。20分後の比較例2における温度と各評価例の温度差を表した。
【0110】
【表3】

【0111】
〔評価例10〜13〕
ワイヤーバーを変更して膜厚を変化させた積層体No.1及び12〜14の1400nmにおける反射率及び透過率を測定した。結果を〔表4〕に示す。
【0112】
【表4】

【0113】
実施例で得られた赤外線反射層を有する積層体の反射・透過スペクトルの結果より、本発明の赤外線反射層を有する積層体は、反射する波長が800nm〜2000nm(更には、1200nm〜1800nm)である。
以上の結果から、本発明に用いられる重合性組成物は硬化膜としたときにクラックや結晶化が起こりにくく、得られた赤外線反射層は熱線を反射させるため、透過光による温度上昇が抑制され、建材や自動車用の貼り合わせガラスに好適に用いることができる。
また、本発明の赤外線反射層又は積層体を用いた光電変換デバイスは光電変換素子又はデバイス自体の温度上昇を抑制し、温度上昇による発電効率の低下を防ぐため有用である。
【符号の説明】
【0114】
1、1'、1’’、1’’’基板
2 赤外線反射層
3、3'、3’’ 赤外線反射層
4 接着層
200 表面シート層
210 透明基板
220 充填剤層
230 集光フィルム
240 光電変換素子
250 バックシート層
260 赤外線反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性光学活性イミド化合物(A)、液晶化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含んでなり、
上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの、該重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量が0.1〜10質量部である重合性組成物を重合させた重合物からなり、赤外線を反射することを特徴とする赤外線反射層。
【化1】

(式(1)中、環A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を表し、該ベンゼン環及びナフタレン環中の炭素原子は、窒素原子で置換されていてもよく、
1及びM2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
1は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基を表し、R1中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、R1中のメチレン基は、−O−、−COO−又は−OCO−で中断されていてもよく、
1は、直接結合、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−又は−L1O−CO−O−を表し、L1及びL2は、それぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基は酸素原子で1〜3回中断されていてもよく、
2及びX5は、それぞれ独立に、直接結合、エステル結合、エーテル結合、分岐を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、これらの組み合わせからなる連結基を表し、該アルキレン基は酸素原子で1〜3回中断されていてもよく、
3は、直接結合、−CO−、−L2−、−OL2−、−O−COL2−、−CO−OL2−又は−O−CO−OL2−を表し、
4は、直接結合、−CO−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−又は−L1O−CO−O−を表し、
6は、直接結合、−L2−、−OL2−、−O−COL2−、−CO−OL2−又は−O−CO−OL2−を表し、n及びmは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
【請求項2】
上記重合性光学活性イミド化合物(A)と上記液晶化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの、該重合性光学活性イミド化合物(A)の含有量が1〜5質量部である請求項1に記載の赤外線反射層。
【請求項3】
反射する赤外線の波長が800nm〜2000nmである請求項1又は2に記載の赤外線反射層。
【請求項4】
反射する赤外線の波長が1200nm〜1800nmである請求項1又は2に記載の赤外線反射層。
【請求項5】
上記液晶化合物(B)が重合性官能基を有する液晶化合物である請求項1〜4の何れか1項に記載の赤外線反射層。
【請求項6】
上記重合性官能基を有する液晶化合物が下記一般式(4)で表される化合物である請求項5に記載の赤外線反射層。
【化2】

(式中、環A11、A12及びA13は、それぞれ独立に、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環を表し、
11、L12及びL13は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−X15−O−CO−CM13=CH2、炭素原子数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基又はアルキルカルボニルオキシ基を表し、
11、M12及びM13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
11、X12、X13、X14及びX15は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−CO−、−CO−S−、−O−CO−O−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−O(CH2r−、−(CH2sO−、−SCH2−、−CH2S−、−CF2O−、−OCF2−、−CF2S−、−SCF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CH2CF2−、−CF2CF2−、−CH=CR11−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CY1=CY1−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−又は単結合を表し、R11は、水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Y1は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、メチル基又はエチル基を表し、r及びsは、それぞれ独立に1〜6の整数を表し、o、p及びqは、それぞれ0〜4の整数を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の赤外線反射層を少なくとも一つ含んでなる積層体。
【請求項8】
下記i)及びii)の赤外線反射層を少なくとも一組み含んでなる請求項7に記載の積層体。
i)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が下記一般式(2)で表される化合物である赤外線反射層。
ii)上記重合性光学活性イミド化合物(A)が下記一般式(3)で表される化合物である赤外線反射層。
【化3】

(式中、環A1〜A4、M1、M2、R1、X1〜X6、n及びmは上記一般式(1)と同じである)
【化4】

(式中、環A1〜A4、M1、M2、R1、X1〜X6、n及びmは上記一般式(1)と同じである)
【請求項9】
請求項1〜6の何れか1項に記載の赤外線反射層又は請求項7若しくは8に記載の積層体を使用してなる光電変換デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−107133(P2012−107133A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257650(P2010−257650)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】