説明

赤外線放射素子およびそれを用いたガスセンサ

【課題】従来に比べて長寿命化が可能な赤外線放射素子およびそれを用いたガスセンサを提供する。
【解決手段】赤外線放射素子Aは、半導体基板1の厚み方向の一表面側に半導体基板1よりも熱伝導率が十分に小さな断熱層2が形成され、断熱層2よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体3が断熱層2上に形成され、発熱体3上に通電用の一対のパッド4,4が形成されている。ここにおいて、半導体基板1はシリコン基板により構成している。また、断熱層2および発熱体3は、互いに多孔度の異なる多孔質シリコン層により構成し、発熱体3は、断熱層2よりも多孔度の小さな多孔質シリコン層により構成している。このような赤外線放射素子Aをガスセンサにおける赤外放射源として用いることで赤外放射源の長寿命化を図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線放射素子およびそれを用いたガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外放射源を利用した各種の分析装置(例えば、赤外線ガス分析計など)が提供されているが、これらの分析装置で用いられている赤外放射源として代表的なものは、ハロゲンランプであって、大型で且つ寿命が比較的短いので、赤外線を利用してガスを検出する小型のガスセンサへの適用は難しい。なお、透光性の気密容器内に放射体としてのフィラメントを収納したハロゲンランプのような赤外放射源においては、フィラメントの形状や放射特性などを工夫することにより小型化を図ったものもあるが、気密容器を必要とするから、小型のガスセンサへの適用は難しいのが現状である。
【0003】
そこで、小型化が可能な赤外放射源として、マイクロマシンニング技術を利用して形成する赤外線放射素子が各所で研究開発されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0004】
ここにおいて、上記特許文献1〜3には、シリコン基板などをマイクロマシンニング技術により加工して形成した矩形枠状の支持基板の一表面側において2点間に線状の発熱体を架け渡した所謂マイクロブリッジ構造の赤外線放射素子が記載されている。なお、この種のマイクロブリッジ構造の赤外線放射素子は、線状の発熱体への通電に伴うジュール熱により発熱体から赤外線を放射させるものである。
【0005】
ところで、赤外線の吸収を利用してガスを検出するガスセンサにおいて検出精度を高くするためには、赤外線放射素子から放射される赤外線の放射量を安定させ短時間で計測することが望ましく、上述のマイクロブリッジ構造の赤外線放射素子では、支持基板が矩形枠状に形成されており、線状の発熱体の周囲が空気なので、発熱体と発熱体周囲との熱容量差を大きくすることができ、発熱体へ流す電流のオンオフに高速で応答するようになっている。
【特許文献1】特開平9−153640号公報(段落番号〔0027〕、〔0028〕、図2参照)
【特許文献2】特開2000−236110号公報(段落番号〔0017〕、〔0018〕、〔0019〕、図1、図2参照)
【特許文献3】特開平10−294165号公報(段落番号〔0014〕、〔0015〕、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1〜3に開示された赤外線放射素子では、線状の発熱体の両端に設けたパッド間へ印加する電圧のオンオフに伴う応答速度を向上させるために、発熱体の周囲を空気または真空として発熱体と周囲との熱容量の差を大きくしてあるが、発熱体が線状の形状に形成されており両端部が支持基板に支持されているだけなので、発熱体が破損したり熱により溶断したりして寿命が短くなってしまうことがあった。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来に比べて長寿命化が可能な赤外線放射素子およびそれを用いたガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、発熱体への通電により発熱体を発熱させることで発熱体から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、半導体基板の厚み方向の一表面側に半導体基板よりも熱伝導率の小さな断熱層が形成され、断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体が断熱層上に形成されてなることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、発熱体が層状に形成されるとともに断熱層全体で支持されているので、従来のように発熱体が線状に形成されている赤外線放射素子に比べて、赤外線の放射量を増加させることができるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記半導体基板がシリコン基板であり、前記断熱層および前記発熱体がそれぞれ多孔質シリコン層からなり、前記発熱体は前記断熱層よりも多孔度の小さな多孔質シリコン層からなることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記断熱層および前記発熱体を、前記半導体基板の一部を陽極酸化することにより形成することができる。また、前記発熱体が黒体放射と同じように赤外線を放射する擬似黒体とみなすことができ、赤外線のピーク波長の制御が容易になる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記発熱体は、前記シリコン基板よりも導電率が高く且つ抵抗温度係数が正となるように不純物がドーピングされてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記発熱体の温度が上昇するにつれて前記発熱体の抵抗値が高くなって前記発熱体へ流れる電流の電流値が減少するので、前記発熱体の温度制御が容易になる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記発熱体が、前記断熱層上の多孔質半導体層と、多孔質半導体層上に形成された炭素層とからなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記発熱体を多孔質半導体層のみにより構成する場合に比べて前記発熱体の放射率を向上できる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記発熱体が、前記断熱層上の多孔質半導体層と、多孔質半導体層上に形成されたNiCr層とからなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記発熱体の表面が酸化するのを防止することができて放射特性の経時的な安定性が向上し、また、前記発熱体が多孔質半導体層のみにより構成する場合に比べて、前記発熱体の放射率の向上を図れ、しかも、前記発熱体の低抵抗化を図れて低消費電力化を図れる。
【0018】
請求項6の発明は、発熱体への通電により発熱体を発熱させることで発熱体から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、半導体基板の厚み方向の一表面側に半導体基板よりも熱伝導率の小さな断熱層が形成されるとともに、断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体が断熱層の表面側に形成され、発熱体と断熱層との間に、断熱層よりも導電率の小さな絶縁層が設けられてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、発熱体が層状に形成されるとともに絶縁層を介して断熱層全体で支持されているので、従来のように発熱体が線状に形成されている赤外線放射素子に比べて、赤外線の放射量を増加させることができるとともに、長寿命化を図ることができる。また、発熱体と断熱層との間に絶縁層が設けられているので、発熱体への通電時に半導体基板を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、応答速度が速くなるとともに、低消費電力化を図れる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1または請求項6の発明において、前記発熱体が、導電性が付与された炭素層からなることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、前記発熱体を多孔質半導体層により構成する場合に比べて耐熱性および機械的強度が向上し、しかも、前記発熱体の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1または請求項6の発明において、前記発熱体が、NiCr層からなることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、前記発熱体を多孔質シリコン層により構成する場合に比べて、前記発熱体の耐酸化性が向上して放射特性の経時的な安定性が向上するとともに、機械的強度が向上し、しかも、前記発熱体の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1または請求項6の発明において、前記発熱体が、不純物のドーピングにより導電性が付与されたアモルファスシリコン層からなることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、前記発熱体を多孔質半導体層により構成する場合に比べて前記発熱体の機械的強度が向上し、しかも、前記発熱体の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記アモルファスシリコン層は、前記断熱層側よりも表面側の方がドーピング濃度を高くしてあることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、前記発熱体への通電時に前記発熱体へ流れる電流が表面側で流れやすくなるので、前記アモルファスシリコン層が一様にドーピングされている場合に比べて、前記発熱体の実効的な厚みが薄くなって応答性が向上する。
【0028】
請求項11の発明は、請求項1ないし請求項10の発明において、前記発熱体の表面に多数の凹凸が形成されてなることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、前記発熱体の表面から放射される赤外線の放射量を増大させることができる。
【0030】
請求項12の発明は、請求項11の発明において、前記凹凸は光学的波動効果を有する形状に形成されてなることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、光学的波動効果により赤外線の放射量を増加させることができる。
【0032】
請求項13の発明は、請求項1ないし請求項12の発明において、前記発熱体の表面に外部へ放射する赤外線の波長域を制限する多層膜が積層されてなることを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、特定波長域の赤外線のみを外部へ放射させることが可能となる。
【0034】
請求項14の発明は、請求項1ないし請求項13の発明において、前記半導体基板の厚み方向の他表面に、前記発熱体から前記半導体基板側へ放射された赤外線を前記発熱体側へ反射する反射膜が積層されてなることを特徴とする。
【0035】
この発明によれば、前記発熱体から前記半導体基板側へ放射された赤外線を反射膜により前記発熱体側へ反射させることができるので、前記発熱体の表面側へ放射される赤外線の放射量を増大させることができる。
【0036】
請求項15の発明は、請求項1ないし請求項14の発明において、前記半導体基板の厚み方向の他表面側に、前記半導体基板よりも熱伝導率の小さな熱絶縁体部が設けられてなることを特徴とする。
【0037】
この発明によれば、前記半導体基板の厚み方向の他表面側から熱が放熱されにくくなるので、応答速度が向上する。
【0038】
請求項16の発明は、請求項15の発明において、前記熱絶縁体部は、多孔質半導体からなることを特徴とする。
【0039】
この発明によれば、前記熱絶縁体部を、前記半導体基板の厚み方向の他表面側の一部を陽極酸化することにより形成することができ、前記熱絶縁体部として前記半導体基板とは別の部材を固着する場合に比べて生産性の向上および低コスト化を図れる。
【0040】
請求項17の発明は、赤外放射源から赤外線を所定空間へ放射させて所定空間内の検知対象ガスでの赤外線の吸収を利用して検知対象ガスを検出するガスセンサであって、赤外放射源として請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の赤外線放射素子を備えてなることを特徴とする。
【0041】
この発明によれば、赤外放射源の長寿命化を図ることができてガスセンサの長寿命化を図れる。
【0042】
請求項18の発明は、請求項17の発明において、前記赤外線放射素子の前記発熱体へ印加する電圧により前記発熱体の温度を制御して前記発熱体から放射される赤外線の波長を変化させる波長調整手段を備えてなることを特徴とする。
【0043】
この発明によれば、前記発熱体から放射される赤外線の波長を調整することができ、より多くのガスを検知対象ガスとすることが可能となる。
【0044】
請求項19の発明は、請求項17または請求項18の発明において、前記発熱体から放射されて前記半導体基板を通過した赤外線を前記所定空間側へ反射する反射部材を備えてなることを特徴とする。
【0045】
この発明によれば、前記発熱体から放射されて前記半導体基板を通過した赤外線が反射部材により前記所定空間側へ反射されるので、反射部材を備えていない場合に比べて前記所定空間への赤外線の放射量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0046】
請求項1〜16の発明では、発熱体が層状に形成されるとともに断熱層全体で支持されているので、従来のように発熱体が線状に形成されている赤外線放射素子に比べて、赤外線の放射量を増加させることができるとともに、長寿命化を図ることができるという効果がある。
【0047】
請求項17〜19の発明では、赤外放射源の長寿命化を図ることができてガスセンサの長寿命化を図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線放射素子Aについて図1を参照しながら説明する。
【0049】
本実施形態の赤外線放射素子Aは、発熱体3への通電により発熱体3を発熱させることで発熱体3から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、図1に示すように、半導体基板1の厚み方向の一表面(図1における上面)側に半導体基板1よりも熱伝導率が十分に小さな断熱層2が形成され、断熱層2よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体3が断熱層2上に形成され、発熱体3上に通電用の一対のパッド(電極)4,4が形成されている。なお、半導体基板1の平面形状は矩形状であって、断熱層2および発熱体3の平面形状も矩形状としてある。また、パッド4,4は、発熱体3の両端部それぞれの上に発熱体3と接する形で形成されている。
【0050】
ここにおいて、断熱層2および発熱体3は、互いに多孔度の異なる多孔質シリコン層により構成されており、発熱体3は、断熱層2よりも多孔度の小さな多孔質シリコン層により構成されている。言い換えれば、断熱層2は、発熱体3よりも多孔度が大きな多孔質シリコン層により構成されており、層の全容積の中で微細孔の占める容積の割合が発熱体3よりも高くなっている。また、各パッド4,4は金属材料(例えば、金など)により形成されている。
【0051】
ところで、本実施形態では、半導体基板1として単結晶のシリコン基板を用いており、断熱層2を多孔度が略70%の多孔質シリコン層(以下、第1の多孔質シリコン層と称す)により構成するとともに、発熱体3を多孔度が略40%の多孔質シリコン層(以下、第2の多孔質シリコン層と称す)により構成しているので、半導体基板1の一部をフッ化水素水溶液中で陽極酸化することにより発熱体3および断熱層2となる各多孔質シリコン層を形成することができる。ここに、発熱体3と断熱層2とで陽極酸化処理の条件(例えば、電流密度および処理時間)を適宜変化させることにより、発熱体3と断熱層2とを連続的に形成することができる。本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3および断熱層2の形成前の半導体基板1の厚さを625μm、断熱層2の厚さを50μm、発熱体3の厚さを1μm、パッド4の厚さを0.1μmとしてあるが、これらの厚さは一例であって特に限定するものではない。なお、断熱層2の厚さは50μm以上、発熱体3の厚さは3μm以下とすることが望ましい。
【0052】
多孔質シリコン層は、多孔度が高くなるにつれて熱伝導率および熱容量が小さくなり、例えば、熱伝導率が168〔W/(m・K)〕、熱容量が1.67×10〔J/(m・K)〕の単結晶のシリコン基板を陽極酸化して形成される多孔度が60%の多孔質シリコン層は、熱伝導率が1〔W/(m・K)〕、熱容量が0.7×10〔J/(m・K)〕であることが知られている。上述の半導体基板1として用いるシリコン基板の導電形はp形、n形のいずれでもよいが、p形のシリコン基板の方が陽極酸化により多孔質化を行った際に多孔度が大きくなりやすい傾向にあるので、半導体基板1としてはp形のシリコン基板を用いることが好ましい。なお、半導体基板1の一部を陽極酸化する際の電流密度は半導体基板1の導電形および導電率に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
以上説明した本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3の熱伝導率および導電率が断熱層2よりも大きく、しかも、発熱体3が層状に形成されるとともに断熱層2全体で支持されているので、従来のように発熱体が線状に形成されている赤外線放射素子に比べて、赤外線の放射量を増加させることができ単位面積当たりの発熱量を抑えることで長寿命化を図ることができる。
【0054】
ところで、本実施形態の赤外線放射素子Aにおいて発熱体3から放射される赤外線のピーク波長は、発熱体3の温度に依存し、ピーク波長をλ〔μm〕、発熱体3の絶対温度をT〔K〕とすれば、ピーク波長λは、
λ=2898/T
となり、発熱体3の絶対温度Tと発熱体3から放射される赤外線のピーク波長λとの関係がウィーンの変位則を満たしている。要するに、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3としての第2の多孔質シリコン層が擬似黒体を構成しており、図示しない外部電源からパッド4,4間に印加する電圧を調整することにより、発熱体3に発生するジュール熱を変化させる(つまり、発熱体3の温度を変化させる)ことができて、図2に示すように発熱体3から放射される赤外線のピーク波長λを変化させることができる。なお、上述の第2の多孔質シリコン層からなる発熱体3は、第2の多孔質シリコン層の各微細孔の深さを各微細孔の内径の3倍以上の値に設定することにより、黒体放射と同じように赤外線を放射するので、擬似黒体とみなすことができる。
【0055】
本実施形態の赤外線放射素子Aでは、例えば、一対のパッド4,4間に300V程度の電圧を印加することによりピーク波長λが3μm〜4μmの赤外線を放射させることが可能であり、パッド4,4間に印加する電圧を適宜調整することにより、ピーク波長が4μm以上の赤外線を放射させることも可能である。
【0056】
ここにおいて、発熱体3への入力電力をφ〔W〕、室温(300〔K〕)において発熱体3へ入力電力を与えた場合の温度上昇値をΔT〔K〕、発熱体3の放射率をε、発熱体3の熱伝導度をβ〔W/K〕とすれば、温度上昇値ΔTは、
ΔT=2φε/β
で表すことができる。また、発熱体3の絶対温度Tが700〔K〕のとき発熱体3から放射される赤外線のピーク波長λは略4μmとなり、発熱体3の絶対温度Tを700〔K〕よりも高くするにつれてピーク波長λは上述の図2から明らかなように低波長側へシフトするとともに波長4μmの赤外線の放射エネルギが高くなる。したがって、例えば、
ΔT=2φε/β≧400
とすれば、波長4μmの赤外線を比較的高い放射エネルギで放射することができる。言い換えれば、発熱体3の熱伝導度βを
β≦φε/200
の関係を満たすように設定することにより、波長4μmの赤外線を比較的高い放射エネルギで放射することができる。
【0057】
また、断熱層2の厚さをt〔m〕、断熱層2の熱伝導率をα〔W/(m・K)〕、発熱体3へ与える入力電圧に関して発熱体3が応答可能(発熱体3が追随して温度変化可能)な正弦波状の交流電圧の周波数をf〔Hz〕、角周波数をω(=2πf)、発熱体3の熱容量をQ〔J/(m・K)〕とすれば、
t=(2α/ωQ)1/2で表すことができる。したがって、周波数fは、
f=α/(πQt
となるので、例えば、周波数fを10Hz以上とするには、
α≧10πQt
の関係を満たすように断熱層2の熱伝導率αを設定すればよい。このような関係を満たすように断熱層2の熱伝導率αを設定することにより、10Hz以上の周波数の入力電圧に追随して発熱体3から赤外線を放射させることが可能となる。
【0058】
上述の赤外線放射素子Aを駆動する駆動回路としては、例えば図3に示す回路を採用することができる。図3に示す構成の駆動回路は、電源部21の両端間にサイリスタThとインダクタLと抵抗R1と抵抗R2との直列回路が接続され、抵抗R2の両端間に赤外線放射素子Aを接続するように構成されており、電源部21が直流電源と直流電源の両端間に接続されたコンデンサとで構成されたものであって、上記コンデンサの両端電圧が所定のしきい値を超えるとサイリスタThのゲートへ制御信号を与える制御部22を備えている。すなわち、図3の駆動回路では、電源部21において上記直流電源から上記コンデンサに電荷を蓄積し、上記コンデンサの両端電圧が所定のしきい値を超えると、制御部22からサイリスタThへ制御信号が与えられてサイリスタThがターンオンし、赤外線放射素子Aのパッド4,4間に電圧が印加されて発熱体3が発熱し赤外線が放射される。ここに、制御部22において用いる上記しきい値を適宜設定することにより、赤外線放射素子Aへの投入電圧の大きさを変動させることができ、赤外線放射素子Aから放射させる赤外線のピーク波長λを制御することができる。
【0059】
ところで、多孔質シリコン層は高抵抗で且つ抵抗温度係数が負となるので、多孔質シリコン層を発熱させるためには一対のパッド4,4間に高電圧を印加する必要となり、しかも、温度上昇とともに抵抗値が低くなって一対のパッド4,4間を流れる電流が急激に増加し、温度制御性が悪化してしまう。
【0060】
そこで、発熱体3は、半導体基板1よりも導電率が高く且つ抵抗温度係数が正となるように不純物を高濃度にドーピングすることが望ましい。具体的には、第1の多孔質シリコン層および第2の多孔質シリコン層を形成した後に、例えば、第2の多孔質シリコン層へイオン注入により不純物イオンを注入してアニールを行うことにより、半導体基板1よりも導電率が高く且つ抵抗温度係数が正となるような金属と同様の性質を有する低抵抗(高濃度ドープ)の発熱体3を形成することが考えられるが、第1の多孔質シリコン層および第2の多孔質シリコン層を形成する前に第2の多孔質シリコン層の形成予定部位に不純物イオンをイオン注入してアニールを行うようにすることが好ましい。このように発熱体3を低抵抗化しておくことにより、発熱体3の温度が上昇するにつれて発熱体3の抵抗値が高くなって発熱体3へ流れる電流の電流値が減少するので、発熱体3の温度制御が容易になる(温度制御性が向上する)。なお、発熱体3を低抵抗化しない場合には、電源として電流源を用いてパッド4,4間に一定電流を流すようにすれば、発熱体3の温度上昇とともに発熱体3の抵抗値が低くなるとともにパッド4,4間の電圧値も低下するので、温度制御性が向上する。
【0061】
ところで、本実施形態では、発熱体3が上述の第2の多孔質シリコン層により構成されているが、発熱体3を、断熱層2上の多孔質シリコン層と、当該多孔質シリコン層上に形成された炭素層とで構成するようにすれば、発熱体3を上述の第2の多孔質シリコン層のみにより構成する場合に比べて、発熱体3の放射率を向上できる。ここに、炭素層に例えばドーピングにより導電性を付与しておけば、発熱体3の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。また、発熱体3を、断熱層2上の多孔質シリコン層と、多孔質シリコン層上に形成されたNiCr層とで構成するようにすれば、発熱体3の表面が酸化するのを防止することができて放射特性の経時的な安定性が向上し、また、発熱体3を第2の多孔質シリコン層のみにより構成する場合に比べて、発熱体3の放射率の向上を図れ、しかも、発熱体3の低抵抗化を図れて低消費電力化を図れる。なお、上記NiCr層の代わりに、NiCr以外の電熱合金材料からなる電熱合金層を採用してもよい。
【0062】
また、発熱体3を、例えば不純物のドーピングにより導電性が付与された炭素層により構成するようにすれば、発熱体3を上述の第2の多孔質シリコン層により構成する場合に比べて耐熱性および機械的強度が向上し、しかも、発熱体3の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。なお、炭素層としては、アモルファスカーボン、グラファイト、グラファイトライクカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンなどをはじめ、各種形態の炭素層を採用可能であるが、グラファイトもしくはグラファイトライクカーボンを採用すればアモルファスカーボンやダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンなどを採用する場合に比べて炭素層の抵抗を小さくすることができる。
【0063】
また、発熱体3をNiCr層により構成するようにすれば、発熱体3を上述の第2の多孔質シリコン層により構成する場合に比べて、発熱体3の耐酸化性が向上して放射特性の経時的な安定性が向上するとともに、機械的強度が向上し、しかも、発熱体3の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。なお、NiCr層の代わりに、NiCr以外の電熱合金材料からなる電熱合金層や、Irのような貴金属材料から貴金属層を採用してもよい。さらに、発熱体3が断熱層2から剥離するのを防止するために、発熱体3と断熱層2との間に発熱体3の材料よりも断熱層2との密着性に優れた材料からなる剥離防止層を設けてもよい。ここに、剥離防止層の材料は、発熱体3の材料に応じて、例えば、Cr、Ni、Pt、Ti、Zr、Rh、Hf、Irなどを適宜採用すればよい。
【0064】
また、発熱体3を、不純物のドーピングにより導電性が付与されたアモルファスシリコン層により構成するようにすれば、発熱体3を上述の第2の多孔質シリコン層により構成する場合に比べて発熱体3の機械的強度が向上し、しかも、発熱体3の低抵抗化を図れて、低消費電力化を図れる。ここで、アモルファスシリコン層において断熱層2側よりも表面側の方のドーピング濃度を高くしておけば、発熱体3への通電時に発熱体3へ流れる電流が表面側で流れやすくなるので、アモルファスシリコン層が全体にわたって一様にドーピングされている場合に比べて、発熱体3の実効的な厚みが薄くなって応答性が向上する。なお、上記アモルファスシリコン層の代わりに、Si以外の半導体材料からなるアモルファス半導体層を採用してもよい。
【0065】
また、発熱体3の表面に図4(a)や図4(b)に示すような多数の凹凸を形成すれば、発熱体3の表面からの赤外線の放射量を増大させることができる。ここで、図4(a)や図4(b)に示すような凹凸の形状において、凹部の深さ寸法Hがλ/4となるような凹凸を形成すれば、光学的波動効果により赤外線の放射量が増大する。これに対し、凹部の深さ寸法Hがλ/4よりも比較的大きな凹凸を形成すれば、発熱体3の表面積の増大により赤外線の放射量を増大させることができ、しかも、発熱体3の表面の凹凸をエッチングなどによって容易に形成することが可能となる。例えば、シリコン基板からなる半導体基板1の一部を陽極酸化することにより図5(a)に示すように多数の微細孔3aを有する多孔質シリコン層3’を形成することができるが、陽極酸化直後は多孔質構造が露出していない(表面側の部分の多孔度が小さい)ので、陽極酸化直後の多孔質シリコン層3’の表面側の部分をKOHなどを含むアルカリ系溶液によりエッチングすることにより、図5(b)に示すように多孔質構造が露出し且つ深さ寸法がλ/4の微細孔3aを有する発熱体3を形成することができ、光学的波動効果によって赤外線の放射量を増大させることができる。
【0066】
(実施形態2)
ところで、実施形態1の赤外線放射素子Aでは、発熱体3と半導体基板1との間に断熱層2が介在しているが、一対のパッド4,4を介して発熱体3へ通電した際に半導体基板1を通るリーク電流が流れてしまい、このようなリーク電流は応答速度の低下や消費電力の増加につながると考えられる。
【0067】
これに対して、本実施形態の赤外線放射素子Aの構成は実施形態1と略同じであり、図6に示すように、発熱体3と断熱層2との間に、断熱層2よりも導電率の小さな絶縁層7を設けている点が相違する。なお、他の構成は実施形態1と同様である。
【0068】
絶縁層7の材料としては、半導体基板1としてシリコン基板を用いている場合には、例えば、SiOやSiなどを採用すればよい。
【0069】
しかして、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3と断熱層2との間に絶縁層7が設けられているので、発熱体3への通電時に半導体基板1を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、応答速度が速くなるとともに、低消費電力化を図れる。
【0070】
(実施形態3)
本実施形態の赤外線放射素子Aの構成は実施形態1と略同じであり、図7に示すように、発熱体3の表面に、外部へ放射する赤外線の波長域を制限する多層膜5が積層されている点が相違するだけである。すなわち、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3における断熱層2とは反対側に、特定波長域の赤外線のみを透過させるための多層膜5が積層されている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
しかして、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、特定波長域の赤外線のみを外部へ放射させ特定波長域以外の波長の赤外線が外部へ放射されるのを抑制することが可能となる。なお、他の実施形態において発熱体3の表面に上述の多層膜5を設けてもよい。
【0072】
(実施形態4)
本実施形態の赤外線放射素子Aの構成は実施形態1と略同じであり、図8に示すように、半導体基板1の厚み方向の他表面(図8における下面)に、発熱体3から半導体基板1側へ放射された赤外線を発熱体3側へ反射する多層膜からなる反射膜6が積層されている点、半導体基板1に空洞部1bが形成されている点などが相違する。ここに、空洞部1b内の媒質は空気となっている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
しかして、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、発熱体3から半導体基板1側へ放射された赤外線を反射膜6により発熱体3側へ反射することができる(図8中の矢印は発熱体3から半導体基板1側へ放射された赤外線の伝搬経路の一例を示している)ので、発熱体3の表面側へ放射される赤外線の放射量を増大させることができる。なお、本実施形態では、反射膜6を多層膜により構成しているが、反射膜6は多層膜に限らず赤外線を反射する金属膜により構成してもよいことは勿論である。また、実施形態2や実施形態3の赤外線放射素子Aにおける半導体基板1の他表面に反射膜6を積層してもよい。
【0074】
(実施形態5)
ところで、実施形態1の赤外線放射素子Aを例えばキャンパッケージの金属製ベースやリードフレームなどのベース部材にダイボンディングした場合、断熱層2の厚さによっては、発熱体3で発生した熱の一部が断熱層2−半導体基板1−ベース部材の経路で放熱されてしまうことがあり、このような経路での放熱は発熱体3への通電時の応答速度の低下につながってしまう。
【0075】
これに対して、本実施形態の赤外線放射素子Aは、図9に示すように、半導体基板1の厚み方向の他表面(図9における下面)側に、半導体基板1よりも熱伝導率の小さな熱絶縁体部8を設け、熱絶縁体部8をダイボンド用の接着材によりベース部材9と固着している。ここにおいて、熱絶縁体部8は、例えば、絶縁性のガラス基板を半導体基板1の他表面に固着した絶縁性のガラス基板や、半導体基板1の他表面側の一部を陽極酸化することにより形成した多孔質シリコン層(多孔質半導体層)により構成すればよい。
【0076】
しかして、本実施形態の赤外線放射素子Aでは、半導体基板1の厚み方向の他表面側から熱が放熱されにくくなるので、応答速度が向上する。また、熱絶縁体部8の材料を多孔質シリコン(多孔質半導体)とする場合には、熱絶縁体部8を、半導体基板1の厚み方向の他表面側の一部を陽極酸化することにより形成することができ、熱絶縁体部8として上記ガラス基板のように半導体基板1とは別の部材を固着する場合に比べて生産性の向上および低コスト化を図れる。なお、本実施形態における熱絶縁部8を他の実施形態の赤外線放射素子Aに設けてもよい。
【0077】
(実施形態6)
本実施形態では、実施形態1にて説明した赤外線放射素子Aを赤外放射源として備えたガスセンサについて説明するが、まず、ガスセンサの基本構成について図10を参照しながら説明する。
【0078】
ガスセンサは、検知対象ガスが入れらたガス封入ケース13と、ガス封入ケース13内へ赤外線を放射する赤外放射源11と、ガス封入ケース13内を透過した赤外線を受光する受光素子12と、ガス封入ケース13内において対向するように配置され赤外放射源11からガス封入ケース13内へ放射された赤外線が受光素子12にて受光されるように赤外線を反射する2つの反射鏡14,15と、赤外放射源11の出力(放射量、放射時間など)を制御するとともに受光素子12の出力に基づいてガス濃度を演算する制御回路(図示せず)と、制御回路により求められたガス濃度を表示する表示手段(図示せず)とを備えており、検知対象ガスの分子構造から決定する吸収波長の赤外線の吸光度を計測することにより、検知対象ガスの濃度を計測するものである。すなわち、制御回路は、吸光度に基づいてガス濃度を決定する。
【0079】
本実施形態のガスセンサでは、上述の赤外放射源11として実施形態1にて説明した赤外線放射素子Aを用いている点に特徴がある。なお、本実施形態では、ガス封入ケース13の内部空間が、所定空間を構成している。
【0080】
しかして、本実施形態のガスセンサでは、赤外放射源11の長寿命化を図ることができてセンサ全体の長寿命化を図ることができる。また、赤外線放射素子Aは応答性が優れているので、所定空間への放射量が所定量に到達するまでの時間が短くなり、受光素子12で濃度に対応した正確な信号を出力できるようになる。また、制御回路に、発熱体3へ印加する電圧により発熱体3の温度を制御して発熱体3から放射される赤外線の波長を変化させる波長調整手段を設けておけば、発熱体3から放射される赤外線の波長を調整することができ、より多種類のガスの濃度を計測することが可能となる。
【0081】
なお、図11に示すように、発熱体3から放射されて半導体基板1を通過した赤外線を所定空間側へ反射する金属製の椀状の反射板(反射鏡)16を配置しておけば、反射板16を配置していない場合に比べて所定空間への赤外線の放射量を増加させることができる。なお、本実施形態では、反射板16が、発熱体3から放射されて半導体基板1を通過した赤外線を所定空間側へ反射する反射部材を構成している。また、図11中の矢印は発熱体3の表面から放射された赤外線および半導体基板1を透過した赤外線の空気中での伝搬経路を示している。
【0082】
ところで、本実施形態では赤外放射源11として実施形態1にて説明した赤外線放射素子Aを用いているが、実施形態2〜5にて説明した赤外線放射素子Aを用いてもよいことは勿論である。
【0083】
また、上記各実施形態では、半導体基板1の材料としてSiを採用しているが、半導体基板1の材料はSiに限らず、例えば、Ge,SiC,GaP,GaAs,InPなどの陽極酸化処理による多孔質化が可能な他の半導体材料でもよい(つまり、上述の多孔質シリコン層の代わりに、Si以外の半導体材料からなる多孔質半導体層を採用してもよい)。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施形態1における赤外線放射素子の概略断面図である。
【図2】同上の赤外線放射素子の動作説明図である。
【図3】同上の赤外線放射素子の駆動回路の一例を示す回路図である。
【図4】同上の他の構成例の要部概略断面図である。
【図5】同上の別の構成例の製造方法の説明図である。
【図6】実施形態2における赤外線放射素子の概略断面図である。
【図7】実施形態3における赤外線放射素子の概略断面図である。
【図8】実施形態4における赤外線放射素子の概略断面図である。
【図9】実施形態5における赤外線放射素子の概略断面図である。
【図10】実施形態6におけるガスセンサの基本構成図である。
【図11】同上の他の構成例の要部概略断面図である。
【符号の説明】
【0085】
A 赤外線放射素子
1 半導体基板
2 断熱層
3 発熱体
4 パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体への通電により発熱体を発熱させることで発熱体から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、半導体基板の厚み方向の一表面側に半導体基板よりも熱伝導率の小さな断熱層が形成され、断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体が断熱層上に形成されてなることを特徴とする赤外線放射素子。
【請求項2】
前記半導体基板がシリコン基板であり、前記断熱層および前記発熱体がそれぞれ多孔質シリコン層からなり、前記発熱体は前記断熱層よりも多孔度の小さな多孔質シリコン層からなることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
【請求項3】
前記発熱体は、前記シリコン基板よりも導電率が高く且つ抵抗温度係数が正となるように不純物がドーピングされてなることを特徴とする請求項2記載の赤外線放射素子。
【請求項4】
前記発熱体が、前記断熱層上の多孔質半導体層と、多孔質半導体層上に形成された炭素層とからなることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
【請求項5】
前記発熱体が、前記断熱層上の多孔質半導体層と、多孔質半導体層上に形成されたNiCr層とからなることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
【請求項6】
発熱体への通電により発熱体を発熱させることで発熱体から赤外線が放射される赤外線放射素子であって、半導体基板の厚み方向の一表面側に半導体基板よりも熱伝導率の小さな断熱層が形成されるとともに、断熱層よりも熱伝導率および導電率それぞれが大きな層状の発熱体が断熱層の表面側に形成され、発熱体と断熱層との間に、断熱層よりも導電率の小さな絶縁層が設けられてなることを特徴とする赤外線放射素子。
【請求項7】
前記発熱体が、導電性が付与された炭素層からなることを特徴とする請求項1または請求項6記載の赤外線放射素子。
【請求項8】
前記発熱体が、NiCr層からなることを特徴とする請求項1または請求項6記載の赤外線放射素子。
【請求項9】
前記発熱体が、不純物のドーピングにより導電性が付与されたアモルファスシリコン層からなることを特徴とする請求項1または請求項6記載の赤外線放射素子。
【請求項10】
前記アモルファスシリコン層は、前記断熱層側よりも表面側の方がドーピング濃度を高くしてあることを特徴とする請求項9記載の赤外線放射素子。
【請求項11】
前記発熱体の表面に多数の凹凸が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の赤外線放射素子。
【請求項12】
前記凹凸は光学的波動効果を有する形状に形成されてなることを特徴とする請求項11記載の赤外線放射素子。
【請求項13】
前記発熱体の表面に外部へ放射する赤外線の波長域を制限する多層膜が積層されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の赤外線放射素子。
【請求項14】
前記半導体基板の厚み方向の他表面に、前記発熱体から前記半導体基板側へ放射された赤外線を前記発熱体側へ反射する反射膜が積層されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の赤外線放射素子。
【請求項15】
前記半導体基板の厚み方向の他表面側に、前記半導体基板よりも熱伝導率の小さな熱絶縁体部が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の赤外線放射素子。
【請求項16】
前記熱絶縁体部は、多孔質半導体からなることを特徴とする請求項15記載の赤外線放射素子。
【請求項17】
赤外放射源から赤外線を所定空間へ放射させて所定空間内の検知対象ガスでの赤外線の吸収を利用して検知対象ガスを検出するガスセンサであって、赤外放射源として請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の赤外線放射素子を備えてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項18】
前記赤外線放射素子の前記発熱体へ印加する電圧により前記発熱体の温度を制御して前記発熱体から放射される赤外線の波長を変化させる波長調整手段を備えてなることを特徴とする請求項17記載のガスセンサ。
【請求項19】
前記発熱体から放射されて前記半導体基板を通過した赤外線を前記所定空間側へ反射する反射部材を備えてなることを特徴とする請求項17または請求項18記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−13415(P2006−13415A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280397(P2004−280397)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】