説明

赤外線測定器、および赤外線測定器の製造方法

【課題】歩留まりを向上させた赤外線測定器とその製造方法の提供。
【解決手段】基板10とセンサ(強誘電体層13)とを有するセンサ部2を備え、基板20と赤外線透過薄膜積層体22,24とを有して両積層体22,24の間に電圧が印加された状態において両積層体22,24が光学的に一体化し、かつ、両積層体22,24の間に電圧が印加されない状態において両積層体22,24の間にギャップ27が形成されるように構成されたシャッター機構部3を備え、基板10,20が対向するようにセンサ部2およびシャッター機構部3が一体化して、両積層体22,24が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線IRを透過させてセンサ本体に対する赤外線IRの入射を許容すると共に両積層体22,24の間にギャップ27が形成された状態において赤外線IRを反射してセンサ本体に対する赤外線IRの入射を規制するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線をチョッピングする赤外線シャッター機構部と赤外線センサ部とを備えて構成された赤外線測定器、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、この種の赤外線測定器、およびその製造方法を下記の先行出願1に開示している。この場合、出願人が開示している赤外線測定器は、赤外線センサと、赤外線をチョッピングする赤外線シャッター機構とが公知の半導体製造プロセスに従って一体的に形成されている。具体的には、まず、板状の赤外線センサにおける赤外線の入射面(発熱膜の形成面)に、高屈折率層、保護膜、空気層形成層、保護膜、高屈折率層、保護膜、空気層形成層、保護膜、高屈折率層および反射率低減層をこの順で形成して積層体を製造する。次いで、製造した積層体に対して、反射率低減層の側から現像処理を実行することにより、上記の空気層形成層を消失させて、赤外線センサの厚み方向で対向する2組の高屈折率層の間に空気層をそれぞれ形成する。これにより、赤外線シャッター機構と赤外線センサとが一体化した赤外線測定器が完成する。
【0003】
この場合、この種の赤外線測定器によって赤外線センサに対する赤外線の入射量を測定する際には、赤外線センサに対して赤外線が入射している状態、および入射していない状態を交互に生じさせて、赤外線が入射していないときに検出されるノイズ等をキャンセルするのが一般的となっている。一方、出願人が開示している赤外線測定器では、厚み方向で対向する2組の高屈折率層の間に電圧がそれぞれ印加された状態においてその3つの高屈折率層(2組の高屈折率層)が光学的に一体化すると共に、2組の高屈折率層の間に電圧が印加されない状態においてその3つの高屈折率層の間に空気層が形成されるように各高屈折率層がそれぞれ配設されている。これにより、出願人が開示している赤外線測定器では、各高屈折率層が光学的に一体化した状態において赤外線が赤外線シャッター機構を透過して赤外線センサに入射すると共に、各高屈折率層の間に空気層が形成された状態において赤外線が赤外線シャッター機構によって反射されて赤外線センサに対する赤外線の入射が規制される結果、ノイズ等をキャンセルして、赤外線の入射量を正確に測定することが可能となっている。
【先行出願1】
【0004】
特願2010−207487
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、出願人が開示している赤外線測定器およびその製造方法には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している赤外線測定器の製造方法では、赤外線シャッター機構を構成する各層を板状の赤外線センサにおける赤外線の入射面に順次形成した後に、現像処理によって空気層形成層を消失させて空気層(ギャップ)を形成することによって、赤外線センサと赤外線シャッター機構とを一体的に形成している。したがって、この製造方法では、赤外線センサにおける赤外線の入射面に対して、赤外線シャッター機構を構成する各層のうちの第1層目(この例では、1つ目の高屈折率層)の形成処理を開始してから、製造した積層体に対する現像処理(空気層の形成処理)を完了するまでの間の製造工程が非常に多くなっている。このため、出願人が開示している赤外線測定器の製造方法では、例えば、積層体に対する現像処理において現像不良が生じたときには、その現像処理に先立って実行した各層の形成処理のすべてが無駄となってしまうため、その歩留まりを向上させるのが困難となっている。
【0006】
また、出願人が開示している赤外線測定器の製造方法では、赤外線センサにおける赤外線の入射面(発熱膜の形成面)に、赤外線シャッター機構を構成する各層を順次形成している。このような製造方法においては、赤外線センサの表面に、赤外線シャッター機構を構成する各層を形成する過程において、発熱膜を介してセンサ本体が過熱されるため、この熱に起因して、赤外線センサの劣化を招くおそれがある。この場合、赤外線センサが劣化したときには、赤外線シャッター機構を形成する工程の完了後に、赤外線センサを結晶化温度で熱処理することで、劣化した赤外線センサの特性を復元できる可能性がある。しかしながら、結晶化温度での熱処理時には、赤外線シャッター機構を構成する各層も加熱されることとなるため、この熱に起因して、赤外線シャッター機構を構成する各層の特性が劣化するおそれがある。したがって、出願人が開示している赤外線測定器の製造方法では、赤外線シャッター機構を構成する各層の形成時や、赤外線センサを結晶化温度で熱処理する際の温度管理が難しく、歩留まりを向上させるのが困難な要因の1つとなっている。
【0007】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、その歩留まりを十分に向上し得る赤外線測定器およびその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の赤外線測定器は、第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を備えると共に、赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層とを有して、当該両高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、当該両高屈折率層の間に電圧が印加された状態において当該両高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されない状態において当該両高屈折率層の間にギャップが形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を備え、前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部が一体化されて、前記両高屈折率層の間に前記電圧が印加されて当該両高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されずに当該両高屈折率層の間に前記ギャップが形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制するように構成されている。
【0009】
なお、「光学的に一体化した状態」とは、各高屈折率層が光学的に「連続する1つの層」として捉えることができる状態を意味する。したがって、「光学的に一体化した状態」には、各高屈折率層が物理的に接して厚み方向において物理的に連続している状態だけでなく、例えば、各高屈折率層の間に、光学的には殆ど影響のない極く薄厚の薄膜や、光学的には殆ど影響のない極く薄厚の空気の層が存在している状態がこれに含まれる。
【0010】
また、請求項2記載の赤外線測定器は、第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を備えると共に、赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層と、前記第1の高屈折率層および前記第2の高屈折率層の間に配置されて第3の支持膜によって前記第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第3の高屈折率層とを有して、当該各高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、対向する2組の当該各高屈折率層の間に電圧がそれぞれ印加された状態において当該3つの高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されない状態において当該2組の各高屈折率層の間にギャップがそれぞれ形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を備え、前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部が一体化されて、前記2組の各高屈折率層の間に前記電圧がそれぞれ印加されて当該各高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されずに当該2組の各高屈折率層の間に前記ギャップがそれぞれ形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制するように構成されている。
【0011】
また、請求項3記載の赤外線測定器は、請求項1または2記載の赤外線測定器において、前記赤外線センサ部は、前記センサ本体としての焦電型赤外線センサを備えて構成されている。
【0012】
さらに、請求項4記載の赤外線測定器は、請求項1から3のいずれかに記載の赤外線測定器において、前記赤外線シャッター機構部は、前記第2の支持基板を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって当該第2の支持基板における他方の面に形成された反射率低減層を備えて構成されている。
【0013】
また、請求項5記載の赤外線測定器の製造方法は、第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を製造すると共に、赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層とを有して、当該両高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、当該両高屈折率層の間に電圧が印加された状態において当該両高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されない状態において当該両高屈折率層の間にギャップが形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を製造した後に、前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部を一体化することによって、前記両高屈折率層の間に前記電圧が印加されて当該両高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されずに当該両高屈折率層の間に前記ギャップが形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制する構成の赤外線測定器を製造する。
【0014】
また、請求項6記載の赤外線測定器の製造方法は、第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を製造すると共に、赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層と、前記第1の高屈折率層および前記第2の高屈折率層の間に配置されて第3の支持膜によって前記第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第3の高屈折率層とを有して、当該各高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、対向する2組の当該各高屈折率層の間に電圧がそれぞれ印加された状態において当該3つの高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されない状態において当該2組の各高屈折率層の間にギャップがそれぞれ形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を製造した後に、前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部を一体化することによって、前記2組の各高屈折率層の間に前記電圧がそれぞれ印加されて当該各高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されずに当該2組の各高屈折率層の間に前記ギャップがそれぞれ形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制する構成の赤外線測定器を製造する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の赤外線測定器、および請求項2記載の赤外線測定器では、第1の支持基板における一方の面と第2の支持基板における一方の面とが対向するように赤外線センサ部および赤外線シャッター機構部が一体化されて、各高屈折率層の間に電圧が印加されて各高屈折率層が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線を透過させてセンサ本体に対する赤外線の入射を許容すると共に各高屈折率層の間に電圧が印加されずに各高屈折率層の間にギャップが形成された状態において赤外線を反射してセンサ本体に対する赤外線の入射を規制するように構成されている。
【0016】
また、請求項5記載の赤外線測定器の製造方法、および請求項6記載の赤外線測定器の製造方法では、赤外線センサ部および赤外線シャッター機構部をそれぞれ製造した後に、第1の支持基板における一方の面と第2の支持基板における一方の面とが対向するように赤外線センサ部および赤外線シャッター機構部を一体化することによって、各高屈折率層の間に電圧が印加されて各高屈折率層が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線を透過させてセンサ本体に対する赤外線の入射を許容すると共に、各高屈折率層の間に電圧が印加されずに各高屈折率層の間にギャップが形成された状態において赤外線を反射してセンサ本体に対する赤外線の入射を規制する構成の赤外線測定器を製造する。
【0017】
したがって、請求項1,2記載の赤外線測定器、および請求項5,6記載の赤外線測定器の製造方法によれば、例えば、赤外線センサ部の製造時における現像処理において現像不良が生じたとしても、製造途中の赤外線センサ部が無駄となるだけで、既に製造した赤外線シャッター機構部、或いは、その後に製造する赤外線シャッター機構部が無駄となる事態を回避できると共に、赤外線シャッター機構部の製造に際してギャップを形成するための現像処理において現像不良が生じたとしても、製造途中の赤外線シャッター機構部が無駄となるだけで、既に製造した赤外線センサ部、或いは、その後に製造する赤外線センサ部が無駄となる事態を回避できるため、赤外線測定器の歩留まりを十分に向上させることができる。また、赤外線シャッター機構部を構成する高屈折率層等の形成処理の影響が赤外線センサ部を構成する各層に及ぶことがないため、この点においても、赤外線測定器の歩留まりを十分に向上させることができるだけでなく、製造過程における温度管理が難しい焦電型赤外線センサを採用しても、赤外線の検出感度を低下させるおそれがないため、赤外線の検出精度が高い赤外線測定器を安価に製造することができる。
【0018】
また、請求項3記載の赤外線測定器によれば、センサ本体としての焦電型赤外線センサを備えて赤外線センサ部を構成したことにより、サーモパイル型赤外線センサやサーミスタ等のセンサ本体と比較して赤外線の検出感度が十分に高い赤外線センサ部を備えたことで、赤外線の検出感度を十分に高めることができる。
【0019】
また、請求項4記載の赤外線測定器によれば、第2の支持基板を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって第2の支持基板における他方の面に形成された反射率低減層を備えて赤外線シャッター機構部を構成したことにより、第2の支持基板における高屈折率層の形成面とは反対側の面(赤外線の入射面)において赤外線が大きく反射されて赤外線シャッター機構部の赤外線の透過率が低下する事態を回避して、開状態において赤外線センサ部に対して十分な量の赤外線を入射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】赤外線測定器1における赤外線センサ部2を赤外線の入射面側から見た平面図である。
【図2】赤外線測定器1における赤外線シャッター機構部3を赤外線の出射面側から見た平面図である。
【図3】図1,2におけるA−A線断面図である。
【図4】図1,2におけるB−B線断面図である。
【図5】赤外線センサ部2の製造に際して支持基板10の一面に絶縁層11、導体層12、強誘電体層13および導体層14を形成した状態の断面図である。
【図6】図5に示す状態の支持基板10に対して保護膜15および導体層16を形成した状態の断面図である。
【図7】図6に示す状態の支持基板10に対して赤外線吸収膜17およびバンプ19を形成した状態の断面図である。
【図8】赤外線シャッター機構部3の製造に際して支持基板20の一面に絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体22を形成した状態の断面図である。
【図9】図8に示す状態の支持基板20に対して犠牲層23および赤外線透過薄膜積層体24を形成した状態の断面図である。
【図10】図9に示す状態の支持基板20に対して支持層25および導体層26を形成した状態の断面図である。
【図11】図10に示す状態の支持基板20における犠牲層23に対するエッチング処理によって赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ27を形成した状態の断面図である。
【図12】赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3を一体化させる工程について説明するための断面図である。
【図13】赤外線測定器1Aにおける赤外線センサ部2aを赤外線の入射面側から見た平面図である。
【図14】赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構部3aを赤外線の出射面側から見た平面図である。
【図15】図13,14におけるA−A線断面図である。
【図16】図13,14におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、赤外線測定器、および赤外線測定器の製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜4に示す赤外線測定器1は、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3を備えて構成された測定器であって、後述するように、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3がそれぞれ別個に製造された後に一体化されて構成されている。
【0023】
赤外線センサ部2は、図3,4に示すように、支持基板10、絶縁層11、導体層12,14,16、強誘電体層13、保護膜15および赤外線吸収膜17を備えて、図1に示すように、平面視略方形状に形成されている。なお、図3,4、および後に参照する図5〜12や、図15,16においては、発明についての理解を容易とするために、「基板」や「層」の厚みの比率を実際の比率とは相違させて図示している。支持基板10は、「第1の支持基板」に相当し、一例として、シリコンや酸化マグネシウム等によって、物理的な厚みが数十μm〜数mm程度で、一辺の長さが数mm〜数cm程度mm程度の平板状に形成されている。絶縁層11は、導体層12等によって支持基板10上に形成される各種電極等を支持基板10に対して相互に絶縁するための層であって、酸化シリコンや酸化アルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。この場合、本例の赤外線測定器1(赤外線センサ部2)では、この絶縁層11が導体層12,14,16や保護膜15と相まって「第1の支持膜」を構成する。なお、上記の支持基板10として酸化マグネシウム等の絶縁性材料製の基板を使用する場合には、この絶縁層11を不要とすることができる。
【0024】
導体層12,14,16は、強誘電体層13によって構成される「センサ本体」に接続するための電極P1,P2(図1,3,4参照)、この電極P1,P2を図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P1a,P2a(図1,4参照)、後述するように赤外線シャッター機構部3を接続するためのバンプ19を接続するためのバンプ接続部P3a,P4a(図1,3参照)、およびこのバンプ接続部P3a,P4aを図示しない信号ケーブルに接続するための信号線接続部P3b,P4b(図1,3参照)などを構成する層であって、一例として、白金やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。強誘電体層13は、「センサ本体」としての「焦電型赤外線センサ」を構成する層であって、一例として、チタン酸ジルコン酸鉛やタンタル酸リチウム等によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されている。
【0025】
保護膜15は、酸化シリコンやポリイミド等によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されて、上記したように絶縁層11や導体層12,14,16と相まって「第1の支持膜」を構成すると共に、導体層16によって構成される信号線接続部P2aなどを支持基板10に対して絶縁する絶縁層として機能する。赤外線吸収膜17は、各種金属材料や有機材料(カーボン、ポリイミドおよびアルミニウム等)によって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されると共に、表面平滑性がある程度低下させられている。この場合、この赤外線測定器1(赤外線センサ部2)では、図1,3,4に示すように、赤外線IRの受光時に赤外線吸収膜17に生じて強誘電体層13(「センサ本体」)に伝熱した熱が支持基板10に奪われてしまうことのないように、支持基板10の中央部に凹部が形成されて強誘電体層13、電極P1,P2および赤外線吸収膜17と支持基板10との間に空隙18が形成されている(「センサ本体」が「第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって第1の支持基板に対して非接触状態で支持されている」との構成の一例)。
【0026】
一方、赤外線シャッター機構部3は、赤外線センサ部2による検出対象の波長領域(一例として、10000nm±2000nmの範囲:以下、「対象波長領域」ともいう)の赤外線IRをチョッピングするチョッピング機構として機能するシャッター機構(赤外線変調器)であって、図3,4に示すように、支持基板20、絶縁層21、赤外線透過薄膜積層体22,24、犠牲層23、支持層25、導体層26および反射率低減層28を備えると共に、赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ(空隙)27が形成されて構成されている。支持基板20は、「第2の支持基板」に相当し、一例として、シリコンやゲルマニウム等(「赤外線を透過可能な材料」の一例)によって、物理的な厚みが数十μm〜数mm程度で、一辺の長さが数mm〜数cm程度の平板状に形成されている。絶縁層21は、導体層26によって支持基板10上に形成される導体パターンを支持基板20に対して相互に絶縁するための層であって、酸化シリコンやポリイミド等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。
【0027】
赤外線透過薄膜積層体22は、「第1の高屈折率層」に相当し、支持基板20における赤外線IRの入射面の裏面(図3,4における下面:「第2の支持基板における一方の面」の一例)に、高屈折率材料で形成した薄膜および低屈折率材料で形成した薄膜を交互に積層した薄膜積層体(「赤外線を透過可能な導電性材料」の一例)で構成されている。また、赤外線透過薄膜積層体24は、「第2の高屈折率層」に相当し、赤外線透過薄膜積層体22と同様にして、高屈折率材料で形成した薄膜および低屈折率材料で形成した薄膜を交互に積層した薄膜積層体(「赤外線を透過可能な導電性材料」の一例)で構成されている。なお、上記の高屈折率材料としては、ゲルマニウムやシリコン等を使用し、低屈折率材料としては、硫化亜鉛やセレン化亜鉛等を使用することができる。
【0028】
この場合、赤外線透過薄膜積層体22,24については、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長に対する1/4の奇数倍となる条件を満たすことを条件として、各種屈折率の材料で任意の厚みに形成することができる。なお、赤外線透過薄膜積層体22,24は、単体において(光学的に分離した状態:互いに接していない状態において)赤外線IRを反射するミラー層として機能し、互いに接して光学的に一体化した状態において、赤外線IRを透過させるように構成されている。また、本例の赤外線シャッター機構部3では、上記の赤外線透過薄膜積層体24が、支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体22に対向配置された状態で、後述するように支持層25等(「第2の支持膜」の一例)によって支持基板20に対して非接触状態で支持されている。
【0029】
犠牲層23は、後述する赤外線シャッター機構部3の製造時に赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ27を形成するための層であると共に、導体層26によって支持基板10上に形成される各種電極等を支持基板20に対して相互に絶縁するための層として機能する。この場合、この犠牲層23については、酸化シリコン、シリコンおよび各種有機物等で形成することができ、また、その厚みd(すなわち、ギャップ27の高さ:赤外線透過薄膜積層体22,24の常態における離間距離)については、ギャップ27内に満たされる気体(各種のガスや空気など:一例として、空気)、或いは真空の屈折率nとの積(nd)が、上記の対象波長領域の中心波長に対する1/4となる条件を満たすことを条件として、任意に規定することができる。支持層25は、「第2の支持膜」を構成する層であって、一例として、酸化シリコンやポリイミドによって、物理的な厚みが数十nm〜数十μm程度の薄膜状に形成されている。
【0030】
導体層26は、バンプ19を介して赤外線透過薄膜積層体22や赤外線透過薄膜積層体24を赤外線センサ部2のバンプ接続部P3a,P4aに接続するための導体パターンやバンプ接続部P5,P6(図2,3参照)を構成する層であって、一例として、上記の赤外線透過薄膜積層体22,24を構成する各薄膜の形成に使用した導電材料(例えば、ゲルマニウムやシリコン)やアルミニウム等によって、物理的な厚みが数nm〜数μm程度の薄膜状に形成されている。
【0031】
反射率低減層28は、いわゆる「無反射コーティング層(AR層)」であって、赤外線シャッター機構部3における赤外線IRの入射面(支持基板20における赤外線透過薄膜積層体22の形成面の裏面:「第2の支持基板における他方の面」の一例)において、赤外線シャッター機構部3に入射しようとする赤外線IRが大きく反射されるのを阻止する。この反射率低減層28は、ゲルマニウムやシリコン等の高屈折率材料で形成した薄膜(対象波長領域を透過可能な薄膜)と、硫化亜鉛やセレン化亜鉛等の低屈折率材料で形成した薄膜(対象波長領域を透過可能な薄膜)とを積層した積層体で構成されている。この場合、反射率低減層28の光学的厚み(nd)は、対象波長領域の中心波長に対する1/2となる条件を満たすことを条件として、各種屈折率の材料で任意の厚みで形成することができる。
【0032】
この赤外線測定器1の製造に際しては、まず、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3をそれぞれ製造する。なお、一例として、赤外線センサ部2についての製造方法、および赤外線シャッター機構部3の製造方法についてこの順で説明するが、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3の製造順序は特に限定されるものではない。
【0033】
赤外線センサ部2の製造に際しては、図5に示すように、まず、公知の半導体製造プロセスに従い、支持基板10の一面(後に、赤外線シャッター機構部3に対向させられる面:図3,4における上面)に、絶縁層11、導体層12、強誘電体層13および導体層14をこの順で形成する。この際には、各層11〜14毎に、これらを支持基板10上の所望の領域に形成するためのマスクパターン(図示せず)を形成することで、マスクパターンから露出している部位だけに所望の層を形成する。これにより、支持基板10の厚み方向において強誘電体層13と重なっている部位に導体層12,14によって電極P1,P2がそれぞれ形成される。次いで、図6に示すように、保護膜15を形成する。この際には、導体層12において信号線接続部P1aとすべき部位や導体層14などが保護膜15によって覆われることのないようにマスクパターン(図示せず)によって覆った状態で保護膜15を形成する。
【0034】
なお、以下に説明する各層の形成工程においてもマスクパターンを使用するが、マスクパターンを用いて所望の領域だけに所望の層を形成する技術については公知のため、このマスクパターンについての詳細な説明を省略する。続いて、保護膜15上に導体層16を形成する。これにより、導体層14,16が相互に電気的に接続された状態となる。次いで、図7に示すように、導体層14の表面を覆うようにして赤外線吸収膜17を形成すると共に、導体層12におけるバンプ接続部P3a,P4aにバンプ19をそれぞれ形成する。なお、バンプ19については、赤外線センサ部2側に形成せずに、赤外線シャッター機構部3におけるバンプ接続部P5,P6に形成することもできる。また、赤外線センサ部2におけるバンプ接続部P3a,P4a、および赤外線シャッター機構部3におけるバンプ接続部P5,P6の双方にバンプ19をそれぞれ形成することもできる。
【0035】
次いで、各要素11〜17(およびバンプ19)を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いた現像処理(例えば、エッチングガスを用いたエッチング処理)を実行することにより、強誘電体層13や導体層14に対して厚み方向で重なる位置の支持基板10を除去して、空隙18(図3,4参照)を形成する。これにより、強誘電体層13や導体層14(および導体層12,14で構成された電極P1,P2)が支持基板10に対して非接触の状態で絶縁層11、導体層12,14および保護膜15(「第1の支持膜」)によって支持された状態となり、赤外線センサ部2が完成する。
【0036】
一方、赤外線シャッター機構部3の製造に際しては、図8に示すように、まず、公知の半導体製造プロセスに従い、支持基板20の一面(後に、赤外線センサ部2に対向させられる面:図3,4における下面)に、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体22を形成する。次いで、図9に示すように、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体22を覆うようにして犠牲層23を形成した後に、犠牲層23の表面において支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体22に重なる位置に赤外線透過薄膜積層体24を形成する。続いて、犠牲層23の一部(パンプ接続部P6等を形成すべき部位から、赤外線透過薄膜積層体22の端面に及ぶ領域)をエッチングによって除去して絶縁層21を露出させる。次いで、図10に示すように、犠牲層23から露出している絶縁層21、および犠牲層23上のバンプ接続部P5を形成すべき部位から赤外線透過薄膜積層体22の端面に及ぶ領域に導体層26を形成する。また、赤外線透過薄膜積層体24や導体層26の形成領域を除いて支持層25を形成する。
【0037】
続いて、図11に示すように、赤外線透過薄膜積層体24を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いた現像処理(例えば、エッチングガスを用いたエッチング処理)を実行することにより、赤外線透過薄膜積層体24と赤外線透過薄膜積層体22との間の犠牲層23を除去してギャップ27を形成する。これにより、赤外線透過薄膜積層体24が赤外線透過薄膜積層体22や支持基板20に対して非接触の状態で支持層25や導体層26によって支持されて赤外線透過薄膜積層体22,24が対向した状態となる。この後、支持基板20における赤外線IRの入射面(赤外線透過薄膜積層体22,24等を形成した面の裏面)に反射率低減層28を形成することにより、赤外線シャッター機構部3が完成する。
【0038】
次いで、図12に示すように、赤外線センサ部2における強誘電体層13や赤外線吸収膜17等の形成面と、赤外線シャッター機構部3における赤外線透過薄膜積層体22,24等の形成面とを対向させると共に、赤外線センサ部2に形成したバンプ19,19が赤外線シャッター機構部3の導体層26におけるバンプ接続部P5,P6に接するように赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3を重ねた状態において、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3を加熱しつつ、超音波を印加する。これにより、バンプ19,19が溶融して赤外線シャッター機構部3のバンプ接続部P5,P6に溶着する結果、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3が一体化した状態となる。また、この状態においては、赤外線シャッター機構部3の赤外線透過薄膜積層体24が犠牲層23上の導体層26およびバンプ19を介して赤外線センサ部2の導体層12に電気的に接続されると共に、赤外線シャッター機構部3の赤外線透過薄膜積層体22が絶縁層21上の導体層26およびバンプ19を介して赤外線センサ部2の他の導体層12に電気的に接続される。これにより、赤外線測定器1が完成する。
【0039】
この赤外線測定器1では、赤外線シャッター機構部3における支持基板20に入射した赤外線IRを赤外線透過薄膜積層体22,24によって反射または透過させることで、赤外線センサ部2の赤外線吸収膜17に入射する赤外線IRをチョッピングする構成が採用されている。具体的には、この赤外線測定器1の使用に際しては、赤外線センサ部2の信号線接続部P3b,P4bを、図示しない信号線を介して、図示しない駆動制御部に電気的に接続すると共に、赤外線センサ部2の信号線接続部P1a,P2aを、図示しない信号線を介して、図示しない測定回路に電気的に接続する。
【0040】
この場合、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構部3は、上記の駆動制御部によって赤外線透過薄膜積層体22,24に対して電圧が印加されていない状態において、赤外線透過薄膜積層体22,24の間に、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長(この例では、10000nm)に対する1/4である2500nm程度(「nd=1/4λ」に対する1倍の例(奇数倍の一例))のギャップ27が形成される(ギャップ27を挟んで赤外線透過薄膜積層体22,24が厚み方向で重なるように)構成されている。このように、ギャップ27(本例では、空気で形成された「低屈折率層」)が形成された状態(「各高屈折率層の間に電圧が印加されずに各高屈折率層の間にギャップが形成された状態」の一例)では、赤外線透過薄膜積層体22における赤外線透過薄膜積層体24側の面、および赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体22側の面において赤外線IRが反射される結果、赤外線IRの透過が規制される。以下、この状態を「閉状態」ともいう。
【0041】
また、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構部3では、赤外線透過薄膜積層体22,24の間に駆動制御部によって数V〜数十V程度の電圧が印加されたときに、赤外線透過薄膜積層体22,24の間に静電引力が生じて、赤外線透過薄膜積層体22,24が面的に接触して光学的に一体化するように構成されている。このように、各赤外線透過薄膜積層体22,24の間に電圧が印加されて両赤外線透過薄膜積層体22,24が厚み方向で光学的に一体化した状態では、赤外線透過薄膜積層体22における赤外線透過薄膜積層体24側の面、および赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体22側の面における赤外線IRの反射が極く小さなものとなる結果、各赤外線透過薄膜積層体22,24の厚み方向への赤外線IRの透過が許容される。以下、この状態を「開状態」ともいう。
【0042】
これにより、この赤外線測定器1における赤外線シャッター機構部3では、駆動制御部によって電圧を印加する状態と電圧を印加しない状態との2種類の状態を一定周期で交互に繰り返すことにより、赤外線IRを一定周期でチョッピングすることが可能となっている。また、赤外線シャッター機構部3が開状態となって赤外線IRの透過が許容された状態においては、赤外線センサ部2に対する赤外線IRの入射量に応じて赤外線吸収膜17が発熱し、この熱によって強誘電体層13が加熱される。これにより、赤外線吸収膜17に生じた熱量、すなわち、赤外線シャッター機構部3を透過して赤外線センサ部2の入射面に入射した赤外線IRの照射量に応じた電流値の検出信号が強誘電体層13から出力される。
【0043】
この場合、この赤外線測定器1では、赤外線センサ部2に対する赤外線IRの入射を許容するときには、赤外線シャッター機構部3の赤外線透過薄膜積層体22,24を光学的に一体化させ、赤外線センサ部2に対する赤外線IRの入射を規制するときには、赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ27を形成するだけの簡単な制御でよいため、赤外線IRを確実かつ容易にチョッピングして赤外線センサ部2(赤外線吸収膜17)に対して入射させることが可能となっている。また、この赤外線測定器1によれば、赤外線シャッター機構部3の赤外線透過薄膜積層体22,24を導電性材料で形成したことにより、「高屈折率層」とは別個に駆動用電極を形成した構成と比較して、赤外線シャッター機構部3を閉状態にするための(赤外線透過薄膜積層体22,24に電圧を印加するための)専用の電極の形成が不要となる分だけ、赤外線測定器1の製造コストを低減できると共に、赤外線透過薄膜積層体22,24の質量を十分に小さくすることができるため、赤外線シャッター機構部3を高速に、しかも安定して駆動することが可能となっている。
【0044】
このように、この赤外線測定器1では、支持基板10における一方の面と支持基板20における一方の面とが対向するように赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3が一体化されて、両赤外線透過薄膜積層体22,24の間に電圧が印加されて両赤外線透過薄膜積層体22,24が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線IRを透過させて「センサ本体(この例では、強誘電体層13および赤外線吸収膜17)」に対する赤外線IRの入射を許容すると共に両赤外線透過薄膜積層体22,24の間に電圧が印加されずに両赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ27が形成された状態において赤外線IRを反射して「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を規制するように構成されている。
【0045】
また、この赤外線測定器1の製造方法では、赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3をそれぞれ製造した後に、支持基板10における一方の面と支持基板20における一方の面とが対向するように赤外線センサ部2および赤外線シャッター機構部3を一体化することによって、両赤外線透過薄膜積層体22,24の間に電圧が印加されて両赤外線透過薄膜積層体22,24が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線IRを透過させて「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を許容すると共に、両赤外線透過薄膜積層体22,24の間に電圧が印加されずに両赤外線透過薄膜積層体22,24の間にギャップ27が形成された状態において赤外線IRを反射して「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を規制する構成の赤外線測定器1を製造する。
【0046】
したがって、この赤外線測定器1、および赤外線測定器1の製造方法によれば、例えば、赤外線センサ部2の製造に際して空隙18を形成するための現像処理において現像不良が生じたとしても、製造途中の赤外線センサ部2が無駄となるだけで、既に製造した赤外線シャッター機構部3、或いは、その後に製造する赤外線シャッター機構部3が無駄となる事態を回避できると共に、赤外線シャッター機構部3の製造に際してギャップ27を形成するための現像処理において現像不良が生じたとしても、製造途中の赤外線シャッター機構部3が無駄となるだけで、既に製造した赤外線センサ部2、或いは、その後に製造する赤外線センサ部2が無駄となる事態を回避できるため、赤外線測定器1の歩留まりを十分に向上させることができる。また、赤外線シャッター機構部3を構成する赤外線透過薄膜積層体22,24等の形成処理の影響が赤外線センサ部2を構成する各層に及ぶことがないため、この点においても、赤外線測定器1の歩留まりを十分に向上させることができるだけでなく、製造過程における温度管理が難しい焦電型赤外線センサ(この例では、強誘電体層13によって形成されたセンサ)を採用しても、赤外線IRの検出感度を低下させるおそれがないため、赤外線IRの検出精度が高い赤外線測定器1を安価に製造することができる。
【0047】
また、この赤外線測定器1によれば、「センサ本体」としての「焦電型赤外線センサ(この例では、強誘電体層13によって形成されたセンサ)」を備えて赤外線センサ部2を構成したことにより、サーモパイル型赤外線センサやサーミスタ等のセンサ本体と比較して赤外線IRの検出感度が十分に高い赤外線センサ部2を備えたことで、赤外線IRの検出感度を十分に高めることができる。
【0048】
また、この赤外線測定器1によれば、支持基板20を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって支持基板20における他方の面に形成された反射率低減層28を備えて赤外線シャッター機構部3を構成したことにより、支持基板20における赤外線透過薄膜積層体22,24等の形成面とは反対側の面(赤外線IRの入射面)において赤外線IRが大きく反射されて赤外線シャッター機構部3の赤外線IRの透過率が低下する事態を回避して、開状態において赤外線センサ部2に対して十分な量の赤外線IRを入射させることができる。
【0049】
次に、「赤外線測定器」の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、前述した赤外線測定器1と同一の機能を有する構成要素や、同一の機能を有する構成要素の製作工程については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0050】
図13〜16に示す赤外線測定器1Aは、上記の赤外線測定器1における赤外線センサ部2に代えて、「赤外線センサ部」の他の一例である赤外線センサ部2aを備えると共に、赤外線測定器1における赤外線シャッター機構部3に代えて、「赤外線シャッター機構部」の他の一例である赤外線シャッター機構部3aを備えて構成されている。この赤外線測定器1Aは、前述した赤外線測定器1と同様にして、公知の半導体製造プロセスに従って赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aをそれぞれ別個に製造した後に、これらを一体化することで製造されている。
【0051】
この場合、この赤外線測定器1Aでは、図15,16に示すように、赤外線シャッター機構部3aが、「第1の高屈折率層」に相当する赤外線透過薄膜積層体22、「第2の高屈折率層」に相当する赤外線透過薄膜積層体29、および「第3の高屈折率層」に相当する赤外線透過薄膜積層体24の3つの赤外線透過薄膜積層体(高屈折率層)を備えている点において赤外線シャッター機構部3とは相違している。また、この赤外線測定器1Aでは、赤外線センサ部2aが、赤外線シャッター機構部3aにおける3つの赤外線透過薄膜積層体22,24,29を図示しない駆動制御部に電気的に接続するために、図13に示すように、赤外線測定器1の赤外線センサ部2におけるバンプ接続部P3a,P4aや信号線接続部P3b,P4bに加えて、バンプ接続部P7aや信号線接続部P7bが赤外線センサ部2aに設けられている点において赤外線センサ部2とは相違している。なお、赤外線センサ部2aにおけるバンプ接続部P7aや信号線接続部P7bを構成する絶縁層11および導体層12の形成工程については、前述した赤外線センサ部2におけるバンプ接続部P3a,P4aや信号線接続部P3b,P4bを構成する絶縁層11および導体層12の形成工程と同様のため、赤外線センサ部2aの製造方法に関する説明を省略する。
【0052】
一方、赤外線シャッター機構部3aの製造に際しては、前述した赤外線シャッター機構部3の製造工程と同様の手順に従って、支持基板20の一面(後に、赤外線センサ部2aに対向させられる面:図15,16における下面)に、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体22を形成する。次いで、絶縁層21および赤外線透過薄膜積層体22を覆うようにして犠牲層23を形成した後に、犠牲層23の表面において支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体22に重なる位置に赤外線透過薄膜積層体24を形成する。続いて、犠牲層23の一部(パンプ接続部P6等を形成すべき部位から、赤外線透過薄膜積層体22の端面に及ぶ領域)をエッチングによって除去して絶縁層21を露出させる。次いで、犠牲層23から露出している絶縁層21、および犠牲層23上のバンプ接続部P5を形成すべき部位から赤外線透過薄膜積層体22の端面に及ぶ領域に導体層26を形成すると共に、赤外線透過薄膜積層体24や導体層26の形成領域を除いて支持層25を形成する。
【0053】
続いて、支持層25を覆うようにして犠牲層23aを形成した後に、犠牲層23aの表面において支持基板20の厚み方向で赤外線透過薄膜積層体22,24に重なる位置に赤外線透過薄膜積層体29を形成する。次いで、犠牲層23aの一部(パンプ接続部P8(図14参照)等を形成すべき部位から、赤外線透過薄膜積層体29の端面に及ぶ領域)をエッチングによって除去して支持層25を露出させる。次いで、犠牲層23aから露出している支持層25の上のバンプ接続部P8を形成すべき部位から赤外線透過薄膜積層体29の端面に及ぶ領域に導体層26a(図14参照)を形成すると共に、赤外線透過薄膜積層体29や導体層26aの形成領域を除いて支持層25aを形成する。
【0054】
続いて、赤外線透過薄膜積層体29を形成した面の側から、マスクパターン(図示せず)を用いた現像処理(例えば、エッチングガスを用いたエッチング処理)を実行することにより、赤外線透過薄膜積層体24と赤外線透過薄膜積層体22との間の犠牲層23、および赤外線透過薄膜積層体29と赤外線透過薄膜積層体24との間の犠牲層23aを除去してギャップ27,27aをそれぞれ形成する。これにより、赤外線透過薄膜積層体24が赤外線透過薄膜積層体22や支持基板20に対して非接触の状態で支持層25や導体層26によって支持されて赤外線透過薄膜積層体22,24が対向した状態になると共に、赤外線透過薄膜積層体29が赤外線透過薄膜積層体24や支持基板20に対して非接触の状態で支持層25aや導体層26aによって支持されて赤外線透過薄膜積層体24,29が対向した状態となる(支持基板20の厚み方向で対向する赤外線透過薄膜積層体22,29の間に赤外線透過薄膜積層体24が位置した状態)。この後、支持基板20における赤外線IRの入射面(赤外線透過薄膜積層体22,24,29等を形成した面の裏面)に反射率低減層28を形成することにより、赤外線シャッター機構部3aが完成する。
【0055】
次いで、赤外線センサ部2aにおける強誘電体層13や赤外線吸収膜17等の形成面と、赤外線シャッター機構部3aにおける赤外線透過薄膜積層体22,24,29等の形成面とを対向させると共に、赤外線センサ部2aに形成したバンプ19,19,19が赤外線シャッター機構部3aの導体層26,26aにおけるバンプ接続部P5,P6,P8に接するように赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aを重ねた状態において、赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aを加熱しつつ、超音波を印加する。これにより、バンプ19,19,19が溶融して赤外線シャッター機構部3aのバンプ接続部P5,P6,P8に溶着する結果、赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aが一体化した状態となる。また、この状態においては、赤外線シャッター機構部3aの赤外線透過薄膜積層体24が犠牲層23上の導体層26およびバンプ19を介して赤外線センサ部2aの導体層12に電気的に接続され、赤外線シャッター機構部3aの赤外線透過薄膜積層体22が絶縁層21上の導体層26およびバンプ19を介して赤外線センサ部2aの他の導体層12に電気的に接続されると共に、赤外線シャッター機構部3aの赤外線透過薄膜積層体29が絶縁層21上の導体層26およびバンプ19を介して赤外線センサ部2aの他の導体層12に電気的に接続される。これにより、赤外線測定器1Aが完成する。
【0056】
この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構部3aは、図示しない駆動制御部によって赤外線透過薄膜積層体22,24,29に対して電圧が印加されていない状態において、赤外線透過薄膜積層体22,24(「2組の高屈折率層」のうちの一方)の間、および赤外線透過薄膜積層体24,29(「2組の高屈折率層」のうちの他方)の間に、その光学的厚み(nd)が上記の対象波長領域の中心波長(この例では、10000nm)に対する1/4である2500nm程度(「nd=1/4λ」に対する1倍の例(奇数倍の一例))のギャップ27,27aがそれぞれ形成される(ギャップ27を挟んで赤外線透過薄膜積層体22,24が厚み方向で重なると共に、ギャップ27aを挟んで赤外線透過薄膜積層体24,29が厚み方向で重なるように)構成されている。このように、ギャップ27,27a(一例として、空気で形成された「低屈折率層」)が形成された状態(「各高屈折率層の間に電圧が印加されずに各高屈折率層の間にギャップが形成された状態」の一例)では、赤外線透過薄膜積層体22における赤外線透過薄膜積層体24側の面、赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体22側の面、赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体29側の面、および赤外線透過薄膜積層体29における赤外線透過薄膜積層体24側の面において赤外線IRが反射される結果、赤外線IRの透過が規制される。以下、この状態を「閉状態」ともいう。
【0057】
また、この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構部3aでは、赤外線透過薄膜積層体22,24(「2組の高屈折率層」のうちの一方)の間、および赤外線透過薄膜積層体24,29(「2組の高屈折率層」のうちの他方)の間に駆動制御部によって数V〜数十V程度の電圧がそれぞれ印加されたときに、赤外線透過薄膜積層体22,24の間、および赤外線透過薄膜積層体24,29の間に静電引力が生じて、赤外線透過薄膜積層体22,24が面的に接触して光学的に一体化すると共に、赤外線透過薄膜積層体24,29が面的に接触して光学的に一体化する結果、赤外線透過薄膜積層体22,24,29のすべてが光学的に一体化するように構成されている(「3つの高屈折率層が光学的に一体化し」との状態の一例)。このように、各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間に電圧が印加されて両赤外線透過薄膜積層体22,24,29が厚み方向で光学的に一体化した状態では、赤外線透過薄膜積層体22における赤外線透過薄膜積層体24側の面、赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体22側の面、赤外線透過薄膜積層体24における赤外線透過薄膜積層体29側の面、および赤外線透過薄膜積層体29における赤外線透過薄膜積層体24側の面における赤外線IRの反射が極く小さなものとなる結果、各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の厚み方向への赤外線IRの透過が許容される。以下、この状態を「開状態」ともいう。
【0058】
これにより、この赤外線測定器1Aにおける赤外線シャッター機構部3aでは、駆動制御部によって電圧を印加する状態と電圧を印加しない状態との2種類の状態を一定周期で交互に繰り返すことにより、赤外線IRを一定周期でチョッピングすることが可能となっている。また、赤外線シャッター機構部3aが開状態となって赤外線IRの透過が許容された状態においては、赤外線センサ部2aに対する赤外線IRの入射量に応じて赤外線吸収膜17が発熱し、この熱によって強誘電体層13が加熱される。これにより、赤外線吸収膜17に生じた熱量、すなわち、赤外線シャッター機構部3aを透過して赤外線センサ部2aの入射面に入射した赤外線IRの照射量に応じた電流値の検出信号が強誘電体層13から出力される。
【0059】
このように、この赤外線測定器1Aでは、支持基板10における一方の面と支持基板20における一方の面とが対向するように赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aが一体化されて、各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間に電圧が印加されて各赤外線透過薄膜積層体22,24,29が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線IRを透過させて「センサ本体(この例では、強誘電体層13および赤外線吸収膜17)」に対する赤外線IRの入射を許容すると共に各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間に電圧が印加されずに各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間にギャップ27が形成された状態において赤外線IRを反射して「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を規制するように構成されている。
【0060】
また、この赤外線測定器1Aの製造方法では、赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aをそれぞれ製造した後に、支持基板10における一方の面と支持基板20における一方の面とが対向するように赤外線センサ部2aおよび赤外線シャッター機構部3aを一体化することによって、各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間に電圧が印加されて各赤外線透過薄膜積層体22,24,29が厚み方向で光学的に一体化した状態において厚み方向に赤外線IRを透過させて「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を許容すると共に、各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間に電圧が印加されずに各赤外線透過薄膜積層体22,24,29の間にギャップ27が形成された状態において赤外線IRを反射して「センサ本体」に対する赤外線IRの入射を規制する構成の赤外線測定器1Aを製造する。
【0061】
したがって、この赤外線測定器1A、および赤外線測定器1Aの製造方法によれば、前述した赤外線測定器1、および赤外線測定器1の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0062】
なお、焦電型赤外線センサの一例である強誘電体層13を有する赤外線センサ部2,2aを備えた赤外線測定器1,1Aを例に挙げて説明したが、「赤外線センサ」は、焦電型赤外線センサに限定されず、サーモパイル型赤外線センサやサーミスタ等の各種熱型センサ、および量子型赤外線センサなどを採用して赤外線測定器を構成することができる。このように、焦電型赤外線センサ以外の「赤外線センサ」を採用する場合においても、「赤外線センサ部」を、「赤外線シャッター機構部」とは別個に製造して、後に、「赤外線センサ部」および「赤外線シャッター機構部」を一体化することにより、前述した赤外線測定器1,1Aと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1A 赤外線測定器
2,2a 赤外線センサ部
3,3a 赤外線シャッター機構部
10,20 支持基板
11,21 絶縁層
12,14,16,26,26a 導体層
13 強誘電体層
15 保護膜
17 赤外線吸収膜
18 空隙
19 バンプ
22,24,29 赤外線透過薄膜積層体
23,23a 犠牲層
25,25a 支持層
27,27a ギャップ
28 反射率低減層
IR 赤外線
P1,P2 電極
P1a,P2a,P3b,P4b,P7b 信号線接続部
P3a,P4a,P5,P6,P7a,P8 パンプ接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を備えると共に、
赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層とを有して、当該両高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、当該両高屈折率層の間に電圧が印加された状態において当該両高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されない状態において当該両高屈折率層の間にギャップが形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を備え、
前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部が一体化されて、前記両高屈折率層の間に前記電圧が印加されて当該両高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されずに当該両高屈折率層の間に前記ギャップが形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制するように構成されている赤外線測定器。
【請求項2】
第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を備えると共に、
赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層と、前記第1の高屈折率層および前記第2の高屈折率層の間に配置されて第3の支持膜によって前記第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第3の高屈折率層とを有して、当該各高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、対向する2組の当該各高屈折率層の間に電圧がそれぞれ印加された状態において当該3つの高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されない状態において当該2組の各高屈折率層の間にギャップがそれぞれ形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を備え、
前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部が一体化されて、前記2組の各高屈折率層の間に前記電圧がそれぞれ印加されて当該各高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されずに当該2組の各高屈折率層の間に前記ギャップがそれぞれ形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制するように構成されている赤外線測定器。
【請求項3】
前記赤外線センサ部は、前記センサ本体としての焦電型赤外線センサを備えて構成されている請求項1または2記載の赤外線測定器。
【請求項4】
前記赤外線シャッター機構部は、前記第2の支持基板を形成している材料よりも屈折率が低い材料によって当該第2の支持基板における他方の面に形成された反射率低減層を備えて構成されている請求項1から3のいずれかに記載の赤外線測定器。
【請求項5】
第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を製造すると共に、
赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層とを有して、当該両高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、当該両高屈折率層の間に電圧が印加された状態において当該両高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されない状態において当該両高屈折率層の間にギャップが形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を製造した後に、
前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部を一体化することによって、前記両高屈折率層の間に前記電圧が印加されて当該両高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に、当該両高屈折率層の間に当該電圧が印加されずに当該両高屈折率層の間に前記ギャップが形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制する構成の赤外線測定器を製造する赤外線測定器の製造方法。
【請求項6】
第1の支持基板と、当該第1の支持基板における一方の面側に配置されて第1の支持膜によって当該第1の支持基板に対して非接触状態で支持されたセンサ本体とを有する赤外線センサ部を製造すると共に、
赤外線を透過可能な材料で形成された第2の支持基板と、当該第2の支持基板における一方の面に形成された第1の高屈折率層と、前記第2の支持基板の厚み方向で前記第1の高屈折率層に対向配置されて第2の支持膜によって当該第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第2の高屈折率層と、前記第1の高屈折率層および前記第2の高屈折率層の間に配置されて第3の支持膜によって前記第2の支持基板に対して非接触状態で支持された第3の高屈折率層とを有して、当該各高屈折率層が前記赤外線を透過可能な導電性材料でそれぞれ形成されると共に、対向する2組の当該各高屈折率層の間に電圧がそれぞれ印加された状態において当該3つの高屈折率層が光学的に一体化し、かつ、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されない状態において当該2組の各高屈折率層の間にギャップがそれぞれ形成されるように構成された赤外線シャッター機構部を製造した後に、
前記第1の支持基板における前記一方の面と前記第2の支持基板における前記一方の面とが対向するように前記赤外線センサ部および前記赤外線シャッター機構部を一体化することによって、前記2組の各高屈折率層の間に前記電圧がそれぞれ印加されて当該各高屈折率層が前記厚み方向で光学的に一体化した状態において当該厚み方向に前記赤外線を透過させて前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を許容すると共に、当該2組の各高屈折率層の間に当該電圧がそれぞれ印加されずに当該2組の各高屈折率層の間に前記ギャップがそれぞれ形成された状態において当該赤外線を反射して前記センサ本体に対する当該赤外線の入射を規制する構成の赤外線測定器を製造する赤外線測定器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−189473(P2012−189473A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53873(P2011−53873)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】