説明

赤血球沈降速度及び/又は赤血球凝集速度等、血液の濃度に関連する特性パラメータを分析する装置を較正する方法

赤血球沈降速度(ESR)及び/又は赤血球の凝集を測定することによって血液サンプル(12)の分析を行うのに適した機械(10)を較正するための方法であって、前記測定は、或る時間間隔における血液サンプル(12)の光学濃度の変化の測定から得た光学濃度変動を利用して行うものであり、前記方法は、前記血液サンプル(12)対して光学濃度の測定を行うものと同じ機械(10)によって、2種のラテックス(23a、23b、23c)、又は濁度測定サンプルの光学濃度の測定を行う測定ステップを含む。2種のラテックス(23a、23b、23c)の各々は、再現可能且つ測定可能で互いに異なる既知の光学濃度を有する。また、本方法は、機械(10)によって行われた測定から得たラテックス(23a、23b、23c)の光学濃度の値と、光学濃度の既知の値との差を計算し、前記機械(10)を較正するのに使用可能な少なくとも一種の補正係数を決定することを可能にする比較ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプルについて分析を行うのに適した機械(例えば、血液の血球部分の沈降速度を測定するのに用いられる機械)を較正し、設定し、制御するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、その測定は、赤血球の沈降速度(赤血球沈降速度(ESR))及び/又は赤血球の凝集速度に関し、シレクトグラム(syllectrogram)として知られている光学濃度の変動(kinetic)を利用することによって行われる。
【背景技術】
【0003】
血液分析の分野では、例えば、炎症性疾患の存在を評価するために、血液の血球部分の沈降速度(ESR)を測定することが知られている。
【0004】
ESRを測定するために使用される機械及び技術としては、例えば、本出願人名義で公開された欧州特許出願EP−A−1098188に記載されているもの等が知られている。この欧州特許出願に記載されたものでは、測定チャンバの両側に配置された光学的放射手段と検出手段とが用いられている。
【0005】
分析すべき血液サンプルを測定チャンバ中に注入すると共に、その流れを突然止めて検査サンプル中に存在する血球部分の光学濃度の特徴的変動を引起す。この変動はシレクトグラムとして知られている。
【0006】
光学濃度は、吸光度又は透過率として測定できる。吸光度は、ランベルト・ベールの法則を用いて決定され、吸光度の値はA=−log(I/I°)*Lの式によって計算される。式中、I°は測定中のサンプルに入射した光のパワーであり、Iは測定中のサンプルから出てきた光のパワーであり、Lは光学経路又は軌跡の長さ、即ちサンプルの厚さである。
【0007】
検出手段が処理手段に結合されており、この処理手段は、試験対象のサンプルの光学濃度の前記特徴的変動を測定すると共に、特定のアルゴリズムを用いてESR値又は赤血球凝集速度を計算するが、このアルゴリズムは、機械自体のパラメータ及びその測定特性によって特徴付けられる。
【0008】
機械の較正を行うために、同じ血液サンプルでのESRの測定のために科学的に認められている伝統的な参照方法、例えば、ウェスターグレン法を並行して使用することが知られている。
【0009】
ウェスターグレン法を参照手段として用いる場合、測定されたESR値は、試験が行われる環境の温度変化に特に敏感である。事実、これらの測定値は、連銭形成(rouleaux)、懸濁流体の濃度、液体の粘性等から沈降速度を計算するのに用いるストークスの式によって解析的に記述されているように、試験が行われる温度の変化に大きく影響される。
【0010】
また、同じサンプルに対して行う試験と次の試験の間に温度が3〜5℃変化した場合、測定精度が30〜50%悪化することが実験的に証明されている。
【0011】
このため、米国臨床研究所規格委員会(NCCLS, H2-A4 Vol. 20 n° 27, page 1 "Scop
e ESR procedures cannot be calibrated")は、ESRの測定手続きは種々の誤差に影
響を受けやすいため、ESRの測定手続きは較正できないと考えている。
【0012】
シレクトグラムによって表される赤血球の沈降及び凝集現象は、新鮮な血液に限定される変動的なものであることを考えると、現状では、この試験の標準化した較正のための手段(material)を達成することは不可能である。
【0013】
ウェスターグレン法は、現在でも沈降を測定するための参照方法であるが、この方法は極めて面倒であり、誤りをおかし易く、血液サンプルを含む試験管が分析の間完全に垂直であると仮定しており、血液サンプルを採取した後最長で4時間以内しか行うことができず、この種の自動機械に比べて分析に長い時間がかかる。
【0014】
幾つかの製造業者は、ウェスターグレンのためのガラス管からESRを測定する他の測定装置に到るまで、赤血球沈降のための種々の測定システムにおいて使用される制御装置を製造及び提案してきた。しかし、これらの制御装置では、それらが使用される測定システム毎に異なるESR値が得られる。従って、異なるシステムを用いて同一の血液サンプルに対して行われる測定は使用される測定システムによって互いに相違する。一方、較正の目的は、同一の血液サンプルに対し整合されたESR値を提供する、即ち測定手段が使用される環境に関わらず、反復可能で、異なる環境で測定されたESR値と一致した値を提供することである。
【0015】
公開された欧州特許出願EP−A2−0887637から、血液サンプルに含まれている赤血球、網状赤血球、白血球、及び血小板のサイズ、直径、及び容積を計数及び測定するフローサイトメータを較正するために合成ポリマーの球状粒子を使用することが知られている。この粒子は、平均直径が約1〜8ミクロンで、粒子の分布が制限されており、屈折率が約1.35〜1.45と低い。
【0016】
この公知の較正方法は、典型的には、極めてサイズが小さい(典型的には1〜10ミクロンの間)細胞やその他の生物学的粒子が流体流内を流れ、各粒子(実質的には、一回に1個の細胞)が検出領域を通過し、ここで物理的又は化学的特徴(この場合、数、直径及び/又は容積)が毎回測定されるフローサイトメータ又は血球カウンタに対して有効である。
【0017】
その様なフローサイトメータは、血液サンプル中に存在する粒子の検出領域での沈降に起因する光学濃度の変化を評価することが出来ない。何故なら、それらの装置は、一回に1個の粒子の化学物理的な特徴を分析することはできるが、多数の粒子が関与する赤血球の沈降等の現象を捕えられないからである。
【0018】
さらに、何れにせよ、個々の粒子についてこの較正技術を使用しても、分析すべき血液サンプルの光学濃度の変化をシミュレートしたり再構築したりすることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一目的は、赤血球沈降速度及び/又は赤血球凝集指数(文献ではM指数として知られている)等の、血液の濃度に関連する血液パラメータを分析するための装置を、該装置による測定値の全体的な整合性が或る制限された値の範囲(例えば、±10%)に入るような測定値を得るために、一義的で、繰り返し可能で且つ絶対的な方法で、温度や他の環境的要因に依存することなく、既知の値に対して較正し、設定し又は整合させる方法であって、従来技術の欠点を有しない方法を提供することである。
【0020】
本出願人は、従来技術の欠点を克服すると共に、これら及び他の目的や利点を達成するために本発明を考案し、試験し、具体化した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は独立請求項に記載されると共にそこで特徴づけられており、従属請求項は本発明の他の特徴や本発明の主たる着想に対する変形例について述べている。
【0022】
上記の目的に従い、本発明による方法は、赤血球沈降速度(ESR)及び/又は赤血球凝集の特徴指標等の、血液の濃度に関連する血液パラメータを検出するための装置を較正するために使用される。
【0023】
検出値は、測定セル、即ち毛細管を通る血液サンプルの流れを突然止めることによって引き起こされる血液サンプルの光学的な吸収度又は密度の変化を測定すると共に処理することによって得られる。サンプルは、シレクトグラムとして知られている光学濃度変動の特定の特性曲線を定義できる特定の分析的手続きに付される。
【0024】
同様の方法を、例えば、(任意に周波数の)音響放射線即ち音波等の他のエネルギー源に対しても使用できる。この場合、既知の濃度を有するサンプルに向けて前記エネルギー源を適切に向けることにより、その減衰を測定し、これにより測定システムを較正することが出来る。
【0025】
上に述べたこの分析的手続きは、この特定の場合において、血液サンプルが毛細管を通って流れるようにすると共に、サンプルの血球部分を特徴的変動を決定するためにその流れを突然止める。
【0026】
本発明の一特徴によれば、その方法は、少なくとも2種のラテックス、濁度測定サンプル、或いはその他の類似又は同等の物質で血液と比較しうる光学濃度の特徴を有しているものの使用を前提としている。
【0027】
較正に使用される2種のラテックスは、再現可能で、測定可能で且つ互いに異なる既知の光学濃度を有している。予め選択された光学濃度の2値は、それらの差が、流れが突然停止される血液サンプルによって引き起こされる光学濃度の相対変化の最大値に略等しいものであることが有利である。
【0028】
本発明による方法は、前記少なくとも2種のラテックスの各々の光学濃度を、所定の時間、連続的に又は別々に測定する測定ステップを含み、第1のラテックスは、流れの突然の停止によって引き起こされる光学濃度変動の開始に対応する光学濃度の値を示し、第2のラテックスは、予め決められた測定時間の後に到達した光学濃度の値を示す。
【0029】
測定値は、前記の少なくとも2種のラテックスを測定チャンバ又はセル内に所定量注入し、それがあたかも類似の血液サンプルであるかのようにして異なる2値の光学濃度を検出することで得られる(検出は、静止状態で行うことが有利であるが、必ずしも静止状態で行う必要はない)。
【0030】
前記の測定値から導出された値は、例えば電子的に記憶され、それらが常に利用可能にされる。
【0031】
2種のラテックスのみが使用される場合、変動の開始と終わりを相対的に表す混濁度の2値を得る。この2値は、前記の時間間隔での光学濃度の積分値を計算する点であり、この積分計算は、例えば流れの停止、又は吸光度の応答変動を表す曲線を決定する他の介入が行われる個々の血液サンプルに対する実際の測定において同様の方法で行われる。
【0032】
また、本発明による方法は、行った測定によって得た前記ラテックスの光学濃度の値を、前記ラテックスの光学濃度の既知の値と比較する比較ステップを含む。各ラテックスの既知の濃度値は、一定の波長と特定の長さ(例えば、1〜2mmの間)の光学経路を使用する標準化された測定装置(測光器)を用いて事前に決定されている。
【0033】
比較により、実際の変動の様に、ラテックスのサンプルの光学濃度の値の差を計算し、これにより、少なくとも機械の較正に使用可能な補正係数を決定できる。
【0034】
この比較から補正係数が得られ、絶対的で、一義的で、繰り返し可能な方法で較正、設定又は整合を行うために、パラメータ、例えば機械ゲインをこの補正係数に調節しなければならない。これはまた、知られているように、ラテックスの光学濃度は実質的に温度に非依存であることにもよる。
【0035】
一般に、較正ステップにおいて使用できる光学濃度が異なるラテックスの数は、測定装置によって測定可能な全てのESR値を得るために光学濃度の全ての範囲をシミュレートできる較正曲線と同様、得るべき改善のレベルに依存する。
【0036】
従って、本発明は、機械を較正するために使用する複数の補正係数を得ることができる。この補正係数は、シレクトグラムとして知られている血液の光学濃度変動の種々のパラメータを分析するのに使用される全ての測定装置によってばらつきのない測定値を得るために、機械の種々の機構及び要素に割り当てられる均等化値を含む。
【0037】
従って、本発明は、例えば、流れや遠心力、振動法を用いるものなど、血液の光学濃度変動、即ちシレクトグラムを生じさせることができる全ての測定装置技術に適している。これらの技術は全て、赤血球の破壊、凝集又は連銭を引き起こし、破壊的な力が好適な方法で停止された時に光学濃度変動が分析され、それが連銭の形成と関連付けられる。
【0038】
このようにして、同一の血液サンプルを分析する場合に異なる機械を使用しても、本発明によって較正することにより、温度、圧力、加速度等の環境条件が異なっていても、精度が高く、誤差の範囲が制限されたESRの測定値を得ることができる。
【0039】
さらに、本発明による方法は、例えば、測定を行う前、測定中、一群の測定と次群の測定の間、測定の終わり等の使用中における任意の時点で機械に適用できる。
【0040】
本発明の上記及びその他の特徴は、添付の図面を参照して行われる、非限定的な例としての好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1を参照すると、例えば試験管13から到来する血液サンプル12の光学濃度の変化を測定することによって赤血球沈降速度(ESR)を検出する機械10を較正するために本発明による方法が使用される。
【0042】
機械10は、測定チャンバ16を画定する管15を含み、分析すべき血液サンプル12が測定チャンバ16に注入されると共に、血液サンプル12の流れが突然停止されて光学濃度の特性曲線が作られる。この特性曲線はシレクトグラムと呼ばれ、図2において文字「S」で示されている。
【0043】
吸光度を変化させることによって血液サンプル12の赤血球沈降速度(ESR)を測定するための現在知られている他の方法を使用してシレクトグラムを得ることができるのは明らかである。
【0044】
図2の曲線S上において、点「a」は血液サンプル12の光学濃度が実質的に一定である所を示し、点「b」は血液の流れが突然停止されて光学濃度が点「c」で示された最小値に低下した時点を表す。その後、光学濃度の値はそれ自身の変動に従って再び増加する。
【0045】
また、機械10は、測定チャンバ16に関連して、互いに向かい合うと共に測定チャンバ16によって分離された、電磁波の放射源18とこの電磁波の検出器19とを有する。
【0046】
機械10は、放射源18及び検出器19に接続された論理ユニット20を有する。この論理ユニット20は、光学濃度、即ち、測定チャンバ16内のサンプルの濃度の時間的変化に関する検出器によって検出された値を受け取ることができる。
【0047】
また、論理ユニット20は、検出された値に基づいてESR値を評価するために計算アルゴリズムを実行できる。
【0048】
計算アルゴリズムは既知のタイプであり、機械10によって行われる分析のパラメータを既知の値又は期待値に対して較正し、設定し、又は整合させるために調節できる幾つかのパラメータをその構成に含む。
【0049】
本方法は、適切な分析の前に較正ステップを行う。この較正ステップでは、対応する容器24a、24b、24cに収容された3種のラテックス、即ち第1のラテックス23a、第2のラテックス23b、第3のラテックス23cを測定チャンバ16内に別々に順次送る。
【0050】
使用可能なラテックスは、例えば、弾性を有する天然又は合成ゴム(例えは、スチレン又はメチルスチレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレン)等の、安定で不活性な材料の粒子を含む。これらの粒子は、安定で不活性な液体(例えば、水)で希釈されている。
【0051】
3種のラテックス23a、23b、23cは、それらが、少なくとも光学濃度に関して、測定可能で、予め定められ、そして血液と比較可能な特徴及び特性を有すると共に、測定環境の温度と圧力に実質的に依存しない互いに相違する既知の光学濃度を有するように選択される。それらは天然由来又は合成由来である。
【0052】
3種のラテックス23a、23b、23cの光学濃度は、第1のラテックス23aの光学濃度I1が血液サンプルのシレクトグラム(図2)における光学濃度の最小値、即ち、光学濃度の変動の開始(図2における点「c」)時における値に略等しく、第3のラテックス23cの光学濃度I3が前記シレクトグラムにおける光学濃度の最大値、即ち、所定時間後(図2における点「d」)に得られた値に略等しく、第2のラテックス23bの光学濃度I2がシレクトグラムにおける上記の最大値と最小値の間になるように選択される。
【0053】
図3と図4は、本発明による較正方法を行う前と後に11台の異なる測定機械によってそれぞれ測定された3種の予め選択されたラテックス23a、23b、23cについて計算されたESR値を示す。
【0054】
予め選択された3種のラテックス23a、23b、23cの光学濃度の値に対応して、実際の変動におけるシレクトグラムの曲線の積分値の計算と同様、所望の時間間隔における吸光度曲線の積分値が計算される。
【0055】
これにより、シレクトグラムを得ることによって赤血球沈降速度ESRを測定する任意の機械の正確な較正が可能となる。何故なら、実際には、最小値(点「c」)と所定時間における値(点「d」)との間の所望の時間をカバーする現実の変動がシミュレートされるからである。
【0056】
本明細書で示す実施形態においては、容器24a、24b、24cは、試験管13と共に、取り出しヘッド26により管15に接続されている。取り出しヘッド26は論理ユニット20によって指令されると共に、容器24a、24b、24cと試験管13との間で移動可能である。
【0057】
本方法は、第1測定ステップを含み、このステップでは、論理ユニット20が、取り出しヘッド26に指令を与えると共に、例えば、測定チャンバ16の下流側に設けられたポンプ27に同時に指令を与え、第1ラテックス23aを取り出してそれを測定チャンバ16内に送る。
【0058】
その後、論理ユニット20は、放射源18と検出器19に指令を与え、第1ラテックス23aの吸光度を測定する。
【0059】
第1ラテックス23aの光学濃度の測定は、測定チャンバ16内において前記第1ラテックス23aが静止状態にあるとき(即ち、流れが無いとき)に行われる。
【0060】
そして、検出した値は論理ユニット20の電子的メモリに順次記憶し、第2の比較ステップにおいてそれを読み出して、光学濃度の対応する既知の値と比較することができるが、これを電子的メモリに記憶するのが有利である。
【0061】
その後、論理ユニット20はポンプ27に指令を与えて、第1ラテックス23aをタンク28内に排出する。
【0062】
これらのステップは、第2と第3のラテックス23b、23cに対しても繰り返され、最後に、機械10から得た光学濃度の値をラテックス23a、23b、23cの既知の濃度値と相関させる論理ユニット20は、計算アルゴリズムの前記パラメータを調節するのに使用できる補正値を見つける。
【0063】
このようにして、本発明は、他の分析方法による並列解析のための外部装置に頼ることなく較正を実施でき、また較正を簡単で、迅速で且つ安全な方法で行うことができる。
【0064】
より詳細に述べると、本発明によるラテックスを用いた較正の前に11台の異なる測定機械(y軸に表示)によって測定した、ラテックス23a、23b、23cから得た赤血球沈降速度ESRの値(mm/hr)をy軸に示す図3を、本発明によるラテックスを用いた較正の後に前記の11台の異なる測定機械によって測定した、前記ラテックス23a、23b、23cについての赤血球沈降速度ESRの値(mm/hr)をy軸に示し、前記11台の異なる測定機械をy軸にグループ化して示した図4と比較することにより、本発明による較正のおかげで、分析的応答(図3と図4において番号1で特定された機械によって測定された値に対しての整合に関して、及び赤血球沈降速度ESRの測定の精度と信頼性に関して)が明らかに改善されているのを見ることができる。
【0065】
また、本発明は、混合手段、認識手段、取り出し手段、ポンピング手段、計算手段、及び結果を印刷すると共に前記測定値をシリアル通信ライン等の情報手段を介して他の情報手段にも送信する手段が正しく機能しているか否かを間接的に確認することを可能にする。これは、較正データを記憶すると共に、後日それらの開発を管理する目的で行われる。
【0066】
較正値自体は、後日機械10の動作を確認するために機械10内に記憶できるのが有利である。
【0067】
較正及び比較ステップの後、論理ユニット20は、取り出しヘッド26とポンプ27に指令を与えて、試験管13に収容されている血液を取り出し、それを測定チャンバ16内に置き、これにより機械10が完全に較正された状態で放射源18と検出器19によってその血液に対して分析を行うことを可能にする。
【0068】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法に対して部分的な変更及び追加を行うことができることは明らかである。
【0069】
例えば、少なくとも測定チャンバ16に、サンプルの温度を一定に保つコンディショニング装置を設けてもよい。
【0070】
また、較正ラテックス23a、23b、23cと同数の測定チャンバを設けると共に、血液サンプル12のための別の測定チャンバを設けてもよい。
【0071】
また、本発明を特定の例を参照して記載したが、当業者であれば、赤血球沈降速度及び/又は赤血球凝集速度等、血液の濃度に関連する血液のパラメータを分析する機械を較正する方法であって、請求項に記載の特徴を有する方法の多くの他の均等な形態を実施することができ、従ってこれらの形態は全て請求項によって定義された保護の範囲に入るものであることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による較正方法を実施するESR分析機械の概略図。
【図2】シレクトグラムを示し、光学濃度の値がy軸に示されており、時間の値がx軸に示されている。
【図3】本発明による較正方法を行う前に複数の測定機械を用いて測定された赤血球沈降速度(ESR)の値(mm/hr)がy軸に示され、各測定機械の参照番号がx軸に示された図。
【図4】本発明による較正方法を行った後で図3に示す測定機械を用いて測定された赤血球沈降速度(ESR)の値(mm/hr)がy軸に示され、各測定機械の参照番号がx軸に示された図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球沈降速度(ESR)及び/又は赤血球の凝集を測定することによって少なくとも血液サンプル(12)を少なくとも分析するのに適した機械(10)を較正するための方法であって、前記測定は、或る時間間隔における血液サンプル(12)の光学濃度の変化の測定から得た光学濃度変動を利用して行うものであり、前記方法は、前記血液サンプル(12)対して光学濃度の測定を行うものと同じ機械(10)によって、再現可能且つ測定可能で互いに異なる既知の光学濃度を有する少なくとも2種のラテックス(23a、23b、23c)又は濁度測定サンプルの光学濃度の測定を行う測定ステップと、機械(10)によって行われた測定から得たラテックス(23a、23b、23c)の光学濃度の値と光学濃度の既知の値との差を計算し、前記機械(10)を較正するのに使用可能な少なくとも一種の補正係数を決定することを可能にする比較ステップとを含む方法。
【請求項2】
前記光学濃度変動は、測定セル(16)を通る前記血液サンプル(12)の流れを突然止めることによって得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正係数は、機械(10)に割り当てるゲインに比例した値であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラテックス(23a、23b、23c)は、天然由来又は合成由来であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラテックス(23a、23b、23c)又は前記ラテックスと類似又は同等の物質の光学濃度は、実質的に温度と圧力に依存しないことを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記測定ステップにおいて、光学濃度の相対的な異なる値を得るために、前記ラテックス(23a、23b、23c)を単一の較正行程において別々に分析することを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記測定ステップにおいて、光学濃度の相対的な異なる値を得るために、前記ラテックス(23a、23b、23c)を単一の較正行程において順次分析することを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記測定ステップにおいて、測定した値を電子的に記憶することを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記較正は、機械(10)が置かれている環境状態に依存しないことを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2種のラテックス(23a、23b、23c)の光学濃度の値は、測定毛細管を通して流される血液サンプル(12)であって流れが突然止められてその光学濃度の特性曲線が画定される血液サンプル(12)によって引き起こされる光学濃度の最小値と最大値の間の変化範囲を少なくとも包含するものであることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2種のラテックスの内の第1のもの(23a)は、前記血液サンプル(12)の流れを突然止めることによって引き起こされる光学濃度変動の開始時の光学濃度を表し、前記少なくとも2種のラテックスの内の第2のもの(23c)は、予め決められた測定時間後の光学濃度を表すことを特徴とする、請求項1〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記測定ステップにおいて、前記光学濃度は、放射源(18)から電磁波又は音波を放射し、検出器(19)によって前記電磁波又は音波を検出することによって測定することを特徴とする、請求項1〜11の何れかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−501324(P2009−501324A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520873(P2008−520873)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064125
【国際公開番号】WO2007/006791
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508011821)アリファックス・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】