説明

赤鉄鉱抽出物およびそれを含有する化粧料

【課題】 天然の鉱物から得られる赤鉄鉱(ヘマタイト)の抽出物と、更にそれを含有し、新奇な機能を発現する化粧料を提供する。
【解決手段】 本発明は、天然の鉱石から得られる赤鉄鉱抽出物である。本発明の赤鉄鉱抽出物は、鉄量として0.01〜5.0重量%の三二酸化鉄を含有する。
本発明は、また、赤鉄鉱抽出物を含有することを特徴とする化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤鉄鉱抽出物およびそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化鉄および水酸化鉄は従来、化粧料に顔料として用いられてきた。例えば、四三酸化鉄は黒酸化鉄の名前で黒色顔料として、三二酸化鉄はベンガラの名前で赤色顔料として、そしてオキシ水酸化鉄、水酸化第二鉄は黄酸化鉄の名前で黄色顔料としてスキンケア製品、粉末製品、メークアップ製品、ヘアケア製品等に配合されている。
【0003】
これらの酸化鉄および水酸化鉄は水あるいは油性物に不溶の顔料として、着色を目的として配合されるものであって、他の使用目的で配合された例は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような状況下でなされたものであり、天然の鉱物から得られる赤鉄鉱(ヘマタイト)の抽出物と、更にそれを含有し、新奇な機能を発現する化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、天然の鉱石から得られる赤鉄鉱抽出物である。本発明の赤鉄鉱抽出物は、鉄量として0.01〜5.0重量%の三二酸化鉄を含有する。
【0006】
本発明は、また、赤鉄鉱抽出物を含有することを特徴とする化粧料である。
【0007】
本発明の化粧料は、赤鉄鉱抽出物の含有量が0.001〜95.0重量%あることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の赤鉄鉱抽出物は、化粧料に含有せしめることにより、それを塗布した皮膚内でコラーゲンの合成を促進する効果を有する。この効果は例えば、ヒトの繊維芽細胞を用いた実験で、本発明の赤鉄鉱抽出物の添加により、タイプIコラーゲンの産生が飛躍的に増大することで確認されている。この効果はコントロールとして使用したTGFβに比べ非常に大きなものである。(図1参照)
【0009】
本発明の赤鉄鉱抽出物はまた、赤鉄鉱本来の赤色を呈することから、赤色系の色材としても配合される
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。本発明の赤鉄鉱抽出物とは、火山地帯のマグマ層等から得られる天然の鉱石を破砕し、水を添加、抽出して得られる赤褐色の水溶液で、鉄量として0.01〜5.0重量%の三二酸化鉄を含有する。
【0011】
本発明の化粧料とは、赤鉄鉱抽出物を含有するものである。この赤鉄鉱抽出物の含有量は化粧料の種類、剤型によって異なるが、一般的には、0.001〜95.0重量%(以下単に%と表す)、好ましくは0.5〜20.0%である。
【0012】
本発明の化粧料には上記成分以外に、目的に応じて通常化粧料に使用される他の成分を配合することができる。かかる他の成分としては下記成分が例示され、一種又は二種以上を配合して常法に準じて製造される。
【0013】
油性成分として次のものを挙げることができる。オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、小麦胚芽油、サフラワー油、モリンガ油、綿実油、大豆油、茶実油、ヒマワリ油、月見草油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、カカオ脂、モクロウ等の油脂類、カルナパロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、バチルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、オクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ペンタエリスリトールテトラエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステアリル、エトキシジグリコールベヘネート、エトキシジグリコールオレエート、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコール等のエステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルシリコーン油、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、3次元網目構造シリコーン、シリコーンゴム等のシリコーン。
【0014】
多価アルコールとして次のものを挙げることができる。グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジフロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等。
【0015】
糖類として次のものを挙げることができる。ソルビトール、マンニトール、ショ糖、乳糖、キシリトール、マルチトール、トレハロース等。
【0016】
高分子化合物として次のものを挙げることができる。グアーガム、クインスシード、ペクチン、マンナン、カンテン、カラギ−ナン、キサンタンガム、カードラン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、POE・POP共重合体等の合成高分子、ベントナイト、ラポナイト等の無機系高分子、両性メタクリル酸エステル共重合体、カチオン化セルロース、ポリ塩化ジメチルピペリジニウム、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、高分子シリコーン、シリコーンレジン等の被膜形成性高分子。
【0017】
界面活性剤として次のものを挙げることができる。高級脂肪酸石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、グリセリルモノ脂肪酸エステル、ソルビトールモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、砂糖脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、アルカノールアミド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、POE硬化ヒマシ油誘導体、アルキルアミンオキサイド等のノニオン界面活性剤。
【0018】
粉体および色剤として次のものを挙げることができる。タルク、カオリン、雲母、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、雲母チタン、亜鉛華、ゼオライト等の無機粉体、ナイロンパウダー、ポリエチレン末、セルロースパウダー、シルクパウダー等の有機粉体、金属石鹸、無機顔料、パール顔料、有機顔料、タール色素、天然色素等。
【0019】
動植物抽出物として次のものを挙げることができる。ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類、キチン・キトサン、コラーゲン、エラスチン、ペプチド等の動物抽出物、アロエエキス、オオバクエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、カンゾウエキス、クルミの種子エキス、シコンエキス、シラカバエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、茶エキス、トウキエキス、ニンニクエキス、ニンジンエキス、ハマメリスエキス、ヒノキチオール、ビワ葉エキス、ブナの木の幼芽エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ヤナギランエキス、ケーパーエキス、キバナオランダセンニチエキス、モモ葉エキス、ユーカリエキス、ローズ水等の植物抽出物。
【0020】
殺菌・防腐剤として次のものを挙げることができる。安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、ジンクピリチオン、トリクロサン等。
【0021】
酸化防止剤として次のものを挙げることができる。没食子酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等。酸化防止助剤としては次のものを挙げることができる。リン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、フィチン酸、EDTA等。
【0022】
金属封鎖剤として次のものを挙げることができる。エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、フィチン酸等。
【0023】
紫外線吸収剤として次のものを挙げることができる。2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸オクチル、ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル等のサリチル酸誘導体、ウロカニン酸等。
【0024】
各種薬剤として次のものを挙げることができる。アルブチン、コウジ酸、ビタミンC類等の美白剤、センブリエキス、γ−オリザノール、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジルエステル、エストラジオール、エチニルエストラジオール、パントテン酸、感光素301等の育毛用薬剤、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸、乳酸、メントール、副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン剤等の肌荒れ防止用薬剤、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、塩化ベンザルコニウム、ハロカルバン等のニキビ用薬剤、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、酸化亜鉛等の制汗剤、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸とこれらの塩酸塩。
【0025】
本発明の化粧料の剤型は液状、粘稠液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、粉末状、固形状、ミスト状、フォーム状、粉末分散系、シート含浸タイプ等の形態のシャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、石鹸、ボディーシャンプー、マッサージオイル、クレンジングフォーム、パック・マスク、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、フェースパウダー、ファンデーション、口紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、ネールエナメル、育毛剤、ヘアスタイリング剤、ヘアカラー、パーマネントウェーブ剤、入浴剤、芳香剤、サンケア剤、デオドラント剤等に展開することができる。
【実施例】
【0026】
次に本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。配合量は特に断りがない限り重量%で示す。
【0027】
<実施例1 デイクリーム>
(I相)
セチルアルコール/グリセリルステアレート/
PEG−75ステアレート/セテス−20/
ステアレート−20(*1) 4.00
セテアリルアルコール 2.00
プロピレングリコール ジペラゴネート(*2) 5.00
ジメチコン 2.00
カプリリック/カプリック トリグリセリド 3.00
ビタミンE アセテート 0.50
フェノキシエタノール/メチルパラベン/
ブチルパラベン/エチルパラベン/
プロピルパラベン 0.70
(II相)
グリセリン 2.00
精製水 76.45
アクリレート/C10−30アルキルアクリレート
クロスポリマー 0.15
キサンタンガム 0.30
(III相)
水酸化ナトリウム(10%溶液) 0.30
(IV相)
ブチレングリコール 2.00
クロルフェネシン 0.20
(V相)
赤鉄鉱抽出物(*3) 1.00
赤色504号(0.1%溶液) 0.20
(VI相)
香料 0.20
*1)ガテフォッセ社商品:「EMULIUM DELTA」
*2)ガテフォッセ社商品:「DPPG」
*3)リビオール社商品:「HEMA’TITE」
75℃加熱下でII相にI相を加え、続いてIII相を添加する。50℃まで冷却してIV相を、続いて35℃まで冷却してV相、VI相を添加する。その後完全に冷却する。
【0028】
<実施例2 保湿美容液>
ソルビトール 10.0
PEG−1500 3.0
1,3ブチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
エタノール 5.0
POEオレイルアルコールエーテル 0.7
ホホバ油 1.0
赤鉄鉱抽出物(*3) 5.0
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 65.3
【0029】
<実施例3 保湿ジェル>
1,3ブチレングリコール 8.0
PEG−1500 3.0
ジプロピレングリコール 3.0
カルボキシビニルポリマー 0.5
POEオレイルアルコールエーテル 1.0
水酸化カリウム(10%溶液) 1.0
赤鉄鉱抽出物(*3) 1.0
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 82.5
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 図1はタイプIコラーゲンの産生促進効果を示す。ヒトの繊維芽細胞を用いての培養試験で、本発明の赤鉄鉱抽出物が、タイプIコラーゲンの産生をコントロールのTGFβに比べ飛躍的に増加させていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄量として0.01〜5.0重量%の三二酸化鉄を含有することを特徴とする赤鉄鉱抽出物。
【請求項2】
請求項1の赤鉄鉱抽出物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項3】
赤鉄鉱抽出物の含有量が0.001〜95.0重量%あることを特徴とする請求項2の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−238591(P2007−238591A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103601(P2006−103601)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(391056701)池田物産株式会社 (22)
【出願人】(502110399)ガテフォッセ エス エイ (2)
【上記1名の代理人】
【識別番号】505445234
【氏名又は名称】松永 邦博
【Fターム(参考)】