説明

走査型光学観察装置

【課題】 レーザ光源を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる走査型光学観察装置を提供する。
【解決手段】 観察用可視レーザユニット1から発せられる1光子励起波長の観察用励起レーザ光と観察用赤外レーザユニット7から発せられる2光子励起波長の観察用励起レーザ光のそれぞれの光路をダイクロイックミラー9により合成し、さらに刺激用レーザユニット15から発せられる2光子励起波長の刺激用レーザ光の光路をダイクロイックミラー18により合成し、これら合成された光路を介して、それぞれのレーザ光を標本23内に照射し、可視レーザによる1光子励起観察、赤外パルスレーザによる2光子励起観察、さらには、刺激用レーザによる2光子励起による化学反応を得られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本を励起してその反応光を観察するための観察用レーザ光を発生する励起用光源と標本に刺激を与えるための刺激用レーザ光源を備えた走査型光学観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型光学観察装置として、特許文献1に開示されるように、蛍光観察を行なうための観察用励起レーザ光を試料上の光軸に垂直な面内で走査させるための観察用励起レーザ光走査手段と、試料に刺激を与えるための刺激用レーザ光を試料平面の任意の位置に照射するための刺激用レーザ光走査手段の2組の光走査手段を有する走査型レーザ顕微鏡が知られている。
【0003】
ところで、このような走査型レーザ顕微鏡では、蛍光観察に用いられるCaged手法などに有効とされる刺激用レーザとして、1光子励起波長の刺激用レーザが用いられることがあるが、かかる1光子励起波長の刺激用レーザは、標本上で刺激を与えたい位置以外にも光が通過して刺激を与えてしまうことがある。このため、最近になって、散乱が多い厚い標本を使った光刺激を行う蛍光観察においては、標本の集光面のみでしか2光子励起が発生しないことで標本の正確な点のみに刺激を与えることが可能な2光子励起波長の赤外パルスレーザを発生する刺激用レーザ光源が用いられている。
【0004】
また、蛍光観察を行なうための観察用励起レーザについても、標本への光による障害を抑えて標本深部の観察ができるなどの利点から、2光子励起波長を発生させる赤外パルスレーザを使用し、近赤外波長で紫外光励起用の蛍光試薬を励起させて蛍光を発生させるようにした励起用レーザ光源も用いられている。また、一方で、蛍光観察においては、効率の良くない2光子励起より、S/Nの良い画像が取得可能な、1光子励起による蛍光観察も必要とされている。
【特許文献1】特開平10−206742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された走査型レーザ顕微鏡は、1種類の観察用励起レーザ光源や刺激用レーザ光源を組み合わせ使用して蛍光観察を行なうもので、上述したように2光子励起による光刺激の他に、1光子励起による蛍光観察や2光子励起による蛍光観察などの多様化された観察方法を採用しようとすると、観察用励起レーザ波長に対応した複数の光学素子として、例えば波長分離用ダイクロイックミラーを用意し、観察方法に応じて、これらダイクロイックミラーを最適なものに切換え、または交換するなどの必要が生じる。
【0006】
ところが、これら光学素子は、光路への切換え、または、交換の際に、反射角度や折返し位置の固体差により、光軸がずれることがある。このことは、光学素子を最適なものに取り換えたことによる刺激用レーザ光と観察用励起レーザ光の光路のずれにより、刺激用レーザ走査手段と観察用励起レーザ走査手段によるレーザ走査位置にもずれを生じることになる。この結果、試料内で狙った位置(ポイントまたは領域)に正確に刺激レーザ光を照射できなくなってしまうという問題を生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、レーザ光源を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる走査型光学観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、1光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する第1のレーザ光源と、2光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する第2のレーザ光源と、これら第1および第2のレーザ光源からの観察用励起レーザ光の光路を合成する第1の光学素子と、前記第1の光学素子で合成された光路の観察用励起レーザ光を標本上で2次元走査する第1の走査手段と、2光子励起波長の刺激用レーザ光を発生する第3のレーザ光源と、前記刺激用レーザ光を標本上で2次元走査する第2の走査手段と、前記第1および第2の走査手段からの光路の交差位置に配置され、これら第1および第2の走査手段からのレーザ光の光路を合成する第2の光学素子とを具備したことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、さらに共焦点ピンホールを有する第1の蛍光検出手段を備え、前記第2の光学素子は、さらに前記第1のレーザ光源の1光子励起波長または前記第2のレーザ光源の2光子励起波長のそれぞれの観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光波長を前記第1の蛍光検出手段に導くような特性を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、さらに第2の蛍光検出手段と、前記第1の走査手段から前記標本までの光路に挿脱可能に配置され、第2のレーザ光源の2光子励起波長の観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光波長を前記第2の蛍光検出手段に導くような特性を有する第3の光学素子とを具備したことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第3のレーザ光源からの2光子励起波長の刺激用レーザ光を2光子励起波長の観察用励起レーザ光として使用可能にしたことを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、さらに第1の蛍光検出手段および第2の蛍光検出手段と、前記第2の光学素子から前記標本までの光路に配置され、前記第2のレーザ光源および前記第3の2光子励起波長の観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光を波長ごとに分岐して前記第1の蛍光検出手段および前記第2の蛍光検出手段に導くような特性を有する第4の光学素子とを有することを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記第1乃至第4の光学素子は、ダイクロイックミラーであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各種のレーザ光源を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる走査型光学観察装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示している。
【0017】
図において、1は第1のレーザ光源として、1光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する観察用可視レーザユニットで、この観察用可視レーザユニット1は、可視レーザコンバイナを構成するもので、レーザ光源として488nmの波長のレーザ光を発振するアルゴンレーザ2と、633nmの波長のレーザ光を発振するヘリウムネオンレーザ3を有している。ヘリウムネオンレーザ3からのレーザ光の光路上には、反射ミラー4が配置されている。また、アルゴンレーザ2からのレーザ光の光路上には、反射ミラー4で反射されるレーザ光との交点上にダイクロイックミラー5が配置されている。ダイクロイックミラー5は、これら2つのレーザ光路を合成するもので、アルゴンレーザ2からのレーザ光を透過し、反射ミラー4で反射されるレーザ光を反射するようになっている。また、ダイクロイックミラー5により合成されたレーザ光の光路上には、レーザラインフィルタ6が配置されている。このレーザラインフィルタ6は、アルゴンレーザ2から発せられる488nmのレーザ波長とヘリウムネオンレーザ3から発せられる633nmののレーザ光を選択可能にしている。
【0018】
一方、7は第2のレーザ光源として、2光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する観察用赤外レーザユニットで、この観察用赤外レーザユニット7は、赤外パルスレーザを有し、820nm〜1000nmまでのレーザ光を選択的に出力可能になっている。
【0019】
観察用赤外レーザユニット7からのレーザ光の光路上には、反射ミラー8が配置されている。また、観察用可視レーザユニット1からのからのレーザ光の光路上には、反射ミラー8で反射されるレーザ光との交点上に第1の光学素子としてダイクロイックミラー9が配置されている。ダイクロイックミラー9は、これら2つのレーザ光路を合成するもので、反射ミラー8で反射される観察用赤外レーザユニット7からの2光子励起波長のレーザ光を透過し、観察用可視レーザユニット1からのからの1光子励起波長のレーザ光を反射するような特性を有し、これらレーザ光を合成して同軸に導くようにしている。
【0020】
ダイクロイックミラー9により出射されたレーザ光の光路上には、ダイクロイックミラー10が配置されている。ダイクロイックミラー10は、ダイクロイックミラー9からのレーザ光を反射し、後述する標本23から発せられる蛍光(検出光)を透過するようになっている。
【0021】
ダイクロイックミラー10の反射光路には、第1の走査手段として、観察用励起レーザ光走査手段11が配置されている。この観察用励起レーザ光走査手段11は、直交する2方向に光を偏向するための2枚のミラー11a、11bを有し、これらのミラー11a、11bにより標本23上の観察用励起レーザ光を2次元方向に走査するようになっている。
【0022】
また、ダイクロイックミラー10の検出光(蛍光)の透過光路には、第1の光検出手段を構成する共焦点レンズ12、共焦点ピンホール13および内部蛍光検出器14が配置されている。この場合、第1の光検出手段では、1光子励起による蛍光観察を行う場合は、共焦点ピンホール13を絞って内部蛍光検出器14により蛍光検出を行ない、2光子励起による蛍光観察を行う場合は、散乱光をより多く拾うため、共焦点ピンホール13を開放して、内部蛍光検出器14により蛍光検出を行なうようになっている。
【0023】
一方、15は、第3のレーザ光源としての刺激用レーザユニットで、この刺激用レーザユニット15は、赤外パルスレーザを有し、標本23の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を与えるための720nmの2光子励起波長の刺激用レーザ光が出力可能になっている。刺激用レーザユニット15からの刺激用レーザ光の光路には、反射ミラー16を介して第2の走査手段としての刺激用レーザ光走査手段17が配置されている。この刺激用レーザ光走査手段17は、刺激用レーザ光を標本23上の任意領域に2次元走査することや、標本23上の任意のポイントで固定照射することを可能としたもので、2枚のミラー17a、17bで構成されている。これらのミラー17a、17bは、刺激用レーザ光を2次元方向に走査するようになっている。
【0024】
刺激用レーザ光走査手段17から出射される刺激用レーザ光の光路上には、観察用励起レーザ光走査手段11から出射されるレーザ光の光路との交点上に第2の光学素子としてダイクロイックミラー18が配置されている。このダイクロイックミラー18は、観察用励起レーザ光走査手段11からのレーザ光を透過し、刺激用レーザ光走査手段17からの刺激用レーザ光を反射するような特性を有するものである。具体的には、図2に示すように観察用可視レーザユニット1から出射される488nmおよび633nmの波長、これら488nm、633nmの励起波長により標本23より発せられる1光子励起蛍光の波長を含む可視波長(450〜670nm)および観察用赤外レーザユニット7から出射される820nm〜1000nmまでの2光子励起波長を透過し、刺激用レーザユニット15から出射される720nmの2光子励起波長を反射するようにしている。
【0025】
ダイクロイックミラー18により出射されたレーザ光の光路上には、光学素子切換え手段としてターレット19が配置されている。このターレット19は、第3の光学素子としてのダイクロイックミラー20と反射ミラー21を有し、不図示の電動機構によりダイクロイックミラー20または反射ミラー21を選択的に光路上に挿入するようにしている。この場合、ダイクロイックミラー20は、図3に示すように観察用赤外レーザユニット7から出射される820nm〜1000nmまでの2光子励起波長と刺激用レーザユニット15から出射される720nmの2光子励起波長を反射し、これら観察用赤外レーザユニット7および刺激用レーザユニット15の2光子励起波長により標本23より発せられる2光子励起蛍光(530nm)を透過するような特性を有している。図示例では、ダイクロイックミラー20が光路上に挿入されている。
【0026】
ダイクロイックミラー20(または反射ミラー21)の反射光路には、観察用励起レーザ光または刺激用レーザ光の走査光学系を構成する対物レンズ22が配置されている。この場合、観察用励起レーザ光走査手段11から出射される観察用励起レーザ光は、ダイクロイックミラー20(または反射ミラー21)で反射し、対物レンズ22を介して不図示のステージに載置された標本23の焦点位置に結像される。また、標本23から発生された蛍光(検出光)は、ダイクロイックミラー20(または反射ミラー21)まで戻るようになっている。また、刺激用レーザ光走査手段17から出射される刺激用レーザ光は、ダイクロイックミラー20(または反射ミラー21)で反射し、標本23上の任意領域で2次元走査されたり、任意のポイントで固定照射されるようになっている。
【0027】
この場合、標本23には、蛍光指示薬として、例えばカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使用されている。
【0028】
ダイクロイックミラー20の透過光路には、第2の光検出手段としての外部蛍光検出器24が配置されている。この第2の光検出手段は、例えば、2光子励起波長の観察用励起レーザ光により、散乱光が多い厚い標本23をより明るく観察したいような場合、標本23より発せられる蛍光(検出光)を複数のミラーやレンズなどの光学素子を経由せると損失が大きく極めて微弱なものになってしまうため、ダイクロイックミラー20のみを経由して外部蛍光検出器24により蛍光検出を行なうようにしている。
【0029】
なお、第2の光検出手段としての外部蛍光検出器24と標本23の間の光路には走査手段がないので、第2の光検出手段にピンホールを設けることはできないが、2光子(多光子)励起による蛍光を検出する場合には、2光子(多光子)励起現象が生じる領域がレーザ光の集光位置の極近傍だけであることからピンホールがなくても光学的スライス像を取得することができる。
【0030】
次に、このように構成した第1の実施の形態の作用を説明する。
【0031】
まず、1光子励起光を使用して内部蛍光検出器14で蛍光検出を行なう場合を説明する。
【0032】
この場合、不図示の電動機構によりターレット19を駆動し、反射ミラー21を光路上に位置させる。
【0033】
この状態で、観察用可視レーザユニット1のアルゴンレーザ2から488nmの波長のレーザ光とヘリウムネオンレーザ3から633nmの波長のレーザ光が発せられると、このうち488nmのレーザ波長がレーザラインフィルタ6により選択される。この488nmのレーザ波長は、観察用励起レーザ光として、ダイクロイックミラー9で反射し、さらにダイクロイックミラー10で反射し、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー21で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0034】
標本23に観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでは、蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザー波長488nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0035】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー21で反射され、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。この場合、共焦点ピンホール13は、共焦点効果を得るため、回折径程度に絞られている。共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0036】
次に、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生すると、刺激用レーザ光は、刺激用レーザ光走査手段17を介してダイクロイックミラー18で反射し、さらに反射ミラー21で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。この状態で、刺激用レーザ光走査手段17により、刺激用レーザ光を標本23上の任意領域で2次元走査したり、任意のポイントを固定照射して、標本23の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる。そして、このときの影響により反応する標本23の経時変化などを上述した内部蛍光検出器14で検出し、不図示の表示装置に画像表示する。
【0037】
次に、2光子励起光を使用して内部蛍光検出器14で蛍光検出を行なう場合を説明する。
【0038】
この場合、観察用赤外レーザユニット7より850nmのレーザ波長を選択して出射すると、この850nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー21で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0039】
標本23に2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここで蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザ波長850nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0040】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー21で反射され、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。この場合、共焦点ピンホール13は、より多くの散乱光を拾うことができるように開放されている。共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0041】
一方、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生して標本23上の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる場合は、上述したと同様である。
【0042】
次に、例えば散乱光が多い厚い標本23の蛍光観察において、2光子励起光を使用して外部蛍光検出器24で蛍光検出を行う場合を説明する。
【0043】
この場合、不図示の電動機構によりターレット19を駆動し、ダイクロイックミラー20を光路上に位置させる。
【0044】
この状態から、観察用赤外レーザユニット7より850nmのレーザ波長を選択して出射すると、この850nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、ダイクロイックミラー20で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0045】
標本23に2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここで蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザ波長850nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0046】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、ダイクロイックミラー20を透過して外部蛍光検出器24で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0047】
一方、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生して標本23上の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる場合は、上述したと同様である。
【0048】
従って、このようにすれば、観察用可視レーザユニット1から発せられる1光子励起波長の観察用励起レーザ光と観察用赤外レーザユニット7から発せられる2光子励起波長の観察用励起レーザ光のそれぞれの光路をダイクロイックミラー9により合成し、さらに刺激用レーザユニット15から発せられる2光子励起波長の刺激用レーザ光の光路をダイクロイックミラー18により合成し、これら合成された光路を介して、それぞれのレーザ光を標本23内に照射し、可視レーザによる1光子励起観察、赤外パルスレーザによる2光子励起観察、さらには、刺激用レーザによる2光子励起による化学反応を得られるようにしたので、観察用可視レーザユニット1、観察用赤外レーザユニット7、さらに刺激用レーザユニット15の切換えの際に、ダイクロイックミラーなどの光学素子の切換え、交換などを一切必要とすることがなくなり、これら光学素子の光路への切換え、交換の際に、反射角度や折返し位置の固体差に原因する光軸ずれを確実に防止することができる。つまり、観察用可視レーザユニット1、観察用赤外レーザユニット7、刺激用レーザユニット15などのレーザ光源を切換えても、標本23内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射することができる。これにより、標本23の特定の部位に2光子励起により化学反応を与えて、その影響を含めて1光子または2光子励起波長による蛍光観察を行うような場合も、複数のダイクロイックミラーを必要とせず、容易に1光子蛍光画像や2光子蛍光画像を取得できる走査型レーザー顕微鏡を実現できる。
【0049】
また、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24による蛍光検出を切換える目的で、光路中でダイクロイックミラー20、反射ミラー21を切換える場合も、これらダイクロイックミラー20、反射ミラー21の切換えは、観察用可視レーザユニット1、観察用赤外レーザユニット7、刺激用レーザユニット15からのレーザ光の光路を合成した後の光路上で行われるので、これらダイクロイックミラー20、反射ミラー21を切換えても、それぞれのレーザ光の光路の相対位置関係に変化を生じることがなく、これにより、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示すもので、図1と同一部分には、同符号を付している。
【0052】
この場合、観察用励起レーザ光走査手段11とダイクロイックミラー18との間の光路の平行光束中に第3の光学素子としてのダイクロイックミラー25が配置されている。このダイクロイックミラー25は、不図示の電動機構により光路上に挿脱可能になっている。また、ダイクロイックミラー25は、図5に示すように観察用赤外レーザユニット7から出射される820nm〜1000nmまでの2光子励起波長を透過し、観察用赤外レーザユニット7からの励起波長により標本23より発せられる530nmの2光子励起蛍光を反射するような特性を有している。
【0053】
ダイクロイックミラー25の反射光路には、反射ミラー26を介して第2の光検出手段としての外部蛍光検出器24が配置されている。図示例では、ダイクロイックミラー25は、光路上に配置されている。
【0054】
また、ダイクロイックミラー18と対物レンズ22との間には、反射ミラー27が配置されている。
【0055】
その他は、図1と同様である。
【0056】
次に、このように構成した第2の実施の形態の作用を説明する。
【0057】
まず、1光子励起光を使用して内部蛍光検出器14で蛍光検出を行なう場合を説明する。
【0058】
この場合、不図示の電動機構によりダイクロイックミラー25を移動し、光路上から退避させる。
【0059】
この状態で、観察用可視レーザユニット1のアルゴンレーザ2から488nmの波長のレーザ光とヘリウムネオンレーザ3から633nmの波長のレーザ光が発せられると、このうち488nmのレーザ波長がレーザラインフィルタ6により選択される。この488nmのレーザ波長は、観察用励起レーザ光として、ダイクロイックミラー9で反射し、さらにダイクロイックミラー10で反射し、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー27で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0060】
標本23に観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここで、蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザー波長488nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0061】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー27で反射され、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。この場合、共焦点ピンホール13は、共焦点効果を得るため、回折径程度に絞られている。共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0062】
次に、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生すると、刺激用レーザ光は、刺激用レーザ光走査手段17を介してダイクロイックミラー18で反射し、さらに反射ミラー27で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。この状態で、刺激用レーザ光走査手段17により、刺激用レーザ光を標本23上の任意領域で2次元走査したり、任意のポイントを固定照射して、標本23の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる。そして、このときの影響により反応する標本23の経時変化などを上述した内部蛍光検出器14で検出し、不図示の表示装置に画像表示する。
【0063】
次に、2光子励起光を使用して内部蛍光検出器14で蛍光検出を行なう場合を説明する。
【0064】
この場合、観察用赤外レーザユニット7より850nmのレーザ波長を選択して出射すると、この850nmのレーザ光は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー27で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0065】
標本23に2光子励起光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでも蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザ波長850nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0066】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー27で反射され、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。この場合、共焦点ピンホール13は、より多くの散乱光を拾うことができるように開放されている。共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0067】
一方、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生して標本23上の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる場合は、上述したと同様である。
【0068】
次に、例えば散乱光が多い厚い標本23の蛍光観察において、2光子励起光を使用して外部蛍光検出器24で蛍光検出を行う場合を説明する。
【0069】
この場合、不図示の電動機構によりダイクロイックミラー25を光路上に挿入する。
【0070】
この状態から、観察用赤外レーザユニット7より850nmのレーザ波長を選択して出射すると、このこの850nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー25、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー27で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0071】
標本23に2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでも蛍光指示薬としてカルシウムイオン指示薬のfluo−3が使われているので、レーザ波長850nmにより蛍光波長530nmの蛍光を発する。
【0072】
標本23からの波長530nmの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー27で反射し、ダイクロイックミラー18を透過し、ダイクロイックミラー25で反射し、反射ミラー26を介して外部蛍光検出器24で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0073】
一方、刺激用レーザユニット15より720nmの波長の刺激用レーザ光を発生して標本23上の特定部位に2光子励起による化学反応(ケージド試薬の解除)を発生させる場合は、上述したと同様である。
【0074】
従って、このようにしても、観察用可視レーザユニット1から発せられる1光子励起波長の観察用励起レーザ光と観察用赤外レーザユニット7から発せられる2光子励起波長の観察用励起レーザ光のそれぞれの光路をダイクロイックミラー9により合成し、さらに刺激用レーザユニット15から発せられる2光子励起波長のレーザ光の光路をダイクロイックミラー18により合成し、これら合成された光路を介して、それぞれのレーザ光を標本23内に照射するようにしたので、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0075】
また、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24による蛍光検出を切換える目的で、光路中にダイクロイックミラー25が挿脱されるが、このダイクロイックミラー25の光路への挿脱は、観察用励起レーザ光走査手段11とダイクロイックミラー18との間の平行光束中で行われるので、ダイクロイックミラー25を挿脱しても、それぞれのレーザ光の光路の相対位置関係に変化を生じることがなく、これにより、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる。
【0076】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0077】
図6は、本発明の第3の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示すもので、図1と同一部分には、同符号を付している。
【0078】
この場合、標本には、蛍光指示薬として、上述したカルシウムイオン指示薬のfluo−3を使用した標本23と、例えばDAPIとAlexa488を使用した多重染色標本28が適用される。
【0079】
また、刺激用レーザユニット15から出射される2光子励起波長の刺激用レーザ光を2光子励起波長の観察用励起レーザ光として使用する。
【0080】
さらに、ダイクロイックミラー18より出射されるレーザ光の光路上に配置されるターレット19には、ダイクロイックミラー20と反射ミラー21の他に、第4の光学素子としてのダイクロイックミラー29が設けられ、不図示の電動機構により、これらのうち一つを選択的に光路上に挿入可能にしている。
【0081】
この場合、ダイクロイックミラー29は、図7に示すように観察用赤外レーザユニット7から出射される820nm〜1000nmまでの2光子励起波長の観察用励起レーザ光と刺激用レーザユニット15から出射される720nmの2光子励起波長の観察用励起レーザ光を反射し、これら観察用赤外レーザユニット7および刺激用レーザユニット15からの2光子励起波長の観察用励起レーザ光により多重染色標本28より発せられる蛍光波長の456nmを透過し、520nmを反射するような特性を有している。
【0082】
その他は、図1と同様である。
【0083】
次に、このように構成した第3の実施の形態の作用を説明する。
【0084】
この場合、標本23の蛍光観察については、不図示の電動機構によりターレット19を駆動して反射ミラー21またはダイクロイックミラー20を光路上に挿入する。これ以降の動作は、上述した実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0085】
次に、多重染色標本28の蛍光観察について説明する。
【0086】
まず、観察用赤外レーザユニット7と刺激用レーザユニット15にそれぞれ備えられた赤外パルスレーザによる2光子励起波長の観察用励起レーザ光を使用して、内部蛍光検出器14により蛍光検出を行なう場合を説明する。この場合、不図示の電動機構によりターレット19を駆動して反射ミラー21を光路中に挿入する。
【0087】
この状態で、観察用赤外レーザユニット7より820nmのレーザ波長を選択して出射すると、この820nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、反射ミラー21で反射して対物レンズ22に入射し、多重染色標本28に集光される。
【0088】
また、刺激用レーザユニット15より720nmの波長のレーザ光を発生すると、この720nmのレーザ波長光は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として刺激用レーザ光走査手段17を介してダイクロイックミラー18で反射し、さらに反射ミラー21で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0089】
多重染色標本28にそれぞれの2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでは、蛍光指示薬としてDAPIとAlexa488をが使われているので、2光子励起レーザ波長820nmによりAlexa488が波長520nmの蛍光を発し、2光子励起レーザ波長720nmによりDAPIが波長456nmの蛍光を発する。
【0090】
多重染色標本28からの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、反射ミラー21で反射され、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。この場合、共焦点ピンホール13は、より多くの散乱光を拾うことができるように開放されている。共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出される。内部蛍光検出器14は、蛍光波長の検出チャンネルを2チャンネルに分離するための不図示の分光ダイクロイックミラーが設けられていて、検出した蛍光波長から520nmと456nmの蛍光波長を分離する。そして、これら分離された蛍光は、電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、それぞれ画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0091】
次に、外部蛍光検出器24により蛍光検出を行なう場合を説明する。この場合、不図示の電動機構によりターレット19を駆動してダイクロイックミラー20を光路中に挿入する。
【0092】
この状態で、観察用赤外レーザユニット7より820nmのレーザ波長を選択して出射すると、この820nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、ダイクロイックミラー20で反射して対物レンズ22に入射し、多重染色標本28に集光される。
【0093】
また、刺激用レーザユニット15より720nmの波長のレーザ光を発生すると、この720nmのレーザ波長光も、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として刺激用レーザ光走査手段17を介してダイクロイックミラー18で反射し、さらにダイクロイックミラー20で反射して対物レンズ22に入射し、多重染色標本28に集光される。
【0094】
多重染色標本28にそれぞれの2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでは、蛍光指示薬としてDAPIとAlexa488をが使われているので、2光子励起レーザ波長820nmによりAlexa488が波長520nmの蛍光を発し、2光子励起レーザ波長720nmによりDAPIが波長456nmの蛍光を発する。
【0095】
多重染色標本28からの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、ダイクロイックミラー20を透過して外部蛍光検出器24で検出される。
【0096】
外部蛍光検出器24についても、蛍光波長の検出チャンネルを2チャンネルに分離するための不図示の分光ダイクロイックミラーが設けられていて、検出した蛍光波長から520nmと456nmの蛍光波長を分離する。そして、これら分離された蛍光は、電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、それぞれ画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0097】
次に、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24により同時に蛍光検出を行なう場合を説明する。この場合、不図示の電動機構によりターレット19を駆動してダイクロイックミラー29を光路中に挿入する。
【0098】
この状態で、観察用赤外レーザユニット7より820nmのレーザ波長を選択して出射すると、この820nmのレーザ波長は、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として反射ミラー8で反射し、ダイクロイックミラー9を透過し、さらにダイクロイックミラー10で反射して、観察用励起レーザ光走査手段11に入射し、2次元方向に偏向され、ダイクロイックミラー18を透過し、ダイクロイックミラー29で反射して対物レンズ22に入射し、多重染色標本28に集光される。
【0099】
また、刺激用レーザユニット15より720nmの波長のレーザ光を発生すると、この720nmのレーザ波長光も、2光子励起波長の観察用励起レーザ光として刺激用レーザ光走査手段17を介してダイクロイックミラー18で反射し、さらにダイクロイックミラー29で反射して対物レンズ22に入射し、標本23に集光される。
【0100】
多重染色標本28にそれぞれの2光子励起波長の観察用励起レーザ光が照射されると、蛍光指示薬が励起され蛍光が発せられる。ここでは、蛍光指示薬としてDAPIとAlexa488をが使われているので、2光子励起レーザ波長820nmによりAlexa488が波長520nmの蛍光を発し、2光子励起レーザ波長720nmによりDAPIが波長456nmの蛍光を発する。
【0101】
多重染色標本28からの蛍光は、先の光とは逆に、対物レンズ22を透過し、ダイクロイックミラー29に入射する。この場合、ダイクロイックミラー29は、多重染色標本28より発せられる蛍光波長の456nmを透過し、520nmを反射するような特性を有している。
【0102】
これにより、ダイクロイックミラー29を反射した520nmの蛍光は、ダイクロイックミラー18を透過し、観察用励起レーザ光走査手段11、ダイクロイックミラー10を透過し、共焦点レンズ12を介して共焦点ピンホール13面に結像される。そして、共焦点ピンホール13を通過した蛍光は、内部蛍光検出器14で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0103】
また、ダイクロイックミラー29を透過した456nmの蛍光は、外部蛍光検出器24で検出され電気信号に変換される。電気信号は、不図示のコンピューターにより処理され、画像データとして不図示の表示装置で画像表示される。
【0104】
従って、このようにしても、観察用赤外レーザユニット7から発せられる2光子励起波長の観察用励起レーザ光と刺激用レーザユニット15から出射される2光子励起波長の観察用励起レーザ光のそれぞれの光路をダイクロイックミラー18により合成し、これら合成された光路を介して、それぞれの観察用励起レーザ光を標本23内に照射するようにしたので、第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0105】
また、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24による蛍光検出を切換える目的で、光路中にダイクロイックミラー29を挿脱する場合も、ダイクロイックミラー29の挿脱は、観察用赤外レーザユニット7および刺激用レーザユニット15からの2光子励起波長の観察用励起レーザ光の光路を合成した後の光路上で行われるので、ダイクロイックミラー29を光路上に出し入れしても、それぞれのレーザ光の光路の相対位置関係に変化を生じることがなく、これにより、内部蛍光検出器14と外部蛍光検出器24を切換えても標本内の目的とする位置に、それぞれのレーザ光を位置ずれを生じることなく正確に照射できる。
【0106】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【0107】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【0108】
なお、上述した実施の形態には、以下の発明も含まれる。
【0109】
ここで、λ1:第1レーザ光源(観察用可視、実施の形態では488nmと633nm)、λ2:第2レーザ光源(2光子励起観察用、実施の形態では820〜1000nm)、λ3:第3レーザ光源(2光子励起刺激用、実施の形態では720nm)、λf1:第1〜第3レーザ光の標本への照射により発生する蛍光の波長、とする。
【0110】
(1) 第1乃至第3レーザ光を発生する第1乃至第3レーザ光源と、
第1、第2レーザ光を合成する第1合成手段(ダイクロイックミラー9)と、
第1合成手段で合成された光路の光を走査する第1走査手段と、
第3レーザ光を走査する第2走査手段と、
第1走査手段からの光路と第2走査手段からの光路を合成する第2合成手段(ダイクロイックミラー18)と、
λ1<λ3<λ2かつλf1<λ3であって、
前記第2合成手段は、λ3のみを反射し、残りの波長(少なくともλ1、λf1、λ2)を透過する特性を有する。
【0111】
(2)(1)記載において、第1および第2光源と第1走査手段との間で分岐された光路上に配置された共焦点ピンホールを有する第1の蛍光検出手段を備えている。
【0112】
(3)(2)記載において、標本と第2合成手段との間で光路を分岐する光路分岐手段(ダイクロイックミラー20、25、29)と、この分岐された光路に配置された第2の蛍光検出手段を備えている。
【0113】
(4)(3)記載において、前記光路分岐手段(ダイクロイックミラー20)は、前記標本と前記第2合成手段との間に配置され、第2レーザ光と第3レーザ光を反射し、λf1(多光子励起により発生した蛍光)を前記第2の蛍光検出手段に向けて透過する特性を有する。
【0114】
(5)(3)記載において、前記光路分岐手段(ダイクロイックミラー25)は、前記第2合成手段と前記第1走査手段の間に配置され、λf1(多光子励起により発生した蛍光)を前記第2の蛍光検出手段に向けて反射し、第2レーザ光を透過する特性を有する。
【0115】
(6)(3)記載において、前記光路分岐手段(ダイクロイックミラー29)は、前記標本と前記第2合成手段の間に配置され、第2レーザ光と第3レーザ光を反射し、第2レーザ光による多光子励起により発生した第1蛍光と第3レーザ光による多光子励起により発生した第2蛍光の一方を反射し他方を透過する特性を有する。
【0116】
なお、上述した(1)〜(6)で、反射と透過を入れ替えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの特性を示す図。
【図3】第1の実施の形態に用いられる他のダイクロイックミラーの特性を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示す図。
【図5】第2の実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの特性を示す図。
【図6】本発明の第3の実施の形態の走査型光学観察装置における走査型レーザ顕微鏡の概略構成を示す図。
【図7】第3の実施の形態に用いられるダイクロイックミラーの特性を示す図。
【符号の説明】
【0118】
1…観察用可視レーザユニット、2…アルゴンレーザ
3…ヘリウムネオンレーザ、4…反射ミラー
5…ダイクロイックミラー、6…レーザラインフィルタ
7…観察用赤外レーザユニット、8…反射ミラー
9…ダイクロイックミラー、10…ダイクロイックミラー
11…観察用励起レーザ光走査手段、11a.11b…ミラー
12…共焦点レンズ、13…共焦点ピンホール
14…内部蛍光検出器、15…刺激用レーザユニット
16…反射ミラー、17…刺激用レーザ光走査手段
17a.17b…ミラー、18…ダイクロイックミラー
19…ターレット、20…ダイクロイックミラー
21…反射ミラー、22…対物レンズ
23…標本、24…外部蛍光検出器
25…ダイクロイックミラー、26…反射ミラー
27…反射ミラー、28…多重染色標本
29…ダイクロイックミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する第1のレーザ光源と、
2光子励起波長の観察用励起レーザ光を発生する第2のレーザ光源と、
これら第1および第2のレーザ光源からの観察用励起レーザ光の光路を合成する第1の光学素子と、
前記第1の光学素子で合成された光路の観察用励起レーザ光を標本上で2次元走査する第1の走査手段と、
2光子励起波長の刺激用レーザ光を発生する第3のレーザ光源と、
前記刺激用レーザ光を標本上で2次元走査する第2の走査手段と、
前記第1および第2の走査手段からの光路の交差位置に配置され、これら第1および第2の走査手段からのレーザ光の光路を合成する第2の光学素子と
を具備したことを特徴とする走査型光学観察装置。
【請求項2】
さらに共焦点ピンホールを有する第1の蛍光検出手段を備え、
前記第2の光学素子は、さらに前記第1のレーザ光源の1光子励起波長または前記第2のレーザ光源の2光子励起波長のそれぞれの観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光波長を前記第1の蛍光検出手段に導くような特性を有することを特徴とする請求項1記載の走査型光学観察装置。
【請求項3】
さらに第2の蛍光検出手段と、
前記第1の走査手段から前記標本までの光路に挿脱可能に配置され、第2のレーザ光源の2光子励起波長の観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光波長を前記第2の蛍光検出手段に導くような特性を有する第3の光学素子と
を具備したことを特徴とする請求項2記載の走査型レーザ顕微鏡。
【請求項4】
前記第3のレーザ光源からの2光子励起波長の刺激用レーザ光を2光子励起波長の観察用励起レーザ光として使用可能にしたことを特徴とする請求項1記載の走査型光学観察装置。
【請求項5】
さらに第1の蛍光検出手段および第2の蛍光検出手段と、
前記第2の光学素子から前記標本までの光路に配置され、前記第2のレーザ光源および前記第3の2光子励起波長の観察用励起レーザ光により励起され前記標本より発せられる蛍光を波長ごとに分岐して前記第1の蛍光検出手段および前記第2の蛍光検出手段に導くような特性を有する第4の光学素子と
を有することを特徴とする請求項4記載の走査型光学観察装置。
【請求項6】
前記第1乃至第4の光学素子は、ダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の走査型光学観察装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−3521(P2006−3521A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178253(P2004−178253)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】