走査機構
【課題】ビデオレート以上の高速での画像取得を可能にする走査型プローブ顕微鏡用走査機構を提供する。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、可動部4とXY弾性部材とZ弾性部材7Aと7Bと固定部5とからなるXYステージと、XYステージが固定される固定台1と、可動部4をX方向に移動させるためのX圧電体2Aと、可動部4をY方向に移動させるためのY圧電体と、可動部4の上面に固定された基板11と、基板11の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZ圧電体3と、可動部4とX圧電体2AとY圧電体のほとんどを覆うカバー9と、Z圧電体3の周囲の可動部4とカバー9の間に設けられたダンピング部材10とを備え、Z圧電体3の上端がカバー9の上面よりも高い位置に位置している。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、可動部4とXY弾性部材とZ弾性部材7Aと7Bと固定部5とからなるXYステージと、XYステージが固定される固定台1と、可動部4をX方向に移動させるためのX圧電体2Aと、可動部4をY方向に移動させるためのY圧電体と、可動部4の上面に固定された基板11と、基板11の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZ圧電体3と、可動部4とX圧電体2AとY圧電体のほとんどを覆うカバー9と、Z圧電体3の周囲の可動部4とカバー9の間に設けられたダンピング部材10とを備え、Z圧電体3の上端がカバー9の上面よりも高い位置に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡用走査機構に関わる。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、機械的探針を機械的に走査して試料表面の情報を得る走査型顕微鏡であり、走査型トンネリング顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型磁気力顕微鏡(MFM)、走査型電気容量顕微鏡(SCaM)、走査型近接場光顕微鏡(SNOM)、走査型熱顕微鏡(SThM)などを含む。最近では試料表面にダイヤモンド製の探針を押し付けて圧痕をつけ、その圧痕のつき具合を解析して試料の固さなどを調べるナノインデンテーターなどもこのSPMのひとつに位置づけられており、前述の各種の顕微鏡と共に広く普及している。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡は、例えば機械的探針と試料とを相対的にXY方向にラスター走査し、所望の試料領域の表面情報を機械的探針を介して得るものである。XY走査の間、Z方向についても試料と探針との相互作用が一定になるようにフィードバック制御している。このZ方向の動きは規則的な動きをするXY方向の動きとは異なり、試料の表面形状や表面状態を反映するため不規則な動きとなるが、一般にZ方向の走査動作とされている。このZ方向の走査はXYZ各方向のなかでは最も高い周波数での動きとなる。
【0004】
従来の走査型プローブ顕微鏡では、走査機構走査速度の制限から1枚の観察像を取得するのに数分の時間を必要としていた。しかし、近年、観察像取得の高速化が望まれるなか、特開2004−333335号公報は、1秒間に数枚の観察像を取得することを可能にする走査機構を開示している。この走査機構では、XY走査のために移動される可動部に、Z走査に使用されるZアクチュエーターが固定されている。Zアクチュエーターは積層圧電体であり、長さは3〜5[mm]程度で、共振周波数は140[kHz]程度である。
【0005】
さらに特開2004−333335号公報は、この走査機構に、不所望な振動を抑えるためにダンパーを付加した構成も開示している。具体的には、Zアクチュエーターが通る開口を有するカバーを可動部の上方に配置し、Zアクチュエーターの周囲のカバーと可動部の間にダンピング部材を設けている。
【特許文献1】特開2004−333335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、1秒間に数枚の画像取得は観察対象の動きや反応を調べるためには十分な速度とは言えず、ビデオレート以上の1秒間に数十枚の画像取得が望まれている。このとき、Zアクチュエーターに要求される共振周波数は300[kHz]以上であり、これを達成する積層圧電体の長さは3[mm]以下となる。この長さの積層圧電体を前述の特開2004−333335号公報のダンパー付き走査機構に適用すると、短いために積層圧電体がカバーの中に埋もれてしまい、カンチレバーを観察試料に近づけるのが困難になる。
【0007】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、ビデオレート以上の高速での画像取得を可能にする走査型プローブ顕微鏡用走査機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、可動部と、前記可動部をX方向に移動させるXアクチュエーターと、前記可動部をY方向に移動させるYアクチュエーターと、前記可動部の上面に固定された基板と、前記基板の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターと、前記可動部と前記Xアクチュエーターと前記Yアクチュエーターのほとんどを覆うカバーと、前記Zアクチュエーターの周囲の前記可動部と前記カバーの間に設けられたダンピング部材とを備え、前記Zアクチュエーターの上端が前記カバーの上面よりも高い位置に位置している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビデオレート以上の高速での画像取得を可能にする走査型プローブ顕微鏡用走査機構が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図1と図2と図3を参照して説明する。図1は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図2は図1の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のII-II線に沿った断面図、図3はカバーと樹脂材を取り除いた平面図である。
【0012】
走査機構は、可動部4を有するXYステージと、XYステージを収容した固定台1と、可動部4をX方向に移動させるXアクチュエーターであるX圧電体2Aと、可動部4をY方向に移動させるYアクチュエーターであるY圧電体2Bとを備えている。
【0013】
XYステージは固定台1の中に接着またはねじ締結によって固定されている。XYステージは可動部4とXY弾性部材6Aと6Bと6Cと6DとZ弾性部材7Aと7Bと7Cと7Dと固定部5とからなる。可動部4は、Z弾性部材7A〜7Dにより固定部5と接続されている。Z弾性部材7A〜7Dは可動部4をZ方向に関して高い剛性をもって支持している。Z弾性部材7A〜7Dの配置位置は可動部4の中心からほぼ等距離であり、可動部4の重心は可動部4のほぼ中心に位置している。可動部4は、XY弾性部材6A〜6Dにより固定部5と接続されている。XY弾性部材6A〜6Dは可動部4をXY方向に関して剛性をもって支持している。XY弾性部材6A〜6DはXY各駆動軸に対して対称に配置されている。XY弾性部材6Aと6CはX軸上に配置され、XY弾性部材6Bと6DはY軸上に配置されている。また、XY弾性部材6AにはX圧電体2Aを当接させる押圧部8Aが設けられており、XY弾性部材6BにはY圧電体2Bを当接させる押圧部8Bが設けられている。
【0014】
XYステージは一体の部品から切り出されたものであり、例えばアルミニウムなどの材料でできている。XYステージを固定している固定台1はXYステージと同じ質材であってもよいが、好ましくは、ステンレス鋼などのようにアルミニウムよりもヤング率の高い材料で作られているとよい。
【0015】
X圧電体2Aの一端は押圧部8Aに当接しており、他端は固定台1に固定されている。X圧電体2AはX軸に沿って所定の予圧がかかるように配置されており、X圧電体2Aの中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。また、Y圧電体2Bの一端は押圧部8Bに当接しており、他端は固定台1に固定されている。Y圧電体2BはY軸に沿って所定の予圧がかかるように配置されており、Y圧電体2Bの中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0016】
走査機構はさらに、可動部4の上面に固定された所定の厚さの基板11と、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターであるZ圧電体3と、可動部4とX圧電体2AとY圧電体2Bのほとんどを覆うカバー9と、Z圧電体3の周囲の可動部4とカバー9の間に設けられたダンピング部材10とを備えている。
【0017】
カバー9は中央に開口を有し、XYステージを覆うようにして固定台1に固定されている。基板11は円錐台形状をしており、可動部4の上面に固定されている。基板11は可動部4と一体構造であっても構わない。Z圧電体3は基板11の上面に固定されている。Z圧電体3はカバー9の開口を通って延びており、Z圧電体3の上端はカバー9の上面よりも高い位置に位置している。また、Z圧電体3の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。Z圧電体3の上端に移動対象物すなわち試料を保持した試料台が保持される。ダンピング部材10は減衰力の大きい例えばゲルのような樹脂材からなる。
【0018】
次に作用について説明する。例えば移動対象物をX方向へ変位させる場合について説明する。可動部4をX方向に駆動する場合にはX圧電体2Aに電圧を印加して伸縮させる。X圧電体2Aの一端は固定台1に固定されているため、X圧電体2Aが変位することにより他端に当接された押圧部8Aが変位する。この変位はXY弾性部材6Aに伝わるが、XY弾性部材6AのX軸に平行に延びた薄板ばね部分はX方向剛性が高いため、変位は可動部4へ伝達される。このとき、Y軸に対して対称な位置に配置されたX軸上のXY弾性部材6Cは、Y軸に平行に延びた薄板ばね部のX方向剛性が低いため、可動部4の変位を妨げない。また、Y軸上に配置されたXY弾性部材6Bと6DのY軸に平行に延びた薄板ばね部はX方向の剛性が低いため、これらも可動部4の変位を妨げない。さらに、可動部4のZ方向を高剛性に支持するZ弾性部材7A〜7DはXY方向の剛性が低いため可動部4の変位を妨げない。このため、X圧電体2Aの伸縮に応じて可動部4はX方向に変位する。
【0019】
可動部4がX方向に移動する場合、駆動軸に対してXY弾性部材6A〜6Dが対称に配置されているため、XY平面内において回転動作することなく直線的に変位する。また、可動部4がX方向に移動する場合、その下面に設けられたZ弾性部材7A〜7Dが平行板ばねとして作用するため、可動部4の上面は傾くことなく水平に移動する。さらに、圧電体の中心を通り駆動方向へ延びる駆動力線が可動部重心を通っているため、可動部4が高速で移動した場合においても慣性力による回転モーメントが発生しにくく、回転動作なく高精度に変位する。
【0020】
また、X圧電体2Aが変位すると、XY弾性部材6Aの変形に伴う反作用力が固定台1のX圧電体2Aを固定している部位に作用する。しかし、固定台1はヤング率の高い材質で作られており、X圧電体2Aの固定部分の変形が少ないため、X圧電体2Aの変位のほとんどは押圧部8Aへ伝えられる。
【0021】
Y方向への移動に関してもX方向と同様のことが言える。
【0022】
移動対象物をZ方向に移動させる場合はZ圧電体3に電圧を印加して伸縮させる。
【0023】
実際にAFM観察像を取得するためには、Z圧電体3の上端に試料台を介して固定された観察試料にカンチレバーを近づける。この場合、Z圧電体3の上端がカバー9上面よりも高い位置に位置するため、カンチレバーを容易に近づけることができる。
【0024】
また、可動部4に不要な振動が発生したとしても、減衰力の大きなダンピング部材10により振動は速やかに減衰される。
【0025】
基板11は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0026】
<第二実施形態>
第二実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図4と図5を参照して説明する。図4は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図5は図4の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のV-V線に沿った断面図である。図4と図5において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0027】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備えている。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、可動部4の下面に固定されている。圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0028】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0029】
<第三実施形態>
第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図6と図7と図8を参照して説明する。図6は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図7は図6の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のVII-VII線に沿った断面図、図8は図7に示された基板の断面斜視図である。図6〜図8において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0030】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備え、また基板11に代えて基板13を備えている。基板13は円錐台形状で、中空部を有している。中空部は円錐台の底面に形成された円柱形状の凹部で構成されている。圧電体12は基板13の中空部の天井面に固定されている。このため、圧電体12は基板13の中空部の中に収まっていて外部に露出していない。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0031】
基板13は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0032】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0033】
<第四実施形態>
第四実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図9と図10を参照して説明する。図9は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図10は図9の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のX-X線に沿った断面図である。図9と図10において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0034】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備え、また基板11に代えて基板13を備えている。基板13は円錐台形状で、中空部を有している。中空部は円錐台の底面に形成された円柱形状の凹部で構成されている。圧電体12は可動部4の上面に固定されている。このため、圧電体12は基板13の中空部の中に収まっていて外部に露出していない。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0035】
基板13は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0036】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ大きさで逆位相の電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0037】
<第五実施形態>
第五実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図11と図12を参照して説明する。図11は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図12は図11の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のXII-XII線に沿った断面図である。図11と図12において、第三実施形態の図6〜図8に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第三実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0038】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、Z圧電体3の周囲を囲む円筒部材14と、Z圧電体3と円筒部材14のすき間に充てんされた充てん材15と、圧電体12と基板13のすき間に充てんされた充てん材16とをさらに備えている。充てん材15と充てん材16は、これに限らないが、例えばシリコーンなどの樹脂である。
【0039】
このため、観察試料が生体試料で液体を使用する場合でもZ圧電体3と圧電体12に液滴が付着することはなく、Z圧電体3と圧電体12の特性が劣化することはない。また、シリコーンなどの樹脂は振動の減衰効果が大きく、例えばZ圧電体3と圧電体12が共振しても振動を速やかに減衰させる。
【0040】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図2】図1の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のII-II線に沿った断面図である。
【図3】カバーと樹脂材を取り除いた平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図5】図4の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のV-V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図7】図6の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図7に示された基板の断面斜視図である。
【図9】本発明の第四実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図10】図9の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のX-X線に沿った断面図である。
【図11】本発明の第五実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図12】図11の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のXII-XII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…固定台、2A…X圧電体、2B…Y圧電体、3…Z圧電体、4…可動部、5…固定部、6A…XY弾性部材、6B…XY弾性部材、6C…XY弾性部材、6D…XY弾性部材、7A…Z弾性部材、7B…Z弾性部材、7C…Z弾性部材、7D…Z弾性部材、8A…押圧部、8B…押圧部、9…カバー、10…ダンピング部材、11…基板、12…圧電体、13…基板、14…円筒部材、15…充てん材、16…充てん材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡用走査機構に関わる。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、機械的探針を機械的に走査して試料表面の情報を得る走査型顕微鏡であり、走査型トンネリング顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型磁気力顕微鏡(MFM)、走査型電気容量顕微鏡(SCaM)、走査型近接場光顕微鏡(SNOM)、走査型熱顕微鏡(SThM)などを含む。最近では試料表面にダイヤモンド製の探針を押し付けて圧痕をつけ、その圧痕のつき具合を解析して試料の固さなどを調べるナノインデンテーターなどもこのSPMのひとつに位置づけられており、前述の各種の顕微鏡と共に広く普及している。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡は、例えば機械的探針と試料とを相対的にXY方向にラスター走査し、所望の試料領域の表面情報を機械的探針を介して得るものである。XY走査の間、Z方向についても試料と探針との相互作用が一定になるようにフィードバック制御している。このZ方向の動きは規則的な動きをするXY方向の動きとは異なり、試料の表面形状や表面状態を反映するため不規則な動きとなるが、一般にZ方向の走査動作とされている。このZ方向の走査はXYZ各方向のなかでは最も高い周波数での動きとなる。
【0004】
従来の走査型プローブ顕微鏡では、走査機構走査速度の制限から1枚の観察像を取得するのに数分の時間を必要としていた。しかし、近年、観察像取得の高速化が望まれるなか、特開2004−333335号公報は、1秒間に数枚の観察像を取得することを可能にする走査機構を開示している。この走査機構では、XY走査のために移動される可動部に、Z走査に使用されるZアクチュエーターが固定されている。Zアクチュエーターは積層圧電体であり、長さは3〜5[mm]程度で、共振周波数は140[kHz]程度である。
【0005】
さらに特開2004−333335号公報は、この走査機構に、不所望な振動を抑えるためにダンパーを付加した構成も開示している。具体的には、Zアクチュエーターが通る開口を有するカバーを可動部の上方に配置し、Zアクチュエーターの周囲のカバーと可動部の間にダンピング部材を設けている。
【特許文献1】特開2004−333335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、1秒間に数枚の画像取得は観察対象の動きや反応を調べるためには十分な速度とは言えず、ビデオレート以上の1秒間に数十枚の画像取得が望まれている。このとき、Zアクチュエーターに要求される共振周波数は300[kHz]以上であり、これを達成する積層圧電体の長さは3[mm]以下となる。この長さの積層圧電体を前述の特開2004−333335号公報のダンパー付き走査機構に適用すると、短いために積層圧電体がカバーの中に埋もれてしまい、カンチレバーを観察試料に近づけるのが困難になる。
【0007】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、ビデオレート以上の高速での画像取得を可能にする走査型プローブ顕微鏡用走査機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、可動部と、前記可動部をX方向に移動させるXアクチュエーターと、前記可動部をY方向に移動させるYアクチュエーターと、前記可動部の上面に固定された基板と、前記基板の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターと、前記可動部と前記Xアクチュエーターと前記Yアクチュエーターのほとんどを覆うカバーと、前記Zアクチュエーターの周囲の前記可動部と前記カバーの間に設けられたダンピング部材とを備え、前記Zアクチュエーターの上端が前記カバーの上面よりも高い位置に位置している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビデオレート以上の高速での画像取得を可能にする走査型プローブ顕微鏡用走査機構が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図1と図2と図3を参照して説明する。図1は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図2は図1の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のII-II線に沿った断面図、図3はカバーと樹脂材を取り除いた平面図である。
【0012】
走査機構は、可動部4を有するXYステージと、XYステージを収容した固定台1と、可動部4をX方向に移動させるXアクチュエーターであるX圧電体2Aと、可動部4をY方向に移動させるYアクチュエーターであるY圧電体2Bとを備えている。
【0013】
XYステージは固定台1の中に接着またはねじ締結によって固定されている。XYステージは可動部4とXY弾性部材6Aと6Bと6Cと6DとZ弾性部材7Aと7Bと7Cと7Dと固定部5とからなる。可動部4は、Z弾性部材7A〜7Dにより固定部5と接続されている。Z弾性部材7A〜7Dは可動部4をZ方向に関して高い剛性をもって支持している。Z弾性部材7A〜7Dの配置位置は可動部4の中心からほぼ等距離であり、可動部4の重心は可動部4のほぼ中心に位置している。可動部4は、XY弾性部材6A〜6Dにより固定部5と接続されている。XY弾性部材6A〜6Dは可動部4をXY方向に関して剛性をもって支持している。XY弾性部材6A〜6DはXY各駆動軸に対して対称に配置されている。XY弾性部材6Aと6CはX軸上に配置され、XY弾性部材6Bと6DはY軸上に配置されている。また、XY弾性部材6AにはX圧電体2Aを当接させる押圧部8Aが設けられており、XY弾性部材6BにはY圧電体2Bを当接させる押圧部8Bが設けられている。
【0014】
XYステージは一体の部品から切り出されたものであり、例えばアルミニウムなどの材料でできている。XYステージを固定している固定台1はXYステージと同じ質材であってもよいが、好ましくは、ステンレス鋼などのようにアルミニウムよりもヤング率の高い材料で作られているとよい。
【0015】
X圧電体2Aの一端は押圧部8Aに当接しており、他端は固定台1に固定されている。X圧電体2AはX軸に沿って所定の予圧がかかるように配置されており、X圧電体2Aの中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。また、Y圧電体2Bの一端は押圧部8Bに当接しており、他端は固定台1に固定されている。Y圧電体2BはY軸に沿って所定の予圧がかかるように配置されており、Y圧電体2Bの中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0016】
走査機構はさらに、可動部4の上面に固定された所定の厚さの基板11と、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターであるZ圧電体3と、可動部4とX圧電体2AとY圧電体2Bのほとんどを覆うカバー9と、Z圧電体3の周囲の可動部4とカバー9の間に設けられたダンピング部材10とを備えている。
【0017】
カバー9は中央に開口を有し、XYステージを覆うようにして固定台1に固定されている。基板11は円錐台形状をしており、可動部4の上面に固定されている。基板11は可動部4と一体構造であっても構わない。Z圧電体3は基板11の上面に固定されている。Z圧電体3はカバー9の開口を通って延びており、Z圧電体3の上端はカバー9の上面よりも高い位置に位置している。また、Z圧電体3の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。Z圧電体3の上端に移動対象物すなわち試料を保持した試料台が保持される。ダンピング部材10は減衰力の大きい例えばゲルのような樹脂材からなる。
【0018】
次に作用について説明する。例えば移動対象物をX方向へ変位させる場合について説明する。可動部4をX方向に駆動する場合にはX圧電体2Aに電圧を印加して伸縮させる。X圧電体2Aの一端は固定台1に固定されているため、X圧電体2Aが変位することにより他端に当接された押圧部8Aが変位する。この変位はXY弾性部材6Aに伝わるが、XY弾性部材6AのX軸に平行に延びた薄板ばね部分はX方向剛性が高いため、変位は可動部4へ伝達される。このとき、Y軸に対して対称な位置に配置されたX軸上のXY弾性部材6Cは、Y軸に平行に延びた薄板ばね部のX方向剛性が低いため、可動部4の変位を妨げない。また、Y軸上に配置されたXY弾性部材6Bと6DのY軸に平行に延びた薄板ばね部はX方向の剛性が低いため、これらも可動部4の変位を妨げない。さらに、可動部4のZ方向を高剛性に支持するZ弾性部材7A〜7DはXY方向の剛性が低いため可動部4の変位を妨げない。このため、X圧電体2Aの伸縮に応じて可動部4はX方向に変位する。
【0019】
可動部4がX方向に移動する場合、駆動軸に対してXY弾性部材6A〜6Dが対称に配置されているため、XY平面内において回転動作することなく直線的に変位する。また、可動部4がX方向に移動する場合、その下面に設けられたZ弾性部材7A〜7Dが平行板ばねとして作用するため、可動部4の上面は傾くことなく水平に移動する。さらに、圧電体の中心を通り駆動方向へ延びる駆動力線が可動部重心を通っているため、可動部4が高速で移動した場合においても慣性力による回転モーメントが発生しにくく、回転動作なく高精度に変位する。
【0020】
また、X圧電体2Aが変位すると、XY弾性部材6Aの変形に伴う反作用力が固定台1のX圧電体2Aを固定している部位に作用する。しかし、固定台1はヤング率の高い材質で作られており、X圧電体2Aの固定部分の変形が少ないため、X圧電体2Aの変位のほとんどは押圧部8Aへ伝えられる。
【0021】
Y方向への移動に関してもX方向と同様のことが言える。
【0022】
移動対象物をZ方向に移動させる場合はZ圧電体3に電圧を印加して伸縮させる。
【0023】
実際にAFM観察像を取得するためには、Z圧電体3の上端に試料台を介して固定された観察試料にカンチレバーを近づける。この場合、Z圧電体3の上端がカバー9上面よりも高い位置に位置するため、カンチレバーを容易に近づけることができる。
【0024】
また、可動部4に不要な振動が発生したとしても、減衰力の大きなダンピング部材10により振動は速やかに減衰される。
【0025】
基板11は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0026】
<第二実施形態>
第二実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図4と図5を参照して説明する。図4は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図5は図4の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のV-V線に沿った断面図である。図4と図5において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0027】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備えている。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、可動部4の下面に固定されている。圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0028】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0029】
<第三実施形態>
第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図6と図7と図8を参照して説明する。図6は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図7は図6の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のVII-VII線に沿った断面図、図8は図7に示された基板の断面斜視図である。図6〜図8において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0030】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備え、また基板11に代えて基板13を備えている。基板13は円錐台形状で、中空部を有している。中空部は円錐台の底面に形成された円柱形状の凹部で構成されている。圧電体12は基板13の中空部の天井面に固定されている。このため、圧電体12は基板13の中空部の中に収まっていて外部に露出していない。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0031】
基板13は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0032】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0033】
<第四実施形態>
第四実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図9と図10を参照して説明する。図9は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図10は図9の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のX-X線に沿った断面図である。図9と図10において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第一実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0034】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、振動の発生を抑える制振用アクチュエーターである圧電体12をさらに備え、また基板11に代えて基板13を備えている。基板13は円錐台形状で、中空部を有している。中空部は円錐台の底面に形成された円柱形状の凹部で構成されている。圧電体12は可動部4の上面に固定されている。このため、圧電体12は基板13の中空部の中に収まっていて外部に露出していない。圧電体12はZ圧電体3と同じ構造体であり、圧電体12の中心線は可動部4のほぼ重心を通っている。
【0035】
基板13は、円錐台形状をしているためXY平面内で生じるどの方向の外力や慣性力に対しても等しく高い剛性を有している。このため、可動部4をX方向Y方向のいずれかの方向に高速に走査して大きな慣性力が生じてもZ圧電体3は傾くことなく可動部4の移動に追従性良く移動する。
【0036】
移動対象物をZ方向に移動させるためにZ圧電体3に電圧を印加すると同時に圧電体12に同じ大きさで逆位相の電圧を印加する。Z圧電体3と圧電体12が変位する際に生じる慣性力は可動部4を振動させようとする。しかし、圧電体12による慣性力はZ圧電体3による慣性力と向きが逆でほぼ同じ大きさであるため、慣性力が互いに打ち消し合い、可動部4は振動しない。このため、振動の影響を受けず、きれいな観察像を得ることができる。
【0037】
<第五実施形態>
第五実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構について図11と図12を参照して説明する。図11は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図、図12は図11の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のXII-XII線に沿った断面図である。図11と図12において、第三実施形態の図6〜図8に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。以下、第三実施形態との相違部分に重点を置いて説明する。
【0038】
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構は、第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の構成に加えて、Z圧電体3の周囲を囲む円筒部材14と、Z圧電体3と円筒部材14のすき間に充てんされた充てん材15と、圧電体12と基板13のすき間に充てんされた充てん材16とをさらに備えている。充てん材15と充てん材16は、これに限らないが、例えばシリコーンなどの樹脂である。
【0039】
このため、観察試料が生体試料で液体を使用する場合でもZ圧電体3と圧電体12に液滴が付着することはなく、Z圧電体3と圧電体12の特性が劣化することはない。また、シリコーンなどの樹脂は振動の減衰効果が大きく、例えばZ圧電体3と圧電体12が共振しても振動を速やかに減衰させる。
【0040】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図2】図1の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のII-II線に沿った断面図である。
【図3】カバーと樹脂材を取り除いた平面図である。
【図4】本発明の第二実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図5】図4の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のV-V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図7】図6の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のVII-VII線に沿った断面図である。
【図8】図7に示された基板の断面斜視図である。
【図9】本発明の第四実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図10】図9の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のX-X線に沿った断面図である。
【図11】本発明の第五実施形態の走査型プローブ顕微鏡用走査機構の平面図である。
【図12】図11の走査型プローブ顕微鏡用走査機構のXII-XII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…固定台、2A…X圧電体、2B…Y圧電体、3…Z圧電体、4…可動部、5…固定部、6A…XY弾性部材、6B…XY弾性部材、6C…XY弾性部材、6D…XY弾性部材、7A…Z弾性部材、7B…Z弾性部材、7C…Z弾性部材、7D…Z弾性部材、8A…押圧部、8B…押圧部、9…カバー、10…ダンピング部材、11…基板、12…圧電体、13…基板、14…円筒部材、15…充てん材、16…充てん材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、
前記可動部をX方向に移動させるXアクチュエーターと、
前記可動部をY方向に移動させるYアクチュエーターと、
前記可動部の上面に固定された基板と、
前記基板の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターと、
前記可動部と前記Xアクチュエーターと前記Yアクチュエーターのほとんどを覆うカバーと、
前記Zアクチュエーターの周囲の前記可動部と前記カバーの間に設けられたダンピング部材とを備え、前記Zアクチュエーターの上端が前記カバーの上面よりも高い位置に位置している走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項2】
振動の発生を抑える制振用アクチュエーターをさらに備えている請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項3】
前記制振用アクチュエーターは可動部の下面に固定されている請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項4】
前記基板は中空部を有し、前記制振用アクチュエーターは前記基板の前記中空部の中に収められている請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項5】
前記制振用アクチュエーターが前記可動部に固定されている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項6】
前記制振用アクチュエーターが前記基板に固定されている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項7】
前記Zアクチュエーターの周囲を囲む円筒部材と、前記Zアクチュエーターと前記円筒部材のすき間に充てんされた充てん材と、前記制振用アクチュエーターと前記基板のすき間に充てんされた充てん材とをさらに備えている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項1】
可動部と、
前記可動部をX方向に移動させるXアクチュエーターと、
前記可動部をY方向に移動させるYアクチュエーターと、
前記可動部の上面に固定された基板と、
前記基板の上面に固定された、移動対象物をZ方向に移動させるZアクチュエーターと、
前記可動部と前記Xアクチュエーターと前記Yアクチュエーターのほとんどを覆うカバーと、
前記Zアクチュエーターの周囲の前記可動部と前記カバーの間に設けられたダンピング部材とを備え、前記Zアクチュエーターの上端が前記カバーの上面よりも高い位置に位置している走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項2】
振動の発生を抑える制振用アクチュエーターをさらに備えている請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項3】
前記制振用アクチュエーターは可動部の下面に固定されている請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項4】
前記基板は中空部を有し、前記制振用アクチュエーターは前記基板の前記中空部の中に収められている請求項2に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項5】
前記制振用アクチュエーターが前記可動部に固定されている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項6】
前記制振用アクチュエーターが前記基板に固定されている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【請求項7】
前記Zアクチュエーターの周囲を囲む円筒部材と、前記Zアクチュエーターと前記円筒部材のすき間に充てんされた充てん材と、前記制振用アクチュエーターと前記基板のすき間に充てんされた充てん材とをさらに備えている請求項4に記載の走査型プローブ顕微鏡用走査機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−308363(P2006−308363A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129468(P2005−129468)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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