説明

走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法及び装置

【課題】ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律走行台車における、車輪1回転当たりの走行量、旋回量などに関与する車輪の製作誤差や組み立て誤差、さらに時間の経過による摩耗などで生じる誤差などの補正パラメータを、容易に、正確に調整することのできる、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法及び装置を提供する。
【解決手段】前記自律走行台車のスタート位置から特定距離にあるゴール位置近傍に前記撮像装置で撮像可能なマーカを設置して、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像をテンプレートとして用意し、前記自律走行台車を前記スタート位置にゴール方向へ向けて設置して前記特定距離走行指示を行うか、または前記ゴール位置で1回転の旋回指令を与え、走行後または旋回後に撮像した前記マーカの撮像画像と、前記予め撮像したテンプレート画像とを用いて前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行する走行台車が目標とする位置に正確に到達するよう、走行台車における車輪に関するパラメータを調整する走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法及び装置に係わり、特に、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律走行台車における、車輪1回転当たりの走行量、旋回量などのパラメータを正確に調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば室内や工場内など、定められた通路に沿ってドアなどを通り抜けたり、種々の障害物が有る狭い空間を正確に走行することを要求される、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律走行台車は、目標とする位置に正確に到達するため、指示された移動距離と方向に対して正確に対応して走行することや、自身の位置を正確に知ることが必要である。そのため、例えば2輪駆動の場合、車輪の回転量で当該走行台車の移動量を、2輪の回転量の差によって方位を推定するためのオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有している。
【0003】
このオドメトリ機能では、車輪径と2個の車輪間の距離(トレッド)が移動量と方位を推定する上で、その精度を左右する重要なパラメータ(以下、これらをオドメトリパラメータと呼ぶ)となる。
【0004】
しかしながら一般には、車輪の製作誤差や組み立て誤差、さらに時間の経過による車輪の摩耗などで誤差が生じるため、これらのパラメータが設計値と異なってくる結果、当該走行台車の移動量と方位の推定値には誤差が生じることになる。特に、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律移動を目的とした走行台車においては、現実移動空間における移動距離と方位が推定値と異なってくると、想定された移動経路から逸脱してしまうため、想定経路外の物体との衝突を起こしたりすることで自律移動の破綻を招く。
【0005】
そのため、上述したオドメトリパラメータは、製作誤差や組み立て誤差を考慮した補正を実施することが行われるが、こういった補正は従来では、規定距離の移動指令と規定角度の旋回指令に対する当該走行台車の実際の移動量と旋回量を測定し、計測された指令値からの誤差から車輪径とトレッドの値を求める(移動距離と方位を推定する場合の逆作業)作業を人手で行なっていた。
【0006】
しかしながら、人手による作業は調整に多くの時間を要し、この調整作業によるコストアップが避けられないという問題があった。また、時間の経過と共に、摩耗などによって車輪径に変化があった場合は、当初のオドメトリパラメータだけでは対応しきれないという問題も生じる。
【0007】
こういったオドメータによる距離推定値から誤差を取り除く方法に関しては、例えば特許文献1に、障害物のある市街地のようにGPS(全地球測位システム:Global Positioning System)信号を用いることができない場所での位置推定を正確に行えるようにするため、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、トラクション・コントロール・システム(TCS)からのタイヤのスリップ信号を用い、オドメータから得られる信号を補正するようにしたシステムが示されている。
【0008】
また特許文献2には、車輌位置の検出精度を高めるため、道路沿いに一定間隔で存在するキロポストなどの特定施設を撮像、認識する手段を備え、これら特定施設の認識毎に走行距離を算出すると共に、その走行距離が特定施設間の距離の整数倍に近似する場合は走行距離の検出値に加算し、整数倍に近似しないときは加算しないようにして、車輌の位置を正確に検出する装置が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−336950号公報
【特許文献2】特開平9−119851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これら特許文献1、2に示された技術は、自動車などの長距離走行する車輌におけるオドメータの検出距離を補正する技術であり、大きな精度は要求されないのに対し、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などのように、例えば室内や工場内などの狭い空間や短距離を正確に走行することを要求される走行台車に適用するには、精度的に問題が多い。
【0011】
特にこれら特許文献1、2に示された方法では、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)や、トラクション・コントロール・システム(TCS)からのタイヤのスリップ信号を用い、オドメータから得られる信号を補正(特許文献1)したり、道路沿いに一定間隔で存在するキロポストなどの特定施設を撮像、認識し、特定施設の認識毎に走行距離を算出して(特許文献2)オドメータを補正するようにしているが、このような方法では、車輪の回転量や車輪間の回転量の差などを正確に特定することはできない。
【0012】
そのため本発明においては、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律走行台車における、車輪1回転当たりの走行量、旋回量などに関与する車輪の製作誤差や組み立て誤差、さらに時間の経過による摩耗などで生じる誤差などの補正パラメータを、容易に、正確に調整することのできる、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法及び装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明における自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法は、
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と撮像装置とを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記自律走行台車のスタート位置から特定距離にあるゴール位置近傍に前記撮像装置で撮像可能なマーカを設置し、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像をテンプレートとして用意した後、前記自律走行台車を前記スタート位置にゴール方向へ向けて設置し、前記特定距離の走行指示を行うか、または前記ゴール位置で1回転の旋回指令を与え、走行後または旋回後に撮像した前記マーカの撮像画像と、前記テンプレート画像とを用いて前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする。
【0014】
また、この自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を実施する装置は、
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪及び撮像装置とを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記自律走行台車のスタート位置から特定距離のゴール位置近傍に前記撮像装置で撮像可能に設置したマーカと、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像をテンプレートとして記憶する記憶手段と、前記自律走行台車を前記スタート位置にゴール方向へ向けて設置して前記特定距離の走行指示を行うか、または前記ゴール位置で1回転の旋回指令を与え、走行または旋回後に前記撮像装置で前記マーカを撮像し、前記回転量測定手段出力によって測定した前記旋回、または走行における前記走行車輪の回転量とそれぞれの走行車輪の回転量の差と、前記記憶装置に記憶されたテンプレートと前記旋回、または走行後に撮像したマーカ画像との比較結果とから、前記自律走行台車の移動距離と移動方向とを推定するための前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、同様に、
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と前方及び側方障害物検知用センサを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
平板を略コの字状に形成した測定用治具を用意し、前記自律走行台車のスタート位置から前記測定用治具を構成する各平板までの距離が所定距離となるよう設置すると共に前記自律走行台車を特定距離離れたゴール位置に向けて設置して、予め前記前方及び側方障害物検知用センサから前記測定用治具における各平板までの距離を算出した後、
旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、旋回後または走行後における前記前方及び側方障害物検知用センサによる前記測定用治具の各平板までの距離を算出し、前記旋回前または走行前測定した値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする。
【0016】
また、この自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を実施する装置は、
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪と前方及び側方障害物検知用センサとを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
平板を略コの字状に形成した測定用治具と、スタート位置から特定距離離れたゴール位置に向けて設置した前記自律走行台車から、前記測定用治具における各平板までの距離が所定距離となるよう前記測定用治具を設置して、予め前記前方及び側方障害物検知用センサで測定した各平板までの距離を記憶する記憶手段と、旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、前記前方及び側方障害物検知用センサにより旋回後または走行後における前記測定用治具の各平板までの距離を測定して、前記記憶手段に記憶した旋回前または走行前に測定した値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、同様に、
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と、自律走行台車の傾きを計測可能な角度差を有した少なくとも2本のビームからなる障害物検知用センサを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記障害物検知用センサにおけるビームを反射可能な平板測定用治具を用意し、スタート位置に前記自律走行台車を特定距離離れたゴール位置に向けて設置すると共に前記平板測定用治具を測定位置に設置して、予め前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角と検出距離から自律走行台車姿勢角度を算出した後、
旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記平板測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、旋回後または走行後における前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角と検出距離から自律走行台車姿勢角度を算出し、前記旋回前または走行前の値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする。
【0018】
また、この自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を実施する装置は、
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪と自律走行台車の進行方向傾きを計測可能な角度差を有した少なくとも2本のビームからなる障害物検知用センサとを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記障害物検知用センサにおけるビームを反射可能な平板測定用治具と、スタート位置から特定距離離れたゴール位置に向けて設置した前記自律走行台車から、前記平板測定用治具までの距離が所定距離となるよう前記平板測定用治具を設置して、予め前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角とから算出した検出距離と自律走行台車姿勢角度を記憶する記憶手段と、旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記平板測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、前記障害物検知用センサにより旋回後または走行後における前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角とから算出した検出距離と自律走行台車姿勢角度と前記記憶手段に記憶した旋回前または走行前に測定した値との差から、前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
このように、撮像装置、前方及び側方障害物検知用センサ、少なくとも2本のビームを有する障害物検知用センサなどのセンサが自律走行台車に設けられている場合、これらを用いることで新規にセンサを追加することなく、しかも自動的に直進移動誤差、旋回誤差を算出でき、コストの低減を図ることができると共に、人手を介在させずに、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することができる。また、前方及び側方障害物検知用センサ、少なくとも2本のビームを有する障害物検知用センサを用いた場合は、撮像装置で撮像した画像を用いる場合に比較し、より高い精度で直進移動誤差、旋回誤差を算出することができる。さらに前方及び側方障害物検知用センサでは、平板を略コの字状に形成した測定用治具に対して人手で精度良く自律走行台車を位置決めする必要があり、この作業は非常に手間が掛かるものであったのに対し、少なくとも2本のビームを有する障害物検知用センサを用いた場合は、測定用治具が平板であるからこのような手間は不要であり、非常に簡単に直進移動誤差、旋回誤差を算出することができる。
【0020】
また、同様に、
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪を有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪の回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記自律走行台車の走行空間に前記自律走行台車の位置と姿勢を検出する位置・姿勢検出センサを設け、前記自律走行台車に略直角の姿勢計測用治具を装着して前記位置・姿勢検出センサ位置に、前記姿勢計測用治具の各面からセンサまでの距離が所定距離となるよう前記自律走行台車を設置して位置・姿勢を測定し、旋回誤差を測定するときはそのまま1回転の旋回指令を与え、走行誤差を測定するときは前記位置・姿勢検出センサから特定距離の位置に前記姿勢計測用治具の各面が所定方向を向くよう前記自律走行台車を設置して前記特定距離の直進指令を与え、前記位置・姿勢検出センサによって検出した前記姿勢計測用治具の旋回前と旋回後または走行後の位置・姿勢とから、前記旋回指令で与えた角度との差、または直進指令で与えた特定距離との差を求め、前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする。
【0021】
また、この自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を実施する装置は、
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪を有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記自律走行台車の走行空間に設けた前記自律走行台車の位置と姿勢を検出する位置・姿勢検出センサと、前記自律走行台車に装着する略直角の姿勢計測用治具と、前記位置・姿勢検出センサ位置に、前記姿勢計測用治具の各面からセンサまでの距離が所定距離となるよう設置して前記自律走行台車の位置・姿勢を測定した結果を記憶する記憶手段と、旋回誤差を測定するときはそのまま1回転の旋回指令を与え、走行誤差を測定するときは前記位置・姿勢検出センサから特定距離の位置に前記姿勢計測用治具の各面が所定方向を向くよう前記自律走行台車を設置して前記特定距離の直進指令を与え、前記位置・姿勢検出センサによって検出した前記姿勢計測用治具の旋回前と旋回後または走行後の位置・姿勢とから、前記自律走行台車の移動距離と移動方向とを推定するための前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
このようにすることにより、撮像装置やセンサを持たない自律走行台車であってもオドメトリ(車輪距離計)パラメータの調整を容易に行うことができる。
【0023】
そして、撮像装置を用いたオドメトリパラメータの調整方法においては、前記マーカは少なくとも2つのマーカで構成され、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像と自律走行台車のマーカまでの距離を用い、走行後の自律走行台車とマーカまでの距離を算出できるようマーカ間の距離を定める、または、前記マーカは少なくとも2つのマーカで構成され、該マーカ間の距離は、前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像と自律走行台車のマーカまでの距離とすることが本発明の好適な実施形態である。
【0024】
また、前記走行後に撮像した前記マーカ画像と前記予め撮像したテンプレート画像との差から前記自律走行台車のゴール位置と実到達位置の差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出したり、前記スタート位置と走行後のそれぞれに測定した前記測定用治具の各平板までの距離の差によって前記自律走行台車の実到達位置とゴール位置との差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出したり、前記スタート位置と走行後のそれぞれで測定した前記平板測定用治具までの距離の差によって前記自律走行台車の実到達位置とゴール位置との差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出することにより、容易に直進走行時のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することができる。
【0025】
そして、前記ゴール位置に設置して旋回後に撮像した前記マーカの画像と前記予め撮像したテンプレート画像との差から前記自律走行台車の旋回角度誤差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出したり、前記旋回前と旋回後に測定した前記測定用治具の各平板までの距離の差によって前記自律走行台車の実旋回角度と旋回指令角度との差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出したり、前記旋回前と旋回後に測定した前記平板測定用治具までの距離と角度の差によって前記自律走行台車の実旋回角度と旋回指令角度との差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出することにより、容易に旋回時のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することができる。
【0026】
そして、撮像装置を用いたオドメトリパラメータの調整方法においては、前記マーカを前記自律走行台車の充電ステーションに設置することにより、自律走行台車は定期的に充電することが必要であるから、その時に同時にオドメトリパラメータの調整も実施でき、常に正確に自律走行できる自律走行台車を提供することができる。
【0027】
さらに、前記自律走行台車の前記スタート位置、または前記ゴール位置への設置を、前記スタート位置またはゴール位置から前記自律走行台車の車輪半径だけずれた位置に前記車輪を当接させて位置設定を行う位置決め治具を用いることで、人手による設置を容易にすると共に、スタート位置への設置をより正確に行うことができる。
【0028】
また、以上のオドメトリパラメータ調整方法では、それぞれの車輪の誤差に対する補正値を平均値によって導出するようにしていたが、前記特定距離直進後に測定した前記自律走行台車の移動距離と、前記スタート位置とゴール位置を結ぶ直線に対する自律走行台車の傾きとから、前記自律走行台車のそれぞれの車輪の直径比を算出して前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することにより、それぞれの車輪を個別に補正するようにしてオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することも可能であり、より精度の高い自律走行が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上記載のごとく本発明によれば、簡単なシステム構成によってオドメトリパラメータ調整を自動化できると共に正確に調整することができ、人手の介在を極力減らして自律走行台車のコスト削減、ならびに製品出荷までの工程短縮を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0031】
最初に自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整について説明する。自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整は、まず、並進、旋回の指令値に対する実動作の誤差を計測し、この並進、旋回の誤差からパラメータの調整量を算出する。そしてこのパラメータの調整量を、パラメータに書き込んで調整後の並進、旋回の指令値に対する実動作の誤差を計測し、パラメータ調整後も位置、姿勢の誤差が大きいときは、自律走行台車の車輪径、トレッドの再チェックを行ない、これを繰り返して調整してゆく。
【0032】
例えばロボットのような自律走行台車における車輪パラメータは、車輪径とトレッド(車輪間隔)であり、直進性能はこの車輪径が、旋回性能は車輪径とトレッドとが影響する。まず直進性能を示す並進(前後退)の場合の誤差(x方向)であるが、並進距離と車輪径とは次の関係がある。
【0033】
並進距離(mm)=π×車輪の回転数(左右の平均)×車輪直径 ………(1)
【0034】
また、その場での旋回は、車輪径とトレッドが影響して次の関係がある。
【0035】
旋回角度(rad)=π×左右の車輪の回転数の差×車輪直径/トレッド…(2)
【0036】
従って、まず車輪径パラメータの調整量は、自律走行台車の移動距離をL(オドメトリの値)、車輪径のパラメータの調整量をkw、指令移動距離と実際の移動距離実測値のずれをΔxとすると、
kw=|Δx|/L …………………………………………………(3)
となり、指令移動距離より実際の移動距離実測値が長い(Δx>0)場合、車輪径パラメータを(WHEEL)とすると、
WHEEL=(1−kw)×WHEEL …………………………(4)
指令移動距離より実際の移動距離実測値が短い(Δx<0)場合、
WHEEL=(1+kw)×WHEEL …………………………(5)
となる。
【0037】
次に、トレッドパラメータの調整量は、自律走行台車の旋回角度をΘ(オドメトリの値)、トレッドパラメータの調整量をkt、指令旋回量と実際の旋回量実測値のずれをΔθとすると、
kw/kt=|Δθ|/Θ …………………………………………(6)
となり、指令旋回量より実際の旋回量実測値が大きい(Δθ>0)場合、トレッドパラメータを(TREAD)とすると、
TREAD=(1−kw/kt)×TREAD …………………(7)
指令旋回量より実際の旋回量実測値が小さい(Δθ<0)場合、
TREAD=(1+kw/kt)×TREAD …………………(8)
となる。
【0038】
すなわち、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整は、前記したように、これらkw、ktの値を算出し、それによってWHEEL、TREADの値を調整して行うわけである。
【実施例1】
【0039】
図1は、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例1を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は自律走行台車の位置決め治具により、自律走行台車をスタート位置へ設定する方法を説明するための図、(C)は直進誤差測定前にマーカをテンプレートして撮像する場合のマーカと自律走行台車の位置関係を示した図、図2は自律走行台車の一例として自律走行ロボットと、ゴール位置に設置するマーカを有した充電ステーションを示した図、図3(A)はゴール位置にてマーカを撮像する方法を示した図、(B)はゴール位置に設置するマーカの一例を示した図、図4(A)は旋回誤差測定時の自律走行台車とマーカを示した図、(B)は自律走行台車を旋回誤差測定時位置に設置する位置決め治具を示した図、(C)は旋回後の自律走行台車を示した図、図5は直進走行誤差を算出する場合のフロー図、図6は旋回誤差を算出する場合のフロー図である。なお、以下の説明では自律走行台車としてロボットの場合を例に説明するが、前記したように自律走行台車として車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などであっても良いことはもちろんであり、走行車輪も少なくとも2輪以上であれば多数の車輪を備えたものであっても良い。
【0040】
本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例1においては、図2に自律走行台車の一例として自律走行ロボット1と、ゴール位置に設置する複数のマーカ20を有した充電ステーション2を示したように、自律走行台車としてのロボット1における例えば頭頂に設けた魚眼レンズや広角レンズを備えた撮像装置10などにより、マーカ20を撮像することによって直進走行誤差と旋回誤差を算出し、オドメトリパラメータを調整する。なお、自律走行台車の撮像装置は、このように頭頂だけでなく、マーカ20を撮像できればどのような位置に設けても良く、また、マーカ20も後述するように自律走行台車との距離が測定できるものであればどのような形態のものでも構わない。
【0041】
そして実際のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整は、直進走行誤差の場合は図5に示したフロー図に、旋回誤差の場合は図6に示したフロー図に従って行う。
【0042】
まず直進走行誤差を測定する場合であるが、最初に図5のフロー図におけるステップS10の「位置決め治具で台車を原点に位置決め」において、図1(A)に示したように、ロボット1をスタート位置30(x,y=0,0)に、例えば5mという特定距離だけ離れたゴール位置31(x,y=50,000mm,0)方向を向けて設置し、特定距離(5m)走行の指示を行って走行させる。
【0043】
この時スタート位置30におけるロボット1の設置は、例えばロボット1の走行車輪が11、12のように2輪の場合、スタート位置30から2輪の半径分だけずれた位置に車輪11、12を当接させて保持する部位32、33を有した位置決め治具3を用いると、設置を容易に、正確に行うことができる。また、ロボット1のスタート位置30への設置をさらに正確にするため、スタート位置30にこの位置決め治具3の位置決め部位34を当接させる基準ポスト(その高さが車輪半径より低いもの)35を設けても良い。なお、この位置決め治具3は、ロボット1のスタート位置への設置が完了したら、一点鎖線で示したようにロボット1の後方にスライドさせ、撤去する。
【0044】
さらに、実際にロボット1を走行させて直進走行誤差を測定する前に、図1(C)に示したように、上記ロボット1の位置決め治具3を用いてゴール位置31にロボット1を設置し、頭頂の撮像装置10によってマーカ20を撮像し、予め正規のゴール位置に到達したときのマーカ撮像画像をテンプレートとして図示していない記憶手段に登録しておく。
【0045】
図3は、このマーカ20の撮像方法(A)とゴール位置に設置するマーカ20の一例(B)を示した図であり、前記図2で説明したようにマーカ20は、ロボット1のたとえば頭頂に設けた魚眼レンズや広角レンズを備えた撮像装置により撮像できるような位置に設ける。そしてロボット1は、前記した位置決め治具3によってゴール位置31に設置し、撮像した画像上における複数のマーカ20の間隔とロボット1のマーカまでの距離とから、図示していない制御手段により走行後のマーカ20とロボット1との距離を算出できるようになっている。
【0046】
再度図1を参照して、このようにしてロボット1の直進走行誤差の測定のための用意ができたら、前記したように位置決め治具3によってロボット1をスタート位置30に設置し、図5に示したフロー図におけるステップS11において、例えば前記した特定距離5mの直進指示を与えて直進させる。そしてステップS12においてロボットが5m進んだとする位置で停止したら、その位置で図1(C)で声明したたのと同様にしてマーカ20を撮像する。
【0047】
そしてステップS13において、その撮像結果と先に撮像したテンプレート画像とから、それぞれにおけるロボット1とマーカ20迄の距離を算出し、ロボット1の停止位置における並進誤差を算出する。すなわちロボット1とマーカ20迄の距離算出は、前記したようにテンプレート画像撮像時のマーカ20とロボット1の距離、及びテンプレート画像上における複数のマーカ20の間隔から、前記したように走行後のマーカ20の間隔を測定することで、マーカ20とロボット1との距離を算出することができる。
【0048】
そして、それぞれの撮像画像により算出したロボット1とマーカ20迄の距離の差Δxを算出し、それによって前記(3)、(4)、(5)式を用い、ロボット1のオドメトリパラメータを調整する。
【0049】
また、旋回誤差を測定する場合は、最初に図6のフロー図におけるステップS20「位置決め治具で台車を原点に位置決め」において、図4(A)に示したように、ロボット1をゴール位置31に図4(B)に示した位置決め治具3(前記図1(B)で説明した位置決め治具と同じもの)を用いてマーカ20側を向けて設置し、次のステップS21で頭頂の撮像装置10によってマーカ20を撮像し、予め旋回前のマーカ撮像画像をテンプレートとして図示していない記憶手段に登録しておく。
【0050】
このようにしてロボット1の旋回誤差の測定のための用意ができたら、ステップS22でロボット1に例えば360°の旋回指令を与え、駆動輪が2輪の場合は左右の車輪に逆方向で同量の回転指令を与えて旋回させ、旋回終了後、ステップS23で再度マーカ20を撮像する。
【0051】
そして、ステップS24においてその撮像画像と予め図示していない記憶手段に登録しておいたテンプレート画像とのズレ、すなわち停止位置の旋回誤差を算出し、その値に基づいて、前記(6)、(7)、(8)式を用いて図示していない制御手段がロボット1のオドメトリパラメータを調整する。いま、この旋回終了時、ロボット1が例えば図4(C)に示したように正規の方向に対して角度Δθだけずれた方向を向いて停止した場合、テンプレート画像とはこのΔθ分だけずれた画像が撮像される。そのため、テンプレート画像撮像時のマーカ20とロボット1の距離、及びテンプレート画像上における複数のマーカ20の間隔から、マーカ20の画像のズレ量が何度に相当するかを算出する。そして、この算出した角度Δθを用い、それによってロボット1のオドメトリパラメータを調整する。
【実施例2】
【0052】
以上が実施例1の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であるが、次に、図7乃至図13に従い、実施例2の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を説明する。
【0053】
前記した、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例1においては、自律走行台車としてのロボット1における例えば頭頂に設けた魚眼レンズや広角レンズを備えた撮像装置10により、マーカ20を撮像することによって直進走行誤差と旋回誤差を算出し、オドメトリパラメータを調整していたが、この実施例2においては、自律走行台車としてのロボット1に備えられた、赤外線などを用いた前方及び側方障害物検知用センサを用いてオドメトリパラメータを調整するものである。
【0054】
図7は自律走行台車の一例としてのロボットに設けられた前方及び側方障害物検知用センサを説明するための図で、(A)は正面図、(B)はX−X方向断面図、図8は、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例2を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためのスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は自律走行台車の位置決め治具により、自律走行台車をスタート位置へ設定する方法を説明するための図、図9(A)は自律走行台車の直進走行誤差測定のための走行前の測定状態を示した図、(B)は同じく走行後の測定状態を示した図、図10(A)は自律走行台車の旋回誤差測定時における旋回前の状態を示した図、(B)は自律走行台車を旋回誤差測定位置に設置する位置決め治具を示した図、(C)は旋回後の自律走行台車を示した図、図11(A)は自律走行台車の旋回誤差測定時における旋回前の測定状態を示した図、(B)は同じく旋回後の測定状態を示した図、図12は直進走行誤差を算出する場合のフロー図、図13は旋回誤差を算出する場合のフロー図である。
【0055】
通常、ロボットや車輌形式で自律走行するビーグル(AGV)などの自律走行台車は、これから走行する先に本当に床や地面等の走行面があるか、走行領域に障害物が存在しないかを判断し、それによって走行先に障害物が有る場合や走行面がない場合は、迂回したり場合によっては障害物を乗り越えるなどの行動を取る必要があり、これら走行面や障害物の検出のため、図7に示したように、赤外線などを用いた前方及び側方障害物検知用センサを装備することが一般的におこなわれている。
【0056】
この図7において、1は自律走行台車の一例としてのロボット、11、12はロボット1の走行車輪であり、このロボット1は、前方における障害物を検出するため、例えば光ビームを出力する発光部とその反射光を受光する受光部を備えた前方障害物検知センサ41や、左右に設けた側方障害物検知センサ42、42を備えている。そのため、本発明の実施例2では、これら前方及び側方障害物検知用センサを用いてオドメトリパラメータを調整するものである。なお、この図7に示した前方障害物検知センサ41は、それぞれのセンサから1、No.2、No.3、No.4、No.5として示した5本の光ビームを出力する発光部と、その反射光を受光する受光部を備えたワイドアングルセンサ(WAS)と称するセンサ41、41、41からなる場合を示したものであるが、本発明では、このような形態のセンサだけでなく、距離を測定できるものであれば、どのような形態のセンサであっても構わない。
【0057】
まず直進走行誤差を測定する場合であるが、最初に図12のフロー図におけるステップS31の「ロボット1を原点位置に位置決め」を実施する。これは図8(A)に示したように、ロボット1をスタート位置30(x,y=0,0)に、例えば5mという特定距離だけ離れたゴール位置31(x,y=50,000mm,0)方向を向けて設置するもので、前記図1で説明した位置決め治具3を用いておこなう。
【0058】
次に、図12のステップS32で図8に40として示した、測定用治具として平板を略コの字状に形成したセンサ検出値取得用治具を、各平板がスタート位置30から所定距離となるよう設置する。そして、実際にロボット1を走行させて直進走行誤差を測定する前に、図12のステップS33において、前記図7に示した前方及び側方障害物検知用センサ41、42を用い、測定用治具としてのセンサ検出値取得用治具40を構成する各平板までの距離を測定し、図示していない記憶手段に記憶する。
【0059】
図9(A)はこの計測結果の一例を示した図であり、例えばセンサ検出値取得用治具40におけるロボット1の側方の平板40、40がスタート位置30から465mmの位置に、前方の平板40がスタート位置30から490mmの位置にあり、さらに、ロボット1に備えられた前方障害物検知センサ41、41、41のうちの41のセンサで検出した前方の平板40迄の距離が300mm(Lr)、同じく右側の側方障害物検知センサ42が(xr,yr)にあり、左側の側方障害物検知センサ42が(xl,yl)にあって、それぞれのセンサで検出した側方の平板40、40迄の距離がそれぞれ350mm(Lr、Lr)である場合を示している。こうして走行前の測定が済んだら、図12のステップS34で、前記と同様位置決め治具3をロボット1の後方にスライドさせ、撤去する。
【0060】
そして次に図12のステップS35で、図8(A)の停止位置(ゴール位置)31に前記した測定用治具であるセンサ検出値取得用治具40を、スタート位置30に設置したと同様に設置する。次いで図12のステップS36で、ロボット1に例えば前記した特定距離5mの直進移動指令を発行して直進させ、ステップS37において図1(A)のように、ゴール位置31近傍においてロボットが5m進んだとして停止したら、スタート位置30で行ったのと同様、センサ検出値取得用治具40における側方の平板40、40、及び進行方向の平板40迄の距離を測定する。
【0061】
この測定結果の一例を示したのが図9(B)である。この例では、ロボット1はゴール位置31を通り過ぎ、さらにセンサ検出値取得用治具40におけるロボット1の進行方向左側となる平板40側によって停止している。
【0062】
今、この時の前方障害物検知センサ41が床面に対してθwasの角度で取り付けられ、前方の平板40迄の距離検出結果がLt、同じく側方障害物検知センサ42、42による側方の平板40、40迄の距離検出結果がそれぞれLt、Lt、ロボット1が前方に行き過ぎた距離をΔx、平板40側によった距離をΔy、x方向に対して姿勢が傾いた姿勢ズレ量をΔθ、とすると、まず姿勢ズレΔθは、
Δθ=cos−1{(Lr+|yl|+Lr+|yr|)/
(Lt+|yl|+Lt+|yr|)} ………………(9)
となる。また、進行方向のズレΔxは、
Δx=Lr×cosθwas−Lt×cosθwas×cosΔθ …(10)
横方向のずれΔyは、
Δy=Lr−Lt×cosΔθ ……………………………………………(11)
となる。
【0063】
従って、前記したように車輪径パラメータの調整量kw、車輪径パラメータをWHEELとすると、
kw=|Δx|/L …………………………………………………(3)
指令移動距離より実際の移動距離実測値が長い(Δx>0)場合、
WHEEL=(1−kw)×WHEEL …………………………(4)
指令移動距離より実際の移動距離実測値が短い(Δx<0)場合、
WHEEL=(1+kw)×WHEEL …………………………(5)
となり、これらの計算を図示していない制御手段によりおこなう。
【0064】
次に、旋回誤差を測定する場合は、まず図13のフロー図におけるステップS41の「ロボットを原点位置に位置決め」を実施する。これは図10(A)に示したように、ロボット1をスタート位置30(x,y=0,0)に、前記図1で説明した位置決め治具3(図10(B)を参照)を用いておこなう。
【0065】
次に、図13のステップS42で図10に40で示したセンサ検出値取得用治具を、各平板がスタート位置30から所定距離となるよう設置する。そして、実際にロボット1を旋回させる前に、図13のステップS43において、前記図7に示した前方及び側方障害物検知用センサ41、42を用い、測定用治具としてのセンサ検出値取得用治具40を構成する各平板までの距離を測定する。
【0066】
図11(A)はこの計測結果の一例を示した図であり、前記図9(A)の場合と同様、例えばセンサ検出値取得用治具40におけるロボット1の側方の平板40、40がスタート位置30から465mmの位置に、前方の平板40がスタート位置30から490mmの位置にあり、さらに、ロボット1に備えられた前方障害物検知センサ41、41、41のうちの41のセンサにおける正面(図7に41で示した中央のNo.3のセンサ)のセンサで検出した前方の平板40迄の距離Lrが300mm、その41のセンサにおける左右のセンサ(図7に41で示した左右のNo.1、No.5のセンサ)で検出した前方の平板40迄の距離をLr、Lr、同じく右側の側方障害物検知センサ42が(xr,yr)にあり、左側の側方障害物検知センサ42が(xl,yl)にあって、それぞれのセンサで検出した側方の平板40、40迄の距離がそれぞれ350mm(Lr、Lr)である場合を示している。こうして走行前の測定が済んだら、図13のステップS44で、前記と同様位置決め治具3をロボット1の後方にスライドさせて撤去した後、ロボット1に例えば360°の旋回指令を与え、旋回させる。
【0067】
そして次に図12のステップS45で、図10(B)のように停止、旋回前の測定と同様、センサ検出値取得用治具40における側方の平板40、40、及び前方の平板40迄の距離をそれぞれのセンサで測定する。
【0068】
この測定結果の一例を示したのが図11(B)である。この例では、ロボット1は、左右の車輪における直径差で、もとの位置30から前方の平板40方向とロボット1の進行方向左側となる平板40側によって停止している。
【0069】
今、前方障害物検知センサ41における正面(図7に41で示した中央のNo.3のセンサ)のセンサで検出した前方の平板40迄の距離をLt、右側の側方障害物検知センサ42が(xr,yr)にあり、左側の側方障害物検知センサ42が(xl,yl)にあって、それぞれのセンサで検出した側方の平板40、40迄の距離がそれぞれLt、Lt、前方障害物検知センサ41における左右のセンサ(図7に41で示した左右のNo.1、No.5のセンサ)で検出した前方の平板40迄の距離をLt、Lt、ロボット1が平板40方向へ近接した距離をΔx、平板40側によった距離をΔy、x方向に対して姿勢が傾いた姿勢ズレ量をΔθとする。
【0070】
姿勢のズレ量を算出するに当たっては、まず、姿勢の正負判定を行う。このとき、前方障害物検知センサ41における左右のセンサ(図7に41で示した左右のNo.1、No.5のセンサ)で検出した前方の平板40迄の距離Lt、Ltは、左右のセンサが正しい位置に取り付けられていれば等しくなるが、取り付け誤差などによって計測距離に差が出た場合のことを考慮し、旋回前の検出値を補正しておく。すなわち、距離Lt、Ltの差をΔLとしたとき、
ΔL=Lt−Lt
ΔL>0のとき Lt=Lt+ΔL
ΔL<0のとき Lt=Lt+ΔL
であり、Δθの正負は、
Lt−Lt>0のとき Δθ>0
Lt−Lt<0のとき Δθ<0
となる。
【0071】
そのため、姿勢ズレΔθは
Δθ=cos−1{(Lr+|yl|+Lr+|yr|)/
(lt+|yl|+Lt+|yr|)} …………(12)
となる。
【0072】
そして、トレッドパラメータの調整量は、自律走行台車の旋回角度をΘ(オドメトリの値)、トレッドパラメータの調整量をkt、指令旋回量と実際の旋回量実測値のずれをΔθ’とすると、
Δθ’=360°−Θ ………………………………………………………(13)
kw/kt=|Δθ−Δθ’|/ …………………………………………(14)
となり、指令旋回量より実際の旋回量実測値が大きい(Δθ−Δθ’>0)場合、トレッドパラメータを(TREAD)とすると、
TREAD=(kt/(kt+kw))×TREAD
=(Θ/(Θ+(Δθ−Δθ’)))×TREAD ……(15)
指令旋回量より実際の旋回量実測値が小さい(Δθ−Δθ’<0)場合、
TREAD=(kt/(kt−kw))×TREAD
=(Θ/(Θ−(Δθ−Δθ’)))×TREAD ……(16)
となる。
【0073】
すなわち、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整は、前記したように、これらkw、ktの値を図示していない制御手段により算出し、それによってWHEEL、TREADの値を調整して行うわけである。
【実施例3】
【0074】
以上が実施例2の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であるが、次に、図14乃至図17に従い、実施例3の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を説明する。
【0075】
前記した、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例2においては、自律走行台車としてのロボット1に備えられた、赤外線などを用いた前方及び側方障害物検知用センサと、測定用治具として平板を略コの字状に形成したセンサ検出値取得用治具を用いたが、この実施例3においては、例えば前記図7に示したワイドアングルセンサ(WAS)41、41、41からなる前方障害物検知センサにおける、自律走行台車の傾きを計測可能な角度差を有した少なくとも2本のビームのみを用い、測定用治具として平板のセンサ検出値取得用治具を用いてオドメトリパラメータを調整するものである。
【0076】
図14は、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例3を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためのスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は姿勢誤差が車輪径パラメータの調整に与える影響を説明するための図、図15は直進走行後の自律走行台車の姿勢の計測方法を説明するための図、図16は直進走行誤差を算出する場合のフロー図、図17は旋回誤差を算出する場合のフロー図である。
【0077】
まず直進走行誤差を測定する場合であるが、最初に図12のフロー図におけるステップS51の「ロボットを計測開始位置に設置し、位置、姿勢を0リセット」を実施する。これは図14(A)に示したように、ロボット1をスタート位置30(x,y=0,0)に、例えば5mという特定距離だけ離れたゴール位置31(x,y=50,000mm,0)方向を向けて設置し、さらに専用の測定用治具として平板のセンサ検出値取得用治具50を設置する。
【0078】
次に、図16のステップS52で前記図7に示した前方障害物検知用センサ41における、例えば中央の41のNo.3のビームと、左右の41のNo.1のビーム、41のNo.5のビームなどを用い、平板のセンサ検出値取得用治具50を構成する平板までの距離を測定して図示していない記憶手段に記憶する。
【0079】
いま、前方障害物検知用センサ41における中央41、右41、左41の位置などのパラメータを次のように定義する。
【0080】
(1)中央の前方障害物検知用センサ41
取付位置 :(x1,y
取付角度(鉛直方向) :θ[deg]
取付角度(水平方向) :θ1[deg]
(2)左の前方障害物検知用センサ41
取付位置 :(x,y
取付角度(鉛直方向) :θ[deg]
取付角度(水平方向) :θ[deg]
(3)右の前方障害物検知用センサ41
取付位置 :(x,y
取付角度(鉛直方向) :θ[deg]
取付角度(水平方向) :θ[deg]
【0081】
そして、それぞれの計測結果を次のように定義する。
【0082】
(1)中央の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
(2)左の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
(3)右の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
【0083】
次いで、図16のステップS53でこれら計測結果から、初期位置、姿勢を算出する。この算出は、図15に示したように、実際は図15(A)のようにロボット1が平板のセンサ検出値取得用治具50に対して傾いているが、平板のセンサ検出値取得用治具50が図15(B)のようにロボット1に対して傾いている、として傾きを算出する。このとき、ロボット1の中心座標を原点としてセンサの取り付け位置、姿勢は既知であるので、前記計測結果L、Lから、座標(x,y),(x,y)が算出でき、この2点を通る直線から平板のセンサ検出値取得用治具50とロボット1の傾きθが算出できる。
【0084】
そのため、平板のセンサ検出値取得用治具50に対するロボット1の傾きθを、次の式を用いて初期姿勢を算出する。
【0085】
L1=x+Lcosθcosθ ………………………………(17)
L1=y+Lcosθcosθ ………………………………(18)
R1=x+Lcosθcosθ ………………………………(19)
R1=y+Lcosθcosθ ………………………………(20)
【数1】

このとき、前方障害物検知用センサ41の取り付け位置から平板のセンサ検出値取得用治具50までの水平距離Lは次の式で求められる。
【0086】
=Lcosθ (θ≦3.0deg→cosθ=1) …(22)
【0087】
そして次に、測定用治具である平板のセンサ検出値取得用治具50を、スタート位置30から計測距離である例えば5mの位置に同様に設置する。設置が済んだら、図16のステップS54で、ロボット1に例えば前記した特定距離5mの直進移動指令を発行して直進させ、ロボット1が停止した位置で、スタート位置30で行ったのと同様、平板のセンサ検出値取得用治具50における測定を行う。
【0088】
そして、それぞれの計測結果を次のように定義する。
【0089】
(1)中央の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
(2)左の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
(3)右の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
【0090】
なおこのとき、ロボット1を長距離を移動させた場合、センサ検出値取得用治具50に直交した理想的な長距離移動経路に対して傾いて移動した際、図14(B)に示したように、余弦誤差が発生して問題となる。しかしながら、初期の姿勢誤差が3.6度以内であれば、例えば50000mm移動したときの誤差は10mm以内となり、目標とする位置決め精度に対して許容できる範囲となる。また、前方障害物検知用センサ41にも当然バラツキがあるから、こういったことを考慮したアルゴリズムで姿勢誤差を算出する必要がある。
【0091】
次に、図16のステップS56で、前方障害物検知用センサ41の計測結果から、移動指令に対する位置決め誤差を算出し、車輪径パラメータの調整量を算出する。そのため、まず、停止位置に設置された平板のセンサ検出値取得用治具50に対するロボット1の傾きを計測し、停止位置の姿勢を算出する。計算式は以下の通りである。
【0092】
L2=x+Lcosθcosθ …………………………………(23)
L2=y+Lcosθcosθ …………………………………(24)
R2=x+Lcosθcosθ …………………………………(25)
R2=y+Lcosθcosθ …………………………………(26)
【数2】

このとき、前方障害物検知用センサ41の取り付け位置から平板のセンサ検出値取得用治具50までの水平距離Lは次の式で求められる。
【0093】
=Lcosθ (θ≦3.0deg→cosθ=1) …(28)
【0094】
また、長距離直進動作後の姿勢ずれを考慮した移動誤差ΔLを以下の式により算出する。
【0095】
Δθ=|θ−θ
【数3】

さらに、この移動誤差ΔLを使って、オドメトリ量Lodと動作指令値との誤差ΔLなどの車輪径パラメータの補正量を算出する。
【0096】
ΔLod=Lod−5000[mm] ……………………………………(30)
【数4】

【0097】
従って、前記したように車輪径パラメータの調整量kw、車輪径パラメータをWHEELとすると、
【数5】

となり、指令移動距離より実際の移動距離実測値が長い(ΔL>0)場合、
WHEEL=(1+kw)×WHEEL ……………………………………(33)
指令移動距離より実際の移動距離実測値が短い(ΔL<0)場合、
WHEEL=(1−kw)×WHEEL ……………………………………(34)
となる。
【0098】
こうしてパラメータの調整量が算出されたら、図16におけるステップS57に進み、パラメータを調整した後、再度移動試験を行って5000mmの直進移動に対して位置決め誤差が10mm以内であれば合格とし.10mm以上の場合は車輪径パラメータをデフォルトに戻し、最初から試験を行って調整を行う。そして、この値が10mm以内なら、次のステップS58でトレッドパラメータ調整試験に進む。
【0099】
トレッドパラメータ調整は、以上説明してきたのと同様、図17に示したフロー図のステップS61で「ロボットを計測開始位置に設置し、位置、姿勢を0リセット」を実施する。次に、ステップS62で前記と同様、図7に示した前方障害物検知用センサ41における、例えば左右の41のNo.1のビーム、41のNo.5のビームなどを用い、平板のセンサ検出値取得用治具50を構成する平板までの距離を測定する。
【0100】
このときの前方障害物検知用センサ41における右41、左41の位置などのパラメータを前記と同様次のように定義する。
【0101】
(4)左の前方障害物検知用センサ41
取付位置 :(x,y
取付角度(鉛直方向) :θ[deg]
取付角度(水平方向) :θ[deg]
(5)右の前方障害物検知用センサ41
取付位置 :(x,y
取付角度(鉛直方向) :θ[deg]
取付角度(水平方向) :θ[deg]
【0102】
また、それぞれの初期位置における計測結果を次のように定義する。
【0103】
(4)左の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
(5)右の前方障害物検知用センサ41の計測結果 :L[mm]
【0104】
次いで、図17のステップS63でこれら計測結果から、前記と同様にして平板のセンサ検出値取得用治具50に対するロボット1の傾きθを、前記した次の式を用いて算出する。
【0105】
L1=x+Lcosθcosθ ………………………………(17)
L1=y+Lcosθcosθ ………………………………(18)
R1=x+Lcosθcosθ ………………………………(19)
R1=y+Lcosθcosθ ………………………………(20)
【数6】

【0106】
そして次に、図17のステップS64で、ロボット1に360度の回転指令を与え、ステップS65で、平板のセンサ検出値取得用治具50における測定を行う。そして、それぞれの計測結果を前記したように次のように定義する。
【0107】
(4)左の前方障害物検知用センサ41 :L[mm]
(5)右の前方障害物検知用センサ41 :L[mm]
【0108】
次に、図17のステップS66で、前方障害物検知用センサ41の計測結果から、回転指令に対する姿勢誤差を算出し、トレッドパラメータの調整量を算出する。そのため前記したように、まず、停止位置に設置された平板のセンサ検出値取得用治具50に対するロボット1の傾きを計測し、停止位置の姿勢を算出する。計算式は以下の通りである。
【0109】
L2=x+Lcosθcosθ …………………………………(23)
L2=y+Lcosθcosθ …………………………………(24)
R2=x+Lcosθcosθ …………………………………(25)
R2=y+Lcosθcosθ …………………………………(26)
【数7】

【0110】
そして、360度の旋回動作指令に対する実際の旋回量との誤差を下式に基づいて算出する。
【0111】
Δθ=θ−θ …………………………………………………………(35)
【0112】
そして、トレッドパラメータの調整量は、前記したように自律走行台車の旋回角度をΘ(オドメトリの値)、トレッドパラメータの調整量をkt、指令旋回量と実際の旋回量実測値のずれをΔθ’とすると、
Δθ’=360°−Θ ………………………………………………………(13)
kw/kt=|Δθ−Δθ’|/ …………………………………………(14)
となり、指令旋回量より実際の旋回量実測値が大きい(Δθ−Δθ’>0)場合、トレッドパラメータを(TREAD)とすると、
TREAD=(kt/(kt+kw))×TREAD
=(Θ/(Θ+(Δθ−Δθ’)))×TREAD ………(15)
指令旋回量より実際の旋回量実測値が小さい(Δθ−Δθ’<0)場合、
TREAD=(kt/(kt−kw))×TREAD
=(Θ/(Θ−(Δθ−Δθ’)))×TREAD ………(16)
となる。
【0113】
こうしてパラメータの調整量が算出されたら、図17におけるステップS67に進み、パラメータを調整した後、再度回転試験を行って360度回転に対して姿勢誤差が3度以内であれば合格とし.3度以上の場合はトレッドパラメータをデフォルトに戻し、最初から試験を行って調整を行う。そして、この値が3度以内なら、合格として終了する。
【実施例4】
【0114】
以上が実施例3の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であるが、次に、図18に従い、実施例4の自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法を説明する。
【0115】
前記した、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例1乃至3においては、自律走行台車としてのロボット1に備えられた、撮像装置や赤外線などを用いた障害物検知用センサを用いたが、この実施例4においては、自律走行台車の走行空間に設けた自律走行台車1の位置と姿勢を検出する、位置・姿勢検出センサにより、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整するものである。
【0116】
図18は、本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例4を説明するための図であり、自律走行台車としてのロボット1は、反射板を略直角に組み合わせた姿勢計測用治具60を装着し、スタート位置30にこの姿勢計測用治具60の一辺がゴール位置31方向と平行になるように設置される。また、ロボット1の位置と姿勢を検出する位置・姿勢検出センサは、同じくゴール位置近傍に、略直角とした位置・姿勢検出センサ取り付け部材70に、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に対して同一角度θで赤外線などを照射するセンサ71、72、ゴール位置から、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に対して垂直方向に同じく赤外線などを照射するセンサ72が設けられる。なお、この位置・姿勢検出センサ取り付け部材70の一辺は、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に平行とする。
【0117】
今、ロボット1に装着した姿勢計測用治具60におけるX、Y方向の反射板の、スタート位置30からのX方向距離、Y方向距離をそれぞれDx、Dyとし、走行指令距離をL、位置・姿勢検出センサ取り付け部材70に取り付けたセンサ71、72、センサ73のゴール位置31からの距離をそれぞれEx、Ey、走行指令によってロボット1が到達した位置におけるセンサ71、72、センサ73から姿勢計測用治具60迄の距離をF、F、F、それぞれのセンサからのビームが姿勢計測用治具60に到達した座標を、センサ71を(x,y)、センサ72を(x,y)、センサ73を(x,y)、走行指令によってロボット1が到達した位置における、ロボット1の座標を(x,y)、姿勢計測用治具60における直角に交わった位置の座標を(x,y)とする。
【0118】
また、走行指令によってロボット1が到達した位置における、姿勢計測用治具60のそれぞれの辺を直線と見てそれを式で表すと、それぞれy=f(x)、y=f(x)となり、このそれぞれの式で表される直線は直角に交わり、かつ、y=f(x)は座標(x,y)、(x,y)を通り、y=f(x)は座標(x,y)を通る。
【0119】
そのため、
【0120】
【数8】

となる。
【0121】
従って、走行指令によってロボット1が到達した位置(x,y)における姿勢、すなわち、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に対してロボット1がなす角度γは
tanγ=(y−y)/(x−x
よって
γ=tan−1{(y−y)/(x−x)}
であり、ロボット1の座標(x,y)は、
【0122】
【数9】

【0123】
そのため、前記と同様直進走行誤差を測定する場合は、図18におけるスタート位置30にロボット1を、姿勢計測用治具60における一辺が、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に平行になるようにゴール位置31方向を向けて設置し、距離Lの走行指令を与えて走行させ、ゴール位置31近傍に設けられた位置・姿勢検出センサ取り付け部材70に取り付けたセンサ71、72、センサ73で姿勢計測用治具60迄の距離を測定することで、ロボット1の実走行距離、走行後の姿勢が算出できる。
【0124】
また、旋回誤差を測定するときは、ゴール位置31にロボット1を、姿勢計測用治具60における一辺が、スタート位置30とゴール位置31を結ぶ直線に平行になるように設置して所定角度の旋回指令を与え、旋回後の角度を位置・姿勢検出センサ取り付け部材70に取り付けたセンサ71、72、センサ73で姿勢計測用治具60迄の距離を測定することで、ロボット1の実旋回角度を算出できる。
【0125】
このようにすることで、撮像装置やセンサを持たない自律走行台車であっても、オドメトリ(車輪距離計)パラメータの調整を容易に行うことができる。
【0126】
なお、以上説明してきた方法で算出した車輪径パラメータWHEELは、誤差に対する補正値を左右車輪の平均値によって導出するものとなっている。しかし、自律走行台車としてのロボット1が、直進移動指令に対してその経路から傾いて移動した場合、左右車輪には直径差が生じており、式(9)で算出した姿勢ズレΔθ、式(10)で算出した進行方向のズレΔx、式(11)で算出した横方向のズレΔyを用いると、この左右車輪の直径差を算出することができ、左右車輪を個別に補正することが可能となる。
【0127】
図19は、この自律走行台車1の走行後における走行距離と姿勢の傾きから、走行車輪の直径差を算出する方法を説明するための図である。今、自律走行台車1の走行車輪のうち、例えば11を径の大きい方の車輪としてその車輪径をφ、走行距離をL、12を小さい方の車輪としてその車輪径をφ、走行距離をL、両車輪の間隔(トレッド)をT、nを車輪の回転数、Lを走行指令に対して実際に移動した距離(移動指令量に対する誤差Δxを引いた値)、自律走行台車1が移動後に、スタート位置とゴール位置を結ぶ直線に対して傾いた角度をΔθとし、自律走行台車1は、走行車輪11、12の直径差によって弧を描いて進行するが、その弧の半径をRとする。
【0128】
すると、まず自律走行台車1が描く弧の半径Rは、
R=L/sinΔθ ……………………………………………(39)
となり、直径が大きい車輪11(車輪径φ)と小さい車輪12(車輪径φ)の走行距離は、それぞれ
=2π(R+T/2)×Δθ/360=πnφ ………(40)
=2π(R−T/2)×Δθ/360=πnφ ………(41)
となる。そのため、それぞれの車輪径の比は、
φ/φ=(R+T/2)/(R−T/2) ………………(42)
となる。
【0129】
従って、この式(39)を用いて車輪径パラメータWHEELを算出することで、前記したように左右車輪を個別に補正することが可能となる。
【0130】
また、以上の説明では、ロボットなどの自律走行台車を所定距離走行させてオドメトリパラメータを調整する方法を説明したが、この方法では、自律走行台車を走行させるために或る程度の広さの場所が必要となる。
【0131】
そのため、例えば床に回転ローラや回転ベルトを設置し、自律走行台車をその上で走行させて同様にパラメータを調整するようにしても良い。この場合、自律走行台車が走行する空間が不要になり、また、自律走行台車との距離を測定するセンサも不要となる。
【0132】
但しこの方式では、回転ベルトを用いたり回転ローラでも同一方向に駆動する場合、旋回動作の測定はできないが、例えばエンコーダを備えて自由回転する2つの回転ローラで自律走行台車の駆動輪を挟むようにし、駆動輪の回転数を検出するようにした場合は旋回動作の測定も可能となる。
【0133】
以上、種々述べてきたように本発明によれば、簡単なシステム構成によってオドメトリパラメータ調整を自動化できると共に正確な調整が可能となり、人手の介在を極力減らして自律走行台車のコスト削減、ならびに製品出荷までの工程短縮を達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、室内や工場内などの種々の障害物が有る狭い空間を、正確に走行できる自律走行台車を低コストで、短期間で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例1を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は自律走行台車の位置決め治具により、自律走行台車をスタート位置へ設定する方法を説明するための図、(C)は直進誤差測定前にマーカをテンプレートして撮像する場合のマーカと自律走行台車の位置関係を示した図である。
【図2】自律走行台車の一例として自律走行ロボットと、ゴール位置に設置するマーカを有した充電ステーションを示した図である。
【図3】(A)はゴール位置にてマーカを撮像する方法を示した図、(B)はゴール位置に設置するマーカの一例を示した図である。
【図4】(A)は旋回誤差測定時の自律走行台車とマーカを示した図、(B)は自律走行台車を旋回誤差測定時位置に設置する位置決め治具を示した図、(C)は旋回後の自律走行台車を示した図である。
【図5】直進走行誤差を算出する場合のフロー図である。
【図6】旋回誤差を算出する場合のフロー図である。
【図7】自律走行台車の一例としてのロボットに設けられた前方及び側方障害物検知用センサを説明するための図で、(A)は正面図、(B)はX−X方向断面図である。
【図8】本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例2を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためのスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は自律走行台車の位置決め治具により、自律走行台車をスタート位置へ設定する方法を説明するための図である。
【図9】(A)は自律走行台車の直進走行誤差測定のための走行前の測定状態を示した図、(B)は同じく走行後の測定状態を示した図である。
【図10】(A)は自律走行台車の旋回誤差測定時における旋回前の状態を示した図、(B)は自律走行台車を旋回誤差測定位置に設置する位置決め治具を示した図、(C)は旋回後の自律走行台車を示した図である。
【図11】A)は自律走行台車の旋回誤差測定時における旋回前の測定状態を示した図、(B)は同じく旋回後の測定状態を示した図である。
【図12】直進走行誤差を算出する場合のフロー図である。
【図13】旋回誤差を算出する場合のフロー図である。
【図14】本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例3を説明するための図であり、(A)は直進走行誤差測定のためのスタート位置とゴール位置を示した図、(B)は姿勢誤差が車輪径パラメータの調整に与える影響を説明するための図である。
【図15】直進走行後の自律走行台車の姿勢の計測方法を説明するための図である。
【図16】直進走行誤差を算出する場合のフロー図である。
【図17】旋回誤差を算出する場合のフロー図である。
【図18】本発明になる自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法の実施例4を説明するための図である。
【図19】自律走行台車の走行後における走行距離と姿勢の傾きから、走行車輪の直径差を算出する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0136】
1 自律走行ロボット
10 撮像装置
11、12 ロボット1の走行車輪
2 充電ステーション
20 マーカ
3 位置決め治具
30 スタート位置
31 ゴール位置
32、33 走行車輪を保持する部位
34 位置決め部位
35 基準ポスト(その高さが車輪半径より低いもの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と撮像装置とを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記自律走行台車のスタート位置から特定距離にあるゴール位置近傍に前記撮像装置で撮像可能なマーカを設置し、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像をテンプレートとして用意した後、前記自律走行台車を前記スタート位置にゴール方向へ向けて設置し、前記特定距離の走行指示を行うか、または前記ゴール位置で1回転の旋回指令を与え、走行後または旋回後に撮像した前記マーカの撮像画像と、前記テンプレート画像とを用いて前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項2】
前記マーカは少なくとも2つのマーカで構成され、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像と自律走行台車のマーカまでの距離を用い、走行後の自律走行台車とマーカまでの距離を算出できるようマーカ間の距離を定めたことを特徴とする請求項1に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項3】
前記走行後に撮像した前記マーカ画像と前記予め撮像したテンプレート画像との差から前記自律走行台車のゴール位置と実到達位置の差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項1または2に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項4】
前記ゴール位置に設置して旋回後に撮像した前記マーカの画像と前記予め撮像したテンプレート画像との差から前記自律走行台車の旋回角度誤差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項1または2に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項5】
前記マーカを前記自律走行台車の充電ステーションに設置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項6】
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と前方及び側方障害物検知用センサを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
平板を略コの字状に形成した測定用治具を用意し、前記自律走行台車のスタート位置から前記測定用治具を構成する各平板までの距離が所定距離となるよう設置すると共に前記自律走行台車を特定距離離れたゴール位置に向けて設置して、予め前記前方及び側方障害物検知用センサから前記測定用治具における各平板までの距離を算出した後、
旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、旋回後または走行後における前記前方及び側方障害物検知用センサによる前記測定用治具の各平板までの距離を算出し、前記旋回前または走行前測定した値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項7】
前記スタート位置と走行後のそれぞれに測定した前記測定用治具の各平板までの距離の差によって前記自律走行台車の実到達位置とゴール位置との差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項6に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項8】
前記旋回前と旋回後に測定した前記測定用治具の各平板までの距離の差によって前記自律走行台車の実旋回角度と旋回指令角度との差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項6または7に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項9】
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪と、自律走行台車の傾きを計測可能な角度差を有した少なくとも2本のビームからなる障害物検知用センサを有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪における回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記障害物検知用センサにおけるビームを反射可能な平板測定用治具を用意し、スタート位置に前記自律走行台車を特定距離離れたゴール位置に向けて設置すると共に前記平板測定用治具を測定位置に設置して、予め前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角と検出距離から自律走行台車姿勢角度を算出した後、
旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記平板測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、旋回後または走行後における前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角と検出距離から自律走行台車姿勢角度を算出し、前記旋回前または走行前の値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項10】
前記スタート位置と走行後のそれぞれで測定した前記平板測定用治具までの距離の差によって前記自律走行台車の実到達位置とゴール位置との差を算出し、前記自律走行台車の直進走行時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項10に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項11】
前記旋回前と旋回後に測定した前記平板測定用治具までの距離と角度の差によって前記自律走行台車の実旋回角度と旋回指令角度との差を算出し、前記自律走行台車の旋回時オドメトリパラメータを算出することを特徴とする請求項10または11に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項12】
前記自律走行台車の前記スタート位置、または前記ゴール位置への設置を、前記スタート位置またはゴール位置から前記自律走行台車の車輪半径だけずれた位置に前記車輪を当接させて位置設定を行う位置決め治具を用いて行うことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項13】
それぞれ独立の駆動源を有する少なくとも2輪の走行車輪を有して走行する自律走行台車における、前記走行車輪の回転量と、それぞれの走行車輪の回転量の差とによって移動距離と移動方向とを推定するオドメトリ機能(移動距離測定機能)を有し、該移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する、自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法であって、
前記自律走行台車の走行空間に前記自律走行台車の位置と姿勢を検出する位置・姿勢検出センサを設け、前記自律走行台車に略直角の姿勢計測用治具を装着して前記位置・姿勢検出センサ位置に、前記姿勢計測用治具の各面からセンサまでの距離が所定距離となるよう前記自律走行台車を設置して位置・姿勢を測定し、旋回誤差を測定するときはそのまま1回転の旋回指令を与え、走行誤差を測定するときは前記位置・姿勢検出センサから特定距離の位置に前記姿勢計測用治具の各面が所定方向を向くよう前記自律走行台車を設置して前記特定距離の直進指令を与え、前記位置・姿勢検出センサによって検出した前記姿勢計測用治具の旋回前と旋回後または走行後の位置・姿勢とから、前記旋回指令で与えた角度との差、または直進指令で与えた特定距離との差を求め、前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項14】
前記特定距離直進後に測定した前記自律走行台車の移動距離と、前記スタート位置とゴール位置を結ぶ直線に対する自律走行台車の傾きとから、前記自律走行台車のそれぞれの車輪の直径比を算出して前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項15】
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪及び撮像装置とを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記自律走行台車のスタート位置から特定距離のゴール位置近傍に前記撮像装置で撮像可能に設置したマーカと、予め前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像をテンプレートとして記憶する記憶手段と、前記自律走行台車を前記スタート位置にゴール方向へ向けて設置して前記特定距離の走行指示を行うか、または前記ゴール位置で1回転の旋回指令を与え、走行または旋回後に前記撮像装置で前記マーカを撮像し、前記回転量測定手段出力によって測定した前記旋回、または走行における前記走行車輪の回転量とそれぞれの走行車輪の回転量の差と、前記記憶装置に記憶されたテンプレートと前記旋回、または走行後に撮像したマーカ画像との比較結果とから、前記自律走行台車の移動距離と移動方向とを推定するための前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。
【請求項16】
前記マーカは少なくとも2つのマーカで構成され、該マーカ間の距離は、前記ゴール位置にて前記撮像装置で撮像した前記マーカの画像と自律走行台車のマーカまでの距離とを用い、前記走行または旋回後の自律走行台車とマーカまでの距離を算出できる距離としたことを特徴とする請求項15に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。
【請求項17】
前記マーカを前記自律走行台車の充電ステーションに設置したことを特徴とする請求項15または16に記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。
【請求項18】
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪と前方及び側方障害物検知用センサとを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
平板を略コの字状に形成した測定用治具と、スタート位置から特定距離離れたゴール位置に向けて設置した前記自律走行台車から、前記測定用治具における各平板までの距離が所定距離となるよう前記測定用治具を設置して、予め前記前方及び側方障害物検知用センサで測定した各平板までの距離を記憶する記憶手段と、旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、前記前方及び側方障害物検知用センサにより旋回後または走行後における前記測定用治具の各平板までの距離を測定して、前記記憶手段に記憶した旋回前または走行前に測定した値との差から前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。
【請求項19】
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪と自律走行台車の進行方向傾きを計測可能な角度差を有した少なくとも2本のビームからなる障害物検知用センサとを有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記障害物検知用センサにおけるビームを反射可能な平板測定用治具と、スタート位置から特定距離離れたゴール位置に向けて設置した前記自律走行台車から、前記平板測定用治具までの距離が所定距離となるよう前記平板測定用治具を設置して、予め前記障害物検知用センサにおけるそれぞれのビームにより前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角とから算出した検出距離と自律走行台車姿勢角度を記憶する記憶手段と、旋回角度誤差測定時はそのまま1回転の旋回指令を、走行誤差を算出するときは前記平板測定用治具をゴール位置に設置して前記特定距離の走行指令を与え、前記障害物検知用センサにより旋回後または走行後における前記平板測定用治具までの距離と各ビームの照射角とから算出した検出距離と自律走行台車姿勢角度と前記記憶手段に記憶した旋回前または走行前に測定した値との差から、前記自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。
【請求項20】
前記自律走行台車の前記スタート位置、または前記ゴール位置への設置用に、前記スタート位置またはゴール位置から前記自律走行台車の車輪半径だけずれた位置に前記車輪を当接させて位置設定を行う位置決め治を具備えたことを特徴とする請求項15乃至19のいずれかに記載した自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整方法。
【請求項21】
それぞれ独立の駆動源と回転量を測定する手段とを備えた少なくとも2輪の走行車輪を有して走行し、移動距離と移動方向とを推定するための車輪径と車輪間隔(トレッド)とで決定されるオドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置であって、
前記自律走行台車の走行空間に設けた前記自律走行台車の位置と姿勢を検出する位置・姿勢検出センサと、前記自律走行台車に装着する略直角の姿勢計測用治具と、前記位置・姿勢検出センサ位置に、前記姿勢計測用治具の各面からセンサまでの距離が所定距離となるよう設置して前記自律走行台車の位置・姿勢を測定した結果を記憶する記憶手段と、旋回誤差を測定するときはそのまま1回転の旋回指令を与え、走行誤差を測定するときは前記位置・姿勢検出センサから特定距離の位置に前記姿勢計測用治具の各面が所定方向を向くよう前記自律走行台車を設置して前記特定距離の直進指令を与え、前記位置・姿勢検出センサによって検出した前記姿勢計測用治具の旋回前と旋回後または走行後の位置・姿勢とから、前記自律走行台車の移動距離と移動方向とを推定するための前記オドメトリ(車輪距離計)パラメータを調整する制御手段とを備えたことを特徴とする自律走行台車のオドメトリ(車輪距離計)パラメータ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−156576(P2007−156576A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347319(P2005−347319)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】