説明

走行式作業機械の変速システム

【課題】 本発明の目的は、噛み合いクラッチ式変速機の変速用ギヤ同士の噛み合いを一度の変速操作で確実に行うことができるHST走行装置により駆動される走行式作業機械の変速システムを提供することである。
【解決手段】 走行式作業機械の変速システムはHST2及びその制御用油圧回路3と、これに接続され、シフトスイッチ72により操作される噛み合いクラッチ式変速機5及びその制御油圧回路6と、前記噛み合いクラッチ式変速機5の変速動作の完了を検出するニュートラルスイッチ61と、HST制御圧力の開閉を行う流路選択電磁弁65を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HST油圧走行装置により駆動される走行式作業機械の変速システムに係わり、特に噛み合いクラッチ式変速機を有する走行式作業機械の変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の走行式作業機械の油圧駆動装置として、例えば特開平6−58412号公報に示すように、傾転を制御する傾転制御機構を有し原動機により駆動される両傾転型の油圧ポンプと、この油圧ポンプと一対の主管路により閉回路接続され、この油圧ポンプからの吐出圧により駆動される油圧モータとを備えたHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる油圧走行回路を備えたHST走行装置が知られている。
【0003】
このHST走行装置では、運転席のアクセルの踏込み操作による原動機の回転数に応じて油圧ポンプの吐出容量を変化させ、そのポンプ吐出量に応じて油圧モータの回転数を変化させて、作業車両の走行速度を増減させている。
【0004】
また、HST走行装置の出力側は例えば走行時と作業時で走行速度を変えるために変速機に接続されている。変速機としては、変速用の複数段のギヤとそれらに対して、スプラインを介して選択的に連結されるシフトスリーブとを設けた噛み合いクラッチ式変速機が一般的に用いられる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−58412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
噛み合いクラッチ式変速機を備えた変速システムにおいては、変速動作時に、出力ギヤとシフトスリーブのスプライン歯の山同士が正対して噛み合わず、変速機の切り替えに失敗する場合がある。このような場合、オペレータが前後進切替レバーを前進側に入れてHST走行装置の油圧モータを回すと、正対したスプライン歯の山がずれて噛み合い変速動作を完了することができる。
【0007】
しかし、HSTの油圧モータを回して、スプライン歯を噛み合わせるためには、油圧モータを低速で回転させることが必要であり、そのためにはオペレータは前後進切替レバーの操作を微妙に調整しながらスプライン歯が噛み合うまで何度かレバー操作をしなければならない場合がある。また、ブレーキペダルがインチングバルブに連動しているシステムでは、ブレーキペダルの踏み操作を解除して、インチングバルブを閉じ状態にしなければ、HST油圧モータの傾転シリンダを作動するための制御圧力が発生しない。この制御圧力が発生しなければ前後進切替レバーを操作しても油圧ポンプの傾転は増加せず、油圧モータは回らない。よって、このようなシステムでは、上記のように変速機の切り替えに際し、前後進切替レバーを操作してスプライン歯の噛み合わせを行わせる場合はブレーキペダルから足を離して、ブレーキを解除する必要がある。しかし、ブレーキを解除して変速を行うことは安全性の面から望ましくなく、また路面が傾斜している場合はブレーキを解除することができず、オペレータは前後進切替レバーによるスプラインの噛み合わせ操作を行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、噛み合いクラッチ式変速機の切り替えを容易かつ確実に安全に行うことができるHST走行装置を備えた走行式作業機械の変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原動機により駆動される両傾転型の油圧ポンプ及びこの油圧ポンプに閉回路接続された油圧モータを有するHSTと、このHSTの油圧ポンプに設けられた傾転制御機構を駆動制御するHST制御用油圧回路と、前記HSTの油圧モータに接続され、シフト操作手段により操作される噛み合いクラッチ式変速機とを備え、前記HST制御用油圧回路は、前記傾転制御機構を駆動するための制御圧力を生成する制御圧力発生回路と、この制御圧力発生回路と前記傾転制御機構との間に配置された前後進切替弁と、ブレーキペダルの操作に連動して開き、前記制御圧力発生回路の制御圧力を作動油タンクに導くインチングバルブとを有する走行式作業機械の変速システムにおいて、前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作が完了したかどうかを検出する中立検出手段と、前記HST制御用油圧回路の前記インチングバルブの下流側に配置され、絞り付き回路と絞りなし回路を選択可能な流路選択弁と、前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されないときは、前記流路選択弁を前記絞り付き回路を選択する位置に切り替え、それ以外のときは前記流路選択弁を前記絞りなし回路を選択する位置に保持する中立解除制御手段とを備えるものとする。
【0010】
このように構成した本発明の作用は次のようである。
【0011】
オペレータは、ブレーキペダルの踏み操作をしてブレーキをかけた状態でシフト操作手段を操作して、噛み合いクラッチ式変速機の切り替え(変速)を行う。このとき、噛み合いクラッチ式変速機の切り替えに失敗した場合は、中立検出手段はそのことを検出し、中立解除制御手段は流路選択弁を絞り付き回路を選択する位置に切り替える。これにより制御圧力発生回路には絞り付き回路の絞り開度に応じた、通常操作時の制御圧力より低い制御圧力(中立解除用の制御圧力)が発生し、この状態で前後進切替弁を切り替えると、その低い制御圧力が傾転制御機構に導かれ、HSTの油圧ポンプの傾転が僅かに増大し、HSTの油圧モータが低速で回転し、噛み合いクラッチ式変速機のスプラインが噛み合う。これにより噛み合いクラッチ式変速機の切り替えを容易かつ確実に行うことができる。
【0012】
また、ブレーキペダルを踏み操作し、インチングバルブが開いた状態にあることを前提として絞り付き回路を機能させ、中立解除用の低圧の制御圧力を発生させるので、ブレーキをかけた状態でHSTの油圧モータを回転させることで、噛み合いクラッチ式変速機の切り替えを安全に行うことができる。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記中立解除制御手段は、前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されないときは、前記流路選択弁を前記絞り付き回路を選択する位置に切り替えるとともに、前記前後進切替弁を前進位置、後進位置のいずれかに切り替えるものとする。
【0014】
これによりオペレータが前後進切替レバーを操作しなくても、自動で前後進切替弁が前進位置、後進位置のいずれかに切り替わるようになり、噛み合いクラッチ式変速機の切り替え操作がより容易となる。
【0015】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記中立解除制御手段は、前記シフト操作手段が操作されたかどうかを判断し、前記シフト操作手段が操作されていないときは処理を終了するものとする。
【0016】
これによりシフト操作手段の操作があった場合にのみ中立解除制御手段は機能するようになり、中立検出手段の誤作動による流路選択弁の切り替えが防止され、機器の信頼性が向上する。
【0017】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記ブレーキペダルが操作されたかどうかを検出するブレーキ操作検出手段を更に備え、前記中立解除制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段によりブレーキペダルの操作が検出されないときは、前記シフト操作手段の操作による噛み合いクラッチ式変速機の切り替えを無効とするものとする。
【0018】
これによりブレーキペダルが踏み操作された場合にのみ噛み合いクラッチ式変速機の切り替え操作が行えるようになり、オペレータの誤動作による走行中の噛み合いクラッチ式変速機の切り替えが防止され、一層の安全確保と変速機の保護が可能となる。
【0019】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記中立解除制御手段は、前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されない状態が一定時間継続したときは、前記噛み合いクラッチ式変速機及び前記流路選択弁を前記シフト操作手段の操作前の状態に戻すものとする。
【0020】
これにより噛み合いクラッチ式変速機のシフトスリーブが外れない場合に、この状態のまま中立解除制御手段が機能してHSTの油圧モータが回転し、作業機械が意図しない動きを生じることが防止され、一層の安全性が図れる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、噛み合いクラッチ式変速機の変速動作中にギヤ同士が噛み合わず、変速動作が完了しない場合に、操作性に優れかつ信頼性の高い中立解除制御が行える走行式作業機械の変速システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図4により説明する。
【0024】
図1は、本実施形態による走行式作業機械の変速システムを示す油圧回路図である。
【0025】
図1において、本実施形態による走行式作業機械の変速システムは、原動機であるエンジン1(例えばディーゼルエンジン)と、油圧走行回路(以下HSTという)2及びその制御用油圧回路3と、噛み合いクラッチ式変速機5及びその制御用油圧回路6とからなるHST走行装置(以下適宜HSTシステムという)とを備えている。
【0026】
HST2はエンジン1に駆動される両傾転型の可変容量油圧ポンプ11と、可変容量油圧モータ12と、油圧ポンプ11の傾転を制御する傾転制御機構である傾転シリンダ15とを備え、油圧ポンプ11と油圧モータ12は一対の主管路13,14により接続され、閉回路を構成している。傾転シリンダ15は両ロッドシリンダタイプであり、ピストン15aを挟んで2つのシリンダ室15b,15cを有している。
【0027】
HST2の制御用油圧回路3は、HST制御用の油圧源である制御圧力発生回路8と、制御圧力発生回路8から傾転シリンダ15の圧油の給排を制御する前後進切替弁35と、ブレーキペダル38に連動して作動するインチングバルブ36とを備えている。
【0028】
制御圧力発生回路8はエンジンにより駆動される固定容量型のチャージポンプ31と、パイロットリリーフ弁32と、固定絞り33と、制御圧力調整弁34とを備えている。エンジン1により駆動されるチャージポンプ31から吐出される圧油の流量はエンジン1の回転数に比例して増加する。このとき、固定絞り33の下流側の圧力はパイロットリリーフ弁32により一定圧に保たれているため、チャージポンプ31の流量の増加に比例して固定絞り33の前後差圧は増大する。制御圧力調整弁34は固定絞り33の前後差圧を検出し、この差圧に比例した圧力を傾転シリンダ15の制御圧力として管路100,101に出力する。
【0029】
前後進切替弁35はF(前進)位置、N(中立)位置、R(後進)位置の3つのバルブ位置を有しており、後述する前後進切替レバー71により操作される。
【0030】
前後進切替弁35がN位置にあるときは、傾転シリンダ15の2つのシリンダ室15b,15cに接続された管路102,103を作動油タンク37に連通させ、傾転シリンダ15のピストン15aは中立位置に保たれる。このとき両傾転型の油圧ポンプ11の傾転も中立位置(傾転角ゼロ)に保持され、両傾転型の油圧ポンプ11がエンジン1により駆動されても油圧ポンプ11の吐出流量はゼロとなる。
【0031】
前後進切替弁35がF位置に切り替えられると、管路101を管路103に接続し、管路102を作動油タンク37に連通させ、傾転シリンダ15の図示左側のシリンダ室15cに制御圧力を供給する。これにより、傾転シリンダ15のピストン15aは図示右方向に移動し、油圧ポンプ11の傾転角を前進方向に移動し、油圧ポンプ11は前進側の主管路13に圧油を吐出する。油圧モータ12はその吐出油により駆動され、前進方向に回転する。前述したように、制御圧力発生回路8により生成された制御圧力はエンジン回転数に比例して増大する。制御圧力が増大すれば、それに応じて傾転シリンダ15のピストン15aの移動量も増大し、両傾転型の油圧ポンプ11の傾転角も増大する。これにより、油圧ポンプ11はエンジン回転数の上昇に応じて滑らかに応答良く吐出流量を増大させ、油圧モータ12の回転数を増大させる。よってエンジン回転数の上昇に応じて油圧モータ12の出力回転数も滑らかに応答良く増大し、滑らかで力強い加速走行が可能となる。
【0032】
前後進切替弁35がR位置に切り替えられると、管路101を管路102に接続し、管路103を作動油タンク37に連通させ、傾転シリンダ15の図示右側のシリンダ室15bに制御圧力を供給する。これにより、傾転シリンダ15のピストン15aは図示左方向に移動し、油圧ポンプ11の傾転角を後進方向に移動し、油圧ポンプ11は後進側の主管路14に圧油を吐出する。油圧モータ12はその吐出油により駆動され、後進方向に回転する。この場合も、制御圧力発生回路8により生成された制御圧力はエンジン回転数に比例して増大するため、滑らかで力強い加速走行が可能となる。
【0033】
インチングバルブ36は制御圧力管路100、101に接続された管路104に設けられている。管路104のインチングバルブ36の下流側は作動油タンク37に接続されている。インチングバルブ36はブレーキペダル38が踏み操作されていないときは閉じており、このとき管路100、101には前述した制御圧力が発生する。ブレーキペダル38が踏み操作されると図示しないブレーキ機構が作動し制動力が加わるとともに、ブレーキペダル38の踏み操作に連動してインチングバルブ36は開口面積を増大させ、開放状態となる。インチングバルブ36が開放状態になると、管路100、101の制御圧力は作動油タンク37に開放され、制御圧力はタンク圧(ほぼ0)になる。
【0034】
これにより、前後進切替弁35がF位置またはR位置にあっても、傾転制御シリンダ15は中立位置に戻り、両傾転型の油圧ポンプ11の傾転角が中立位置になり、吐出流量がゼロになる。これにより、ブレーキペダル38を踏み操作したときは、ブレーキ機構により走行の制動を行うとともに油圧モータ12の回転数を下げ、油圧モータ12の無駄な回転を回避する。
【0035】
なお、インチングバルブ36に対しては図示しないインチングペダルが設けられており、インチングペダルの操作によっても油圧モータ12の回転数を制御し、車速を制御することができる。
【0036】
噛み合いクラッチ式変速機5は低速段ギヤ列21と高速段ギヤ列22とシフトスリーブ23と変速ピストンシリンダ54とを備えている。低速段ギヤ列21は互いに噛み合う入力ギヤ21aと出力ギヤ21bを有し、高速段ギヤ列22は互いに噛み合う入力ギヤ22aと出力ギヤ22bを有している。入力ギヤ21a,22aは油圧モータ12に連結された入力軸25に取り付けられ、油圧モータ12と一体に回転可能である。出力ギヤ21b,22bは出力軸26に軸受を介して相対回転可能に支持され、シフトスリーブ23を介して選択的に連結可能である。つまり、シフトスリーブ23は出力軸26の拡径部分にスプライン結合されており、出力ギヤ21b,22bの内径ボス部の外周にはシフトスリーブ23のスプラインと係合可能なスプラインが形成され、シフトスリーブ23を低速段ギヤ列21側にシフトしたときは、シフトスリーブ23のスプラインは出力軸26のスプラインと出力ギヤ21bのスプラインの両方に噛み合って、出力ギヤ21bを出力軸26に連結し、シフトスリーブ23を高速段ギヤ列22側にシフトしたときは、シフトスリーブ23のスプラインは出力軸26のスプラインと出力ギヤ22bのスプラインの両方に噛み合って出力ギヤ22bを出力軸26に連結する。出力軸26は継手27及び外部出力軸28を介して図示しない後輪の車軸に連結され、車軸を回転させる。
【0037】
変速ピストンシリンダ54はシフトスリーブ23を駆動するためのものであり、シフトスリーブ23に連結されたピストンロッド54aを有している。
【0038】
噛み合いクラッチ式変速機5の制御用油圧回路6はエンジン1により駆動されるパイロットポンプ51と、パイロットリリーフ弁52と、変速用電磁弁53とを備えている。
【0039】
パイロットポンプ51は固定容量型油圧ポンプであり、エンジン1により駆動され管路200に圧油を吐出する。パイロットリリーフ弁52は管路200に設けられ、パイロットポンプ51により管路200に生成されるパイロット圧を一定値に維持する。
【0040】
変速用電磁弁53は変速ピストンシリンダ54の動作方向を切り替え、噛み合いクラッチ式変速機5の変速動作を行わせるためのものであり、管路200から分岐する管路202と、変速ピストンシリンダ54のロッド側室54bに接続された管路204との間、及び変速ピストンシリンダ54のボトム側室54cに接続された管路205と作動油タンク37に接続された管路203との間に配置されている。
【0041】
変速用電磁弁53は低速位置Aと、高速位置Bの2つの切替位置を有し、後述するシフトスイッチ72により、切り替え操作される。
【0042】
変速用電磁弁53が低速位置Aにあるときには、パイロット圧の管路200に接続された管路202を管路205に接続し、変速ピストンシリンダ54のボトム側室54cにパイロット圧を供給し、作動油タンク37に接続された管路203を管路204に接続し、変速ピストンシリンダ54のロッド側室54bを作動油タンク37に連通させる。これにより、変速ピストンシリンダ54のピストンロッド54aは図示左方に移動し、シフトスリーブ23を低速段ギヤ列21側にシフトさせ、噛み合いクラッチ式変速機5を低速に切り替える。
【0043】
変速用電磁弁53が高速位置Bに切り替えられると、パイロット圧の管路200に接続された管路202を管路204に接続し、変速ピストンシリンダ54のロッド側室54bにパイロット圧を供給し、作動油タンク37に接続された管路203を管路204に接続し、変速ピストンシリンダ54のボトム側室54cを作動油タンク37に連通させる。これにより、変速ピストンシリンダ54のピストンロッド54aは図示右方に移動し、シフトスリーブ23を高速段ギヤ列22側にシフトさせ、噛み合いクラッチ式変速機5を高速に切り替える。
【0044】
また、本実施の形態による走行式作業機械の変速システムは、ニュートラルスイッチ61と、固定絞り62を備えた絞り付き管路63と、絞りのない普通の管路64と、流路選択電磁弁65とからなる変速中立解除システムを備えている。
【0045】
ニュートラルスイッチ61は噛み合いクラッチ式変速機5の変速動作が完了しているかどうかを検出するものであり、変速ピストンシリンダ54に取り付けられ、変速ピストンシリンダ54のピストン位置を監視する。噛み合いクラッチ式変速機5は、変速操作時に出力ギヤ21b又は22bとシフトスリーブ23のスプライン歯の山同士が正対し、噛み合わない場合がある。このとき、シフトスリーブ23は所定量シフトせず、変速ピストンシリンダ54のピストンも所定量移動せず、変速ピストンシリンダ54のピストンはシリンダストローク範囲の中央付近で停止する。ニュートラルスイッチ61は噛み合いクラッチ式変速機5の変速動作が完了し、変速ピストンシリンダ54のピストンがストロークエンド付近にあるときは、作動せず、変速ピストンシリンダ54のピストンがストロークエンド以外の位置にあるときは、変速動作が完了していないと判断し、後述するコントローラ70にON信号を送信する。
【0046】
流路選択電磁弁65は管路104のインチングバルブ36の下流側と絞り付き管路(絞り付き回路)63及び絞りなし管路(絞りなし回路)64との間に配置されている。また流路選択電磁弁65は開放位置Cと絞り位置Dの2つの切替位置を有し、後述するコントローラ70からの駆動信号により駆動される。絞り付き管路63及び絞りなし管路64の下流側は、作動油タンク37に接続されている。
【0047】
流路選択電磁弁65が開放位置Cにあるときは管路104を絞りなし管路64に接続し、インチングバルブ36の下流側を絞りなしで作動油タンク37に連通させる。これにより、インチングバルブ36が開放状態にあるときは、管路100,101の制御圧力が作動油タンク37に開放され、制御圧力はタンク圧(ほぼ0)になる。
【0048】
流路選択電磁弁65が絞り位置Dに切り替えられると管路104を絞り付き管路63に接続し、インチングバルブ36の下流側を固定絞り62を介して作動油タンク37に接続する。これにより、インチングバルブ36が開放状態にあったとしても、管路100,101には、固定絞り62の開口面積に応じたインチングバルブ36が閉じているときの制御圧力よりも低い中立解除用の制御圧力が発生する。
【0049】
なお、流路選択電磁弁65の下流側の管路63に固定絞り62を設ける代わりに流路選択電磁弁65を絞り位置Dに切り替えたときの流路選択弁65の内部管路に固定絞りを設けてもよい。
【0050】
図2は本実施の形態の変速システムが搭載される走行式作業機械の一例として、テレスコピックハンドラー(別名リフトトラック)の外観を示す図である。
【0051】
図2において、テレスコピックハンドラーは、車体41と、車体41上に位置する運転室42と、車体41に運転室42の側部を起伏可能に取り付けられ、伸縮可能なブーム43と、ブーム43の先端に回動可能に取り付けられた先端部44と、その先端に取り付けられた荷役作業に用いるフォーク45とを備えており、ブーム43と先端部44とフォーク45は作業装置を構成している。また本図では、省略しているが、ブーム43、先端部44及びフォーク45にはそれぞれ油圧アクチュエータが取り付けられ、各作業部材はこの油圧アクチュエータにより駆動される。
【0052】
想像線はブーム43を上げた状態と、ブーム43を上げかつ伸長した状態を示している。このときブーム43を上げた状態にしても、フォーク45の姿勢は変わらない。
【0053】
車体41には前輪46及び後輪47が取り付けられ、前輪46及び後輪47はHSTシステム4を備えた変速システムにより駆動される。
【0054】
図3は本実施形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【0055】
図3において、本実施の形態の変速システムはコントローラ70を有し、コントローラ70は通常制御部75と中立解除制御部76とを有している。
【0056】
通常制御部75は前後進切替レバー装置77とON/OFF式のシフトスイッチ72からの信号を入力し、所定の演算処理を行ない、前後進切替弁35と変速用電磁弁53、及びシフト位置表示装置67の動作を制御する。
【0057】
前後進切替レバー装置のレバー71(以下前後進切替レバーという)はN(中立)位置とF(前進)位置とR(後進)位置の3位置に切り替え操作可能であり、前後進切替レバー71がN位置にあるときは、通常制御部75は前後進切替弁35に信号を出力せず、前後進切替弁35はN(中立)位置に保たれる。
【0058】
前後進切替レバー71がF位置に操作されると、通常制御部75は、前後進切替弁35にF位置駆動信号を出力し、前後進切替弁35をF位置に切り替える。前後進切替レバー71がR位置に操作されると、通常制御部75は、前後進切替弁35にR位置駆動信号を出力し、前後進切替弁35のバルブ位置をR位置に切り替える。
【0059】
シフトスイッチ72はオペレータが指で押したときにのみON信号を出力するモーメンタリ動作のスイッチであり、通常制御部75はシフトスイッチ72が押されてON信号を出力する都度、変速用電磁弁53を低速位置Aから高速位置B、或いはその逆に切り替える。また、通常制御部75は、変速用電磁弁53を低速位置Aに切り替えたときはシフト位置表示装置67の低速表示ランプ67aを点燈し、変速用電磁弁53を高速位置Bに切り替えたときはシフト位置表示装置67の高速表示ランプ67bを点燈する。
【0060】
中立解除制御部76は、シフトスイッチ72とニュートラルスイッチ61からの信号を入力し、所定の演算処理を行い、流路選択電磁弁65と警報音発生装置66、シフト位置表示装置67の動作を制御する。
【0061】
図4は中立解除制御部76の処理機能を示すフローチャートである。
図4において、まず、シフトスイッチ72が操作されたかどうかを検出する(ステップS101)。この検出はシフトスイッチ72のON信号の入力を見ることにより行なう。シフトスイッチ72が操作されていない場合には、次の処理手順には進まない(ステップS102)。シフトスイッチ72が操作された場合はニュートラルスイッチ61がONになったかどうかを判定する(ステップS103)。ニュートラルスイッチ61がOFFの場合には、処理を終了する(ステップS102)。ニュートラルスイッチ61がONの場合には、警報音発生装置66を作動し、かつ選択した変速位置に該当するランプ67a又は67bを点滅し(ステップS104)、流路選択電磁弁65をONにする(ステップS105)。
【0062】
続いて、ニュートラルスイッチ61がOFFになったかどうかを検出する(ステップS106)。ニュートラルスイッチ61がONのままであれば処理を繰り返し(ステップS105)、ニュートラルスイッチ61がOFFになれば、警報音発生装置66を停止し、かつ選択した変速位置に該当するランプ67a又は67bを点燈し(ステップS107)、流路選択電磁弁65をOFFにし(ステップS108)、処理を終了する(ステップS109)。
【0063】
次に本実施の形態の走行式作業機械の変速システムの動作について説明する。
【0064】
通常、走行式作業機械の変速操作はブレーキペダル38を踏み操作し、走行式作業機械を停止した状態にして行われる。このとき、前述したようにブレーキペダル38とインチングバルブ36が連動しているため、インチングバルブ36は全開となり、管路100,101の制御圧力が低下し、HST2の油圧ポンプ11の傾転は中立位置(傾転角ゼロ)となり、その結果油圧モータ12は停止する。
【0065】
この状態で、オペレータがシフトスイッチ72を操作すると、コントローラ70の通常制御部75から変速用電磁弁53に指令信号が入力され、変速用電磁弁53が切り替えられ、変速ピストンシリンダ54のピストンが作動する。これによりシフトスリーブ23が移動し、通常はシフトスリーブ23が低速段ギヤ列21側又は高速段ギヤ列22側のスプラインと噛み合い、変速動作が終了する。しかし、前述したように、出力ギヤ21b又は22bとシフトスリーブ23のスプライン歯の山同士が正対し、噛み合わない状態が発生することがある。
【0066】
この場合、ニュートラルスイッチ61が作動し、コントローラ70の中立解除制御部76にON信号を送信する。コントローラ70の中立解除制御部76はこのON信号を受けて、警報音発生装置66を作動し、警報音を発生するとともに、選択した変速位置に該当するランプ67a又は67bを点滅する(図4のステップS101〜S104)。また、流路選択電磁弁65を開放位置Cから絞り位置Dに切り替え(図4のステップS105)、管路104の下流側を絞り付き管路63に接続する。これにより絞り付き管路63が選択され、その固定絞り62により管路100,101に中立解除用の制御圧力が発生する。
【0067】
オペレータは警報音及びランプの点滅により、噛み合いクラッチ式変速機5が中立状態にあることを知り、前後進切替レバー71をF位置又はR位置に切り替える。このとき管路100,101には中立解除用の制御圧力が発生しているため、前後進切替弁35をF位置又はR位置に切り替えると、傾転制御シリンダ15が駆動され、油圧ポンプ11の傾転角が増加する。これにより油圧ポンプ11は圧油を吐出し、油圧モータ12は低速で回転する。
【0068】
油圧モータ12が回転すると、油圧モータ12に接続された入力軸25を介して入力ギヤ21a,22aが回転し、これに噛み合う出力ギヤ21b,22bが回転し、正対していたスプライン歯の山同士がずれて噛み合い、変速動作が完了する。
【0069】
変速動作が完了するとニュートラルスイッチ61はON信号の出力を停止し(図4のステップ106)、コントローラ70の中立解除制御部76は警報音発生装置66の作動を停止するとともに、切り替えた変速位置に該当するランプ67a又は67bを点燈する(図4のステップS107)。また、流路選択電磁弁65を元の開放位置Cに戻す(図4のステップS108)。
【0070】
また、万一、ニュートラルスイッチ61の誤動作により、正常な変速状態でON信号が発生したとしても、コントローラ70の中立解除制御部76はシフトスイッチ72のON信号を入力し、シフトスイッチ72のON信号が入力されたときのみ制御フローに入るため、流路選択電磁弁65と警報音発生装置66及び表示ランプが誤動作することがなく、動作の信頼性を確保することができる。
【0071】
以上のように本実施の形態によれば、噛み合いクラッチ式変速機5の変速動作時に、ニュートラルスイッチ61からのON信号により、変速動作が完了していないことが検出されると、流路選択電磁弁65を絞り位置Dに切り替えて、管路100,101に中立解除用の制御圧力を発生し、油圧モータ12を低速で回転して、変速動作を完了することができるので、オペレータは噛み合いクラッチ式変速機5の変速操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0072】
また、流路選択電磁弁65をHST2の制御用油圧回路3のインチングバルブ36の下流に設けたので、オペレータがブレーキペダル38を踏み操作して、インチングバルブ36が開いた状態を前提として、絞り付き管路63を機能させ、中立解除用の制御圧力を発生させることができ、オペレータは噛み合いクラッチ式変速機5の変速操作を安全に行うことができる。
【0073】
また、中立解除制御部76はシフトスイッチ72が操作されたかどうかを検出し、操作された場合にのみその後の処理を実行するようにしたため、ニュートラルスイッチ61の誤作動による流路選択電磁弁65の切り替えが防止され、機器の信頼性が向上する。
【0074】
本発明の第2の実施の形態を図5及び図6により説明する。
【0075】
図5は本実施形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【0076】
図5において、本実施の形態の変速システムはコントローラ70Aを有し、コントローラ70Aは通常制御部75と中立解除制御部76Aとを有している。
【0077】
通常制御部75の機能は第1の実施形態のものと同じである。
中立解除制御部76Aは、前後進切替レバー装置77とシフトスイッチ72とニュートラルスイッチ61からの信号を入力し、所定の演算処理を行い、前後進切替弁35と流路選択電磁弁65と警報音発生装置66及びシフト位置表示装置67の動作を制御する。
【0078】
図6は中立解除制御部76Aの処理機能を示すフローチャートである。
図6において、中立解除制御部76Aは、シフトスイッチ72が操作され、ニュートラルスイッチ61がONで、警報音発生装置66を作動させた(ステップS101〜S104)後、流路選択電磁弁65をONにする(ステップS105)前に、前後進切替レバー71がF位置又はR位置にあるかどうかを判定し(ステップS205)、前後進切替レバー71がF位置又はR位置にない場合には、自動的に前後進切替弁35のF側を励磁し(ステップS206)、前後進切替弁35をF(前進)位置に切り替える。それ以外は図4に示すフローチャートによる中立解除制御部76の処理機能と同じである。
【0079】
以上のように構成した本実施の形態においては、中立解除制御部76において、シフトスイッチ72の操作による変速操作が行われた場合に、ニュートラルスイッチ61からのON信号により変速動作が完了していないことが検出されると、前後進切替レバー71のレバー位置を検出し、前後進切替レバー71がN位置にあるときには、自動的に前後進切替弁35をF位置に切り替える(図6のステップS206)制御が行われる。これにより、制御前の前後進切替レバー71のレバー位置にかかわらず、自動的に油圧ポンプ11の傾転角が増加して、油圧モータ12が回転し、変速動作が完了する。これにより、オペレータは前後進切替レバー71の煩わしい操作を行うことなく、確実に変速操作を行うことができる。
【0080】
本発明の第3の実施の形態を図7及び図8により説明する。
図7は本実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
図7において、本実施の形態の変速システムはコントローラ70Bを有し、コントローラ70Bは通常制御部75Aと中立解除制御部76Bとを有している。
【0081】
通常制御部75Aは前後進切替レバー装置77とシフトスイッチ72と中立解除制御部76Bからの信号を入力し、所定の演算処理を行い、前後進切替弁35と変速用電磁弁53及びシフト位置表示装置67の動作を制御する。
【0082】
中立解除制御部76Bは、シフトスイッチ72及びニュートラルスイッチ61と、ブレーキペダル38のペダル位置を検出するペダル位置検出装置73からの信号を入力し、所定の演算処理を行い、流路選択電磁弁65と警報音発生装置66及びシフト位置表示装置67の動作を制御する。また、通常制御部75Aにシフトスイッチ72の操作の有効、無効に関する信号を送る。
【0083】
図8は中立解除制御部76Bの処理機能を示すフローチャートである。
図8において、中立解除制御部76Bは、まず、最初にペダル位置検出手段73からの信号によりブレーキペダル38が踏み操作されたかどうかを判断し(ステップS301)、ブレーキペダル38が踏み操作された場合は、シフトスイッチ72のON信号があるかどうかを判断する処理(ステップS101)に進み、ブレーキペダル38が踏み操作されていない場合にはシフトスイッチ72の操作を無効にする信号を通常制御部75Aに送り、次の処理(ステップS101)には進まない。それ以外の処理機能は図4に示すフローチャートによる中立解除制御部76と同じである。
【0084】
通常制御部75Aはシフトスイッチ72の操作を無効にする信号を受け取ると、シフトスイッチ72からのON信号があっても、変速用電磁弁53を切り替えない。
【0085】
以上のように構成した本実施の形態においては、中立解除制御部76において、ブレーキペダル38が踏み操作されたかどうかを検出し、ブレーキペダル38が踏み操作されていない場合には、シフトスイッチ72の操作が無効となり、変速操作を不可能とし、ブレーキペダル38を踏み操作したときのみ変速操作を可能とするので、オペレータの誤作動による走行中の噛み合いクラッチ式変速機5の切り替えが防止され、一層の安全確保と変速機の保護が可能となる。
【0086】
本発明の第4実施形態を図9及び図10により説明する。
図9は本実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
図9において、本実施の形態の変速システムはコントローラ70Cを有し、コントローラ70Cは通常制御部75Aと中立解除制御部76Cとを有している。
【0087】
通常制御部75Aの機能は第3の実施形態のものと同じである。
【0088】
中立解除制御部76Cは、前後進切替レバー装置77とシフトスイッチ72とニュートラルスイッチ61とペダル位置検出装置73からの信号を入力し、所定の演算を行い、前後進切替弁35と流路選択電磁弁65と警報音発生装置66とシフト位置表示装置67の動作を制御する。また、通常制御部75Aにシフトスイッチ72の有効、無効に関する信号を送る。
【0089】
図10は中立解除制御部76Cの処理機能を示すフローチャートである。
図10と図6及び図8との比較から分かるように、中立解除制御部76Cは図6に示すフローチャートによる中立解除制御部76Aの処理機能と、図8に示すフローチャートによる中立解除制御部76Bの処理機能を組み合わせたものである。
【0090】
従って本実施の形態によれば第2の実施の形態及び第3の実施の形態の両方の効果が得られる。
【0091】
本発明の第5の実施の形態を図11により説明する。
本実施の形態の変速システムの制御系は図9に示した第4の実施の形態のものと同じであり、便宜上、各部分に同じ符号を付して説明する。本実施の形態において、コントローラ70Dは通常制御部75Aと中立解除制御部76Dとを有している。
【0092】
通常制御部75Aの機能は第3の実施の形態のものと同じである。
【0093】
図11は中立解除制御部76Dの処理機能を示すフローチャートである。
図11において、図10に示すフローチャートによる中立解除制御部76Cの処理機能に対する中立解除制御部76Dの処理機能の動作との相違点は、ステップS510、S511の処理が追加された点である。つまり、シフトスイッチ72が操作され、ニュートラルスイッチ61がONで、警報音発生装置66が作動し、流路選択電磁弁65がONに切り替えられた(ステップS301〜S105)後、ニュートラルスイッチ61のON信号の出力時間が一定時間(例えば2秒)以上経過したかどうかを検出し(ステップS106,S510)、当該時間が一定時間(2秒)以上経過していなければ流路選択電磁弁65をONにする処理を繰り返し(S105)、一定時間以上経過した場合には、流路選択電磁弁65を開放位置Cに戻して、中立解除の制御を中止し、かつ変速用電磁弁53及びシフト位置表示装置67をシフトスイッチ72が押される前の状態に戻す(ステップS511)。
【0094】
シフトスイッチ72を押して、変速用電磁弁53を切り替え、変速動作を行わせるとき、作業機のサービスブレーキ等の影響や坂道での作業機の自重により、出力軸26に駆動力が生じている場合は、元のギヤのスプラインからスリーブ23が抜けない場合がある。この状態で、ニュートラルスイッチ61がON信号を出して、中立解除制御により、油圧モータ12が回転すると、出力軸26に駆動力が発生し、作業機械が走行する可能性がある。
【0095】
以上のように本実施の形態によれば、中立解除制御部76においてニュートラルスイッチ61の作動時間を検出し、作動時間が一定時間経過すると自動的に中立解除制御を中止し、変速用電磁弁53及びシフト位置表示装置67を元の状態に戻すので、変速動作でスリーブ23がスプラインから抜けない場合の、作業機械の意図しない走行を防止し、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態による走行式作業機械の変速システムの油圧回路図である。
【図2】本発明による走行式作業機械の変速システムの適用例であるテレスコピックハンドラの側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの中立解除制御部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの中立解除制御部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの中立解除制御部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの制御系を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの中立解除制御部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第5の実施の形態による走行式作業機械の変速システムの中立解除制御部で行われる処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン(原動機)
2 HST
3 制御用油圧回路
5 噛み合いクラッチ式変速機
6 制御用油圧回路
11 油圧ポンプ
12 油圧モータ
15 傾転シリンダ(傾転制御機構)
21 低速段ギヤ列
22 高速段ギヤ列
23 シフトスリーブ
54 変速ピストンシリンダ
25 ギヤ入力軸
26 出力軸
31 チャージポンプ
32 パイロットリリーフ弁
33 固定絞り
34 制御圧力調整弁
35 前後進方向切替弁
36 インチングバルブ
38 ブレーキペダル
51 パイロットポンプ
52 パイロットリリーフ弁
53 変速用電磁弁
61 ニュートラルスイッチ(中立検出手段)
62 絞りなし回路
63 絞り付き回路
64 固定絞り
65 流路選択電磁弁(流路選択弁)
66 警報音発生装置
67 シフト位置表示装置
70 コントローラ
71 前後進切替レバー
72 シフトスイッチ(シフト操作手段)
73 ペダル位置検出装置
75 通常制御部
76 中立解除制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機により駆動される両傾転型の油圧ポンプ及びこの油圧ポンプに閉回路接続された油圧モータを有するHSTと、このHSTの油圧ポンプに設けられた傾転制御機構を駆動制御するHST制御用油圧回路と、前記HSTの油圧モータに接続され、シフト操作手段により操作される噛み合いクラッチ式変速機とを備え、
前記HST制御用油圧回路は、前記傾転制御機構を駆動するための制御圧力を生成する制御圧力発生回路と、この制御圧力発生回路と前記傾転制御機構との間に配置された前後進切替弁と、ブレーキペダルの操作に連動して開き、前記制御圧力発生回路の制御圧力を作動油タンクに導くインチングバルブとを有する走行式作業機械の変速システムにおいて、
前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作が完了したかどうかを検出する中立検出手段と、
前記HST制御用油圧回路の前記インチングバルブの下流側に配置され、絞り付き回路と絞りなし回路を選択可能な流路選択弁と、
前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されないときは、前記流路選択弁を前記絞り付き回路を選択する位置に切り替え、それ以外のときは前記流路選択弁を前記絞りなし回路を選択する位置に保持する中立解除制御手段とを備えることを特徴とする走行式作業機械の変速システム。
【請求項2】
請求項1記載の走行式作業機械の変速システムにおいて、
前記中立解除制御手段は、前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されないときは、前記流路選択弁を前記絞り付き回路を選択する位置に切り替えるとともに、前記前後進切替弁を前進位置、後進位置のいずれかに切り替えることを特徴とする走行式作業機械の変速システム。
【請求項3】
請求項1記載の走行式作業機械の変速システムにおいて、
前記中立解除制御手段は、前記シフト操作手段が操作されたかどうかを判断し、前記シフト操作手段が操作されていないときは処理を終了することを特徴とする走行式作業機械の変速システム。
【請求項4】
請求項1記載の走行式作業機械の変速システムにおいて、
前記ブレーキペダルが操作されたかどうかを検出するブレーキ操作検出手段を更に備え、
前記中立解除制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段によりブレーキペダルの操作が検出されないときは、前記シフト操作手段の操作による噛み合いクラッチ式変速機の切り替えを無効とすることを特徴とする走行式作業機械の変速システム。
【請求項5】
請求項1記載の走行式作業機械の変速システムにおいて、
前記中立解除制御手段は、前記中立検出手段により前記噛み合いクラッチ式変速機の変速動作の完了が検出されない状態が一定時間継続したときは、前記噛み合いクラッチ式変速機及び前記流路選択弁を前記シフト操作手段の操作前の状態に戻すことを特徴とする走行式作業機械の変速システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−105268(P2006−105268A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292560(P2004−292560)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】