説明

走行状態判定装置

【課題】車線変更の終了を高精度に判定する走行状態判定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両の車線変更を判定する走行状態判定装置であって、車線変更の開始検出後、車両の方位角と走行路の方位角との差の変化量が閾値以下の場合(つまり、車両の方位角と走行路の方位角との差が略一定になった場合)に車線変更が終了したと判定することを特徴とし、センサによる方位角の検出誤差によって車線変更終了後に車両の方位角と走行路の方位角との差が0にならない場合でも車線変更の終了を高精度に判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車線変更を判定する走行状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバが車線変更を行う場合、車線変更の開始前にターンシグナルスイッチで車線変更する側をONし、車線変更の終了後にターンシグナルスイッチをOFFする。しかし、車線変更の終了後にターンシグナルスイッチをOFFしないドライバが多くみられる。そこで、車線変更の終了後にターンシグナルスイッチのOFFし忘れをドライバに知らせるための装置が提案されている。この場合、車線変更を高精度に判定することが重要となる。例えば、特許文献1に記載の装置では、車両の方位を検知し、その検知した方位の変化量のパターンを算出し、方位変化量パターンと予め設定されている基準変化量パターン(車両が直進方向から左又は右に旋回し、再び直進方向になるパターン)とを比較することによって車線変更の有無を判定する。
【特許文献1】特開平10−332389号公報
【特許文献2】特開2005−122274号公報
【特許文献3】特開2005−170067号公報
【特許文献4】特開2004−299649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように車両の方位角だけで車線変更を判定した場合、車線変更かあるいは曲線路走行かの区別ができない。そこで、車両の方位角と走行路の方位角との差から車線変更を判定し、車線変更と曲線路走行とを区別することが考えられる。この場合でも、車両の方位角あるいは走行路の方位角を検出するためのGPSやジャイロなどの方位センサに検出誤差があると、車線変更の終了後に車両の方位角と走行路の方位角との差が0にならないので、車線変更の終了を高精度に判定できない場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、車線変更の終了を高精度に判定する走行状態判定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る走行状態判定装置は、車両の車線変更を判定する走行状態判定装置であって、車線変更の開始検出後、車両の方位角と走行路の方位角との差分の変化量が閾値以下の場合に車線変更が終了したと判定することを特徴とする。
【0006】
この走行状態判定装置では、車両の車線変更開始判定後に、車両が走行しているときの車両の方位角と走行路の方位角との差を順次演算し(例えば、一定時間毎に差を演算し)、その順次演算している差の変化量を求める。そして、走行状態判定装置では、その求めた差の変化量が閾値以下か否かを判定し、差の変化量が閾値以下の場合には車線変更が終了したと判定する。閾値は、車両の方位角と走行路の方位角との差が略一定(一定を含む)になっていることを判定するための閾値であり、0に近い値(0でもよい)である。車線終了後、理想的には車両の方位角と走行路の方位角との差は0になる。しかし、検出手段によって検出された車両の方位角あるいは走行路の方位角に検出誤差がある場合、車線変更の終了後でも車両の方位角と走行路の方位角との差は0にならないが、車両の方位角と走行路の方位角との差はその検出誤差分で略一定となり、変化しない。したがって、車両の方位角と走行路の方位角との差が0にならない場合でも、車線変更開始後に車両の方位角と走行路の方位角との差の変化量が閾値以下になったときには車線変更が終了したと判定できる。このように、この走行状態判定装置では、車両の方位角と走行路の方位角との差の変化量を用いて判定することにより、車線変更の終了を高精度に判定することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、車線変更の終了を高精度に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係る走行状態判定装置の実施の形態を説明する。
【0009】
本実施の形態では、本発明に係る走行状態判定装置を、車線変更終了後のターンシグナルの消し忘れを防止するためのターンシグナル消し忘れ防止装置に適用する。本実施の形態に係るターンシグナル消し忘れ防止装置は、ターンシグナルスイッチのON/OFF情報を用いて車線変更の開始を判定し、車輪速センサの車輪回転パルス情報(自車の方位角)とナビゲーションシステムによる道路情報(走行路の方位角)を用いて車線変更の終了を判定する。そして、本実施の形態に係るターンシグナル消し忘れ防止装置は、車線終了判定後にターンシグナルを消し忘れている場合にはターンシグナルの作動音量を徐々に大きくしてドライバに知らせる。
【0010】
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係るターンシグナル消し忘れ防止装置1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るターンシグナル消し忘れ防止装置の構成図である。図2は、車線変更時の自車の方位角と走行路の方位角との時間変化の一例である。図3は、車線変更時の自車の方位角と走行路の方位角との差の時間変化の一例である。
【0011】
ターンシグナル消し忘れ防止装置1は、自車の方位角と走行路の方位角との差に基づいて車線変更の終了を判定する。特に、ターンシグナル消し忘れ装置1では、車線変更の終了判定を高精度に行うために、自車の方位角と走行路の方位角との差が一定になった場合に車線変更が終了したと判定する。そのために、ターンシグナル消し忘れ防止装置1は、ターンシグナルスイッチ10、車輪速センサ11、ナビゲーションシステム12、側方レーダセンサ13、アンプ20及びECU[Electronic Control Unit]30を備えている。
【0012】
直線路でも曲線路でも、車線変更終了後、自車は走行路に沿って走行するようになる。したがって、自車の方位角及び走行路の方位角が共に正確に検出されている場合、車線変更終了後、自車の方位角と走行路の方位角との差は0あるいは略0になる。しかし、自車の方位角あるいは走行路の方位角をセンサで検出したときに検出誤差があると、検出された方位角が実際の方位角から誤差分オフセットする。そのため、車線変更終了後、自車の方位角と走行路の方位角との差は0にならない。しかし、その誤差分のオフセットは維持されるので、自車の方位角と走行路の方位角との差は、その誤差によるオフセット分で略一定となり、変化しない。
【0013】
図2には、自車が曲線路を走行中に車線変更した場合の自車の方位角VDと自車位置における走行路の方位角RDとの時間変化の一例を示している。この例の場合、走行路の方位角をGPSを用いて検出しており、GPSの誤差のため、検出された走行路の方位角は実際の走行路の方位角から誤差によってオフセットした値となる。そのため、車線変更の開始時点CSでは、自車の方位角VDと走行路の方位角RDとは、一致せず、所定量離れている。また、車線変更の終了時点CEでも、自車の方位角VDと走行路の方位角RDとは、一致せず、所定量離れている。しかし、その所定量は一定に保たれており、自車の方位角VDと走行路の方位角RDとの差が変化しない。
【0014】
図3には、自車が走行中に車線変更した場合の自車の方位角と自車位置における走行路の方位角との差DDの時間変化の一例を示している。この例の場合も、上記と同様に、走行路の方位角を検出するためのGPSに誤差がある。そのため、車線変更の開始時点CSでは、自車の方位角と走行路の方位角との差DDは、誤差による所定量の差を有している。車線変更中、自車は走行路に対して向きを変えるので、自車の方位角と走行路の方位角との差DDは大きく変化する。そして、車線変更の終了時点CEでは、自車の方位角と走行路の方位角との差DDは、誤差による所定量の差に戻り、その所定量を維持する。
【0015】
このように、自車の方位角あるいは走行路の方位角を検出するセンサに誤差がある場合には、車線変更終了後、自車の方位角と走行路の方位角との差は、0にはならないが、所定量で一定となる。そこで、ターンシグナル消し忘れ防止装置1は、この特性を利用して、自車の方位角と走行路の方位角との差の変化量(時間微分値)が略0(0でもよい)になったか否かによって車線変更の終了を判定する。ちなみに、自車の方位角及び走行路の方位角を検出するセンサに誤差がない場合、車線変更終了後、自車の方位角と走行路の方位角との差は、0で一定となる。
【0016】
ターンシグナルスイッチ10は、ドライバによる方向指示(右方向指示ON、左方向指示ON、OFF)を入力するためのスイッチである。ターンシグナルスイッチ10では、ドライバによるスイッチ操作情報をターンシグナル信号としてECU30に送信する。ちなみに、ドライバによってターンシグナルスイッチ10で右方向指示ON操作された場合には右側のターンシグナルが点滅するとともにスピーカから作動音が出力し、左方向指示ON操作された場合には左側のターンシグナルが点滅するとともにスピーカから作動音が出力する。
【0017】
車輪速センサ11は、車両の4輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度(車輪の回転に応じたパルス数)を検出するセンサである。車輪速センサ11では、所定時間毎の車輪の回転パルス数を検出する。そして、車輪速センサ11では、その検出した車輪回転パルス数を車輪速信号としてECU30に送信する。
【0018】
ナビゲーションシステム12は、車両に装備され、自車の現在位置の検出及び目的地までの経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム12では、GPSを利用して現在位置での走行中の道路の方位角を測定あるいは地図データベースから現在位置での走行中の道路の方位角を読み出し、その走行路の方位角をナビ信号としてECU30に送信する。
【0019】
側方レーダセンサ13は、車両の左右の各側部にそれぞれ取り付けられ、ミリ波などの電磁波を利用して自車の側方に存在する障害物(例えば、壁、ガードレール)を検出するためのレーダセンサである。側方レーダセンサ13では、電磁波を水平面内でスキャンしながら自車から側方に向けて送信し、その反射してきた電磁波を受信する。そして、側方レーダセンサ13では、その送受信データに基づいて障害物の有無を判定し、障害物が存在する場合にはその障害物までの距離を演算する。さらに、側方レーダセンサ13では、その障害物の有無情報や障害物までの距離情報をレーダ信号としてECU30に送信する。
【0020】
アンプ20は、車両に備えられるアンプであり、受信した電気信号を増幅し、その増幅した電気信号をスピーカに送信する。特に、アンプ20では、ECU30から作動音量増加信号(電気信号)を受信すると、その作動音量増加信号に応じて増幅し、その増幅した電気信号をスピーカ(図示せず)に送信する。
【0021】
ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[ReadOnly Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなり、ターンシグナル消し忘れ防止装置1を統括制御する。ECU30では、一定時間毎に、ターンシグナルスイッチ10、各輪の車輪速センサ11、ナビゲーションシステム12、側方レーダセンサ13からの各信号を受信する。そして、ECU30では、一定時間毎に、これらの信号に基づいて車線変更の開始を判定するとともに車線変更の開始判定後に車線変更の終了を判定する。さらに、ECU30では、車線変更の終了を判定後にターンシグナルが消し忘れられている場合にはターンシグナル作動音を増量するための信号をアンプ20に送信する。
【0022】
車線変更の開始を判定する処理として、ECU30では、ターンシグナルスイッチ10からのスイッチ操作情報に基づいてスイッチがOFFから右方向指示ON又は左方向指示ONに切り替わった否かを判定する。右方向指示ON又は左方向指示ONに切り替わった場合、ECU30では、車線変更が開始したと判定し、車線変更の終了を判定する処理に移行する。
【0023】
車線変更の終了を判定する処理に移行すると、ECU30では、各輪の車輪速センサ11から各輪の車輪回転パルス数をそれぞれ取得し、右輪の前輪の車輪回転パルス数と後輪の車輪回転パルス数から右輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数を演算するととともに、左輪の前輪の車輪回転パルス数と後輪の車輪回転パルス数から左輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数を演算する。そして、ECU30では、右輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数と左輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数との差を演算し、車輪回転パルス数差N(n)とする。また、ECU30では、ナビゲーションシステム12からの走行路の方位角ψNV(n)を取得する。また、ECU30では、側方レーダセンサ13からの障害物の有無情報及び障害物までの距離情報を取得する。なお、本実施の形態では、(n)のnは、車線変更を開始と判定したときを基点としたカウンタ値であり、n=1が車線変更の開始判定した時点であり、ECU30での処理周期毎に1づつ加算される。このECU30での処理周期は、CPUのクロック周波数に基づいて設定され、非常に短い時間である。
【0024】
次に、ECU30では、式(1)により、今回の処理周期での車輪回転パルス数差N(n)及び車線変更開始判定時点の車輪回転パルス数差N(1)を用いて、車線変更開始判定時点と現在との自車の方位角の変化量ΔψW(n)を演算する。ここでは、自車の現在位置における車線変更開始判定時点の自車の方位角からの相対的な方位角を求めている。
【0025】
【数1】

【0026】
式(1)において、Rはタイヤ半径であり、Tはトレッドであり、Nは車輪1回転当たりのパルス数である。ψ(n)は現在の車両の方位角であり、ψ(1)は車線変更開始判定時点での車両の方位角である。
【0027】
また、ECU30では、式(2)により、今回の処理周期での走行路の方位角ψNV(n)及び車線変更開始判定時点の走行路の方位角ψNV(1)を用いて、車線変更開始判定時点と現在との走行路の方位角の変化量ΔψNV(n)を演算する。ここでは、走行路の現在位置における車線変更開始判定時点の走行路の方位角からの相対的な方位角を求めている。
【0028】
【数2】

【0029】
そして、ECU30では、式(3)により、車線変更開始判定時点と現在との自車の方位角の変化量ΔψW(n)及び車線変更開始判定時点と現在との走行路の方位角の変化量ΔψNV(n)を用いて、自車の方位角と走行路の方位角との差Δψ(n)を演算する。
【0030】
【数3】

【0031】
自車の方位角と走行路の方位角との差Δψ(n)は、車線変更の途中では大きな値となり、車線変更が終了に近づくにつれて小さな値になってゆく。そして、その差Δψ(n)は、車線変更が終了すると、自車の方位角及び走行路の方位角を検出するセンサに誤差がない場合、0あるいは略0になる。しかし、自車の方位角あるいは走行路の方位角を検出するセンサに誤差がある場合、0にならないが、その誤差に応じた所定量に収束する。
【0032】
そこで、ECU30では、自車の方位角と走行路の方位角との差Δψ(n)が閾値C1未満になったか否かを判定する。閾値C1は、自車の方位角と走行路の方位角との差が所定量まで収束したか否かを判定するための閾値であり、車速をパラメータとする関数あるいは車速に応じた各値によって設定される。閾値C1は、方位角を検出するためのセンサの精度などを考慮して設定され、高車速ほど閾値C1として小さい値となる。差Δψ(n)が閾値C1未満となった場合、ECU30では、車線変更が終了した可能性が高いと判定する。一方、差Δψ(n)が閾値C1以上の場合、ECU30では、車線変更中と判定する。
【0033】
車線変更が終了した可能性が高いと判定した場合、ECU30では、式(4)により、前回の処理周期での走行路の方位角ψNV(n−1)、今回の処理周期での走行路の方位角ψNV(n)及び前回の処理周期での自車の方位角の変化量ΔψW(n−1)、今回の処理周期での自車の方位角の変化量ΔψW(n)を用いて、前回(n−1)と今回(n)での自車の方位角と走行路の方位角との差dΔψ(n)/dnを演算する。
【0034】
【数4】

【0035】
前回(n−1)と今回(n)との間は非常に短い時間間隔であるので、前回(n−1)と今回(n)での自車の方位角と走行路の方位角との差dΔψ(n)/dnは、自車の方位角と走行路の方位角との差の時間微分値に相当する。したがって、dΔψ(n)/dnは、自車の方位角と走行路の方位角との差の時間的な変化量を表すことになる。
【0036】
そこで、ECU30では、自車の方位角と走行路の方位角との差の微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2未満になったか否かを判定する。閾値C2は、自車の方位角と走行路の方位角との差の変化量が略0(0でもよい)になったか否かを判定する閾値であり、0に非常に近い値である。差の微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2未満となった場合、ECU30では、車線変更が終了したと判定する。一方、差の微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2以上の場合、ECU30では、車線変更が終了していないと判定する。
【0037】
閾値C1による判定で車線変更中と判定した場合、ECU30では、ターンシグナルスイッチ10でON操作されている側の側方レーダセンサ13からの障害物の有無情報からターンシグナルが点滅している側に障害物が存在するか否かを判定し、さらに、障害物が存在すると判断した場合、障害物までの距離情報に基づいて自車の所定距離内に障害物が存在するか否かを判定する。この所定距離は、壁やガードレールなどの道路に沿って設けられる物体までの距離を考慮して設定される。ターンシグナルが点滅している側に自車から所定距離以内に障害物が存在する場合、ECU30では、車線変更が終了したと判定する。一方、ターンシグナルが点滅している側に自車から所定距離以内に障害物が存在しない場合、ECU30では、車線変更が終了していないと判定する。ここでは、自車がターンシグナル点滅側の車線に車線変更することによってターンシグナル点滅側のガードレールなどに近づいたことを判定することによって、車線変更が終了したか否かを判定する。
【0038】
車線変更が終了したと判定した場合、ECU30では、ターンシグナル作動音の音量の初期値C3にカウンタ値mを乗算し、ターンシグナル作動音の音量の増加量Iを演算する。初期値C3は、ターンシグナルの作動音の通常の音量程度かあるいはそれより少し大きい程度の音量である。そして、ECU30では、その増加量Iを作動音量増加信号としてアンプ20に送信する。なお、本実施の形態では、mは、車線変更を終了と判定したときを基点としたカウンタ値であり、m=1が車線変更の終了判定した時点であり、ECU30での処理周期毎に1ずつ加算される。
【0039】
次に、ターンシグナル消し忘れ防止装置1の動作について説明する。特に、ECU30における処理について図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
ターンシグナルスイッチ10では、ドライバによるスイッチ操作情報を示すターンシグナル信号をECU30に送信している。各輪の車輪速センサ11では、車輪の回転パルス数を検出し、車輪速信号をECU30に送信している。ナビゲーションシステム12では、走行路の方位角を検出し、ナビ信号としてECU30に送信している。各側の側方レーダセンサ13では、自車の側方の障害物を検出し、レーダ信号としてECU30に送信している。ECU30では、処理周期毎に、これらの各信号を受信し、これら各信号による各情報をRAMの所定の領域に書き込む。
【0041】
まず、ECU30では、処理周期毎に、カウンタnとカウンタmを0にリセットするとともに(S1)、RAMの所定の領域から閾値C1,C2及び初期値C3を読み込む。なお、閾値C1については、値を演算するための関数あるいは車速に応じた各値が読み込まれる。また、ECU30では、ターンシグナルスイッチ10からのスイッチ操作情報を読み込み、そのスイッチ操作情報に基づいてOFFから右方向指示ON又は左方向指示ONに切り替わった否かを判定する(S3)。S3にてOFFのまま切り替わっていないと判定した場合、ECU30では、今回の処理周期経過後、S1に戻って次回の処理周期での処理を行う。
【0042】
S3にて右方向指示ON又は左方向指示ONに切り替わったと判定した場合、ECU30では、車線変更が開始したと判定し、車線変更終了判定処理に移行する。まず、ECU30では、カウンタnに1を加算する(S4)。そして、ECU30では、各輪の車輪速センサ11からの車輪回転パルス数を読み込み、右輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数と左輪側の車輪回転パルス数の平均パルス数との差である車輪回転パルス数差N(n)を演算する(S5)。また、ECU30では、ナビゲーションシステム12からの走行路の方位角ψNV(n)を読み込む(S6)。また、ECU30では、ターンシグナル点滅側の側方レーダセンサ13の障害物情報を読み込む(S7)。
【0043】
ECU30では、式(1)により、今回と車線変更開始判定時点の車輪回転パルス数差N(n),N(1)を用いて、車線変更開始判定時点と現在との自車の方位角の変化量ΔψW(n)を演算する(S8)。また、ECU30では、式(2)により、今回と車線変更開始判定時点の走行路の方位角ψNV(n),ψNV(1)を用いて、車線変更開始判定時点と現在との走行路の方位角の変化量ΔψNV(n)を演算する(S9)。
【0044】
ECU30では、式(3)により、自車の方位角の変化量ΔψW(n)及び走行路の方位角の変化量ΔψNV(n)を用いて、自車の方位角と走行路の方位角との差Δψ(n)を演算する(S10)。そして、ECU30では、自車の方位角と走行路の方位角との差Δψ(n)が車速に応じた閾値C1未満か否かを判定する(S11)。
【0045】
S11にて差Δψ(n)が閾値C1未満と判定した場合、ECU30では、式(4)により、前回と今回の走行路の方位角ψNV(n−1),ψNV(n)及び前回と今回の自車の方位角の変化量ΔψW(n−1),ΔψW(n)を用いて、自車の方位角と走行路の方位角との差の微分値dΔψ(n)/dnを演算する(S12)。そして、ECU30では、自車の方位角と走行路の方位角との差の微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2未満か否かを判定する(S13)。S13にて微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2以上と判定した場合、ECU30では、今回の処理周期経過後、S4に戻って次回の処理周期での処理を行う。
【0046】
S11にて差Δψ(n)が閾値C1以上と判定した場合、ECU30では、ターンシグナル点滅側の側方レーダセンサ13の障害物情報に基づいて、ターンシグナル点滅側の所定距離内に障害物が存在するか否かを判定する(S14)。S14にてターンシグナル点滅側の所定距離内に障害物が存在しないと判定した場合、ECU30では、今回の処理周期経過後、S4に戻って次回の処理周期での処理を行う。
【0047】
S13にて微分値dΔψ(n)/dnが閾値C2未満と判定した場合あるいはS14にてターンシグナル点滅側の所定距離内に障害物が存在すると判定した場合、ECU30では、車線変更が終了したと判定し、作動音増加処理に移行する。まず、ECU30では、カウンタmに1を加算する(S15)。そして、ECU30では、初期値C3にカウンタ値mを乗算してターンシグナル作動音量の増加量Iを演算する(S16)。
【0048】
ECU30では、ターンシグナルスイッチ10からのスイッチ操作情報に基づいて右方向指示ON又は左方向指示ONからOFFに切り替わった否かを判定する(S17)。S17にてOFFに切り替わったと判定した場合、ECU30では、処理を終了する。
【0049】
一方、S17にて右方向指示ON又は左方向指示ONのまま切り替わっていないと判定した場合、ECU30では、ターンシグナル作動音量の増加量Iを作動音量増加信号としてアンプ20に送信し、今回の処理周期経過後、S15に戻って次回の処理周期での処理を行う。(S18)。この作動音量増加信号を受信すると、アンプ20では、作動音量増加信号に応じて増幅し、その増幅した電気信号をスピーカに送信する。これによって、スピーカでは、通常より大きな音量かつ時間が経過に伴って徐々に大きくなる音量でターンシグナル作動音を出力する。この作動音の変化によって、ドライバは、ターンシグナルを消し忘れていることに気づき、ターンシグナルスイッチ10でOFF操作する。
【0050】
このターンシグナル消し忘れ防止装置1によれば、自車の方位角と走行路の方位角との差の変化量(微分値)が略0になったか否かによって車線変更の終了を判定することにより、車線変更の終了を高精度に判定することができる。特に、方位角を検出するセンサに誤差があり、車線変更終了後に自車の方位角と走行路の方位角との差が0にならない場合でも、車線変更の終了を判定することができる。また、自車の方位角と走行路の方位角との差を用いて判定しているので、曲線路でも車線変更の終了を判定することができる。
【0051】
また、このターンシグナル消し忘れ防止装置1では、自車の方位角を検出するために殆どの車両に備えられる車輪速センサ11を用いているので、ジャイロなどの方位角を検出するための手段を別途備える必要がなく、コストを低減できる。
【0052】
また、このターンシグナル消し忘れ防止装置1では、自車の側方の障害物情報も用いて車線変更の終了を判定することにより、自車と走行路の方位角で車線変更の終了を判定できない場合でも車線変更の終了を判定することができる。
【0053】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0054】
例えば、本実施の形態ではターンシグナル消し忘れ防止装置に適用したが、VSCやアクティブステアリング装置などの制御ゲインや制御閾値を車線変更の終了の判定結果を考慮して変更するなど、他の装置に適用してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では車両の方位角を4輪の車輪速センサによる車輪回転パルスを用いて取得する構成としたが、舵角センサ、ジャイロなどの他の手段を用いて車両の方位角を取得してもよい。
【0056】
また、本実施の形態ではナビゲーションシステムから走行路の方位角を取得する構成としたが、カメラで撮像した前方画像から検出するなどの他の手段を用いて走行路の方位角を取得してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では車輪速センサを用いて方位角を求める構成としたので、車線変更開始判定時点と現在との相対的な方位角を用いて判定を行ったが、舵角センサなどで検出した方位角を用いた場合には車線変更開始判定時点との相対的な方位角の求める必要はなく、現在の自車の方位角と走行路の方位角との差を用いて判定を行えばよい。
【0058】
また、本実施の形態では車線変更の終了を判定した後にターンシグナルを消し忘れている場合にはターンシグナルの音量を徐々に大きくしていく構成としたが、警告音を出力、消し忘れていることを音声で知らせるなどの他の手段によって消し忘れを知らせるようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態では側方レーダセンサで検出した側方の障害物の検出情報も考慮して車線変更の終了を判定する構成としたが、この処理がなくてもよい。
【0060】
また、本実施の形態ではターンシグナルスイッチのOFFからONによって車線変更の開始を判定する構成としたが、車両の方位角と走行路の方位角を用いて判定するなどの他の方法のよって車線変更の開始を判定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態に係るターンシグナル消し忘れ防止装置の構成図である。
【図2】車線変更時の自車の方位角と走行路の方位角との時間変化の一例である。
【図3】車線変更時の自車の方位角と走行路の方位角との差の時間変化の一例である。
【図4】図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1…ターンシグナル消し忘れ防止装置、10…ターンシグナルスイッチ、11…車輪速センサ、12…ナビゲーションシステム、13…側方レーダセンサ、20…アンプ、30…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車線変更を判定する走行状態判定装置であって、
車線変更の開始検出後、車両の方位角と走行路の方位角との差の変化量が閾値以下の場合に車線変更が終了したと判定することを特徴とする走行状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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