説明

走行車両支援システム

【課題】狭隘で視認距離の確保が困難な区間が連続して続くような中山間地域でも簡単且つ安価に設置することができる走行車両支援システムを提供する。
【解決手段】一方向側から接近する走行車両を検知する第一センサと、他方向側から接近する走行車両を検知第二センサと、前記第一センサと第二センサの間に設置され、一方向側からの走行車両の接近を報知する複数の第一表示器と、他方向側からの走行車両の接近を報知する複数の第二表示器からなり、それぞれの検知信号が400MHz帯の特定小電力無線を用いた無線通信により通信されており、前記複数の第一表示器は、受信する第一検知信号を、その一方側最先の第一表示器から他方側の第一表示器に順次転送していき、前記複数の第二表示器は、受信する第二検知信号を、その他方側最先の第二表示器から一方側の第二表示器に順次転送していくことを特徴とする走行車両支援システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブが連続してあり、視認距離を確保することが困難な中山間地域の道路等において、運転者に対向車の存在を事前に報知するための走行車両支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
中山間地域とは「平野の周辺部から山間部に至る、まとまった耕地が少ない地域(農業白書)」であり、日本ではこのような地域が国土の7割にも及んでいる。中山間地域では、幅員が狭いうえカーブが連続していることにより、視認距離を確保することが困難な未整備の道路が多く存在する。しかし、中山間地域は過疎高齢化がすすんでいることもあり、道路整備の優先度も低く、多くの道路交通問題を有している。
【0003】
そこで、近年、中山間地域における道路整備として所謂1.5車線的道路整備が頻繁に行われている。1.5車線的道路整備とは、2車線や1車線による連続改良と、視認距離を確保するためのカーブの是正やすれ違いを可能とする待避所の設置等の局部改良を効果的に組み合わせて、最小限の改良工事を行う手法である。
1.5車線的道路整備は、経費の面等で有用であるものの、地形条件等により、カーブの是正や待避所の設置といったハード整備が困難な場合も多々あり、場所によっては相互通行が困難な狭隘区間が存在することも多い。
そこで、狭隘区間を警笛区間に指定したり、カーブミラーを設置したりする等の措置が採られている。しかし、警笛区間に指定したとしても実際には警笛を鳴らさない運転者が数多くおり、カーブミラーを設置したとしても複雑な線形のカーブでは運転者は十分に余裕を持って対向車の有無を確認することができず、いずれの場合も安全性の面で問題があった。
【0004】
このような現状に鑑み、走行車両を検知して、検知した走行車両の存在を対向車両に報知する既存の対向車接近表示装置(例えば、下記特許文献1参照)を用いたシステムが開発されている。
具体的には、すれ違いが困難な狭隘区間において、センサで一方向側から接近する走行車両を検知し、他方向側から接近する走行車両の運転者に一方向側から接近する走行車両(対向車両)の存在を事前に報知するものである。当該システムにより、運転者は対向車の存在を事前に認識することができ、すれ違いが困難な狭隘区間での車両の輻輳を予め避けることができる。
【0005】
しかし、当該システムは走行車両を検知する一つのセンサと、対向車両の存在を報知する一つの表示器を一組としており、夫々の組が数十mから数百mの区間を対象にするものであった。そのため、狭隘で視認距離の確保が困難な区間(カーブ等)が連続して存在する場合(例えば、中山間地域等)は、当該区間毎(例えばカーブ毎)に当該システムを設置しなければならならないので、設置作業に手間を要し、多額の設置費用が必要となるという問題を有していた。
【0006】
【特許文献1】特開平11−039591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、狭隘で視認距離の確保が困難な区間が連続して続くような中山間地域でも簡単且つ安価に設置することができる走行車両支援システムを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、一方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第一検知信号を転送する第一センサと、他方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第二検知信号を転送する第二センサと、前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第一検知信号を受信した際に一方向側からの走行車両の接近を報知するための第一報知情報を表示する複数の第一表示器と、前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第二検知信号を受信した際に他方向側からの走行車両の接近を報知するための第二報知情報を表示する複数の第二表示器からなり、前記第一センサ及び前記第二センサがZigBeeを用いて走行車両を検知するセンサであり、前記第一検知信号及び前記第二検知信号が400MHz帯の特定小電力無線を用いた無線通信により通信されており、前記複数の第一表示器は、受信する第一検知信号を、その一方側最先の第一表示器から他方側の第一表示器に順次転送していき、前記複数の第二表示器は、受信する第二検知信号を、その他方側最先の第二表示器から一方側の第二表示器に順次転送していくことを特徴とする走行車両支援システムに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第一表示器と前記第二表示器が一体化して一つの表示器となっていることを特徴とする請求項1記載の走行車両支援システムに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、動力源として太陽電池を利用していることを特徴とする請求項1又は2記載の走行車両支援システムに関する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、一方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第一検知信号を転送する第一センサと、他方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第二検知信号を転送する第二センサと、前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第一検知信号を受信した際に一方向側からの走行車両の接近を報知するための第一報知情報を表示する複数の第一表示器と、前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第二検知信号を受信した際に他方向側からの走行車両の接近を報知するための第二報知情報を表示する複数の第二表示器からなり、前記第一センサ及び前記第二センサがZigBeeを用いて走行車両を検知するセンサであり、前記第一検知信号及び前記第二検知信号が400MHz帯の特定小電力無線を用いた無線通信により通信されており、前記複数の第一表示器は、受信する第一検知信号を、その一方側最先の第一表示器から他方側の第一表示器に順次転送していき、前記複数の第二表示器は、受信する第二検知信号を、その他方側最先の第二表示器から一方側の第二表示器に順次転送していくことにより、一つのセンサで検知した検知信号を、複数の表示器に転送していくことになる。そのため、狭隘で視認距離の確保が困難な区間が連続して存在する場合でも、当該区間毎にセンサを設ける必要がない。その結果、走行車両支援システムの適用区間が長距離にわたる場合でも、設置の労力を少なくし、且つ安価に設置することができる。
さらに、前記無線通信が400MHz帯の特定小電力無線を用いていることにより、混信を少なくすることができる。また、回折による回り込みも生じるので、中山間地域でも確実に通信を行うことができる。また、特定小電力無線は使用するための免許が不要であるという利点も有する。
また、前記第一センサ及び前記第二センサがZigBeeを用いて走行車両を検知するセンサであることにより、省電力化を図ることができるので、中山間地域等でも好適に利用することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記第一表示器と前記第二表示器が一体化して一つの表示器となっていることにより、設置をより容易に行うことができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、動力源として太陽電池を利用していることにより、燃料等を供給する必要がなく、交通の便が悪い中山間地域においても最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る走行車両支援システムについて説明する。
なお、本明細書において、一方向側とは道路の延設方向における一方向側を指し、他方向側とは道路の延設方向における一方向側と反対側を指す。つまり、道路がカーブしたりすることにより、一方向側(又は他方向側)の方位は変化する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る走行車両支援システム(100)を示す図である。
また、本明細書において、一方向側から他方向側(図1紙面右側から左側)へ走行する走行車両を走行車両(A)とし、他方向側から一方向側(図1紙面左側から右側)へ走行する走行車両を走行車両(B)とする。
また、明細書中の第三表示器とは、第一表示器と第二表示器が一体化して一つの表示器となっているものである。つまり、本明細書の第三表示器は、特許請求の範囲おける第一表示器(又は第二表示器)に含まれる。
【0016】
走行車両支援システム(100)は、図1に示すように、四つのカーブ(C1〜C4)を有する道路(R)に設置されており、第一センサ(1)、第二センサ(2)、第一表示器(31,32)、第二表示器(41,42)、第一表示器と第二表示器が一体化した表示器(第一表示器の機能と第二表示器の機能を有する表示器)(5)(以下、第三表示器(5)と称す)を有する。
また、四つのカーブ(C1〜C4)のうち、カーブ(C1,C4)は道路の幅員が狭い狭隘区間であり、走行車両同士すれ違うことが困難な区間である。
なお、第一センサ(1)及び第二センサ(2)を総称してセンサ(S)とし、第一表示器(31,32)、第二表示器(41,42)、第三表示器(5)を総称して表示器(D)とする。
【0017】
第一センサ(1)はカーブ(C1)の一方向側に設置されており、一方向側から接近する走行車両(A)を検知するためのものである。また、第二センサ(2)はカーブ(C4)の他方向側に設置されており、他方向側から接近する走行車両(B)を検知するためのものである。
第一センサ(1)は走行車両(A)を検知した場合、他方向側隣の第一表示器(31)に、走行車両(A)を検知したことを知らせるための第一検知信号を転送する。
また、第二センサ(2)は走行車両(B)を検知した場合、一方向側隣の第二表示器(41)に、走行車両(B)を検知したことを知らせる第二検知信号を転送する。
【0018】
第一表示器(31,32)、第二表示器(41,42)、第三表示器(5)は、第一センサ(1)と第二センサ(2)の間に設置されている。
具体的には、第一表示器(31)はカーブ(C1)の他方向側に、第一表示器(32)はカーブ(C4)の他方向側に設置されており、第二表示器(41)はカーブ(C4)の一方向側に、第二表示器(42)はカーブ(C1)の一方向側に設置されている。また、第三表示装置(5)はカーブ(C2)とカーブ(C4)の間に設置されている。
【0019】
また、第一表示器(31,32)は、第一検知信号を受信した際に一方向側から走行車両(A)が接近してくることを走行車両(A)の対向車両の運転者に報知する第一報知情報を表示する。このとき、第一表示器(31,32)は他方向側から接近する対向車両の運転者が確認できるように、第一報知情報を他方向側に向けて表示する。
また、第二表示器(41,42)は、第二検知信号を受信した際に他方向側から走行車両(B)が接近してくることを走行車両(B)の運転者に報知する第二報知情報を表示する。このとき、第二表示器(41,42)は一方向側から接近する対向車両の運転者が確認できるように、第二報知情報を一方向側に向けて表示する。
また、第三表示器(5)は、第一表示器(31,32)と第二表示器(41,42)の両方の機能を有するものであり、第一検知信号を受信した際には、他方向側に向けて第一報知情報を表示し、第二検知信号を受信した際には、一方向側に向けて第二報知情報を表示する。
【0020】
また、第一センサ(1)が第一検知信号を他方向側隣の第一表示器(31)に転送した後、第一表示器(31)が第三表示器(5)に、第三表示器(5)が第一表示器(32)に第一検知信号を転送する。つまり、第一検知信号が第一センサ(1)から、第一表示器(31)(一方側最先の第一表示器)、第三表示器(5)、第一表示器(32)と順に転送されていく。
そして、第一表示器(31)(一方側最先の第一表示器)、第三表示器(5)、第一表示器(32)と順に第一報知情報が表示されていく。つまり、第一センサ(1)で検知した走行車両(A)の進行方向に向かって順に、第一報知情報が表示されていくこととなる。
【0021】
また、第二センサ(2)が第二検知信号を一方向側隣の第二表示器(41)に転送した後、第二表示器(41)が第三表示器(5)に、第三表示器(5)が第二表示器(42)に第二検知信号を転送する。つまり、第二検知信号が第二センサ(2)から、第二表示器(41)(他方側最先の第二表示器)、第三表示器(5)、第二表示器(42)と順に転送されていく。
そして、第二表示器(41)(他方側最先の第二表示器)、第三表示器(5)、第二表示器(42)と順に第二報知情報が表示されていく。つまり、第二センサ(2)で検知した走行車両(B)の進行方向に向かって順に、第二報知情報が表示されていくこととなる。
【0022】
このように、一つのセンサ(S)で検知した検知信号を、複数の表示器(D)に順に転送していくことにより、狭隘で視認距離の確保が困難な区間が連続して存在する場合でも、当該区間毎にセンサを設ける必要がない。そのため、走行車両支援システム(100)の適用区間が長距離にわたる場合でも、設置の労力を少なくし、安価に設置することができる。
【0023】
また、表示器(D)は、夫々の表示器の前を走行車両(A)(又は走行車両(B))が通過する前に、第一報知情報(又は第二報知情報)を表示するよう設定する。
これにより、走行車両(A)(又は走行車両(B))の対向車両の運転者は、前方から接近する走行車両(A)(又は走行車両(B))の存在を事前に認識することができる。そのため、運転者は対向車両とすれ違う前に、待避所や比較的幅員の広い場所で待機する等の措置をとることができる。また、カーブ(C1〜C4)(特に狭隘区間であるカーブ(C1、C4))における出会い頭の事故の発生を防ぐこともできる。
報知情報を表示するタイミングについては、法定速度や道路(R)の幅員、表示器(D)間の距離等を考慮して適宜設定すればよい。また、センサで走行車両の大きさや速度を検知する場合は、走行車両の大きさ・速度も考慮して、報知情報を表示するタイミングを設定すればよい。また、走行車両がセンサ(S)で検知されてから各表示器(D)まで到達する時間を予め計測しておき、当該時間を基準として設定してもよい。
【0024】
なお、カーブ(C2,C3)は狭隘区域でなく、走行車両同士がすれ違うことができるので、安全性をある程度確保することができるため、カーブ(C2,C3)により死角になる対向車両を事前に認識できなくてもよい。走行車両支援システム(100)では、走行車両(A)がカーブ(C3)を通過する場合、及び走行車両(B)がカーブ(C2)を通過する場合において、対向車両の運転者が事前に走行車両(A,B)を認識できるようにはしていない。
【0025】
また、第三表示器(5)は、第一表示器(31)と第一表示器(32)(又は第二表示器(41)と第二表示器(42))の中継地点の役割も果たすものである。
つまり、第一表示器(31)と第一表示器(32)(又は第二表示器(41)と第二表示器(42))間の距離が無線通信可能距離より長い場合や、第一表示器(31)と第一表示器(32)(又は第二表示器(41)と第二表示器(42))間に障害物がある場合でも、第三表示器(5)を中継することにより、無線通信を行うことができる。
【0026】
センサ(S)及び表示器(D)間の検知信号の通信には400MHz帯(300〜470MHz)の特定小電力無線を用いている。400MHz帯(300〜470MHz)の特定小電力無線を用いることにより、混信を少なくすることができ、さらに、回折による回り込みも生じるので中山間地域等でも確実に通信を行うことができる。つまり、400MHz帯より低い周波数では電波同士が混信してしまい、400MHz帯より高い周波数では直進性が強く、回折による回り込みが期待できないので、いずれの場合も好ましくない。また、特定小電力無線は使用するための免許が不要であるという利点も有する。さらに、特定小電力無線通信のための機器は安価であるため、走行車両支援システム(100)全体を安価にすることができる。
また、出力10mW、400MHz帯の特定小電力無線を用いた場合、約100〜200mの通信を行うことができるので、走行車両支援システム(100)にも適している。
また、400MHz帯(300〜470MHz)の特定小電力無線は無線通信であるため、有線通信と異なり、ケーブルを設置する必要がない。走行車両支援システム(100)は中山間地域等に設置されることが多いが、中山間地域等は交通の便が悪く、有線通信のためのケーブルをひくのは困難であり好ましくないため、有線通信よりも無線通信を用いることが好ましい。加えて、無線通信はケーブルが断線する危険性もない。
【0027】
また、センサ(S)及び表示器(D)間の無線通信は、複数の通信チャンネルを用いて、複数の情報の通信を行ってもよい。それにより、複数の情報を混信させることなく通信させることができる。例えば、一方向側から他方向側への通信と、他方向側から一方向側への通信を異なる通信チャンネルを用いて行うことにより、夫々の通信が混信しないようにすることができる。また、走行車両支援システム(100)以外の通信を行う場合でも、混信を防ぐことができる。
【0028】
次いで、センサ(S)及び表示器(D)の具体的な構成について説明する。
図2は、センサ(S)の一部(検知部(S1,S2)を示す図である。
図3は、表示器(D)を示す図である。
【0029】
センサ(S)は第一検知部(S1)と第二検知部(S2)から構成されている。二つの検知部(S1,S2)は、道路(R)と平行に一定の間隔をあけて設置されている。
センサ(S)が二つの検知部(S1,S2)から構成されていることにより、走行車両がどちらの方向からきたか検知することができる。つまり、第一検知部(S1)が第二検知部(S2)よりも早く走行車両を検知すれば、第一検知部(S1)の方向から走行車両がきたことがわかり、第二検知部(S2)が第一検知部(S1)よりも早く走行車両を検知すれば、第二検知部(S2)の方向から走行車両がきたことがわかる。
また、センサ(S)が二つの検知部(S1,S2)から構成されていることにより、走行車両の大きさも検知することができる。具体的には、二つの検知部(S1,S2)が同時に走行車両を検知する瞬間がある場合は、走行車両の全長が二つの検知部(S1,S2)の間隔(例えば5m)以上であることがわかる。
また、一方の検知部が走行車両を検知してから他方の検知部が走行車両を検知するまでの時間を計測することで、走行車両の速度を検知することもできる。
【0030】
また、検知部(S1,S2)は夫々、図2に示すように、第一無線部(61)、第二無線部(62)、検知信号通信器(63)からなる。そして、第一無線部(61)と第二無線部(62)が道路(R)を挟んで設置されている。
また、第一無線部(61)は第一無線通信素子(611)、受信信号強度(RSSI)測定器(612)、電源(613)を有し、これらがインターフェースボード(614)を介して接続されている。第二無線部(62)は第二無線通信素子(621)、電源(622)を有し、これらがインターフェースボード(623)を介して接続されている。なお、検知信号通信器(63)は第一無線部(61)のRSSI測定器(612)に接続されている。
【0031】
各検知部(S1,S2)では、第一無線通信素子(611)から第二無線通信素子(621)に向けて(道路(R)を横断するように)、検出コマンドを発している。そして、第二無線素子(621)を検出したという応答通知に付加される受信信号強度(RSSI)値をRSSI測定器(612)で測定している。
走行車両(A)(又は走行車両(B))が第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)の間を通過した場合、第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)間の電波が遮断されるので、RSSI測定器(612)で検知したRSSI値は低下する。つまり、RSSI値の低下を検知することにより、走行車両(A)(又は走行車両(B))が第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)間を通過したことを検知する。
また、検知信号通信器(63)により、検知部(S1,S2)間の通信を行ったり、検知信号を第一表示器(31)(又は第二表示器(41))に転送したりする。
【0032】
第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)間の無線通信としてはZigBeeを用いている。ZigBeeとは短距離無線通信規格の一つであり、基礎部分の(電気的な)仕様はIEEE 802.15.4として規格化されたものである。ZigBeeは消費電力が少ないという特徴を持つ。走行車両支援システム(100)は中山間地域等に設置されることが多い。中山間地域等では大量の電力を供給するのが困難であるが、ZigBeeを用いることにより、省電力化を図ることができるので、中山間地域等でも走行車両支援システム(100)を好適に利用することができる。さらに、ZigBeeを用いた機器は安価であるため、走行車両支援システム(100)全体を安価にすることができる。
なお、センサ(S)としては、本実施形態に何ら限定されず、ZigBeeを用いて走行車両を検知するセンサであれば本発明に含まれる。
【0033】
表示器(D)は図3で示すように、検知信号受信器(71)、信号変換器(72)、リレー(73)、表示板(74)、検知信号転送器(75)からなる。また、動力源として電源(図示せず)を有する。
そして、センサ(S)又は他の表示器(D)から転送された検知信号を検知信号受信器(71)で受信し、信号変換器(72)で電気信号に変換し、リレー(73)を介して表示部(74)に報知情報を表示する。このとき、リレー(73)で報知情報を表示するタイミングを調整することができる。検知情報を表示するタイミングは、法定速度や道路(R)の幅員、表示器(D)間の距離等を考慮して適宜設定すればよい。また、センサ(S)で検知した走行車両の大きさ・速度等を考慮して設定することもできる。また、走行車両がセンサ(S)で検知されてから各表示器(D)まで到達する時間を予め計測しておき、当該時間を基準として設定することもできる。なお、走行車両の速度は、センサ(S)で実際に計測したものでなく、走行車両の大きさをもとに推測したものでもよい。
また、表示板(74)に報知情報を表示するとともに、検知信号転送器(75)により検知信号を他の表示器(D)に転送する。
【0034】
表示板(74)としては、視線誘導灯を用いることができる。
また、表示板(74)の表示方法としては、「対向車接近中」等の文字を点灯させてもよいし、単にランプを点灯させるだけでもよい。
また、センサ(S)が複数台の走行車両を検知した場合は(表示器(D)が複数の検知信号を受信した場合は)、「複数台」等の文字を合わせて点灯させたり、ランプを点滅させたりする等して、複数台の対向車両が接近していることを報知することもできる。
また、近くに待避所や比較的幅員の広い場所がある場合は、そこに走行車両を誘導するような文字・図形(矢印等)等を表示してもよい。
さらに、センサ(S)で走行車両の大きさを検知した場合は、当該走行車両の大きさを表示してもよい。
また、表示器(D)がセンサ(S)から遠い位置にある場合は、走行車両が到達するまでの時間の誤差を考慮して、他の表示器(D)の表示板(74)より長い間報知情報を表示してもよい。
【0035】
なお、第三表示器(5)の場合、検知信号受信機(71)は第一検知信号と第二検知信号の両方を検知できるものであり、表示板(74)は第一報知情報と第二報知情報の両方を表示できるものである。
また、第一表示器(32)及び第二表示器(42)は、検知信号を転送する必要がないので、検知信号転送器(75)を設けなくてもよい。
【0036】
また、走行車両支援システム(100)の動力源(具体的には、センサ(S)の電源(613,622)及び表示器(D)の電源)としては、太陽電池が好ましい。太陽電池を用いることにより、燃料等を供給する必要がなく、交通の便が悪い中山間地域においても最適である。
また、特定小電力無線やZigBeeは電力をあまり消費しないので、センサ(S)と表示器(D)間の通信に特定小電力無線を用いたり、センサ(S)にZigBeeを用いたりすることにより、走行車両支援システム(100)の省電力化を図ることができる。そのため、雨や曇りで太陽電池による電力があまり供給されない場合でも、走行車両支援システム(100)を適切に稼動させることができる。
【0037】
次いで、走行車両支援システム(100)の動作について、走行車両(A)が一方向側から他方向側へ走行する場合を例として説明する。
図4は、走行車両(A)が一方向側から他方向側(図1の紙面右側から左側)に走行した場合の走行車両支援システム(100)の動作について示した図である。
【0038】
走行車両(A)が第一センサ(1)に接近すると、第一センサ(1)は走行車両(A)を検知する(動作1)。そして、第一検知信号を第一表示器(31)に転送する(動作2)。
第一表示器(31)は、第一センサ(1)からの第一検知信号を受信した後、第一報知情報を表示する(動作3A)。第一表示器(31)はカーブ(C1)の他方向側にあるので、カーブ(C1)の他方向側を走行している対向車両は、走行車両(A)がカーブ(C1)の一方向側を走行している時点で(走行車両(A)を視認する前に)、第一表示器(31)に表示された第一報知情報を確認することができる。それにより、対向車両の運転者にカーブ(C1)による死角に隠れた走行車両(A)の存在を事前に認識させることができる。その結果、対向車両の運転者は、狭隘区間での出会い頭の事故等を未然に防ぐことができる。
また、第一表示器(31)は第一報知情報を表示するとともに、第三表示器(5)に第一検知信号を転送する(動作3B)。
【0039】
第一検知信号を受信した第三表示器(5)は、第一報知情報を表示するとともに、第一表示器(32)に第一検知信号を転送する(動作4)。第三表示器(5)は、対向車両の運転者に走行車両(A)の存在を事前に認識させる役割とともに、第一表示器(31)と第二表示器(32)の中継地点の役割も果たすものである。
【0040】
第一検知信号を受信した第一表示器(32)は第一報知情報を表示する(動作5)。これにより、対向車は、走行車両(A)の存在を事前に認識することができる。
【0041】
また、走行車両(B)が他方向側から一方向側へ走行する場合は、第二センサ(2)で走行車両(B)を検知し、第二検知信号を第二表示器(41)に転送する。
第二表示器(41)が第二検知信号を受信した後、第二表示器(41)は第二報知情報を表示するとともに、第三表示器(5)に第二検知信号を転送する。
第三表示器(5)が第二検知信号を受信した後、第三表示器(5)は第二報知情報を表示するとともに、第二表示器(42)に第二検知信号を転送する。
第二表示器(42)が第二検知信号を受信した後、第二表示器(42)は第二報知情報を表示する。
走行車両(B)が他方向側から一方向側へ走行する場合、走行車両支援システム(100)が上記したように動作することにより、走行車両(B)が接近していることを、走行車両(B)の対向車両の運転者に事前に認識させることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に何ら限定されない。例えば、センサや表示器の数は上記実施形態と異なる数でもよい。また、上記実施形態では表示器(D)をカーブ一つに対して一方向側及び他方向側に一つずつ(又はいずれかに一つ)設置しているが、カーブが連続してある場合等は、複数の連続したカーブに対して一方向側及び他方向側に一つずつ(又はいずれかに一つ)表示器を設置してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
本実施例では、図2で示す検知部(S1)(又はS2)を用いた。
具体的には、第一無線通信素子(611)及び第二無線通信素子(621)として2.4GHz帯の無線通信(ZigBee通信)を行うことができる日本電気株式会社(NEC)製ZB24FM−E2022を用いた。また、電源(613,622)としてDC3Vの電源を用い、RSSI測定器(612)として、RS−232Cポートを搭載したパソコンを用いた。
また、道路(R)の幅を約3m、第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)の距離を約4m、第一無線通信素子(611)及び第二無線通信素子(621)の地面からの高さを20cmとした。
【0044】
第一無線通信素子(611)と第二無線通信素子(621)の間を走行車両が通過した場合、RSSI測定器(612)で測定したRSSI値が約20db低下することが確認できた。この結果から、ZigBeeがセンサとして利用可能であることがわかる。
【0045】
また、上記実施例で用いたセンサ(S)と図3に示す表示器(D)を特定小電力無線を用いたLANで接続したところ、走行車両が通過することにより、表示板(74)に報知情報が表示されることも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、カーブのために視認距離の確保できない狭隘区間が多く存在する中山間地域の道路等に好適に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る走行車両支援システムを示す図である。
【図2】センサの一部を示す図である。
【図3】表示器を示す図である。
【図4】走行車両が一方向側から他方向側に走行した場合の走行車両支援システムの動作について示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1 第一センサ
2 第二センサ
31,32 第一表示器
41,42 第二表示器
5 第三表示器
100 走行車両支援システム
A,B 走行車両
S センサ
D 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第一検知信号を転送する第一センサと、
他方向側から接近する走行車両を検知し、検知したことを知らせるための第二検知信号を転送する第二センサと、
前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第一検知信号を受信した際に一方向側からの走行車両の接近を報知するための第一報知情報を表示する複数の第一表示器と、
前記第一センサと第二センサの間に設置され、前記第二検知信号を受信した際に他方向側からの走行車両の接近を報知するための第二報知情報を表示する複数の第二表示器からなり、
前記第一センサ及び前記第二センサがZigBeeを用いて走行車両を検知するセンサであり、
前記第一検知信号及び前記第二検知信号が400MHz帯の特定小電力無線を用いた無線通信により通信されており、
前記複数の第一表示器は、受信する第一検知信号を、その一方側最先の第一表示器から他方側の第一表示器に順次転送していき、
前記複数の第二表示器は、受信する第二検知信号を、その他方側最先の第二表示器から一方側の第二表示器に順次転送していくことを特徴とする走行車両支援システム。
【請求項2】
前記第一表示器と前記第二表示器が一体化して一つの表示器となっていることを特徴とする請求項1記載の走行車両支援システム。
【請求項3】
動力源として太陽電池を利用していることを特徴とする請求項1又は2記載の走行車両支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−92114(P2010−92114A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258867(P2008−258867)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】