説明

起床監視装置

【課題】 高度な画像認識技術を導入することなく、医療従事者や見舞い客に行動の制限を与えずに、患者が起床挙動を行っていることを判定できるようにする。
【解決手段】 ベッドに寝ている患者が起床挙動を行ったことを判定するための見守り領域を、ベッドに就寝している患者を含むベッドの直上の領域に設定して、ベッドの横方向から見守り領域を含む撮像領域をカメラにより撮像し、カメラから得られる撮像画像の見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを示す変動値が、患者がベッドに寝ている状態でカメラから得られた撮像画像の見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを示す初期値未満である場合に、患者が起床挙動を行っていると判定するようにしているので、医療従事者や見舞い客を患者と誤認識して変動値が初期値以上になっても患者が起床挙動を行っていると判定しなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者や被介護者がベッドから転落しそうになったり、ベッドを離れて徘徊しそうになったりしたことを監視するための病床監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自力でベッドから降りることができない患者が一人で離床しようとするとバランスを崩してベッドから転落してしまう危険性があった。また、自力でベッドから降りることはできるものの、徘徊癖のある患者などは、一人で離床して徘徊してしまう危険性があった。また、介護施設で介護を受けている被介護者についても、自力でベッドから降りることができない場合には、一人で離床しようとするとバランスを崩してベッドから転落してしまう危険性があった。また、徘徊癖のある被介護者も一人で離床して徘徊してしまう危険性があった。
【0003】
そのため、患者や被介護者(以下、まとめて患者と記載する)を常に監視する必要があった。患者を常に監視する方法として、ベッドに就寝している患者が起床挙動を行ったことを判定する見守り領域を設定してベッドの横方向から見守り領域を含みカメラで撮像し、カメラから得られる撮像画像の見守り領域に占める患者画像領域の大きさが所定値以上の場合に患者が起床挙動を行っていると判定する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−175082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、撮像画像の見守り領域に占める患者画像領域の大きさが所定値以上の場合に患者が起床挙動を行っていると判定するため、患者の看護や介護を行う看護師や介護士(以下、まとめて医療従事者と記載する)、見舞い客などが見守り領域に入ってしまうと、医療従事者や見舞い客の画像領域が患者画像領域に誤認識されてしまうという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するためには、医療従事者や見舞い客と患者とを正確に区別することができるような高度な画像認識技術を使用したり、医療従事者や見舞い客が見守り領域に立ち入らないようにしたりする必要があった。しかしながら、高度な画像認識技術を導入すると、コストが上昇してしまったり、認識速度が遅くなってしまったりして実用的ではなくなってしまうという問題があった。また、医療従事者や見舞い客が見守り領域に立ち入らないようにすると、患者に対して十分な看護や介護が行われなくなってしまったり、見舞い客に不自由な思いをさせてしまったりしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、高度な画像認識技術を導入することなく、医療従事者や見舞い客に行動の制限を与えずに、患者が起床挙動を行っていることを判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、ベッドに就寝している患者が起床挙動を行ったことを判定するための見守り領域を、ベッドに就寝している患者を含むベッドの直上の領域に設定して、ベッドの横方向から見守り領域を含む撮像領域をカメラにより撮像し、カメラから得られる撮像画像の見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが所定値未満である場合に患者が起床挙動を行っていると判定するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが所定値未満である場合に患者が起床挙動を行っていると判定されるので、医療従事者や見舞い客を患者と誤認識して見守り領域に占める患者の画像領域の大きさが所定値以上になっても患者が起床挙動を行っていると判定しなくなる。そのため、医療従事者や見舞い客と患者とを正確に区別することができるような高度な画像認識技術を使用する必要がなくなるとともに、医療従事者や見舞い客が見守り領域に立ち入らないようにする必要もなくなる。従って、高度な画像認識技術を導入することなく、医療従事者や見舞い客に行動の制限を与えずに、患者が起床挙動を行っていることを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態による起床監視装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による起床監視装置のカメラにより撮像される画像の例を示す図である。
【図3】本実施形態による起床監視装置のカメラにより撮像される画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による起床監視装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す起床監視装置は、ベッドが設置された部屋(例えば、病室など)に設置され、患者の起床を検出する子機1と、医療従事者が常駐するナースセンタなどに設置され、患者の起床を報知する親機10とを備えて構成されている。また、子機1は、カメラ2、インターフェース3を備えて構成されている。また、親機10は、親機制御部11、親機インターフェース12、記憶部13、画像判定部14、報知部15を備えて構成されている。
【0012】
病室の側壁には、患者と図2に示す見守り領域を含む撮像領域を撮像するカメラ2が設置されている。カメラ2は、ベッドの横方向(略水平方向)から撮像領域を撮像する。また、カメラ2は撮像した撮像領域を画像データとして出力する。また、カメラ2は常に撮像領域を撮像している。インターフェース3は、子機1と親機10とを接続して通信を行うためのものであり、カメラ2から出力された画像データを親機10に送信する。ここで、画像データには、カメラ2が撮像したベッドを他のベッドと識別するための子機識別情報が含まれる。また、子機1と親機10との間の通信は、有線や無線によって行われる。
【0013】
親機制御部11は、親機10の各構成要素を後述するように制御するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。親機インターフェース12は、親機10と子機1とを接続して通信を行うためのものであり、子機1から送信された画像データを受信する。記憶部13は、メモリやハードディスクドライブなどの記憶装置により構成されており、患者がベッドに居ない初期状態(例えば、図2(A))の画像を示す初期画像データをベッド毎(実際には子機識別情報毎)に記憶する。また、記憶部13は、患者がベッド上に寝ている状態(例えば、図2(B))の画像を示す通常画像データをベッド毎に記憶する。
【0014】
ここで、初期画像データおよび通常画像データには、子機識別情報が含まれる。また、親機制御部11は、カメラ2により撮像され、親機インターフェース12が受信した画像データを記憶部13に随時記憶させる。また、初期画像データは、患者がベッドに寝ていない状態(例えば、入院する前の状態)のベッド周辺をカメラ2で撮像することにより得られる。また、通常画像データは、患者がベッドに寝ている状態(例えば、入院直後の状態)のベッド周辺をカメラ2で撮像することにより得られる。また、親機制御部11は、記憶部13に記憶されている画像データを所定のタイミング(例えば、1時間毎)で消去する。
【0015】
画像判定部14は、記憶部13を参照し、初期画像データと通常画像データとを比較して、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを判定する(これを初期値とする)。一方、画像判定部14は、記憶部13を参照し、初期画像データとカメラ2が随時撮像している画像データとを比較して、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを判定する(これを変動値とする)。そして、画像判定部14は、変動値が初期値未満になったか否かを判定する。
【0016】
報知部15は、患者が起床挙動を行っていることを報知するためのものであり、スピーカや表示装置、表示ランプなどによって構成されている。報知部15は、スピーカから報知音を出力したり、表示装置に報知の内容を表示したり、表示ランプを点灯/点滅したりすることで報知を行う。
【0017】
このように構成された親機10にて、変動値が初期値未満になったと画像判定部14にて判断した場合には(例えば、図2(C)の状態)、親機制御部11は報知部15を動作させて、患者が起床挙動を行っていることを報知する。すなわち、患者がベッドに寝ている状態を示す図2(B)の状態では、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが初期値となるため、親機制御部11は報知部15を動作させない。また、患者がベッドから起床した状態を示す図2(C)の状態では、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが初期値未満となるため、親機制御部11は報知部15を動作させる。これは、患者が起床挙動を行うことにより、患者の上半身の一部が見守り領域を外れてしまうことを示している。
【0018】
一方、患者がベッドに寝ている状態で、かつ、医療従事者や見舞い客が見守り領域に入っている状態を示す図3(A)の状態では、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが所定値以上となるため、親機制御部11は報知部15を動作させない。これは、医療従事者や見舞い客が見守り領域内で患者として誤認識されていることを示す。
【0019】
また、患者がベッドから起床した状態で、かつ、医療従事者や見舞い客が見守り領域に入っている状態を示す図3(B)の状態では、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさが所定値以上となるため、親機制御部11は報知部15を動作させない。これは、患者が起床挙動を行って患者の上半身の一部が見守り領域を外れてしまっていても、医療従事者や見舞い客が見守り領域内で患者として誤認識されていることを示す。しかしながら、例えば、見守り領域に入っている医療従事者や見舞い客が一人などの場合では、図3(C)に示すように、見守り領域を外れた患者の上半身の面積よりも、見守り領域内で患者として誤認識されている医療従事者の面積の方が小さいときには、親機制御部11は報知部15を動作させる。
【0020】
報知部15の報知に気付いた医療従事者は、患者の居る病室に駆けつけ、患者がベッドから転落することを未然に防止することができる。ここで、患者が起床挙動を行っているベッドは、子機識別情報により特定されるので、この子機識別情報を報知部15の表示装置に表示することで、医療従事者は、患者の居る病室を特定することができる。
【0021】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、ベッドに寝ている患者が起床挙動を行ったことを判定するための見守り領域を、ベッドに就寝している患者を含むベッドの直上の領域に設定して、ベッドの横方向から見守り領域を含む撮像領域をカメラ2により撮像し、カメラ2から得られる撮像画像の見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを示す変動値が、患者がベッドに寝ている状態でカメラ2から得られた撮像画像の見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを示す初期値未満である場合に、画像判定部14は、患者が起床挙動を行っていると判定するようにしている。
【0022】
これにより、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを示す変動値が初期値未満である場合に患者が起床挙動を行っていると判定されるので、医療従事者や見舞い客を患者と誤認識して変動値が初期値以上になっても患者が起床挙動を行っていると判定しなくなる。そのため、医療従事者や見舞い客と患者とを正確に区別することができるような高度な画像認識技術を使用する必要がなくなるとともに、医療従事者や見舞い客が見守り領域に立ち入らないようにする必要もなくなる。従って、高度な画像認識技術を導入することなく、医療従事者や見舞い客に行動の制限を与えずに、患者が起床挙動を行っていることを判定することができる。
【0023】
なお、前述した実施形態では、初期画像データや通常画像データ、カメラ2により撮像された画像データを記憶する記憶部13と画像判定部14とを親機に設けているが、これに限定されない。例えば、記憶部13と画像判定部14とを子機に設けるようにしても良い。
【0024】
また、前述した実施形態では、初期画像データと通常画像データとを比較して、見守り領域に占める患者と思われる画像領域の大きさを初期値としているが、これに限定されない。例えば、初期画像データと通常画像データとを比較して、見守り状態に占める患者と思われる画像領域の大きさから、ある程度の大きさを減じた値を初期値とするようにしても良い。これにより、患者がベッド上で寝返りをうったり、患者がベッド上で縮こまったりしても、親機制御部11が報知部15を誤って動作させることがなくなる。
【0025】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 子機
2 カメラ
3 インターフェース
10 親機
11 親機制御部
12 親機インターフェース
13 記憶部
14 画像判定部
15 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに寝ている患者が起床挙動を行ったことを判定するために設定した、前記ベッドの直上の見守り領域を含む撮像領域を撮像するカメラと、
前記カメラで撮像された撮像画像の前記見守り領域に占める前記患者と思われる画像領域の大きさが所定値未満である場合に前記患者が起床挙動を行っていると判定する画像判定部と、
を備えたことを特徴とする起床監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−5171(P2011−5171A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153908(P2009−153908)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】