説明

超微細気泡の生成方法、生成装置及びそれを利用した殺菌・消毒設備

【課題】長期保存可能な超微細気泡を生成する方法および装置と、それを下水処理水の殺菌、消毒設備に適用した水処理装置を提供する。
【解決手段】殺菌消毒水槽1、低圧容器2、微細気泡生成装置3を設ける。殺菌消毒水槽1には、下水処理水が注入され、処理された水が下水再生水排出管から排出される。微細気泡生成装置3によって微細気泡が生成され、低圧容器2に注入される。低圧容器2に注入された微細気泡は、昇圧ポンプ4によって加圧、圧縮され、急激な体積縮小により、長期保存可能な超微細気泡を形成する。この超微細気泡を殺菌消毒水槽1に注入し、超微細気泡15の崩壊にともなう圧力波と水酸遊離基による酸化反応により殺菌処理を行う。超微細気泡の一部が長期保持されて徐々に崩壊することにより消毒効果を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水、下水、河川水、湖沼水、産業排水などの浄化、殺菌、消毒するための装置と、殺菌、消毒設備に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化、殺菌、消毒における微細気泡の利用と効果を示したものとして、非特許文献1がある。また、オゾン水による殺菌効果を示したものとして、非特許文献2がある。
【0003】
まず、非特許文献1の記載に基づき、本明細書で述べる微細気泡と超微細気泡の定義を示す。微細気泡は、マイクロバブルと呼ばれる直径約50マイクロメータ以下の気泡である。一般に、このサイズの気泡は、周囲流体への気泡内気体の溶け込みにより、液中で縮小していき、最終的に約2分で完全溶解する。一方、超微細気泡は、ナノバブルと呼ばれる直径100ナノメータから200ナノメータの気泡である。ナノバブルは、マイクロバブルが縮小し完全溶解する過程において存在するが、通常は縮小を続け完全溶解する。
【0004】
非特許文献1に示されるように、微細気泡(マイクロバブル)に流体力学的刺激を与えて気泡径を急速に縮小させることにより、溶解せず長期にわたって安定的に存在する気泡、すなわち長期保持性を有する超微細気泡(ナノバブル)を生成することができる。微細気泡(マイクロバブル)に物理刺激を与えて気泡径を急速に縮小させることは、圧壊と呼ばれる。
【0005】
また、非特許文献1によれば、微細気泡は周囲液体への溶け込みにしたがって直径が減少するため、表面張力の効果により内部が高圧、高温になり、消滅時に圧力波を生じる。この圧力波によって、細菌、有機物を分解できるため、浄化、殺菌、消毒効果が得られる。また、気泡の溶解において体積に対する表面積比が大きいため、微細気泡は液体への溶解速度を高める効果がある。
【0006】
非特許文献2によれば、気体オゾンの溶け込んだオゾン水は酸化還元電位が高く、強力な殺菌効果を有する。オゾン水の製造に微細気泡を用いれば、溶解速度が高いため、溶解せずに液面から抜ける気泡が減少し、オゾンの利用効率が向上する。しかし、液体中のオゾンは分解し易いため、短時間で濃度が低下する問題がある。
【0007】
これに対して、非特許文献1に示される超微細気泡(ナノバブル:直径約1マイクロメータ以下)は、浮力が小さいため液面から抜けにくい。また、通常の微細気泡は比較的平衡な状態で徐々に液体に溶け込み消滅するが、圧壊した超微細気泡には長期保持特性がある。液体中に大量に超微細気泡を圧壊し生成することにより、例えばオゾン水の濃度を長期間に渡って高く保持することが可能になる。また、直径が小さいため、消滅時の圧力波が大きく、浄化、殺菌、消毒効果も高い。これにより、長期にわたって、殺菌、消毒機能を維持できる効果が得られる。
【0008】
非特許文献1に示されるように、長期保存可能な超微細気泡を生成するためには、微細気泡が液体に溶け込む過程で圧壊と呼ばれる流体力学的な刺激を与える必要があるとしている。
【0009】
【非特許文献1】「水の特性と新しい利用技術」、株式会社エヌ・ティー・エス、142−146ページ、2004年
【非特許文献2】「新版オゾン利用の新技術」、サンユー書房、74−83ページ、1988年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1の従来技術では、超微細気泡の効果と長期保存の可能性を記述しているものの、長期保存可能な超微細気泡の生成するための圧壊、すなわち流体力学的な刺激を与える方法を示していない。
【0011】
非特許文献2に記載の従来技術では、オゾンの分解を考慮して設備容量を増加する必要があり、設備建設の経済性が低下する。また、設備運転時においては、下水処理水の殺菌消毒に生成コストの高いオゾンを使用し、かつ、液体中のオゾンは分解し易く、短時間で濃度が低下する。このため、殺菌、消毒のために多量のオゾンを長期にわたって供給する必要があり、経済性が低下する問題がある。
【0012】
さらに、微細気泡、超微細気泡を用いる殺菌消毒設備では、流入する処理水流量と気泡供給量を適切に制御しない場合、気泡供給の過不足によって、過剰の場合は経済性が低下し、不足の場合は殺菌性能が低下して殺菌消毒設備の信頼性が低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明は、雰囲気圧力より低圧の容器内液体、すなわち減圧環境下において微細気泡を生成し、前記低圧の容器内液体を加圧して微細気泡を圧縮し超微細気泡を生成する。さらに、前記超微細気泡を有する液体を雰囲気圧力まで加圧して雰囲気中に吐出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期保存可能な超微細気泡を利用した殺菌・消毒設備の機能を拡大する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の目的は、気泡が液体中の溶け込む際にその溶解速度を越える非平衡的な圧力刺激を与え、長期保存可能な超微細気泡を生成する方法および装置を提供することにある。
【0016】
本発明は、雰囲気圧力より低圧の容器内液体、すなわち減圧環境下において微細気泡を生成し、前記低圧の容器内液体を加圧して微細気泡を圧縮し超微細気泡を生成する。さらに、前記超微細気泡を有する液体を雰囲気圧力まで加圧して雰囲気中に吐出することを特徴とする。
【0017】
具体的には、低圧の容器はポンプまたは吸引手段によって低圧状態を保持し、雰囲気圧力より低圧の容器内液体に気体を微細気泡生成装置より注入して微細気泡を生成し、この容器内液体をポンプにより加圧して微細気泡を圧縮して超微細気泡を生成し、ポンプによる圧縮過程で低圧容器から雰囲気中に超微細気泡を有する液体を吐出する。前記減圧環境下の流体を加圧して雰囲気中に吐出するポンプとして、昇圧ポンプを用いることが有効であり、特に渦流型ポンプ、渦巻型ポンプ、高圧プランジャー型ポンプなどが望ましい。
【0018】
本発明では、微細気泡が液体に溶け込む際の平衡的な縮小挙動と比較して、急激かつ非平衡的に気泡を圧縮できるので、長期保存可能な超微細気泡を形成するための流体力学的な刺激すなわち圧壊刺激を与えることができる。
【0019】
これにより、長期保存可能な超微細気泡を生成でき、殺菌、消毒機能の効果を持続可能である。例えば、本方法および装置を用いてオゾン超微細気泡を生成し、水道水、下水、河川水、湖沼水、産業排水の水処理に適用することにより、細菌の繁殖を長期にわたって抑制することができ、水質の高い水を供給できる。
【0020】
特に、下水処理水の殺菌、消毒については、処理水を投入する処理水槽を設け、処理水中に超微細気泡を注入する。超微細気泡の上昇速度に釣り合うように処理水の流量を調整し、水槽内において超微細気泡の帯状域を形成する。
【0021】
処理水は、超微細気泡の帯状域を通過する際に、前記の作用により殺菌、消毒される。殺菌、消毒作用を維持するために、光学的、あるいは水力的な差圧計測などを用いて計測した前記帯状域の位置を基に、前記帯状域の液面からの離脱や処理水に同伴した排出などを防止するため、処理水の流量を制御することが有効である。
【0022】
本発明によれば、長期保存可能な超微細気泡を利用した殺菌・消毒設備の機能を拡大する効果がある。
【0023】
また、超微細気泡を利用した殺菌消毒設備において気泡を利用することなく下水処理水の殺菌・消毒が可能になるため、設備容量を最適化でき、下水処理設備の製作に関する経済性を向上する効果がある。
【0024】
また、また、超微細気泡を利用した殺菌消毒設備において気泡使用量を低減できるので、下水処理設備の運転経費に関する経済性を向上する効果がある。
【0025】
また、超微細気泡の生成量を精度よく制御できるため、下水処理設備の信頼性と経済性を向上する効果がある。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は実施例1による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図、図2は圧力分布の概念図、図3はオゾン超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図を示す。
【0027】
図1において、下水処理水の殺菌消毒水槽1、低圧容器2、微細気泡生成装置3が設けられる。殺菌消毒水槽1には、下水処理水注入管21から下水処理水が注入され、処理された水が下水再生水排出管22から排出される。
【0028】
微細気泡装置循環流路8から低圧容器2の水が取り出され、気相管17から流量調整弁13を介して流入した気相と気相混合器12で混合され、微細気泡生成装置3に送られる。本実施例で示した微細気泡生成装置3では、高圧ポンプ11を介した気液二相流せん断方式により微細気泡が生成され、ノズル19から低圧容器2に注入される。微細気泡の発生量は、流量調整弁17と流量調整弁18により調整される。
【0029】
低圧容器2に注入された微細気泡は、昇圧ポンプ4によって加圧、圧縮され、急激な体積縮小により、長期保存可能な超微細気泡を形成する。この超微細気泡が雰囲気圧力に近い殺菌消毒水槽1に注入される。なお、加圧により全ての微細気泡が超微細気泡に変化せず、一部の微細気泡と混合した状態で低圧容器2から気相管14を通じて雰囲気中に吐出される場合がある。
【0030】
注入された超微細気泡15は、その崩壊にともなう圧力波と水酸遊離基による酸化反応により殺菌処理を行い、一部が長期保持されて徐々に崩壊することにより消毒効果を有する。殺菌消毒処理された水(再生水)が、下水再生水排出管22から取り出される。
【0031】
低圧容器2から殺菌消毒水槽1に注入される超微細気泡の流量は、流量調整弁9により調整される。低圧容器2の圧力は、ポンプ4の吸込圧力が負圧であるため雰囲気圧力より低くなるが、さらに低圧にする際には、真空ポンプ5を用い、低圧容器気相部16の気相を廃棄する。また、低圧容器2の圧力は、流量調整弁6によっても調整可能である。
【0032】
図2に、低圧容器2から殺菌消毒水槽1、処理水循環流路7のループに沿った系の圧力分布の一例を示す。0.4気圧に調整された低圧容器2内に、微細気泡生成装置3によって微細気泡を生成する。低圧容器2内の微細気泡は昇圧ポンプ4によって吸い込まれ殺菌消毒水槽1に吐出される。このとき、流量調整弁9の圧力損失により僅かに圧力が低下する。昇圧ポンプ4出口の圧力は大気圧より流れの動圧分だけ高いが、大気開放の殺菌消毒水槽1に放出され、大気圧に静定する。その後、超微細気泡を含む処理水は、処理水循環流路7を通り、大気圧と水頭の和から管路の圧力損失分を減じた圧力で流量調整弁6を通り、低圧容器2に戻る。流量調整弁6では、弁の開度に対応した圧力損失が発生する。
【0033】
この処理水ループでは、昇圧ポンプ4から殺菌消毒水槽1に低い圧力損失で接続するため、加圧圧縮後の超微細気泡がほとんど減圧、膨張することなく殺菌消毒水槽1に送られる。
【0034】
昇圧ポンプ4は、その吸込部に流量調整弁9があり、圧力損失が生じることから、キャビテーションが発生しやすい。このため、耐キャビテーション性能の高い渦流型ポンプ、渦巻型ポンプ、高圧プランジャー型ポンプなどを用いる。また、キャビテーションが発生しないように流量調整弁9の開度を調整する。
【0035】
図3にオゾンを用いた殺菌消毒設備を示す。本実施例の殺菌消毒設備で用いる気相として、オゾンを用いた場合、オゾン発生装置23と廃オゾン処理装置24が必要であり、殺菌消毒水槽1も密閉する必要がある。しかし、オゾンはその強力な酸化作用と微細気泡化による溶解効率により高い殺菌力が得られる効果がある。
【0036】
本実施例の殺菌消毒設備で用いる気相として酸素を用いた場合は、オゾンより酸化力が低いものの、十分な殺菌力が期待される。また、殺菌消毒水槽1の密閉とオゾン発生装置23と廃オゾン処理装置24を設置する必要がない。また、空気を用いた場合においても、超微細気泡崩壊時の圧力波と水酸遊離基による酸化反応により殺菌作用が得られる。
【0037】
本実施例の超微細気泡を利用した殺菌消毒設備によれば、塩素を多用することなく下水処理水の殺菌消毒が可能になるため、下水処理設備の経済性を向上する効果と殺菌消毒性能を向上する効果がある。
【0038】
本実施例の変形例を説明する。図4は実施例1の変形例による殺菌消毒設備の構成図である。図1で示した殺菌消毒設備に対し、遠心分離法や加圧溶解法による微細気泡生成装置を削除し、超音波キャビテーションを利用した微細気泡生成装置を設ける。
【0039】
超音波キャビテーションを利用した装置は、超音波振動子31、ケーブル32、超音波発信機33から構成される。超音波振動子31を用いることにより、均一な径の気泡を発生できる。また、超音波振動子31への電気出力により微細気泡の発生を制御できるので、気泡量の調整が容易である。
【0040】
本実施例の変形例による殺菌消毒設備によれば、超微細気泡の生成量を精度良く制御できるため、下水処理設備の信頼性を向上する効果がある。
【0041】
次に、本発明の実施例2を説明する。図5は実施例2による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図、図6は実施例2によるボイド率検知に基づく殺菌消毒設備の流量制御フロー図である。
【0042】
実施例1で示した殺菌消毒設備において、制御器44を設け、下水処理水注入管21に流量調整弁42と流量計47を、下水再生水排出管22に流量調整弁43と流量計48を取り付ける。また、殺菌消毒水槽1の中央部にボイド率計35を、その上方にボイド率計73を、ボイド率計35の下方にボイド率計74を取り付け、これらボイド率計の計装線を制御器44に接続する。さらに、流量計47と流量計48の計装線を制御器44に接続する。制御器44に流量調整弁42、流量調整弁43を制御線で接続し、制御信号で弁の遠隔操作を行う。
【0043】
制御器44では、殺菌消毒水槽1のボイド率をボイド率計35で計測し、超微細気泡の存在する領域を入力信号として、超微細気泡が上方に移動する場合には流量計47の計測信号を監視しながら流量調整弁42の開度を増し、処理水流入量を増加させる制御を行う。同様に、流量計48の計測信号を監視しながら流量調整弁43の開度を増し、再生水排出量を増加させる制御を行う。一方、超微細気泡が処理水とともに下方に移動する場合には、流量調整弁42と流量調整弁43の開度を減らし処理水流入量と再生水排出量を減少させる制御を行う。
【0044】
ボイド率計の計測値に対する流量制御のフローを図6により説明する。微細気泡集中帯状域41が通常水深にある場合、ボイド率計35が気泡の存在を検知する。
【0045】
ボイド率計35、ボイド率計73及びボイド率計74が全て気泡を検知した場合、気泡は通常水深を中心に上方、下方にわたって存在している状態である。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに現在の開度を保持する信号を制御器44から送る。
【0046】
ボイド率計35とボイド率計73が検知、ボイド率計74が非検知の場合、気泡は通常水深を中心に上方に存在する。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに開度を微増する信号を制御器44から送る。これにより処理水の下降流速が僅かに増加し、微細気泡集中帯状域41が徐々に下降して通常水深付近に停滞する。
【0047】
ボイド率計35とボイド率計74が検知、ボイド率計73が非検知の場合、気泡は通常水深を中心に下方に存在する。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに開度を微減する信号を制御器44から送る。これにより処理水の上昇流速が僅かに増加し、微細気泡集中帯状域41が徐々に上昇して通常水深付近に停滞する。
【0048】
ボイド率計35が検知、ボイド率計73とボイド率計74が非検知の場合、気泡は通常水深に存在する。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに現在の開度を保持する信号を制御器44から送る。
【0049】
ボイド率計35が非検知、ボイド率計73とボイド率計74が検知の場合、気泡は通常水深を挟んで上方、下方の2箇所に存在する。この場合、下方の微細気泡集中帯状域41を通常水深に移して殺菌消毒を行う。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに開度を減ずる信号を制御器44から送る。これにより処理水の下降流速が減少し、微細気泡集中帯状域41が上昇して通常水深付近に停滞する。
【0050】
ボイド率計73が検知、ボイド率計35とボイド率計74が非検知の場合、気泡は通常水深の上方に存在する。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに開度を増加する信号を制御器44から送る。これにより処理水の下降流速が増加し、微細気泡集中帯状域41が下降して通常水深付近に停滞する。
【0051】
ボイド率計74が検知、ボイド率計35とボイド率計73が非検知の場合、気泡は通常水深の下方に存在する。したがって、流量調整弁42、流量調整弁43ともに開度を減少する信号を制御器44から送る。これにより処理水の下降流速が減少し、微細気泡集中帯状域41が上昇して通常水深付近に停滞する。
【0052】
ボイド率計35、ボイド率計73及びボイド率計74が全て非検知の場合、気泡はボイド率計の計測範囲に存在しない。したがって、気泡を通常水深に蓄積するため、流量調整弁42、流量調整弁43ともに現在の開度を保持する信号を制御器44から送る。
【0053】
以上の制御は、水位が低下した場合に流量調整弁42の開度を増加する操作と、水位が上昇した場合に流量調整弁43の開度を増加する操作と組み合わせて実施する。
【0054】
以上の制御により、超微細気泡を殺菌消毒水槽1の中央部に集中し、帯状に集中して配置できる。この微細気泡集中帯状域41では、超微細気泡の間隔が縮小し、ほとんどの超微細気泡が上方から抜けることなく微細気泡集中帯状域41で崩壊する。これにより、微細気泡崩壊時の圧力波と水酸遊離基による酸化反応の密度を増加することができるので、殺菌消毒性能が向上するとともに、気泡の利用効率が向上し、発生気泡量を減らすことができる。
【0055】
本実施例の超微細気泡を利用した殺菌消毒設備によれば、実施例1による効果に加えて、さらに下水処理設備の経済性と殺菌消毒性能を向上できる効果がある。
【0056】
次に、本発明の実施例3を説明する。図7は実施例3による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図である。
【0057】
実施例2で示した殺菌消毒設備において、殺菌消毒水槽1中に板状の超音波振動子45を設け、超音波発信機46により振動子45を駆動する。超音波発信機46は制御器44に制御線で接続され、制御器44の制御信号により超音波振動子45を低周波で振動させることができる。ここで、超音波振動子45は気泡に振動与え、気泡を崩壊、溶解させることを目的とする。超音波発信機46の周波数は、20kHzから100kHz程度を用いる。
【0058】
制御器44では、殺菌消毒水槽1のボイド率をボイド率計35で計測し、ボイド率が規定値に達した時点で、超音波振動を微細気泡集中帯状域41に与える。低周波の超音波の作用により、超微細気泡は短時間に崩壊し、処理水に多量の圧力波と水酸遊離基による酸化反応を与えることができる。本実施例では、圧力波と酸化反応を集中して菌に与えるので、より耐性の高い菌を殺菌できる。一旦気泡が消滅した後は、第2の実施例で示した制御により次の微細気泡集中帯状域41を形成する。
【0059】
本実施例の超微細気泡を利用した殺菌消毒設備によれば、第2の実施例による効果に加えて、さらに殺菌消毒性能を向上できる効果がある。
【0060】
次に、本発明による実施例4を説明する。図8は実施例4による超微細気泡生成装置の概念図である。
【0061】
図1、図3から図7に示した殺菌消毒設備における低圧容器に代わって、プランジャー型の昇圧ポンプ51によって、超微細気泡を生成する。殺菌消毒水槽51には下水処理水注入管61により処理水が流入し、下水再生水排出管62を通じて再生水が流出する。殺菌消毒水槽51の処理水は、処理水循環流路57から流量調整弁56、逆止弁58を通り、昇圧ポンプ52のシリンダ53に入る。
【0062】
昇圧ポンプ52内では、ピストン駆動棒66、ピストン駆動機構67によってピストン65が往復運動し、シリンダ53内の圧力を制御する。シリンダ53内が負圧の時に、微細気泡生成装置63からシリンダ53に微細気泡が吹き込まれる。昇圧ポンプ52のシリンダ53内の圧力は、圧力計74の計測信号を基に、制御器73によって流量調整弁56、流量調整弁59、流量調整弁64を駆動することにより制御する。
【0063】
本実施例では、微細気泡生成装置63をノズルの気相吹き込み形式で表現しているが、気液二相流せん断方式や、加圧溶解液体の減圧方式などの他の微細気泡発生方式を用いても良い。
【0064】
超微細気泡吹き込みのプロセスを、図9により説明する。図9(a)において、ピストン駆動棒66によってピストン65が図中矢印の向きに引かれ、シリンダ53内は流量調整弁56の圧力損失により負圧になる。この時、減圧により水中に溶け込む気相の一部が気化し、シリンダ53内の上部に気相部が形成される。
【0065】
ピストン65が最低点(全引き抜き)に達した時点で、流量調整弁64を開放するように制御し、微細気泡生成装置63から負圧のシリンダ53内に微細気泡が吹き込まれる。
【0066】
予め定めた微小時間経過後、あるいは予め定めた微小ストローク分ピストン65が押し込まれた後、図9(b)に示すように、流量調整弁64を閉じる制御を行う。ピストン駆動棒66によってピストン65が図中矢印の向きに押し込まれ続け、シリンダ53内の微細気泡が加圧されて逆止弁60を通り殺菌消毒水槽に送られる。この時の加圧作用によって、微細気泡が非平衡的に圧縮され、超微細気泡が生成される。
【0067】
図9(c)は、ピストン65が完全に押し込まれた状態を示す。この後、ピストン駆動棒66によってピストン65が図9(a)中の矢印の向きに引かれ、図9(a)の状態に戻って、一連の動作を反復する。本実施例では、昇圧ポンプ自体を超微細気泡生成の低圧容器として利用できるので、設備を簡素化できる利点がある。
【0068】
本実施例の超微細気泡を利用した殺菌消毒設備によれば、第1から第3の実施例による効果に加えて、さらに設備製作の経済性を向上できる効果がある。
【0069】
以上に説明した本実施例の生成方法による超微細気泡は、下水処理だけでなく、上水殺菌消毒、上下水膜処理、健康・医療機器分野や,湖沼や養殖場の水質浄化,工場・畜産等の各種排水処理,および機能水製造などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図。
【図2】殺菌消毒ループの圧力分布図。
【図3】実施例1の殺菌消毒設備にオゾンを用いた場合の構成図。
【図4】実施例1の変形例を示す殺菌消毒設備の構成図。
【図5】本発明の実施例2による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図。
【図6】本発明の実施例2による殺菌消毒設備の流量制御フロー図。
【図7】本発明の実施例3による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図。
【図8】本発明の実施例4による超微細気泡を利用した殺菌消毒設備の構成図。
【図9】本発明の実施例4による超微細気泡吹き込みのプロセス図。
【符号の説明】
【0071】
1…殺菌消毒水槽、2…低圧容器、3…微細気泡生成装置、4…昇圧ポンプ、5…真空ポンプ、6…流量調整弁、7…処理水循環流路、8…微細気泡装置循環流路、9…流量調整弁、11…高圧ポンプ、12…気相混合器、13…流量調整弁、14…気相管、15…超微細気泡、16…低圧容器気相部、17…気相管、18…流量調整弁、19…ノズル、21…下水処理水注入管、22…下水再生水排出管、23…オゾン発生装置、24…廃オゾン処理装置、31…超音波振動子、32…ケーブル、33…超音波発信機、34…ボイド率計、35…ボイド率計、41…微細気泡集中帯状域、42…流量調整弁、43…流量調整弁、44…制御器、45…超音波発信機、46…超音波振動子、47…流量計、48…流量計、51…殺菌消毒水槽、52…高圧ポンプ、53…シリンダ、56…流量調整弁、57…処理水循環流路、58…逆止弁、59…流量調整弁、60…逆止弁、61…下水処理水注入管、62…下水再生水排出管、63…微細気泡生成装置、64…流量調整弁、65…ピストン、66…ピストン駆動棒、67…ピストン駆動機構、71…流量調整弁、72…流量調整弁、73…ボイド率計、74…ボイド率計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部圧力より低圧の低圧容器内の液体に微細気泡を発生させ、前記液体を加圧し微細気泡を圧縮して超微細気泡を生成し、前記加圧された超微細気泡を有する液体を前記低圧容器外の空間に吐出することを特徴とする超微細気泡の生成方法。
【請求項2】
外部圧力より低圧の液体を充填する低圧容器と、前記低圧容器に微細気泡を注入する微細気泡供給装置と、前記低圧容器と外部空間を連通するポンプを設け、前記微細気泡供給装置は前記低圧容器の液体に微細気泡を発生させ、前記ポンプは前記低圧の液体を加圧し前記微細気泡を圧縮して超微細気泡を生成させ、前記加圧された超微細気泡を有する液体を前記ポンプの吐出側から外部空間に吐出するように構成したことを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項3】
請求項2において、前記低圧容器内を負圧によって低圧状態に保持するための吸引手段を設けることを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項4】
請求項3において、前記吸引手段が、第一に前記ポンプの吸込圧を利用し、第二に前記低圧容器に真空ポンプを接続することを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項5】
請求項2において、前記微細気泡供給装置が、気体を加圧して液体に溶解し、次に該液体を減圧して微細気泡を発生するように構成されていることを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項6】
請求項2において、前記微細気泡供給装置が、気液二相流をせん断する方式であることを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項7】
請求項2において、前記微細気泡供給装置が、高周波の超音波を利用する方式であることを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項8】
請求項2において、前記微細気泡の原気体がオゾン、酸素または空気であることを特徴とする超微細気泡の生成装置。
【請求項9】
下水処理水を取り込み殺菌・消毒する殺菌・消毒水槽を備える設備において、
前記殺菌・消毒水槽と昇圧ポンプを介して連通され、雰囲気圧力より低圧の液体を収容する低圧容器と、前記低圧容器の液体に微細気泡を注入する微細気泡生成装置と、前記低圧容器に注入された微細気泡が前記昇圧ポンプによって加圧、圧縮されて超微細気泡を形成して前記殺菌・消毒水槽に注入されるように構成してなることを特徴とする下水処理水の殺菌・消毒設備。
【請求項10】
請求項9において、前記殺菌・消毒水槽内において、下水処理水の下降流を形成し、前記超微細気泡の上昇速度と釣り合わせることにより超微細気泡の集中した帯状域を設け、該帯状域において帯状域を通過する処理水に殺菌、消毒作用を施すことを特徴とする下水処理水の殺菌・消毒設備。
【請求項11】
請求項10において、前記殺菌・消毒水槽の前記帯状域の中央部、上部及び下部にボイド率計を、前記殺菌・消毒水槽の下水処理水を取り込む入口部及び再生下水処理水を排出する出口部にそれぞれ流量調整弁を、これらボイド率計の指示に基いて前記流量調整弁を制御する制御装置を設けたことを特徴とする下水処理水の殺菌・消毒設備。
【請求項12】
下水処理水を取り込み殺菌・消毒する殺菌・消毒水槽を備える設備において、
プランジャー型の昇圧ポンプと、前記殺菌・消毒水槽の処理水を前記昇圧ポンプのシリンダに還流させる第1の逆止弁を有する第1の処理水循環流路と、前記昇圧ポンプのピストンが往復運動するピストン駆動機構と、前記ピストンが引き抜きの時点で、負圧のシリンダに微細気泡を注入する微細気泡生成装置と、前記ピストンが押し込みの時点で前記微細気泡が加圧して生成される超微細気泡が第2の逆止弁を通り前記殺菌・消毒水槽に押出される第2の処理水循環流路を設けることを特徴とする下水処理水の殺菌・消毒設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−272232(P2006−272232A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97907(P2005−97907)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】