説明

超電導機器の冷却システムおよび液化天然ガスタンカ

【課題】 超電導モータを用いて効率の良い推進力を得ると共に、別途の冷熱源や大がかりな冷却装置を用いることなく超電導モータを低温状態に保つことができる超電導機器の冷却システムおよび液化天然ガスタンカを提供するを提供する。
【解決手段】 液化天然ガスを搬送する液化天然ガスタンカの推進装置に用いられる超電導モータを収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導モータを低温状態に保つことができる保冷容器と、気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導機器の冷却システムおよび液化天然ガスタンカに関し、詳しくは、液化天然ガスタンカに搭載された液化天然ガスを用いて推進力を得る液化天然ガスタンカと、この推進力を得るための超電導機器の冷却に利用するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の液化天然ガスタンカ90の構成を示す図であり、この液化天然ガスタンカ90は液化天然ガスを収容するタンク部91と、運搬対照となっている液化天然ガスの温度が高くなって気化した天然ガスを燃焼させて得られる熱を用いて発生させた蒸気により蒸気タービンを回して駆動力を得る蒸気タービン機関92と、この蒸気タービン機関92によって得られた駆動力を液化天然ガスタンカ90の外部に伝達するシャフト93と、この駆動力を用いて推進力を得るプロペラ94と、タンカ90の進行方向を制御するための舵板95とを備える。
【0003】
また、前記液化天然ガスタンカ90では、二重船殻構造(ダブル・ハルと呼ばれている)にすることによりタンク部91を船底から離れた位置に配置して、衝突や座礁事故に伴う搬送物の流出を防止することが行われている。また、特開平10−7071号(特許文献1)には、幾つかの区画に分けてタンク部91a〜91cを形成し、船首部のタンク部91aを船底からより離れた位置に配置することにより、特に衝突時に最も損害を受けやすい部分において、タンク部91aの破損を防止することができることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−7071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の液化天然ガスタンカ90では駆動力を生成する重量のある蒸気タービン機関92が船体の中心に配置され、この蒸気タービン機関92からプロペラ94まで動力を伝達するためのシャフト93を設ける必要があるので、二重船殻構造の形成が難しくなるという問題があった。つまり、蒸気タービン機関92とシャフト93を設けた部分が二重船殻構造の邪魔になり、タンク部91b,91cの容積を小さくせざるを得ないという問題が生じていた。
【0006】
そこで、前記蒸気タービン機関92からの駆動力をそのままプロペラ94に伝達する構成の代わりに、図6に示すように、蒸気タービン機関92から得られた駆動力を発電機96によって一旦電気エネルギーに変換した後に、この電気エネルギーによってポッド型推進装置97を駆動することにより、推進力を得ることが考えられている。このポッド型推進装置97には大型のモータ98を内蔵することによりより大きな推進力を得られるように構成すると共に、これに加えてポッド型推進装置97の数を増やすことによって十分な推進力を得られるようにしていた。
【0007】
しかしながら、大型のポッド型推進装置97を複数形成する場合、その製造コストが引き上げられるだけでなく、各ポッド型推進装置97内のモータ98においてそれぞれ損失が生じるので、燃料消費率が悪くなるという問題があった。そこで、ポッド型推進装置97に設けるモータ98を超電導モータにすることにより、モータの小型化と高出力化および消費エネルギーの削減を図ることが考えられるが、この場合、超電導モータを冷却するための冷却装置が別途必要となったり、超電導モータを冷却するための冷熱源となる液体窒素などを収容するタンクを別途設ける必要が生じるなど、種々の不都合が生じることは避けられなかった。
【0008】
本発明は前記問題を考慮に入れてなされたものであり、その目的は、超電導機器を用いて効率の良い推進力を得ると共に、別途の冷熱源や大がかりな冷却装置を用いることなく超電導機器を低温状態に保つことができる超電導機器の冷却システムおよび液化天然ガスタンカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、
液化天然ガスを搬送する液化天然ガスタンカの推進装置に用いられる超電導機器と、
前記超電導機器を収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導機器を低温状態に保つことができる保冷容器と、
気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、
昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、
冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備えることを特徴とする超電導機器の冷却システムを提供している。
【0010】
前記構成によれば、圧縮手段によって圧縮して昇温させた超電導冷却媒体を熱交換手段において液化天然ガスによって冷却し、さらに、減圧手段によって減圧して降温させることにより超電導冷却媒体を液化天然ガスの温度(110K)より低温となるように冷却する。超電導機器を冷却するだけのために別途の冷熱源を設けることなく、既存の液化天然ガスを有効利用して超電導機器を十分に冷却し、その超電導状態を維持することができる。これにより、電気エネルギーと駆動力との間の効率のよい変換を行うと共に、より小型の超電導機器を用いてより大きな駆動力を得ることができる。
【0011】
なお、前記超電導機器とは、電気エネルギーを駆動力に変換する超電導モータや、駆動力を電気エネルギーに変換する超電導発電機や、超電導電力貯蔵装置(SMES)などを含むものである。
【0012】
前記超電導冷却媒体は液化温度(沸点)がLNGより低いガスであれば何を用いてもよく、窒素、ネオン、水素、ヘリウムに加えて、アルゴンや酸素などを用いてもよい。また、超電導冷却媒体は不活性なものであることが好ましく、以下の説明は窒素を用いる例を示し、この場合、超電導機器の温度は70K程度に下げることができる。ここで、超電導機器の温度を室温(約300K)から70K程度まで下げるには多くのエネルギーが必要であるが、LNGの温度(約110K程度)から70K程度まで下げるのは比較的少ないエネルギーで行うことができる。
【0013】
また、本発明は、
液化天然ガスを収容するタンク部と、
前記液化天然ガスが気化した天然ガスを用いて電気エネルギーを発電する発電装置と、
電気エネルギーを用いて駆動力を得る超電導モータを内蔵し、この超電導モータの駆動力を用いて推進力を得る推進装置とを有し、かつ、
前記超電導モータを収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導モータを低温状態に保つことができる保冷容器と、気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備える冷却システムを有することを特徴とする液化天然ガスタンカを提供する。
【0014】
前記構成によれば、超電導モータが通常のモータに比べて小型かつ高出力であるから推進装置を小型化し、より少ない推進装置を用いて液化天然ガスタンカに十分な推進力を得ることができる。また、超電導モータを冷却するための冷熱源は発電装置を駆動するために消費される液化天然ガスであり、液化天然ガスタンカには別途の冷熱源を搭載する必要がない。
【0015】
また、本発明は、
液化天然ガスを収容するタンク部と、
前記液化天然ガスが気化した天然ガスを用いて電気エネルギーを発電する超電導材料からなる巻き線を有する超電導発電装置と、
電気エネルギーを用いて駆動力を得るモータを内蔵し、このモータの駆動力を用いて推進力を得る推進装置とを有し、かつ、
前記超電導発電装置を収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導発電装置を低温状態に保つことができる保冷容器と、気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備える冷却システムを有することを特徴とする液化天然ガスタンカを提供する。
【0016】
前記構成によれば、超電導発電装置が通常の発電装置に比べて小型かつ高出力であるから、より少ない発電装置を用いて高出力のモータを駆動するために十分な電力を得ることができる。また、超電導発電装置はエネルギー損失が極めて小さいので、燃料消費率を飛躍的に改善することができる。加えて、超電導発電装置を冷却するための冷熱源は超電導発電装置を駆動するために消費される液化天然ガスであり、液化天然ガスタンカには別途の冷熱源を搭載する必要がない。さらに、超電導発電装置を収容した状態で超電導発電装置を低温状態に保つことができる保冷容器と、超電導モータを収容した状態で超電導モータを低温状態に保つことができる保冷容器とを組み合わせて用いることにより、燃料消費率を可及的に改善することができることはいうまでもない。
【0017】
発電装置はタンク部内で気化した天然ガスまたはタンク部内の液化天然ガスを用いて駆動力を得る蒸気タービン機関やディーゼル機関などのエンジンとこのエンジンの出力駆動軸に設けた発電機とからなることが考えられる。または、発電装置は天然ガスを水素に改質する改質装置と燃料電池とからなるものであってもよい。エンジンや燃料電池などの発電装置によって消費される天然ガスの温度は既に気化したものであったとしてもミスト状態であっても液化天然ガスの沸点の110K程度の冷熱源となり、外気温の約300Kに比べて十分に低温である。このような意味において、圧縮によって昇温させた超電導冷却媒体の冷熱源は液化天然ガスである。
【0018】
前記推進装置がポッド型推進装置であることが好ましい。この場合、液化天然ガスタンカの操舵と推進を同時に行うことができるので効率がよく、より強力な推進力を得ることができる超電導モータの特性を有効に活用できる。ポッド型推進装置は船体の外部に取り付けられるので船内スペースを広げることができる。さらに、ポット型推進装置においてモータが小型であることにより、ポッド本体の外径が細くその推進効率が向上することができる。
【0019】
二重船殻構造によって前記タンク部が船底から離れた位置に配置されることが好ましい。つまり、従来のようにプロペラ94に駆動力を伝達するためのシャフト93を用いる液化天然ガスタンカに比べて、ポッド型推進装置を採用することにより二重船殻構造を形成して、衝突時のタンク部の保護をしながら同時にタンク部の大きさを大きく保つことができる。
【0020】
前記発電装置がそれぞれ分担して電気エネルギーを発電する複数の発電部を有することが好ましい。各発電部が小型であることにより船内のデッドスペースとなっている部分に発電装置を配設し、タンク部の大きさを可及的に大きくすることができる。また、発電部は天然ガスを燃料として駆動力を生成するエンジンと、このエンジンの駆動力を用いて発電する発電機とからなるものであっても、天然ガスを改質して水素ガスを生成する改質装置と燃料電池とからなるものであってもよい。発電部に発電機を用いる場合、この発電機を超電導発電機(超電導機器)とすることが好ましく、この場合、液化天然ガスタンカは超電導発電機を冷却する冷却システムを有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明によれば、液化天然ガスタンカの推進装置に超電導モータなどの超電導機器を採用するときに問題となる超電導モータの冷却を、液化天然ガスタンカの推進力を得るために消費される液化天然ガスを用いて行うことができるので、特別な冷熱源を用いることなく、超電導機器を低温状態に保つことができる。約300Kの室温から超電導モータなどの超電導機器が安定して超電導状態を保つ低温状態(70K程度)にまで冷却するには多くのエネルギーが必要であるが、沸点である110K程度の液化天然ガスを用いることにより前記低温状態にまで容易に冷却することができる。
【0022】
超電導モータを推進装置に用いることによって得られる推進力は、通常のモータによって得られる推進力よりもはるかに強く、超電導モータの大きさは通常のモータよりはるかに小さくすることができる。従って、超電導モータを採用したポッド型推進装置は、十分な推進力を得られると共にポッド部分を小径にすることができるので、推進効率を可及的に高めることができる。また、ポッド型推進装置は船外に配置されるものであるから、船内スペースをさらに有効活用することができる。
【0023】
さらに、タンク部内の液化天然ガスを用いて推進力を得るために、発電装置によって一旦電気エネルギーに変換するように構成しているので、各発電装置はそれぞれ分担して電気エネルギーを発電する複数の発電部を有するものであってもよい。これによって各発電部の大きさを小さくすることができ、船内のデッドスペースを有効に活用して、超電導モータを駆動するための十分な電気エネルギーを確保することができる。
【0024】
上述したように、本発明の超電導機器の冷却システムおよび液化天然ガスタンカによれば、液化天然ガスタンカのタンク部のために十分な船内スペースを確保しながら、この液化天然ガスの幾らかを用いて極めて効率的な推進力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の第1実施例に係る液化天然ガスタンカ1の構成を示す図であり、この液化天然ガスタンカ1は液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gasであり、以下の説明では、単にLNGという)を収容するタンク部2と、天然ガスを用いて電気エネルギーを発電する発電装置3と、この発電装置3によって得られる電気エネルギーを用いて駆動力を得るポッド型推進装置4とを備える。
【0026】
前記液化天然ガスタンカ1は二重船殻構造となるように形成されており、前記タンク部2は幾つかに区画されたタンク部2A,2Bからなる。また、船首1a側のタンク部2Aは船底1bから離れた位置に配置されている。これによって、万一液化天然ガスタンカ1が座礁するなどの問題が発生してもタンク部2A内のLNGが容易に漏出しないようにすることができる。
【0027】
前記発電装置3はそれぞれ100kW程度の電気エネルギーを分担して発電する十台の発電部3A,3B,…を有し、各発電部3A,3B,…は電力供給配線5に接続されて、合計1M(メガ)Wの電気エネルギーを得られるように構成している。また、各発電部3A,3B,…は気化したLNGを用いて駆動力を得るディーゼル機関などのエンジン6とこのエンジン6の出力駆動軸に設けた発電機7とからなる。
【0028】
前記ポッド型推進装置4は船尾1cの下面に水平方向に回動自在に取り付けられたポッド本体4aとプロペラ4bとを有し、ポッド本体4a内にはプロペラ4bを駆動するための超電導モータ8(超電導機器)が搭載される。超電導モータ8は大きな出力を得ることができるので、船尾1cに2つのポッド型推進装置4を形成するだけで、液化天然ガスタンカ1に十分な推進力を得ることができる。また、超電導モータ8は容易に小型化を達成できるので、この超電導モータ8を収容するポッド本体4aの直径を小さくすることができる。つまり、ポッド本体4aが細くなればそれだけプロペラ4bによって効率的に推進力を得ることができる。
【0029】
加えて、前記超電導モータ8は超電導機器の冷却システム10によって、超電導状態を十分に保つことができる程度低温(例えば70K以下)に冷却される。超電導モータ8の巻き線はビスマス系の超電導材料からなり、このビスマス系の超電導材料は111Kで超電導状態となるが、この超電導モータ8を70K以下に冷却することにより、その性能を十分に発揮することができる。
【0030】
図2は超電導機器の冷却システム10の構成を説明する図である。図2において、11は超電導モータ8を収容した状態で超電導冷却媒体として液体窒素Nが充填される保冷容器、12は熱交換器、13は熱交換器12を制御して、保冷容器11内に収容した液体窒素Nの温度が70K以下となるように制御する制御部、14および15は保冷容器11内および熱交換器12内の温度をそれぞれ測定する温度センサ、16は熱交換器12に供給するLNGの流量を調整する流量制御弁である。
【0031】
前記保冷容器11は、断熱層11aと、モータ8の回転軸8aを回動自在に枢支すると共に内部の液体窒素Nが外部に漏れないようにする軸受け11bと、液体窒素Nの流入口11cと、窒素ガスの流出口11dとを備える。
【0032】
前記熱交換器12は冷却容器11の前記流入口11cおよび流出口11dに連通して窒素を流通する内部流路12aと、前記タンク部2に接続された燃料管2aに連通する内部流路12bとを備えて、冷却容器11の一面に当接する熱伝導性に優れた金属(例えばアルミニウムなど)からなるブロック体12c(熱交換手段)であり、その外周面には断熱層12dが形成されている。また、内部流路12aには窒素を圧縮によって昇温させる圧縮手段としてのポンプ12eと、減圧手段としての絞り部12fが形成されている。
【0033】
本実施例のように熱交換器12の熱交換手段12cが熱伝導性に優れた金属からなるブロック体12cであるから、2つの内部流路12a,12bを流れる流体間で効率よく熱交換を行うことができる。また、熱交換の効率が良いので小型化を達成することができる。また、本実施例の熱交換手段12cがブロック体であるから窒素ガスを流すための配管を複雑に配置した熱交換手段に比べて堅牢性に優れており、ガス漏れなどの問題が発生しにくい。
【0034】
前記制御部13は温度センサ15を用いて熱交換手段12cの温度を測定し、これをモニタしながら、温度センサ14を用いて測定した保冷容器11内の液体窒素Nの温度が70K以下になるように、ポンプ12eを駆動させる制御を行うものである。制御部13がポンプ12eを制御して内部流路12a内の窒素ガスの圧力を上げて、加圧により上昇した窒素ガスの温度を、液体窒素Nが気化した直後の温度よりも高く(110K以上に)し、この加圧によって昇温した窒素ガスを気化したLNGによって冷却する。また、LNGによって冷却された窒素ガスは絞り部12gを通るときに減圧して、再び元の圧力に戻して十分に冷却された液体窒素Nとして冷却容器11内に戻る。
【0035】
このようにして、制御部13は温度センサ14によって測定した液体窒素Nの温度が70K程度になるように前記ポンプ12eを駆動させることにより、超電導モータ8をこれが超電導状態になる111Kに比べて十分に低温状態(70K以下)に冷却することができる。つまり、超電導モータ8の性能を十分に高めることができる。
【0036】
前記流量制御弁16は燃料管2aに流れるLNG(あるいはLNGが気化した天然ガスやミスト状態の流体)の流量を調節するための流路開閉機構を備えた電磁弁であり、前記エンジン6に求められる出力の大きさに応じて適宜開閉されるものである。そして、このエンジン6から出力される駆動力は発電機7によって電気エネルギーに変換されて超電導モータ8に供給される。つまり、ポッド型推進装置4を用いて求められる推進力の大きさに応じて流量制御弁16が開かれ、流量制御弁16を通る流体の流量に応じて超電導モータ8を冷却することができる。
【0037】
従って、超電導モータ8により大きな負荷をかけるときには、より強力な冷却を行うことができるので、たとえ超電導モータ8に大電流が流れることによって幾らかの発熱が生じることがあってもこれを十分に冷却することができる。
【0038】
図3は前記液化天然ガスタンカ1の変形例を示す図であって、20は図1に示す前記発電装置3の発電機7を超電導発電機21(超電導機器)とした場合に用いる超電導機器の冷却システムである。本変形例において、超電導発電機21は例えばビスマス系の超電導材料からなる巻き線を形成した超電導機器であり、前記超電導モータ8と同じく111K以下の低温状態で超電導状態となるものである。
【0039】
このような超電導発電機21を使用する場合に、保冷容器22は図2に示す前記保冷容器11と実質的に同じ構成であり、熱交換器23は前記熱交換器12と実質的に同じ構成である。また、保冷容器22を構成する各部22a〜22dは前記保冷容器11を構成する各部11a〜11dと同じであり、熱交換器23を構成する各部23a〜23fは前記熱交換器12を構成する各部12a〜12fと同じである。その他の点については、図2と符号を共通にすることにより、その詳細な説明を省略する。
【0040】
すなわち、本例に示す超電導機器の冷却システム20は、超電導モータ21を収容した状態で液体窒素N(超電導冷却媒体の一例)が充填されることにより、超電導発電機21を低温状態に保つことができる保冷容器22と、気化した液体窒素Nを圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段23eと、昇温させた液体窒素NをLNGの冷熱源によって冷却する熱交換手段23cと、冷却させた液体窒素Nを再び減圧することによりこれを降温させる減圧手段23fとを備える。
【0041】
本例のように発電装置3に用いる発電機7も超電導発電機21としてこれを冷却システム20によって冷却することにより、液化天然ガスタンカにさらに効率よく推進力を与えることができる。
【0042】
従って、本例に示すように、本発明の超電導機器の冷却システム10は超電導モータだけでなく、超電導発電機21や超電導電力貯蔵装置(SMES)などの超電導機器を冷却するために応用することができる。
【0043】
図4は本発明の第2実施例に係る液化天然ガスタンカ30の構成を示している。図4が図1と異なる点は、発電装置31がLNGを改質して水素ガスを生成する改質装置32と、改質によって得られた水素を用いて電気エネルギーを得る燃料電池33とからなる点である。本実施例のように構成することにより、発電装置31をさらに小型化することができ、船内スペースをさらに確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施例に係る液化天然ガスタンカの構成を示す図である。
【図2】前記液化天然ガスタンカに用いる超電導機器の冷却システムを示す図である。
【図3】前記超電導機器の冷却システムの変形例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る液化天然ガスタンカの構成を示す図である。
【図5】従来の液化天然ガスタンカの構成を示す図である。
【図6】従来の別の液化天然ガスタンカの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 液化天然ガスタンカ
1b 船底
2 タンク部
3,31 発電装置
3A,3B… 発電部
4 ポッド型推進装置
8 超電導モータ
10 超電導機器の冷却システム
N 超電導冷却媒体(液体窒素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを搬送する液化天然ガスタンカの推進装置に用いられる超電導機器と、
前記超電導機器を収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導機器を低温状態に保つことができる保冷容器と、
気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、
昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、
冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備えることを特徴とする超電導機器の冷却システム。
【請求項2】
液化天然ガスを収容するタンク部と、
前記液化天然ガスが気化した天然ガスを用いて電気エネルギーを発電する発電装置と、
電気エネルギーを用いて駆動力を得る超電導モータを内蔵し、この超電導モータの駆動力を用いて推進力を得る推進装置とを有し、かつ、
前記超電導モータを収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導モータを低温状態に保つことができる保冷容器と、気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備える冷却システムを有することを特徴とする液化天然ガスタンカ。
【請求項3】
液化天然ガスを収容するタンク部と、
前記液化天然ガスが気化した天然ガスを用いて電気エネルギーを発電する超電導材料からなる巻き線を有する超電導発電装置と、
電気エネルギーを用いて駆動力を得るモータを内蔵し、このモータの駆動力を用いて推進力を得る推進装置とを有し、かつ、
前記超電導発電装置を収容した状態で超電導冷却媒体が充填されることにより超電導発電装置を低温状態に保つことができる保冷容器と、気化した超電導冷却媒体を圧縮することによりこれを昇温させる圧縮手段と、昇温させた超電導冷却媒体を液化天然ガスの冷熱源によって冷却する熱交換手段と、冷却させた超電導冷却媒体を減圧することによりこれを降温させる減圧手段とを備える冷却システムを有することを特徴とする液化天然ガスタンカ。
【請求項4】
前記推進装置がポッド型推進装置である請求項2または請求項3に記載の液化天然ガスタンカ。
【請求項5】
二重船殻構造によって前記タンク部が船底から離れた位置に配置される請求項4に記載の液化天然ガスタンカ。
【請求項6】
前記発電装置がそれぞれ分担して電気エネルギーを発電する複数の発電部を有する請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の液化天然ガスタンカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−83851(P2007−83851A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274416(P2005−274416)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】