説明

超音波センサの自己診断方法

【課題】 超音波の反射波を用いずに、動作不良を自己診断することができる超音波センサの自己診断方法を実現する。
【解決手段】 超音波センサ10によれば、超音波センサ30の受信素子R1〜R4の少なくとも1つが超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子R1から送信した超音波を、振動減衰部材13を介して他の受信素子R2〜R4に伝達し、受信素子R2〜R4により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサ30の外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子R2〜R4の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサ30の動作不良を診断することができ、超音波センサ30の信頼性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検出体で反射された超音波を受信素子により受信することにより、被検出体の位置を検出する超音波センサの自己診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を伝達する金属、樹脂材料等の伝達材料に超音波検出素子を装着した超音波センサが知られている。この超音波センサは、超音波の送信が可能な素子から超音波を送信して、被検出体に当たって反射された超音波を、超音波の受信が可能な素子によって受信することにより、周囲にある物体の位置測定または距離測定や、当該物体の2次元形状または3次元形状の測定などを行う。
このような超音波センサには、車両周辺の監視システムに用いられるものがある。車両に搭載された超音波センサは、衝撃などの外乱要因によって特性変動や破壊などの不具合が発生することがある。このような不具合が生じると、監視システムの動作不良を引き起こし、人や障害物などを十分に検知できないおそれがある。
このような超音波センサの不具合を検知するための方法として、例えば、特許文献1には、複数の受信素子を備える超音波センサにおいて、障害物からの反射波を受信するときに受信素子間の信号強度の差より動作不良を自己診断する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−242650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の技術によれば、物体において反射する超音波の反射波を用いるため、超音波センサの検出範囲内に物体が存在しない場合には、超音波センサの動作不良の検出ができないので、検知する機会が限定されてしまう。例えば、前方に障害物がない車庫や駐車場に駐車している状態では、超音波の反射波が生じないため、超音波センサの動作不良を検知できない。
【0004】
そこで、この発明では、超音波の反射波を用いずに、動作不良を自己診断することができる超音波センサの自己診断方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて形成された超音波センサの自己診断方法であって、前記受信素子の少なくとも1つは超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、前記振動減衰部材を介して他の前記受信素子に伝達し、前記他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断する、という技術的手段を用いる。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、超音波センサの受信素子の少なくとも1つが超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、振動減衰部材を介して他の受信素子に伝達し、他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサの外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサの動作不良を診断することができ、超音波センサの信頼性を向上することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の超音波センサの自己診断方法において、前記音響整合部材が、前記受信面で受信した超音波により内部で定在波が発生するように形成されている、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、音響整合部材が、受信面で受信した超音波により内部で定在波が発生するように形成されているため、音響整合部材内に入射した超音波と、音響整合部材と超音波検出素子との界面において反射された超音波とが干渉して互いに打ち消し合うことを低減することができるので、超音波検出素子に効率よく超音波を伝達することができる。本発明は、このような感度の高い超音波センサの自己診断方法に適用することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の超音波センサの自己診断方法において、前記超音波を送信可能な受信素子より送信される超音波の周波数は、前記音響整合部材の共振周波数である、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、超音波を送信可能な受信素子より送信される超音波の周波数は、音響整合部材の共振周波数であるため、音圧を高くすることができるので、受信素子による受信信号の強度を高くすることができ、自己診断の精度を向上することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて、前記各超音波検出素子を素子封止材により覆って形成された超音波センサの自己診断方法であって、前記受信素子の少なくとも1つは超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、前記素子封止材を介して他の前記受信素子に伝達し、前記他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断する、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、超音波センサの受信素子の少なくとも1つが超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、素子封止材を介して他の受信素子に伝達し、他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサの外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサの動作不良を診断することができ、超音波センサの信頼性を向上することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記超音波を送信可能な受信素子より送信された超音波が前記他の受信素子により受信され受信信号として検出された検出時間、または、前記受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定する、という技術的手段を用いる。
【0014】
音響整合部材など超音波が伝達する構成部材の物性は、温度変化により変化し、この物性の変化に伴い受信信号の検出時間、または、受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、請求項5に記載の発明のように、受信信号の検出時間、または、信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記超音波を送信可能な受信素子より送信する超音波の周波数を掃引し、前記他の受信素子が備えた前記音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定する、という技術的手段を用いる。
【0016】
音響整合部材の物性は、温度変化により変化し、この物性の変化に伴い音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、請求項6に記載の発明のように、音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて形成された超音波センサの自己診断方法であって、前記受信面から見て前記超音波検出素子側に配置された第2の送信素子を備え、前記第2の送信素子から送信された超音波を前記各受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断する、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、受信面から見て超音波検出素子側に配置された第2の送信素子から送信された超音波を各受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサの外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサの動作不良を診断することができ、超音波センサの信頼性を向上することができる。
また、超音波センサが自己診断用の第2の送信素子を備えているため、受信素子を送信可能に構成する必要がないとともに、受信素子を同時に自己診断することが可能となる。
【0019】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の超音波センサの自己診断方法において、前記第2の送信素子は、前記各受信素子から等しい距離に配置されている、という技術的手段を用いる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、第2の送信素子は、各受信素子から等しい距離に配置されているため、各受信素子が正常に作動している場合には、各受信素子において強度及び検出時間が等しい受信信号が検出される。これにより、各受信信号を比較することにより、動作不良が生じている受信素子を容易に検知することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明では、請求項7または請求項8に記載の超音波センサの自己診断方法において、前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記第2の送信素子より送信された超音波が前記各受信素子により受信され受信信号として検出された検出時間、または、前記受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定する、という技術的手段を用いる。
【0022】
音響整合部材、振動減衰部材、素子封止材など超音波が伝達する構成部材の物性は、温度変化により変化し、この物性の変化に伴い受信信号の検出時間、または、受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、請求項9に記載の発明のように、受信信号の検出時間、または、信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
【0023】
請求項10に記載の発明では、請求項7または請求項8に記載の超音波センサの自己診断方法において、前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記第2の送信素子より送信する超音波の周波数を掃引し、前記各受信素子が備えた前記音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定する、という技術的手段を用いる。
【0024】
音響整合部材の物性は、温度変化により変化し、この物性の変化に伴い音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、請求項10に記載の発明のように、音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記各音響整合部材は、前記各音響整合部材の中央部間の距離が、空気中を伝達する超音波の波長の1/2に等しい、または、ほぼ等しくなるように配置されている、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、各音響整合部材は、各音響整合部材の中央部間の距離が、空気中を伝達する超音波の波長の1/2に等しい、または、ほぼ等しくなるように配置されているため、受信した超音波の位相差からも時間差を検出することができるので、受信した超音波の時間差を精度良く検出することができ、被検出体との距離及び位置の測定精度を向上させることができる。本発明は、このような被検出体との距離及び位置の測定精度が良好な超音波センサの自己診断方法に適用することができる。
【0027】
請求項12に記載の発明では、請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記音響整合部材は、ポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂により形成されている、という技術的手段を用いる。
【0028】
請求項12に記載の発明にように、本発明は、音響整合部材が弾性率の温度変化が小さいポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂により形成されており、温度変化に伴う超音波の波長の変化が小さい超音波センサの自己診断方法に適用することができる。
【0029】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記超音波検出素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系材料により形成されている、という技術的手段を用いる。
【0030】
請求項13に記載の発明のように、本発明は、超音波検出素子が圧電定数の大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を用いて形成されており、受信感度が良好な超音波センサの自己診断方法に適用することができる。
【0031】
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし請求項13のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法において、前記超音波センサは、車両のヘッドランプカバー、リアランプのカバー、ウインカのカバー、バックランプのカバー、ドアミラー、または、バンパに設けられている、という技術的手段を用いる。
【0032】
請求項14に記載の発明のように、本発明は、車両に搭載され、車両の周囲にある障害物や人間などを検知する障害物センサなどに用いる超音波センサの自己診断方法に適用することができる。ここで、超音波センサは、用途に合わせて、各種部材に設けることができる。超音波センサを車両前方の障害物センサなどに適用する場合には、ヘッドランプカバー、または、バンパに設けることができる。超音波センサを車両側方の障害物センサとして用いる場合には、ウインカのカバー、または、ドアミラーに設けることができる。超音波センサを車両後方の障害物センサとして用いる場合には、リアランプのカバー、または、バックランプのカバーに設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[第1実施形態]
この発明に係る超音波センサの第1実施形態について、図を参照して説明する。ここでは、超音波センサを車両に搭載して障害物センサとして使用する場合を例に説明する。
図1は、本実施形態の超音波センサの説明図である。図1(A)は、本実施形態の超音波センサを音響整合部材側から見た平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面図である。図2は、被検出体の位置の3次元検知を行う方法の説明図である。図2(A)は、障害物で反射された超音波を受信素子で受信する状態を示す模式図であり、図2(B)は、超音波の送信信号と各受信素子により受信する受信信号との関係を示す模式図である。図3は、超音波センサの自己診断方法の原理を説明する説明図である。図3(A)は、受信素子が正常に作動している場合の受信信号の説明図であり、図3(B)及び図3(C)は、正常に作動していない受信素子がある場合の受信信号の説明図である。図4は、音響整合部材及び振動減衰部材の物性の温度依存性による受信信号の変化を示す説明図である。図5は、音響整合部材の共振周波数の温度依存性による受信信号の変化を示す説明図である。
ここで、図1(A)の手前側及び図1(B)の上方向が車両の外部を示す。また、図1(A)の上下方向が、地面に対する鉛直上下方向に対応する。
なお、各図では、説明のために一部を拡大し、一部を省略して示している。
【0034】
(超音波センサの構成)
図1(A)及び(B)に示すように、超音波センサ10は、超音波発生素子(図示せず)から車両前方に送信され、車両前方に存在する被検出体(障害物)で反射された超音波を検出する超音波検出素子である圧電素子11と、超音波を受信し、振動を伝達する音響整合部材12との組からなる4個の受信素子R1〜R4を備えている。受信素子R1〜R4のうち、少なくとも1つは送受信可能に形成されている。ここでは、受信素子R1が送受信可能な受信素子であるとする。
【0035】
受信素子R1〜R4は、上下方向と左右方向とに各2個ずつアレイ状に並んで配置されている。
受信素子R1〜R4は、各音響整合部材12の受信面12a近傍の側面12cにおいて、受信面12aにおいて受信した超音波の受信素子R1〜R4間での伝達を防止する振動減衰部材13を介在して、筐体15の開口部に接着材などにより固定されている。
【0036】
超音波センサ10は、車両60の所定の位置、本実施形態ではバンパ20(図6)に取り付けられている。バンパ20には、筐体15を挿通可能な大きさに貫通形成された取付部20aが設けられている。超音波センサ10は、受信面12aをバンパ20の外部に露出させた状態で、筐体15の開口部近傍の側面において取付部20aに取り付けられている。
【0037】
圧電素子11は、音響整合部材12の超音波を受信する受信面12aに対向する取付面12bに、接着剤などにより取り付けられている。
圧電素子11は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を上下面から電極で挟んで、厚さ3mm、2mm角の四角柱状に形成されており、各電極は、配線14を介して、圧電素子11から出力される電圧信号を処理する回路素子(図示せず)と電気的に接続されている。回路素子は、ECUに電気的に接続されており、圧電素子11から出力される電圧信号に基づいて演算処理を行う。
ここで、PZTは、圧電定数が大きいため、音圧の小さな超音波の受信をすることができ、超音波の検出感度が高く、超音波検出素子に好適に用いることができる。
【0038】
音響整合部材12は、空気より音響インピーダンスが大きく、圧電素子11より音響インピーダンスが小さい材料を用いて、横断面が略正方形の四角柱状に形成されている。
これにより、音響整合部材12を設けていない場合に比べて、空気との界面における音響インピーダンスの差を小さくすることができるので、空気との界面における超音波の反射を抑制し、入射する超音波を増大させることができる。
また、バンパ20の外部から視認できない位置に圧電素子11が取り付けられているため、音響整合部材12は、異物や水分などから圧電素子11を保護する保護部材としても作用する。
本実施形態では、音響整合部材12は、ポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂などにより形成されている。ポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂は弾性率の温度変化が小さいため、温度変化に伴う超音波の波長の変化を小さくすることができる。
【0039】
音響整合部材12は、幅Wが超音波の空気中における波長の半分以下となるように形成され、互いに隣り合った各音響整合部材12の中心部の間隔dが、超音波の半波長にほぼ等しくなるように配置されている。また、音響整合部材12は、厚さTが超音波の音響整合部材12中における波長の1/4となるように形成されている。例えば、超音波の周波数が65kHzの場合、幅Wが2.6mm、厚さTが5mm程度となる。
【0040】
音響整合部材12の厚さTを超音波の波長の1/4となるように形成することにより、音響整合部材12内で定在波を発生させることができる。これにより、音響整合部材12内に入射した超音波と、音響整合部材12と圧電素子11との界面において反射された超音波とが干渉して互いに打ち消し合うことを低減することができるので、圧電素子11に効率よく超音波を伝達することができる。
なお、音響整合部材12として樹脂材料を例示しているが、音響インピーダンスの関係及び波長と寸法との関係とを満足すれば、例えば、アルミニウムのような金属材料や、セラミックス、ガラスなどを用いることができる。これらの材料は、樹脂材料同様に、耐候性などの耐環境性を備えており、好適に用いることができる。音響整合部材12の形状は、横断面が略正方形の四角柱状に限らず、例えば、円柱でもよい。
【0041】
振動減衰部材13は、音響整合部材12より音響インピーダンスが小さく、減衰定数が高い材料、例えば、シリコンゴムにより形成されている。更に、音響整合部材12には、弾性率が低い材料及び密度が小さい材料が好適に用いられる。例えば、ゴム系材料、発泡樹脂などの気孔を含む樹脂、スポンジなどを用いることができる。
【0042】
このような材料により形成された振動減衰部材13が、各音響整合部材12間及びバンパ20と音響整合部材12との間に介在することにより、ある音響整合部材12により受信された超音波が隣接する音響整合部材12に伝達されたり、超音波がバンパ20から取付部20aを介して音響整合部材12の側面12cに伝達されたりしてノイズの原因となることを防止することができる。
また、弾性率が低い材料では、超音波による音響整合部材12の振動を拘束する力が小さいため、超音波振動の減衰を小さくすることができる。
【0043】
(超音波センサによる障害物の検出)
超音波センサ10は、図示しない超音波送信素子または受信素子R1により送信され、被検出体により反射された超音波を、音響整合部材12の受信面12aにおいて受信する。受信面12aにおいて受信された超音波は、音響整合部材12を介して、圧電素子11に伝達される。圧電素子11に伝達された超音波は、圧電素子11により検出され、電圧信号に変換される。圧電素子11から出力された電圧信号は、回路素子を経由してECUに伝達され、ECUにおいて演算処理が行われる。これにより、被検出体の位置の3次元検知などを行うことができる。
【0044】
被検出体の位置の3次元検知を行う方法について図2を参照して説明する。図2は、被検出体の位置の3次元検知を行う方法の説明図である。図2(A)は、障害物で反射された超音波を受信素子で受信する状態を示す模式図であり、図2(B)は、超音波の送信信号と各受信素子により受信する受信信号との関係を示す模式図である。
ここでは、車両正面に対して方位角θhの右方向(受信素子R1側)であって、距離Dhの位置に障害物Mが存在する場合について説明する。
【0045】
送信素子により、時間t0に送信された超音波は、障害物Mで反射されて、受信素子R1、R2によりそれぞれ時間t1、t2に受信されて検出される。ここで、障害物Mは、車両正面に対して右方向に存在するため、受信素子R2と障害物Mとの距離L2は、受信素子R1と障害物Mとの距離L1に比べて大きくなる。これにより、送信素子により超音波が送信されてから、障害物Mにより反射されて、受信素子R1、R2により検出されるまでの時間は、受信素子R1の方が短くなる。方位角θが大きくなる程、距離の差L2−L1が大きくなるため、時間差t2−t1が大きくなる。従って、時間差t2−t1を用いて演算処理を行うことにより方位角θhを求めることができる。
また、送信素子により送信された超音波が、各受信素子R1、R2により検出されるまでの時間t1−t0及びt2−t0の平均値を用いて演算処理を行うことにより各受信素子R1、R2と障害物Mとの平均距離Dhを求めることができる。
【0046】
同様に、障害物Mで反射された超音波が受信素子R1、R3により検出された時間t1、t3を用いて演算処理を行うことにより、上下方向の方位角θv及び超音波センサ10と各受信素子R1、R3との距離Dvを求めることができる。ここで、受信素子R2、R4により検出された時間t2、t4を用いても、上下方向の方位角θv及び各受信素子R2、R4と障害物Mとの平均距離を求めることができる。
【0047】
上述の距離Dh、Dv及び方位角θh、θvより、超音波センサ10に対する障害物Mの距離と方位とを検知することができる。これにより、受信素子R1〜R4により受信した超音波の時間差を求めることにより、その各差に基づいて、被検出体の位置の3次元検知を行うことができる。
また、受信した超音波の位相差に基づいて、被検出体の位置の3次元検知を行うこともできる。
【0048】
本実施形態では、各音響整合部材12は、幅Wが超音波の空気中における波長の半分以下となるように形成され、互いに隣り合った各音響整合部材12の中心部の間隔dが、超音波の半波長に等しくなるように配置されている。
このように各音響整合部材12を構成すると、受信した超音波の位相差からも時間差を検出することができるので、受信した超音波の時間差を精度良く検出することができ、被検出体との距離及び位置の測定精度を向上させることができる。
なお、幅Wが超音波の空気中における波長の半分以下でない場合においても、被検出体の位置の3次元検知に用いることができる。
【0049】
(超音波センサの自己診断方法)
続いて、各受信素子R1〜R4が正常に作動しているか否かを超音波センサ10が自己診断する方法について、図3を参照して説明する。
まず、超音波を送信可能に形成されている受信素子R1の圧電素子11より、音響整合部材12に対して超音波を送信する。ここで、受信素子R1(圧電素子11)より送信される超音波の強度は、障害物Mにより反射して伝達される超音波の強度より高い(例えば、10倍以上)ので、振動減衰部材13内を伝達することができる。受信素子R1の音響整合部材12から振動減衰部材13に伝達された超音波は、受信素子R2〜R4の音響整合部材12に伝達される。
【0050】
図3(A)には、受信素子R2〜R4が正常に作動している場合の受信信号を示す。受信素子R2、R3は受信素子R1から中心部の間隔がdだけ離れて配置され、受信素子R4は、受信素子R1から中心部の間隔が√2dだけ離れて配置されているため、受信素子R1から時間t5に送信された超音波の受信信号は、受信素子R2、R3ではほぼ同じ時間t6に検出され、受信素子R4では時間t6より遅い時間t7において検出される。
また、受信素子R4では、受信素子R2、R3に比べて超音波が振動減衰部材13内を伝達する距離が長いので、受信信号の強度h4は、受信素子R2による受信信号の強度h2及び受信素子R3による受信信号の強度h3より小さくなる。ここで、強度h2と強度h3とはほぼ等しい。
【0051】
一方、受信素子R2〜R4のいずれかが破損して、正常に作動していない場合には、その受信素子による受信信号が変動する。図3(B)には、受信素子R3、R4が正常に作動していない場合の受信信号を示す。
受信素子R3による受信信号の強度h31は、受信素子R2による受信信号の強度h2に比べて強度が低下している。また、受信素子R4では、受信信号が検出されていない。
このように、受信信号の有無や強度を、受信素子が正常に作動している場合と比較することにより、異常が生じた受信素子R3、R4を自己診断することができる。つまり、正常に作動していない受信素子を検知するために、外部に存在する物体に超音波を送信し、その反射波を用いる必要がない。
【0052】
図3(C)に示すように、すべての受信素子R2〜R4の受信信号の強度が低下していたり、すべて受信素子R2〜R4において受信信号が検出されていない場合には、受信素子R2〜R4がすべて故障しているか、受信素子R1による超音波の送信が正常でないという2つの可能性が考えられる。
ここで、受信素子R2も超音波を送信可能な素子として形成されていると、受信素子R2から超音波を送信し、他の受信素子R1、R3、R4による受信信号を調べることにより、受信素子R1から超音波を送信した場合の結果と比較して、いずれの受信素子が正常に作動していないかを自己診断することができる。
【0053】
このような超音波センサ10の自己診断を行うことによって、例えば、受信素子R4のみに動作不良を生じている場合には、受信素子R4の受信信号を遮断して、受信素子R1〜R3を用いて、障害物Mの検知を行うようにすることができる。これにより、超音波センサ10にフェールセーフ機能を持たせることができるため、信頼性を向上することができる。
【0054】
また、超音波を送信可能な受信素子を複数個、例えば、受信素子R1、R2を用意し、受信素子R1〜R4の受信信号の強度を比較することにより、受信信号の強度の変動量を求めることができる。
正常に作動している受信素子の受信信号との変動量を検出することにより、回路素子により受信信号のゲインの調節などを行い、超音波センサ10の感度補正を行うことができる。
【0055】
超音波を送信可能な受信素子から送信する超音波の周波数として、障害物Mの検知に用いる周波数、つまり、音響整合部材12の共振周波数を用いると、振動を大きくすることができるため、自己診断の精度を向上させることができる。また、音響整合部材12が外部からの飛来物などにより変形した場合などには、共振周波数が変動し、受信信号の強度が大きく変化するため、音響整合部材12の変形などの不具合を検出するために好適である。
【0056】
(超音波センサの温度推定方法)
超音波センサ10では、超音波が伝達する構成部材の物性の温度依存性を用いて、ECUなどにより温度を推定し、超音波センサ10の温度補正を行うことができる。温度検出方法を以下に説明する。
超音波センサ10を使用する環境の温度が上昇すると、音響整合部材12及び振動減衰部材13の弾性率が低下する。音響整合部材12及び振動減衰部材13の弾性率が低下すると、音響整合部材12及び振動減衰部材13の内部を伝達する超音波の音速が遅くなるため、受信信号が検出される時間が長時間側にシフトする。また、振動減衰部材13による超音波の減衰率も増大するため、受信信号の強度が低下する。
【0057】
例えば、図4に示すように、T1が既知の温度、T2が使用環境の温度(T1<T2)の場合、温度T1の受信信号に比べ、温度T2の受信信号は強度がh11からh12に低下し、受信信号の検出時間もt11からt12にシフトする。
超音波振動の減衰率h12/h11、または、検出時間のシフト量t12−t11を用いて、予め取得しておいた温度特性と比較することにより、使用環境の温度T2を推定することができる。
推定された温度T2を用いて、超音波送信素子から送信する超音波の周波数を変更したり、回路素子またはECUにおいて、超音波センサ10の特性を維持するための感度補正を行うことができる。
【0058】
温度T2は、音響整合部材12の共振周波数の変化からも求めることができる。
図5に示すように、温度T1において、受信素子R1から送信する超音波の周波数をスイープすると、受信素子R2の音響整合部材12が周波数f1において共振して、受信信号の強度が増大する。
温度がT2に上昇すると、音響整合部材12の弾性率は低下し、熱膨張により長手方向の寸法が長くなるため、共振周波数がf2まで低下する。この共振周波数の温度依存性より、使用環境の温度T2を推定することができる。ここで、スイープする周波数の範囲は、想定される共振周波数f2の0.5〜2倍の範囲が好ましい。
【0059】
(変更例)
受信素子の数及び配置は、用途に応じて任意である。例えば、同心円状に配置してもよいし、左右方向だけの2次元検知を行うなら2個の受信素子R1、R2を用意すればよい。
2個の受信素子R1、R2による構成を用いる場合、送信した超音波の強度に対して受信信号の強度に閾値を設定して、受信信号の強度が閾値を下回った場合に、その受信素子が正常に不具合が生じたと判断することができる。
【0060】
[第1実施形態の効果]
(1)本実施形態の超音波センサ10によれば、超音波センサ30の受信素子R1〜R4の少なくとも1つが超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子R1から送信した超音波を、振動減衰部材13を介して他の受信素子R2〜R4に伝達し、受信素子R2〜R4により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサ30の外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子R2〜R4の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサ30の動作不良を診断することができ、超音波センサ30の信頼性を向上することができる。
【0061】
(2)音響整合部材12が、受信面12aで受信した超音波により内部で定在波が発生するように形成されているため、音響整合部材内に入射した超音波と、音響整合部材と超音波検出素子との界面において反射された超音波とが干渉して互いに打ち消し合うことを低減することができるので、超音波検出素子に効率よく超音波を伝達することができる。本発明は、このような感度の高い超音波センサ10の自己診断方法に適用することができる。
【0062】
(3)超音波を送信可能な受信素子R1より送信される超音波の周波数は、音響整合部材12の共振周波数であるため、音圧を高くすることができるので、受信素子R2〜R4による受信信号の強度を高くすることができ、自己診断の精度を向上することができる。
【0063】
(4)音響整合部材12など超音波が伝達する構成部材の物性は、温度変化により変化し、この物性の変化に伴い受信信号の検出時間、または、受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、受信信号の検出時間、または、信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
また、温度変化に伴い音響整合部材12の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度が変化する。この温度依存性を用いて、音響整合部材12の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて超音波センサの温度を推定することができる。
【0064】
(5)音響整合部材12は、弾性率の温度変化が小さいポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂により形成されているため、温度変化に伴う超音波の波長の変化を小さくすることができるので、定在波を安定して発生させることができる。
また、圧電素子11を、圧電定数の大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を用いて形成することにより、音圧が小さな超音波の受信をすることができ、超音波センサの感度を向上させることができる。
【0065】
(6)音響整合部材12の幅Wを、空気中を伝達する超音波の波長の半分以下に形成する構成では、複数の超音波センサ10をアレイ状に配置して用いる場合に、音響整合部材12の中央部の間隔が空気中を伝達する超音波の波長の1/2である検出精度が高い配置を行うことができる。
【0066】
[第2実施形態]
この発明に係る超音波センサの第2実施形態について、図を参照して説明する。図6は、第2実施形態に係る超音波センサの断面説明図である。図7は、受信素子により受信された音響整合部材及び素子封止材の共振信号の模式図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0067】
図6に示すように、第2実施形態の超音波センサ30では、圧電素子11を水分などから保護するとともに、振動などにより負荷される応力を低減するために、筐体15の底部15aに、圧電素子11を覆って、弾性率及び音響インピーダンスが低い材料からなる素子封止材16が充填されている。
素子封止材16は、音響整合部材12の振動を妨げないように、弾性率が低い材料、例えば、シリコンゴム、ウレタンフォーム、ゲルなどにより形成されており、特に弾性率が10MPa以下の材料を好適に使用することができる。
【0068】
素子封止材16を超音波の伝達媒体として、超音波センサ30の自己診断に用いることができる。
受信素子R1から送信された超音波は、素子封止材16を介して受信素子R2〜R4に伝達される。素子封止材16により伝達された超音波の受信信号を用いて、第1実施形態と同様の方法により、超音波センサ30の自己診断を行うことができる。
【0069】
素子封止材16は、音響整合部材12などと同様に温度変化に伴い物性が変化するため、第1実施形態と同様の方法により、温度推定を行うことができる。
ここで、周波数をスイープすることにより温度を推定する方法を採用する場合には、想定される共振周波数の0.3〜3倍の範囲で受信素子R1から送信する超音波の周波数をスイープすることが好ましい。
図7に、受信素子R2により受信された音響整合部材12及び素子封止材16の共振信号の模式図を示す。素子封止材16は、音響整合部材12より弾性率が低い材料で形成されているため、共振周波数f3及び信号強度は音響整合部材12より低い。このように、素子封止材16の共振周波数f3は、受信素子R2の共振周波数f1と大きく異なるため、混同することなく明確に区別することができる。
更に、音響整合部材12の共振周波数と素子封止材16の共振周波数との両者の温度依存性を用いることにより、温度の推定精度を向上することもできる。
【0070】
[第2実施形態の効果]
(1)本実施形態の超音波センサ30によれば、超音波センサ30の受信素子R1〜R4の少なくとも1つが超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子R1から送信した超音波を、素子封止材16を介して他の受信素子R2〜R4に伝達し、受信素子R2〜R4により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサ30の外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子R2〜R4の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサ30の動作不良を診断することができ、超音波センサ30の信頼性を向上することができる。
【0071】
[第3実施形態]
この発明に係る超音波センサの第2実施形態について、図を参照して説明する。図8は、第3実施形態に係る超音波センサの断面説明図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0072】
図8に示すように、第3実施形態の超音波センサ40では、圧電素子などからなり超音波を送信可能な超音波送信素子17が、超音波を送信する送信面から各受信素子R1〜R4までの距離が等しくなるように、筐体15の底部15aに配置されている。
超音波センサ40により受信素子R1〜R4の自己診断を行うには、まず、超音波送信素子17から各受信素子R1〜R4に向かって超音波を送信する。超音波送信素子17から送信された超音波は、各圧電素子11または音響整合部材12に伝達され、受信信号として検出される。
ここで、超音波送信素子17が各受信素子R1〜R4までの距離が等しくなるように構成されているので、受信素子R1〜R4が正常に作動している場合には、各受信素子R1〜R4において強度及び検出時間が等しい受信信号が検出される。これにより、受信信号の強度が低下している受信素子を動作不良が生じている受信素子として検知することができる。
本実施形態の超音波センサ40によれば、自己診断用の超音波送信素子17を備えているため、受信素子R1〜R4を送信可能に構成する必要がないとともに、受信素子R1〜R4を同時に自己診断することが可能となる。
また、受信素子R1〜R4で受信した信号に基づいて、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、温度を推定することができる。
【0073】
ここで、超音波送信素子17は、圧電素子11とともに素子封止材16により封止してもよい。この構成を用いると、超音波の振動を受信素子R1〜R4に伝達する媒体が素子封止材16となるので、素子封止材16がなく超音波が空気を伝達する場合に比べて受信信号の強度を高くすることができる。
【0074】
超音波送信素子17は、受信面12aから見て受信素子R1〜R4側にあれば、必ずしも各受信素子R1〜R4から等距離に配置しなくてもよい。例えば、筐体15の底部15a以外の内側面に配置することもできる。この場合、受信信号の検出時間及び強度は受信素子毎に異なるが、正常に作動している場合の受信信号と比較することにより、自己診断を行うことができる。また、この構成を用いると、超音波送信素子17の配置の自由度が増大するため、超音波センサ40の小型化に寄与することができる。
【0075】
[第3実施形態の効果]
(1)本実施形態の超音波センサ40によれば、受信面12aから見て受信素子R1〜R4側に配置された超音波送信素子17から送信された超音波を各受信素子R1〜R4により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することができる。これにより、超音波センサ40の外部の被検出体を用意して超音波を送信し、被検出体からの反射波を用いることなく、受信素子R1〜R4の動作不良を自己診断することができるので、所望のタイミングで超音波センサ40の動作不良を診断することができ、超音波センサ40の信頼性を向上することができる。
また、超音波センサ40が自己診断用のR1〜R4を備えているため、受信素子R1〜R4を送信可能に構成する必要がないとともに、受信素子R1〜R4を同時に自己診断することが可能となる。
【0076】
(2)超音波送信素子17は、各受信素子R1〜R4から等しい距離に配置されているため、各受信素子R1〜R4が正常に作動している場合には、各受信素子R1〜R4において強度及び検出時間が等しい受信信号が検出される。これにより、各受信信号を比較することにより、動作不良が生じている受信素子を容易に検知することができる。
【0077】
[その他の実施形態]
(1)超音波センサ10、30、40は、バンパ20以外の車両60の部材に取り付けて使用することができる。例えば、図6に示すように、ヘッドランプカバー21に取り付けることができる。この構成を用いると、障害物などで反射した超音波が車両の一部に遮られることがないので、確実に超音波センサで検出することができ、障害物センサなどに超音波センサを適用する場合に有効である。
更に、超音波センサの用途に合わせて、他の部材に取り付けることもできる。例えば、超音波センサを車両60の側方の障害物センサとして用いる場合には、ウインカのカバー22、ドアミラー23などに取り付けることもできる。車両60の後方の障害物センサとして用いる場合には、リアランプのカバー24、バックランプのカバー25などに取り付けることもできる。
【0078】
(2)受信素子R1〜R4毎に、音響整合部材12を異なる材料により形成することができる。例えば、受信素子R1、R2の音響整合部材12をポリカーボネート系樹脂、受信素子R3、R4の音響整合部材12をアルミニウム合金により形成することができる。この構成を用いると、ポリカーボネート系樹脂とアルミニウム合金とでは弾性率などの温度依存性が異なるため、両者の温度依存性を用いることにより、温度の推定精度を向上することができる。
【0079】
[各請求項と実施形態との対応関係]
取付面12bが請求項1に記載の対向する面に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態の超音波センサの説明図である。図1(A)は、第1実施形態の超音波センサを音響整合部材側から見た平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面図である。
【図2】被検出体の位置の3次元検知を行う方法の説明図である。図2(A)は、障害物で反射された超音波を受信素子で受信する状態を示す模式図であり、図2(B)は、超音波の送信信号と各受信素子により受信する受信信号との関係を示す模式図である。
【図3】超音波センサの自己診断方法の原理を説明する説明図である。図3(A)は、受信素子が正常に作動している場合の受信信号の説明図であり、図3(B)及び図3(C)は、正常に作動していない受信素子がある場合の受信信号の説明図である。
【図4】音響整合部材及び振動減衰部材の物性の温度依存性による受信信号の変化を示す説明図である。
【図5】音響整合部材の共振周波数の温度依存性による受信信号の変化を示す説明図である。
【図6】第2実施形態に係る超音波センサの断面説明図である。
【図7】受信素子により受信された音響整合部材及び素子封止材の共振信号の模式図である。
【図8】第3実施形態に係る超音波センサの断面説明図である。
【図9】超音波センサの車両への搭載位置の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
10、30、40 超音波センサ
11 圧電素子
12 音響整合部材
12a 受信面
12b 取付面(対向する面)
13 振動減衰部材
16 素子封止材
20 バンパ
21 ヘッドランプカバー
22 ウインカのカバー
23 ドアミラー
24 リアランプのカバー
25 バックランプのカバー
M 障害物(被検出体)
d 各音響整合部材の中央部間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、
前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて形成された超音波センサの自己診断方法であって、
前記受信素子の少なくとも1つは超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、前記振動減衰部材を介して他の前記受信素子に伝達し、前記他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することを特徴とする超音波センサの自己診断方法。
【請求項2】
前記音響整合部材が、前記受信面で受信した超音波により内部で定在波が発生するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項3】
前記超音波を送信可能な受信素子より送信される超音波の周波数は、前記音響整合部材の共振周波数であることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項4】
超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、
前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて、前記各超音波検出素子を素子封止材により覆って形成された超音波センサの自己診断方法であって、
前記受信素子の少なくとも1つは超音波を送信可能に形成されており、当該受信素子から送信した超音波を、前記素子封止材を介して他の前記受信素子に伝達し、前記他の受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することを特徴とする超音波センサの自己診断方法。
【請求項5】
前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記超音波を送信可能な受信素子より送信された超音波が前記他の受信素子により受信され受信信号として検出された検出時間、または、前記受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項6】
前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記超音波を送信可能な受信素子より送信する超音波の周波数を掃引し、前記他の受信素子が備えた前記音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項7】
超音波を送信する送信素子から送信され、被検出体にて反射された超音波を検出する超音波検出素子と、前記被検出体にて反射された超音波を受信する受信面が、前記被検出体の存在する空間側に露出し、前記受信面で受信した超音波を、前記受信面と対向する面に取り付けられた前記超音波検出素子に伝達する音響整合部材であって、音響インピーダンスが、空気より大きく、かつ、前記超音波検出素子より小さい材料により形成された音響整合部材と、の組からなる受信素子を複数組備え、
前記複数組の受信素子が、前記各受信素子の音響整合部材間に、前記音響整合部材間の振動の伝達を減衰させる振動減衰部材を介在して、アレイ状に配置されて形成された超音波センサの自己診断方法であって、
前記受信面から見て前記超音波検出素子側に配置された第2の送信素子を備え、前記第2の送信素子から送信された超音波を前記各受信素子により受信した受信信号に基づいて、その受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かを判断することを特徴とする超音波センサの自己診断方法。
【請求項8】
前記第2の送信素子は、前記各受信素子から等しい距離に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項9】
前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記第2の送信素子より送信された超音波が前記各受信素子により受信され受信信号として検出された検出時間、または、前記受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項10】
前記受信素子がそれぞれ正常に作動しているか否かの判断に加えて、前記第2の送信素子より送信する超音波の周波数を掃引し、前記各受信素子が備えた前記音響整合部材の共振周波数、または、共振周波数における受信信号の信号強度に基づいて前記超音波センサの温度を推定することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項11】
前記各音響整合部材は、前記各音響整合部材の中央部間の距離が、空気中を伝達する超音波の波長の1/2に等しい、または、ほぼ等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項12】
前記音響整合部材は、ポリカーボネート系樹脂またはポリエーテルイミド系樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項13】
前記超音波検出素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系材料により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。
【請求項14】
前記超音波センサは、車両のヘッドランプカバー、リアランプのカバー、ウインカのカバー、バックランプのカバー、ドアミラー、または、バンパに設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1つに記載の超音波センサの自己診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309512(P2008−309512A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155027(P2007−155027)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】