説明

超音波センサーユニット

【課題】超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮できる、超音波センサーユニットを提供することを目的としている。
【解決手段】圧電体3からなる超音波送信用センサー52を送信側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、圧電体3からなる超音波受信用センサー53を受信側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、各センサーアレイは、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53が平面視した状態で重なっておらず、かつ、送信側表面と受信側表面のどちらか一方が、超音波送信センサー52の超音波送信方向と逆方向を向き、送信側表面と受信側表面で貼り合わされ、センサーアレイには、他方のセンサーアレイの超音波センサー53を露出させる貫通孔11bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサーユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサーは、対象物体までの距離の測定、流速の測定、配管の非破壊検査など多くの測定や検出に活用されている。このような超音波センサーとして、従来から、ダイアフラム型のものが知られている。この超音波センサーは、ダイアフラムの一方の面側に2つの電極で挟んだPZTセラミックスの薄膜層を形成し、これらの電極から出力される電気信号を用いて超音波を検出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、多数の超音波センサーをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によってアレイ状に配置した超音波センサーアレイは、所望の方向へ鋭い指向性を持つ超音波を生成することができることから、超音波センサーアレイを用いた3次元的なスキャニングを実現すべく、研究開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−49301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、MEMS技術によって製造される超音波センサーアレイは、超音波センサーを構成するダイアフラム構造が基本的に全てのセンサー間で同じになる。また、超音波センサーアレイを小型化するためには送信用超音波センサーと超音波受信用センサーとを同一基板上に形成することでアレイ化することが有効である。
しかしながら、MEMS技術を用いた場合、同一基板に形成される送信用素子及び受信用素子は同一のダイアフラム構造となってしまう。送信用超音波センサー及び超音波受信用センサーは、最適なダイアフラム構造が異なっている。そのため、送信用超音波センサー及び超音波受信用センサーは、それぞれの性能を最大限に発揮することができず、新たな技術提供が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮できる、超音波センサーユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の超音波センサーユニットは、超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面とが、同方向を向くように貼り合わされてなり、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の超音波センサーユニットによれば、超音波送信用センサーアレイ及び超音波受信用センサーを独立して備えるので、例えば超音波送信用センサーアレイ及び超音波受信用センサーをそれぞれに適した最適な条件で構成することで、強い音圧を出す超音波送信用センサーと受信感度に優れた超音波受信用センサーとを備えた構成を実現できる。よって、超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮できる、信頼性の高いものを提供できる。また、超音波受信用センサーアレイと送信用超音波センサーアレイとが貼り合わされているのでセンサーユニット自体の剛性が高まり、超音波の送信時及び受信時の信頼性を向上できる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の超音波センサーユニットは、超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面のどちらか一方が、前記超音波送信センサーの前記超音波の送信方向と逆方向を向き、前記送信側表面と前記受信側表面とが貼り合わされてなり、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の超音波センサーユニットによれば、超音波送信用センサーアレイと超音波受信用センサーアレイとが、超音波送信用センサー及び超音波受信用センサーが備えられている送信側表面と受信側表面とが向き合わされた状態で貼り合わせられているので、各表面に形成された各配線を容易に接続し、共有することができる。
特に、超音波送信用センサーの圧電体に電圧を印加する電極対と、超音波受信用センサーの圧電体から発生する電圧を取り出す電極対とにおいて、定電圧を保持するグランド配線を共有化させることができる。送信側表面若しくは受信側表面のどちらか一方にグランド配線を形成しておけば、他方の表面にはグランド配線への接続端子となる引き出し配線を形成しておくだけで良いので、製造コストの低減が図れる。
【0011】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の超音波センサーユニットは、超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面のどちらか一方が、前記超音波送信センサーの前記超音波の送信方向と逆方向を向き、前記超音波送信センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられていない送信側裏面と、前記超音波受信センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられていない受信側裏面とが貼り合わされてなり、前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の超音波センサーユニットによれば、超音波送信用センサーアレイと超音波受信用センサーアレイとが、送信側裏面と受信側裏面とで貼り合わされており、超音波送信用センサーと超音波受信用センサーとの間に各センサーアレイの基部が介在することとなる。よって、超音波送信用センサーでの超音波発生時の振動が超音波受信用センサーに伝播し難くなるので、超音波受信用センサーをより高感度のものにできる。加えて、この逆に、超音波受信用センサーへの影響が軽減されることにより、超音波送信用センサーの発信時の音圧を大きくすることも可能となる。よって、より良い性能を発揮でき、かつクロストークが少ない信頼性の高い超音波センサーユニットを提供できる。
【0013】
また、上記超音波センサーユニットにおいては、前記超音波送信用センサーが前記超音波送信用センサーアレイに規則的に配置されており、前記超音波受信用センサーが前記超音波受信用センサーアレイに規則的に配置されているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、超音波送信用センサーが規則的に配置されるので、超音波送信用センサーアレイは強い音圧で超音波を送信することができる。また、超音波受信用センサーが規則的に配置されるので、超音波受信用センサーアレイは超音波送信用センサーアレイから送信された超音波を優れた感度で受信することができる。
【0015】
また、上記超音波センサーユニットにおいては、前記前記超音波送信用センサーアレイにおける前記超音波送信用センサーの配置パターンと前記超音波受信用センサーアレイにおける前記超音波受信用センサーの配置パターンとが異なっているのが好ましい。さらに前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーは、圧電型センサー又は容量型センサーのいずれかであるのがより望ましい。
このようにすれば、圧電型又は容量型のセンサーが用いられるので、超音波送信用センサーアレイ及び超音波受信用センサーアレイの設計自由度を向上させることができる。よって、所望の条件において最大限の性能を発揮できる超音波センサーユニットを提供できる。
【0016】
また、上記超音波センサーユニットにおいては、前記超音波送信用センサーアレイにおける前記超音波送信用センサーの数と、超音波受信用センサーアレイにおける前記超音波受信用センサーの数とが異なるのが好ましい。
このようにすれば、超音波センサーの数を両方のセンサーアレイ間で異ならせることで、超音波送信用センサーアレイ及び超音波受信用センサーアレイをそれぞれ最適な条件で設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】PDAの斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る超音波センサーアレイの斜視図である。
【図3】超音波センサーユニットの構成要素を示す図である。
【図4】超音波センサーユニットの平面構成を示す図である。
【図5】超音波センサーユニットの制御部のシステム構成図である。
【図6】超音波センサーユニットの要部を拡大する図である。
【図7】超音波送信用センサーにおける下部電極の平面図である。
【図8】超音波センサーの振動板が撓んだ状態を示す断面図である。
【図9】第二実施形態に係る超音波センサーユニットの構成要素を示す図である。
【図10】第二実施形態に係る超音波センサーユニットの平面構成を示す図である。
【図11】第一実施形態、第三実施形態、及び第四実施形態に係る各超音波センサーユニットの要部を示す模式図である。
【図12】第三実施形態に係る超音波センサーユニットの要部を拡大する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や部材毎に縮尺を適宜変更している。なお、以下の説明では、本発明の超音波センサーユニットを備えるPDA(Personal Data Assistance)を例に挙げて説明する。
【0019】
(第一実施形態)
図1は本実施形態のPDAの構成を模式的に表す斜視図である。図2は本実施形態のPDAが備える超音波センサーユニットの構成を模式的に表す斜視図である。図3(a)は超音波センサーユニットの構成要素としての超音波送信用センサーユニットの平面構成を示す図であり、図3(b)は超音波センサーユニットの構成要素としての超音波受信用センサーユニットの平面構成を示す図である。図4は超音波センサーユニットの平面構成を示す図である。図5は本実施形態の超音波センサーユニットの制御部の構成を模式的に表すシステム構成図である。なお、図5では後述する第2下部電極に一定電圧を印加する構成については省略している。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のPDA100は本体30に表示部20を備えている。表示部20は例えば液晶パネルや有機ELパネル等からなり、本体30内部に収容された演算・制御部に接続され、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。また、本体30の外周には、超音波センサーユニット10が設置されている。超音波センサーユニット10は、例えば人間の手、指またはや入力用のペンの形状や動作を検出してPDA100への入力とする入力装置として機能するものである。
【0021】
図2に示すように、超音波センサーユニット10は、超音波送信用センサーアレイ50と、超音波受信用センサーアレイ51とを備えている。超音波送信用センサーアレイ50は、超音波を送信する超音波送信用センサー52を複数有している。また、超音波受信用センサーアレイ51は、超音波を受信する超音波受信用センサー53を複数有している。なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、それぞれ圧電型の超音波センサーから構成されている。
【0022】
図3(a)に示すように、超音波送信用センサーアレイ50は、例えば単結晶シリコン基板等からなる基部11を備えている。基部11には、平面視略円形状の複数の開口部11aがアレイ状に形成されている。開口部11aの各々には、超音波を送信する超音波送信用センサー52がそれぞれ設けられている。すなわち、超音波送信用センサーアレイ50は、基部11の一面に複数の超音波送信用センサー52がアレイ状に規則的に配置された構成となっている。具体的に本実施形態では、複数の超音波送信用センサー52がマトリクス状に配置されている。
【0023】
また、基部11には平面視略正方形状の複数の貫通孔11bがマトリクス状に規則的に形成されている。具体的には、貫通孔11bは、開口部11aに対して千鳥状となるように基部11に形成されている。
【0024】
また、図3(b)に示すように、超音波受信用センサーアレイ51は、例えば単結晶シリコン基板等からなる基部61を備えている。基部61には、平面視略円形状の複数の開口部61aがアレイ状に形成されている。開口部61aの各々には、上記超音波受信用センサー53がそれぞれ設けられている。すなわち、超音波受信用センサーアレイ51は、基部61の一面に複数の超音波受信用センサー53がアレイ状に規則的に配置された構成となっている。
【0025】
本実施形態では、超音波送信用センサーアレイ50における超音波送信用センサー52の数と、超音波受信用センサーアレイ51における超音波受信用センサー53の数とが異なっている。具体的には、超音波センサーユニット10は、超音波受信用センサー53よりも超音波送信用センサー52を多く備えている。このように超音波センサーの数を両センサーアレイ50,51間で異ならせることで、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51がそれぞれ最適な条件で設計されたものとなっている。
【0026】
超音波センサーユニット10は、図2に示したように、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51が貼り合わされることで構成されている。すなわち、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51が独立して形成されたものとなっている。
【0027】
図4に示されるように、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51は、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53が平面視した状態で重ならないように貼り合わされたものとなっている。
【0028】
具体的に超音波受信用センサー53は、超音波送信用センサーユニット50の基部11に形成された貫通孔11b内に露出した状態となっている。これにより、超音波受信用センサーアレイ51は、貫通孔11b内に露出された超音波受信用センサーアレイ51によって所定の超音波を受信可能となっている。
また、超音波受信用センサーアレイ51及び超音波送信用センサーアレイ50は同一の外形形状となっており、超音波センサーユニット10は平面視略矩形形状を有している。
【0029】
超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53の各々にはそれぞれ配線(図示略)が接続され、各配線はフレキシブルプリント基板12を介して制御基板13の端子部13aに接続されている。制御基板13には演算部、記憶部等からなる制御部40が設けられている。制御部40は、超音波送信用センサー52に入力する入力信号を制御すると共に、超音波受信用センサー53から出力された出力信号を処理するように構成されている。
【0030】
図5に示すように、制御部40は超音波センサーユニット10に接続され、主に制御・演算部41と、記憶部42と、超音波発生部43と、超音波検出部44と、送受信を切り替えるT/Rスイッチ45とを備えている。超音波発生部43は、サイン波を発生させるサイン波発生部43aと、個々の超音波センサー1に設けられサイン波の位相を変化させる移相部43bと、ドライバー43cとにより構成されている。超音波検出部44は、主に増幅部44aと、A/D変換部44bとにより構成されている。
【0031】
制御・演算部41は、超音波センサーユニット10による超音波の送信時には、サイン波発生部43aによりサイン波を発生させ、移相部43bによりサイン波を個々の超音波送信用センサー52に対応する位相に変化させる。また、制御・演算部41は、超音波センサーユニット10の超音波の受信時には、T/Rスイッチ45を切り換えて超音波受信用センサー53から出力された出力信号を増幅部44aに伝送させる。また、制御・演算部41は、記憶部42に記憶された情報をPDA100の制御・演算部(図示略)に出力可能に構成されている。
【0032】
図6は、図2に示す超音波センサーユニット10をA−A’線で切断し、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53の一つを拡大した拡大断面図である。図7は超音波送信用センサー52における下部電極の平面図である。なお、図6の断面図は図7のB−B’線に沿う断面に対応している。
【0033】
図6に示すように、超音波送信用センサー52は、基部11の開口部11aを閉塞するように設けられた振動板2と、振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えている。基部11に形成された開口部11aの深さdは、例えば約180μm〜200μm程度である。
【0034】
また、超音波受信用センサー53は、基部61の開口部61aを閉塞するように設けられた振動板2と、振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えている。なお、超音波受信用センサー53は、超音波送信用センサー52の基部11に形成された貫通孔11b内に露出された状態となっている。
【0035】
ところで、超音波送信用センサーアレイ50は超音波送信用センサー52が規則的に配置されることで構成されているので、強い音圧で超音波を送信可能となっている。また、超音波受信用センサーアレイ51は、超音波受信用センサー53が規則的に配置されることで構成されているので、超音波受信用センサーアレイ51は超音波送信用センサーアレイ50から送信された超音波を優れた感度で受信可能となっている。
【0036】
さらに本実施形態では、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53がMEMS技術によりそれぞれ独立して形成されたものとなっている。したがって、超音波送信用センサーアレイ50における超音波送信用センサー52は、超音波送信用として最適な条件を満たすように形成されるため、より音圧の強い超音波を送波可能となっている。また、超音波受信用センサーアレイ51における超音波受信用センサー53は、超音波受信用として最適な条件を満たすように形成されるため、物体に当たって跳ね返ることで減衰した弱い超音波を受けてもダイアフラムの撓みが大きく得られ、より良好な出力感度が得られるようになっている。
【0037】
ここで、超音波送信用センサー52の構成について詳述する。なお、超音波受信用センサー53の構成は、振動板2及び圧電体3等の厚さ等が異なるものの、基本的な構成は同一であるため、構成の説明は省略する。
【0038】
振動板2は、基部11側に設けられ例えばSiOにより形成された第1酸化膜2aと、第1酸化膜2aの基部11とは反対側に積層され例えばZrOにより形成された第2酸化膜2bとの二層構造となっている。第1酸化膜2aは例えば単結晶シリコン基板の表面を熱酸化させることにより約3μm程度の厚さに形成されている。第2酸化膜は例えばCVD(化学気相成長)法等により例えば約400nm程度の厚さに形成されている。
【0039】
振動板2が開口部11aと平面的に重なって開口部11aに露出された領域は、振動板2の振動領域Vとなっている。開口部11aの径Dは振動領域Vの振動板2の固有振動数に応じて例えば約100μm〜数百μm程度の範囲で適宜設定されている。
振動板2の振動領域Vで基部11と反対側の面には下部電極4が設けられている。
【0040】
図6及び図7に示すように、下部電極4は振動領域Vの中央部に設けられた第1下部電極4aと、その周辺に設けられた第2下部電極4bと、に分離されている。第1下部電極4aと第2下部電極4bは、それぞれ超音波センサーユニット10の制御部40に接続された配線6a,6bに接続されている。下部電極4は例えばIr等の導電性金属材料により約200nm程度の厚さに形成されている。下部電極4上には下部電極4を覆うように振動領域V及びその境界の外側に圧電体3が設けられている。
【0041】
圧電体3は例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BaTiO(チタン酸バリウム)等により形成され、中央部の第1圧電部3aと周辺部の第2圧電部3bとにより構成されている。換言すると、圧電体3は一体的に形成され、第1下部電極4aと第2下部電極4bとが分離されることにより、圧電体3の第1下部電極4aに対応する部分が第1圧電部3aとなり、圧電体3の第2下部電極4bに対応する部分が第2圧電部3bとなっている。
【0042】
第1圧電部3aは第1下部電極4aに接続された圧電体3の中央部分である。第1圧電部3aは印加電圧により変形して振動板2を振動させるか又は振動板2の振動により変形して電位差を発生させるためのものである。
第2圧電部3bは第2下部電極4bに接続された圧電体3の周辺部分である。第2圧電部3bは印加電圧により変形して振動板2を静的に撓ませるためのものである。第2圧電部3bは振動領域Vの境界を跨ぐように、振動領域Vの境界の近傍に設けられている。
【0043】
圧電体3の上には上部電極5が形成されている。上部電極5は例えばIr等の導電性金属材料により形成され、第1圧電部3aおよび第2圧電部3bに接続されている。上部電極5の厚さは例えば約50nm程度となっている。また、上部電極5は配線7を介して超音波センサーユニット10の制御部40に接続されている。このような構成に基づいて、超音波送信用センサーアレイ50は音圧のより強い超音波を送波可能となっている。
【0044】
次に、本実施形態に係るPDA100の動作について説明する。
図1に示したように、PDA100において人間の手や指の形状や動作を検出する際には、超音波センサーユニット10により検出領域に超音波を送信する。
【0045】
具体的には、まず、超音波センサーユニット10の制御部40により、超音波送信用センサー52の上部電極5と第2下部電極4bとの間に一定の電圧を印加する。図6に示すように振動板2の振動領域Vの境界を跨ぐように形成された第2圧電部3bは、上部電極5と第2下部電極4bとの間に電圧が印加されると、印加電圧に応じて振動板2の面方向に伸長されたり圧縮されたりする。
【0046】
第2圧電部3bが振動板2の面方向に伸長されると、振動板2の振動領域Vの境界の近傍において振動板2の圧電体3側が面方向に伸長され、図8(a)に示すように振動板2の振動領域Vが基部11側に凸(図の下方向に凸)となるように撓む。また、第2圧電部3bが振動板2の面方向に圧縮されると、振動板2の振動領域Vの境界の近傍において振動板2の圧電体3側が面方向に圧縮され、図8(b)に示すように振動板2の振動領域Vが基部11側に凹(図の上方向に凸)となるように撓む。
【0047】
このように、個々の超音波送信用センサー52の第2圧電部3bに印加する印加電圧を制御することにより、超音波送信用センサー52の振動板2の静的な撓み量や撓み方向を所望の状態に制御する。また、それぞれの超音波送信用センサー52の第2圧電部3bへの印加電圧を一定の電圧に維持することで、振動板2の振動領域Vを所望の形状に静的に撓ませた状態を維持しておく。
【0048】
次に、振動板2の振動領域Vを静的に撓ませた状態で、図3に示すように制御部40のサイン波発生部43aによりサイン波を発生させ、移相部43b、ドライバー43c、T/Rスイッチ45を介して超音波センサーユニット10の各々の超音波送信用センサー52の第1下部電極14aに少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加する。これにより、各々の超音波送信用センサー52の第1圧電部3aが振動板2の面方向に伸縮し、振動板2の振動領域Vが振動板2の法線方向に振動する。
【0049】
ここで、各々の超音波送信用センサー52の第1下部電極4aに少しずつ位相をずらしたサイン波電圧を印加する。これにより、各々の超音波送信用センサー52の振動領域Vの振動板2は、少しずつ位相がずれた状態で振動する。
各々の超音波送信用センサー52の振動領域Vの振動板2が少しずつ位相のずれた状態で振動することで、各々の超音波送信用センサー52から発せられる超音波が干渉する。この各々の超音波送信用センサー52から発せられる超音波の干渉により、超音波の進行方向が振動板2の法線方向に対して傾いた状態となり、超音波に指向性が付与される。
【0050】
この超音波の指向性の変化を利用し、各々の超音波送信用センサー52の第1圧電部3aに印加するサイン波電圧の位相のずれを変化させることで、図1に示す超音波センサーユニット10(超音波送信用センサーアレイ50)から送信される超音波の方向を変化させ、PDA100の検出領域を走査する。
【0051】
このとき、図1に示すように検出領域内に例えば人間の手や指が存在すると、超音波センサーユニット10から送信された超音波は人間の手や指によって反射する。人間の手や指によって反射した超音波は、超音波送信用センサーアレイ50に設けられた貫通孔11bを介して超音波受信用センサー53に到達すると、超音波受信用センサー53の振動板2の振動領域Vが振動する。振動板2の振動領域Vが振動すると、第1圧電部3aが振動板2の面方向の伸縮に伴って伸縮され、第1圧電部3aに電位差が発生する。
【0052】
第1圧電部3aに発生した電位差は、上部電極5及び第1下部電極4aに接続された配線6a,7によって超音波受信用センサー53の出力信号として超音波センサーユニット10の制御部40に伝送される。超音波センサーユニット10の制御部40に伝送された個々の超音波受信用センサー53からの出力信号は、T/Rスイッチ45、増幅部44a、A/D変換部44bを介して記憶部42に記憶される。制御・演算部41は、記憶部42に記憶された個々の超音波受信用センサー53の出力信号から検出領域の人間の手や指までの距離や移動速度を算出して出力する。
【0053】
PDA100の演算制御部(図示略)は超音波センサーユニット10から出力された人間の手や指までの距離や移動速度から手や指の状態や動作を認識し、予め登録された手や指の状態や動作と比較する。比較の結果、検出した人間の手や指の状態や動作が予め登録されたものと一致すれば、PDA100の演算制御部は人間の手や指の形状や動作を所定の入力として認識し、例えば表示部20に画像を表示させる等、所定の動作を実行する。
したがって、本実施形態のPDA100によれば、超音波センサーユニット10を入力装置として機能させることができる。
【0054】
ここで、超音波センサーユニット10が備える超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、圧電体3が第1圧電部3aと第2圧電部3bとにより構成されている。そのため、第2圧電部3bに印加する印加電圧により振動板2の静的な撓み量や撓み方向を制御することができる。これにより、第1圧電部3aにより振動板2を振動させ超音波を送信する際に、第2圧電部3bによって振動板2の撓み量や撓み方向を制御し、超音波送信用センサー52における超音波の指向性や送信特性を制御することができる。
【0055】
また、第2圧電部3bによって振動板2の撓み量や撓み方向を制御することで、振動板2の振動領域Vに入射した超音波による振動板2の振動状態を制御し、第1圧電部3aが変形して発生する電圧を変化させ入力信号を調整することができる。これにより、超音波受信用センサー53における超音波の感度や受信特性を制御することができる。
【0056】
また、図8(b)に示したように基部11側に凹となるように振動板2を撓ませることで、振動板2の振動により発せられた超音波を収束させ、超音波の強度や到達距離を調整することができる。
【0057】
また、本実施形態の超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、第1圧電部3aと第2圧電部3bとが一体的に設けられ、第1下部電極4aと第2下部電極4bとが分離されている。これにより、第1圧電部3aと第2圧電部3bとに異なる印加電圧を印加し、第1圧電部3aと第2圧電部3bとを個別に駆動させることができる。また、第2圧電部3bにより振動板2を静的に撓ませた状態で、振動板2の振動により第1圧電部3aに発生した電位差を検出することができる。また、圧電体3の製造を容易にし、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53の生産性を向上させ、超音波センサーユニット10の生産コストを低減することができる。
【0058】
また、本実施形態の超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、振動板2が基部11、61の開口部11a、61aを閉塞するように設けられ、第1圧電部3a及び第2圧電部3bは振動板2の振動領域Vに設けられている。これにより、基部11、61によって振動板2を支持し、振動板2の振動領域Vのみを振動させることができる。また、開口部11a、61aの大きさや形状により振動領域Vの振動板2の固有振動数を調整することができる。また、第2圧電部3bにより振動板2の振動領域Vを静的に撓ませた状態で、第1圧電部3aにより振動板2の振動領域Vを振動させ、あるいは振動板2の振動領域Vの振動により第1圧電部3aを変形させることができる。
【0059】
また、本実施形態の超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、第1圧電部3aが振動領域Vの中央部に設けられ、第2圧電部3bが第1圧電部3aの周辺に設けられている。これにより、第2圧電部3bによって振動板2の振動領域Vの周辺部を変形させ、振動領域Vの振動板2を基部11、61側に凸状又は凹状に撓ませることができる。そして、凸状又は凹状に撓んだ振動板2を第1圧電部3aにより振動させ、あるいは凸状又は凹状に撓んだ振動板2の振動により第1圧電部3aを変形させることができる。
【0060】
また、本実施形態の超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53は、第2圧電部3bは振動領域Vの境界近傍に設けられている。これにより、振動板2の振動領域Vの近傍を変形させ、振動板2の振動領域Vを基部11側に凸状又は凹状により効率よく撓ませることができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の超音波センサーユニット10によれば、それぞれに適した最適な条件で構成された超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51を独立して備えるので、強い音圧を出す超音波送信用センサー52及び受信感度に優れた超音波受信用センサー53を備えたものとなる。この超音波センサーユニット10は、超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮することができ、信頼性に優れたものとなっている。
また、超音波センサーユニット10は、超音波受信用センサーアレイ50と送信用超音波センサーアレイ51とが貼り合わされているので、センサーユニット自体の剛性を高めることができ、超音波の送信時及び受信時の信頼性を向上させることができる。
【0062】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態に係る超音波センサーユニットについて説明する。なお、本実施形態に係る超音波センサーユニットと第一実施形態に係る超音波センサーユニットとの違いは、超音波センサーの配置構造であり、それ以外の構成は共通となっている。そのため、第一実施形態と共通の部材については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0063】
図9(a)は本実施形態に係る超音波送信用センサーアレイの平面構成を示す図であり、図9(b)は本実施形態に係る超音波受信用センサーアレイの平面構成を示す図である。図10は本実施形態に係る超音波センサーユニットの平面構造を示す図である。
【0064】
図9(a)に示すように、本実施形態に係る超音波送信用センサーアレイ50は、複数の超音波送信用センサー52が同心円状に配置されている。また、基部11には平面視略円形状の複数の貫通孔11bが同心状に規則的に形成されている。具体的には、貫通孔11bは、開口部11aに対して同心状となるように基部11に形成されている。
図9(b)に示すように、本実施形態に係る超音波受信用センサーアレイ51は、複数の超音波送信用センサー52が同心円状に配置されている。
【0065】
超音波センサーユニット100は、図10に示すように、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51が貼り合わされることで構成されている。超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51は、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53が平面視した状態で重ならないように貼り合わされたものとなっている。超音波受信用センサー53は、超音波送信用センサーユニット50の基部11に形成された貫通孔11b内に露出した状態となっている。これにより、超音波受信用センサーアレイ51は、貫通孔11b内に露出された超音波受信用センサーアレイ51によって所定の超音波を受信可能となっている。
【0066】
本実施形態の超音波センサーユニット100においても、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51を独立して備えるので、強い音圧を出す超音波送信用センサー52及び受信感度に優れた超音波受信用センサー53を備えたものとなる。よって、超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮することができ、信頼性に優れたものとなる。
【0067】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、基部11、61に形成する開口部11a,61aの平面形状は円形状に限られず、基部11に形成する貫通孔11bの平面形状は矩形形状に限られない。
【0068】
また、上述した実施形態では、超音波送信用センサーアレイ50の基部11に貫通孔11bを形成する場合について説明したが、超音波受信用センサーアレイ51の基部61に貫通孔61bを形成するようにしてもよい。すなわち、超音波送信用センサーアレイ50及び超音波受信用センサーアレイ51の貼り合せの順番を入れ替えるようにしてもよい。
【0069】
また、上記第一実施形態では、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53が平面視した状態でそれぞれマトリクス状に配置され、上記第二実施形態では、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53が平面視した状態でそれぞれ同心円状に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53のいずれか一方をマトリクス状に配置し、超音波送信用センサー52及び超音波受信用センサー53の他方を同心円状に配置するようにしてもよい。
【0070】
(第三実施形態)
続いて、本発明の第三実施形態に係る超音波センサーユニットについて説明する。なお、本実施形態に係る超音波センサーユニットと第一実施形態に係る超音波センサーユニットとの違いは、超音波送信用センサーアレイと超音波受信用センサーアレイとの配置方向と、その貼り付け位置であり、それ以外の構成は共通となっている。そのため、第一実施形態と共通の部材については同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0071】
図11(a)〜(c)は、それぞれ第1実施形態、第三実施形態及び第四実施形態に係る超音波送信センサーアレイ50と超音波受信用センサーアレイ51との貼り付け状態を示す模式図であって、図中において紙面上方が超音波の発信方向である。図12は本第三実施形態に係る超音波センサーユニットの要部を拡大した図である。
以下の説明において、超音波送信用センサーアレイ50の基部11において超音波送信用センサー52が形成されている面、すなわち圧電体3が形成されている表面を送信側表面50a、その逆側の面を送信側裏面50bと称する。これと全く同様に、超音波受信用センサーアレイ51の基部61において超音波受信用センサー53が形成されている面を受信側表面51a、その逆側の面を受信側裏面51bと称する。また、超音波送信用センサー52から超音波は、図11で上方に向かって送信されるものとする。
【0072】
図11(a)に示したように、既述の第一実施形態においては、超音波送信用センサーアレイ50の送信側表面50aと超音波受信用センサーアレイ51の受信側表面51aとが同じ方向を向き、超音波送信用センサーアレイ50の上に超音波受信用センサーアレイ51が積層された状態で貼り合わされている。
これに対して、本実施形態においては、図11(b)に示したように、超音波送信用センサーアレイ50の送信側表面50aと超音波受信用センサーアレイ51の受信側表面51aとは逆方向を向き、送信側表面50aと受信側表面51aの各周縁部で互いに貼り合わされており、図12に示したように、送信側表面50a及び受信側表面51aの各第2下部電極4bからそれぞれ引き出された各配線6bがグランド配線(図示せず)に接続されている。
【0073】
グランド配線は、送信側表面50aの圧電体3に電圧を印加する第1下部電極4aと、受信側表面51aの圧電体3から発生する電圧を取り出す第1下部電極4aとにおいて、定電圧を保持するものであって、図12において紙面奥行き方向に延設されているものである。本実施形態においては、センサーユニットの下側となる超音波送信用センサーアレイ50の基部11上に圧電体3および電極4、5と共に配線されている。
一方、超音波受信用センサーアレイ51には、グランド配線を設けずに、配線6bから引き出した接続端子(図示せず)を設け、送信側表面50aと受信側表面51aとを付き合わせた状態で貼り合せることで、接続端子を送信側表面50aの配線6bと接続してグランド配線を共有する。
【0074】
このような構成とすることで、グランド配線のパターニングを一方の基部にのみ設ければ良いので、製造工程の簡略化が図ることができ、生産コストを低減することができる。
なお、本実施形態においては、共有する配線はグランド配線としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができ、例えば、他の配線を共有してもよい。また、同様の趣旨により、共有する配線は送信側表面50aのみならず、受信側表面51aに形成されていても良く、超音波送信用センサー50からの超音波の送信方向は図11で下方へ向かって送信されてもよい。
【0075】
(第四実施形態)
本実施形態において、超音波センサーユニットが上述の第三実施形態における超音波センサーユニットと異なるところは、図11(c)に示したように、超音波送信用センサーアレイ50と超音波受信用センサーアレイ51とが、送信側裏面50bと受信側裏面51bとで貼り合わされているところである。
【0076】
このような構成によれば、超音波送信用センサー52と超音波受信用センサー53の各振動板2の間に各センサーアレイの基部11、61が介在することとなる。
超音波送信用センサー52において強い音圧を出す場合には、振動板2を大きく撓ませることになるが、本実施形態においては、第一実施形態および第三実施形態における超音波センサーユニットに比較して、振動板2どうしの距離が遠くなっているために、空気中を伝播する超音波の音圧の減衰度が大きくなるので、超音波受信用センサー53で直接受信してしまうクロストークの度合いを小さくすることができる。また、基部11、61が介在することにより、センサーユニット自体を伝播する超音波も減数度が大きくなるので、これによってもクロストークを低減することができ、超音波受信用センサーをより高感度のものにできる。この超音波センサーユニット10は、強い音圧を出す超音波送信用センサー52及び受信感度に優れた超音波受信用センサー53を備えたものとなり、超音波の送信時及び受信時のいずれにおいても最大限の性能を発揮することができ、信頼性に優れたものとなっている。
【符号の説明】
【0077】
2…振動板、3…圧電体、4…下部電極、5…上部電極、10…超音波センサーユニット、11b…貫通孔、50…超音波送信用センサーアレイ、50a…送信側表面、50b…送信側裏面、51…超音波受信用センサーアレイ、51a…受信側表面、51b…受信側裏面、52…超音波送信用センサー、53…超音波受信用センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、
前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、
かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面とが、同方向を向くように貼り合わされてなり、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする超音波センサーユニット。
【請求項2】
超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、
前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、
かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面のどちらか一方が、前記超音波送信センサーの前記超音波の送信方向と逆方向を向き、
前記送信側表面と前記受信側表面とが貼り合わされてなり、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする超音波センサーユニット。
【請求項3】
超音波を送信する圧電体からなる超音波送信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波送信用センサーアレイと、
前記超音波を受信する圧電体からなる超音波受信用センサーを、その片側表面に複数有する超音波受信用センサーアレイと、を備え、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイは、前記超音波送信用センサー及び前記超音波受信用センサーが平面視した状態で重なっておらず、
かつ、前記超音波送信用センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられた送信側表面と、前記超音波受信用センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられた受信側表面のどちらか一方が、前記超音波送信センサーの前記超音波の送信方向と逆方向を向き、
前記超音波送信センサーアレイの前記超音波送信センサーが備えられていない送信側裏面と、前記超音波受信センサーアレイの前記超音波受信センサーが備えられていない受信側裏面とが貼り合わされてなり、
前記超音波送信用センサーアレイ及び前記超音波受信用センサーアレイの一方には、他方のアレイにおける超音波センサーを露出させる貫通孔が形成されていることを特徴とする超音波センサーユニット。
【請求項4】
前記超音波送信用センサーが前記超音波送信用センサーアレイに規則的に配置されており、前記超音波受信用センサーが前記超音波受信用セ1ンサーアレイに規則的に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の超音波センサーユニット。
【請求項5】
前記前記超音波送信用センサーアレイにおける前記超音波送信用センサーの配置パターンと前記超音波受信用センサーアレイにおける前記超音波受信用センサーの配置パターンとが異なっていることを特徴とする請求項4に記載の超音波センサーユニット。
【請求項6】
前記超音波送信用センサーアレイにおける前記超音波送信用センサーの数と、超音波受信用センサーアレイにおける前記超音波受信用センサーの数とが異なることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の超音波センサーユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−210283(P2010−210283A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54020(P2009−54020)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】