説明

超音波センサ

【課題】製造工程を簡略化し、かつ小型化を図りうる超音波センサを提供することを目的とする。
【解決手段】中空形状の本体部11と、本体部11の一端に設けられており、超音波の送受波を行う振動部12と、超音波の指向性を調整するための指向性調整部14と、本体部11の内部において振動部12に配設された圧電素子13とを有し、指向性調整部14が振動部12において13圧電素子の配設側とは反対側に設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに係り、特に指向性を持たせた超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサは、超音波を利用してセンシングを行うものである。超音波センサは、圧電素子から超音波パルス信号を間欠的に送信し、周辺に存在する障害物からの反射波を圧電素子で受信することにより物体を検知する。
【0003】
この種の超音波センサのうち、車載用として用いられる超音波センサは、車両の周辺監視を行うために車両のバンパーなどに取り付けられる。このため、車両周辺に存在する障害物を確実に検出するために、路面と水平方向においては超音波センサの指向性を広くし、路面と垂直方向においては路面を検出しないように超音波センサの指向性を狭くする必要がある。
【0004】
特許文献1には、車載用に指向性を持たせた超音波センサについて記載されている。図7を参照して特許文献1に記載された超音波センサを説明する。
【0005】
中空部64を有するケース体61の底部62には、肉厚部62aと、肉薄部62bとが設けられている。肉薄部62bは、略三日月形状であり、肉厚部62aの両側に設けられている。肉厚部62aの内面に圧電素子63が固着されている。ケース体61は、底部62に肉厚部62aと肉薄部62bとを形成することにより、肉厚部62aが設けられた方向におけるケース体61の内径Xよりも、肉薄部62bが設けられた方向におけるケース体61の内径Yの方が長い形状とされている。超音波センサ60では、このケース体61の形状により、超音波の指向性を調整することができる。
【特許文献1】特開2000−32594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1記載の超音波センサでは、指向性を調整するために、ケース体61の形状を、内径Yを内径Xよりも長い形状とする必要がある。このためケース体61を形成する加工が複雑になる。また仮に内径Xが圧電素子の直径と略同一となるまでケース体61を小型化した場合でも、ケース体61は、中空部64に内径Yを含む大きさに形成される必要がある。このため超音波センサの小型化に限界がある。またケース体61を小型化した場合、中空部64の適正な位置に圧電素子63を配置するための組み立て作業が困難である。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、製造工程を簡略化し、かつ小型化を図りうる超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明では、以下の各部を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項1記載の発明に係る超音波センサは、
中空形状の本体部(11)と、
該本体部(11)の一端に設けられており、超音波の送受波を行う振動部(12)と、
前記超音波の指向性を調整するための指向性調整部(14)と、
前記本体部(11)の内部において前記振動部(12)に配設された圧電素子(13)とを有する超音波センサであって、
前記指向性調整部(14)が前記振動部(12)において前記圧電素子(13)の配設側とは反対側に設けられているものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の超音波センサにおいて、
前記指向性調整部(14)を、前記振動部(12)に厚みを設けて形成するものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は2に記載の超音波センサにおいて、

前記指向性調整部(14)を、前記圧電素子(12)と対向する領域の外側に設けたものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、
請求項1ないし3の何れか一項に記載の超音波センサにおいて、
前記本体部(11)は、円筒形状とするものである。
【0013】
なお、上記参照符号はあくまでも参考であり、これによって特許請求の範囲の記載が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造工程を簡略化し、かつ小型化を図りうる超音波センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
図1、図2は本発明の基本構成を説明するための図であり、図1は、本発明に係る超音波センサの上部から見た斜視図であり、図2は本発明に係る超音波センサの下部から見た斜視図である。
【0017】
超音波センサ10は、本体部11、振動部12、圧電素子13、指向性調整部14等から構成されている。
【0018】
本体部11は、例えばアルミニウム等の金属材料で形成された有底円筒の形状であり、一端が開口した中空部15を備えている。振動部12は、本体部11の底部を形成する振動板であり、開口側とは逆側の一端に設けられて超音波の送受波を行う。圧電素子13は、中空部15に内部において振動部12上に導電性接着剤等により固着されている。指向性調整部14は、振動部12において圧電素子13の配設側と反対側に配設されており、超音波センサ10から送波される超音波の指向性を調整する。
【0019】
本発明の超音波センサ10では、圧電素子13により発生された振動部12の振動の伝搬を、指向性調整部14により抑制することで、送波される超音波に指向性を持たせる。
【0020】
以下に指向性調整部14について詳細に説明する。
【0021】
本発明の超音波センサ10は、波長に対して振動面の面積が大きいほど指向性が鋭くなるという超音波の特性を利用したものである。超音波センサ10では、振動部12に設けられた指向性調整部14により、振動部12の振動の伝搬を抑制する領域を形成して振動面積を調整し、超音波センサ10から送波される超音波の指向性を調整する。
【0022】
指向性調整部14は、図2及び図3(C)に示すように振動部12に厚みを設けて形成されている。指向性調整部14は、例えば振動部12と一体形成されていても良い。また指向性調整部14は、振動部12とは別に形成されており、振動部12に貼り付けられていても良い。また本体部11、振動部12が一体形成されており、本体部11と一体形成された振動部12に指向性調整部14が貼り付けられても良い。
【0023】
超音波センサ10では、振動部12に厚みを設けて形成された指向性調整部14により、圧電素子13から振動部12に伝搬された振動を減衰させる。そして超音波センサ10は、振動部12の指向性調整部14が設けられていない領域において、圧電素子13から伝搬された振動を超音波として送波する。
【0024】
このように本発明の超音波センサ10は、指向性調整部14を設けることにより、圧電素子13から振動部12に伝搬された振動を減衰させる振動減衰領域と、圧電素子13から振動部12に伝搬された振動をそのまま伝搬する振動伝搬領域を形成する。すなわち本発明の超音波センサ10では、本体部11の外側から指向性調整部14を付加することで、振動減衰領域と振動伝搬領域とを形成し、振動部12における振動面積を調整して超音波に指向性を持たせている。
【0025】
このため本発明の超音波センサ10によれば、超音波に指向性を持たせる目的で本体部11及び振動部12の形状の加工を行う必要がなく、単に振動部12において圧電素子13の配設側と反対側に指向性調整部14を設ければ良い。また超音波センサ10では本体部11及び振動部12の形状の加工を行う必要がないため、例えば本体部11の内径が圧電素子13の直径と略同一となる程度まで小型化することも可能である。
【0026】
このように本発明によれば、製造工程を簡略化し、かつ小型化を図りうる超音波センサを提供することができる。
(第一の実施例)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施例について説明する。図3は、第一の実施例の超音波センサを説明する図であり、図3(A)は超音波センサの振動部を底面としたとき、超音波センサを底面視した図である。図3(B)は超音波センサの振動伝搬領域を説明する図である。図3(C)は、超音波センサの内部構造を模式的に説明するA−A断面図である。
【0027】
本実施例の超音波センサ10では、一対の指向性調整部14が圧電素子13の外周に沿って配置されている。超音波センサ10では、振動部12に指向性調整部14を形成することにより、振動減衰領域16と、振動伝搬領域17とが形成される。尚厳密には振動減衰領域16からも圧電素子13により発生された振動は伝搬されるが、振動伝搬領域16から伝搬される振動に比べて十分に小さい振動であるから、本実施例の説明においてはこの振動を考慮しない。
【0028】
ここで図3(A)において紙面上X軸方向を路面と水平方向とし、紙面上Y方向を路面と垂直方向とすると、振動伝搬領域17はY方向に長く、X方向に短い形状となる。このため超音波センサ10において振動伝搬領域17から送波される超音波は、Y方向に比べてX方向に広い指向性を有するものとなる。
【0029】
よって超音波センサ10が車載用として用いられた場合には、X方向が路面と水平になるように配置すれば、路面と水平方向における指向性が広くし、路面と垂直方向における指向性を狭くすることができる。よって超音波センサ10は、路面を検出せずに正確に車体周囲の障害物を検出することができる。
【0030】
指向性調整部14は、例えば段差を形成することにより振動部12に厚みを形成しても良いし、傾斜面により振動部12に厚みを設けて形成しても良い。また指向性調整部14は、例えば本体部11と同様の金属材料等で形成されても良い。また指向性調整部14は、樹脂などにより形成されても良い。
【0031】
尚本実施例の指向性調整部14は、圧電素子13から振動部12に伝搬された振動を減衰させ、振動部12から伝搬される振動を抑制することが出来れば良く、その形状や材質はこれに限定されるものではない。また本実施例の指向性調整部14は、振動伝搬領域17から送波される超音波の指向性を、Y方向に比べてX方向に広い指向性を有するように調整できれば良い。よって振動部12における指向性調整部14の配設位置は本実施例に限定されるものではない。
【0032】
次に図3(B)を参照して振動伝搬領域17について説明する。
【0033】
振動伝搬領域17は、略円形の領域17bと、領域17bからY方向に延存した略矩形状の一対の領域17aにより形成されている。振動伝搬領域17は、領域17bと一対の領域17aを有することにより、振動伝搬領域17の長さY1が長さX1よりも長くなるように形成される。したがって振動伝搬領域17から送波される超音波は、Y方向に狭い指向性を有する超音波となる。
【0034】
ここで図4に本実施例の超音波センサ10の指向特性を示す。図4に示す指向特性では、本実施例の超音波センサ10は、Y方向に比べてX方向に広い指向性を有していることが分かる。
【0035】
次に図3に戻って、図3(C)を参照して本実施例の超音波センサ10の内部構造の概略を説明する。
【0036】
超音波センサ10において、圧電素子13には端子T1が接続されており、本体部11には端子T2が接続されている。圧電素子13は導電性接着剤18により本体部11に固着されている。超音波センサ10では、端子T1と端子T2の両端に交流電圧を印加することにより圧電素子13を振動させて振動部12から超音波パルス信号を間欠的に送信する。本実施例では、指向性調整部14が本体部11の外側に設けられているため、端子T1及び端子T2を設ける際の配線の自由度を高めることができる。
【0037】
以上に説明したように、本実施例によれば、振動部12において圧電素子13の配設側と反対側に指向性調整部14を設ける構成としたため、本体部11及び振動部12の形状の加工を行う必要がない。また本実施例によれば、中空部15への圧電素子13の配設作業において、圧電素子13の配設位置の複雑な調整をする必要がない。よって本実施例によれば、超音波センサ製造工程を簡略化することができる。また本実施例によれば、本体部11の内部に加工をする必要がないため、本体部11の内径が圧電素子13の直径と略同一となる程度まで小型化することができる。
【0038】
また本実施例によれば、指向性調整部14は本体部11の外側に設けられるため、指向性調整部14を取り付ける際の加工において本体部11が邪魔になることがない。このため本体部11の直径を小さくしても、指向性調整部14を取り付ける加工を容易に行うことができる。よって本実施例によれば、超音波センサ10から送波される超音波に対し、容易に所望の指向性を持たせることができる。
(第二の実施例)
以下に、本発明の第二の実施例として、本体部の内径を圧電素子13の直径と略同一となるまで小型化した例を示す。
【0039】
図5は、第二の実施例の超音波センサを説明する図であり、図5(A)は超音波センサの振動部を底面としたとき、超音波センサを底面視した図である。図5(B)は、超音波センサのB−B断面図である。
【0040】
図5(A)に示すように、本実施例の超音波センサ10Aでは、図5(B)に示すように、本体部11Aの内径R1を圧電素子13Aの直径R2に可能な限り近づけて構成した。本実施例では、指向性調整部14Aは、振動発生源である圧電素子13Aと対向した位置にある。よって本実施例の指向性調整部14Aを形成する厚みは、指向性調整部14が圧電素子13と対向しない位置に配置されている第一の実施例と比較して、厚い方が好ましい。
【0041】
指向性調整部14Aを形成する厚みを厚くすれば、指向性調整部14Aが圧電素子13Aと対向していても、圧電素子13Aから振動部12Aに伝搬された振動をより大きく減衰させることができる。このため振動減衰領域16Aにおいて振動の伝搬を抑制することができ、振動伝搬領域17Aから伝搬される超音波にY方向に狭い指向性を持たせることができる。本実施例によれば、図5(B)に示す本体部11Aの外径R3を例えば8mm程度まで小さくすることができる。
【0042】
尚本実施例の指向性調整部14Aは、振動部12Aの中央部に、X方向に比べてY方向に長い振動伝搬領域16Aを構成できるように配置されていれば良い。よって指向性調整部14Aの配設位置は本実施例に限定されるものではない。
【0043】
また図6に、本発明のその他の実施例について示す。図6(A)は、矩形状の指向性調整部14Bが振動部12Bに配置された場合を示す図であり、図6(B)は、三日月形状の指向性調整部14Cが振動部12Cに配置された場合を示す図である。
【0044】
図6(A)及び図6(B)に示すように、何れの場合においても、振動減衰領域16B、16Cと、X方向に比べてY方向に長い振動伝搬領域17B、17Cとが形成される。よって図6(A)及び図6(B)に示す何れの形状であっても超音波の指向性を、Y方向に比べてX方向に広い指向性を有するように調整することができ、上で説明した第一の実施例及び第二の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、各実施例に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施例に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る超音波センサの上部から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る超音波センサの下部から見た斜視図である。
【図3】第一の実施例の超音波センサを説明する図である。
【図4】第一の実施例の超音波センサの指向特性を示す図である。
【図5】第二の実施例の超音波センサを説明する図である。
【図6】本発明のその他の実施例を示す図である。
【図7】特許文献1に記載された超音波センサを説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
10 超音波センサ
11 本体部
12 振動部
13 圧電素子
14 指向性調整部
15 中空部
16 振動減衰領域
17 振動伝搬領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状の本体部と、
該本体部の一端に設けられており、超音波の送受波を行う振動部と、
前記超音波の指向性を調整するための指向性調整部と、
前記本体部の内部において前記振動部に配設された圧電素子とを有する超音波センサであって、
前記指向性調整部が前記振動部において前記圧電素子の配設側とは反対側に設けられている超音波センサ。
【請求項2】
前記指向性調整部は、前記振動部に厚みを設けて形成した請求項1項に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記指向性調整部は、前記圧電素子と対向する領域の外側に設けられている請求項1又は2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記本体部は、円筒形状である請求項1ないし3の何れか一項に記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−65380(P2009−65380A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230567(P2007−230567)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】