説明

超音波センサ

【課題】超音波素子を位置決めするとともにプリント配線板の回路パターンや半田接合部、超音波素子にかかる応力を低減することのできる超音波センサを提供する。
【解決手段】超音波振動子及び超音波振動子を内蔵するとともに一面に超音波を通過させるための開口10aを有する略円筒状の器体10及び器体10から突設されて超音波振動子に給電するための端子部11から成る超音波素子1と、下面に超音波素子1の開口10aと連通する開口20aを有するとともに超音波素子1を収納する略有底円筒状の収納部20を備えた略直方体状の筐体4と、収納部20との間で超音波素子1を挟持するように配置されて超音波素子1の端子部11が実装される平板状のプリント配線板5と、収納部20と超音波素子1との間の隙間を埋める略円筒状の弾性部材6とから構成され、超音波素子1のプリント配線板5と対向する一面の一部を覆うフランジ部60を弾性部材6に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送波又は受波若しくは送受波に用いられる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば物体検出等の用途に用いられる超音波センサや超音波スイッチが知られており、例えば特許文献1,2に開示されている。これら特許文献に記載されている超音波素子は、防振を目的として弾性部材で囲繞されている。
【0003】
ところで、上記従来例に用いられている超音波素子は器体自体が振動することで超音波を発振する所謂密閉型の超音波素子であって、このような密閉型の超音波素子の他に一面を開口した器体の内部に超音波振動子を内蔵し、該開口を介して超音波を発振する所謂開放型の超音波素子が知られている。以下、このような開放型の超音波素子を用いた従来例について図面を用いて説明する。
【0004】
この従来例は、超音波を監視空間内に放射しておき、監視空間内に存在する物体の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出することで物体の移動を検知する移動体検出装置であって、図4(a)に示すように、一面に超音波の送受波用の開口(図示せず)を有する器体100a及び器体100aに内蔵されて超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子(図示せず)から成る送波用の超音波素子100及び受波用の超音波素子100と、一面が開口するとともにこれら超音波素子100を各々収納する略有底円筒状の一対の収納部101aが設けられた略直方体状のボディ101と、一面が開口するとともに該開口をボディ101の開口と互いに突き合わせて組立ねじ106によって結合することで筐体103を成す略直方体状のカバー102と、ボディ101に組立ねじ106によって固定されるとともに送波用の超音波素子100を所定の周波数で発振させるための駆動信号及び受波用の超音波素子100からの受波信号を処理する信号処理回路が設けられたECU(Electronic Control Unit)104とから構成される。
【0005】
各超音波素子100は、端子部100bをボディ101の開口に向けた状態で収納部101aに配置され、端子部100bは、収納部101aの開口を塞ぐように配設される平板状のプリント配線板105に半田付けによって固定される。尚、送波側のプリント配線板105には、ECU104からの駆動信号を受けて超音波素子100を駆動する駆動回路が設けられ、受波側のプリント配線板105には、超音波素子100で受波した超音波を受波信号に変換する変換回路が設けられる。また、収納部101aの底部には、それぞれ超音波素子100の開口及び外部と連通する連通孔101bが貫設されており、該連通孔101bが超音波の送受波の範囲を広げるとともに超音波の指向性を決定するホーンの役割を果たしている(図4(b)参照)。
【0006】
上記のような開放型の超音波素子100では、器体100aが振動しないことから密閉型の超音波素子のように防振を目的として弾性部材を用いる必要は無い。しかしながら、図4(b)に示すように、超音波素子100の端子部100bをプリント配線板105に半田付けで固定するとともに、プリント配線板105を筐体103に固定する構造の場合、超音波素子100の位置が決まり難いために超音波の指向性に影響する連通孔101bの中心と超音波素子100の中心との位置関係がばらつき、超音波の指向性にばらつきを生じて検知性能が悪化する虞があった。
【0007】
そこで、上記の問題を解決した超音波センサの従来例について以下、図面を用いて説明する。この従来例は、図5(a)に示すように、超音波素子100と、一面が開口するとともに超音波素子100を収納する略有底円筒状の収納部200aが設けられた略直方体状のボディ200と、一面が開口するとともに該開口をボディ200の開口と互いに突き合わせて結合することで筐体202を成す略直方体状のカバー201と、駆動回路若しくは変換回路の少なくとも何れか一方が設けられるとともに組立ねじ205によってボディ200に取付固定される略平板状のプリント配線板203とから構成される。超音波素子100は、上記と同様に端子部100bをボディ200の開口に向けた状態で収納部200aに配置され、端子部100bは、プリント配線板203に半田付けによって固定される。また、収納部200aの底部には、超音波素子100の開口及び外部と連通する連通孔200bが貫設されており、該連通孔200bが超音波の送受波の範囲を広げるとともに超音波の指向性を決定するホーンの役割を果たしている(図5(b)参照)。
【0008】
ここで、この従来例では図5(b)に示すように、収納部200aと超音波素子100との間には、当該隙間を埋める略円筒状の弾性部材204を配設している。而して、超音波素子100が弾性部材204に圧接されて位置決めされるため、上記の問題を解決することができる。
【特許文献1】実開昭62−163781号公報
【特許文献2】実開昭62−140378号公報
【特許文献3】特開2003−341438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例では、プリント配線板203によって超音波素子100を抑え込んで密着させているので、プリント配線板203を固定するためのねじ止め、経年劣化による反り、筐体202の収縮等によってプリント配線板203の回路パターンや半田接合部、更には超音波素子100に応力がかかり、これらが破損する虞があった。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、超音波素子を位置決めするとともにプリント配線板の回路パターンや半田接合部、超音波素子にかかる応力を低減することのできる超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子及び超音波振動子を内蔵するとともに一面に超音波を通過させるための開口を有する器体及び器体から突設されて超音波振動子に給電するための端子部から成る超音波素子と、一面に超音波素子の開口と連通する開口を有するとともに超音波素子を収納する収納部を備えた筐体と、収納部との間で超音波素子を挟持するように配置されて超音波素子の端子部が実装されるプリント配線板と、収納部と超音波素子との間の隙間を埋める弾性部材とから成り、弾性部材には、超音波素子のプリント配線板と対向する一面の少なくとも一部を覆うフランジ部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、フランジ部には、プリント配線板と対向し且つプリント配線板に向かう方向に突出する一乃至複数の第1の突起部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、弾性部材には、収納部と対向し且つ収納部に向かう方向に突出する一乃至複数の第2の突起部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、弾性部材によって超音波素子を位置決めすることができるとともに、フランジ部が超音波素子とプリント配線板との間に介在するため、超音波素子とプリント配線板とが直接接触するのを防ぐことができ、したがってプリント配線板の回路パターンや半田接合部、超音波素子にかかる応力を低減することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、プリント配線板が超音波素子を押圧する力を第1の突起部で吸収できるので、超音波素子と筐体の開口との間の寸法がばらつくのを防ぐことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、第2の突起部の弾性によって超音波素子と収納部との間の寸法がばらつくのを防ぐことができるので、超音波素子の開口の中心と筐体の開口の中心との位置関係がずれるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る超音波センサの実施形態について図面を用いて説明する。尚、以下の説明では、図1(b)における上下を上下方向と定めるものとする。本実施形態は、図1(a)に示すように、超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子(図示せず)及び超音波振動子を内蔵するとともに一面に超音波を通過させるための開口10aを有する略円筒状の器体10及び器体10から突設されて超音波振動子に給電するための端子部11から成る所謂開放型の超音波素子1と、下面に超音波素子1の開口10aと連通する開口20aを有するとともに超音波素子1を収納する略有底円筒状の収納部20を備えた略直方体状の筐体4と、収納部20との間で超音波素子1を挟持するように配置されて超音波素子1の端子部11が実装される平板状のプリント配線板5と、収納部20と超音波素子1との間の隙間を埋める略円筒状の弾性部材6とから構成される。
【0018】
筐体4は、上面を開口した略直方体状のボディ2及び下面を開口した略直方体状のカバー3の各開口を互いに突き合わせて結合して成り、ボディ2下部に収納部20が一体に形成されている。ボディ2の長手方向における両側面には、それぞれ外方向に突出する係止爪21が突設されており、カバー3の長手方向における両端部からそれぞれ下方に突出する略矩形状の被係止部30に貫設された係止孔30aに係止するようになっている。また、ボディ2の短手方向における両側面には、それぞれ外方に突出する取付片23が突設されており、取付片23に貫設された略円形状の取付孔23aを介して本実施形態を外部の装置にねじ止めすることができるようになっている。ボディ2の内部には、収納部20を挟んで一対の略円筒状のボス部22が一体に形成されており、該ボス部22の内側にはそれぞれ雌ねじ部22aが設けられている。収納部20の下底部には、図1(b)に示すように開口20aが設けられており、該開口20aが超音波の送受波の範囲を広げるとともに超音波の指向性を決定するホーン部20aとなる。
【0019】
カバー3上面の略中央部には、外部の装置から引き回されるケーブル(図示せず)を張力止めするための張力止め部31が一体に形成されている。また、カバー3上面の長手方向における一端部には、後述するコネクタ50が挿通される略矩形状の窓孔32が貫設されている。
【0020】
プリント配線板5には、電子部品51が実装されることで超音波素子1を駆動するための駆動回路又は超音波素子1で受波した超音波を受波信号に変換する変換回路の少なくとも何れか一方が設けられている。これらの回路は本実施形態の用途に応じて変更され、例えば、本実施形態を超音波を送波するために用いるのであれば駆動回路をプリント配線板5に設け、超音波(反射波)を受波するために用いるのであれば変換回路を設ければよい。勿論、上記回路を両方とも設けても構わない。また、プリント配線板5の長手方向における一端部には、前記ケーブルの一端部が接続されるコネクタ50が設けられており、ボディ2の各ボス部22と対向する部位には、それぞれ略円形状のねじ挿通孔5aが貫設されている。更に、プリント配線板5には、超音波素子1の端子部11が挿通される一対の略円形状の端子部挿通孔5bが貫設されており、該端子部挿通孔5bに端子部11を挿通した状態で半田付けを行うことで、端子部11がプリント配線板5の回路パターンに接合される。
【0021】
弾性部材6は、図2(a)に示すように、超音波素子1の側面を覆う寸法に形成され、その上端縁には内方に向かって突出して超音波素子1の上面の一部を覆う4つのフランジ部60が一体に形成されている。また、図2(b)に示すように、弾性部材6の下端部にも全周に亘って内方に突出して超音波素子1の下面の一部を覆うフランジ部61が一体に形成されている。各フランジ部60には、上方に向かって突出する第1の突起部6aが一体に形成されており、弾性部材6の側面には、外方に向かって突出する4つ(図示では2つ)の第2の突起部6bが一体に形成され、これら第2の突起部6bは周方向に亘って等間隔に設けられている。
【0022】
以下、本実施形態の組立方法について説明する。先ず、超音波素子1を弾性部材6で覆った後に端子部11を上方に向けた形で収納部20に収納する。次に、端子部11を端子部挿通孔5bに挿入した形でプリント配線板5を超音波素子1の上面に載置し、ねじ挿通孔5aを介して組立ねじ7をボス部22の雌ねじ部22aに螺合することで、プリント配線板5をボディ2にねじ止めする。この時、弾性部材6のフランジ61が超音波素子1の下面とホーン部20aの周壁との間で挟持されることで、超音波素子1の開口10aとホーン部20aとの間の距離が略一定に保たれる。そして、端子部11をプリント配線板5上の回路パターンに半田付けした後に、カバー3の被係止部30にボディ2の係止爪21を係止してカバー3をボディ2に結合することで本実施形態が完成する。
【0023】
ここで、上述のように本実施形態では弾性部材6にフランジ部60を設けているため、超音波素子1がプリント配線板5に直接接触するのを防ぐことができ、したがってプリント配線板5の回路パターンや端子部11の半田接合部、超音波素子1にかかる応力を低減することができる。また、各フランジ部60に第1の突起部6aを設けているので、プリント配線板5をボディ2にねじ止めする際にプリント配線板5が超音波素子1を押圧する力を第1の突起部6aで吸収できるので、超音波素子1とボディ2のホーン部20aとの間の寸法がばらつくのを防ぐことができる。更に、弾性部材6の側面に第2の突起部6bを設けているので、第2の突起部6bの弾性によって超音波素子1と収納部20との間の寸法がばらつくのを防ぐことができ、超音波素子1の開口10aの中心とボディ2のホーン部20aの中心との位置関係がずれるのを防ぐことができる。
【0024】
尚、本実施形態は、監視空間内に存在する物体の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出することで物体の移動を検知する移動体検出装置に用いられる。この移動体検出装置は、図3(a),(b)に示すように、本実施形態である送波用の超音波センサA及び受波用の超音波センサBと、各超音波センサA,Bをそれぞれ収納する一面を開口した長尺箱形のハウジング9と、ハウジング9に収納されて送波用の超音波センサAへの駆動信号及び受波用の超音波センサBからの受波信号を処理する信号処理回路を備えたECU(Electronic Control Unit)8とから構成される。
【0025】
ハウジング9は、例えば車両の天井に設置され、超音波センサA,B及びECU8が収納される側と反対側の面には、超音波センサAから発振される超音波を車両内の監視空間に送波するための略円形状の送波口9aと、監視空間に存在する物体からの反射波を超音波センサBで受波するための略円形状の受波口9bとが貫設されている。また、各超音波センサA,BとECU8との間はそれぞれケーブルC(一部図示省略)によって接続され、ケーブルCは各超音波センサA,Bの張力止め部31によって張力止めされる。
【0026】
上述のように、本実施形態は上記のような移動体検出装置に好適であるが、本実施形態の用途は移動体検出装置に限定されるものではなく、他の装置に用いても構わないのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る超音波センサの実施形態を示す図で、(a)は分解斜視図で、(b)は断面図である。
【図2】同上の超音波素子及び弾性部材を示す図で、(a)は端子部側から見た斜視図で、(b)は開口側から見た斜視図である。
【図3】本実施形態を用いた移動体検出装置を示す図で、(a)は背面図で、(b)は正面図である。
【図4】従来の移動体検出装置を示す図で、(a)は分解斜視図で、(b)は断面図である。
【図5】従来の超音波センサを示す図で、(a)は分解斜視図で、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 超音波素子
10 器体
10a 開口
11 端子部
20 収納部
20a ホーン部(開口)
4 筐体
5 プリント配線板
6 弾性部材
60 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子及び超音波振動子を内蔵するとともに一面に超音波を通過させるための開口を有する器体及び器体から突設されて超音波振動子に給電するための端子部から成る超音波素子と、一面に超音波素子の開口と連通する開口を有するとともに超音波素子を収納する収納部を備えた筐体と、収納部との間で超音波素子を挟持するように配置されて超音波素子の端子部が実装されるプリント配線板と、収納部と超音波素子との間の隙間を埋める弾性部材とから成り、弾性部材には、超音波素子のプリント配線板と対向する一面の少なくとも一部を覆うフランジ部が設けられたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記フランジ部には、プリント配線板と対向し且つプリント配線板に向かう方向に突出する一乃至複数の第1の突起部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記弾性部材には、収納部と対向し且つ収納部に向かう方向に突出する一乃至複数の第2の突起部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25673(P2010−25673A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185810(P2008−185810)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】