説明

超音波データ処理装置

【課題】ユーザに対する負担とトレースラインに関する精度の両面において好適な装置を提供する。
【解決手段】手動トレースライン形成部224は、手動トレース断面内にユーザ操作に応じて手動トレースラインを形成する。補間トレースライン形成部226は、手動トレースラインを利用した補間処理により、各自動トレース断面内に補間トレースラインを形成する。トレースライン修正部228は、各自動トレース断面ごとに、その自動トレース断面内で検出される対象組織の輪郭に基づいて補間トレースラインを修正処理する。追加断面選択部220は、前記修正処理の有効性を示す特徴量に基づいて、複数の自動トレース断面の中から追加トレース断面を選択する。そして、手動トレースラインに加えて、追加トレース断面内の修正処理後の補間トレースラインを利用して、補間処理が再実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受して得られた超音波データを処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ビームを走査することにより収集される三次元データを利用した超音波技術が知られている。例えば、特許文献1には、対象組織を含む三次元空間内から収集されたボリュームデータに基づいて対象組織の輪郭を三次元的に特定する技術が記載されている。これにより、例えば、対象組織の体積などを算出することが可能になる。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、三次元データ空間内に、複数の自動トレース参照断面と、複数のマニュアルトレース参照断面が設定される。そして、各マニュアルトレース参照断面内において、ユーザ操作に応じて対象組織の輪郭を示すマニュアルトレースラインが形成される。さらに、複数のマニュアルトレース参照断面に形成されたマニュアルトレースラインに基づいて、各自動トレース参照断面内に補間処理などによりトレースラインが形成される。こうして、三次元データ空間内に形成された多数のトレースラインに基づいて対象組織の輪郭が三次元的に特定される。
【0004】
特許文献1に記載された技術では、例えば二値化処理などにより対象組織の輪郭を正確に抽出することが困難な場合においても、ユーザ操作に応じて、例えばユーザの目視による判断に応じて、対象組織の輪郭を比較的正確に特定することができる。また、特許文献1に記載された技術では、ユーザ操作に応じて形成されたマニュアルトレースラインをさらに自動修正することにより、極めて高い精度で対象組織の輪郭を抽出することが可能とされている。
【0005】
ユーザ操作を必要とする処理においては、例えば、ユーザの負担を小さくすることが望ましく、また、最終的に得られるトレースラインの精度も高いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−142519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、ユーザ操作に応じたトレースラインの形成について研究開発を重ねてきた。
【0008】
本発明はその研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、ユーザに対する負担とトレースラインに関する精度の両面において好適な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的にかなう好適な超音波データ処理装置は、対象物を含む三次元空間から得られた超音波データに基づいて当該対象物の輪郭に対応したトレースラインを形成する超音波データ処理装置において、三次元的に配列された超音波データで構成されるデータ空間内において、少なくとも一つの手動トレース断面と複数の自動トレース断面を設定するトレース断面設定部と、各手動トレース断面内にユーザ操作に応じて手動トレースラインを形成する手動トレースライン形成部と、手動トレースラインを基礎トレースラインとして利用した補間処理により、各自動トレース断面内に補間トレースラインを形成する補間トレースライン形成部と、各自動トレース断面ごとに、その自動トレース断面内で検出される前記対象物の輪郭に基づいて補間トレースラインを修正処理するトレースライン修正部と、前記修正処理の有効性を示す特徴量に基づいて、複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する追加断面選択部と、を有し、前記各追加トレース断面の修正処理された補間トレースラインを基礎トレースラインに加えて前記補間処理を再実行する、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、複数の自動トレース断面の中から追加トレース断面が選択され、選択された追加トレース断面の修正処理された補間トレースラインが基礎トレースラインとして利用されるため、追加トレース断面内においてユーザ操作によりトレースラインを形成する場合に比べて、ユーザに対する負担が軽減される。また、手動トレースラインのみを基礎トレースラインとする場合に比べて、補間処理により得られるトレースラインの精度が向上する。
【0011】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、各自動トレース断面ごとに、前記修正処理における補間トレースラインの修正量を算出し、当該修正量に基づいて少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、前記修正量が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、前記修正量が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から等間隔で複数の追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、各自動トレース断面ごとに、前記修正処理における輪郭の検出率から輪郭の明瞭度を算出し、当該明瞭度に基づいて少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、前記明瞭度が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0016】
望ましい具体例において、前記追加断面選択部は、前記明瞭度が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から等間隔で複数の追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0017】
望ましい具体例において、互いに隣接する自動トレース断面の補間トレースライン同士の差分値を算出し、当該差分値が所定値以上となる箇所を含む前記データ空間内の区間から、前記少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、ことを特徴とする。
【0018】
望ましい具体例において、前記データ空間内において複数のトレース用断面を設定し、各トレース用断面ごとにそのトレース用断面内で前記対象物の輪郭を検出してその検出率から輪郭の不明瞭度を算出し、当該不明瞭度が大きな順で予め定められた枚数のトレース用断面を前記手動トレース断面とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ユーザに対する負担とトレースラインに関する精度の両面において好適な装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】ボリュームデータに対する基準断面の設定を説明するための図である。
【図3】参照断面列の設定を説明するための図である。
【図4】自動トレース処理を説明するための図である。
【図5】組織抽出部の内部構成を示す図である。
【図6】ボリュームデータ内に設定された参照断面列を示す図である。
【図7】補間トレースラインの修正量を説明するための図である。
【図8】修正量に基づいた追加断面の選択処理を説明するための図である。
【図9】対象組織の輪郭の明瞭度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る超音波データ処理装置の好適な具体例の一つは超音波診断装置である。図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。この超音波診断装置は医療の分野において用いられ、特に生体内における対象組織を抽出し、その体積を演算する機能を有している。対象組織としては、胎盤、悪性腫瘍、胆嚢、甲状腺等を挙げることができる。
【0022】
図1において、3Dプローブ10は、例えば体表面上に当接して用いられあるいは体腔内に挿入して用いられる超音波送受波器である。本実施形態において、3Dプローブ10は2Dアレイ振動子を有している。2Dアレイ振動子は第一方向及び第二方向に整列した複数の振動素子によって構成されるものである。2Dアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームは二次元走査される。これにより三次元空間としての三次元エコーデータ取込空間が形成される。具体的には、その三次元空間は複数の走査面の集合体として構成され、各走査面は超音波ビームを一次元走査することによって構成される。2Dアレイ振動子に代えて、1Dアレイ振動子を機械的に走査することによって、上記同様の三次元空間を形成することも可能である。
【0023】
送信部12は送信ビームフォーマーとして機能する。送信部12は所定の遅延関係をもって複数の送信信号を上記2Dアレイ振動子に対して供給する。これによって送信ビームが形成される。生体内からの反射波は2Dアレイ振動子によって受波され、これによってその2Dアレイ振動子から複数の受信信号が受信部14に対して出力される。受信部14は複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって整相加算後の受信信号(ビームデ−タ)を出力する。その受信信号に対しては所定の信号処理が施され、例えば検波、対数変換処理などが施され、信号処理後の受信信号であるビームデータが3Dデータメモリ16に格納される。
【0024】
3Dデータメモリ16は、生体内の送受波空間である三次元空間に相当する三次元記憶空間を有している。3Dデータメモリ16の書き込みあるいは読み出しに際して各データに対する座標変換が実行される。本実施形態においては、3Dデータメモリ16の書き込み時に、送受波座標系から記憶空間座標系への座標変換が実行される。これによって、後に説明するようにボリュームデータが構成される。ボリュームデータは、複数の走査面に相当する複数のフレームデータ(スライスデータ)の集合体であり、各フレームデータは複数のビームデータからなるものである。各ビームデータは深さ方向に整列した複数のエコーデータからなるものである。ちなみに、この3Dデータメモリ16以降の各構成については専用ハードウェアとして構成することも可能であるし、ソフトウェアの機能として実現することも可能である。例えば、3Dデータメモリ16以降の各構成をコンピュータ内で実現させてもよい。
【0025】
三次元画像形成部18は、3Dデータメモリ16に格納されたボリュームデータに基づいて、例えばボリュームレンダリング法に基づく画像処理を実行し、これによって三次元超音波画像を構成する。その画像データは表示処理部26に送られる。任意断層画像形成部20は、ユーザによって設定された三次元空間内の任意断面に対応する断層画像を形成するものである。その場合において3Dデータメモリ16内における任意断面に相当するデータアレイが読み出され、それらに基づいて任意断層画像としてのBモード画像が形成される。その画像データは表示処理部26に送られる。
【0026】
組織抽出部22は、特許文献1(特開2008−142519号公報)に詳述されるトレース処理により、三次元空間内あるいはボリュームデータ内に存在する対象組織(対象組織データ)を抽出するものである。この場合においては、マニュアルトレース処理と補間処理とが併用されており、また、それぞれの処理結果に対する自動修正処理が利用されている。さらに、本実施形態において、組織抽出部22は、ユーザに対する負担とトレースラインに関する精度の両面において好適な処理を実行する。組織抽出部22における処理については後に詳述する。抽出された対象組織データは表示処理部26に送られ、対象組織の画像表示に利用される他、体積演算部24にも送られている。
【0027】
この体積演算部24は、例えばDisk Summation法等の体積演算法により、対象組織の体積を求めるモジュールである。すなわち、組織抽出部22により、対象組織の全体にわたって複数の閉ループとしてのトレースライン列が構成されるため、それらのトレースラインに基づいて対象組織の体積値を近似的に算出するものである。その場合においては各閉ループ間すなわち各断面間の距離も利用される。演算された体積値のデータは表示処理部26へ送られる。体積演算法としてAverage Rotation法等を利用してもよい。
【0028】
上記の三次元画像形成部18、任意断層画像形成部20及び組織抽出部22等の各モジュールは、ユーザによって選択された動作モードに応じて機能し、表示処理部26にはそれぞれのモードに対応するデータが入力される。表示処理部26は、入力されるデータに対して画像合成処理や色付け処理などの処理を施し、その結果であるデータを表示部28に出力する。表示部28には、選択された動作モードに応じて、三次元超音波画像、任意断層画像、抽出された組織の三次元画像、体積値等が表示される。ちなみに、三次元空間全体の三次元画像と対象組織の三次元画像とを合成して表示することも可能である。
【0029】
制御部30は、図1に示される各構成の動作制御を行っており、特に入力部32によってユーザにより設定されたパラメータに基づいて、上述した組織抽出処理及び体積演算の動作を制御している。また、制御部30は、3Dデータメモリ16へのデータ書き込み制御等を担っている。入力部32は、キーボードやトラックボールなどを有する操作パネルによって構成されるものである。制御部30はCPU及び動作プログラムなどによって構成されるものである。単一のCPUが三次元画像処理、任意断層画像形成処理、組織抽出処理及び体積演算を実行するようにしてもよい。
【0030】
次に、本実施形態における対象組織の抽出処理を具体的に説明する。但し、既に図1に示した構成(部分)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。図1の超音波診断装置は、特許文献1に記載されたトレース処理を実行する。そのトレース処理については、特許文献1に詳述されているとおりであるが、以下にその概要を説明する。
【0031】
まず、3Dプローブ10を用いて三次元的にデータが収集され、3Dデータメモリ16内にボリュームデータが構築される。そして、表示部28に、ボリュームデータから得られる任意断層画像を表示させながら、例えばユーザ操作に応じてその断面の位置が適宜調整されて基準断面が設定される。
【0032】
図2は、ボリュームデータに対する基準断面の設定を説明するための図である。この設定においては、対象組織42の全体が断面として表れるように、例えばこの断面が最大となるように基準断面46の位置決めを行うのが望ましい。ただし、後に説明するように断面セットとしての参照断面列が設定されるため、基準断面46はそのような参照断面列が対象組織42の全体をカバーするように設定されれば充分である。
【0033】
基準断面46が設定されると、その基準断面46に対応した断層画像、つまり対象組織42の断層像を含んだ断層画像が表示され、その断層画像上において、対象組織42について両端の点がユーザにより設定される。さらにそれら両点を結ぶ直線として、基準線54が設定される。基準線54が設定されると、三次元空間に相当するボリュームデータ44に対して参照断面列が設定される。
【0034】
図3は、参照断面列の設定を説明するための図である。参照断面列56は、基準線(図2の符号54)に直交する複数の断面として構成される。すなわち、それは、基準線の設定に利用された一方の点から他方の点までにわたって等間隔あるいは非等間隔で複数の断面を並べたものに相当する。ここで、参照断面列56は、少なくとも一枚のマニュアルトレース用参照断面58と複数の自動トレース用参照断面60とで構成される。マニュアルトレース用参照断面58は、予め定められた個数だけ形成されており、その個数はnである。例えば1〜10程度の範囲内にnの値が定められる。マニュアルトレース用参照断面58は代表断面に相当するものであり、その代表断面についてのみマニュアルトレースが行われるので、ユーザの負担を大幅に軽減できる。一方、個々の自動トレース用参照断面60については補間処理により自動トレースが実行される。
【0035】
マニュアルトレースの際には、少なくとも一枚の(n枚の)マニュアルトレース用参照断面58に対応したn枚の断層画像が表示部28に表示される。この場合において、一枚ずつ断層画像を表示させてもよいし、複数の断層画像を並べて同時に表示するようにしてもよい。そして、各断層画像に対してマニュアルトレース処理が実行される。すなわち、ユーザが画像を観察しながら入力部32を用いて各断層画像内に対象組織の輪郭に対応したトレースラインを形成する。
【0036】
マニュアルトレースラインが形成されると、各マニュアルトレース用参照断面58ごとに、特許文献1に詳述されるマニュアルトレースラインの自動的な修正処理が実行される。つまり、マニュアルトレースライン上の個々のポイントごとにその周辺に対してエッジ検出処理が実行され、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせる処理が実行される。ただし、エッジが検出されないような場合にはマニュアルトレース結果がそのまま保存される。こうして、各マニュアルトレースラインに修正処理が実行されると、複数の自動トレース用参照断面60に対して自動トレース処理が実行される。
【0037】
図4は、自動トレース処理を説明するための図である。自動トレース処理では、複数のマニュアルトレース用参照断面58上に形成された、修正処理後の複数のマニュアルトレースラインである複数の複合トレースライン68が基準とされ、それらを基礎として補間処理を行うことにより、複数の閉ループを面状に繋ぎ合わせたものとしてトレース面70が構成される。この場合、完全なる三次元的な曲面を定義する必要はないが、少なくとも個々の自動トレース用参照断面60について、補間トレースライン(自動トレースライン)が定義できるように補間処理を実行する。ここで、マニュアルトレース用参照断面58が基準線上に一枚のみ設定された場合には、対象組織の両端点との間で上述した補間処理を実行する。マニュアルトレース用参照断面58が複数枚設定された場合にも、端点に最も近接する断面については、上記と同様に端点との間で上述した補間処理を実行する。
【0038】
また、各自動トレース用参照断面60ごとに、特許文献1に詳述される補間トレースライン(自動トレースライン)の自動的な修正処理が実行される。つまり、補間トレースライン上の個々のポイントごとにその周辺に対してエッジ検出処理が実行され、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせる処理が実行される。ただし、エッジが検出されないような場合には自動トレース結果がそのまま保存される。
【0039】
こうして、図4に示されるように、対象組織の形態に沿って包み込んだトレース面70が形成され、対象組織を三次元的に抽出することができる。そして、抽出された対象組織の三次元画像が表示され、また、三次元的に抽出された対象組織の体積値が演算されてその体積値が表示される。
【0040】
さらに、本実施形態では、ユーザに対する負担とトレースラインに関する精度の両面において好適な処理も実行する。これにより、例えば、ユーザに対する負担を軽減しつつトレースラインに関する精度を向上させることができる。その処理について説明する。
【0041】
図5は、組織抽出部の内部構成を示す図である。組織抽出部22は、上述した組織抽出処理と以下に詳述する処理を実現するために、トレース断面設定部222と手動トレースライン形成部224と補間トレースライン形成部226とトレースライン修正部228と追加断面選択部220を備えている。図5に示した構成(部分)については図5の符号を利用しつつ、組織抽出部22における処理について説明する。
【0042】
図6は、ボリュームデータ内に設定された参照断面列を示す図である。トレース断面設定部222は、ボリュームデータ内において、対象組織42に対して、少なくとも一枚のマニュアルトレース用参照断面58と複数の自動トレース用参照断面60を設定する(図3参照)。
【0043】
そして、手動トレースライン形成部224は、各マニュアルトレース用参照断面58内に、ユーザ操作に応じて、対象組織の輪郭に対応したマニュアルトレースライン(手動トレースライン)を形成する。また、トレースライン修正部228は、特許文献1に詳述されるトレースラインの自動的な修正処理により、マニュアルトレースラインを修正処理する。
【0044】
さらに、補間トレースライン形成部226は、マニュアルトレースラインを用いた補間処理により、複数の自動トレース用参照断面60に対して補間トレースライン(自動トレースライン)を形成する(図4参照)。また、補間トレースラインも、トレースライン修正部228により修正処理される。
【0045】
こうして、対象組織42の形態に沿って包み込んだトレース面(図4の符号70)が形成され、対象組織42を三次元的に抽出することができる。その抽出の精度を高めるために、本実施形態では、補間処理に利用されるキー断面が追加される。
【0046】
つまり、最初の補間処理においては、図6に示すマニュアルトレース用参照断面58のみがキー断面とされ、マニュアルトレースラインを用いた補間処理により、複数の自動トレース用参照断面60に対して補間トレースラインが形成され、補間トレースラインがトレースライン修正部228により修正処理される。
【0047】
追加断面選択部220は、各自動トレース用参照断面60の補間トレースラインに対する修正処理を評価することにより、複数の自動トレース用参照断面60の中から、キー断面に追加する追加断面を選択する。その選択にあたって、修正処理の有効性を示す特徴量として、修正処理における補間トレースラインの修正量が算出される。
【0048】
図7は、補間トレースラインの修正量を説明するための図である。図7には、1枚の自動トレース用参照断面60内に形成された補間トレースライン62が実線で示されている。この補間トレースライン62に対して、特許文献1に詳述されるトレースラインの自動的な修正処理が実行される。つまり、補間トレースライン62上の個々のポイントごとにその周辺に対してエッジ検出処理が実行され、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせ、一方、エッジが検出されない場合には元の補間トレースライン62の結果がそのまま保存される。こうして、補間トレースライン62上の全てのポイントについてエッジ検出処理が実行され、その結果として、図7に一点鎖線で示す修正処理後の補間トレースライン64が得られる。
【0049】
追加断面選択部220は、修正処理における補間トレースライン62の修正量として補間トレースライン62上の全てのポイントに関する移動量の積算値を算出する。これにより、元の補間トレースライン62と修正処理後の補間トレースライン64との間の面積差が算出される。例えば、図7に示す領域S1,S2,S3の面積の合計値が修正量となる。追加断面選択部220は、複数の自動トレース用参照断面60の各々について修正量を算出し、修正量に基づいて、キー断面となる追加断面を選択する。
【0050】
図8は、修正量に基づいた追加断面の選択処理を説明するための図である。図8の横軸は、参照断面列の配列方向であり、その横軸上にはマニュアルトレース用参照断面58の位置が実線で示されている。各区間は、互いに隣り合う2枚のマニュアルトレース用参照断面58に挟まれた区間である。そして、各区間内において縦軸方向に伸びる複数の破線が、複数の自動トレース用参照断面を示している。
【0051】
図8の縦軸は、補間トレースラインの修正量を示しており、各自動トレース用参照断面に対応した各破線の縦軸方向の長さが、その自動トレース用参照断面の修正量の大きさを示している。なお、図8には区間A,Bのみを図示しているが、マニュアルトレース用参照断面58の枚数に応じて、例えば、図6に示すように区間C,D等も存在する。
【0052】
追加断面選択部220は、修正量に基づいて特徴的な自動トレース用参照断面を選択する。例えば、図8に示す予め設定された閾値Thを超える大きさの修正量を持つ自動トレース用参照断面(破線)の中から、少なくとも一枚の追加断面が選択される。例えば、各区間A,Bごとに、その区間内で修正量が最大となる断面Mが選択される。また、例えば修正量が閾値Thを超える断面列区間の両端に位置する断面Sと断面Eが選択されてもよい。もちろん、断面Mと断面Sと断面Eが全て選択されてもよい。さらに、修正量が閾値Thを超える断面Sから断面Eまでの区間内において等間隔で複数の断面が選択されてもよい。
【0053】
追加断面選択部220により追加断面が選択されると、その追加断面がキー断面に加えられる。そして、補間トレースライン形成部226により補間処理が再実行される。この2回目の補間処理においては、キー断面として、当初から利用されていたマニュアルトレース用参照断面58に追加断面が加えられる。例えば、図8に示すマニュアルトレース用参照断面58に加えて、自動トレース用参照断面から選択された断面Mが、キー断面として利用される。
【0054】
補間トレースライン形成部226は、マニュアルトレース用参照断面58内の修正処理後のマニュアルトレースラインと、追加断面として選択された自動トレース用参照断面(例えば断面M)内の修正処理後の補間トレースラインを基礎トレースラインとし、これら基礎トレースラインを利用して2回目の補間処理を実行する。これにより、追加断面として選択されていない残りの自動トレース用参照断面内に、新しい補間トレースラインが形成される。この新しい補間トレースラインに対して、トレースライン修正部228により再び修正処理が実行される。
【0055】
追加断面として選択された自動トレース用参照断面は、比較的大きな修正量の断面である。つまり、最初の補間処理により得られた補間トレースラインが、対象組織の真の境界に近づけるために、比較的大きく修正処理された断面である。その比較的大きな修正量の追加断面がキー断面に加えられているため、2回目の補間処理においては、最初の補間処理に比べて、対象組織の真の境界に近い補間トレースラインを形成することができ、その補間トレースラインに対する修正処理における境界の検出の精度などが高められ、結果として、最終的に得られるトレースラインの精度が向上する。しかも、マニュアルトレースラインを追加する必要がないため、ユーザに追加の負担を強いることも回避できる。
【0056】
なお、2回目の補間処理の後に再び実行される修正処理を評価してさらに追加断面を選択し、この追加断面を加えたキー断面により3回目の補間処理が実行されてもよい。さらに、3回目以降についても、例えば、予め指定された回数だけ、追加断面の選択や補間処理や修正処理を繰り返すようにしてもよい。また、追加断面選択部220は、上述した補間トレースラインの修正量に代えて又は修正量に加えて、対象組織の輪郭の明瞭度を利用して修正処理の有効性を評価してもよい。
【0057】
図9は、対象組織の輪郭の明瞭度を説明するための図である。図9には、1枚の自動トレース用参照断面60内に形成された補間トレースライン62が示されている。この補間トレースライン62に対して、特許文献1に詳述されるトレースラインの自動的な修正処理が実行される。
【0058】
その修正処理においては、補間トレースライン62上の個々のポイントごとに、例えば補間トレースライン62に直交する方向に沿って、所定の長さの検出窓Rが設定される。そして、補間トレースライン62上の個々のポイントごとに、検出窓R内を探索範囲としてエッジの探索が行われ、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせ、一方、エッジが検出されない場合には元の補間トレースライン62の結果がそのまま保存される。
【0059】
そこで、追加断面選択部220は、修正処理におけるエッジ(輪郭)の検出率から輪郭の明瞭度を算出する。例えば、補間トレースライン62上の全ポイント数TPと、エッジが検出されたポイント数EPに基づいて、「明瞭度=EP/TP」を算出する。追加断面選択部220は、複数の自動トレース用参照断面60の各々について明瞭度を算出し、明瞭度に基づいて、キー断面となる追加断面を選択する。
【0060】
明瞭度に基づいた選択においても、図8を利用して説明した選択処理と同様な処理が好適である。明瞭度の選択においては、図8の縦軸を明瞭度、各自動トレース用参照断面に対応した各破線の縦軸方向の長さを、その自動トレース用参照断面の明瞭度の大きさと読み替える。
【0061】
追加断面選択部220は、例えば、予め設定された閾値Thを超える大きさの明瞭度を持つ自動トレース用参照断面(破線)の中から、少なくとも一枚の追加断面を選択する。例えば、各区間A,Bごとに、その区間内で明瞭度が最大となる断面Mが選択される。また、例えば、明瞭度が閾値Thを超える断面列区間の両端に位置する断面Sと断面Eが選択されてもよい。もちろん、断面Mと断面Sと断面Eが全て選択されてもよい。さらに、明瞭度が閾値Thを超える断面Sから断面Eまでの区間内において等間隔で複数の断面が選択されてもよい。
【0062】
追加断面選択部220により明瞭度に基づいて追加断面が選択されると、修正量を利用した選択の場合と同様に、その追加断面がキー断面に加えられる。そして、補間トレースライン形成部226により補間処理が再実行される。もちろん、修正量を利用した選択の場合と同様に、例えば予め指定された回数だけ追加断面の選択や補間処理や修正処理を繰り返すようにしてもよい。
【0063】
また、修正量に基づいた選択と明瞭度に基づいた選択を併用してもよい。例えば、修正量が最大となる断面と明瞭度が最大となる断面を追加断面として選択してもよいし、修正量と明瞭度が共に所定量以上となる断面の中から追加断面を選択するようにしてもよい。
【0064】
なお、比較的広い範囲に亘って明瞭度が大きい場合には、例えば、図8の区間A内において、閾値Thを超える大きさの明瞭度を持つ自動トレース用参照断面の割合が予め設定された閾値を超える場合には、その時点で対象組織の境界を十分に検出できていると判断して、区間A内における追加断面の選択を終了させてもよい。
【0065】
また、互いに隣接する自動トレース用参照断面の補間トレースライン同士の差分値を算出し、その差分値が所定値以上となる箇所を含むような断面列区間を設定して、その断面列区間の中から追加断面を選択するようにしてもよい。もちろん、補間トレースライン同士の相互相関値に基づいて、相互相関値が小さい箇所を含むように断面列区間を設定してもよい。
【0066】
さらに、図3や図6を利用して説明したマニュアルトレース用参照断面58の設定においては、比較的境界が不明瞭な箇所にマニュアルトレース用参照断面58を設定し、境界(輪郭)の判断をユーザに任せた方がよい場合もある。そこで、図3に示すように参照断面列56が設定された後に、各参照断面56ごとに、その断面内で対象組織の輪郭を検出し、その検出率から輪郭の不明瞭度を算出して、例えば、不明瞭度が大きな順で予め定められた枚数の参照断面56をマニュアルトレース用参照断面58としてもよい。なお、境界の検出にあたっては、例えば、ボリュームデータ内において対象組織を取り囲むように三次元関心領域を設定し、各参照断面56内において三次元関心領域内で(三次元関心領域の断面内で)対象組織の境界を探索すればよい。つまり、例えば、各参照断面56内に二次元的に反映された三次元関心領域の境界上の点から、二次元的に反映された三次元関心領域の中心に向かって、対象組織の境界を探索すればよい。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0068】
22 組織抽出部、220 追加断面選択部、222 トレース断面設定部、224 手動トレースライン形成部、226 補間トレースライン形成部、228 トレースライン修正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を含む三次元空間から得られた超音波データに基づいて当該対象物の輪郭に対応したトレースラインを形成する超音波データ処理装置において、
三次元的に配列された超音波データで構成されるデータ空間内において、少なくとも一つの手動トレース断面と複数の自動トレース断面を設定するトレース断面設定部と、
各手動トレース断面内にユーザ操作に応じて手動トレースラインを形成する手動トレースライン形成部と、
手動トレースラインを基礎トレースラインとして利用した補間処理により、各自動トレース断面内に補間トレースラインを形成する補間トレースライン形成部と、
各自動トレース断面ごとに、その自動トレース断面内で検出される前記対象物の輪郭に基づいて補間トレースラインを修正処理するトレースライン修正部と、
前記修正処理の有効性を示す特徴量に基づいて、複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する追加断面選択部と、
を有し、
前記各追加トレース断面の修正処理された補間トレースラインを基礎トレースラインに加えて前記補間処理を再実行する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、各自動トレース断面ごとに、前記修正処理における補間トレースラインの修正量を算出し、当該修正量に基づいて少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、前記修正量が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、前記修正量が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から等間隔で複数の追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、各自動トレース断面ごとに、前記修正処理における輪郭の検出率から輪郭の明瞭度を算出し、当該明瞭度に基づいて少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、前記明瞭度が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波データ処理装置において、
前記追加断面選択部は、前記明瞭度が所定値以上となる複数の自動トレース断面の中から等間隔で複数の追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波データ処理装置において、
互いに隣接する自動トレース断面の補間トレースライン同士の差分値を算出し、当該差分値が所定値以上となる箇所を含む前記データ空間内の区間から、前記少なくとも一つの追加トレース断面を選択する、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波データ処理装置において、
前記データ空間内において複数のトレース用断面を設定し、各トレース用断面ごとにそのトレース用断面内で前記対象物の輪郭を検出してその検出率から輪郭の不明瞭度を算出し、当該不明瞭度が大きな順で予め定められた枚数のトレース用断面を前記手動トレース断面とする、
ことを特徴とする超音波データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45181(P2012−45181A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190297(P2010−190297)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】