説明

超音波トランスデューサとその製造方法

【課題】 接続信頼性の高い超音波トランスデューサとその製造方法の提供を提供する。
【解決手段】 凸部6を有する振動子2と、前記凸部6に対して対向するように設けられている配線基板3と、前記凸部6の少なくとも一部を包接し、前記振動子2と前記配線基板3とを電気的に接続する接着材4と、前記振動子2と前記配線基板3との間に設けられ、前記凸部6と前記接着材4を覆う樹脂5とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波トランスデューサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサは、超音波診断装置の超音波プローブに用いられるものであり、被検体に超音波を送波し、反射波を受波するために用いられている。近年では、精度の高い診断を行うために、圧電素子をマトリックス状に配列した2次元アレイの超音波トランスデューサが用いられてきた。
【0003】
例えば、図9に示すように超音波トランスデューサ101は、振動子105と、IC基板108の間を、導電素子111および接着材112により接合させて形成している。
【0004】
振動子105は、所定の配列で複数配置されているトランスデューサ素子102と、トランスデューサ素子102の相対する略平面状の面上に、第1電極103及び第2電極104がそれぞれ形成されている。また、IC基板108は、基板本体106上にIC回路107が形成され、更にその上に導体109を含む再分配層110が設けられている。
【0005】
また、超音波トランスデューサ101の製造方法としては、まずIC基板108の導体109上に導電素子111を設けた後、接着材112を体積させる。そして、振動子105が連続して接続したものである振動体(図示せず)を導電素子111上に接合させ、振動子105へと個片化を行う。個片化する際には、第2電極104に接する前までダイシングを行い、残りのトランスデューサ素子102と第2電極104は、レーザを用いて切断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−507581号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の超音波トランスデューサ101では、導電素子111が、半田ボールや導電性のバンプ等の高さや径等でバラつきの生じやすい方法により形成されたものであるため、振動子105の略平面状の第2電極104と導電素子111が電気的な接続が出来ず、接続不良をおこすことがあった。
【0008】
また、振動子105とIC基板108とを電気的に接続させるものが、導電素子111が半田ボールや導電性バンプ等である場合、振動子105とIC基板108との間隔が、半田ボールや導電性バンプ等の高さ分しか間隔が開かないので、非常に狭くなってしまう。その結果、振動子105が連続して接続したものである振動体(図示せず)を個片化する工程で、ダイシングやレーザ等で切断する際に、IC基板108の導体109まで切断をしていまい、接続不良をおこす可能性があった。
【0009】
そこで本発明では、接続信頼性の高い超音波トランスデューサとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、実施形態の超音波トランスデューサは、凸部を有する振動子と、凸部に対して対向するように設けられている配線基板と、凸部の少なくとも一部を包接し、振動子と配線基板とを電気的に接続する接着材と、振動子と配線基板との間に設けられ、凸部と接着材を覆う樹脂とを有することを特徴としている。
【0011】
また、実施形態の超音波トランスデューサの製造方法は、請求項1に記載の超音波トランスデューサの製造方法であって、振動体に複数の凸部を設ける工程と、配線基板上の凸部が設けられる位置に導電性の接着材を設ける工程と、振動体の凸部と配線基板とを位置合わせした状態で接合する工程と、振動体と配線基板との間に樹脂を供給する工程と、振動体を分割して振動子に個片化する工程とを含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う超音波トランスデューサの断面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す工程断面図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す工程断面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す工程断面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す工程断面図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す工程断面図。
【図9】従来の超音波トランスデューサを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサとその製造方法を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサ1について、図1、図2を参照して説明する。超音波トランスデューサ1は、振動子2と配線基板3との間に接着材4と樹脂5とが設けられたものである。
【0015】
振動子2は、凸部6を有するトランスデューサ素子7と第1電極8及び第2電極9から形成されている。また、振動子2はマトリックス状に複数配置されており、本実施形態では例えば短手方向に約40個、長手方向に約100個配列して設けられているが、振動子2の数や配置の仕方はこれに限られない。なお、図1は、分かりやすくするため、短手方向に10個、長手方向に31個配列したものを用いており、図2は一部を省略した断面図である。
【0016】
トランスデューサ素子7は、音響整合層10と、圧電素子11、そしてバッキング材12を積層して形成されている。
【0017】
音響整合層10は、圧電素子11と被検体(図示せず)との音響インピーダンスの整合をとる役割を果たしている。また、圧電素子11は、電気信号を超音波パルスに変換して被検体へ送波した後、被検体から反射して戻ってきた超音波を受波して電気信号に変換して出力している。
【0018】
そして、バッキング材12は、圧電素子11による超音波パルスの送波の際に、超音波の照射方向と反対側に放射される超音波パルスを吸収し、圧電素子11の余分な振動を抑えるために設けられている。
【0019】
凸部6は、振動子2の幅Wよりも狭く、全てほぼ同じ高さに形成されており、本実施形態では、バッキング材12により形成されている。また、凸部6は最頂部に略平坦の面を有し、四方に段差が設けられた形状に形成されている。そして、凸部6の最頂部は、接着材4へと差し込み、凸部6と接着材4の接続を強固にするため、接着材4が設けられる領域よりも狭い領域となるように形成されている。なお、凸部6の形状はこれに限られることはなく、接着材4へと凸部6の最頂部を差し込むことが可能な形状であればどの様な形状でも良い。例えば、複数の段差が設けられた形状や、段差のない四角柱や三角柱、円柱等の柱状形状、角錘や円錐等の形状でも良い。
【0020】
第1電極8は、本実施形態ではトランスデューサ素子7の凸部6の最頂部の略平坦面に設けられており、第2電極9は凸部6が設けられている側の相対する面側を覆うように設けられている。なお、第1電極8は、図2では凸部6の最頂部の略平坦面に設けられているが、これに限られることはなく、凸部6の最頂部を含むように設けられていれば、どのように設けても良い。
【0021】
また、第1電極8は、本実施形態ではチタン(Ti)、金(Au)を順に積層して形成しているが、この他にニッケル(Ni)と金(Au)を順に積層したものでもよく、積層順や積層数、使用する材質はこれに限られない。そして、第2電極9は、例えばチタン(Ti)と金(Au)を順に積層して形成しているが、積層順積層数、使用する材質はこれに限られない。
【0022】
配線基板3は、振動子2の第1電極8の対向面側に設けられており、基板本体13上に積層する導体14と接続し、凸部6にそれぞれ対応する位置にパッド15が設けられている。また、パッド15を囲むようにソルダーレジスト16が形成されている。
【0023】
パッド15は、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)を順に積層して形成されたものを用いているが、積層順や使用する材質はこれに限られない。また、パッド15の大きさは、接着材4と接している部分より少し大きめに形成されている。
【0024】
接着材4は、振動子2の凸部6と配線基板3のパッド15との間に設けられており、凸部6の少なくとも一部を包接して振動子2と配線基板3を接合している。
【0025】
接着材4の材質としては、本実施形態では金属性フィラーと熱硬化性樹脂、例えば銀(Ag)フィラーとエポキシ樹脂を含むものを用いているが、これに限られることはない。例えば、半田や、半田と熱硬化性樹脂を含むもの等、振動子2と配線基板3を電気的に接続可能な材質であればどのような材質であっても良い。
【0026】
樹脂5は、凸部6と接着材4とを囲み、振動子2と配線基板3との間を満たしている。材質としては、本実施形態では熱膨張率が50ppm以下の熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂などを用いているが、これに限られることはない。接着材4に用いる樹脂と同じ材質のものを用いた場合、より密着性が向上するため、確実な接合を行うことが可能になる。
【0027】
次に、超音波トランスデューサ1の製造方法を、図3、図4、図5を参照して説明する。
【0028】
超音波トランスデューサ1は、大きく分けて振動体20へ凸部6を設ける工程と、配線基板3に接着材4を設ける工程と、振動体20と配線基板3とを接合して振動体20を分割する工程に分けられる。なお、振動体20は振動子2と同じ構成であるが、振動子2に分割される前の状態のものである。また、振動体20は一定の厚みに形成されている。
【0029】
まず、振動体20へ凸部6を設ける工程を図3を参照して説明する。図3(a)に示すように、トランスデューサ素子7のバッキング材12側と音響整合層10側にそれぞれ第1電極8、第2電極9を設ける。
【0030】
第1電極8は、本実施形態ではチタン(Ti)、金(Au)、チタン(Ti)の順に、そして第2電極9はチタン(Ti)、金(Au)の順に、例えばスパッタリングや電気めっきを行って成膜する。なお、第1電極8、第2電極9を構成する材質及び、順番はこれに限られることはなく、適宜選択してよい。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、1回目のダイシングを行う。ダイシングは、バッキング材12に対して行われる。ダイシングに使用するブレード21は、本実施形態では厚みが約50μmであり、複数のブレード21が約200μmのピッチに設けられたものを使用する。なお、ブレード21の厚みやピッチはこれに限られることはなく、所望の厚みやピッチに形成されたものを用いてもよい。
【0032】
また、ダイシングする際は、本実施形態では深さ約90μm、溝の幅が約150μmになるように、ブレード21の厚みの半分である約25μmずつずらしながらカットを5回行っていく。なお、ダイシングの深さや溝の幅、ブレード21をずらす距離、カットの回数はこれに限られることはなく、適宜変更してもよい。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、2回目のダイシングを行う。2回目のダイシングは、1回目のダイシングによって形成された溝を更にダイシングする工程であり、ダイシングに使用するブレード21は、1回目のダイシングに使用したブレード21と同様のものを使用する。また、ダイシングをする際は、溝の中央部に対して行い、深さ約50μm、溝の幅が約50μmになるようにカットを1回行う。なお、本実施形態では1回目のダイシングに使用したブレード21と同様のものを用いているが、これに限られることはなく、異なるものを用いてもよい。また、溝の深さや幅も適宜変更してもよい。
【0034】
その後、ダイシングした一方向に対して略垂直となる方向を、図3(b),(c)の時と同様にダイシングを行っていく。これにより、最頂部の面積が50×50μm、底部の面積が150×150μmの凸部6が形成される。
【0035】
本実施形態では段差を1つ設ける場合の工程であったが、これに限られることはない。そのため、例えば複数の段差が設けられた形状を形成したい場合は、更にダイシングを行い、段差を形成させる工程があってもよい。また、段差のない四角柱や三角柱、円柱等の柱状形状、角錘や円錐等の形状を形成したい場合は、段差を形成させる工程を減らしてもよい。
【0036】
このように、一定の厚みに形成されている振動体20のバッキング材12をダイシングして凸部6を形成することにより、高さばらつきをおさえることが可能となる。
【0037】
次に、配線基板3に接着材4を設ける工程を、図4を参照して説明する。まず、図4(a)に示すように、配線基板3上にマスク22を載置する。
【0038】
配線基板3は、本実施形態ではパッド15に銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)が順に積層されたものを用いる。
【0039】
また、マスク22は、配線基板3のパッド15の位置に位置合わせされて孔23が形成されており、孔23の大きさは、パッド15の大きさより少し小さめに形成されている。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、スキージ24を移動させ、マスク22の孔23へと接着材4を充填させ、その後、図4(c)に示すように、マスク22を取り除く。
【0041】
このように、孔23を少し小さめに形成し、接着材4を充填することにより、後述する配線基板3と振動体20とを接合させる際に、接着材4がパッド15からはみだし、他のパッド等へと広がることで発生するリークを抑制することができる。
【0042】
次に、振動体20と配線基板3とを接合し、振動体20を振動子2へと分割する工程を、図5を参照して説明する。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、配線基板3に振動体20をマウントする。この時、振動体20の凸部6を配線基板3上の接着材4へと約90μm程度差し込んで接合する。なお、本実施形態では凸部6を約90μm程度、接着材4へと差し込んで接合しているが、これに限られることはなく、凸部6の一部を露出する程度に接着材4へと差し込んで接合していればよい。
【0044】
このような接合を行うことにより、配線基板3と振動体20との間隔を広くすることが出来るため、後述する振動体20を振動子2へと分割する際に、配線基板3までダイシングすることを防ぐことが出来る。また、凸部6を接着材4へと差し込んで接合することにより、接触面積を広くすることができるため、強度の高い接続を行うことが可能となる。更に、凸部6の高さに多少のばらつきがあっても、接着材4に差し込んでいるため、ばらつき吸収し、かつ電気的な接続をおこなうことが可能となる
次に、図5(b)に示すように、振動体20と配線基板3との間を樹脂5で満たし、封止する。この時、樹脂5はディスペンサー25を用いて、アンダーフィル塗布を行い、毛細管現象により樹脂を満たしていく。
【0045】
そして、図5(c)に示すように、加熱装置26により接着材4と樹脂5を加熱して硬化させる。例えば加熱装置26で加熱する際には、気泡を抜くために樹脂5を満たしてから約10分程度放置してから加熱を行い、約150℃で約4時間加熱を行う。なお、本実施形態では、銀(Ag)フィラーとエポキシ樹脂を含むものを用いた場合であるが、接着材4として半田を含むものを用いた場合の温度と加熱時間は、約240℃で約30秒の加熱を行う。また、樹脂5を満たしてから放置する時間や、加熱の温度、時間についてはこれに限られることはなく、適宜変更する事が可能である。
【0046】
その後、図5(d)に示すように、振動体20をダイシングする。ダイシングするブレード21は、厚みが約50μmの厚みのものを使用している。そして、ダイシングする位置は、隣り合う凸部6の略中央をダイシングしており、振動子2がマトリックス状に形成されるように一方向にダイシングした後、その方向に対して略垂直となる方向にも同様にダイシングを行う。また、ダイシングする際、振動体20を確実に切断するため、樹脂5を少しダイシングする。
【0047】
以上、第1実施形態によれば、バッキング材12に一定の間隔で複数形成された凸部6を設け、配線基板3上に設けた接着材4へ、凸部6の少なくとも一部を包接するように差し込んでマウントし、接合させている。
【0048】
このように、凸部6をバッキング材12に形成することにより、凸部6の高さを略均一にすることができる。更に、接着材4に凸部6の少なくとも一部を包接するように差し込んでマウントするため、配線基板3と振動体20との間隔を広くすることが出来、配線基板3までダイシングすることを防ぐことが出来る。その結果、接続信頼性の高い超音波トランスデューサ1を提供することが出来る。
【0049】
また、凸部6を接着材4へと差し込んで接合することにより、接触面積を広くすることができるため、ダイシングを行っても電気的な接続を保持可能な強度の高い接続を行うことが可能なため、より接続信頼性の高い超音波トランスデューサ1を提供することが出来る。
【0050】
なお、上記実施形態では、第1、第2電極8,9を設けてからダイシングを行っているが、第2電極9を先に設けておき、第1電極8は凸部6を形成した後に設けてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサとその製造方法について、図6乃至図8を参照して説明する。本実施形態は、振動子31上に凸部32を形成した点で第1実施形態と異なり、その他の構成部分については、同様の構成を有している。従って、図6乃至図8では、第1実施形態と異なる凸部32を含む超音波トランスデューサ30とその製造方法のみを示し、以下の説明においては、第1実施形態と同様の構成部分については、詳細説明を省略して異なる構成部分についてのみ説明する。
【0052】
図6に示すように、本実施形態の超音波トランスデューサ30は、凸部32が振動子31上に形成されている。振動子31は、トランスデューサ素子33と第1電極8及び第2電極9とから形成されている。
【0053】
トランスデューサ素子33は、音響整合層10と、圧電素子11、そしてバッキング材34を積層して形成されたものであり、第1、第2電極8,9は、トランスデューサ素子33の長手方向の相対する面上に設けられている。
【0054】
また、凸部32は、第1電極8上に一定の間隔を設けて複数設けられており、本実施形態では、例えば金(Au)や半田等の導電性の材質から形成されたバンプである。
【0055】
次に、超音波トランスデューサ30の製造方法を、図7、図8を参照して説明する。超音波トランスデューサ30は、大きく分けて振動体35へ凸部32を設ける工程と、配線基板3に接着材4を設ける工程と、振動体35と配線基板3とを接合して振動体35を分割する工程に分けられる。なお、振動体35は振動子31と同じ構成であるが、振動子31に分割される前の状態のものである。また、配線基板3に接着材4を設ける工程は第1実施形態と同様のため、省略して説明する。
【0056】
まず、振動体35へ凸部32を設ける工程を図7を参照して説明する。図7(a)に示すように、トランスデューサ素子33のバッキング材34側と音響整合層10側にそれぞれ第1電極8、第2電極9を設ける。
【0057】
第1電極8は、チタン(Ti)、金(Au)、チタン(Ti)の順に、そして第2電極9はチタン(Ti)、金(Au)の順に、例えばスパッタリングや電気めっきを行って成膜する。
【0058】
そして、図7(b)に示すように、第1電極8上に凸部32を設ける。凸部32は、ワイヤーボンディングにより設けられ、凸部32が形成される量だけ供給されて形成される。
【0059】
次に、振動体35と配線基板3とを接合し、振動体35を振動子31へと分割する工程を、図8を参照して説明する。
【0060】
まず、図8(a)に示すように、配線基板3に振動体35をマウントする。この時、振動体35の凸部32の少なくとも一部を露出するように接着材4へと差し込んで接合させる。このように接合させることにより、配線基板3と振動体35との間隔を広くすることが出来るため、後述する振動体35を振動子31へと分割する際に、配線基板3までダイシングすることを防ぐことが出来る。また、凸部6を接着材4へと差し込んで接合することにより、接触面積を広くすることができるため、強度の高い接続を行うことが可能となる。更に、凸部32の高さに多少のばらつきがあっても、接着材4に差し込んでいるため、ばらつき吸収し、かつ電気的な接続をおこなうことが可能となる。
【0061】
次に、図8(b)に示すように、振動体35と配線基板3との間を樹脂5で満たし、封止する。この時、樹脂5はディスペンサー25を用いて、アンダーフィル塗布を行い、毛細管現象により樹脂を満たしていく。
【0062】
そして、図8(c)に示すように、加熱装置26により接着材4と樹脂5を加熱して硬化させる。例えば加熱装置26で加熱する際には、気泡を抜くために樹脂5を満たしてから約10分程度放置してから加熱を行い、約150℃で約4時間加熱を行う。なお、本実施形態では、銀(Ag)フィラーとエポキシ樹脂を含むものを用いた場合であるが、接着材4として半田を含むものを用いた場合の温度と加熱時間は、約240℃で約30秒加熱を行う。また、樹脂5を満たしてから放置する時間や、加熱の温度、時間についてはこれに限られることはなく、適宜変更する事が可能である。
【0063】
その後、図8(d)に示すように、振動体35をダイシングする。ダイシングするブレード21は、厚みが約50μmの厚みのものを使用し、ダイシングする位置は、隣り合う凸部32の略中央をダイシングした後、ダイシングした方向に対して直角方向にも同様にダイシングを行う。また、ダイシングする際、振動体35を確実に切断するため、樹脂5を少しダイシングする。
【0064】
以上、本実施形態によれば、振動子31上に一定の間隔で複数形成された凸部32を設け、配線基板3上に設けた接着材4へ、凸部32の一部を包接するように差し込んでマウントし、接合させている。
【0065】
このように、接着材4に凸部32の少なくとも一部を包接するように差し込んでマウントするため、配線基板3と振動体20との間隔を広くすることが出来、配線基板3までダイシングすることを防ぐことが出来る。また、凸部32の高さに多少のばらつきがあっても、接着材4に差し込んでいるため、ばらつき吸収し、かつ電気的な接続をおこなうことが可能となる。その結果、接続信頼性の高い超音波トランスデューサ30を提供することが出来る。
【0066】
更に、凸部32を接着材4へと差し込んで接合することにより、接触面積を広くすることができるため、ダイシングを行っても電気的な接続を保持可能な強度の高い接続を行うことが可能なため、より接続信頼性の高い超音波トランスデューサ30を行提供することが出来る。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1,30,101…超音波トランスデューサ
2,31,105…振動子
3…配線基板
4,112…接着材
5…樹脂
6,32…凸部
7,33,102…トランスデューサ素子
8,103…第1電極
9,104…第2電極
10…音響整合層
11…圧電素子
12,34…バッキング材
13,106…基板本体
14,109…導体
15…パッド
16…ソルダーレジスト
20,35…振動体
21…ブレード
22…マスク
23…孔
24…スキージ
25…ディスペンサー
26…加熱装置
107…IC回路
108…IC基板
110…再分配層
111…導電素子
W…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部を有する振動子と、
前記凸部に対して対向するように設けられている配線基板と、
前記凸部の少なくとも一部を包接し、前記振動子と前記配線基板とを電気的に接続する接着材と、
前記振動子と前記配線基板との間に設けられ、前記凸部と前記接着材を覆う樹脂と、
を有することを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記振動子は、音響整合層、圧電素子、バッキング材の順に積層したトランスデューサ素子と、前記バッキング材上に設けられた第1電極と、前記音響整合層上に設けられた第2電極を含み、
前記凸部は、前記第1電極と、前記トランスデューサ素子の前記バッキング材から形成されていることを特徴とする請求項1記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記振動子は、音響整合層、圧電素子、バッキング材の順に積層したトランスデューサ素子と、前記バッキング材上に設けられた第1電極と、前記音響整合層上に設けられた第2電極を含み、
前記凸部は、前記第1電極上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波トランスデューサの製造方法であって、
振動体に複数の前記凸部を設ける工程と、
前記配線基板上の前記凸部が設けられる位置に導電性の前記接着材を設ける工程と、
前記振動体の前記凸部と前記配線基板とを位置合わせした状態で接合する工程と、
前記振動体と前記配線基板との間に樹脂を供給する工程と、
前記振動体を分割して前記振動子に個片化する工程と、
を含むことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項5】
前記振動体の前記凸部と前記配線基板とを位置合わせした状態で接合する際に、
少なくとも前記凸部の一部を包接するように接合することを特徴とする請求項4記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項6】
前記振動体を前記振動子へと分割する際に、前記振動体と前記配線基板との間に設けられた樹脂の一部までダイシングすることを特徴とする請求項4に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項7】
前記振動体は、音響整合層、圧電素子、バッキング材が順に積層し、前記バッキング材上に第1電極と、前記音響整合層上に第2電極が設けられて形成されたものであり、
前記凸部を設ける工程は、前記バッキング材をダイシングして前記凸部を設ける工程であることを特徴とする請求項4乃至請求項6に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項8】
前記振動体は、音響整合層、圧電素子、バッキング材が順に積層し、前記バッキング材上に第1電極と、前記音響整合層上に第2電極が設けられて形成されたものであり、
前記凸部を設ける工程は、前記第1電極上に導電性のバンプを設けて前記凸部を形成する工程であることを特徴とする請求項4乃至請求項6に記載の超音波トランスデューサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−24564(P2012−24564A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137705(P2011−137705)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】