説明

超音波プローブの圧電振動子、超音波プローブ、超音波診断装置及び超音波プローブにおける圧電振動子の製造方法

【課題】超音波プローブにおける圧電振動子と、この圧電振動子に電圧を印加するための導体との導通を確実に図ることができる圧電振動子を提供する。
【解決手段】圧電振動子15は、圧電体24の表面に設けられた導電層25で構成される信号電極26及び接地電極27を備え、フレキシブル基板17の第一銅箔層20が接着層16を介して圧着される前記接地電極27の第一の部分27aと、第二銅箔層21が前記接着層16を介して圧着される前記信号電極26は、表面に突起部32を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に超音波を送受信する超音波プローブの圧電振動子、超音波プローブ、超音波診断装置及び超音波プローブにおける圧電振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に超音波を照射し、その反射エコー(echo)を画像化する超音波診断装置においては、超音波の送受信を行なう超音波プローブが超音波診断装置本体と接続されている。前記超音波プローブは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材からなる圧電振動子と、この圧電振動子に対して超音波照射側に配置される音響整合層と、前記圧電振動子に対して超音波照射側とは反対側に配置されるバッキング材層と、前記圧電振動子に電圧を印加するために、この圧電振動子の表面に形成された信号電極及び接地電極と接続される導体とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記圧電振動子における前記各電極と前記導体とは、エポキシ樹脂接着剤等を用いて圧着することにより接続されるようになっている。このような接続構造においては、前記圧電振動子における前記各電極の表面と前記導体の表面のそれぞれにおいて隆起している部分同士が接触して導通が成り立つようになっている。従って、前記各電極と前記導体との導通は、前記各電極の表面と前記導体の表面のそれぞれの凹凸に依存することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−195584号公報(段落[0002]及び段落[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波画像の高分解能化や、グレーティングローブ等のアーチファクトの抑制などを図るために、短冊状に形成された前記圧電振動子の配列方向の幅をできるだけ小さくしたいという要請がある。しかし、前記圧電振動子の幅を小さくするほど、この圧電振動子の表面に形成された前記各電極の面積が小さくなる。従って、前記のようにエポキシ樹脂接着剤等を用いて前記導体を圧着する構造においては、より確実に導通を図ることが要請される。
【0006】
また、前記圧電振動子を二次元方向に配列した超音波プローブ(すなわち、2Dプローブや1.5Dプローブ)においても、個々の圧電振動子の大きさが小さくなるので、前記と同様に、より確実に導通を図ることが要請される。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、超音波プローブにおける圧電振動子と、この圧電振動子に電圧を印加するための導体との導通を確実に図ることができる圧電振動子、超音波プローブ、超音波診断装置及び圧電振動子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、圧電体の表面に設けられた導電層で構成される信号電極及び接地電極を備え、少なくとも前記信号電極は、表面に突起部を有することを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0009】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記圧電体は、該圧電体に形成された間隙に充填材が充填されて形成された充填部と、圧電材からなる圧電材部とで構成され、前記充填部は、前記圧電体の表面を研削した時に、前記圧電材部よりも研削されずに前記圧電体の表面において突出することになる材質の充填材によって形成されていて、前記圧電体の表面から突出する突部を有しており、前記突部の上の前記導電層が突出して前記突起部を形成していることを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0010】
第3の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記間隙は、前記圧電体の表面から所定の深さで形成された溝であり、前記充填部は、前記圧電体の表面側から内部に向かって途中まで形成されていることを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0011】
第4の観点の発明は、第3の観点の発明において、前記溝の深さは、前記圧電材部の厚さの10%以下であることを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0012】
第5の観点の発明は、第1〜4のいずれか一の観点の発明において、前記信号電極及び前記接地電極には、前記圧電振動子に電圧を印加するための導体が面圧着されることを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0013】
第6の観点の発明は、第1〜5のいずれか一の観点の発明において、前記圧電振動子は、板状体を直交する二方向に分割することによって形成されて、二次元方向に配列されるものであり、前記突起部は、前記二つの分割方向と交差する方向に突条に形成されていることを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0014】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記接地電極は、表面に突起部を有することを特徴とする超音波プローブの圧電振動子である。
【0015】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明に係る圧電振動子を備えることを特徴とする超音波プローブである。
【0016】
第9の観点の発明は、第8の観点の発明に係る超音波プローブを備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第10の観点の発明は、圧電体に所定深さの溝を形成する溝形成工程と、該溝に充填材を充填して充填部を形成する充填部形成工程と、前記圧電体の表面を研削して、前記充填部の一部を前記圧電体の表面から突出させて突部を形成する突部形成工程と、該突部が形成された前記圧電体の表面に、信号電極及び接地電極となる導電層を形成する導電層形成工程と、を有し、該導電層形成工程においては、前記導電層を、前記突部の上において突出して突起部が形成されるようにして前記圧電体の表面に形成し、前記導電層において前記突起部が形成された部分が少なくとも信号電極であることを特徴とする超音波プローブにおける圧電振動子の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記信号電極の表面の突起部により、前記圧電振動子に電圧を印加するために前記信号電極と圧着される導体との導通を確実にすることができる。また、前記信号電極に前記導体を圧着したときの応力が前記突起部に集中するので、強固に圧着することができ、このことからも確実な導通を図ることができるといえる。
【0019】
また、前記圧電振動子が、表面に前記突起部が形成された板状体を直交する二方向に分割することによって形成されて、二次元方向に配列されるものである場合、前記突起部を、前記二つの分割方向と交差する方向に突条に形成することにより、製造時に前記分割箇所と前記突起部との位置関係を考慮する必要がなくなるので、製造上の困難性を伴うことなく、前記突起部の形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施の形態の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における超音波プローブの外観を示す一部切欠斜視図である。
【図3】第一実施形態の超音波プローブにおける機能素子部の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示す機能素子部の断面図である。
【図5】機能素子部を構成する圧電振動子を示す斜視図である。
【図6】圧電振動子の製造工程の概略説明図である。
【図7】図6(A)で溝が形成された板状の圧電体を示す平面図である。
【図8】溝形成工程、充填部形成工程、研削工程及び導電層形成工程を経て得られた分割前の板状の圧電振動子を示す平面図である。
【図9】第二実施形態の超音波プローブにおける機能素子部の断面図である。
【図10】第二実施形態の圧電振動子を示す平面図である。
【図11】溝形成工程、充填部形成工程、研削工程及び導電層形成工程を経て得られた分割前の板状の圧電振動子を示す平面図である。
【図12】図11に示す板状の圧電振動子及び板状の第二音響整合層をバッキング材層上に積層した状態を示す断面図である。
【図13】図12に示す状態から、第二音響整合層及び圧電振動子と、バッキング材層の一部に間隙を形成した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
第一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。先ず、本発明に係る超音波診断装置の実施の形態の一例の概略構成について図1に基づいて説明する。図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ101とこの超音波プローブ101が接続される超音波診断装置本体102とを備えている。
【0022】
前記超音波プローブ101は、図2に示すように、本例ではセクター(sector)型のプローブであり、被検体に超音波を送信し、またこの超音波の送信に対して得られる超音波エコーを受信する。この超音波プローブ101の詳細な構成については後述する。
【0023】
前記超音波診断装置本体102は、送受信部103、画像処理部104、表示部105、制御部106、操作部107を備えている。前記送受信部103は、前記超音波プローブ101を駆動して超音波を送信させ、また前記超音波プローブ101で受信した超音波エコーについて、整相加算処理等の信号処理を行う。
【0024】
前記画像処理部104は、前記送受信部103で信号処理されたエコー信号に基づいて、Bモード画像等の超音波画像を作成する。そして、前記画像処理部104で作成された超音波画像は、前記表示部105に表示される。
【0025】
前記操作部107では、操作者によって各種の指示が入力されるようになっている。前記操作部107は、指示の入力があると、指示信号を前記制御部106へ出力する。前記制御部106は、前記操作部107からの指示信号や、予め記憶されたプログラム(program)に基づいて、前記超音波診断装置本体102の各部を制御する。
【0026】
前記超音波プローブ101について詳細に説明する。図2に示すように、前記超音波プローブ101は、先端部に音響レンズ部10を有している。また、前記超音波プローブ101は、プローブ筐体11、前記超音波診断装置本体102と接続するための接続ケーブル12を備えている。
【0027】
前記プローブ筐体11内には、機能素子部13が設けられている。この機能素子部13について、図3及び図4に基づいて詳細に説明する。前記機能素子部13は、音響整合層14、圧電振動子15、接着層16(図3では図示省略)、フレキシブル(flexible)基板17、バッキング(backing)材層18を備えている。x軸方向に長い直方体の形状を有する前記音響整合層14及び前記圧電振動子15は、超音波の照射方向に沿った方向であるz軸方向に積み重ねられて積層体19を構成する。そして、この積層体19が、y軸方向に複数配列されている。ちなみに、前記積層体19は、板状の部材をy軸方向に分割することにより形成される。
【0028】
前記音響整合層14は、前記圧電振動子15における超音波照射方向側の板面に接着されている(接着層については図示省略)。前記音響整合層14は、前記圧電振動子15と前記音響レンズ部10の中間の音響インピーダンスを有する。また、前記音響整合層14は、透過する超音波の概ね1/4波長の厚さを有し、音響インピーダンスの異なる境界面での反射を抑制する。また、前記音響整合層14は、本例では1層の例が図示されているが、2層或いは多層になっていてもよい。前記音響整合層14は、本発明における音響整合層の実施の形態の一例である。
【0029】
前記圧電振動子15における前記音響整合層14とは反対側の面には、前記バッキング材層18との間に前記フレキシブル基板17がエポキシ樹脂接着剤等からなる前記接着層16を介して圧着されている。そして、前記フレキシブル基板17は、前記バッキング材層18の厚み方向側面に沿って引き出され、前記接続ケーブル12と接続されている(接続構造については図示省略)。
【0030】
前記フレキシブル基板17の構成について説明すると、このフレキシブル基板17は、図4に示すように、第一銅箔層20、第二銅箔層21、第一ポリイミド(polyimide)膜層22及び第二ポリイミド膜層23の4層からなる。前記第一銅箔層20及び前記第二銅箔層21は、前記第一ポリイミド膜層22によって互いに絶縁されている。前記第一銅箔層20は、前記圧電振動子15に圧着された状態において、後述する掘削孔28,28よりも前記圧電振動子15における両端部側に位置するように形成されている。また、前記第二銅箔21は、前記第一ポリイミド膜層22及び前記第二ポリイミド膜層23の間に積層されるとともに、前記掘削孔28,28よりも前記圧電振動子15における中央部側においては、スルーホール(through hole)Hを介して、前記第一銅箔層20と同一面にも存在している。同一面に存在する前記第一銅箔層20及び前記第二銅箔層21は、分割溝Gにより互いに絶縁されている。この分割溝Gは、前記フレキシブル基板17が前記圧電振動子15に圧着された状態において、前記掘削孔28,28の位置になるように形成されている。従って、前記第一銅箔層20は、前記圧電振動子15における後述する接地電極27の第一の部分27a,27aと電気的に接続され、また前記第二銅箔層21は、前記圧電振動子15の後述する信号電極26と電気的に接続される。前記第一銅箔層20及び前記第二銅箔層21は、本発明における導体の実施の形態の一例である。
【0031】
ちなみに、前記接地電極27と接続される前記第一銅箔層20は、前記フレキシブル基板17の表面一面に形成されており、y軸方向に配列された全ての前記圧電振動子15の接地電極27の導通が共通して図られている。一方、前記第二銅箔層21は、ダイシング等による機械加工により形成された図示しない銅箔分割溝によってy軸方向に複数に分割され、前記フレキシブル基板17内に形成された図示しない銅箔パターンを複数有している。この銅箔パターンは、y軸方向に複数配列された前記積層体19ごとに形成されている。
【0032】
次に、前記圧電振動子15について、図4のほか、図5も参照して説明する(なお、図3では、前記圧電振動子15の詳細構成は省略されている)。前記圧電振動子15は、圧電体24の表面にスパッタ(spatter)等によって形成された導電層25を有し、この導電層25により信号電極26及び接地電極27が構成されている。前記圧電体24、導電層25、信号電極26及び接地電極27は、それぞれ本発明における圧電体、導電層、信号電極及び接地電極の実施の形態の一例である。
【0033】
前記圧電振動子15の長さ方向における両端には、後述する突起部32が形成された側に、掘削孔28,28が形成されている。この掘削孔28,28は、例えばダイアモンド砥石等を用いた切削加工によって形成される。
【0034】
前記信号電極26は、前記圧電体24における前記掘削孔28,28の間の中間部24aに形成されている。また、前記接地電極27は、前記圧電体24の端部24b,24bにおいて、前記信号電極26と前記掘削孔28,28を隔てて同一面に形成された第一の部分27a,27aと、前記圧電体24において前記第一の部分27a,27aが形成された面と反対側の面に形成された第二の部分27bと、前記圧電体24において前記第一の部分27a,27aと前記第二の部分27bの間の側面に形成された第三の部分27c,27cとからなっている。前記信号電極26は、前記接地電極27における第一の部分27a,27aに挟まれるようにして形成されており、前記両電極26,27は、前記掘削孔28,28によって電気的に絶縁されている。そして、前記信号電極26及び前記接地電極27における第一の部分27a,27aが、前記フレキシブル基板17と圧着されている。前記第一の部分27a、前記第二の部分27b及び前記第三の部分27cは、本発明における前記第一の部分、前記第二の部分及び前記第三の部分の実施の形態の一例である。
【0035】
前記圧電体24は、間隙29に充填材が充填されて形成された充填部30と、PZT等の圧電材からなる圧電材部31とで構成されている。前記充填部30は、y軸方向に線状に連続するようにして形成されている。前記間隙29、前記充填部30及び前記圧電材部31は、それぞれ本発明における間隙、充填部及び圧電材部の実施の形態の一例である。
【0036】
前記間隙29は、本例では前記圧電体24における前記信号電極26及び前記接地電極27の第一の部分27a側の面から所定の深さDで形成された溝になっている。この所定の深さDは、前記圧電材部31の厚さTの10%以下になっている。そして、前記充填部30は、このように形成された前記間隙29に充填材が充填されることにより、前記圧電体24の表面側から内部に向かって途中まで形成されている。
【0037】
前記充填部30は、前記圧電体24の表面を研削した時に、前記圧電材部31よりも研削されずに前記圧電体24の表面において突出することになる材質の充填材によって形成されていて、前記圧電体24の表面から突出する突部30aを有している。前記充填部30を構成する充填材としては、具体的には樹脂が挙げられ、本例ではエポキシ樹脂が用いられている。前記突部30aは、本発明における突部の実施の形態の一例である。
【0038】
前記導電層25は、前記突部30aの上において突出しており、前記信号電極26及び前記接地電極27における第一の部分27aは、突起部32を有している。この突起部32は、y軸方向に線状に連続するよう突条に形成されている。この突起部32は、本発明における突起部の実施の形態の一例である。ここで、前記圧電振動子15と前記フレキシブル基板17の間には前記接着層16が介在しているが、前記突起部32と前記フレキシブル基板17との間には前記接着層16は介在せず、これにより前記突起部32と前記フレキシブル基板17とが接触して互いに導通している。
【0039】
さて、上述のような構成の前記圧電振動子15の製造方法について図6に基づいて説明する。先ず、図6(A)に示すように、前記圧電体24′の一面側に、所定深さの溝40を形成する(溝形成工程)。この溝40は、前記圧電振動子15における前記間隙29を構成する。
【0040】
ちなみに、図7に前記溝40が形成された圧電体24′の平面図を示す。この製造工程では、前記圧電体24′は、図7に示すように、縦方向及び横方向にほぼ同じ長さを有する板状体である。このような板状体からなる前記圧電体24′に、前記溝40は、線状に連続するようにして形成されている。
【0041】
前記溝形成工程において前記溝40を形成すると、図6(B)に示すように、前記溝40にエポキシ樹脂からなる充填材を充填して充填部30を形成する(充填部形成工程)。ただし、この時には前記充填部30は、前記突部30aを有さない。
【0042】
前記充填部30を構成するエポキシ樹脂が硬化した後、図6(C)に示すように、前記圧電体24の両面を研削する(研削工程)。この時、前記充填部30は前記圧電材部31よりも弾性率が低いため圧縮され、前記充填部30よりも前記圧電材部31に大きな応力がかかる。従って、前記充填部30よりも前記圧電材部31が研削され、且つ研削後は応力が開放され前記充填部30が膨張して前記圧電体24の表面において突出し、前記突部30aが形成される(突部形成工程)。
【0043】
前記圧電体24の両面を研削して前記突部30aを形成すると、図6(D)に示すように、前記圧電体24の表面に導電層25をスパッタ等によって形成する(導電層形成工程)。前記導電層25の形成は、前記突部30aの上に、前記突起部32が形成されるように行う。
【0044】
このようにして得られた板状の圧電振動子15′には、前記突起部32が形成された側の面に、切削加工を行って図8に示すように前記掘削孔28,28を形成する。これにより、前記信号電極26及び前記接地電極27が形成される。そして、これら信号電極26及び前記接地電極27が形成された前記圧電振動子15′を、前記バッキング材層18の上の前記フレキシブル基板17上に積層し、図8に二点鎖線で示すように前記突起部32と直交する方向(y軸方向)に分割することにより、y軸方向に配列された短冊状の前記圧電振動子15を形成する。
【0045】
以上説明した本例によれば、前記信号電極26及び接地電極27の第一の部分27aに形成された突起部32により、前記信号電極26及び前記接地電極27と前記フレキシブル基板17との導通を確実にすることができる。また、前記信号電極26及び前記接地電極27における第一の部分27aに、前記フレキシブル基板17を圧着したときの応力が前記突起部32に集中するので、強固に圧着することができ、このことからも確実な導通を図ることができるといえる。
【0046】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図9〜図13に基づいて説明する。本例の超音波プローブの外形及び超音波診断装置の構成は第一実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0047】
本例の機能素子部50において、圧電振動子51は、図10に示すように、二次元方向(x軸方向及びy軸方向)に配列され2Dアレイ振動子を形成している。前記機能素子部50は、前記圧電振動子51に対して超音波照射側に音響整合層52を備え、超音波照射側とは反対側にバッキング材層53を備えている。
【0048】
前記音響整合層52は、第一実施形態と同様に前記圧電振動子51と音響レンズ部(本例では図示省略)の中間の音響インピーダンスを有する。前記音響整合層52は、第一音響整合層52aと第二音響整合層52bとで構成されている。これら第一音響整合層52aと第二音響整合層52bは、互いに異なる音響インピーダンスを有しており、前記第一音響整合層52aが前記音響レンズの音響インピーダンスに近く、一方で前記第二音響整合層52bが前記圧電振動子52の音響インピーダンスに近くなっている。
【0049】
前記第一音響整合層52aと前記第二音響整合層52bの間には、銅箔54がエポキシ樹脂接着剤等の接着剤により圧着されている(接着層は図示省略)。この銅箔54は、前記超音波プローブの接続ケーブル(本例では図示省略)と接続されている。また、前記第二音響整合層52bは、前記銅箔54の圧着面とは反対側の面において、エポキシ樹脂接着剤等で構成される第一接着層55により前記圧電振動子51と圧着されている。
【0050】
前記第二音響整合層52bは、例えばグラファイト材などの導電性を有する材質で形成されている。従って、後述する前記圧電振動子51の接地電極64と前記銅箔54とは、前記第二音響整合層52bを介して電気的に接続されている。前記銅箔54により、全ての圧電振動子51の接地電極64の導通が共通して図られている。前記第二音響整合層52bは、本発明において接地電極と圧着される導体の一例である。
【0051】
ちなみに、前記第一音響整合層52aの材質については、前記第二音響整合層52bのような電気的制約はなく、この第二音響整合層52bと前記音響レンズの間の音響インピーダンスを有する樹脂材で形成されている。
【0052】
前記第二音響整合層52b及び前記圧電振動子51は、直交する二方向(x軸方向及びy軸方向)に形成された切込56により(図9ではy軸方向の切込56のみ図示)、二次元方向に分割されている。ちなみに、この切込56は、前記バッキング材層53まで達しており、この切込56により、前記バッキング材層53の表面に形成された後述する電極層59が、前記圧電振動子51に対応して分割されている。
【0053】
前記第一音響整合層52aには、前記第二音響整合層52b及び前記圧電振動子51と同じピッチで、溝57が形成されている(y軸方向の溝57のみ図示)。この溝57は、前記第一音響整合層52aにおいて、前記銅箔54との圧着面とは反対側の面から内部に向かって途中まで形成されている。
【0054】
前記バッキング材層53は、前記圧電振動子51における前記音響整合層52との圧着面とは反対側の面に、エポキシ樹脂接着剤等で構成される第二接着層58によって圧着されている。前記バッキング材層53の表面には、前記信号電極63と電気的に接続される電極層59が形成されている。また、前記バッキング材層53には、このバッキング材層53を厚み方向に貫通する導線60が設けられており、この導線60と前記電極層59とが電気的に接続されている。また、前記導線60は、前記超音波プローブの接続ケーブル(本例では図示省略)と接続されている。前記電極層59は、本発明において信号電極と圧着される導体の実施の形態の一例である。
【0055】
前記圧電振動子51について説明する。この圧電振動子51は、圧電体61の対向面に、スパッタ等によって形成された導電層62,62を有し、この導電層62により信号電極63及び接地電極64が構成されている。そして、前記信号電極63には前記バッキング材層53が圧着され、また前記接地電極64には前記音響整合層52が圧着されている。前記圧電体61、前記導電層62、前記信号電極63及び前記接地電極64は、それぞれ本発明における圧電体、導電層、信号電極及び接地電極の実施の形態の一例である。
【0056】
前記圧電体61は、間隙65に充填材が充填されて形成された充填部66と、PZT等の圧電材からなる圧電材部67とで構成されている。前記間隙65、前記充填部66及び前記圧電材部67は、本発明における間隙、充填部及び圧電材部の実施の形態の一例である。前記間隙65、前記充填部66及び前記圧電材部67は、それぞれ本発明における間隙、充填部および圧電材部の実施の形態の一例である。前記充填部66は、前記圧電体61における前記信号電極63側と前記接地電極64側のそれぞれに形成されており、またx軸方向及びy軸方向と交差する方向に沿って線状に連続するように形成されている。本例では、前記間隙65及び前記充填部66は、後述する突起部68の形成方向(図10参照)と同一の方向、すなわちx軸方向とy軸方向のそれぞれに対して45°の角度をなすようにして形成されている。前記充填部66は、第一実施形態の前記充填部30と同様に前記圧電体61の表面から突出する突部66aを有している。また、前記間隙65は、第一実施形態の前記間隙29と同様に、前記圧電体61における前記信号電極63が形成された面及び前記接地電極64が形成された面から所定の深さDで形成された溝になっている。
【0057】
ここで、前記間隙65の深さDは、第一実施形態と同様に、前記圧電材部67の厚さTの10%以下になっている。このような深さにした理由について説明すると、前記間隙65の深さDを深くするにつれ、前記充填部66により前記圧電材部67が分断されることになるが、本例のように二方向に分割されて形成された圧電振動子51においては、不均一な体積で分断されることになる。従って、前記間隙65の深さDが前記圧電材部67の厚さTの10%を超えると、圧電振動子51の振動に悪影響を与え、音響特性に影響を与えるおそれがある。このようなことから、前記間隙65の深さDを前記圧電材部67の厚さTの10%以下にしたものである。
【0058】
なお、前記間隙65、前記充填部66及び前記圧電材部67のその他の構成については、第一実施形態における前記間隙29、前記充填部30及び前記圧電材部31と同一の構成であり、詳しい説明を省略する。
【0059】
前記導電層62は、前記突部66aの上において突出しており、前記信号電極63及び前記接地電極64は、突起部68を有している。この突起部68は、本発明における突起部の実施の形態の一例である。ここで、前記圧電振動子51と前記第二音響整合層52bとの間には前記第一接着層55が介在し、前記圧電振動子51と前記バッキング材層53との間には前記第二接着層58が介在しているが、前記突起部68と前記第二音響整合層52b及び前記バッキング材層53との間には前記各接着層55,58は介在せず、これにより前記突起部68と前記第二音響整合層52b及び前記バッキング材層53とが接触して互いに導通している。
【0060】
前記突起部68は、x軸方向及びy軸方向と交差する方向に沿って線状に連続するようにして突条に形成されている。本例では、前記突起部68は、図10に示すように、x軸方向とy軸方向のそれぞれに対して45°の角度をなすようにして形成されている。
【0061】
ここで、前記突起部68をx軸方向及びy軸方向と交差する方向に沿って突条に形成する理由について説明する。仮に、前記突起部68を、素子の分割方向であるx軸方向及びy軸方向の一方と平行な方向に沿って突条に形成した場合、分割後の前記圧電振動子51が前記突起部68を有するためには、分割箇所と前記突起部68との位置関係を考慮して製造を行わなければならないという困難性を伴う。そこで、前記突起部68を、x軸方向及びy軸方向と交差する方向に沿って突条に形成することで、前記のような困難性を伴わない製造が可能になる。
【0062】
本例の圧電振動子51も、特に図示しないが、第一実施形態の圧電振動子15と同様に、前記溝形成工程、前記充填部形成工程、前記研削工程及び前記導電層形成工程を経て製造される。これら各工程を経て得られた圧電振動子51′を図11に示す。この図11に示す圧電振動子51′は、直交する二方向に分割される前の板状体70により構成される。この板状体70は、本発明における板状体の実施の形態の一例である。この圧電振動子51′が、図11で二点鎖線で示す直交する二方向に分割されて、サイコロ状の前記圧電振動子51が形成される。この前記圧電振動子51′の分割についてより詳しく説明すると、板状体からなる前記圧電振動子51′を、図12に示すように前記バッキング材層53上に前記第二接着層58を介して積層し、さらに前記圧電振動子51′の上に、板状体からなる第二音響整合層52b′を前記第一接着層55を介して積層する。そして、前記圧電振動子51′及び前記第二音響整合層52b′と前記バッキング材層53の一部に、図13に示すように切削加工を施し、x軸方向及びy軸方向に前記切込56を形成する。これにより、二次元方向に配列された前記圧電振動子51及びこの圧電振動子51と対応するようにして二次元方向に分割された第二音響整合層52bが得られる。
【0063】
ちなみに、前記切込56を形成した後、前記第二音響整合層52bの上に前記銅箔54を接着し、さらにこの銅箔54の上に前記第一音響整合層52aを接着することで、前記機能素子部50が得られる(図9参照)。
【0064】
本例の圧電振動子51によれば、第一実施形態と同様に、前記突起部68により、前記信号電極63と前記バッキング材層53における電極層59との導通や、前記接地電極64と前記第二音響整合層52bとの導通を確実にすることができる。また、前記突起部68がx軸方向及びy軸方向と交差する方向に突条に形成されているので、製造上の困難性を伴うことなく、前記突起部68の形成が可能になる。
【0065】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第二実施形態において、前記突起部68は前記信号電極63のみに形成されていてもよい。また、前記機能素子部13,50の構成は前記各実施形態のものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0066】
15,51 圧電振動子
20 第一銅箔層(導体)
21 第二銅箔層(導体)
24,61 圧電体
25,62 導電層
26,63 信号電極
27,64 接地電極
29,65 間隙
30,66 充填部
30a,66a 突部
31,67 圧電材部
32,68 突起部
40 溝
100 超音波診断装置
101 超音波プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体の表面に設けられた導電層で構成される信号電極及び接地電極を備え、少なくとも前記信号電極は、表面に突起部を有することを特徴とする超音波プローブの圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電体は、該圧電体に形成された間隙に充填材が充填されて形成された充填部と、圧電材からなる圧電材部とで構成され、前記充填部は、前記圧電体の表面を研削した時に、前記圧電材部よりも研削されずに前記圧電体の表面において突出することになる材質の充填材によって形成されていて、前記圧電体の表面から突出する突部を有しており、
前記突部の上の前記導電層が突出して前記突起部を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項3】
前記間隙は、前記圧電体の表面から所定の深さで形成された溝であり、前記充填部は、前記圧電体の表面側から内部に向かって途中まで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項4】
前記溝の深さは、前記圧電材部の厚さの10%以下であることを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項5】
前記信号電極及び前記接地電極には、前記圧電振動子に電圧を印加するための導体が面圧着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電振動子は、板状体を直交する二方向に分割することによって形成されて、二次元方向に配列されるものであり、
前記突起部は、前記二つの分割方向と交差する方向に突条に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項7】
前記接地電極は、表面に突起部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波プローブの圧電振動子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電振動子を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波プローブを備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
圧電体に所定深さの溝を形成する溝形成工程と、
該溝に充填材を充填して充填部を形成する充填部形成工程と、
前記圧電体の表面を研削して、前記充填部の一部を前記圧電体の表面から突出させて突部を形成する突部形成工程と、
該突部が形成された前記圧電体の表面に、信号電極及び接地電極となる導電層を形成する導電層形成工程と、を有し、
該導電層形成工程においては、前記導電層を、前記突部の上において突出して突起部が形成されるようにして前記圧電体の表面に形成し、前記導電層において前記突起部が形成された部分が少なくとも信号電極である
ことを特徴とする超音波プローブにおける圧電振動子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−193072(P2010−193072A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34090(P2009−34090)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】