説明

超音波プローブ

【課題】圧電素子の背面に中間層を有する構造をとりながら、超音波送波面上のフレキシブルプリント基板を廃し音響的な劣化を防ぐことを可能した超音波プローブを提供する。
【解決手段】圧電素子と、中間部材と、バッキング材とをこれらの順に前記圧電素子の超音波送波面の裏面側に重ね合わせて設けた超音波プローブであって、前記中間部材と前記バッキング材との間に介在し、第1の配線パターンと第2の配線パターンを持つフレキシブルプリント基板と、前記圧電素子と前記中間部材との間に介在し、前記圧電素子の一方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第1の配線パターンと電気的に接続される第1の電極と、前記圧電素子の前記超音波送波面に設けられ、前記圧電素子の他方の側面と前記他方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第2の配線パターンと電気的に接続される第2の電極とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に接続され、被検体に超音波を送受信する超音波プローブに関し、特に圧電素子の電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体内を超音波で走査し、被検体内からの反射波から生成した受信信号を基に当該被検体の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。このような超音波診断装置は、超音波プローブから被検体内に超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波プローブで受信して受信信号を生成する。
【0003】
超音波プローブは、送信信号に基づいて振動して超音波を発生し、反射波を受けて受信信号を生成する圧電素子を走査方向に複数個、配設している。
【0004】
図8は従来の超音波プローブの主な構成を示した断面図である。超音波プローブの主な構成としては、超音波を発生する圧電素子11があり、圧電素子11から生体接触面側(超音波送波面側)に向かって、圧電素子−生体間の音響インピーダンスの不整合を緩和する音響整合層41及び42、超音波を収束する音響レンズ50が接合されている。また、圧電素子11からケーブル側(超音波送波面と逆側)には、圧電素子11に電気信号を送受信する配線パターンを備えたフレキシブルプリント基板20A、余分な超音波振動成分を減衰吸収するバッキング材30が接合されている。音響整合層41及び42を介して(音響整合層41及び42の間から)フレキシブルプリント基板60が引出されている。
【0005】
フレキシブルプリント基板20Aには配線パターン21Aが設けられ、フレキシブルプリント基板60には配線パターン61が設けられており、配線パターン21Aと配線パターン61との間で電圧が印加される。
【0006】
また、特許文献1に示すように中間層を設けた超音波プローブが知られている(なお、中間層を構成する部材を「中間部材」と呼ぶ場合がある)。中間層を設けない従来の方式では圧電素子の厚さを超音波の波長のほぼ1/2とする必要があったが、中間層を設けることにより、圧電素子の厚さを超音波の波長のほぼ1/4と従来の半分にすることが可能となることが知られている。図9は、中間層を設けた超音波プローブの一例を示す断面図である。図9に示すように、中間層14は、圧電素子11のケーブル側(超音波送波面と逆側)の面に設けられている。
【0007】
中間層の音響インピーダンスは圧電素子のそれよりも高く、中間層の厚さは、使用する超音波の波長のほぼ1/4(もしくはその奇数倍)であることが知られている。中間層の素材としては、金、鉛、タングステン、水銀、サファイアなどが挙げられる。
【0008】
圧電素子にはケーブル側(超音波送波面と逆側)の面と超音波送波面との間で電圧を印加する必要があることから、それぞれの面に接地電極と信号電極が設けられている。電気的信号を超音波診断装置と送受信するための電気的回路に接続される配線パターンを備えたフレキシブルプリント基板が用いられ、圧電素子の両電極とフレキシブルプリント基板の配線パターンとを接続することによって信号の送受信を行なっている。
【0009】
中間層を有する構造においては、中間層の背面側(圧電素子と接合する面と逆側)がフレキシブルプリント基板と接合され、超音波の送受信信号をやりとりすることができる。圧電素子と中間層、中間層とフレキシブルプリント基板はエポキシ系接着剤などにより接合されることが一般的である。
【0010】
圧電素子を駆動するためには、上述した信号電極と接地電極間に電圧を印加する必要がある。例えば図9に示すように、整合層を介して圧電素子の電極を引出す方法がある。図9では、フレキシブルプリント基板20Aとフレキシブルプリント基板60のそれぞれに設けられた配線パターン21Aと61の間で信号の送受信を行っている。フレキシブルプリント基板20Aは、中間層14とバッキング材30の間に介在され、中間層14と接合する面に信号電極(図示しない)が設けられている。また、フレキシブルプリント基板60は第2の音響整合層42を介して圧電素子11に接合されており、第2の音響整合層42と接合する面に接地電極(図示しない)が設けられている。
【0011】
これによると、超音波送波面上に信号を引出すために、フレキシブルプリント基板60を設置する必要がある。フレキシブルプリント基板には接地電極と接合し信号を引出す導線や該導線を固定する樹脂層等が積層されているため電極単体よりも厚みがあり、また音響インピーダンスの大きな金属層が含まれているため、音響整合条件が乱れ音響特性が低下する問題がある。
【0012】
上記の問題を解決する他の従来技術として、特許文献2に示すように圧電素子の超音波送波面上の電極を該圧電素子の側面を介して、該圧電素子の背面に回す方法が提案されている。図10は、特許文献2に示した超音波プローブの一例を示す断面図である。図10に示すように、圧電素子11の超音波送波面とは逆側の面で接地電極16及び信号電極12のそれぞれがフレキシブルプリント基板20と電気的に接合される。そのため、圧電素子11の超音波送波面側に信号を引出すためのフレキシブルプリント基板を設ける必要がなくなり、音響特性の低下を防ぐことが可能となる。
【0013】
その反面、特許文献2に記載の超音波プローブは中間層を有していないことから、圧電素子の厚さを従来と同様に超音波の波長のほぼ2分の1とする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭53−025390
【特許文献2】特開2007−167445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、特許文献1に記載の圧電素子の背面に中間層を有する超音波プローブに、特許文献2に記載された、圧電素子の超音波送波面上の電極を、該圧電素子の側面を介して該圧電素子の背面に回す方式を適用することで、双方の問題を解決する方法が考えられる。このとき具体的には、図10における圧電素子11の部分に、図9における圧電素子11及び中間層14の積層体を適用する構成が考えられる。
【0016】
しかしこの場合、圧電素子の直下に導電性を持つ中間層が介在するため、信号電極及び接地電極を分離してフレキシブルプリント基板に接続することが難しい。これは、中間層として非導電性の素材を使用した場合は電圧が印加されず、中間層として導電性を持つ素材を使用した場合は、信号電極と接地電極とが短絡するという問題があるためである。そのため、中間層を有する構造をとる場合、図9に示すように、整合層を介して圧電素子の電極を引出す方法をとらざるを得なかった。
【0017】
また、特許文献2に記載の方式を実現する場合、圧電素子とフレキシブルプリント基板を接合する面に接地電極及び信号電極のそれぞれを設ける必要があるため、圧電素子の実効駆動面積が小さくなるという別の問題もある。これは超音波プローブの大型化を招くことになり、操作性の劣化につながる。
【0018】
本発明は上記の問題を解決するものであり、圧電素子の背面に中間層を有する構造をとりながら、超音波送波面上のフレキシブルプリント基板を廃し音響特性の低下を防ぐことを可能した超音波プローブの提供を目的とする。
【0019】
さらに、圧電素子の実効駆動面積を大きくとることで小型化を可能とした超音波プローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、圧電素子と、中間部材と、バッキング材とをこれらの順に前記圧電素子の超音波送波面の裏面側に重ね合わせて設けた超音波プローブであって、前記中間部材と前記バッキング材との間に介在し、前記中間部材の背面のほぼ全体を覆い、かつ第1の配線パターンと第2の配線パターンを持つフレキシブルプリント基板と、前記圧電素子と前記中間部材との間に介在し、前記圧電素子の一方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第1の配線パターンと電気的に接続される第1の電極と、前記圧電素子の前記超音波送波面に設けられ、前記圧電素子の他方の側面と前記他方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第2の配線パターンと電気的に接続される第2の電極とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧電素子の背面に中間層を設ける構造の超音波プローブにおいて、接地電極及び信号電極を中間層の背面に位置するフレキシブルプリント基板上の配線パターンに引出すことが可能となり、圧電素子の超音波送波面上にフレキシブルプリント基板を設ける必要が無くなる。これにより、中間層を設ける構造をとりながら音響特性の低下を防止することが可能となる。
【0022】
また、信号電極及び接地電極のそれぞれが圧電素子の各面のほぼ全体を覆う構成をとることが可能であるため、圧電素子の非実効部分の面積が従来に比べて小さくなり、超音波プローブを小型化することが可能となるため、超音波プローブの操作性を向上させることが可能となる。
【0023】
さらに、圧電素子の実効部分の面積を維持したまま、中間層の背面で信号電極及び接地電極の双方をフレキシブルプリント基板上の配線パターンに接続することが可能となる。これにより、信号電極及び接地電極の双方に対して、従来に比べて広い面積で電極接合を実現することが可能となり、電極接続品質が向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態に係る超音波プローブの断面図である。
【図2】第1の実施形態における圧電振動部品の断面図である。
【図3】第1の実施形態における圧電振動部品とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。
【図4】第1の実施形態における圧電振動部品の作成方法に関する説明図である。
【図5】変形例1における圧電振動部品の作成方法に関する説明図である。
【図6】変形例2における圧電振動部品の作成方法に関する説明図である。
【図7】図6(b)の拡大断面図である。
【図8】従来の超音波プローブの構成を説明するための断面図である。
【図9】中間層を有する従来の超音波プローブの断面図である。
【図10】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下に図1〜図3を参照しながら第1の実施形態に係る超音波プローブについて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波プローブは、圧電素子11と、中間層14と、バッキング材30とを、これらの順に重ね合わせて設けられている。圧電素子11の超音波送波面には、音響整合層40と、音響レンズ50とが、これらの順に重ね合わされて設けられている。また、中間層14とバッキング材30との間には、フレキシブルプリント基板20が設けられている。また、図2に示すように、圧電素子11と中間層の間には信号電極12が介在され、信号電極12を圧電素子11の一方の側面と連続する中間層14の側面を通し中間層14の背面(ケーブル側の面)に引出す引出し信号電極15と、圧電素子11の超音波送波面に設けられ圧電素子11の他方の側面と該他方の側面と連続する中間層14の側面を通し中間層14の背面(ケーブル側の面)に引出される接地電極16とを具備している。なお、本説明では、圧電素子11と、中間層14との積層体を圧電振動部品10と呼ぶこととする。
【0027】
フレキシブルプリント基板20は、信号配線パターン22と接地配線パターン23とを具備し、引出し信号電極15及び信号配線パターン22と、接地電極16及び接地配線パターン23とが、それぞれ中間層14の背面で電気的に接続される。
【0028】
圧電素子11と中間層14との間における信号電極12の引出し信号電極15と電気的に接続される方向とは逆側の端部と、圧電素子11の超音波送波面上における接地電極16が引出される方向とは逆側の端部と、中間層14とフレキシブルプリント基板20の間における引出し信号電極15と接地電極16との間とに、それぞれ電極分離部13、17及び18が設けられ、信号電極12又は引出し信号電極15と、接地電極16との間を分離している。
【0029】
各部の構成について以降に具体的に説明する。なお、以下の説明において、超音波を走査する方向をスキャン方向(図1の紙面に直角方向)、超音波を収束する方向をレンズ方向(図1の紙面の上下方向)とする。また、レンズ方向において、上側を超音波送波面側、下側を背面側と呼ぶ。
【0030】
まず、図2を参照しながら圧電振動部品10の構成について具体的に説明する。図2は、本実施形態における圧電素子11と中間層14とを積層し膜状の電極を取り付けた圧電振動部品10の断面図である。
【0031】
圧電素子11は、スキャン方向に対して複数の素子に分割されている。圧電素子11の厚さは、本実施形態に係る超音波プローブが送信する超音波の波長のほぼ4分の1である。圧電素子11の素材としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミックスが使用される。
【0032】
中間層14は、圧電素子11の背面(背面側の面)に設けられており、厚さは本実施形態に係る超音波プローブが送信する超音波の波長のほぼ4分の1である。本実施形態に係る中間層14には非導電性の素材を用いる。中間層14の素材、つまり音響インピーダンスが圧電素子11よりも大きく非導電性を有する素材としては、酸化アルミニウム(サファイア)や炭化珪素(SiC)などが使用される。
【0033】
信号電極12は、圧電素子11と中間層14との間に介在され、圧電素子11の背面のほぼ全面を覆うように配置されている。信号電極12の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。
【0034】
信号電極12の、スキャン方向及びレンズ方向の双方に直交する方向の一端には切欠き部が設けられており、この切欠き部が、信号電極12と接地電極16の接地電極側面部162との間を絶縁する電極分離部13を構成している(接地電極16及び接地電極側面部162については後述する)。なお、電極分離部13には絶縁物を埋めても良い。
【0035】
なお電極分離部13は、圧電素子11及び中間層14の側面に配置される接地電極16の接地電極側面部162と、信号電極12との間を絶縁するために十分な幅を設ける必要がある。一方で、圧電素子11の電極分離部13が設置された部分は電圧が印加されないため超音波が発振されない無効部分となる。そのため、電極分離部13の幅はより狭く設定することが望ましい。一般的に使用される超音波プローブの場合、電極分離部13の幅は0.3mm以下であることが望ましい。
【0036】
引出し信号電極15は、信号電極12の電極分離部13と異なる端部を隣接する圧電素子11及び中間層14の側面に引出す、引出し信号電極側面部152と、引出し信号電極側面部152を中間層14の背面に引出す引出し信号電極接続部153とで構成されている。引出し信号電極15の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。なお、信号電極12及び引出し信号電極15が「第1の電極」に該当する。
【0037】
引出し信号電極側面部152は、信号電極12の電極分離部13と異なる端部と電気的に接続され、少なくとも信号電極12と接続する側の中間層14の側面のほぼ全面を覆うように設置されている。なお、引出し信号電極側面部152は、中間層14の側面と連続する圧電素子11の側面をあわせて覆うように構成しても良い。以降では、引出し信号電極側面部152により中間層14及び圧電素子11の双方の側面が覆われているものとして説明する。
【0038】
引出し信号電極接続部153は、引出し信号電極側面部152を中間層14の背面に引出すように設置されており、中間層14の背面でフレキシブルプリント基板20の信号配線パターン22と電気的に接続される(フレキシブルプリント基板20及び信号配線パターン22については後述する)。
【0039】
中間層14の背面には、引出し信号電極接続部153が設置された面とは逆側の中間層14の側面から引き出された接地電極接続部163が設置されている(接地電極接続部163については後述する)。中間層14の背面中央で、接地電極接続部163の端部と、引出し信号電極接続部153の端部が対向しており、引出し信号電極接続部153の端部には切欠き部が設けられている。この切欠き部が引出し信号電極接続部153と接地電極接続部163との間を絶縁する電極分離部18を構成している。なお、電極分離部18には絶縁物を埋めても良い。
【0040】
なお、電極分離部18は、引出し信号電極接続部153と接地電極接続部163との間を絶縁するために十分な幅を設ける必要がある。一方で、引出し信号電極接続部153及び接地電極接続部163は、それぞれ信号配線パターン22及び接地配線パターン23との電極接続品質を向上させる(確実に接続させる)ために、引出し信号電極接続部153及び接地電極接続部163のそれぞれの面積をより広くとることが望ましい(フレキシブルプリント基板20、信号配線パターン22及び接地配線パターン23については後述する)。そのため、電極分離部18の幅はより狭く設定することが望ましい。一般的に使用される超音波プローブの場合、電極分離部18の幅は0.3mm以下であることが望ましい。
【0041】
接地電極16は、圧電素子11の超音波送波面上に設置された接地電極部161と、引出し信号電極側面部152が設置された面とは逆側の圧電素子11及び中間層14の側面に接地電極部161を引き出す接地電極側面部162と、接地電極側面部162を中間層14の背面に引出す接地電極接続部163とで構成されている。接地電極16の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。なお、接地電極16が「第2の電極」に該当する。
【0042】
接地電極部161は、圧電素子11の超音波送波面のほぼ全面を覆うように配置されている。これは、接地電極部161と信号電極12との間で電圧が印加されるため、接地電極部161で覆われた部分が実行駆動部分となり、接地電極部161をより広くとることが望ましいためである。
【0043】
接地電極側面部162は、引出し信号電極側面部152が設置された面とは逆側の圧電素子11及び中間層14の側面のほぼ全面を覆うように設置されている。接地電極部161と接地電極側面部162とは電気的に接続されており、接地電極部161は接地電極側面部162によって圧電素子11及び中間層14の側面に引出される。
【0044】
接地電極接続部163は、接地電極側面部162を中間層14の背面に引出すように設置されており、中間層14の背面でフレキシブルプリント基板20の接地配線パターン23と電気的に接続される(フレキシブルプリント基板20及び接地配線パターン23については後述する)。
【0045】
接地電極部161の、接地電極側面部162と接続される側と逆側の端部には切欠き部が設けられており、この切欠き部が、引出し信号電極側面部152と接地電極側面部162との間を絶縁する電極分離部17を構成している。なお、電極分離部17には絶縁物を埋め込んでも良い。
【0046】
なお、電極分離部17は、引出し信号電極側面部152と接地電極側面部162との間を絶縁するために十分な幅を設ける必要がある。一方で、圧電素子11の電極分離部17が設置された部分は電圧が印加されないため超音波が発振されない無効部分となる。そのため、電極分離部17の幅はより狭く設定することが望ましい。一般的に使用される超音波プローブの場合、電極分離部17の幅は0.3mm以下であることが望ましい。
【0047】
次に、図3を参照しながらフレキシブルプリント基板20の構成について説明する。図3は、本実施形態における圧電振動部品10とバッキング材30とフレキシブルプリント基板20の分解図である。
【0048】
フレキシブルプリント基板20は、圧電素子11への駆動信号や圧電素子11からの受信信号を伝達するものであって、圧電振動部品10とバッキング材30との間に介在している。
【0049】
フレキシブルプリント基板20は、バッキング材30から圧電振動部品10に向かって順に積層された、第1の絶縁層21と、信号配線パターン22及び接地配線パターン23と、第2の絶縁層24とで構成されている。
【0050】
第2の絶縁層24は、レンズ方向に対して、圧電振動部品10の背面に対応する部分よりも僅かに大きい領域が除去されている。即ち、第2の絶縁層24には、レンズ方向に対して、圧電振動部品10の背面よりも僅かに大きい開口01が形成されている。これにより、信号配線パターン22及び接地配線パターン23が、圧電振動部品10の背面に形成された引出し信号電極接続部153及び接地電極接続部163に対して露出する。
【0051】
なお、信号配線パターン22が「第1の配線パターン」、接地配線パターン23が「第2の配線パターン」に該当する。
【0052】
引出し信号電極接続部153は、信号配線パターン22の露出面22aに対して電気的に接続される。また、接地電極接続部163は、接地配線パターン23の露出面23aに対して電気的に接続される。
【0053】
バッキング材30は、圧電素子11の背面側に伝播する超音波を吸収するものであって、圧電振動部品10の背面側(中間層14の背面側)に配置されている。バッキング材30の素材としては、特に限定されるものではないが、吸音性に優れたゴムなどが使用される。
【0054】
バッキング材30とフレキシブルプリント基板20との接合、及び、フレキシブルプリント基板20と圧電振動部品10との接合には従来技術と同様の方法を用いれば良い。バッキング材30とフレキシブルプリント基板20との接合について一般的な方法としては、接着剤による接合が良く知られている。また、フレキシブルプリント基板20と圧電振動部品10との接合について一般的な方法としては、はんだ付けによる接合や接着剤による接合が良く知られている。
【0055】
音響レンズ50(図1を参照)は、送受信される超音波を収束してビーム状に整形するものであって、音響整合層40の超音波を送波する方向に配置されている(音響整合層40については後述する)。音響レンズ50の素材としては、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンなどが使用される。
【0056】
音響整合層40は、圧電素子11と音響レンズ50を音響整合させるものであって、圧電素子11と音響レンズ50との間に介在されている。音響整合層40は、第1の音響整合層41と第2の音響整合層42とで構成されている。第1、第2の音響整合層41、42の素材としては、特に限定されるものではないが、圧電素子11から音響レンズ50に向かって段階的に音響インピーダンスが変化するように材質の選定がなされている。
【0057】
次に、圧電振動部品10の作成方法について図4(a)〜(d)を参照しながら説明する。第1の実施形態における圧電振動部品10の作成方法に関する説明図であり、図4(a)〜(d)の順に圧電振動部品10の作成における各工程を示している。
【0058】
<a1>まず図4(a)に示すように、超音波の波長のほぼ4分の1の厚さに加工された圧電素子11の背面に信号電極12をメッキ法やスパッタ法により生成する。このとき、各部材の外形寸法については、後の工程で外形形状を精密に加工するために、所望の寸法に対して僅かに大きく成形しておくことが望ましい。また、信号電極12の、スキャン方向及びレンズ方向の双方に直交する方向の一端に、マスキング法やダイシング法により、電極分離部13を設けておく。
【0059】
<a2>次に、図4(b)に示すように、超音波の波長のほぼ4分の1の厚さに加工された中間層14を、圧電素子11の背面に信号電極12を挟み込むように接合する。このとき、電極分離部13に絶縁物を埋め込んでも良い。中間層14の接合には、エポキシ系接着剤などによる接着接合が用いられることが一般的である。中間層14を接合した後、圧電素子11と中間層14の積層体の外形加工を行い所望の寸法に成形する。このとき、電極分離部13の幅が約0.3mm以下となることが望ましい。
【0060】
<a3>次に図4(c)に示すように、圧電素子11と中間層14の積層体に対してメッキ法やスパッタ法により電極膜19を形成する。電極膜19の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属を用いる。
【0061】
<a4>最後に図4(d)に示すように、ダイシング法により電極分離部17及び電極分離部18を設け、電極膜19を引出し信号電極15と接地電極16とに分離する。このとき、電極分離部17は、圧電素子11の超音波送波面におけるスキャン方向及びレンズ方向の双方に直交する方向に関して電極分離部13とは逆側の端部に設ける。また、電極分離部18は、中間層14の背面におけるスキャン方向及びレンズ方向の双方に直交する方向の中央に設ける。このとき、電極分離部17及び18の幅が0.3mm以下となるように成形することが望ましい。
【0062】
以上により、圧電振動部品10が生成される。なお、電極分離部17及び電極分離部18の生成方法はダイシング法に限定されるものではない。<a3>の工程時に電極分離部17及び電極分離部18を形成する位置にマスキング処理を施した後、電極膜19を生成することで設けても良い。
【0063】
以上により、圧電素子11の背面に中間層14を設ける構造をとりつつ、圧電素子11に設置した信号電極(信号電極12)及び接地電極(接地電極部161)を中間層14の背面に位置するフレキシブルプリント基板20の配線パターン(信号配線パターン22及び接地配線パターン23)に引出すことが可能となる。これにより、圧電素子11の超音波送波面上にフレキシブルプリント基板を設ける必要が無くなるため、音響特性の低下を防止することが可能となる。
【0064】
また同時に、圧電素子11の非実効部分の面積が従来に比べて小さくなり、超音波プローブを小型化することが可能となるため、超音波プローブの操作性を向上させることが可能となる。
【0065】
さらに、圧電素子11の実効部分の面積を維持したまま、中間層の背面で信号電極(引出し信号電極接続部153)及び接地電極(接地電極接続部163)を、それぞれフレキシブルプリント基板20の信号配線パターン22及び接地配線パターン23に接続することが可能となる。これにより、信号電極及び接地電極の双方に対して、従来に比べて広い面積で電極接合を実現することが可能となり、電極接続品質を向上させることが可能となる。
【0066】
(変形例1)
次に図5を参照しながら変形例1に係る超音波プローブについて説明する。図5は、変形例1における圧電振動部品10の作成方法を説明するための図である。
【0067】
変形例1に係る超音波プローブでは、中間層14に導電性を持つ物質を使用して圧電振動部品10を構成していることを特徴としており、その他の構成については第1の実施形態と同様である。本項では第1の実施形態と異なる中間層14の構成及び生成方法に着目して説明する。
【0068】
図5(a)は本実施形態に係る中間層14の構成を示している。図5(a)に示すように、本実施形態に係る中間層14は、導電性を持つ中間層基体141が絶縁膜142で覆われて構成されている。
【0069】
中間層基体141の素材、つまり音響インピーダンスが圧電素子11よりも大きく導電性を有する素材としては、金、鉛又はタングステンなどが使用される。中間層基体141に対して絶縁処理を行うことで絶縁膜142を形成する。
【0070】
絶縁処理の方法としては、中間層基体141の全周に対して酸化もしくは窒化処理を施すことにより表面のみを改質し絶縁膜142を形成する方法が知られている。また、前記した絶縁処理とは異なる方法として、中間層基体141の全周に絶縁層の被覆処理(例えば、酸化アルミニウムの堆積膜)を行うことで絶縁膜142を形成しても良い。
【0071】
以上のように、導電性を持つ中間層基体141に絶縁処理を施し絶縁膜142を形成することで絶縁機能を持たせ、中間層14を構成することが可能となる。
【0072】
図5(b)は、変形例1における圧電振動部品10の断面図である。変形例1に係る中間層14と第1の実施形態に係る中間層14とでは、構成する素材は異なるものの、同一の性質を有している。そのため、図5(b)に示すように、変形例1に係る中間層14を用いて、圧電振動部品10を構成することが可能であり、第1の実施形態と同様の方法で圧電振動部品10を作成することが可能である。
【0073】
以上により、中間層として導電性を有する素材を使用しながら、第1の実施形態と同等の圧電振動部品10を実現することが可能となる。
【0074】
(変形例2)
次に図6(a)〜(c)及び図7を参照しながら、変形例2として、第1の実施形態に係る圧電振動部品10をより簡易に作成する方法について説明する。図6は、変形例2における圧電振動部品10の作成方法に関する説明図であり、図6(a)〜(c)の順に圧電振動部品10の作成における各工程を示している。また図7は、図6(b)の拡大断面図である。
【0075】
<b1>まず図6(a)に示すように、超音波の波長のほぼ4分の1の厚さに加工された圧電素子11に圧電素子側電極膜19Cをメッキ法やスパッタ法により生成する。また、超音波の波長のほぼ4分の1の厚さに加工された中間層14に中間層側電極膜19Dをメッキ法やスパッタ法により生成する。圧電素子側電極膜19C及び中間層側電極膜19Dの素材としては、第1の実施形態における電極膜19と同様に、導電性が良好な金、銀、銅などの金属を用いる。
【0076】
<b2>次に図6(b)に示すように、圧電素子11の超音波送波面において、圧電素子側電極膜19Cのスキャン方向及びレンズ方向の双方に直交する方向の一端を切欠くことで電極分離部17を設ける。また、圧電素子11の背面において、電極分離部17とは逆側の端部を切欠くことで圧電素子側電極分離部13Cを設ける。これにより圧電素子側電極膜19Cは、圧電素子側信号電極15Cと圧電素子側接地電極16Cとに分離される。
【0077】
同様に、中間層14の背面中央を切欠くことで電極分離部18を設ける。また、図7に示すように、圧電素子11の背面に対向する中間層14の面において、圧電素子側電極分離部13Cに対向する位置を切欠くことで中間層側電極分離部13Dを設ける。これにより、中間層側電極膜19Dは、中間層側信号電極15Dと中間層側接地電極16Dとに分離される。
【0078】
なお、電極分離部17、電極分離部18、圧電素子側電極分離部13C、及び、中間層側電極分離部13Dは、ダイシング法又はエッチング法により、圧電素子側電極膜19C及び中間層側電極膜19Dを切欠くことで形成しても良いし、圧電素子側電極膜19C及び中間層側電極膜19Dを形成する際にマスキング法などにより形成しても良い。
【0079】
また、圧電素子側電極分離部13C、中間層側電極分離部13D、電極分離部17、及び、電極分離部18には絶縁物を埋め込んでも良い。
【0080】
<b3>次に図6(c)に示すように、圧電素子11の背面と、該圧電素子の背面に対向する中間層14の面とを接合する。このとき、図7に示すように、圧電素子側接地電極16Cの端部165Cと中間層側接地電極16Dの端部165Dとが電気的に接続され、圧電素子11の背面に位置する圧電素子側信号電極15Cの接合面155Cと、接合面155Cに対向する中間層側信号電極15Dの接合面155Dとが電気的に接続される。また、圧電素子側電極分離部13Cと中間層側電極分離部13Dとが接合され、端部165C及び端部165Dと、接合面155C及び接合面155Dとの間を絶縁する。圧電素子11と中間層14との接合方法としては、一般的には金属融着や導電性の接着剤による接着が用いられる。
【0081】
以上により、圧電振動部品10を、第1の実施形態に記載した作成方法とは異なる方法で、より簡便に作成することが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
10 圧電振動部品 11 圧電素子 12 信号電極
13、17、18 電極分離部
14 中間層 141 中間層基体 142 絶縁膜
15 引出し信号電極
152 引出し信号電極側面部 153 引出し信号電極接続部
16 接地電極
161 接地電極部 162 接地電極側面部 163 接地電極接続部
19 電極膜
20 フレキシブルプリント基板 21 第1の絶縁層
22 信号配線パターン 23 接地配線パターン 24 第2の絶縁層
30 バッキング材
40 音響整合層 41 第1の音響整合層 42 第2の音響整合層
50 音響レンズ 60 フレキシブルプリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、中間部材と、バッキング材とをこれらの順に前記圧電素子の超音波送波面の裏面側に重ね合わせて設けた超音波プローブであって、
前記中間部材と前記バッキング材との間に介在し、前記中間部材の背面のほぼ全体を覆い、かつ第1の配線パターンと第2の配線パターンを持つフレキシブルプリント基板と、
前記圧電素子と前記中間部材との間に介在し、前記圧電素子の一方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第1の配線パターンと電気的に接続される第1の電極と、
前記圧電素子の前記超音波送波面に設けられ、前記圧電素子の他方の側面と前記他方の側面と連続する前記中間部材の側面を通し引出され、前記第2の配線パターンと電気的に接続される第2の電極とを備えたことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記第1の配線パターン及び前記第2の配線パターンのいずれかもしくは双方が、さらに前記中間部材と前記フレキシブルプリント基板との間に引出されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記圧電素子と前記中間部材との間において前記第1の電極が引出される方向とは逆側の前記第1の電極の端部と、前記圧電素子の前記超音波送波面において前記第2の電極が引出される方向とは逆側の前記第2の電極の端部とに電極分離部が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記中間部材の音響インピーダンスが前記圧電素子及び前記バッキング材の音響インピーダンスより高く、前記圧電素子の厚さが超音波の波長のほぼ4分の1であり、前記中間部材の厚さが超音波の波長のほぼ4分の1であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記中間部材が非導電体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記中間部材が導電体であり、前記中間部材の周囲に絶縁処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の超音波プローブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−114414(P2011−114414A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266822(P2009−266822)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】