説明

超音波レーダ

【課題】送信素子から基板を介して受信素子に伝達される超音波に起因するノイズを低減することが可能な超音波レーダを提供する。
【解決手段】超音波レーダ40は、シリコン基板10と、シリコン基板10に形成され、超音波Wを送信する送信素子1と、シリコン基板10に形成され、送信素子1によって送信された超音波Wを受信する受信素子3と、送信素子1からシリコン基板10を介して伝播する超音波Wの振動を減衰させるための超音波減衰素子2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波レーダに関し、特に、送信素子と受信素子とを備えた超音波レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信素子と受信素子とを備えた超音波レーダが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1および2の超音波レーダは、送信素子と、送信素子と同じ基板上に設けられた受信素子とを備えている。この超音波レーダでは、送信素子から送られた超音波が、対象物によって反射され、その反射された超音波を受信素子により受信することによって、対象物の距離や方向が検出される。具体的には、送信素子によって超音波が出力されてから受信素子によって超音波が受信されるまでの時間によって、対象物までの距離が検出される。また、複数の受信素子によって受信された超音波の位相差によって、対象物の方向が検出される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−248821号公報
【特許文献2】特表2005−510264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2の超音波レーダでは、送信素子から送られる超音波が基板を介して受信素子に伝達されることを抑制することができない。このため、送信素子から基板を介して受信素子に伝達される超音波に起因するノイズを低減するのが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、送信素子から基板を介して受信素子に伝達される超音波に起因するノイズを低減することが可能な超音波レーダを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による超音波レーダは、基板と、基板に設けられ、超音波を送信する送信素子と、基板に設けられ、送信素子によって送信された超音波を受信する受信素子と、送信素子から基板を介して伝播する超音波の振動を減衰させるための超音波減衰素子とを備えている。
【0008】
この発明の一の局面による超音波レーダでは、送信素子から基板を介して伝播する超音波の振動を減衰させるための超音波減衰素子を設けることによって、送信素子から出力されて基板を介して伝播する超音波の振動を減衰させることができる。これにより、対象物を検出するために送信素子から出力された超音波のうち、対象物に反射されることなく、基板を介して直接受信素子に伝播する超音波に起因するノイズを低減することができるので、受信素子は、対象物に反射されたノイズの少ない超音波を受信することができる。
【0009】
上記一の局面による超音波レーダにおいて、好ましくは、超音波減衰素子は、基板の送信素子と受信素子との間の部分に設けられている。このように構成すれば、送信素子から基板を介して伝播する超音波は、超音波減衰素子を通らなければ受信素子に到達することができないので、基板を介して直接受信素子に受信される超音波によるノイズを、より低減することができる。
【0010】
上記一の局面による超音波レーダにおいて、好ましくは、超音波減衰素子は、送信素子が出力した超音波で共振可能な共振素子を含む。このように構成すれば、送信素子によって出力されて基板を介して伝播する超音波の振動により共振素子を共振させることができるので、超音波を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0011】
上記共振素子を含む超音波レーダにおいて、好ましくは、共振素子は、共振用ダイアフラムを有する。このように構成すれば、送信素子によって出力されて基板を介して伝播する超音波の振動により共振用ダイアフラムを共振させることができるので、超音波を効果的に吸収し、減衰させることができる。
【0012】
上記共振用ダイアフラムを有する超音波レーダにおいて、好ましくは、受信素子は、共振用ダイアフラムと同じ層からなる受信用ダイアフラムを有する。このように構成すれば、同じ層をパターニングすることによって、共振用ダイアフラムと受信用ダイアフラムとを同時に形成することができるので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0013】
上記一の局面による超音波レーダにおいて、好ましくは、送信素子は、複数設けられている。このように構成すれば、各送信素子から異なる位相や異なる周波数の超音波を出力することができるので、送信する超音波を走査したり、対象物の情報量を増加させることができる。
【0014】
上記送信素子が複数設けられた超音波レーダにおいて、好ましくは、送信素子は、第1の周波数を有する超音波を出力する第1送信素子と、第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する超音波を出力する第2送信素子とを含み、超音波減衰素子は、第1送信素子から基板を介して伝播する第1の周波数を有する超音波の振動を減衰させる第1超音波減衰素子と、第2送信素子から基板を介して伝播する第2の周波数を有する超音波の振動を減衰させる第2超音波減衰素子とを含む。このように構成すれば、たとえば、遠距離用の超音波および短距離用の超音波を、それぞれ、第1および第2送信素子から出力することができるので、超音波レーダの適用範囲を広げることができるとともに、第1および第2超音波減衰素子により、基板を介して受信素子に伝播する超音波に起因するノイズを有効に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による超音波レーダの全体構成を説明するための平面図である。図2は、図1に示した本発明の一実施形態による超音波レーダの領域100を拡大した平面図である。図3は、図2に示した本発明の一実施形態による超音波レーダの150−150線に沿った断面図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による超音波レーダの構造について説明する。
【0017】
本実施形態による超音波レーダ40は、図1および図2に示すように、1個の送信素子1と、16個の受信素子3とを同一のシリコン基板10上に備えている。ここで、本実施形態では、送信素子1と受信素子3との間に、送信素子1からシリコン基板10を介して受信素子3に伝播する超音波を減衰させるための超音波減衰素子2が設けられている。具体的には、図1に示すように、9個の超音波減衰素子2が、平面的に見て、送信素子1を取り囲むように配置されている。また、16個の受信素子3が、平面的に見て、超音波減衰素子2を取り囲むように配置されている。
【0018】
次に、図3を参照して、送信素子1、超音波減衰素子2および受信素子3の構造について説明する。
【0019】
図3に示すように、シリコン基板10の送信素子1、超音波減衰素子2および受信素子3に対応する部分には、それぞれ、開口部12、20および30が形成されている。また、シリコン基板10の開口部12、20および30以外の上面上には、SiOまたはSiNからなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有する絶縁膜11が形成されている。また、開口部12、20および30は、部分四角錐状(截頭四角錐状)を有するように形成されている。
【0020】
また、送信素子1が形成される領域の絶縁膜11および開口部12上には、Pt、Ir、Ru、Al、Cu、Ti、TiN、W、Si、または、これらの積層膜からなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有し、下部電極としての機能を有するダイアフラム13aが形成されている。ダイアフラム13aは、図2に示すように、平面的に見て、矩形状に形成されている。ダイアフラム13aは、fHz(20kHz以上)の共振周波数を有する。ダイアフラム13aの外周部の一部には、平面的に見て、ダイアフラム13aからA方向に突出して延びるように、コンタクト領域13bを含む配線接続部13cが形成されている。ダイアフラム13a上には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BTO(チタン酸バリウム)、または、リチウムタンタレートからなり、約0.5μm〜約5μmの厚みを有する圧電体膜14が形成されている。圧電体膜14は、平面的に見て、ダイアフラム13aと同じ矩形状に形成されている。そして、この圧電体膜14にダイアフラム13aの共振周波数fと同じ周波数を有する交流電圧を印加すると、圧電体膜14が共振周波数fで振動し、さらに、これによってダイアフラム13aが共振することにより、共振周波数fを有する超音波が出力される。
【0021】
絶縁膜11および圧電体膜14上には、Pt、Ir、Ru、Al、Cu、Ti、TiN、W、Si、または、これらの積層膜からなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有する上部電極15aが形成されている。上部電極15aは、図2に示すように、平面的に見て、ダイアフラム13aおよび圧電体膜14と同じ矩形状に形成されている。上部電極15aの外周部の一部には、平面的に見て、上部電極15aからB方向に突出して延びるように、コンタクト領域15bを含む配線接続部15cが形成されている。また、図3に示すように、送信素子1、超音波減衰素子2および受信素子3の上面の全面を覆うように、SiOまたはSiNからなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有する保護膜16が形成されている。また、図2および図3に示すように、配線接続部13cおよび15cのコンタクト領域13bおよび15bに対応する保護膜16の部分には、コンタクトホール16aおよび16bが形成されている。そして、配線接続部13cおよび15cのコンタクト領域13bおよび15b上には、コンタクトホール16aおよび16bを介して、Al、Cu、Ti、TiN、Au、または、これらの積層膜からなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有する電極17および18が形成されている。
【0022】
また、図2および図3に示すように、超音波減衰素子2が形成される領域の絶縁膜11および開口部20上には、SiまたはSiGeからなり、約0.5μm〜約5μmの厚みを有する、円形状(図2参照)の共振用ダイアフラム21が形成されている。なお、共振用ダイアフラム21は、本発明の「共振素子」の一例である。ここで、ダイアフラムを構成する材料の剛性によって決定される係数をK、ダイアフラムのポアソン比をν、ダイアフラムの平均密度をρ、ダイアフラムの厚さをt、ダイアフラムの平面積をSとすると、共振用ダイアフラム21の共振周波数fは、以下の式(1)により表すことができる。
=(1/2π)・[K/{(1−ν)・ρ・t・S}]1/2 ・・・(1)
本実施形態では、共振用ダイアフラム21の共振周波数fは、送信用の共振周波数fと等しくなるように、上記式(1)の各パラメータが設定されている。これにより、共振用ダイアフラム21は、送信素子1からシリコン基板10を介して伝播する超音波の振動により共振するように構成されている。
【0023】
また、図3に示すように、共振用ダイアフラム21上には、エアギャップ22が形成されている。エアギャップ22を挟んで共振用ダイアフラム21と対向する位置には、Al、Cu、Ti、TiN、W、Si、または、これらの積層膜からなり、約1μm〜約10μmの厚みを有する固定電極23が形成されている。また、上記したように、超音波減衰素子2の上面の全面を覆うように、SiOまたはSiNからなる保護膜16が形成されている。エアギャップ22上には、固定電極23および保護膜16を貫通するように複数の開口部24が形成されている。この開口部24は、送信素子1からシリコン基板10を介して伝播する超音波によって共振用ダイアフラム21が振動する際に、空気の通り道として機能する。
【0024】
また、図2および図3に示すように、受信素子3が形成される領域の絶縁膜11および開口部30上には、SiまたはSiGeからなる共振用ダイアフラム21と同じ層からなり、約0.5μm〜約5μmの厚みを有する円形状(図2参照)の受信用ダイアフラム31aが形成されている。SiまたはSiGeからなる受信用ダイアフラム31aは、不純物がドープされることにより導電性を有している。また、図2に示すように、受信用ダイアフラム31aの外周部の一部には、平面的に見て、受信用ダイアフラム31aからA方向に突出して延びるようにコンタクト領域31bを含む配線接続部31cが形成されている。
【0025】
また、図3に示すように、受信用ダイアフラム31a上には、エアギャップ32が形成されている。エアギャップ32を挟んで受信用ダイアフラム31aと対向する位置には、Al、Cu、Ti、TiN、W、Si、または、これらの積層膜からなり、約1μm〜約10μmの厚みを有する円形状(図2参照)の固定電極33aが形成されている。また、図2に示すように、固定電極33aの外周部の一部には、平面的に見て、固定電極33aからC方向に突出して延びるように、コンタクト領域33bを含む配線接続部33cが形成されている。受信用ダイアフラム31aおよび固定電極33aは、エアギャップ32により電気的に絶縁されており、キャパシタを構成している。また、上記したように受信素子3の上面の全面を覆うように、SiOまたはSiNからなる保護膜16が形成されている。エアギャップ32上には、固定電極33aおよび保護膜16を貫通するように複数の開口部34が形成されている。この開口部34は、対象物から反射されてきた超音波によって受信用ダイアフラム31aが振動する際に、空気の通り道として機能する。また、図2および図3に示すように、配線接続部31cおよび33cのコンタクト領域31bおよび33bに対応する保護膜16の部分には、コンタクトホール16cおよび16dが形成されている。そして、配線接続部31cおよび33cのコンタクト領域31bおよび33b上には、コンタクトホール16cおよび16dを介して、Al、Cu、Ti、TiN、Au、または、これらの積層膜からなり、約0.1μm〜約1μmの厚みを有する電極35および36が形成されている。
【0026】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態による超音波レーダ40の動作を説明する。なお、受信素子3の受信用ダイアフラム31aと固定電極33aとの間には、一定の電圧が印加されているものとする。
【0027】
まず、図3に示すように、送信素子1の圧電体膜14に、ダイアフラム13aおよび上部電極15aを介して、圧電体膜14の共振周波数fと同じ周波数を有する交流電圧が印加されると、圧電体膜14が共振周波数fで共振する。そして、送信素子1から、圧電体膜14の共振周波数fと同じ周波数を有する超音波Wが出力されて、この超音波Wが対象物(図示せず)によって反射されて超音波Wとなって、超音波レーダ40に戻ってくる。この反射された超音波Wによって、受信素子3の受信用ダイアフラム31aが振動する。この受信用ダイアフラム31aの振動によって、受信素子3の受信用ダイアフラム31aと固定電極33aとの間の距離が変化するので、受信素子3の受信用ダイアフラム31aと固定電極33aとの間の静電容量が変化する。この静電容量の変化によって、受信用ダイアフラム31aおよび固定電極33aに蓄えられている電荷が移動するので、この電荷の移動を、受信した超音波Wに対応した電気信号として出力する。そして、送信素子1から超音波Wが出力されてから受信素子3で超音波Wが受信されるまでの時間から対象物の距離が検出される。また、各受信素子3により受信された超音波Wの位相差によって、対象物の方向が検出される。
【0028】
また、送信素子1から出力された超音波Wは、シリコン基板10を介して伝播する。ここで、本実施形態では、送信素子1と受信素子3との間に超音波減衰素子2が設けられているので、シリコン基板10を伝播する超音波Wは、超音波減衰素子2の共振用ダイアフラム21を振動させる。共振用ダイアフラム21は、超音波Wの周波数と同じ共振周波数fを有するので、効果的に超音波の振動エネルギーを吸収して振動し、その後、徐々に減衰する。すなわち、シリコン基板10を伝播する超音波Wは、共振用ダイアフラム21の共振によって吸収され、減衰するので、共振用ダイアフラム21は、シリコン基板10を介して受信素子3まで超音波Wが伝播することを抑制する。
【0029】
本実施形態では、上記のように、送信素子1からシリコン基板10を介して伝播する超音波Wの振動を減衰させるための超音波減衰素子2を、送信素子1と受信素子3との間に設けることによって、送信素子1から出力されてシリコン基板10を介して伝播する超音波Wの振動を減衰させることができる。これにより、対象物を検出するために送信素子1から出力された超音波Wのうち、対象物に反射されることなく、シリコン基板10を介して直接受信素子3に伝播する超音波Wに起因するノイズを抑制することができる。これにより、受信素子3は、対象物に反射されたノイズの少ない超音波Wを受信することができるので、対象物の距離や方向などを正確に検出することができる。
【0030】
また、本実施形態では、超音波減衰素子2は、超音波Wnの周波数と同じ共振周波数fを有する共振用ダイアフラム21を設けることによって、送信素子1によって出力されてシリコン基板10を介して伝播する超音波Wの振動エネルギーを、効果的に吸収して振動し、その後、徐々に減衰させることができる。また、共振用ダイアフラム21と受信用ダイアフラム31aとを同じ層により形成することによって、同じ層をパターニングすることにより、共振用ダイアフラム21と受信用ダイアフラム31aとを同時に形成することができるので、製造プロセスを簡略化することができる。
【0031】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0032】
たとえば、上記実施形態では、送信素子1を1つだけ備えた例を示したが、本発明はこれに限らず、複数の送信素子を超音波レーダに設けてもよい。具体的には、図4に示す第1変形例による超音波レーダ40aのように、超音波レーダ40aの中心部分に9個の送信素子1を配置し、送信素子1の周りに16個の超音波減衰素子2を配置し、超音波減衰素子2の周りに24個の受信素子3を配置してもよい。また、図5に示す第2変形例による超音波レーダ40bのように、正方形の頂点に4個の送信素子1を所定の間隔を隔てて配置し、各送信素子1を取り囲むように21個の超音波減衰素子2を配置し、超音波減衰素子2の周りに24個の受信素子3を配置してもよい。また、図6に示す第3変形例による超音波レーダ40cのように、正方形の4つの頂点に4個の送信素子1を所定間隔を隔てて配置し、各送信素子1を囲むように36個の超音波減衰素子2を配置し、各送信素子1を囲む超音波減衰素子2を囲むように45個の受信素子3を配置してもよい。このように複数の送信素子1を配置した場合、各送信素子1から異なる位相や異なる周波数の超音波を出力することができるので、送信する超音波を走査したり、対象物の情報量を増加させることができる。
【0033】
また、図7に示す第4変形例による超音波レーダ40dのように、遠距離用の周波数を出力可能な送信素子1aと短距離用の周波数を出力可能な送信素子1bとを所定の間隔を隔てて設けるとともに、送信素子1aの周りに、送信素子1aの共振周波数fs1と同じ共振周波数fs1を有する8個の超音波減衰素子2aを設け、かつ、送信素子1bの周りに、送信素子1bの共振周波数fs2と同じ共振周波数fs2を有する8個の超音波減衰素子2bが設けてもよい。また、超音波減衰素子2aおよび2bの周りには、それぞれ、送信素子1aおよび1bから出力される超音波を受信可能な受信素子3aおよび3bが16個ずつ設けられている。このように、送信素子1aおよび1bから出力される超音波の周波数を変えることによって、超音波レーダ40dの適用範囲を広げることができるとともに、超音波減衰素子2aおよび2bにより、シリコン基板10を介して受信素子3aおよび3bに伝播する超音波に起因するノイズを有効に低減することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、送信素子1に開口部12を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、図8に示す第5変形例による超音波レーダ40eのように、送信素子1cに開口部を形成しなくてもよい。この場合は、開口部がないため、ダイアフラムの共振を利用することができないので、圧電体膜41の振動を大きくするために、圧電体膜41を約50μm以上の厚みに形成することが好ましい。
【0035】
また、上記実施形態では、外部と接続するための電極を超音波減衰素子2に形成しない例を示したが、本発明はこれに限らず、図9に示す第6変形例による超音波レーダ40fのように、超音波減衰素子2cの共振用ダイアフラム42と外部とを接続するための電極43を形成してもよい。また、超音波減衰素子2cの固定電極44と外部とを接続するための電極(図示せず)を形成してもよい。このように構成すれば、超音波減衰素子2cと受信素子3とを同じ構造にすることができるので、超音波減衰素子2cに外部配線を接続するとともに、受信素子3に外部配線を接続しないようにすれば、超音波減衰素子2cを受信素子として機能させることができるとともに、受信素子3を超音波減衰素子として機能させることができる。これにより、超音波減衰素子2cの位置と受信素子3の位置とを容易に入れ替えることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、超音波減衰素子2および受信素子3が共振用ダイアフラム21および受信用ダイアフラム31aを有する例を示したが、本発明はこれに限らず、図10に示す第7変形例による超音波レーダ40gのように、送信素子1と同様に、超音波減衰素子2dおよび受信素子3cに、それぞれ、圧電体からなるダイアフラム45および圧電体膜46を設けてもよい。なお、このように構成する場合、受信素子3cの圧電体膜46を挟むように、下部電極47および上部電極48を設ける必要がある。また、このように構成する場合、空気の通り道が必要ないので、開口部(図2および図3の開口部24参照)を形成しなくてもよい。また、ダイアフラム45の共振周波数は、ダイアフラム13aの送信用の共振周波数と同じになるようにする。このように構成すれば、超音波減衰素子2dでは、このダイアフラム45が超音波Wによって共振されるので、超音波Wを吸収することができる。また、受信素子3cにおいては、圧電体膜46が振動することによって対象物から反射された超音波Wを検出することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、超音波減衰素子2に固定電極23を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、図11に示す第8変形例による超音波レーダ40hのように、超音波減衰素子2eの固定電極を省略してもよい。このように構成する場合、さらに、共振用ダイアフラム21上の保護膜16eをも除去してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、送信素子1の圧電体膜14を、平面的に見て、矩形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、円形状などの別の形状に形成してもよい。また、上記実施形態では、超音波減衰素子2の共振用ダイアフラム21および受信素子3の受信用ダイアフラム31aを、平面的に見て、円形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、矩形状などの別の形状に形成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、送信素子1のダイアフラム13aと、超音波減衰素子2の共振用ダイアフラム21および受信素子3の受信用ダイアフラム31aとを異なる材料で構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、送信素子のダイアフラムと、超音波減衰素子の共振用ダイアフラムおよび受信素子の受信用ダイアフラムとを同じ層をパターニングすることにより構成してもよい。これにより、製造プロセスにおいて、送信素子のダイアフラムと、超音波減衰素子の共振用ダイアフラムおよび受信素子の受信用ダイアフラムとを同時に形成することができるので、製造プロセスをより簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態による超音波レーダの全体構成を説明するための平面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態による超音波レーダの矩形100内を拡大した平面図である。
【図3】図2に示した本発明の一実施形態による超音波レーダの150−150線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1変形例による超音波レーダの全体構成を説明するための平面図である。
【図5】本発明の第2変形例による超音波レーダの全体構成を説明するための平面図である。
【図6】本発明の第3変形例による超音波レーダの全体構成を説明するための平面図である。
【図7】本発明の第4変形例による超音波レーダの構成を説明するための平面図である。
【図8】本発明の第5変形例による超音波レーダの構成を説明するための部分断面図である。
【図9】本発明の第6変形例による超音波レーダの構成を説明するための部分断面図である。
【図10】本発明の第7変形例による超音波レーダの構成を説明するための部分断面図である。
【図11】本発明の第8変形例による超音波レーダの構成を説明するための部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 送信素子
1a 送信素子
2 超音波減衰素子
2a 超音波減衰素子
2b 超音波減衰素子
2c 超音波減衰素子
3 受信素子
3a 受信素子
10 シリコン基板
14 圧電体膜
21 共振用ダイアフラム(共振素子)
31a 受信用ダイアフラム
40、40a〜40h 超音波レーダ
42 共振用ダイアフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられ、超音波を送信する送信素子と、
前記基板に設けられ、前記送信素子によって送信された超音波を受信する受信素子と、
前記送信素子から前記基板を介して伝播する超音波の振動を減衰させるための超音波減衰素子とを備えた、超音波レーダ。
【請求項2】
前記超音波減衰素子は、前記基板の前記送信素子と前記受信素子との間の部分に設けられている、請求項1に記載の超音波レーダ。
【請求項3】
前記超音波減衰素子は、前記送信素子が出力した超音波で共振可能な共振素子を含む、請求項1または2に記載の超音波レーダ。
【請求項4】
前記共振素子は、共振用ダイアフラムを有する、請求項3に記載の超音波レーダ。
【請求項5】
前記受信素子は、前記共振用ダイアフラムと同じ層からなる受信用ダイアフラムを有する、請求項4に記載の超音波レーダ。
【請求項6】
前記送信素子は、複数設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波レーダ。
【請求項7】
前記送信素子は、第1の周波数を有する超音波を出力する第1送信素子と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する超音波を出力する第2送信素子とを含み、
前記超音波減衰素子は、前記第1送信素子から前記基板を介して伝播する前記第1の周波数を有する超音波の振動を減衰させる第1超音波減衰素子と、前記第2送信素子から前記基板を介して伝播する前記第2の周波数を有する超音波の振動を減衰させる第2超音波減衰素子とを含む、請求項6に記載の超音波レーダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−88805(P2007−88805A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274896(P2005−274896)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】