超音波伝搬速度を利用した超音波検査装置又は超音波照射位置検査方法
【課題】本発明は、超音波が正しく骨折部位に照射されていることを確認できる超音波検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、骨折部位付近の体表に設置され、骨折部位に対して超音波を照射する発信用トランスデューサ、及び該骨折部位を有する骨付近の体表に設置され、骨を伝搬する超音波を受信する受信用トランスデューサを備え、前記発信用トランスデューサから骨折部位に超音波が照射されていることを受信用トランスデューサの特定の組織を伝搬した受信信号により確認する判定手段を備えた超音波検査装置である。
【解決手段】本発明は、骨折部位付近の体表に設置され、骨折部位に対して超音波を照射する発信用トランスデューサ、及び該骨折部位を有する骨付近の体表に設置され、骨を伝搬する超音波を受信する受信用トランスデューサを備え、前記発信用トランスデューサから骨折部位に超音波が照射されていることを受信用トランスデューサの特定の組織を伝搬した受信信号により確認する判定手段を備えた超音波検査装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波伝搬速度を利用した超音波検査装置又は超音波照射位置検査方法に関する。特に、照射媒体による超音波伝搬速度の違いを利用して、照射対象骨の超音波照射位置を確認する超音波検査装置又は超音波照射位置検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は安全で簡便な物理療法として一般的に診断や治療に使用されている。中でも、骨折癒合促進のために用いられている超音波骨折治療器は、超音波トランスデューサから超音波を骨折部位へ照射し、骨折治癒過程を刺激することにより治療を行うものである。骨折部に適切に超音波を照射するため、治療器の装着位置及び角度を正確に定め、保持することが求められる。
【0003】
従来、超音波照射位置の決定には、骨折部のX線写真を撮影し、その情報を元に照射位置が決められていた。しかし、X線写真より得られる情報は、撮影時の一方向から見た二次元情報であるため、特に筋肉や脂肪等の軟部組織の厚い大腿骨や上腕骨において、トランスデューサ装着の正しい位置や角度を決めることが困難という課題があった。
【0004】
上記課題を解決するため、治療用トランスデューサから骨へ超音波を照射し、その反射波を受信用トランスデューサで受信することで、正しく骨に照射されているかを判別する技術が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、別の方法として、超音波を骨へ照射し、その骨の長軸方向の伝搬波を受信用トランスデューサで受信することで、正しく骨に照射しているかを判断する技術が発明されている(特願2006−224335)。
【特許文献1】特開2001−299772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、骨に超音波を照射する際に、生体に安全な範囲内で、照射位置への正確な超音波の照射を確認できる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波を発信する発信用トランスデューサ、超音波を受信する受信用トランスデューサ、及び超音波照射対象骨の目的とする位置に発信用トランスデューサが超音波を照射しているかを判別する判別手段を有し、前記判別手段は、目的とする位置に超音波を照射したときの、前記発信用トランスデューサから超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波の長軸方向の皮質骨を経由した伝搬距離に基づく伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサの受信時間が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信時間が一致する場合には、目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別し、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサ間は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間とに差が出る距離に設置されていることを特徴とする超音波検査装置である。
【0008】
また本発明は、前記判別手段は、前記基準値を判別条件決定手段から取得し、前記判別条件決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報に基づいて、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波伝搬予想時間を算出して、前記基準値を決定することを特徴とする超音波検査装置である。
【0009】
さらに本発明は、前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び設置部位を入力する距離情報及び設置部位入力手段によって、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0010】
さらに本発明は、前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサに各々設置されたトランスデューサ間の距離を測定する距離測定手段によって測定された距離情報を取得する距離情報取得手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報を、設置部位を入力する設置部位入力手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0011】
さらに本発明は、前記判別条件決定手段は、前記基準値を、式 t1=Y/v2+X/v1[Yは、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和;v2は軟部組織の伝搬速度;Xは皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離;v1は皮質骨の伝搬速度を表す。]によって算出するt1とすることを特徴とする、超音波検査装置である。
【0012】
さらに本発明は、前記受信用トランスデューサの受信時間は記録手段に記録され、前記判別手段は前記記録手段に記録された受信時間情報を取得し、前記基準値と前記記録手段に記録された受信時間が一致するか否かを判断することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0013】
さらに本発明は、前記判別手段での判別結果を表示する表示部を備える、超音波検査装置である。
【0014】
さらに本発明は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間との差は、前記発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅より大きいことを特徴とする、超音波検査装置である。
【0015】
さらに本発明は、超音波照射対象骨の超音波照射位置検査方法において、発信用トランスデューサを超音波照射対象骨の照射位置付近の体表に設置して、超音波を発信する工程、前記超音波照射対象骨付近の体表に設置された受信用トランスデューサで、発信された超音波の超音波照射対象骨の長軸方向の皮質骨又は軟部組織を伝搬した超音波を受信する工程、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和によって定まる超音波照射対象骨の皮質骨の伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサで受信した受信信号が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信信号が一致する場合には、超音波照射対象骨の目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別する工程とを有する、超音波照射位置検査方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、骨に超音波を照射するための装置の設置位置を決める際に、骨の形状又は骨の部位による影響が従来方法に比べ減少し、かつ生体に安全な範囲内で、超音波の正確な照射位置を確認できる超音波検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(原理)
本発明は、超音波の照射位置を確認するものであり、骨に超音波を照射した場合に、照射した骨の特定の組織の長軸方向に伝わる伝搬波を受信用トランスデューサで受信し、その受信信号によって目的とする位置に照射できているかを確認するものである。
【0018】
筋肉や脂肪等の軟部組織や骨髄の超音波の伝搬速度は1500 m/s前後であるのに対し、皮質骨の伝搬速度は4080m/s程度と2倍以上速い。軟部組織や骨髄を伝搬する超音波は、同程度の時間で伝わるため、伝搬波が重なり合い、個別の情報を得ることが困難であるが、皮質骨を伝搬する超音波は、同じ距離を伝搬する軟部組織や骨髄に比べ、半分以下の時間で伝わるため、他の伝搬波と分離して情報を抽出することができる。このように、本発明は、皮質骨が他の部位に比べ伝搬速度が速いことを利用し、伝搬波の伝搬時間の違いから、伝搬波を分離することで得られる皮質骨の情報を用いて評価することにより、骨への照射を確認する。
【0019】
(判別方法)
皮質骨からの伝搬波の情報とは、具体的には、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間における受信信号の有無である。皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、受信信号が得られた場合、発信用トランスデューサより発信される超音波は骨に照射されていると判断する。皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、受信信号が得られない場合、発信用トランスデューサより発信される超音波は骨に照射されていないと判断する。
【0020】
受信信号の有無で判別するこの方法は、最も速い皮質骨からの伝搬波と皮質骨を介さない経路を伝搬し、より詳細には軟部組織のみからの伝搬波を分離可能な、以下の関係式(a)〜(c)が成り立つ条件で適用できる。発信用トランスデューサから発信した超音波が照射対象骨の皮質骨を経由して受信用トランスデューサに到達するまでの、伝搬波の伝搬予想時間(皮質骨の伝搬予想時間)をt1[s];軟部組織のみからの伝搬波の最短受信時間(軟部組織のみを伝搬するときの最短伝搬予想時間)をt2[s];軟部組織における、発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離(すなわち、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの厚み)及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離(すなわち、軟部組織における受信用トランスデューサから照射対象骨までの厚み)の和をY[m];皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離をX[m];皮質骨の伝搬速度をv1[m/s];軟部組織の伝搬速度をv2[m/s];発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅をT[s]とする。
(a)t1=Y/v2+X/v1
(b)t2=X/v2
(c)t2−t1>0
(c)においては、特に、t2−t1>Tが成立することが好ましい。皮質骨を介さない軟部組織のみを伝搬する最短経路からの伝搬波の情報と皮質骨を伝搬する経路からの伝搬波の情報を切り離して判別することが可能となるためである。
【0021】
(具体例)
上記関係式のうち、軟部組織の伝搬速度および皮質骨の伝搬速度は文献値を用いることができる。例えば、丸善(社)出版の超音波便覧や;(社)日本エム・イー学会ME技術教育委員会監修、南江堂出版、MEの基礎知識と安全管理;Journal of the Acoustical Society of America、64(2)423−457、S.A.Goss氏らの研究論文等に数値が挙げられている。発信超音波のバースト幅は使用する超音波の条件により決定される値を用いる。皮質骨以外で最も重要な伝搬経路である軟部組織の伝搬距離は、装置使用箇所に応じてあらかじめ登録済みの統計データから推測される値を用いる等、装置使用箇所に応じて決定される値を用いる。
【0022】
受信用トランスデューサは、装置使用箇所により決定された発信用トランスデューサの位置からみて、上記関係式(c)が成り立つトランスデューサ間距離を保つことが可能な位置に設置する。例えば、軟部組織の伝搬距離Yが5cm、発信用トランスデューサから発信される超音波のバースト幅Tが20μs、軟部組織の伝搬速度v2が1580m/s、及び皮質骨の伝搬速度v1が4080m/sである場合、式(c)が成り立つためには式(a)、(b)よりXが8.5cm以上と計算できる。したがって、軟部組織の伝搬距離Yが5cm、発信用トランスデューサから発信される超音波のバースト幅Tが20μsである場合、受信用トランスデューサは発信用トランスデューサから8.5cm以上離れた位置に設置する。さらに、t2−t1>Tが成り立つためには、15cm以上離れた位置に設置することが好ましいと判断できる。
【0023】
決定した両トランスデューサの位置より導き出される距離情報を基にXを、測定部位情報を基にYを決定し、上記関係式(a)より皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出する。このようにして算出した皮質骨からの伝搬波の予想受信時間における、実際の受信信号の有無で、照射対象の骨に照射されているか否かを判別する。
【0024】
(受信信号の特徴)
皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は、発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数あるいは発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数の信号である。
【0025】
受信信号の周波数は、発信用トランスデューサから発信する超音波に含まれる周波数の強度分布と、各周波数の超音波の皮質骨での減衰量によって決まる。発信用トランスデューサから発信する超音波が、周波数fHzのパルス超音波であるとき、その超音波に含まれる周波数は、fHzの周波数と、パルス超音波の立ち上がりと立ち下がりに含まれるfHz以外の周波数となる。
【0026】
周波数fHzのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波に含まれる周波数の強度分布を、図1に示す。周波数fHzのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波に含まれる周波数の強度分布は、周波数fHzに最も大きなピークを持ち、fHzを中心として、低周波数領域、高周波数領域それぞれにN−1個の小さなピークを持つ分布となる。
【0027】
周波数fHzの超音波の皮質骨での減衰量が少ない場合、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数の信号となる。一方、周波数fHzの超音波の皮質骨での減衰量が非常に多くほぼ減衰する場合、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数の信号となる。
超音波の皮質骨での減衰量は、周波数と伝搬する皮質骨の距離に依存する。周波数が高くなるほど、また伝搬する皮質骨の長さが長いほど減衰量は大きい。
【0028】
本発明者らの実験によれば、長さが20cmの皮質骨を伝搬させる系において、100kHzまでは減衰量が少なく、受信信号は100kHzの信号となることを確認している。一方、200kHzでは減衰量が非常に多くほぼ減衰し、受信信号は200kHzより低い周波数の信号となることを確認している。同様に、長さが8cmの皮質骨において、200kHzまでは減衰量が少なく、受信信号は200kHzの信号となることを確認している。一方、250kHzでは減衰量が非常に多くほぼ減衰し、受信信号は250kHzより低い周波数の信号となることを確認している。
【0029】
したがって、両トランスデューサ間が20cmで、発信用トランスデューサから周波数100kHzの超音波を照射する場合、骨に照射されていると判断できるときは、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、周波数100kHzの受信信号が得られる。同様に、両トランスデューサ間が20cmで、発信用トランスデューサから周波数500kHzの超音波を照射する場合、骨に照射されていると判断できるときは、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、500kHzより低い周波数の受信信号が得られる。
【0030】
発信用トランスデューサから発信する超音波は、受信信号の周波数が、発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数となる領域の超音波と、発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数となる領域の超音波のどちらでもよい。また、複数の周波数の超音波をタイミングを変えて発信してもよい。複数の周波数の超音波を発信する場合は、どちらか一つの周波数の超音波を照射して判別する場合よりも判別に用いる情報や判別に至るまでの段階が増えるため、骨への照射の検出精度は高くなる。
【0031】
(適用例1)
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。
大腿骨骨折治療への本発明の適用例を、図2に示す。
【0032】
発信側に関して、骨折部位3を治療する時には、医療機関で決定された装着位置に発信用トランスデューサ4を設置し、固定手段10を用いて大腿に装着する。固定手段10は、発信用トランスデューサ4を体表12に固定できるものであればよく、例えばベルト等を用いる。このとき、発信用トランスデューサ4と体表12との間に、超音波伝搬物質7を介在させる。超音波伝搬物質7は、超音波を伝搬するものであればよく、例えば水や超音波ゲル等が好適である。このとき発信用トランスデューサ4から発信される超音波は、治療用、治療用及び/又は診断用並びに検査用、あるいは検査用のみのいずれでもよい。検査用のみを発信する場合は、治療又は診断用装置と別装置の形態をとることができる。
【0033】
受信側に関して、大腿骨2付近の体表12の、発信用トランスデューサ4を設置した箇所とは別の箇所に、受信用のトランスデューサ5を固定する。受信用トランスデューサ5の固定は、発信用トランスデューサ4と同様、固定手段11を用いて固定する。受信用トランスデューサ5と体表12との間にも超音波伝搬物質7を介在させる。
【0034】
受信用トランスデューサ5は、骨を伝搬した超音波を受信できる場所かつ皮質骨からの伝搬波と軟部組織のみからの伝搬波の伝搬時間に違いが現れる、関係式(c)の成り立つ場所に設置する。トランスデューサの設置位置における軟部組織の厚みが薄い部位ほど、式(a)においてYの値が小さくなり、式(c)が成り立つために必要なXの値が小さくなる。つまり、トランスデューサの設置位置における軟部組織の厚みが薄い部位ほど、受信用トランスデューサ5は発信用トランスデューサ4と近い位置にも設置することが可能となるため、受信用トランスデューサ5の設置箇所の選択可能範囲が広くなる。超音波は直進性を持つことから、皮質骨からの伝搬波をより効率よく受信するためには、治療対象である骨に近い体表で、かつ治療対象骨の近位端や遠位端が好ましい。例えば、治療する骨が大腿骨であれば、大腿骨外側上顆付近、大腿骨内側上顆付近又は大腿骨大転子等となる。図2では、大腿骨外側上顆付近に受信用トランスデューサ5を設置している。他の例として、上腕骨を治療する際には、上腕骨外側上顆付近や上腕骨内側上顆付近に、受信用トランスデューサを設置するとよい。
【0035】
このように、受信用トランスデューサ5を皮質骨からの伝搬波とその他組織からの伝搬波の伝搬時間に違いが現れる場所に設置することによって、皮質骨内部を長軸方向に伝搬する超音波を確実に受信用トランスデューサ5で受信することができ、発信用トランスデューサの正確な照射位置の確認が可能となる。このとき、骨折位置への正確な照射を確認するタイミングは、発信用トランスデューサ4から発信可能な超音波が治療用及び/又は診断用並びに検査用である場合、治療開始前、治療中、治療終了後どのタイミングでも行うことができ、検査用のみである場合、治療開始前、治療終了後となる。
【0036】
(装置の構成1)
装置構成要素の一例を、図3、図4に示す。
検査装置本体6は、発信回路13、受信回路14、記録手段19及び判別手段21を有する制御手段15、電力供給手段16、距離情報及び設置部位入力手段17、判別条件決定手段20、表示部23を備えている(図3)。距離情報は、距離情報及び設置部位入力手段17を、図4に示すように設置部位入力手段26のみとし、距離情報手段として距離測定手段22より得られた情報を取得する距離情報取得手段18を備えても良い。
【0037】
実際の装置の動きを以下に記述する。まず、トランスデューサ間の距離を距離情報及び設置部位入力手段17により入力する場合(図3)、発信用トランスデューサ4と受信用トランスデューサ5を体表上に設置後、トランスデューサ間の距離及び設置部位を距離情報及び設置部位入力手段17により入力し、その情報に基づいて、判別条件決定手段20により判別条件を決定する。設置部位の情報は、軟部組織の厚み情報を取得するためのものである。あるいは、トランスデューサ間の距離を距離測定手段22及び距離情報取得手段18により取得する場合(図4)、発信用トランスデューサ4と受信用トランスデューサ5を体表上に設置後、設置部位のみを設置部位入力手段26により入力して、各トランスデューサ内に内蔵された距離測定手段22により測定された距離情報を距離情報取得手段18により取得し、設置部位及び距離情報に基づいて、判別条件決定手段20により判別条件を決定する。
【0038】
判別条件は、設置した両トランスデューサの距離を、超音波照射対象骨の皮質骨を超音波が伝搬する時間を基準値とし、実際に超音波を照射したときに、受信用トランスデューサの受信信号が、この基準値と一致する結果となれば、目的とする位置に照射していると判断するものである。
【0039】
距離情報及び設置部位入力手段17は、具体的には、トランスデューサ間の距離をものさし等で測定し、その数値をダイヤルあるいはボタン等により外部から入力する入力部と、設置部位をボタンなどで選択し、登録されている軟部組織の厚みの統計データより数値を選定あるいはあらかじめ調査した数値をダイヤルあるいはボタン等により外部から入力する入力部からなるもの等が挙げられる。設置部位の入力部とは、例えば、各部位ごとに外周10cm、15cm、20cmの軟部組織の統計データを予め登録しておき、設置部位が外周20cmの大腿部であるとき、「大腿部20cm」のボタンを選択することで、軟部組織の厚み情報を取得できる装置が挙げられる。
【0040】
距離測定手段22は、具体的には、光センサや磁気センサといった距離測定センサ等が挙げられる。距離情報取得手段18は、具体的には、距離測定手段22により得られた情報を取り込むための回路等が挙げられる。
【0041】
判別条件決定手段20は、図3の場合、距離情報及び設置部位入力手段17により得られた、超音波が皮質骨を伝搬するときの最短距離情報を基に、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出するための演算回路等が挙げられる。図4の場合、設置部位入力手段26及び距離情報取得手段18により得られた距離情報を基に、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出するための演算回路等が挙げられる。
【0042】
次に、電力供給手段16から電力を供給された制御手段15は、発信回路13に駆動信号を送る。駆動信号を受信した発信回路13はケーブル8を介して発信用トランスデューサ4に信号を送り、発信用トランスデューサ4は超音波を発信する。このとき受信側は、制御手段15が、発信回路13に駆動信号の発信あるいは停止のタイミングで、トリガ信号を受信回路14に送り、信号検知を開始する、あるいは、受信回路にある一定以上の電圧値を検知した時に受信回路14の信号検知を開始する。電力供給手段16としては、内蔵電源あるいは外部電源等が挙げられる。
【0043】
受信用トランスデューサ5より受信した超音波は電気信号に変換され、ケーブル9を介して受信回路14に送られる。検知した信号は記録手段19により記録され、判別条件決定手段20により決定された判別条件を基に、判別手段21を用いて発信用トランスデューサ4の位置が正しい照射位置であるかどうか判別される。その結果は表示部23により表示され、正しい照射位置であるか否かが分かるここで、記録手段19は、具体的には、半導体メモリ等が挙げられる。また表示部21は、具体的には、結果を文字で表示するLCDや点灯で表示するLED等が挙げられる。
【0044】
治療前の使用時で正しい照射位置であると判断した場合、その結果を表示部23で表示し、検査装置本体6が治療用及び/又は診断用並びに検査用超音波の発信が可能であるとき、すなわち治療及び/又は診断用装置も兼ね備えるときは、発信回路13は検査用の信号から治療又は診断用の信号に切り替え、治療又は診断を開始する。検査装置本体6が検査用のみの超音波発信が可能であるとき、すなわち治療及び/又は診断用装置ではないときは、治療又は診断用の装置に切り替え治療又は診断を開始する。
【0045】
(適用例2)
本発明の超音波の発信と受信の機構を二つの装置本体で実現した例を、図5に示す。
発信機構24は、発信用トランスデューサ4を介して検査用超音波並びに/又は治療及び/もしくは診断用超音波を発信可能であり、受信機構25は受信用トランスデューサ5を介して受信した超音波を電気信号に変換し、あらかじめ入力されている判別条件を元に、照射位置の適否を判定する。本形態では、各装置の小型化、発信機構からのノイズ除去によるS/Nの向上を図ることができる。
【0046】
(装置の構成2)
発信機構24と受信機構25を二つの装置で実現した場合の、発信機構の一例を図6に、受信機構の一例を図7に示す。
発信機構24は、発信回路13、制御手段15、電力供給手段16、発信用トランスデューサ4、及びケーブル8を備える。受信機構25は、受信回路14、制御手段15、電力供給手段16、距離情報及び設置部位入力手段17、記録手段19、判別条件決定手段20、判別手段21、表示部23、受信用トランスデューサ5、及びケーブル9を備える。距離情報入力手段として、図示しないが、図4と同様に、距離情報及び設置部位入力手段17を設置部位入力手段26に変更し、距離情報を取得するための、距離測定手段22及び距離測定手段22より得られた情報を取得する距離情報取得手段18を備えても良い。この場合、距離測定手段22は、発信機構24の発信用トランスデューサ4と受信機構25の受信用トランスデューサ5のそれぞれに備え、距離測定手段22が例えば光センサであれば、両トランスデューサ間の反射情報を距離情報取得手段18により取得する。
【0047】
それぞれの構成要素の作用などは、上述した実施例と同様で構成してもよい。この場合、受信側は、制御手段15が発信回路13に駆動信号を送る、あるいは停止するタイミングで、トリガ信号を受信機構と発信機構を繋ぐケーブル(図示せず)もしくは無線(図示せず)等により受信回路14に送ることで、受信回路14の信号検知を開始する。あるいは、受信回路にある一定以上の電圧値を検知した時に受信回路14の信号検知を開始することで、受信タイミングを容易に調製できる。また、治療前の使用時で正しい照射位置であると判断した場合、前記ケーブルもしくは無線等により信号を送り、発信機構へ検査用超音波から治療又は診断用超音波へ切り替えることができる。
【0048】
(照射条件)
治療用超音波には、骨折治療に適切な条件の超音波を用いる。例えば適切な超音波条件の一つとして、1.5MHzの周波数、200μsのバースト幅、1kHzの繰り返し周波数、超音波出力の時間平均と空間平均が30mW/cm2の超音波が好ましい。
【0049】
検査用超音波には、周波数は、どの周波数でもよく、伝搬波の受信が可能かつ生体に安全な範囲内の出力であればよい。上記の関係式(c)が成立し得る範囲内のバースト幅の超音波を用いることが好ましい。特には、MI(Mechanical Index)が1.0以下となるような生体への安全性を保てる範囲の出力で、骨の長軸方向の長さ及び軟部組織の厚さより、t2−t1>Tが取り得る範囲内である200μs以下のバースト幅の超音波が好ましい。MIとは、負音圧の最大値を周波数の平方根で割った式で定義される値で、負音圧により発生した空洞が消失する際の生体への影響の可能性を示す機械的指標である。
【0050】
(超音波照射位置の確認方法)
発信用トランスデューサの超音波照射位置を確認する例を述べる。正しく照射位置へ発信用トランスデューサ4が設置されている場合、超音波が骨折部位3に照射される。骨折部位3に照射された超音波は大腿骨2の長軸方向に伝わり、骨を伝搬した超音波を、受信用トランスデューサ5を用いて受信する。
【0051】
受信用トランスデューサ5により受信した信号の、判別手段21による判別方法の例を図8、図9、及び図10に示す。受信用トランスデューサ5で受信される信号が、皮質骨からの伝搬波の予想伝搬時間t1で検知された場合(図8、図9)、判別手段21は、発信用トランスデューサ4が正しく照射位置へ設置されていると判断し、その結果が情報として表示部23に示されることから、超音波が骨折部位3に正しく照射されていることが分かる。このときt1で検知される信号は、発信用トランスデューサ4により発信した超音波と同一周波数(図8)あるいは発信した超音波より低い周波数(図9)のどちらでもよい。一方、受信用トランスデューサ5で受信される信号が、皮質骨からの予想伝搬時間t1で検知されなかった場合(図10)、判別手段21は、発信用トランスデューサ4が正しく照射位置へ設置されていないと判断し、その結果が情報として表示部23に示されることから、超音波が骨折部位3に照射されていないことが分かる。この場合は、発信用トランスデューサの設置位置や向きを変えて、皮質骨からの伝搬波の予想伝搬時間t1で検知できるまで操作を繰り返す。
【0052】
骨折位置への正確な照射を確認するタイミングが治療又は診断前であれば、正しい照射位置であると判断した場合、発信用トランスデューサ4から照射する超音波を検査用超音波から治療用又は診断用超音波に変更あるいは検査用装置から治療又は診断用装置に変更し、治療又は診断を開始する。
【0053】
骨折位置への正確な照射を確認するタイミングが治療又は診断中であれば、本実施例では、治療又は診断用超音波を照射しながら、1kHzの繰り返し周波数即ち繰り返し周期1msのうち、治療目的の超音波を照射しない800μsの時間に、所定の間隔で検査用超音波を照射することで判別する。治療又は診断中に行う場合、発信用トランスデューサ4の位置が正しくないときに、表示部21により患者に発信用トランスデューサの設置が正しくないことを常時伝えることができ、発信用トランスデューサ4の位置を正すことにより、治療効果の向上が期待できる。
【0054】
治療又は診断中に位置の確認を行う場合について、本実施例を用いた例を具体的に述べる。発信用トランスデューサ4を駆動する電気信号を図11に示す。まず200μs幅の治療用超音波を発信し、その後400μs後にバースト幅Tの検査用超音波を発信する。次の治療又は診断用超音波を送る前の残りの時間に、骨経由の超音波伝搬時間遅れを考慮した判別区間を設けて、受信用トランスデューサ5で骨を伝搬した検査用超音波を検知し、発信用トランスデューサの位置の適否を判別する。検査用超音波は、治療又は診断用超音波を10回送るごとに1回送る方法も可能である。他の方式として、治療又は診断目的の超音波を照射しない前記800μsの間に例えば200μsの間隔で3回だけ検査用超音波を照射することもできる。
【0055】
治療用トランスデューサの位置を確認する判別条件として、患者ごとに対応する超音波伝搬特徴値を用いることもできる。例えば、骨密度や年齢ごとの伝搬速度の統計データを予め登録しておき、皮質骨からの予想伝搬時間t1を算出する際に用いる皮質骨の伝搬速度v1を患者ごとに選択する等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】周波数fのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波のパワースペクトルの図である。
【図2】本発明の超音波検査装置を用いた実施態様の概略図である。
【図3】距離情報入力手段を備えた装置の構成要素の概略図である。
【図4】距離測定手段及び距離情報取得手段を備えた装置の構成要素の概略図である。
【図5】本発明の超音波診断装置を用いた別の実施態様の概略図である。
【図6】発信機構の概略図である。
【図7】受信機構の概略図である。
【図8】判別手段による判別方法例(骨に照射されている場合)の図である。
【図9】判別手段による判別方法例(骨に照射されている場合)の図である。
【図10】判別手段による判別方法例(骨に照射されていない場合)の図である。
【図11】本発明の発信用トランスデューサを駆動する電気信号の一態様の図である。
【符号の説明】
【0057】
1.軟部組織
2.大腿骨
3.骨折部位
4.発信用トランスデューサ
5.受信用トランスデューサ
6.検査装置本体
7.超音波伝搬物質
8.発信用ケーブル
9.受信用ケーブル
10.固定手段
11.固定手段
12.体表
13.発信回路
14.受信回路
15.制御手段
16.電力供給手段
17.距離情報及び設置部位入力手段
18.距離情報取得手段
19.記録手段
20.判別条件決定手段
21.判別手段
22.距離測定手段
23.表示部
24.発信機構
25.受信機構
26.設置部位入力手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波伝搬速度を利用した超音波検査装置又は超音波照射位置検査方法に関する。特に、照射媒体による超音波伝搬速度の違いを利用して、照射対象骨の超音波照射位置を確認する超音波検査装置又は超音波照射位置検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は安全で簡便な物理療法として一般的に診断や治療に使用されている。中でも、骨折癒合促進のために用いられている超音波骨折治療器は、超音波トランスデューサから超音波を骨折部位へ照射し、骨折治癒過程を刺激することにより治療を行うものである。骨折部に適切に超音波を照射するため、治療器の装着位置及び角度を正確に定め、保持することが求められる。
【0003】
従来、超音波照射位置の決定には、骨折部のX線写真を撮影し、その情報を元に照射位置が決められていた。しかし、X線写真より得られる情報は、撮影時の一方向から見た二次元情報であるため、特に筋肉や脂肪等の軟部組織の厚い大腿骨や上腕骨において、トランスデューサ装着の正しい位置や角度を決めることが困難という課題があった。
【0004】
上記課題を解決するため、治療用トランスデューサから骨へ超音波を照射し、その反射波を受信用トランスデューサで受信することで、正しく骨に照射されているかを判別する技術が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、別の方法として、超音波を骨へ照射し、その骨の長軸方向の伝搬波を受信用トランスデューサで受信することで、正しく骨に照射しているかを判断する技術が発明されている(特願2006−224335)。
【特許文献1】特開2001−299772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、骨に超音波を照射する際に、生体に安全な範囲内で、照射位置への正確な超音波の照射を確認できる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波を発信する発信用トランスデューサ、超音波を受信する受信用トランスデューサ、及び超音波照射対象骨の目的とする位置に発信用トランスデューサが超音波を照射しているかを判別する判別手段を有し、前記判別手段は、目的とする位置に超音波を照射したときの、前記発信用トランスデューサから超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波の長軸方向の皮質骨を経由した伝搬距離に基づく伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサの受信時間が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信時間が一致する場合には、目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別し、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサ間は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間とに差が出る距離に設置されていることを特徴とする超音波検査装置である。
【0008】
また本発明は、前記判別手段は、前記基準値を判別条件決定手段から取得し、前記判別条件決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報に基づいて、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波伝搬予想時間を算出して、前記基準値を決定することを特徴とする超音波検査装置である。
【0009】
さらに本発明は、前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び設置部位を入力する距離情報及び設置部位入力手段によって、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0010】
さらに本発明は、前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサに各々設置されたトランスデューサ間の距離を測定する距離測定手段によって測定された距離情報を取得する距離情報取得手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報を、設置部位を入力する設置部位入力手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0011】
さらに本発明は、前記判別条件決定手段は、前記基準値を、式 t1=Y/v2+X/v1[Yは、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和;v2は軟部組織の伝搬速度;Xは皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離;v1は皮質骨の伝搬速度を表す。]によって算出するt1とすることを特徴とする、超音波検査装置である。
【0012】
さらに本発明は、前記受信用トランスデューサの受信時間は記録手段に記録され、前記判別手段は前記記録手段に記録された受信時間情報を取得し、前記基準値と前記記録手段に記録された受信時間が一致するか否かを判断することを特徴とする、超音波検査装置である。
【0013】
さらに本発明は、前記判別手段での判別結果を表示する表示部を備える、超音波検査装置である。
【0014】
さらに本発明は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間との差は、前記発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅より大きいことを特徴とする、超音波検査装置である。
【0015】
さらに本発明は、超音波照射対象骨の超音波照射位置検査方法において、発信用トランスデューサを超音波照射対象骨の照射位置付近の体表に設置して、超音波を発信する工程、前記超音波照射対象骨付近の体表に設置された受信用トランスデューサで、発信された超音波の超音波照射対象骨の長軸方向の皮質骨又は軟部組織を伝搬した超音波を受信する工程、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和によって定まる超音波照射対象骨の皮質骨の伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサで受信した受信信号が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信信号が一致する場合には、超音波照射対象骨の目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別する工程とを有する、超音波照射位置検査方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、骨に超音波を照射するための装置の設置位置を決める際に、骨の形状又は骨の部位による影響が従来方法に比べ減少し、かつ生体に安全な範囲内で、超音波の正確な照射位置を確認できる超音波検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(原理)
本発明は、超音波の照射位置を確認するものであり、骨に超音波を照射した場合に、照射した骨の特定の組織の長軸方向に伝わる伝搬波を受信用トランスデューサで受信し、その受信信号によって目的とする位置に照射できているかを確認するものである。
【0018】
筋肉や脂肪等の軟部組織や骨髄の超音波の伝搬速度は1500 m/s前後であるのに対し、皮質骨の伝搬速度は4080m/s程度と2倍以上速い。軟部組織や骨髄を伝搬する超音波は、同程度の時間で伝わるため、伝搬波が重なり合い、個別の情報を得ることが困難であるが、皮質骨を伝搬する超音波は、同じ距離を伝搬する軟部組織や骨髄に比べ、半分以下の時間で伝わるため、他の伝搬波と分離して情報を抽出することができる。このように、本発明は、皮質骨が他の部位に比べ伝搬速度が速いことを利用し、伝搬波の伝搬時間の違いから、伝搬波を分離することで得られる皮質骨の情報を用いて評価することにより、骨への照射を確認する。
【0019】
(判別方法)
皮質骨からの伝搬波の情報とは、具体的には、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間における受信信号の有無である。皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、受信信号が得られた場合、発信用トランスデューサより発信される超音波は骨に照射されていると判断する。皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、受信信号が得られない場合、発信用トランスデューサより発信される超音波は骨に照射されていないと判断する。
【0020】
受信信号の有無で判別するこの方法は、最も速い皮質骨からの伝搬波と皮質骨を介さない経路を伝搬し、より詳細には軟部組織のみからの伝搬波を分離可能な、以下の関係式(a)〜(c)が成り立つ条件で適用できる。発信用トランスデューサから発信した超音波が照射対象骨の皮質骨を経由して受信用トランスデューサに到達するまでの、伝搬波の伝搬予想時間(皮質骨の伝搬予想時間)をt1[s];軟部組織のみからの伝搬波の最短受信時間(軟部組織のみを伝搬するときの最短伝搬予想時間)をt2[s];軟部組織における、発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離(すなわち、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの厚み)及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離(すなわち、軟部組織における受信用トランスデューサから照射対象骨までの厚み)の和をY[m];皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離をX[m];皮質骨の伝搬速度をv1[m/s];軟部組織の伝搬速度をv2[m/s];発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅をT[s]とする。
(a)t1=Y/v2+X/v1
(b)t2=X/v2
(c)t2−t1>0
(c)においては、特に、t2−t1>Tが成立することが好ましい。皮質骨を介さない軟部組織のみを伝搬する最短経路からの伝搬波の情報と皮質骨を伝搬する経路からの伝搬波の情報を切り離して判別することが可能となるためである。
【0021】
(具体例)
上記関係式のうち、軟部組織の伝搬速度および皮質骨の伝搬速度は文献値を用いることができる。例えば、丸善(社)出版の超音波便覧や;(社)日本エム・イー学会ME技術教育委員会監修、南江堂出版、MEの基礎知識と安全管理;Journal of the Acoustical Society of America、64(2)423−457、S.A.Goss氏らの研究論文等に数値が挙げられている。発信超音波のバースト幅は使用する超音波の条件により決定される値を用いる。皮質骨以外で最も重要な伝搬経路である軟部組織の伝搬距離は、装置使用箇所に応じてあらかじめ登録済みの統計データから推測される値を用いる等、装置使用箇所に応じて決定される値を用いる。
【0022】
受信用トランスデューサは、装置使用箇所により決定された発信用トランスデューサの位置からみて、上記関係式(c)が成り立つトランスデューサ間距離を保つことが可能な位置に設置する。例えば、軟部組織の伝搬距離Yが5cm、発信用トランスデューサから発信される超音波のバースト幅Tが20μs、軟部組織の伝搬速度v2が1580m/s、及び皮質骨の伝搬速度v1が4080m/sである場合、式(c)が成り立つためには式(a)、(b)よりXが8.5cm以上と計算できる。したがって、軟部組織の伝搬距離Yが5cm、発信用トランスデューサから発信される超音波のバースト幅Tが20μsである場合、受信用トランスデューサは発信用トランスデューサから8.5cm以上離れた位置に設置する。さらに、t2−t1>Tが成り立つためには、15cm以上離れた位置に設置することが好ましいと判断できる。
【0023】
決定した両トランスデューサの位置より導き出される距離情報を基にXを、測定部位情報を基にYを決定し、上記関係式(a)より皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出する。このようにして算出した皮質骨からの伝搬波の予想受信時間における、実際の受信信号の有無で、照射対象の骨に照射されているか否かを判別する。
【0024】
(受信信号の特徴)
皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は、発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数あるいは発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数の信号である。
【0025】
受信信号の周波数は、発信用トランスデューサから発信する超音波に含まれる周波数の強度分布と、各周波数の超音波の皮質骨での減衰量によって決まる。発信用トランスデューサから発信する超音波が、周波数fHzのパルス超音波であるとき、その超音波に含まれる周波数は、fHzの周波数と、パルス超音波の立ち上がりと立ち下がりに含まれるfHz以外の周波数となる。
【0026】
周波数fHzのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波に含まれる周波数の強度分布を、図1に示す。周波数fHzのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波に含まれる周波数の強度分布は、周波数fHzに最も大きなピークを持ち、fHzを中心として、低周波数領域、高周波数領域それぞれにN−1個の小さなピークを持つ分布となる。
【0027】
周波数fHzの超音波の皮質骨での減衰量が少ない場合、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数の信号となる。一方、周波数fHzの超音波の皮質骨での減衰量が非常に多くほぼ減衰する場合、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に検知される受信信号は発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数の信号となる。
超音波の皮質骨での減衰量は、周波数と伝搬する皮質骨の距離に依存する。周波数が高くなるほど、また伝搬する皮質骨の長さが長いほど減衰量は大きい。
【0028】
本発明者らの実験によれば、長さが20cmの皮質骨を伝搬させる系において、100kHzまでは減衰量が少なく、受信信号は100kHzの信号となることを確認している。一方、200kHzでは減衰量が非常に多くほぼ減衰し、受信信号は200kHzより低い周波数の信号となることを確認している。同様に、長さが8cmの皮質骨において、200kHzまでは減衰量が少なく、受信信号は200kHzの信号となることを確認している。一方、250kHzでは減衰量が非常に多くほぼ減衰し、受信信号は250kHzより低い周波数の信号となることを確認している。
【0029】
したがって、両トランスデューサ間が20cmで、発信用トランスデューサから周波数100kHzの超音波を照射する場合、骨に照射されていると判断できるときは、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、周波数100kHzの受信信号が得られる。同様に、両トランスデューサ間が20cmで、発信用トランスデューサから周波数500kHzの超音波を照射する場合、骨に照射されていると判断できるときは、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間に、500kHzより低い周波数の受信信号が得られる。
【0030】
発信用トランスデューサから発信する超音波は、受信信号の周波数が、発信用トランスデューサから発信する超音波と同一の周波数となる領域の超音波と、発信用トランスデューサから発信する超音波より低い周波数となる領域の超音波のどちらでもよい。また、複数の周波数の超音波をタイミングを変えて発信してもよい。複数の周波数の超音波を発信する場合は、どちらか一つの周波数の超音波を照射して判別する場合よりも判別に用いる情報や判別に至るまでの段階が増えるため、骨への照射の検出精度は高くなる。
【0031】
(適用例1)
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。
大腿骨骨折治療への本発明の適用例を、図2に示す。
【0032】
発信側に関して、骨折部位3を治療する時には、医療機関で決定された装着位置に発信用トランスデューサ4を設置し、固定手段10を用いて大腿に装着する。固定手段10は、発信用トランスデューサ4を体表12に固定できるものであればよく、例えばベルト等を用いる。このとき、発信用トランスデューサ4と体表12との間に、超音波伝搬物質7を介在させる。超音波伝搬物質7は、超音波を伝搬するものであればよく、例えば水や超音波ゲル等が好適である。このとき発信用トランスデューサ4から発信される超音波は、治療用、治療用及び/又は診断用並びに検査用、あるいは検査用のみのいずれでもよい。検査用のみを発信する場合は、治療又は診断用装置と別装置の形態をとることができる。
【0033】
受信側に関して、大腿骨2付近の体表12の、発信用トランスデューサ4を設置した箇所とは別の箇所に、受信用のトランスデューサ5を固定する。受信用トランスデューサ5の固定は、発信用トランスデューサ4と同様、固定手段11を用いて固定する。受信用トランスデューサ5と体表12との間にも超音波伝搬物質7を介在させる。
【0034】
受信用トランスデューサ5は、骨を伝搬した超音波を受信できる場所かつ皮質骨からの伝搬波と軟部組織のみからの伝搬波の伝搬時間に違いが現れる、関係式(c)の成り立つ場所に設置する。トランスデューサの設置位置における軟部組織の厚みが薄い部位ほど、式(a)においてYの値が小さくなり、式(c)が成り立つために必要なXの値が小さくなる。つまり、トランスデューサの設置位置における軟部組織の厚みが薄い部位ほど、受信用トランスデューサ5は発信用トランスデューサ4と近い位置にも設置することが可能となるため、受信用トランスデューサ5の設置箇所の選択可能範囲が広くなる。超音波は直進性を持つことから、皮質骨からの伝搬波をより効率よく受信するためには、治療対象である骨に近い体表で、かつ治療対象骨の近位端や遠位端が好ましい。例えば、治療する骨が大腿骨であれば、大腿骨外側上顆付近、大腿骨内側上顆付近又は大腿骨大転子等となる。図2では、大腿骨外側上顆付近に受信用トランスデューサ5を設置している。他の例として、上腕骨を治療する際には、上腕骨外側上顆付近や上腕骨内側上顆付近に、受信用トランスデューサを設置するとよい。
【0035】
このように、受信用トランスデューサ5を皮質骨からの伝搬波とその他組織からの伝搬波の伝搬時間に違いが現れる場所に設置することによって、皮質骨内部を長軸方向に伝搬する超音波を確実に受信用トランスデューサ5で受信することができ、発信用トランスデューサの正確な照射位置の確認が可能となる。このとき、骨折位置への正確な照射を確認するタイミングは、発信用トランスデューサ4から発信可能な超音波が治療用及び/又は診断用並びに検査用である場合、治療開始前、治療中、治療終了後どのタイミングでも行うことができ、検査用のみである場合、治療開始前、治療終了後となる。
【0036】
(装置の構成1)
装置構成要素の一例を、図3、図4に示す。
検査装置本体6は、発信回路13、受信回路14、記録手段19及び判別手段21を有する制御手段15、電力供給手段16、距離情報及び設置部位入力手段17、判別条件決定手段20、表示部23を備えている(図3)。距離情報は、距離情報及び設置部位入力手段17を、図4に示すように設置部位入力手段26のみとし、距離情報手段として距離測定手段22より得られた情報を取得する距離情報取得手段18を備えても良い。
【0037】
実際の装置の動きを以下に記述する。まず、トランスデューサ間の距離を距離情報及び設置部位入力手段17により入力する場合(図3)、発信用トランスデューサ4と受信用トランスデューサ5を体表上に設置後、トランスデューサ間の距離及び設置部位を距離情報及び設置部位入力手段17により入力し、その情報に基づいて、判別条件決定手段20により判別条件を決定する。設置部位の情報は、軟部組織の厚み情報を取得するためのものである。あるいは、トランスデューサ間の距離を距離測定手段22及び距離情報取得手段18により取得する場合(図4)、発信用トランスデューサ4と受信用トランスデューサ5を体表上に設置後、設置部位のみを設置部位入力手段26により入力して、各トランスデューサ内に内蔵された距離測定手段22により測定された距離情報を距離情報取得手段18により取得し、設置部位及び距離情報に基づいて、判別条件決定手段20により判別条件を決定する。
【0038】
判別条件は、設置した両トランスデューサの距離を、超音波照射対象骨の皮質骨を超音波が伝搬する時間を基準値とし、実際に超音波を照射したときに、受信用トランスデューサの受信信号が、この基準値と一致する結果となれば、目的とする位置に照射していると判断するものである。
【0039】
距離情報及び設置部位入力手段17は、具体的には、トランスデューサ間の距離をものさし等で測定し、その数値をダイヤルあるいはボタン等により外部から入力する入力部と、設置部位をボタンなどで選択し、登録されている軟部組織の厚みの統計データより数値を選定あるいはあらかじめ調査した数値をダイヤルあるいはボタン等により外部から入力する入力部からなるもの等が挙げられる。設置部位の入力部とは、例えば、各部位ごとに外周10cm、15cm、20cmの軟部組織の統計データを予め登録しておき、設置部位が外周20cmの大腿部であるとき、「大腿部20cm」のボタンを選択することで、軟部組織の厚み情報を取得できる装置が挙げられる。
【0040】
距離測定手段22は、具体的には、光センサや磁気センサといった距離測定センサ等が挙げられる。距離情報取得手段18は、具体的には、距離測定手段22により得られた情報を取り込むための回路等が挙げられる。
【0041】
判別条件決定手段20は、図3の場合、距離情報及び設置部位入力手段17により得られた、超音波が皮質骨を伝搬するときの最短距離情報を基に、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出するための演算回路等が挙げられる。図4の場合、設置部位入力手段26及び距離情報取得手段18により得られた距離情報を基に、皮質骨からの伝搬波の予想受信時間を算出するための演算回路等が挙げられる。
【0042】
次に、電力供給手段16から電力を供給された制御手段15は、発信回路13に駆動信号を送る。駆動信号を受信した発信回路13はケーブル8を介して発信用トランスデューサ4に信号を送り、発信用トランスデューサ4は超音波を発信する。このとき受信側は、制御手段15が、発信回路13に駆動信号の発信あるいは停止のタイミングで、トリガ信号を受信回路14に送り、信号検知を開始する、あるいは、受信回路にある一定以上の電圧値を検知した時に受信回路14の信号検知を開始する。電力供給手段16としては、内蔵電源あるいは外部電源等が挙げられる。
【0043】
受信用トランスデューサ5より受信した超音波は電気信号に変換され、ケーブル9を介して受信回路14に送られる。検知した信号は記録手段19により記録され、判別条件決定手段20により決定された判別条件を基に、判別手段21を用いて発信用トランスデューサ4の位置が正しい照射位置であるかどうか判別される。その結果は表示部23により表示され、正しい照射位置であるか否かが分かるここで、記録手段19は、具体的には、半導体メモリ等が挙げられる。また表示部21は、具体的には、結果を文字で表示するLCDや点灯で表示するLED等が挙げられる。
【0044】
治療前の使用時で正しい照射位置であると判断した場合、その結果を表示部23で表示し、検査装置本体6が治療用及び/又は診断用並びに検査用超音波の発信が可能であるとき、すなわち治療及び/又は診断用装置も兼ね備えるときは、発信回路13は検査用の信号から治療又は診断用の信号に切り替え、治療又は診断を開始する。検査装置本体6が検査用のみの超音波発信が可能であるとき、すなわち治療及び/又は診断用装置ではないときは、治療又は診断用の装置に切り替え治療又は診断を開始する。
【0045】
(適用例2)
本発明の超音波の発信と受信の機構を二つの装置本体で実現した例を、図5に示す。
発信機構24は、発信用トランスデューサ4を介して検査用超音波並びに/又は治療及び/もしくは診断用超音波を発信可能であり、受信機構25は受信用トランスデューサ5を介して受信した超音波を電気信号に変換し、あらかじめ入力されている判別条件を元に、照射位置の適否を判定する。本形態では、各装置の小型化、発信機構からのノイズ除去によるS/Nの向上を図ることができる。
【0046】
(装置の構成2)
発信機構24と受信機構25を二つの装置で実現した場合の、発信機構の一例を図6に、受信機構の一例を図7に示す。
発信機構24は、発信回路13、制御手段15、電力供給手段16、発信用トランスデューサ4、及びケーブル8を備える。受信機構25は、受信回路14、制御手段15、電力供給手段16、距離情報及び設置部位入力手段17、記録手段19、判別条件決定手段20、判別手段21、表示部23、受信用トランスデューサ5、及びケーブル9を備える。距離情報入力手段として、図示しないが、図4と同様に、距離情報及び設置部位入力手段17を設置部位入力手段26に変更し、距離情報を取得するための、距離測定手段22及び距離測定手段22より得られた情報を取得する距離情報取得手段18を備えても良い。この場合、距離測定手段22は、発信機構24の発信用トランスデューサ4と受信機構25の受信用トランスデューサ5のそれぞれに備え、距離測定手段22が例えば光センサであれば、両トランスデューサ間の反射情報を距離情報取得手段18により取得する。
【0047】
それぞれの構成要素の作用などは、上述した実施例と同様で構成してもよい。この場合、受信側は、制御手段15が発信回路13に駆動信号を送る、あるいは停止するタイミングで、トリガ信号を受信機構と発信機構を繋ぐケーブル(図示せず)もしくは無線(図示せず)等により受信回路14に送ることで、受信回路14の信号検知を開始する。あるいは、受信回路にある一定以上の電圧値を検知した時に受信回路14の信号検知を開始することで、受信タイミングを容易に調製できる。また、治療前の使用時で正しい照射位置であると判断した場合、前記ケーブルもしくは無線等により信号を送り、発信機構へ検査用超音波から治療又は診断用超音波へ切り替えることができる。
【0048】
(照射条件)
治療用超音波には、骨折治療に適切な条件の超音波を用いる。例えば適切な超音波条件の一つとして、1.5MHzの周波数、200μsのバースト幅、1kHzの繰り返し周波数、超音波出力の時間平均と空間平均が30mW/cm2の超音波が好ましい。
【0049】
検査用超音波には、周波数は、どの周波数でもよく、伝搬波の受信が可能かつ生体に安全な範囲内の出力であればよい。上記の関係式(c)が成立し得る範囲内のバースト幅の超音波を用いることが好ましい。特には、MI(Mechanical Index)が1.0以下となるような生体への安全性を保てる範囲の出力で、骨の長軸方向の長さ及び軟部組織の厚さより、t2−t1>Tが取り得る範囲内である200μs以下のバースト幅の超音波が好ましい。MIとは、負音圧の最大値を周波数の平方根で割った式で定義される値で、負音圧により発生した空洞が消失する際の生体への影響の可能性を示す機械的指標である。
【0050】
(超音波照射位置の確認方法)
発信用トランスデューサの超音波照射位置を確認する例を述べる。正しく照射位置へ発信用トランスデューサ4が設置されている場合、超音波が骨折部位3に照射される。骨折部位3に照射された超音波は大腿骨2の長軸方向に伝わり、骨を伝搬した超音波を、受信用トランスデューサ5を用いて受信する。
【0051】
受信用トランスデューサ5により受信した信号の、判別手段21による判別方法の例を図8、図9、及び図10に示す。受信用トランスデューサ5で受信される信号が、皮質骨からの伝搬波の予想伝搬時間t1で検知された場合(図8、図9)、判別手段21は、発信用トランスデューサ4が正しく照射位置へ設置されていると判断し、その結果が情報として表示部23に示されることから、超音波が骨折部位3に正しく照射されていることが分かる。このときt1で検知される信号は、発信用トランスデューサ4により発信した超音波と同一周波数(図8)あるいは発信した超音波より低い周波数(図9)のどちらでもよい。一方、受信用トランスデューサ5で受信される信号が、皮質骨からの予想伝搬時間t1で検知されなかった場合(図10)、判別手段21は、発信用トランスデューサ4が正しく照射位置へ設置されていないと判断し、その結果が情報として表示部23に示されることから、超音波が骨折部位3に照射されていないことが分かる。この場合は、発信用トランスデューサの設置位置や向きを変えて、皮質骨からの伝搬波の予想伝搬時間t1で検知できるまで操作を繰り返す。
【0052】
骨折位置への正確な照射を確認するタイミングが治療又は診断前であれば、正しい照射位置であると判断した場合、発信用トランスデューサ4から照射する超音波を検査用超音波から治療用又は診断用超音波に変更あるいは検査用装置から治療又は診断用装置に変更し、治療又は診断を開始する。
【0053】
骨折位置への正確な照射を確認するタイミングが治療又は診断中であれば、本実施例では、治療又は診断用超音波を照射しながら、1kHzの繰り返し周波数即ち繰り返し周期1msのうち、治療目的の超音波を照射しない800μsの時間に、所定の間隔で検査用超音波を照射することで判別する。治療又は診断中に行う場合、発信用トランスデューサ4の位置が正しくないときに、表示部21により患者に発信用トランスデューサの設置が正しくないことを常時伝えることができ、発信用トランスデューサ4の位置を正すことにより、治療効果の向上が期待できる。
【0054】
治療又は診断中に位置の確認を行う場合について、本実施例を用いた例を具体的に述べる。発信用トランスデューサ4を駆動する電気信号を図11に示す。まず200μs幅の治療用超音波を発信し、その後400μs後にバースト幅Tの検査用超音波を発信する。次の治療又は診断用超音波を送る前の残りの時間に、骨経由の超音波伝搬時間遅れを考慮した判別区間を設けて、受信用トランスデューサ5で骨を伝搬した検査用超音波を検知し、発信用トランスデューサの位置の適否を判別する。検査用超音波は、治療又は診断用超音波を10回送るごとに1回送る方法も可能である。他の方式として、治療又は診断目的の超音波を照射しない前記800μsの間に例えば200μsの間隔で3回だけ検査用超音波を照射することもできる。
【0055】
治療用トランスデューサの位置を確認する判別条件として、患者ごとに対応する超音波伝搬特徴値を用いることもできる。例えば、骨密度や年齢ごとの伝搬速度の統計データを予め登録しておき、皮質骨からの予想伝搬時間t1を算出する際に用いる皮質骨の伝搬速度v1を患者ごとに選択する等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】周波数fのN個の波を繰り返し周波数1Hzで照射したときのパルス超音波のパワースペクトルの図である。
【図2】本発明の超音波検査装置を用いた実施態様の概略図である。
【図3】距離情報入力手段を備えた装置の構成要素の概略図である。
【図4】距離測定手段及び距離情報取得手段を備えた装置の構成要素の概略図である。
【図5】本発明の超音波診断装置を用いた別の実施態様の概略図である。
【図6】発信機構の概略図である。
【図7】受信機構の概略図である。
【図8】判別手段による判別方法例(骨に照射されている場合)の図である。
【図9】判別手段による判別方法例(骨に照射されている場合)の図である。
【図10】判別手段による判別方法例(骨に照射されていない場合)の図である。
【図11】本発明の発信用トランスデューサを駆動する電気信号の一態様の図である。
【符号の説明】
【0057】
1.軟部組織
2.大腿骨
3.骨折部位
4.発信用トランスデューサ
5.受信用トランスデューサ
6.検査装置本体
7.超音波伝搬物質
8.発信用ケーブル
9.受信用ケーブル
10.固定手段
11.固定手段
12.体表
13.発信回路
14.受信回路
15.制御手段
16.電力供給手段
17.距離情報及び設置部位入力手段
18.距離情報取得手段
19.記録手段
20.判別条件決定手段
21.判別手段
22.距離測定手段
23.表示部
24.発信機構
25.受信機構
26.設置部位入力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信する発信用トランスデューサ、超音波を受信する受信用トランスデューサ、及び超音波照射対象骨の目的とする位置に発信用トランスデューサが超音波を照射しているかを判別する判別手段を有し、
前記判別手段は、目的とする位置に超音波を照射したときの、前記発信用トランスデューサから超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波の長軸方向の皮質骨を経由した伝搬距離に基づく伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサの受信時間が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信時間が一致する場合には、目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別し、
前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサ間は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間とに差が出る距離に設置されていることを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記基準値を判別条件決定手段から取得し、
前記判別条件決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報に基づいて、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波伝搬予想時間を算出して、前記基準値を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び設置部位を入力する距離情報及び設置部位入力手段によって、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサに各々設置されたトランスデューサ間の距離を測定する距離測定手段によって測定された距離情報を取得する距離情報取得手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報を、設置部位を入力する設置部位入力手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記判別条件決定手段は、前記基準値を、式
t1=Y/v2+X/v1
[Yは、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和;v2は軟部組織の伝搬速度;Xは皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離;v1は皮質骨の伝搬速度を表す。]
によって算出するt1とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記受信用トランスデューサの受信時間は記録手段に記録され、前記判別手段は前記記録手段に記録された受信時間情報を取得し、前記基準値と前記記録手段に記録された受信時間が一致するか否かを判断することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項7】
前記判別手段での判別結果を表示する表示部を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間との差は、前記発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅より大きいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項9】
超音波照射対象骨の超音波照射位置検査方法において、
発信用トランスデューサを超音波照射対象骨の照射位置付近の体表に設置して、超音波を発信する工程、
前記超音波照射対象骨付近の体表に設置された受信用トランスデューサで、発信された超音波の超音波照射対象骨の長軸方向の皮質骨又は軟部組織を伝搬した超音波を受信する工程、
前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和によって定まる超音波照射対象骨の皮質骨の伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサで受信した受信信号が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信信号が一致する場合には、超音波照射対象骨の目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別する工程とを有する、超音波照射位置検査方法。
【請求項1】
超音波を発信する発信用トランスデューサ、超音波を受信する受信用トランスデューサ、及び超音波照射対象骨の目的とする位置に発信用トランスデューサが超音波を照射しているかを判別する判別手段を有し、
前記判別手段は、目的とする位置に超音波を照射したときの、前記発信用トランスデューサから超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波の長軸方向の皮質骨を経由した伝搬距離に基づく伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサの受信時間が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信時間が一致する場合には、目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別し、
前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサ間は、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間とに差が出る距離に設置されていることを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記基準値を判別条件決定手段から取得し、
前記判別条件決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報に基づいて、前記発信用トランスデューサから発信した超音波が超音波照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの超音波伝搬予想時間を算出して、前記基準値を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び設置部位を入力する距離情報及び設置部位入力手段によって、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報、並びに前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記判別決定手段は、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサに各々設置されたトランスデューサ間の距離を測定する距離測定手段によって測定された距離情報を取得する距離情報取得手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの距離情報を、設置部位を入力する設置部位入力手段から、前記発信用トランスデューサ及び前記受信用トランスデューサの各設置位置の情報を取得することを特徴とする、請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記判別条件決定手段は、前記基準値を、式
t1=Y/v2+X/v1
[Yは、軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和;v2は軟部組織の伝搬速度;Xは皮質骨の伝搬距離、軟部組織のみの最短伝搬距離、又はトランスデューサ間距離;v1は皮質骨の伝搬速度を表す。]
によって算出するt1とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記受信用トランスデューサの受信時間は記録手段に記録され、前記判別手段は前記記録手段に記録された受信時間情報を取得し、前記基準値と前記記録手段に記録された受信時間が一致するか否かを判断することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項7】
前記判別手段での判別結果を表示する表示部を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記発信用トランスデューサから発信した超音波が、照射対象骨の皮質骨を経由して前記受信用トランスデューサに到達するまでの伝搬予想時間と、軟部組織のみを伝搬して前記受信用トランスデューサに到達するまでの最短伝搬予想時間との差は、前記発信用トランスデューサから発信する超音波のバースト幅より大きいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の超音波検査装置。
【請求項9】
超音波照射対象骨の超音波照射位置検査方法において、
発信用トランスデューサを超音波照射対象骨の照射位置付近の体表に設置して、超音波を発信する工程、
前記超音波照射対象骨付近の体表に設置された受信用トランスデューサで、発信された超音波の超音波照射対象骨の長軸方向の皮質骨又は軟部組織を伝搬した超音波を受信する工程、
前記発信用トランスデューサと前記受信用トランスデューサの距離及び軟部組織における発信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離及び受信用トランスデューサから照射対象骨までの最短距離の和によって定まる超音波照射対象骨の皮質骨の伝搬予想時間を基準値とし、前記基準値と、前記発信用トランスデューサの発信による前記受信用トランスデューサで受信した受信信号が一致するか否かを判断し、前記基準値と前記受信信号が一致する場合には、超音波照射対象骨の目的とする位置に前記発信用トランスデューサが超音波を照射していると判別する工程とを有する、超音波照射位置検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−183453(P2009−183453A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26363(P2008−26363)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】
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