説明

超音波実装ツール及び電子部品の実装装置

【課題】この発明は電子部品を吸着保持するための吸引孔を超音波振動するホーンに腹の部分に容易に形成できるようにした超音波実装ツールを提供することにある。
【解決手段】ホーン22の一端に設けられホーンを所定方向に振動させる振動子23と、ホーンの振動の振幅が最大となる部分に設けられ下面に半導体チップCを吸着保持する吸引孔31の先端部が開口したツール部25を具備し、吸引孔は、ホーンの振動方向と交差する上下方向に沿って真直ぐに貫通して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はポリイミド製のテープ状部材などの被実装部材に半導体チップなどの電子部品を超音波振動を利用して圧着するために用いられる超音波実装ツール及びこの超音波実装ツールが用いられた電子部品の実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電子部品であるバンプ付きの半導体チップを被実装部材であるテープ状部材に実装する場合、この半導体チップに押圧荷重と超音波振動を与えて上記テープ状部材に実装する方法が知られている。つまり、半導体チップをテープ状部材の被接合面に所定の圧力で加圧しながら超音波振動を与えることで、テープ状部材の端子に半導体チップのバンプを溶融させて接合するようにしている。
【0003】
超音波振動を利用して半導体チップをテープ状部材に実装する実装装置は特許文献1に示されている。特許文献1に示された実装装置はホーンを有する。このホーンの長手方向の一端には振動子が接続されている。この振動子には超音波発振器が接続される。この超音波発振器は上記振動子にたとえば40kHzの高周波電圧を印加する。
【0004】
それによって、振動子が超音波振動するから、その振動波によって上記ホーンも超音波振動する。つまり、ホーンは長手方向である、横方向に超音波振動する。このホーンの振動を横振動とする。
【0005】
上記ホーンの振動の振幅が最大となる腹の部分の下面には電子部品としての半導体チップを吸着保持する保持部が突設されている。この保持部の下端面には吸引孔の一端が開口している。この吸引孔の他端は上記ホーンの上面の振動の振幅が最小となる節に対応する箇所に開口している。そして、上記吸引孔の他端にはチューブを介して吸引装置が接続される。
【0006】
したがって、上記吸引装置が作動すれば、上記保持部に開口した吸引孔に吸引力が生じるから、この吸引力によって保持部に半導体チップを吸着保持できるようになっている。しかも、吸引孔の他端が振動の振幅が最小となる節の部分に開口しているから、吸引孔にチューブを接続しても、振動エネルギのロスを少なくできるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3409683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1の構成によると、ホーンに形成された吸引孔は、一端を超音波振動するホーンの振動の腹の部分の下面に設けられた保持部に開口させ、他端を長音波振動するホーンの振動エネルギのロスを少なくするため、上記ホーンの上面の振動の節の部分に開口させている。そのため、上記吸引孔は上記ホーンにクランク状に屈曲して形成せざるを得ないことになる。
【0009】
しかしながら、上記ホーンは、通常、ホーン全体の振動エネルギのロスを少なくするために接続部分のない一体ものが用いられる。そのため、一体もののホーンに、一端がホーンの下面に開口し、他端が上面に開口した吸引孔をクランク状に屈曲させて加工形成するということは作業性などの点から容易なことではない。
【0010】
しかも、最近ではテープ状部材にたとえば1mm角程度の微小な半導体チップを実装することが要求されることがある。その場合、上記吸引孔の内径寸法を半導体チップの外形寸法よりも小さな1mm以下にしなければ、上記半導体チップを吸着保持することができない。
【0011】
しかしながら、全長にわたって内径寸法の小さな吸引孔をホーンに加工形成する作業は、たとえばドリルが損傷し易いなどのことがあって容易ではなく、しかも吸引孔が上述したようにクランク状に屈曲していると、その加工作業がさらに手間が掛かって困難になるということがある。
【0012】
この発明は、ホーンに吸引孔を、このホーンの上下方向に沿って真直ぐに形成することで、吸引孔の形成を容易に行なうことができるようにした超音波実装ツール及び電子部品の実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、被実装部材に電子部品を押圧荷重と振動とによって圧着するための超音波実装ツールであって、
ホーンと、
このホーンの一端に設けられホーンを所定方向に振動させる振動子と、
上記ホーンの振動の振幅が最大となる部分に設けられ下面に上記電子部品を吸着保持する吸引孔の先端部が開口したツール部を具備し、
上記吸引孔は、上記ホーンの振動方向と交差する上下方向に沿って真直ぐに貫通して形成されていることを特徴とする超音波実装ツールにある。
【0014】
上記ツール部の下面の上記吸引孔が開口する部分には、この吸引孔を他の部分よりも小径に開口させる絞り部が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記ホーンの振動の振幅が最大となる部分の上面には、上記ホーンの上面に対して気密な状態で摺動可能に接触した支持部材が設けられ、この支持部材には一端が上記ツール部の上面に開口した上記吸引孔に連通し他端が上記支持部材の側面に開口した連通孔が形成されていることが好ましい。
【0016】
この発明は、被実装部材に電子部品を押圧荷重と振動とによって圧着する電子部品の実装装置であって、
ツール部を有し、このツール部に上記電子部品を吸着保持する超音波実装ツールと、
この超音波実装ツールを上下方向に駆動可能に支持した支持手段と、
この支持手段によって支持された上記超音波実装ツールを下降方向に駆動して上記ツール部に保持された上記電子部品を上記被実装部材の圧着させる駆動手段を具備し、
超音波実装ツールは請求項1に記載された構成であることを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、一端がツール部に開口した吸引孔を、ホーンの振動の振幅が最大となる部分に、振動方向と交差する上下方向に沿って真直ぐに形成するため、上記吸引孔を上記ホーンに容易に加工することができる。しかも、電子部品のサイズに応じて細径化する場合であっても、吸引孔が真直ぐであれば、この吸引孔のツール部に開口する端部だけを細径化することが可能となるから、電子部品のサイズに応じた吸引孔の加工を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す実装装置の概略的構成を示す側面図。
【図2】図1に示す実装装置の正面図。
【図3】θ可動体に対するホーンの取付け構造を示す断面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図4を参照しながら説明する。
図1は実装装置の側面図で、図2は正面図である。この実装装置は図1に示すように装置本体1を備えている。この装置本体1にはYガイド体2がY方向に沿って設けられ、このYガイド体2にはY可動体3が矢印で示すY方向に駆動可能に設けられている。
【0020】
上記Y可動体3の前端面には上下方向に所定間隔で離間した一対のXガイド体4がX方向に沿って設けられている。このXガイド体4にはX可動体5が駆動可能に設けられている。このX可動体5は側面形状が逆L字状に形成されていて、垂直壁5aの外面には上記Xガイド体4に移動可能に係合する受け部6が設けられている。
【0021】
X可動体5の垂直壁5aの内面には図2に示すように上下方向に沿って一対のZガイド体7がX方向に所定間隔で離間して設けられている。このZガイド体7にはZ可動体8が矢印Zで示す上下方向に駆動可能に設けられている。このZ可動体8の上面と、上記X可動体5の水平壁5bの下面との間には複数、たとえば4つのばね11が張設されていて、上記Z可動体8を上昇方向に付勢している。
【0022】
上記X可動体5の水平壁5bの上面には駆動手段としてのZ駆動源であるシリンダ12が軸線を垂直にして設けられている。このシリンダ12のロッド13の先端には押圧部材14が設けられている。この押圧部材14は上記Z可動体8の上面に回転軸線を水平にして設けられたローラ15に当接している。したがって、上記シリンダ12のロッド13が突出方向に付勢されると、上記Z可動体8はばね11の復元力に抗して下降方向に駆動されるようになっている。
【0023】
上記Z可動体8の下部にはθ駆動源16が内蔵されている。上記Z可動体8の下端には上記θ駆動源16によって垂直線を中心にして回転駆動されるθ可動体17が設けられている。このθ可動体17には超音波実装ツール21が取り付けられている。この超音波実装ツール21は図1と図2に示すように角柱状のホーン22を有する。
【0024】
上記ホーン22の長手方向一端には振動子23が連結固定されている。この振動子23には図示しない発振器が接続されていて、この発振器からたとえば40kHzの高周波電圧が印加される。それによって、上記振動子23とともに上記ホーン22が超音波振動する。
【0025】
上記ホーン22の長手方向中央部の下面、つまり上記ホーン22に伝播する振動波による振動の振幅が最大となる部分、すなわち振動の腹の部分には矩形状のベース部24が設けられ、このベース部24の下面には上記ホーン22の幅方向に対して所定の幅寸法でツール部25が突出形成されている。
【0026】
上記ツール部25の下端面には後述する吸引孔31が開口形成されていて、この下端面に電子部品としての半導体チップC(図2に示す)が吸着保持される。この半導体チップCは、この実施の形態では上記ツール部25の下端面よりもわずかに小さな大きさである、たとえば1mm角程度の微小な大きさである。
【0027】
上記ホーン22の上面の上記ツール部25と対応する長手方向の中央部である、振動波の腹の部分には上記ベース24とほぼ同じ平面形状の荷重受け部26が突出形成されている。なお、上記ツール部25と荷重受け部26は、上記ホーン22と一体形成されている。
【0028】
上記荷重受け部26の上面には、幅寸法が上記ホーン22の幅寸法よりもわずかにちいさく、長さ寸法がホーン22よりも短い、帯板状のブラケット27が長手方向中央部の下面を接触させて設けられている。このブラケット27の両端部は図1に示すようにそれぞれねじ28によって上記ホーン22の横振動が最小となる、上記振動波の節の部分に連結固定されている。
【0029】
上記ブラケット27の両端部分と上記荷重受け部26に接触した部分との間の部分は、この部分の剛性をブラケット27の他の部分よりも低くする低剛性部27aに形成されている。上記低剛性部27aはブラケット27の幅方向に貫通する空洞部29によって形成されている。この空洞部29の内面のコーナ部は応力集中を避けるようR状に形成されている。
【0030】
したがって、上記ホーン22に上記ブラケット27を、上記荷重受け部26を介して固定するため、上記ブラケット27の両端部のねじ28をホーン22に締め込むと、ブラケット27の空洞部29が形成された低剛性部27aが弾性変形して湾曲する。
【0031】
そのため、ブラケット27の両端部分をホーン22にねじ28によって連結固定しても、このブラケット27の長手方向中央部分の下面と荷重受け部26の上面とは面接触状態が維持されることになる。
【0032】
上記ブラケット27は、上記荷重受け部26に下面を摺動可能に接触させた部分に対応する上面が上記θ可動体17の下面に取り付け固定される。したがって、上記超音波実装ツール21はX、Y、Z及びθ方向に駆動可能となっている。
【0033】
図3と図4は上記θ可動体17とブラケット27の連結構造を示す断面図である。すなわち、上記θ可動体17の下面には断熱部材30が複数の第1のねじ30aによって取付け固定されていて、この断熱部材30の下面には上記ブラケット27が複数の第2のねじ30bによって取付け固定されている。
【0034】
なお、上記ブラケット27、上記θ可動体17及び上記断熱部材30とで、この実施の形態の支持部材を構成している。
【0035】
上記ホーン22の振動の腹の部分、つまり下面にツール部25が設けられ、上面に荷重受け部26が設けられた部分には、下端を上記ツール部25の下面に開口させ上端を上記荷重受け部26の上面に開口させた上記吸引孔31が穿設されている。つまり、吸引孔31は上記ホーン22の上下方向に真直ぐに貫通して形成されている。
【0036】
図3に示すように、上記吸引孔31の内径寸法は下端部を除いてDに設定されている。この吸引孔31は、下端を上記ツール部25の下面に絞り部32を介して上記内径寸法Dよりも小さな内径寸法dで開口させ、上端を上記荷重受け部26の上面に上記内径寸法Dで開口させている。
【0037】
上記吸引孔31の先端部を除く部分の内径寸法Dは、上記半導体チップCの一辺の長さ寸法と同等或いは大きく設定されていて、上記ツール部25の下面に絞り部32を介して開口させた上記吸引孔31の先端部の内径寸法dは、ツール部25の下面に吸着保持される上記半導体チップCの一辺の長さ寸法よりもわずかに小さく設定されている。
【0038】
半導体チップCが1mm角の場合、上記吸引孔31は上述したようにツール部25の下面に1mm以下の内径寸法で開口させなければ、半導体チップCを吸着保持することができなくなる。その場合、上記ホーン22の上下方向に内径寸法が1mm以下の細径な吸引孔31を貫通させて加工する作業は容易ではない。
【0039】
しかしながら、上記吸引孔31は、先端部を上記ツール部25の下面に絞り部32を介して内径寸法が半導体チップCの一辺よりも小さな内径寸法dで開口させ、先端部以外の他の部分は半導体チップCの一辺よりも大きな内径寸法Dとなっている。
【0040】
そのため、上記吸引孔31を加工するには、まず、ホーン22の上面側から外形寸法がDのドリル(図示せず)によって内径寸法Dの吸引孔31を加工する。その際、内径寸法Dの吸引孔31の加工は、上記ホーン22の下面に貫通する直前で停止する。つまり、吸引孔31の下端に、この吸引孔31の下端を閉塞した部分を残した状態で内径寸法Dの吸引孔31の加工を停止する。
【0041】
ついで、吸引孔31の下端を閉塞した部分を、外径寸法がdのドリルによって孔あけ加工する。それによって、上記吸引孔31の先端部を、先端部以外の部分の内径寸法Dよりも小さな内径寸法dで開口させる、上記絞り部32が形成されることになる。
【0042】
このように、吸引孔31の先端部だけを絞り部32を介して小径な内径寸法dに形成するようにすれば、吸引孔32の全長に占める小径な内径寸法dの部分をわずかにできるから、吸引孔32全体を小径な内径寸法dで形成する場合に比べて容易に加工形成することができる。
【0043】
上記吸引孔32の上記荷重受け部26に開放した上端は、上記ブラケット27と上記断熱部材30の厚さ方向に内径寸法Dで貫通して形成された第1、第2の連通孔33a,33bの下端に連通している。この第1、第2の連通孔33a,33bの上端は上記θ可動体17の下面に下端を開口させた内径寸法がDの第3の連通孔33cに連通している。
【0044】
図4に示すように、上記第3の連通孔33cはL字状に屈曲し、その他端は上記θ可動体17の側面に開口している。この第3の連通孔33cの他端には図示しない吸引ポンプに接続された吸引管33(図1に示す)が接続されている。
【0045】
したがって、上記吸引ポンプが作動すれば、上記ホーン22の下面のツール部25に絞り部32を介して開口した吸引孔32に吸引力が生じるから、その吸引力によって上記ツール部25の下面に半導体チップCを吸着保持することができる。
【0046】
ここで、上記ブラケット27に形成された第1の連通孔33aは上記ホーン22に形成された吸引孔31よりも大径に形成されている。さらに、断熱部材30に形成された第2の連通孔33bは上記第1の連通孔33aよりも大径に、θ可動体17に形成された第3の連通孔33cは上記第2の連通孔33bよりも大径に形成されている。
【0047】
このように、順次連通する吸引孔31、第1の連通孔33a、第2の連通孔33b及び第2の連通孔33cの順に順次大径にすることで、ホーン22に対するブラケット27の取付け、ブラケット27に対する断熱部材30の取付け及び断熱部材30に対するθ可動体17の取付けに多少のずれが生じても、そのずれによって全体の吸引路の断面積が半導体チップCを吸引するための吸引孔31の断面積以下になるということがほとんどない。
【0048】
したがって、吸引孔31に生じる吸引力が低下して半導体チップCを確実に吸着できなくなるのを防止することができる。
【0049】
とくに、半導体チップCが1mm以下と小さい場合、吸引孔31の内径寸法は半導体チップCのサイズよりもさらに小さくなるから、吸引孔に31に対して第1の連通孔33aがずれたりすると、吸引孔に31に設定された吸引力が発生しない虞があるが、上述したように吸引孔31よりも第1の連通孔33aを大径に、第1の連通孔33aよりも第2の連通孔33bを大径に、さらに第2の連通孔33bよりも第3の連通孔33cを大径にしたことで、これら相互の接続部分に多少のずれが生じても吸引孔33に生じる吸引力が低下するのを防止することができる。
【0050】
図1と図2に示すように、上記超音波実装ツール21の下方にはステージ35が配設されている。このステージ35は、詳細は図示しないがX、Y、及びZ方向に駆動可能となっている。ステージ35の上面には被実装部材としてたとえばポリイミド製のテープ状部材などの基板36が供給載置される。
【0051】
位置決めされた基板36の上記半導体チップCを実装する位置に対し、上記超音波実装ツール21はツール部25が対向するよう位置決めされる。ついで、この超音波実装ツール21は下降方向に駆動される。このとき、上記振動子23には高周波電圧が印加される。
【0052】
それによって、ツール部25に吸着保持された半導体チップCはZ可動体8による加圧力と、ホーン22の横振動とによって上記基板36に圧着される。つまり、上記ホーン22が振動子23とともに超音波振動するから、上記半導体チップCに設けられたバンプが加圧力と超音波振動によって溶融して上記半導体チップCが上記基板36に実装される。
【0053】
半導体チップCを基板32に実装する際、ステージ35に図示しないヒータを設けて基板32を加熱すれば、半導体チップCの実装を効果的に行なうことができる。その際、ヒータの熱はホーン22に伝導するが、上記ホーン22とブラケット27との間には断熱部材30が設けられているから、この断熱部材30によってホーン22に連結されたθ可動体17に上記ヒータの熱が伝わるのが低減される。
【0054】
以上のように、上記構成の超音波実装ツール21によれば、ホーン22の超音波振動の振幅が最大となる腹の部分に、下端がツール部25の下面に開口し、上端が荷重受け部26に開口した吸引孔31を、ホーン22の上下方向に真直ぐに貫通させて形成した。
【0055】
そして、上記吸引孔31の上端を、θ可動体17に形成された第3の連通孔33cに、ブラケット27に形成された第1の連通孔33a及び断熱部材30に形成された第2の連通孔33bを介して連通させるようにした。
【0056】
そのため、上記吸引孔31はホーン22の上下方向に真直ぐに貫通するため、クランク状に屈曲させて形成していた従来に比べて加工作業を容易に、しかも精密に行なうことが可能となる。
【0057】
上記吸引孔31に吸引ポンプに連通する吸引管33を接続すると、この吸引管33によってホーン22の振動エネルギのロスが大きくなるということがある。
【0058】
しかしながら、上記吸引孔31はホーン22の振幅が最大となる腹の部分に形成されている。しかも、上記ホーン22の上面には、この上面に設けられた荷重受け部26に対してブラケット27を摺動可能に圧接させて設けるとともに、このブラケット27、断熱部材30及びθ可動体17に形成された第1乃至第3の連通孔33a〜33cを介して上記吸引孔31に連通する吸引管33を接続するようにした。
【0059】
そのため、ホーン22の振幅が最大となる腹の部分に吸引孔31を形成し、この吸引孔31に吸引管33を連通させるようにしても、ホーン22はブラケット27と摺接して振動する。つまり、吸引管33がホーン22とともに振動しないから、この吸引管33によってホーン22の振動エネルギにロスが生じるのを防止することができる。
【0060】
言い換えれば、ホーン22の振幅が最大となる腹の部分に、ホーン22の振動エネルギに大きなロスを生じさせることなく、吸引管33が接続される吸引孔31を、ホーン22の上下方向に真直ぐに貫通させて形成することができるから、吸引孔31をクランク状に屈曲させて形成していた従来に比べてその加工を容易に行なうことができる。
【0061】
さらに、ホーン22とブラケット27は、ブラケット27に設けた低剛性部27aを変形性させてホーン22の振動エネルギがロスしないよう、これら摺動可能に連結した。そのため、ホーン22の吸引孔31とブラケット27の第1の連通孔33aは、これらの内部に作用する半導体チップCを吸引するための吸引力が漏れないよう気密に接続することができる。つまり、ホーン22とブラケット27との上述した接続構造によって、半導体チップCを吸引する吸引力を高めることができる。
【0062】
上記吸引孔31は上記ツール部25の下面に絞り部32を介して開口している。つまり、上記吸引孔31をホーン22の上下方向に真直ぐに貫通させるようにしているため、吸引孔31の下端に絞り部32を形成し、この絞り部32を介してツール部25の下面に上記吸引孔31の先端部を他の部分よりも小径にして開口させることができる。
【0063】
すなわち、比較的簡単な加工によって上記吸引孔31の下端開口を除く部分は微細な半導体チップCの外形寸法よりも十分に大きな内径寸法Dとし、開口端である、先端部だけを上記絞り部32によって微細な半導体チップCを吸着保持できる微細な内径寸法dにすることができる。
【0064】
そのため、吸引孔31を全長にわたって微細な内径寸法にする場合に比べ、上記吸引孔31の加工形成を容易に、しかも精密に行なうことが可能となるばかりか、半導体チップCを吸着保持するための吸引力を低下させるということもない。
【0065】
また、上記実施の形態では超音波の振動の波長が1波長の場合について説明したが、波長は(1/2)N・λのときにも応用できる。なお、λは波長、Nは整数である。
【0066】
すなわち、超音波振動の最大振幅の位置に対応する位置にツール部25を設ける。このようにすることで、複数の最大振幅位置にそれぞれツール部25、吸引孔31及び第1乃至第3の連通孔33a〜33cを設けることで、複数の半導体チップCを各ツール部25で吸着して同時に基板36に実装することができる。
【符号の説明】
【0067】
17…θ可動体(支持部材)、21…超音波実装ツール、22…ホーン、23…振動子、25…ツール部、27…ブラケット(支持部材)、29…断熱部材(支持部材)、31…吸引孔、32…絞り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被実装部材に電子部品を押圧荷重と振動とによって圧着するための超音波実装ツールであって、
ホーンと、
このホーンの一端に設けられホーンを所定方向に振動させる振動子と、
上記ホーンの振動の振幅が最大となる部分に設けられ下面に上記電子部品を吸着保持する吸引孔の先端部が開口したツール部を具備し、
上記吸引孔は、上記ホーンの振動方向と交差する上下方向に沿って真直ぐに貫通して形成されていることを特徴とする超音波実装ツール。
【請求項2】
上記ツール部の下面の上記吸引孔が開口する部分には、この吸引孔を他の部分よりも小径に開口させる絞り部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の超音波実装ツール。
【請求項3】
上記ホーンの振動の振幅が最大となる部分の上面には、上記ホーンの上面に対して気密な状態で摺動可能に接触した支持部材が設けられ、この支持部材には一端が上記ツール部の上面に開口した上記吸引孔に連通し他端が上記支持部材の側面に開口した連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の超音波実装ツール。
【請求項4】
被実装部材に電子部品を押圧荷重と振動とによって圧着する電子部品の実装装置であって、
ツール部を有し、このツール部に上記電子部品を吸着保持する超音波実装ツールと、
この超音波実装ツールを上下方向に駆動可能に支持した支持手段と、
この支持手段によって支持された上記超音波実装ツールを下降方向に駆動して上記ツール部に保持された上記電子部品を上記被実装部材の圧着させる駆動手段を具備し、
超音波実装ツールは請求項1に記載された構成であることを特徴とする電子部品の実装装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−243653(P2011−243653A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112418(P2010−112418)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【出願人】(592141488)アスリートFA株式会社 (96)
【出願人】(303019846)ESB株式会社 (13)
【Fターム(参考)】