説明

超音波探傷方法及び超音波探傷装置

【課題】センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、3次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようにした超音波探傷方法および超音波探傷装置を提供することにある。
【解決手段】表示部103は、超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて音線追跡法により計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、超音波探傷データまたは3次元形状データの表示位置を移動して両者を重ねて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査技法の一種である超音波探傷法及び超音波探傷装置に係り、特に、アレイ型超音波センサを用いた超音波探傷方法及び超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種構造材などを検査対象とした超音波探傷法では、フェーズドアレイ法や開口合成法などに代表されるように、検査対象内部を高精度に短時間で画像化して検査する探傷方法が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
フェーズドアレイ法は、圧電振動素子を複数個配列した、いわゆるアレイ型超音波センサを使用し、各圧電振動素子から送信される超音波の波面が干渉し合成波面を形成して伝播していくという原理に基づいたものである。従って、各圧電振動素子の超音波送信タイミングを遅延制御し、それぞれのタイミングをずらすことで、超音波の入射角度が制御でき、超音波を集束させることができる。
【0004】
また、超音波の受信に際しても、各圧電振動素子で受信した反射超音波をずらして加算することで、送信時と同様、超音波の受信入射角度を制御したり、焦点を合わせて超音波を受信したりすることができる。
【0005】
このフェーズドアレイ法としては、一次元アレイセンサの圧電振動子を直線的に走査するリニアスキャン方式や、超音波の送信と受信方向を扇状に変化させるセクタスキャン方式が一般的に知られている。また、圧電振動子が格子状に並んだ二次元アレイセンサを用いると、3次元的に任意の位置に焦点を合わせることができ、検査対象に合わせたスキャン方式が可能となる。いずれの方式の場合も、超音波センサを動かすことなく超音波を高速にスキャンしたり、超音波センサを交換することなく超音波の入射角度や集束深さの位置を任意に制御したりすることができ、従って高速且つ高精度の検査が可能な技術である。
【0006】
また、開口合成法は、検査対象内に波動が広く拡散するようにして超音波を送信し、反射超音波信号を受信した場合、受信された反射超音波の音源となる欠陥の位置は、超音波を送信し受信した圧電振動素子の位置を中心とし、反射超音波の伝播距離を半径とした円弧上に存在するという原理に基づいたものである。このため、圧電振動素子の位置を順次変えて超音波の送信と受信を行い、各位置における受信波形を、電子計算機上で演算して円弧状に広げることにより、超音波反射源となる欠陥の存在位置に前記の円弧の交点が集中し、欠陥の位置を特定することができる。なお、電子計算機での演算処理内容については、非特許文献1に記載されている。
【0007】
複数の圧電振動素子を配列したセンサを用いるこれらの方法では、センサを移動しなくても欠陥の反射超音波信号を3次元的に取得することが可能であるが、反射超音波信号から3次元的な反射位置を特定するためには、空間的に位置の異なる複数の反射強度分布の二次元画像から推定する方法や、反射強度分布を3次元データに変換した後に立体表示するなどして推定する。
【0008】
例えばフェーズドアレイ法のリニアスキャンやセクタスキャンの場合には、既知の走査ピッチに対応した複数の二次元反射強度画像が取得できるため、画面上で順次画像を切り替えて表示することで、反射波が出現する方向を特定することができる。しかし、上記以外の任意の3次元的なスキャンに対してはこの方法では限界がある。
【0009】
このような場合には、複数の方向からの反射超音波信号に内挿処理などを施して3次元格子状のデータを作成し、これをボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングといった方法で画像表示したりする技術が、近年の計算機の進歩により可能になってきている。また、格子状のデータに変換せずに3次元的な点群として画像表示する方法もある。いずれも3次元探傷データとして保存しているため、測定後に検査者が任意の方向から3次元探傷データを確認することができる(例えば、非特許文献2,3参照)。
【0010】
しかし、反射強度分布のピークが検査対象の端面や境界面での反射によるものか、欠陥での反射によるものかを、これらの3次元探傷データだけから判断するのは難しい。特に複雑な形状の検査対象の場合には、形状に依存する反射超音波信号(形状エコー)が多数現れるため、熟練者でも判別は困難である。このため、検査対象の3次元形状データを3次元探傷データと一緒に表示するソフトウェアが開発されている。この二つのデータを重ね合わせて比較することにより、形状エコーと欠陥からのエコー(欠陥エコー)の判別が容易となる。3次元形状データとしては別途汎用のCAD(Computer Aided Design)で作成したデータを読込んで用いる場合が多い(例えば、非特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】近藤倫正、大橋由昌、実森彰郎 共著 ディジタル信号処理シリーズ12巻 「計測・センサにおけるディジタル信号処理」 143頁〜186頁 1993年5月20日 昭晃堂発行
【非特許文献2】馬場淳史、北澤聡、河野尚幸、安達裕二、小田倉満、菊池修:“3次元超音波探傷システム「3D Focus-UT」の開発”、日本保全学会 第5回学術講演会 要旨集、155 (2008)
【非特許文献3】Potts, A. ; McNab, A.; Reilly, D.; Toft, M., “Presentation and analysis enhancements of the NDT Workbench a software package for ultrasonic NDT data”, REVIEW OF PROGRESS IN QUANTITATIVE NONDESTRUCTIVE EVALUATION: Volume 19. AIP Conference Proceedings, Volume 509, pp. 741-748 (2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、通常は3次元探傷データと3次元形状データは別々の座標系で作られているため、これらを重ねて表示する場合には、必ず適切な位置に3次元探傷データまたは3次元形状データを移動させ、位置合せ補正をする必要がある。この補正が正しく行われないと3次元探傷データと3次元形状データの相関が確認できず、形状エコーと欠陥エコーの識別ができない。従来は、検査者が表示装置に対し、センサと検査対象の相対位置に関する数値情報を基に、3次元探傷データや3次元形状データの座標値を変更する等して、識別可能な状態になるまで補正作業を繰り返し行っていたが、これらの作業には多大な時間を要するという問題があった。
【0013】
ここで、特に、センサと検査対象の相対位置に関する数値情報が無い場合に、如何にして位置合せを行うかが問題となる。例を挙げると、沸騰水型原子炉(BWR)の圧力容器の外面から内部の溶接部を検査するような場合である。BWRの圧力容器内の中央部には、上部の気水分離器や蒸気乾燥器を支えるための炉心シュラウドと呼ばれる円筒形の構造物が、炉心を取り囲むように設けられている。炉心シュラウドは、圧力容器下部でシュラウドサポートというリング状の構造物で支えられており、更にシュラウドサポートは圧力容器に溶接されて固定されている。近年、国内で稼動中の軽水炉の高経年化対策が課題となってきているが、その中で炉内構造物の超音波による非破壊検査の重要性も増している。例えば、シュラウドサポートの場合には、圧力容器との溶接部にひび割れ等が発生していないかを検査する必要がある。通常、圧力容器内は軽水で満たされており、更に炉内構造物が密に設置されているため、圧力容器の内側からの検査は困難である。そのため、圧力容器の外面からの超音波検査が考案されている。この際、圧力容器外面にセンサを設置して取得した3次元探傷データを、圧力容器およびシュラウドサポートのCADデータと一緒に表示させると、形状エコーと欠陥エコーとの判別が容易となり、検査の効率が格段に向上することは既に述べた通りである。双方のデータの位置合せは、少なくともmm精度で行う必要があるが、巨大な圧力容器内部の溶接部に対するセンサの設置位置をmm精度で精密に認識することは事実上不可能である。
【0014】
本発明の目的は、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、3次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようにした超音波探傷方法および超音波探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した3次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元超音波探傷データまたは前記3次元形状データの表示位置を移動して表示するようにしたものである。
かかる方法により、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、3次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようになる。
【0016】
(2)上記(1)において、前記3次元超音波探傷データまたは前記超音波伝播データとの組合せについて、両者のずれ量を算出し、該ずれ量が最小となる前記超音波伝播データを求め、この結果に基づいて、前記3次元超音波探傷データまたは前記3次元形状データの表示位置を移動して表示するようにしたものである。
【0017】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記3次元超音波探傷データ及び前記超音波伝播データとから相互相関関数Rを算出し、該相互相関関数Rからパワースペクトル密度関数を算出して、前記ずれ量を算出し、前記3次元超音波探傷データまたは前記超音波伝播データとの組合せについて、前記ずれ量を算出し、該ずれ量の平均値が最小となる前記超音波伝播データを求めるようにしたものである。
【0018】
(4)上記(3)において、好ましくは、求められた前記超音波伝播データの超音波入射位置及び入射方向が、前記3次元形状データの超音波入射位置及び入射方向と一致するように、前記3次元超音波探傷データあるいは前記3次元形状データを相対的に平行移動及び回転移動して、両者を重ねて表示するようにしたものである。
【0019】
(5)上記目的を達成するために、本発明は、超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した2次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元形状データまたは前記2次元超音波探傷データの相対的な位置を移動し、前記2次元超音波探傷データを、前記3次元形状データと重ねて立体的に表示するようにしたものである。
かかる方法により、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、2次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようになる。
【0020】
(6)上記目的を達成するために、本発明は、超音波センサで受信した複数の
超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した2次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元形状データまたは前記2次元超音波探傷データの相対的な位置を移動し、前記2次元超音波探傷データを、前記3次元形状データの切断面における輪郭線と重ねて表示するようにしたものである。
かかる方法により、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、2次元探傷データと3次元形状データの切断面の位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようになる。
【0021】
(7)上記(1)〜(3)において、好ましくは、前記超音波伝播データは、前記検査対象の前記3次元形状データに基づいて、音線追跡法によって計算されるものである。
【0022】
(8)上記目的を達成するために、本発明は、複数の圧電振動子を備えた超音波センサと、前記超音波センサの各圧電振動子に送信信号を供給するパルサーと、前記超音波センサの各圧電振動子素子から受信信号を入力するレシーバと、前記各圧電振動子毎に異なった遅延時間を前記送信信号と前記受信信号に設定する遅延制御部と、前記超音波センサで受信した超音波波形を収録するデータ収録部と、前記データ収録部で収録した波形から探傷データを生成する画像処理用計算機と、検査対象の3次元形状データを前記探傷データとを同時に表示させる表示部と、前記3次元形状データに基づいて超音波伝播データを計算するための解析用計算機を有する超音波探傷装置であって、前記表示部は、前記3次元形状データと前記探傷データの相対的な表示位置を自動的に移動する位置補正機能を備えるようにしたものである。
かかる構成により、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、3次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようになる。
【0023】
(9)上記(8)において、好ましくは、前記超音波センサに固定され、前記超音波センサを任意の方向に移動させるための移動手段を備え、前記探傷データを前記3次元形状データと重ねて表示させるようにしたものである。
【0024】
(10)上記(8)において、好ましくは、前記超音波センサに固定され、前記超音波センサを任意の方向に移動させるための移動手段を備え、前記探傷データを前記3次元形状データの切断面おける輪郭線と重ねて表示させるようにしたものである。
【0025】
(11)上記(8)において、好ましくは、前記超音波伝播データは、前記3次元形状データに基づいて、音線追跡法によって計算されるものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合においても、3次元探傷データと3次元形状データの表示位置合わせを可能にし、欠陥エコーと形状エコーの識別を迅速にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の全体構成について説明する。
【図2】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データを得る場合のスキャン方式の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データを得る場合のスキャン方式の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データの表示例の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置を用いた自動位置合わせ方法の内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の自動位置合わせ方法にて用いる測定波形データと伝播解析データの説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の自動位置合わせ方法にて用いるパワースペクトル密度関数の説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による超音波探傷装置における2次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による超音波探傷装置における2次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイ型超音波センサとその移動装置の説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイ型超音波センサとその移動装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1〜図9を用いて、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1〜図6を用いて、本実施形態による超音波探傷装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の全体構成について説明する。図2及び図3は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データを得る場合のスキャン方式の説明図である。図4は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データの表示例の説明図である。図5及び図6は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置における3次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【0029】
本実施形態の超音波探傷装置は、検査対象100に超音波を入射するアレイ型超音波センサ101と、送・受信部102と、受信信号及び探傷画像を表示する表示部103とで構成されている。
【0030】
アレイ型超音波センサ101は、図示のように、基本的には超音波を発生し受信する複数個の圧電振動素子104で構成される。アレイ型超音波センサ101は、検査対象100の探傷面に設置された後、送・受信部102から供給される駆動信号により超音波105を発生し、これを検査対象100内に伝播させ、これにより現れる反射波を検知して受信信号を送・受信部102に入力する働きをする。図ではアレイ型超音波センサ101を直接検査対象100に接触させているが、超音波105の入射角を変えるための、超音波が透過する材質で作製されたくさびを介して検査対象100に接触させても良い。
【0031】
送・受信部102は、アレイ型超音波センサ101により超音波の送信と受信を行うものである。送・受信部102は、計算機102Aと、遅延時間制御部102Bと、パルサー102Cと、レシーバ102Dと、データ収録部102Eとを備える。パルサー102Cは、駆動信号をアレイ型超音波センサ101に供給し、これによりアレイ型超音波センサ101から入力される受信信号をレシーバ102Dが処理するようになっている。
【0032】
計算機102Aは、基本的には、CPU102A1と、RAM102A2と、ROM102A3より構成されている。ROM102A3には、CPU102A1を制御するプログラムが書き込まれている。CPU102A1は、ROM102A3に書き込まれたプログラムに従って、データ収録部102Eから必要とされる外部データを読込んだり、あるいは又RAM102A2との間でデータの授受を行ったりしながら演算処理し、必要に応じて処理したデータをデータ収録部102Eへ出力する。
【0033】
また、CPU102A1は、遅延時間制御部102Bとパルサー102Cとレシーバ102Dとを制御し、必要な動作が得られるようにするものである。遅延時間制御部102Bは、パルサー102Cから出力される駆動信号のタイミングと、レシーバ102Dによる受信信号の入力タイミングの双方を制御し、これによりフェーズドアレイ方式によるアレイ型超音波センサ101の動作が得られるようにする。
【0034】
ここにいうフェーズドアレイ方式によるアレイ型超音波センサ101の動作とは、超音波105の焦点深さと入射角度106を制御して超音波を送信し受信する動作のことであり、これによりレシーバ102Dからデータ収録部102Eに受信信号が供給されることになる。
【0035】
先に述べたように、フェーズドアレイ方式は遅延時間を変化させることにより様々なスキャンが可能である。2次元探傷データを取得する場合には超音波105を平行に移動させるリニアスキャン方式や、超音波105をセクタ107状に動かすセクタスキャン方式が良く知られている。
【0036】
3次元探傷データの場合には、例えば図2に示したように、セクタ107を基本単位として、セクタ107を中心軸の周りに一回転させるスキャンや、図3に示したように、団扇の様にセクタ107を煽るスキャン方式がある。この他にも、検査対象100の形状に応じて様々なスキャン方式が設定可能である。
【0037】
これらのスキャン方式によって受信された信号は、データ収録部102Eに送られ、収録データとして収録されると同時に、計算機102Aに送られる。これにより、計算機102Aは、各圧電振動素子で得られた波形を遅延時間に応じて合成処理し、各超音波の入射角度ごとの波形に適当な内挿処理を施し、ピクセルと呼ばれる2次元正方格子を単位としたピクセル形式の2次元探傷データや、ボクセルと呼ばれる3次元立方格子を単位としたボクセル形式の3次元探傷データを作成し、それを画像化し表示部103に表示させる動作を実行する。
【0038】
表示部103は、2次元探傷データを表示する2次元表示画面103Bと、3次元探傷データを表示する3次元表示画面103Cと、および各圧電振動子の波形信号を表示する波形表示画面103Aとを備えている。なお、図1では表示部103は一つしか示していないが、波形表示画面103Aと2次元表示画面103B、および、3次元表示画面103Cは、複数の表示部に分担させて表示してもよい。
【0039】
図4に示すように、表示部103上の3次元表示画面103Cには、3次元探傷データ401が表示されるが、このとき、計算機102Aに接続されたマウス102Fやキーボード102Gを用いた入力により、任意の表示寸法で表示することができる。更に、マウス102Fとキーボード102Gからの入力により表示色や透明度も任意に変えることができる。表示色は反射強度に応じて変えることが可能である。この場合の表示色パターンは複数準備してあり、検査者が用途に応じて選択できる。
【0040】
なお、これらの3次元描画アルゴリズムは、例えばグラフィックス・アプリケーション向けの業界標準のグラフィックス・アプリケーション・プログラミング・インタフェース(グラフィックスAPI)であるOpenGL(登録商標)やDirectX(登録商標)というライブラリの中で実現されており、これらのグラフィックスAPIをプログラム中で用いて、表示する物体の形状や視点、表示位置などの必要な情報を与えれば3次元表示画面103C上の任意の位置に、任意の色、透明度、大きさで3次元形状を描画することが容易にできる。
【0041】
また、図5に示すように、3次元表示画面103Cには、検査対象100の形状を表す3次元形状データ501を、3次元探傷データ401と同時に表示させることができる。検査者は、マウス102Fやキーボード102Gを用いた入力により3次元形状データ501の表示色や透明度も任意に変えることができる。更に、検査者は、キーボード102Gからの数値入力、あるいはマウス102Fで3次元表示画面103C上をドラッグすることにより、3次元形状データ202を任意の位置に平行移動もしくは回転移動させることもできる。また、必要に応じて検査者が表示、非表示を切り替えることができるため、3次元形状データ501と3次元探傷データ401が重なっていても検査者が見易いような表示にすることができる。
【0042】
3次元形状データとして検査対象100のCADデータが存在している場合には、計算機102Aの外部からこれを読込んで、表示させることができる。CADデータのフォーマットは、市販のCADソフトウェアで入出力可能なデータ形式となっている。例えば多くのCADソフトウエァで読込み・出力可能なSTL(STereoLithographyあるいはStandard Triangulated Language)形式を使用する。STL形式は、物体の表面を多数の三角形の集合で表現したものであり、STLファイル内にはこれらの三角形の面法線ベクトルと3つの頂点の座標値が書き込まれている。グラフィックスAPIを用いてSTL形式のファイルから3次元形状データ501を表示させることは、複数の三角形を描画することで容易に実現できる。
【0043】
図6に示すように、通常は、3次元探傷データ401と3次元形状データ501の座標系は異なるため、これらを重ねて表示した初期状態では双方は、全く異なる位置に表示される。キーボード102Gからの数値入力やマウス102Fによる操作により、検査者が試行錯誤で3次元探傷データ401と3次元形状データ501が所望の位置になるように調整することもできる。しかし、この作業には時間と手間がかかるため、本発明による自動位置合せ処理を用いると作業が非常に容易となる。また、前述のBWRの圧力容器外面からの検査のように、センサと検査対象の相対位置に関する情報が無い場合でも自動的に位置合せすることが可能である。
【0044】
ここで、図6に示した3次元探傷データ401と3次元形状データ501を自動位置合せする処理の詳細を説明する。
【0045】
一般に、二つのデータの位置を合せるためには、基準座標系を設定し、平行移動と回転移動を組み合わせて行う。基準座標系は、いずれかのデータの座標系をとることが多いが、任意の座標系を設定しても構わない。ただし、二つのデータのスケールは一致しているものとする。平行移動には移動量と移動方向を示すベクトルを、回転移動には回転軸と回転角を、それぞれ決定する必要がある。本発明による自動位置合せ処理では、3次元形状データ上501の座標系において、測定と同じ走査パターンで、探傷領域をカバーするように超音波入射点や超音波入射方向を順次変化させた超音波伝播解析(以下、伝播解析)を実施し、得られた複数の伝播解析データと、測定波形データを伝播経路毎に順次比較し、3次元探傷データ全体401に渡って、もしくは指定した一部の領域において、測定波形データと伝播解析データが平均的に最も一致する組み合わせを見つけ出し、その組み合わせの伝播解析に用いた超音波入射点や超音波入射方向に基づいて、3次元探傷データ401か3次元形状データ501を相対的に移動させるものである。伝播解析は、音線追跡(レイトレース)解析とも呼ばれて広く知られている方法であり、検査対象の形状や材質の情報をパラメータとし、幾何光学的理論に基づいて超音波の反射、屈折を計算し、超音波の伝播経路や伝播時間を求めるものである。
【0046】
また、伝播解析データは、音線追跡解析以外に有限要素法,境界要素法などからも得ることが可能である。例えば、有限要素法で検査対象100内の音場の時間変化を求めておき、各圧電振動素子104の位置での振幅の時間変化を、測定時と同じタイミングでずらして加算することで、フェーズドアレイ方式で得られる波形データを再現することが可能である。
【0047】
次に、図7〜図9を用いて、本実施形態による超音波探傷装置を用いた自動位置合わせ方法について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置を用いた自動位置合わせ方法の内容を示すフローチャートである。図8は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の自動位置合わせ方法にて用いる測定波形データと伝播解析データの説明図である。図9は、本発明の第1の実施形態による超音波探傷装置の自動位置合わせ方法にて用いるパワースペクトル密度関数の説明図である。
【0048】
最初に、解析用計算機109によって計算した第一の伝播解析データ108を計算機102Aで実行しているプログラム内に読み込む(ステップS1)。解析は計測制御用の計算機102Aに実行させても良い。伝播解析データ108には、該当する伝播経路上で反射や屈折が起こる位置や方向、入射位置からの距離、あるいは入射からの時間等が含まれている。
【0049】
次に、第一の測定波形データをプログラム内に読み込む(ステップS2)。
【0050】
ここで、図8に、測定波形データ801と伝播解析データ108の一例を示す。測定波形データ801のピーク位置の伝播距離をd1’とし、伝播解析データ108のピーク位置の伝播距離をd1とすると、図8の両波形801,108のピーク位置は一致しておらず、ピークのずれ量Δdが存在するが、実測と解析の超音波入射位置や超音波伝播方向が一致する場合には、ピーク位置も一致するか非常に近くなる。
【0051】
測定波形データ801のピーク位置の伝播距離d1’は、図6の3次元探傷データ401において、超音波入射位置In’からある欠陥までの距離d1’に相当し、伝播解析データ108のピーク位置の伝播距離d1は、図6の3次元形状データ501において、超音波入射位置Inから欠陥が生じた位置までの距離d1に相当する。ここで、伝播距離は超音波入射位置から欠陥までの距離と音速に基づいて算出されるが、温度が変わると音速も変わるため、測定時の温度と測定開始前に設定した温度が若干相違すると、測定波形データ801のピーク位置の伝播距離d1’と、伝播解析データ108のピーク位置の伝播距離をd1とがずれることになる。また、アレイ型超音波センサ101の設置誤差によってもずれが生ずる。なお、ずれ量は僅かなものである。
【0052】
このピークのずれ量Δdは、次式(1)の相互相関関数Rから求めることができる(ステップS3)。ここで、伝播解析データ108と測定波形データ801をそれぞれfおよびgとすると、これらのフーリエ変換FおよびGを用いて、相互相関関数Rは次式(1)で計算される。

R=FT−1{F*G} …(1)

ここでFT−1{ }は逆フーリエ変換を表す。またF*はFの複素共役である。伝播解析データ108と測定波形データ801は、通常は離散的な数値データであるため、計算機102Aで相互相関関数Rを計算する際には離散フーリエ変換を行う。相互相関関数Rは複素数として計算されるため、実部と虚部を持つが、ピークのずれ量Δdの計算には相互相関関数Rのパワースペクトル密度関数|R|を用いる。
【0053】
ここで、図9に、伝播解析データ108と測定波形データ801に対して計算したパワースペクトル密度関数|R|を示す。図9の横軸のデータ点番号の中央値901からパワースペクトル密度関数|R|のピーク値までの点数nが、図8のずれ量Δdに対応している(ステップS4)。すなわち、伝播解析データ108と測定波形データ801を相対的にn点だけずらすと、最もピーク位置が一致する。この例では、測定波形データ801の顕著なエコー信号は一つだけであるが、複数ある場合はRのピークも複数現れる。逆に、伝播解析データ108に複数のピークがある場合でも同様である。伝播解析データ108と測定波形データ801のいずれかにピークが存在しない場合にはパワースペクトル密度関数|R|は計算しない。パワースペクトル密度関数|R|にピークが複数ある場合には、必ずしも正しいピークのずれ量Δdが求まる保証は無いが、この問題を回避するために代表的な複数の測定波形データに対してステップS2からステップS4を繰り返して夫々のピークのずれ量Δdを計算し(ステップS5)、それらの平均値davを算出する(ステップS6)。好ましくは全てのデータについてずれ量Δdを求めることが望ましい。
【0054】
このようにして第一の伝播解析データの平均値davを算出する。
【0055】
引き続き、第二、第三の伝播解析データに対してもステップS2からステップS6を繰り返し、伝播解析データに対して平均値davを算出する(ステップS7)。そして、これらの平均値davが最小となる伝播解析データを探し出し(ステップS8)、その伝播解析データを計算する際に設定した超音波入射位置と超音波入射方向を求める(ステップS9)。
【0056】
最後に、ステップS9で求めた超音波入射位置と超音波入射方向に基づいて、3次元探傷データもしくは3次元形状データを移動させ、位置合せを行うと、図5に示した如く3次元表示画面103Cに表示される(ステップS10)。
【0057】
すなわち、例えば、平均値davが最小となる伝播解析データが、図6の3次元形状データ501において、超音波入射位置Inから超音波の入射方向R1で伝播距離d1の3次元形状データであったとすると、最初に、図6の3次元形状データ501の超音波入射位置Inと、図6の3次元探傷データ401の超音波入射位置In’が一致するように、例えば、3次元探傷データ401を平行移動する。次に、図6の3次元形状データ501における、超音波入射位置Inから欠陥が生じた位置に対する超音波の入射方向R1が、図6の3次元探傷データ401における、超音波入射位置In’からある欠陥に対する入射方向R1’と一致するように、例えば、3次元探傷データ401を回転移動する。これにより、3次元探傷データと3次元形状データとの自動位置合せが完了する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した3次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて音線追跡法により計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、3次元超音波探傷データまたは3次元形状データの表示位置を自動的に移動して表示することで、3次元形状データと照らし合わせて形状エコーか欠陥エコーかを判別する作業が効率良く行われ、検査対象に対する欠陥の位置を容易に迅速に特定できる。
【0059】
次に、図10を用いて、本発明の第2の実施形態による超音波探傷装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波探傷装置の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図10は、本発明の第2の実施形態による超音波探傷装置における2次元探傷データと3次元形状データの表示例の説明図である。
【0060】
第1の実施形態は、3次元探傷データ401と3次元形状データ501の位置合せの例であったが、本実施形態は、リニアスキャン方式やセクタスキャン方式などで取得した2次元探傷データと3次元形状データ501の位置合せの例である。
【0061】
装置の構成および自動位置合せの処理方法は第1の実施形態と全く同様であるため説明は省略するが、2次元探傷データはピクセル形式等の画像データとして出力されるため、位置合せ後の結果の表示方法が第1の実施形態とは異なる。
【0062】
図10は、2次元探傷データとしてセクタ107を描画した平面を3次元形状データ501と一緒に立体的に3次元表示画面103Cに表示したものである。このとき、セクタ107や3次元形状データ501は、計算機102Aに接続されたマウス102Fやキーボード102Gを用いた入力により、任意の表示寸法で表示することができる。更に、マウス102Fとキーボード102Gからの入力により表示色や透明度も任意に変えることができる。表示色は反射強度に応じて変えることが可能である。この場合の表示色パターンは複数準備してあり、検査者が用途に応じて選択できる。
【0063】
このように表示すれば、セクタ107が検査対象のどこの断層面に対応するのかが容易に確認できる。なお、図10は、1枚のみセクタを表示した例であるが、複数のセクタを同時に表示してもよいものである。なお、平面を立体的に表示するアルゴリズムは前述のグラフィックスAPIの中で実現されており、これらのグラフィックスAPIをプログラム中で用いて、表示する平面の寸法や視点、表示位置などの必要な情報を与えれば3次元表示画面103C上の任意の位置に、3次元形状データ501と共に立体的に描画することが容易にできる。
【0064】
次に、図11を用いて、本発明の第3の実施形態による超音波探傷装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波探傷装置の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図11は、本発明の第3の実施形態による超音波探傷装置における2次元探傷データと3次元形状データの断面位置の表示例の説明図である。
【0065】
図11は、2次元探傷データとしてセクタ107を描画した平面を3次元形状データ501と一緒に平面的に2次元表示画面103Bに表示したものである。ただし、3次元形状データ501は2次元探傷データの断層位置で切断した場合の輪郭線のみが描画される。このような表示にすることにより、断層面とその断層に対応する形状との対応が容易につく。3次元形状データの輪郭線表示は、例えば、3次元形状データであるSTLデータを構成する各三角形と、2次元探傷データの断層平面との交線を計算し、それらの直線を断層平面上で描画することで容易に実現可能である。これらの描画処理には前述のグラフィックスAPIを用いる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した2次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて音線追跡法により計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、3次元形状データまたは2次元超音波探傷データの相対的な位置を自動的に移動し、2次元超音波探傷データを、3次元形状データの切断面における輪郭線と重ねて表示することができる。
【0067】
次に、図12及び図13を用いて、本発明の第4の実施形態による超音波探傷装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波探傷装置の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図12及び図13は、本発明の第4の実施形態による超音波探傷装置に用いるアレイ型超音波センサとその移動装置の説明図である。図12は側面図であり、図13は上面図である。
【0068】
本実施形態は、アレイ型超音波センサ101が移動装置1202に固定治具1201によって固定され、外部からの制御により機械的に移動しながら反射超音波信号を収録するものである。例えば、BWRのシュラウドサポートと原子炉圧力容器の溶接線を検査する場合などが考えられる。移動装置1202によりアレイ型超音波センサ101は、圧力容器1205上を、シュラウドサポートとの溶接線に沿った方向1203や溶接線に垂直な方向1202に自由に動かすことができ、アレイ型超音波センサ101は移動しながら超音波信号を発信したり受信したりする。
【0069】
それ以外の基本的な装置構成および自動位置合せの処理方法は第1の実施形態と全く同様である。例えばセクタスキャンでデータ収集をしながら移動する場合、2次元探傷データとしてセクタ107の画像が2次元画像表示画面103Bに、本発明の自動位置合せ処理を経て、3次元形状データ501の輪郭と共に随時表示される。
【0070】
あるいはまた、アレイ型超音波センサ101を移動させながらセクタスキャンで、ある決まった枚数のセクタを収録後、計算機102Aで3次元探傷データ401を作成し、それを随時3次元画像表示画面103Cに、本発明の自動位置合せ処理を経て、3次元形状データ501と共に表示させる。本実施形態により、検査対象の形状とエコーを常に対応させながら結果を確認することができるため、検査作業効率が著しく向上する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、超音波センサに固定され、超音波センサを任意の方向に移動させるための移動手段を備え、探傷データを3次元形状データと重ねて表示させることができる。
【符号の説明】
【0072】
100…検査対象
101…アレイ型超音波センサ
102…送・受信部
102A…計算機
102A1…CPU
102A2…RAM
102A3…ROM
102B…遅延時間制御部
102C…パルサー
102D…レシーバ
102E…データ収録部
102F…マウス
102G…キーボード
103…表示部
103A…波形表示部
103B…2次元表示画面
103C…3次元表示画面
104…圧電振動素子
105…超音波
106…入射角度
107…セクタ
108…伝播解析データ
109…解析用計算機
401…3次元探傷データ
501…3次元形状データ
801…測定波形データ
901…データ点番号の中央値
1201…固定治具
1202…移動装置
1203…方向
1204…方向
1205…圧力容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した3次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元超音波探傷データまたは前記3次元形状データの表示位置を移動して表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探傷方法において、
前記3次元超音波探傷データまたは前記超音波伝播データとの組合せについて、両者のずれ量を算出し、該ずれ量が最小となる前記超音波伝播データを求め、この結果に基づいて、前記3次元超音波探傷データまたは前記3次元形状データの表示位置を移動して表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項3】
請求項2記載の超音波探傷方法において、
前記3次元超音波探傷データ及び前記超音波伝播データとから相互相関関数Rを算出し、該相互相関関数Rからパワースペクトル密度関数を算出して、前記ずれ量を算出し、
前記3次元超音波探傷データまたは前記超音波伝播データとの組合せについて、前記ずれ量を算出し、該ずれ量の平均値が最小となる前記超音波伝播データを求めることを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項4】
請求項3記載の超音波探傷方法において、
求められた前記超音波伝播データの超音波入射位置及び入射方向が、前記3次元形状データの超音波入射位置及び入射方向と一致するように、前記3次元超音波探傷データあるいは前記3次元形状データを相対的に平行移動及び回転移動して、両者を重ねて表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項5】
超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した2次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元形状データまたは前記2次元超音波探傷データの相対的な位置を移動し、前記2次元超音波探傷データを、前記3次元形状データと重ねて立体的に表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項6】
超音波センサで受信した複数の超音波波形から作成した2次元超音波探傷データと、検査対象の3次元形状データに基づいて計算した複数の超音波伝播データを比較することにより、前記3次元形状データまたは前記2次元超音波探傷データの相対的な位置を移動し、前記2次元超音波探傷データを、前記3次元形状データの切断面における輪郭線と重ねて表示することを特徴とする超音波探傷方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の超音波探傷方法において、
前記超音波伝播データは、前記検査対象の前記3次元形状データに基づいて、音線追跡法によって計算されることを特徴とする超音波探傷法。
【請求項8】
複数の圧電振動子を備えた超音波センサと、前記超音波センサの各圧電振動子に送信信号を供給するパルサーと、前記超音波センサの各圧電振動子素子から受信信号を入力するレシーバと、前記各圧電振動子毎に異なった遅延時間を前記送信信号と前記受信信号に設定する遅延制御部と、前記超音波センサで受信した超音波波形を収録するデータ収録部と、前記データ収録部で収録した波形から探傷データを生成する画像処理用計算機と、検査対象の3次元形状データを前記探傷データとを同時に表示させる表示部と、前記3次元形状データに基づいて超音波伝播データを計算するための解析用計算機を有する超音波探傷装置であって、
前記表示部は、前記3次元形状データと前記探傷データの相対的な表示位置を自動的に移動する位置補正機能を備えていることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項9】
請求項8記載の超音波探傷装置において、
前記超音波センサに固定され、前記超音波センサを任意の方向に移動させるための移動手段を備え、
前記探傷データを前記3次元形状データと重ねて表示させることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項10】
請求項8記載の超音波探傷装置において、
前記超音波センサに固定され、前記超音波センサを任意の方向に移動させるための移動手段を備え、
前記探傷データを前記3次元形状データの切断面おける輪郭線と重ねて表示させることを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項11】
請求項8記載の超音波探傷装置において、
前記超音波伝播データは、前記3次元形状データに基づいて、音線追跡法によって計算されることを特徴とする超音波探傷法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−141123(P2011−141123A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−475(P2010−475)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】