説明

超音波探触子とそれを用いた超音波診断装置

【課題】隣り合う信号リード線間のクロストークを低減する超音波探触子を提供する。
【解決手段】超音波を送受信するための複数の圧電振動子6と、前記圧電振動子6の背面側に設けた背面負荷材7と、前記背面負荷材7内部に設けた基板9と、前記基板9面上に設けられ前記圧電振動子6の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線1を備え、前記基板9の内部に基板内シールド材10が配置され、前記信号リード線1はその配列が前記基板の表裏面に交互に配置された配列を有することで、同一基板9上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線1間に基板内シールド材10が介在し、クロストークの発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断、治療などの医療分野や、非破壊検査等の産業用分野で利用される超音波探触子に関するもので、特に圧電振動子が2次元配列した超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電振動子を二次元配列した超音波探触子を用いて、走査方向に加えてスライス方向にもダイナミックフォーカス等の手法を用いて超音波画像の画質を向上させたり、あるいは電子的な制御によって超音波ビームを3次元に走査し三次元超音波画像を作成する装置が開発されてきている。
【0003】
従来の圧電振動子を2次元配列した超音波探触子の実現手段には、2次元的に配列された圧電振動子の各信号電極から信号リード線をどの様に引き出すかが、主に提案されている。特に信号リード線間の電気的なクロストークの低減を狙った構成として、図7に示すように同一面上に信号リード線1とアース線2を交互に配置させた層3を積層させたり、図8に示すように片面に信号リード線1を配置させた層3と片面にアース電極面4を配置させた層3を交互に積層させた構成(例えば特許文献1)や、片面に信号リード線を配置し、その裏面をアース電極面としたプリント基板を背面負荷材の間に挟んだ構成(例えば特許文献2や特許文献3)が提案されている。
【特許文献1】特開平7−79498号公報(第4頁、第6図及び第7図)
【特許文献2】特開2001−309493号公報(第6頁、第7図)
【特許文献3】特開2001−309497号公報(第4−6頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の超音波探触子は、例えば図7に示した構成の場合、その間隔が圧電振動子の配列ピッチと概等しい信号リード線1の間にアース線2を配置する必要があるため、扱う超音波の周波数が高くなって圧電振動子の配列ピッチが狭くなった場合には、アース線2の形成が難しくなり、アース線2の線幅も十分に確保できなくなって、その効果も十分に発揮できなくなる可能性が高い。また、図8に示した構成の場合には、異なる層3上の信号リード線1間のクロストークを低減させる構成ではあるが、ひとつの層3あるいはプリント基板の同一面上に、その間隔を圧電振動子の配列ピッチと概等しく配置されている信号リード線1の隣り合う信号リード線1間のクロストークを低減することはできないという問題があり、特許文献2や特許文献3に記載のプリント基板を用いた構成の場合も同様の問題を有している。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、超音波の周波数が高くなって圧電振動子の配列ピッチが狭くなった場合であっても、隣り合う信号リード線間のクロストークを低減することができる超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波探触子は、超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた基板と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線はその配列が前記基板の表裏面に交互に配置された配列を有した構成である。
【0007】
この構成により、同一基板上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線間に基板内シールド材が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑えることができる。
【0008】
また、本発明の超音波探触子は、超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた複数の基板と、前記背面負荷材内部に設けられ前記基板の間に配置したシールド材と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線は、その配列が前記基板の表裏面上に交互に配置された配列を有した構成である。
【0009】
この構成により、同一基板上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線間に基板内シールド材が介在すると同時に、異なる基板間にもシールド材が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑えることができる。
【0010】
さらに、本発明の超音波探触子は、前記複数の圧電振動子が圧電振動子を分割することで形成され、前記シールド材は前記圧電振動子を分割する位置に配置された構成を有している。
【0011】
この構成により、圧電振動子を分割することで複数の圧電振動子を形成する際に、分割位置をシールド材の位置に合わせて分割することで、正確な形状の圧電振動子配列を形成することができる。
【0012】
さらに、本発明の超音波探触子は、前記圧電振動子を分割することで形成される分割溝の幅が、前記シールド材の厚みよりも大きい構成を有する。
【0013】
この構成により、圧電振動子の下面の電極とシールド材が電気的に接続されることを防ぐことができる。
【0014】
本発明の超音波診断装置は、上記本発明の超音波探触子と、この超音波探触子と接続された超音波診断装置本体を含むことを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明の超音波探触子の長所を活かし、精度の高い超音波診断を行うことができる。
【0016】
本発明の超音波探傷装置は、上記本発明の超音波探触子と、この超音波探触子と接続された超音波探傷装置本体を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成により、本発明の超音波探触子の長所を活かし、精度の高い非破壊検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた基板と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線はその配列が前記基板の表裏面に交互に配置された配列を有することにより、同一基板上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線間に基板内シールド材が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑えることができるという効果を有する超音波探触子を提供することができるものである。
【0019】
また、本発明の超音波診断装置は、上述のような超音波探触子を使用しているため、より正確な診断をすることが可能となる。
【0020】
さらに、本発明の超音波探傷装置は、上述のような超音波探触子を使用しているため、より正確な非破壊検査をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の超音波探触子について、図面を用いて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態の超音波探触子の一部を分解した斜視図である。
【0023】
図1において、超音波探触子5は、電気入力を変換して超音波を発生する、あるいは受波した超音波信号を電気信号として受信するための例えば圧電セラミクスからなる圧電振動子6が、2次元のマトリクス状に配列した構成を有する。圧電振動子6は、例えばフェライトゴムなどの音響減衰媒体からなる背面負荷材7上に配列されており、背面負荷材7側に送波された超音波を吸収減衰させる。圧電振動子6は、上下面に図示しない電極を有し、上面の電極は例えば銅箔などからなる共通電極8に共通接続され、下面の電極は背面負荷材7の内部に埋め込まれた例えばプリント基板やフレキシブルプリント基板からなる基板9上の信号リード線1に接続されている。基板9の内部には例えば銅箔からなる基板内シールド材10が配置されている。なお、超音波探触子5の構成として、圧電振動子1の上面、すなわち音響放射面側に超音波を効率良く送受信するための音響整合層や、超音波を収束させるための音響レンズを付ける場合もある。
【0024】
図2に本実施の形態の超音波探触子を構成する背面負荷材の上面図と2箇所の断面図を示す。基板9は圧電振動子6の配列間隔に合わせて配置する。基板9上の信号リード線1は、圧電振動子6の配列間隔に合わせて、基板9の両面上に交互に配置する。従って、B-B断面図に示すように、基板9の片面上の信号リード線1の配置間隔は圧電振動子6の配列間隔の2倍となる。また、A-A断面図に示すように、基板9内部には基板9両面上の信号リード線1と電気的な接続をしないような位置に基板内シールド材10を配置し、また圧電振動子6の下面電極との電気的な接続を防ぐために、背面負荷材7表面に基板内シールド材10が現れないような距離を確保して配置する。
【0025】
続いてこの超音波探触子5の作成方法について説明する。最初に基板9を準備する。基板9は例えば導体-基材-導体-基材-導体と導体が3層形成された積層のフレキシブルプリント基板またはプリント基板を用いて、両面それぞれに例えばエッチングなどによって信号リード線1のパターンを形成して基板9とする。なお、このときの積層基板の内部(2層目)の導体は基板内シールド材10となるため、圧電振動子6の電極と信号リード線1を接続する端面側において、圧電振動子6の電極と電気的に接続しないように端面に露出しない位置に予め形成しておく必要がある。他の基板形成方法としては、例えば両面フレキシブルプリント基板あるいは両面プリント基板を2枚用いて、それぞれ片面に信号リード線1のパターンを形成し、もう片面は基板内シールド10面として、基板内シールド10面同士を重ね合わせて接合する方法や、あるいは信号リード線1のパターンを形成した片面フレキシブルプリント基板あるいは片面プリント基板2枚を、間に例えば銅箔などの基板内シールド材10を挟みこんで接合する方法などがある。基板9に形成する信号リード線1の本数と基板9の枚数は、作成する超音波探触子5の圧電振動子6の2次元配列の数に合わせておく。
【0026】
次に、作成した基板9と背面負荷材7を交互に重ねて、例えばエポキシ系接着剤を用いて接着することで背面負荷材7のブロックを形成する。このとき、基板9の間隔が圧電振動子6の配列間隔に概等しくなるように、重ね合わせる背面負荷材7の厚みを事前に調整しておく。作成した背面負荷材7ブロックの圧電振動子6を配列させる表面は、必要に応じて切削、研磨加工等によって整形する。このとき、背面負荷材7表面と信号リード線1端面がほぼ同一平面上に構成され、かつ基板内シールド材10が表面に露出しないように整形することが好ましい。なお、背面負荷材7ブロックを形成する別の方法としては、圧電振動子6の配列間隔に並べて配置した基板9の間に背面負荷材7を充填硬化させることで形成することも可能である。さらに別の形成方法として、背面負荷材7の材質が基板9材料と同一あるいは類似なものを選択可能であれば、背面負荷材7ブロックをひとつの積層プリント基板として作成してしまうことも可能である。
【0027】
続いて、圧電振動子6を例えばエポキシ系接着剤を用いて背面負荷材7表面に接着固定し、圧電振動子6の下面の電極と信号リード線1との電気的な接続も同時に行う。次に例えばダイシングソーなどの分割装置を用いて、圧電振動子6の上方から背面負荷材7の一部にまで到達する深さの溝を、形成したい圧電振動子6の2次元配列の間隔に合わせて格子状に設けて圧電振動子6を分割することによって、圧電振動子6の2次元配列を形成する。
【0028】
次に圧電振動子6の上面の電極に、例えば銅箔からなる共通電極8を例えばエポキシ系接着剤を用いて接着し、分割された圧電振動子6のすべての上面の電極の電気的接続を行い、超音波探触子5を形成する。
【0029】
なお、この超音波探触子5は、図示しない超音波診断装置や超音波探傷装置などの装置本体に接続されて使用するため、信号リード線1や共通電極8と電気的な接続を確保するためのコネクタや中継基板、同軸ケーブルといった電気系の接続部材や、図1に示した構成を格納するためのハウジングなどの部材が追加されて超音波探触子5として用いられることが一般的である。
【0030】
続いて、この超音波探触子の動作、作用について説明する。図示しない例えば超音波診断装置や超音波探傷装置などの装置本体から出力される駆動信号を基板9上の信号リード線1と共通電極8を介して2次元配列された圧電振動子6に供給することで圧電振動子6から超音波が発生する。発生した超音波が例えば人体などの観測対象物に入射され、反射してきた超音波を同じく圧電振動子6によって受波する。受波された超音波は圧電振動子6によって電気信号に変換されて、信号リード線1と共通電極8を介して装置本体に入力され、装置本体において例えば超音波断層画像などの有益な観測情報として処理される。
【0031】
このときにそれぞれの圧電振動子6を駆動するタイミングや同時に駆動する圧電振動子6の数を制御することにより、3次元空間内に超音波ビームを制御することで、例えば3次元超音波画像を構築するためのデータを取得することができる。駆動信号は数十Vから百数十V程度と高い電圧であるため、信号リード線1を伝播するときに漏洩する電磁界が隣接する信号リード線1に作用して隣接する圧電振動子6に意図しない駆動信号を供給するクロストークが発生する可能性がある。クロストークの発生により、意図しない圧電振動子6から意図しないタイミングで超音波が送信されてしまうために、超音波ビーム制御が乱され、例えば3次元超音波画像の画質劣化を引き起こす恐れがある。
【0032】
これに対して本実施の形態の超音波探触子5では、その内部に基板内シールド材10を配置した基板9の両面に交互に信号リード線1を配置することで、同一基板9上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線1間には基板内シールド材10が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑えて、所望の超音波ビーム制御が可能となる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態の超音波探触子の一部を分解した斜視図を図3に示す。さらに本発明の第2の実施の形態の超音波探触子の背面負荷材の上面図と1箇所の断面図を図4に示す。なお、図面中で図1及び図2と同一符号を付したものは同一なものであり、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図3及び図4において、基板9と基板9の間に例えば銅箔からなるシールド材11を配置したことが図1及び図2との違いである。図3及び図4では、シールド材11は、基板9と基板9の間の他に、背面負荷材7内で最も外側に配置された基板9のさらに外側にも配置している。
【0035】
この超音波探触子の作成方法を説明する。基板9の作成方法は第1の実施の形態と同様でありその説明を省略する。作成した基板9と背面負荷材7、シールド材11を重ね合わせて例えばエポキシ系接着剤で接着することで背面負荷材7ブロックを形成する。必要に応じて、圧電振動子6を配置する背面負荷材7ブロック表面を切削、研磨加工などにより整形したのち、例えばエポキシ系接着剤で圧電振動子6を接着固定して、圧電振動子の下面の電極と信号リード線1との電気的な接続も同時に行う。次に、例えばダイシングソーなどの分割装置を用いて、圧電振動子6の上方から背面負荷材7の一部にまで到達する深さの溝を、形成したい圧電振動子6の2次元配列の間隔に合わせて格子状に設けて圧電振動子6を分割することによって、圧電振動子6の2次元配列を形成する。
【0036】
このとき、予めシールド材11を圧電振動子6を分割する溝12の形成位置に合わせて圧電振動子6の配列間隔と等しい間隔で配置して背面負荷材7ブロックを作成しておき、かつ圧電振動子6を配置する表面上にシールド材11端部が露出するように表面整形しておくことで、例えばダイシングソーであればダイシングブレードの位置をシールド材11の位置に合わせて溝12形成加工を行うことで、正確な形状の圧電振動子6配列を形成することが可能である。このとき、圧電振動子6の下面の電極とシールド材11が電気的に接続されることを防ぐために、形成する溝12の幅が必ずシールド材11の厚みよりも広くなるように溝12加工を行うほうが良い。
【0037】
次に圧電振動子6の上面電極に、例えば銅箔からなる共通電極8を例えばエポキシ系接着剤を用いて接着し、分割された圧電振動子6のすべての上面電極の電気的接続を行い、超音波探触子を形成する。
【0038】
続いて、この超音波探触子5の動作、作用について説明する。図示しない例えば超音波診断装置や超音波探傷装置などの装置本体から出力される駆動信号を基板9上の信号リード線1と共通電極8を介して2次元配列された圧電振動子6に供給することで圧電振動子6から超音波が発生する。発生した超音波が例えば人体などの観測対象物に入射され、反射してきた超音波を同じく圧電振動子6によって受波する。受波された超音波は圧電振動子6によって電気信号に変換されて、信号リード線1と共通電極8を介して図示しない装置本体に入力され、装置本体において例えば超音波断層画像などの有益な観測情報として処理される。
【0039】
このときにそれぞれの圧電振動子6を駆動するタイミングや同時に駆動する圧電振動子6の数を制御することにより、3次元空間内に超音波ビームを制御することで、例えば3次元超音波画像を構築するためのデータを取得することができる。駆動信号は数十Vから百数十V程度と高い電圧であるため、信号リード線1を伝播するときに漏洩する電磁界が隣接する信号リード線1に作用して隣接する圧電振動子6に意図しない駆動信号を供給するクロストークが発生する可能性がある。クロストークの発生により、意図しない圧電振動子6から意図しないタイミングで超音波が送信されてしまうために、超音波ビーム制御が乱され、例えば3次元超音波画像の画質劣化を引き起こす恐れがある。
【0040】
これに対して本発明の第2の実施の形態の超音波探触子5では、その内部に基板内シールド材10を配置した基板9の両面に交互に信号リード線1を配置することで、同一基板9上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線1間には基板内シールド材11が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑え、さらに基板9と基板9の間にもシールド材11を配置することによって、異なる基板9上に配置された信号リード線1間にもシールド材11が介在する構成を実現し、両者のシールド効果によって信号リード線1間のクロストークの発生を抑えて、所望の超音波ビーム制御が可能となる。さらに本実施の形態の超音波探触子5では、基板9と基板9の間の他に、背面負荷材7内で最も外側に配置した基板9のさらに外側にもシールド材11を配置することで、雑音信号の外来からの飛び込みを抑制すると同時に、逆に信号リード線1から発生する漏洩電磁界が外来に及ぼす悪影響を低減する効果も有する。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に本発明の超音波診断装置の一例を示す概略図を図5に示す。図1と同一なものには同一番号を付している。
【0042】
この超音波診断装置13は、超音波診断装置本体14と、これと電気的に接続された超音波探触子5とを備えている。その動作について説明する。まず、操作者が、超音波探触子5の超音波送受信面を被検者15の体表面に当てる。この状態で、超音波診断装置本体14から超音波探触子5に電気信号(駆動信号)が送信される。駆動信号は、超音波探触子5内の圧電振動子において超音波に変換されて、被検者15に送波される。この超音波は被検者15の体内で反射され、反射波の一部が超音波探触子5内の圧電振動子で受波され、電気信号(受信信号)に変換されて、超音波診断装置本体14に入力される。入力された受信信号は、超音波診断装置本体19にて信号処理され、例えば断層画像として例えばCRTなどの表示装置に出力される。
【0043】
上記超音波診断装置13において、超音波探触子5としては、第1〜第2の実施の形態で説明したような本発明の超音波探触子5が使用される。このような超音波診断装置13によれば、上記各実施形態で示した超音波探触子5の長所を活かし、精度の高い超音波診断を行うことができる。
【0044】
(第4の実施の形態)
次に本発明の超音波探傷装置の一例を示す概略図を図6に示す。図1と同一なものには同一番号を付している。
【0045】
この超音波探傷装置16は、超音波探傷装置本体17と、これと電気的に接続された超音波探触子5とを備えている。その動作について説明する。まず、操作者が、超音波探触子1の超音波送受信面を被検物18の表面に当てる。この状態で、超音波探傷装置本体17から超音波探触子5に電気信号(駆動信号)が送信される。駆動信号は、超音波探触子5内の圧電振動子において超音波に変換されて、被検物18に送波される。この超音波は被検物18の内部の傷や欠陥で反射され、反射波の一部が超音波探触子5内の圧電振動子で受波され、電気信号(受信信号)に変換されて、超音波探傷装置本体17に入力される。入力された受信信号は、超音波探傷装置本体17にて信号処理され、例えば断層画像としてCRTなどに表示される。
【0046】
上記超音波探傷装置16において、超音波探触子5としては、第1〜第2の実施の形態で説明したような本発明の超音波探触子5が使用される。このような超音波探傷装置16によれば、上記各実施形態で示した超音波探触子5の長所を活かし、精度の高い非破壊検査を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる超音波探触子は、超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた基板と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線はその配列が前記基板の表裏面に交互に配置された配列を有することにより、同一基板上で最も距離が近く互いの漏洩電磁界の影響が受けやすかった隣接信号リード線間に基板内シールド材が介在することになり、シールド効果によってクロストークの発生を抑えることができるため、この超音波探触子を使用した超音波診断装置は正確な超音波診断を可能とする効果を有するため、診断、治療などの医療分野に有用であり、またこの超音波探触子を使用した超音波探傷装置は、非破壊検査等の産業用分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波探触子の一部を分解した斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態における超音波探触子を構成する背面負荷材の上面図と2箇所の断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態における超音波探触子の一部を分解した斜視図
【図4】本発明の第2の実施の形態の超音波探触子の背面負荷材の上面図と1箇所の断面図
【図5】本発明の第3の実施の形態における超音波診断装置の一例を示す概略図
【図6】本発明の第4の実施の形態における超音波探傷装置の一例を示す概略図
【図7】従来の超音波探触子の信号リード線の引き出し構成を示した概略図
【図8】従来の超音波探触子の別の信号リード線の引き出し構成を示した概略図
【符号の説明】
【0049】
1 信号リード線
2 アース線
3 層
4 アース電極面
5 超音波探触子
6 圧電振動子
7 背面負荷材
8 共通電極
9 基板
10 基板内シールド材
11 シールド材
12 溝
13 超音波診断装置
14 超音波診断装置本体
15 被検者
16 超音波探傷装置
17 超音波探傷装置本体
18 被検物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた基板と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線はその配列が前記基板の表裏面上に交互に配置された配列を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
超音波を送受信するための複数の圧電振動子と、前記圧電振動子の背面側に設けた背面負荷材と、前記背面負荷材内部に設けた複数の基板と、前記背面負荷材内部に設けられ前記基板の間に配置したシールド材と、前記基板面上に設けられ前記圧電振動子の背面側の電極に電気的に接続された信号リード線を備え、前記基板の内部に基板内シールド材が配置され、前記信号リード線は、その配列が前記基板の表裏面上に交互に配置された配列を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
前記複数の圧電振動子が圧電振動子を分割することで形成され、前記シールド材は前記圧電振動子を分割する位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記圧電振動子を分割することで形成される分割溝の幅が、前記シールド材の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の超音波探触子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波探触子と、前記超音波探触子と電気的に接続された超音波診断装置本体とを含む超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波探触子と、前記超音波探触子と電気的に接続された超音波探傷装置本体とを含む超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−94120(P2006−94120A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276855(P2004−276855)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】