説明

超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラム

【課題】3次元空間における信号強度の調整を簡便に行うことが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】画像処理部6は、超音波の送受信によって得られたボリュームデータに基づいて、超音波振動子の配列面と略平行な面に沿ったC面画像データを生成し、表示部71にC面画像を表示させる。操作者は、表示されているC面画像上で、超音波の信号強度を調整すべき範囲を指定する。画像処理部6は、指定された範囲を通過する走査線を特定する。受信信号強度調整部41は、その走査線上の信号の強度を、設定されたゲインに従って調整する。これにより、指定された範囲の輝度が変更され、暗部だった箇所が明るく表示されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は3次元的にスキャンを行なう超音波診断装置に関し、特に、超音波画像の輝度を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波によって3次元的にスキャンすることにより、3次元的な生体情報を取得して3次元画像を表示することができる。
【0003】
一方、同じ送信条件で超音波ビームを送信した場合であっても、超音波ビームの向きや生体の条件によって受信信号の強度が変わってしまい、受信信号を輝度情報の超音波画像で表示した場合に、明るさにむらが発生してしまう問題があった。2次元的なスキャンを行なう超音波診断装置は、深さ方向のゲインを調整するSTC(Sensitivity Time Control)ゲイン調整機能や、ラテラル方向(方位方向)のゲインを調整する機能を有している。そして、2次元画像である断層像を表示する場合に、深さ方向のゲインを調整したり、ラテラル方向のゲインを調整したりすることにより、断層像の輝度を調整することが可能となっている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、予め取得した超音波画像の輝度分布に基づいて、走査線ごとにゲインを自動的に調整する機能を有する超音波診断装置が知られている。
【0005】
しかしながら、超音波画像の輝度分布を自動的に検出して走査線ごとにゲインを自動的に調整しようとしても、適切にゲインを調整できない場合がある。例えば、超音波プローブから近距離に高反射部がある場合、近距離部の輝度は高くなって明るく表示されるが、その背後(深部)の輝度は低くなって暗く表示されてしまうおそれがある。このような場合に、走査線の信号強度(輝度)の平均を用いてゲイン調整を行ったり、所定深さの信号強度(輝度)を用いてゲイン調整を行ったりしても、関心領域のゲインを自動で適切に調整することは非常に困難である。
【0006】
例えば、超音波プローブを心尖部に当てて左心室を中心に心臓を観察する場合、肋間からのアプローチとなり、肋骨の影響によって、走査領域の周辺部では暗い領域が発生する。例えば、図15に示す断層像100のように、肋骨やその周辺の軟骨部分などは、超音波が通過し難い組織であるため、超音波の高反射部(高輝度部)101となり、その裏側の部分が暗くなって、暗部102が発生してしまう場合がある。
【0007】
ゲインを自動調整する場合、走査線ごとに信号強度(輝度)の平均値を算出し、走査線における信号強度(輝度)が均一になるように、走査線ごとにゲインを調整している。ところが、肋骨構造のように、超音波プローブの近距離に高反射部(高輝度部)がある場合、その部分を通過する走査線の信号強度(輝度)の平均値は高くなってしまうため、自動的にゲイン調整を行って適切な輝度とすることは困難である。
【0008】
2次元画像である断層像を観察する場合は、STCゲイン調整やラテラル方向のゲイン調整を検査者が手動で行うことで、関心領域のゲインを調整することが可能である。しかしながら、3次元空間をスキャンする超音波診断装置では、ゲイン調整を行う範囲が3次元空間であるため、関心領域の特定が困難であり、STCゲイン調整とラテラル方向のゲイン調整だけでは、簡便にゲイン調整を行うことができない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,398,733号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は上記の問題を解決するものであり、3次元空間における信号強度の調整を簡便に行うことが可能な超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、超音波振動子が配列されて、3次元的に超音波を送受信する超音波プローブと、前記超音波の送受信によって得られた信号に基づいて、超音波の走査線と交差する面に沿った第1の超音波画像を生成する画像処理手段と、前記第1の超音波画像を表示する表示手段と、前記第1の超音波画像上で設定された輝度調整の対象となる輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更する信号強度調整手段と、を有し、前記画像処理手段は、前記信号強度調整手段によって変更された信号に基づいて、第2の超音波画像を生成し、前記表示手段は、前記第2の超音波画像を表示することを特徴とする超音波診断装置である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波診断装置であって、前記表示手段に表示されている第1の超音波画像上において所望の輝度調整範囲を指定するための指定手段を更に有し、前記信号強度調整手段は、前記指定された輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、コンピュータに、3次元的に超音波を送受信することによって得られた信号に基づいて、超音波の走査線と交差する面に沿った第1の超音波画像を生成する第1の画像処理機能と、前記第1の超音波画像を表示手段に表示させる第1の表示機能と、前記第1の超音波画像上で設定された輝度調整の対象となる輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更する信号強度調整機能と、前記信号強度調整機能によって変更された信号に基づいて、第2の超音波画像を生成する第2の画像処理機能と、前記第2の超音波画像を前記表示手段に表示させる第2の表示機能と、を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、超音波の走査線と交差する面に沿った超音波画像に基づいて信号強度を調整する範囲を設定することにより、3次元空間において、信号強度の調整対象となる走査線を簡便に設定することが可能となる。その結果、3次元空間における信号強度の調整を簡便に行うことが可能となる。
【0013】
また、この発明によると、超音波の走査線が交差する面に沿った超音波画像を表示手段に表示し、その超音波画像上で、信号強度を調整する範囲(所望の範囲)を指定することにより、3次元空間において、信号強度の調整対象となる走査線を簡便に指定することが可能となる。その結果、3次元空間における信号強度の調整を簡便に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
(構成)
この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波の走査線が交差する面に沿った超音波画像を表示部71に表示する。そして、操作者は、その超音波画像上でゲイン調整を行う範囲を指定する。このように走査線が交差する面に沿った超音波画像を表示することで、3次元空間において、信号強度の調整対象となる走査線を簡便に指定することができる。例えば、超音波振動子が配列している面にほぼ平行な面に沿った超音波画像を表示部71に表示する。そして、その超音波画像上で操作者がゲイン調整を行う範囲を指定すると、超音波診断装置1は、指定された範囲に含まれる受信信号のゲインを調整する。これにより、超音波画像の輝度が調整されることになる。以下、超音波診断装置1の各部について説明する。
【0016】
超音波プローブ2には、超音波振動子が2次元的に配列された2次元アレイプローブ、又は、超音波振動子が所定方向(走査方向)に配列された1次元アレイプローブが用いられる。2次元アレイプローブは2次元的に配置された超音波振動子を有し、3次元的に超音波を送信し、プローブ表面から放射状に広がる形状の3次元データをエコー信号として受信することができる。また、1次元アレイプローブは、超音波振動子を走査方向に直交する方向に機械的に揺動させることで、3次元データをエコー信号として受信することができる。この実施形態では、1次元アレイプローブを用いて良く、2次元アレイプローブを用いても良い。
【0017】
ここで、超音波プローブ2の走査範囲について図2を参照しつつ説明する。図2は、超音波プローブが走査する実空間を示す模式図である。この実施形態では、超音波プローブ2の1例としてセクタ型の超音波プローブを用い、その超音波プローブによって走査した範囲について説明する。図2に示すように、セクタ型の超音波プローブ2は、1点の走査原点から四角錐状に走査を行い、3次元的な空間である走査範囲20を超音波で走査することが可能となっている。
【0018】
送信部3は、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させる。送信部3は、クロック発生回路、送信遅延回路、及びパルサ回路を備えて、超音波プローブ2に電気信号を供給して超音波を発生させる。クロック発生回路は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する回路である。送信遅延回路は、超音波の送信時に遅延を掛けて送信フォーカスを実施する回路である。パルサ回路は、各超音波振動子に対応した個別経路(チャンネル)の数分のパルサを内蔵し、遅延が掛けられた送信タイミングで駆動パルスを発生し、超音波プローブ2の各超音波振動子に供給するようになっている。
【0019】
受信部4は、受信信号強度調整部41(プリアンプ回路)、A/D変換回路、及び受信遅延・加算回路を備えている。受信信号強度調整部41(プリアンプ回路)は、超音波プローブ2の各超音波振動子から出力されるエコー信号のゲインを調整する。このとき、受信信号強度調整部41は、個々の走査線上の信号ごとにゲインを調整する。この受信信号強度調整部41によるゲイン調整は、デジタル信号に変換前のアナログ信号に対して行われるため、便宜的にアナログゲイン調整と称することにする。
【0020】
また、A/D変換回路は、増幅されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延・加算回路は、A/D変換後のエコー信号に対して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算する。その加算により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0021】
信号処理部5は、主に、Bモード処理部を備えて構成されている。ここでは、Bモード処理部は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。具体的には、Bモード処理部は、受信部4から送られる信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。なお、信号処理部5は、Bモード処理部の他、ドプラ処理部やCFM処理部を備えていても良い。
【0022】
また、信号処理部5は、受信信号強度調整部51を備えている。この受信信号強度調整部51は、受信部4から出力された信号であって、アナログ信号からデジタル信号に変換された信号に対してゲイン調整を行う。この受信信号強度調整部51は、個々の走査線上の信号ごとにゲインを調整する。この受信信号強度調整部51によるゲイン調整は、アナログ信号からデジタル信号に変換された後の信号に対して行われるため、便宜的にデジタルゲイン調整と称することにする。
【0023】
この第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、受信部4の受信信号強度調整部41によるアナログゲイン調整、又は、信号処理部5の受信信号強度調整部51によるデジタルゲイン調整を実行する。また、受信部4の受信信号強度調整部41がアナログゲイン調整を行い、更に、信号処理部5の受信信号強度調整部51がデジタルゲイン調整を行っても良い。つまり、アナログゲイン調整とデジタルゲイン調整の両方を実施して受信信号の強度を調整しても良い。
【0024】
画像処理部6は、スキャンによって得られた画像データに対して様々な画像処理を施す。例えば、超音波プローブ2によってボリュームスキャン(3Dスキャン)が行われた場合に、画像処理部6は、ボリュームデータに対してボリュームレンダリング(Volumu Rendering)を施すことにより3次元画像データを生成する。
【0025】
また、画像処理部6は、ボリュームレンダリングの他に、MPR(Multi Plane Reconstruction)処理などの画像処理を施すことも可能である。例えば、画像処理部6は、ボリュームデータに対してMPR処理を施すことにより、ボリュームデータを任意の平面(切断平面)で切断した画像(以下、「MPR画像」と称する場合がある)を生成する。この切断平面は、操作者が任意に指定することができる。
【0026】
例えば、画像処理部6は、超音波振動子が配列している面に平行な面(以下、「C面」と称する場合がある)に沿った画像データ(以下、「C面画像データ」と称する場合がある)を生成したり、C面に直交する面(以下、「断層面」と称する場合がある)に沿った画像データ(以下、「断層像データ」と称する場合がある)を生成したりする。ここで、C面と断層面について図2を参照して説明する。
【0027】
図2に示すように、C面21と断層面22は直交している。また、C面21は図2に示す超音波の走査線に交差している。一方、断層面22は走査線に沿った面であり、走査線を含んでいる。操作者は入力部72を用いて、C面21と断層面22の位置を変えることができる。例えば、超音波プローブ2からの距離を指定することで、C面21の位置を指定することができる。
【0028】
例えば、操作者によってC面21が指定された場合は、画像処理部6は、ボリュームデータに基づいてC面21に沿う画像データ(C面画像データ)を生成する。また、操作者によって断層面22が指定された場合は、画像処理部6は、ボリュームデータに基づいて断層面22に沿う画像データ(断層像データ)を生成する。このようにして生成されたC面画像データ又は断層像データは、画像処理部6からユーザインターフェイス7の表示部71に出力される。
【0029】
表示部71は、3次元画像データや断層像データやC面画像データなどの画像データを画像処理部6から受けると、その画像データに基づく画像を表示する。例えば3次元画像や断層像やC面画像などの画像が表示部71のモニタ画面上に表示されることになる。
【0030】
なお、この実施形態では、C面画像と断層像を例にして説明したが、操作者によってC面や断層面以外の面が指定されると、画像処理部6は指定された面に沿う画像データを生成し、その画像データに基づく画像を表示部71に表示させる。
【0031】
入力部72は、超音波の送受信条件などに関する各種設定などを行うための入力装置である。操作者が入力部72によって、ゲイン調整を行う範囲を指定したり、ゲインを入力したり、MPR画像を生成するための切断平面を指定したりすることができる。
【0032】
ここで、ゲイン調整の対象となる範囲の指定、及びゲインの設定について説明する。この実施形態では、画像処理部6は、超音波の走査線に交差する面の画像データを生成し、その画像データに基づく画像を表示部71に表示させる。そして、操作者は入力部72を用いて、その画像上において、ゲイン調整の対象となる範囲を指定する。このように走査線が交差する面の画像を表示部71に表示することで、操作者は、3次元空間において、ゲイン調整の対象となる走査線の位置を容易に把握することができる。例えば、C面は超音波の走査線に交差する。そのため、C面画像を表示部71に表示し、そのC面画像上でゲイン調整の対象となる範囲を指定することにより、3次元空間において、ゲイン調整の対象となる範囲を容易に把握して指定することが可能となる。
【0033】
ゲイン調整を行う範囲の指定、及びゲイン設定の一例について、図3から図5を参照して説明する。図3は、C面画像の表示例を示すモニタ画面の図である。図4は、断層像とC面画像の表示例を示すモニタ画面の図である。図5は、ゲインカーブの一例を示す図である。
【0034】
超音波プローブ2によってボリュームスキャン(3Dスキャン)を行うことによりボリュームデータが取得されると、画像処理部6はそのボリュームデータに基づいて、操作者によって指定されたC面に沿った画像データ(C面画像データ)を生成する。なお、操作者は入力部72を用いて超音波プローブ2からの距離(深さ)を指定することで、C面の位置を指定することができる。画像処理部6によって生成されたC面画像データは表示部71のモニタ画面上に表示される。
【0035】
図3(a)、(b)に示すように、表示部71には診断部位(例えば心臓)のC面画像23が表示される。操作者は入力部72を用いて、ゲイン調整の対象となる範囲をC面画像23上で指定する。例えば、図3(a)に示すように、操作者が入力部72を用いてC面画像23の中心Oから周辺部に向かう方向24を指定すると、指定された方向24の周辺部から内側に向けて予め設定された範囲が、ゲイン調整の対象となる範囲25に設定される。C面画像23の周辺部は輝度が低くなるため、指定された範囲25は暗部に該当することになる。このように、中心から周辺部に向けて方向を指定するだけで、暗部に該当する範囲を、ゲイン調整の対象となる範囲に簡便に設定することができる。なお、範囲25の幅は操作者が任意に変更することができる。
【0036】
そして、C面上で指定された範囲25の座標情報がユーザインターフェイス7から画像処理部6に出力される。画像処理部6は、その範囲25の座標情報から、その座標を通過する走査線を特定し、その走査線の位置を示す情報(座標情報)を制御部8に出力する。
【0037】
また、図3(b)に示すように、操作者が入力部72を用いて、C面画像23上で所望の点26を指定すると、その点26を中心とする予め設定された大きさの範囲がゲイン調整の対象となる範囲27に設定される。そして、C面上で指定された範囲27の座標情報がユーザインターフェイス7から画像処理部6に出力される。画像処理部6は、指定された範囲27の座標情報から、その座標を通過する走査線を特定し、その走査線の位置を示す情報(座標情報)を制御部8に出力する。このように、所望の点を指定するだけで、ゲイン調整の対象となる範囲を簡便に設定することができる。なお、範囲27の大きさや形状は、操作者が任意に変更することができる。
【0038】
制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の座標情報(走査線の位置を示す情報)を画像処理部6から受けると、その範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。例えば、C面の座標と信号強度設定値とを対応付けたゲインカーブを条件設定記憶部9に予め記憶しておき、制御部8はそのゲインカーブに従って、ゲイン調整の対象となる範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。また、操作者が入力部72を用いてゲインカーブを指定しても良い。例えば、図5に示す、C面上の座標と信号強度設定値とを対応付けたゲインカーブのパターンを操作者が入力したり、予め設定されているゲインカーブを変更したりすることにより、ゲイン調整を行う範囲のゲインを決定する。
【0039】
また、制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の内側と外側とで、信号強度が連続するように、ゲインの値を決定する。例えば、ゲイン調整の対象となる範囲の中央付近においては、制御部8は、ゲインを最も高く設定し、ゲイン調整の対象となる範囲の周辺に向けて徐々にゲインを低く設定する。このように、位置に応じてゲインを段階的に変化させることで、ゲイン調整の対象となる範囲内において、位置に応じて信号強度を段階的に変化させることができる。これにより、ゲイン調整の対象となる範囲の内側と外側との境界で、信号強度を連続的に変化させることができ、輝度値に段差の無い画像が得られる。
【0040】
以上のように、走査線の位置とゲインを決定すると、制御部8は、走査線の位置を示す情報(座標情報)とゲインを受信部4の受信信号強度調整部41に出力する。
【0041】
受信部4の受信信号強度調整部41は、制御部8から走査線の位置を示す情報とゲインを受けると、超音波プローブ2から出力される信号のうち、その走査線上の信号の強度をゲインに従って変更する。このように強度が変更された受信信号は、信号処理部5を経て画像処理部6に出力される。
【0042】
画像処理部6はボリュームレンダリングを行うことにより3次元画像データを生成したり、MPR処理を行うことにより任意断面の画像データを生成したりする。表示部71には信号強度が変更された3次元画像や断層像などの画像が表示されることになる。これにより、操作者によって指定された範囲の輝度が変更された画像が表示部71に表示されることになる。例えば、暗部に該当する範囲が、ゲイン調整の対象範囲として指定された場合、その暗部の輝度が変更された画像が表示部71に表示されることになる。
【0043】
また、ゲイン調整の対象となる範囲を指定するときに、表示部71には、C面画像のみならず、C面に直交する面に沿った断層像を表示しても良い。画像処理部6は、ボリュームデータに対してMPR処理を施すことによりC面に沿った画像データ(C面画像データ)を生成し、さらに、そのC面に直交する面(断層面)に沿った画像データ(断層像データ)を生成し、C面画像データと断層像データを表示部71に出力する。これにより、図4に示すように、C面画像23と、そのC面画像23に直交する断層像28とを表示部71に表示させる。そして、操作者は入力部72を用いて、ゲイン調整の対象となる範囲27をC面画像23上で指定する。このように、ゲイン調整の対象となる範囲を指定するためのC面画像23と、C面に直交する面の画像(断層像28)を同時に表示部71に表示することで、3次元空間の把握が更に容易になるため、ゲイン調整の対象となる範囲の指定がより容易になる。
【0044】
また、画像処理部6は、断層像28上にC面の位置を表す線28Aを表示させることで、超音波プローブ2からC面までの距離(深さ)を操作者は視覚的に認識することができる。このとき、画像処理部6は、C面画像23上に断層面の位置を表す線23Aを表示させても良い。
【0045】
なお、この実施形態では、C面画像23上でゲイン調整の対象となる範囲を指定したが、C面画像23以外の画像上でゲイン調整の対象となる範囲を指定しても良い。C面以外の画像であっても、超音波の走査線が交差する面に沿った画像であれば、ゲイン調整の対象となる範囲(走査線)の指定が容易になるからである。
【0046】
この場合、操作者が入力部72を用いて任意の切断面を指定すると、画像処理部6はボリュームデータに基づいて、指定された切断面に沿った画像データを生成する。表示部71にはその画像データに基づく画像が表示され、操作者は入力部72を用いて、ゲイン調整の対象となる範囲をその画像上で指定する。このようにC面画像以外の画像を表示した場合であっても、ゲイン調整の対象となる範囲(走査線)を容易に指定することが可能となる。
【0047】
また、制御部8は超音波診断装置1の各部に接続され、各部の動作を制御する。例えば、制御部8は、送信部3による送信処理に対する制御、受信部4による受信処理に対する制御、信号処理部5による信号処理に対する制御、画像処理部6による画像処理に対する制御、及び、ユーザインターフェイス7による表示処理と入力処理に対する制御を行なう。
【0048】
また、受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、画像処理部6、及び制御部8は、ハードウェアで構成されていても良く、ソフトウェアで構成されていても良い。例えば、受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、画像処理部6、及び制御部8をそれぞれCPUで構成する。そして、図示しない記憶部に、受信信号強度調整部41の機能を実行するための第1の受信信号強度調整プログラム、受信信号強度調整部51の機能を実行するための第2の受信信号強度調整プログラム、画像処理部6の機能を実行するための画像処理プログラム、及び制御部8の機能を実行するためのプログラムを予め記憶させておく。そして、CPUが、図示しない記憶部に記憶されている第1の受信信号強度調整プログラムを実行することで、受信信号強度調整部41の機能を実行する。また、CPUが、第2の受信信号強度調整プログラムを実行することで、受信信号強度調整部51の機能を実行する。また、CPUが、画像処理プログラムを実行することで、画像処理部6の機能を実行する。なお、画像処理プログラムがこの発明の「第1の画像処理機能」と「第2の画像処理機能」を実行するためのプログラムの1例に相当する。また、CPUが、制御部8の機能を実行するプログラムを実行することで、制御部8の機能を実行する。また、このプログラムには、この発明の「第1の表示機能」と「第2の表示機能」を実行するためのプログラムが含まれる。
【0049】
(動作)
次に、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置1の動作について図6を参照して説明する。図6は、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の動作を順番に示すフローチャートである。
【0050】
(ステップS01)
まず、超音波プローブ2を被検体の体表に当てて、超音波プローブ2によってボリュームスキャン(3Dスキャン)を行なう。
【0051】
(ステップS02)
画像処理部6は、超音波プローブ2によるスキャンによって得られたボリュームデータに対して、ボリュームレンダリングを施すことにより3次元画像データを生成する。この3次元画像データに基づく3次元画像が表示部71に表示される。
【0052】
(ステップS03)
そして、操作者が入力部72を用いてゲイン調整の指示を与えると、画像処理部6はボリュームデータに対してMPR処理を施すことにより、任意断面の画像データを生成する。例えば、操作者が入力部72を用いて所望のC面(深さ)を指定すると、画像処理部6はそのC面に沿った画像データ(C面画像データ)を生成する。このC面画像データに基づくC面画像が表示部71に表示される。
【0053】
(ステップS04)
C面画像が表示部71に表示されている状態で、操作者が入力部71を用いてC面画像上の任意の範囲を指定する。この指定された範囲がゲイン調整の対象範囲になる。例えば、図3(a)に示すように、操作者が入力部72を用いて、C面画像23上で方向24を指定すると、C面画像23の周辺部がゲイン調整の対象となる範囲25に設定される。そして、その指定された範囲25の座標情報がユーザインターフェイス7から画像処理部6に出力される。また、図3(b)に示すように、操作者が入力部72を用いて、C面画像23上の点26を指定すると、その点26を中心とする範囲がゲイン調整の対象となる範囲27に設定される。その指定された範囲27の座標情報がユーザインターフェイス7から画像処理部6に出力される。
【0054】
(ステップS05)
画像処理部6は、ゲイン調整の対象となる範囲の座標情報を入力部72から受けると、その範囲を通過する走査線を特定し、その走査線の位置を示す情報を制御部8に出力する。
【0055】
(ステップS06)
制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の座標情報を画像処理部6から受けると、その範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。例えば、操作者が入力部72を用いてゲインカーブを指定すると、制御部8はそのゲインカーブに従って、ゲイン調整の対象範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。また、ゲインカーブを設定条件記憶部9に予め記憶しておくことで、制御部9はそのゲインカーブに従ってゲイン調整の対象範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。なお、制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の内側と外側とで、信号強度が連続するように、ゲインを決定する。例えば、制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の中央付近においては、ゲインを最も高くし、中央から周辺に向けて徐々にゲインを低く設定する。以上のようにゲインが決定されると、制御部8は、走査線の位置を示す情報とゲインを受信部4の受信信号強度調整部41に出力する。
【0056】
(ステップS07)
受信部4の受信信号強度調整部41は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、超音波プローブ2から出力された信号であって、指定された走査線上の信号の強度をそのゲインに従って調整する。そして、調整後の信号は信号処理部5を介して画像処理部6に出力される。
【0057】
(ステップS08)
画像処理部6は、ゲイン調整されたボリュームデータに対してボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことにより、3次元画像データなどの画像データを生成する。この画像データに基づく画像は表示部71に表示される。この画像はゲイン調整された画像であるため、輝度が調整された画像となっている。例えば、暗部のゲインが調整されている場合は、その暗部の輝度が高くなるため、全体的に輝度が均一になった画像が得られることになる。
【0058】
(ステップS09)
操作者は、このゲイン調整後の画像を観察し、設定したゲインの変更が必要か否かの判断を行う(ステップS09)。例えば、観察したい範囲(関心領域)の輝度が適切になっている場合は、ゲインの変更が不要であると判断し、輝度が低くて観察し難い場合は、ゲインの変更が必要であると判断する。そして、ゲインの変更が必要であると判断した場合は、操作者は、入力部72を用いてゲイン調整の指示を与える(ステップS09、Yes)。これにより、ステップS03からステップS08までの処理が繰り返されることになる。このとき、操作者は、ゲイン調整を行う範囲を変えたり、ゲインカーブを変えたりすることで、輝度調整の指示を与える。一方、ゲインの変更が不要であると判断した場合は、ステップS03からステップS08によって設定されたゲインとゲイン調整の範囲に従って、受信信号強度調整部41は、以後に取得される信号に対してゲイン調整を行う。
【0059】
以上のように、超音波の走査線が交差するC面画像を表示し、ゲイン調整の対象となる範囲をそのC面画像上で指定することで、3次元空間において、ゲイン調整の対象となる範囲(走査線)を簡便に指定することが可能となる。
【0060】
また、図4に示すように、C面に直交する面(断層面)に沿った画像(断層像28)をC面画像23と同時に表示部71に表示して、断層像28を観察しながらC面画像23上でゲイン調整の対象となる範囲を指定しても良い。このように、断層像28をC面画像23と同時に表示することで、3次元空間における位置の把握が更に容易になる。
【0061】
また、この第1の実施形態では、デジタル変換する前のアナログ信号に対してゲイン調整を行ったが、デジタル信号に変換した後でゲイン調整を行っても良い。この場合、ステップS06において、制御部8は、走査線の位置を示す情報とゲインを信号処理部5の受信信号強度調整部51に出力する。信号処理部5の受信信号強度調整部51は、制御部8から走査線の位置を示す情報とゲインを受けると、デジタル変換後の信号であって、指定された走査線上の信号の強度をゲインに従って調整する。そして、調整後の信号は画像処理部6に出力される。なお、ゲイン調整を行う範囲の指定は、上述した通りである。
【0062】
また、デジタル変換前のアナログ信号に対してゲイン調整を行い、さらに、デジタル変換後の信号に対してゲイン調整を行っても良い。
【0063】
[第2の実施の形態]
この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成について、図7を参照して説明する。図7は、この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aは、第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、超音波振動子が配列している面にほぼ平行な面(C面)に沿った画像(C面画像)を表示部71に表示する。そして、操作者が入力部72を用いて、ゲイン調整の対象となる範囲をその画像上で指定すると、超音波診断装置1Aは、超音波の送信信号の強度を調整することで超音波画像の輝度を調整する。第1の実施形態では、受信信号の強度を変更した。これに対して、第2の実施形態では、送信信号の強度を変更することで超音波画像の輝度を調整する。送信信号の強度を調整する方法として、送信信号の振幅の大きさを変える方法と、超音波の送信開口の大きさを変える方法がある。まず、送信信号の振幅の大きさを変える方法について説明し、次に送信開口の大きさを変える方法について説明する。
【0065】
(送信信号の振幅変更)
第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aは、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が備えている受信信号強度調整部41及び51に代えて、送信部3に送信信号強度調整部31又はアパーチャ設定部32を備えて構成されている。それら以外の構成については、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成と同じであるため、説明を省略する。以下、超音波診断装置1Aの構成、特に、送信部3の構成を中心に説明する。
【0066】
まず、送信信号の振幅を変えることで送信信号の強度を調整する方法について説明する。送信信号強度調整部31は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、その走査線上の送信信号の振幅を、そのゲインに従って大きくする。これにより、送信信号の強度が高くなる。このように、受信信号のゲイン調整に代えて、送信信号の強度を調整しても、超音波画像の輝度を調整することができる。
【0067】
なお、ゲイン調整を行う範囲を指定する方法、ゲインを決定する方法、及び走査線の位置を特定する方法は、上述した第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同じである。つまり、C面画像を表示部71に表示し、操作者が入力部72を用いて、そのC面画像上の任意の範囲を指定することにより、3次元空間において、ゲイン調整の対象となる範囲を容易に指定することができる。画像処理部6は、ゲイン調整の対象となる範囲を通過する走査線を特定し、その走査線の位置を示す情報を制御部8に出力する。制御部8は、ゲインを決定し、走査線の位置を示す情報とゲインを送信信号強度調整部31に出力する。送信信号強度調整部31は、そのゲインに従ってその走査線上の送信信号の振幅を変更する。
【0068】
以上のように、C面画像を表示し、そのC面画像上でゲイン調整の対象となる範囲を指定することで、3次元空間において、ゲイン調整の対象となる範囲を簡便に指定することが可能となる。
【0069】
(動作)
この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aの動作について図8を参照して説明する。図8は、この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の動作を順番に示すフローチャートである。
【0070】
(ステップS20)
まず、超音波プローブ2を被検体の体表に当てて、超音波プローブ2によってボリュームスキャン(3Dスキャン)を行なう。
【0071】
(ステップS21)
画像処理部6は、超音波プローブ2によるスキャンによって得られたボリュームデータに対して、ボリュームレンダリングを施すことにより、3次元画像データを生成する。この3次元画像データに基づく3次元画像が表示部71に表示される。
【0072】
(ステップS22)
そして、操作者が入力部72を用いてゲイン調整の指示を与えると、画像処理部6はボリュームデータに対してMPR処理を施すことにより、任意断面の画像データを生成する。例えば、操作者が入力部72を用いて所望のC面を指定すると、画像処理部6はそのC面に沿った画像データ(C面画像データ)を生成する。このC面画像データに基づくC面画像が表示部71に表示される。
【0073】
(ステップS23)
C面画像が表示部71に表示されている状態で、操作者が入力部72を用いてC面画像上の任意の範囲を指定する。この指定された範囲がゲイン調整の対象となる範囲に設定される。このようにゲイン調整の対象となる範囲が指定されると、C面画像上におけるその範囲の座標情報がユーザインターフェイス7から画像処理部6に出力される。
【0074】
(ステップS24)
画像処理部6は、ゲイン調整の対象となる範囲の座標情報を入力部72から受けると、その範囲を通過する走査線を特定し、その走査線の位置を示す情報を制御部8に出力する。
【0075】
(ステップS25)
制御部8は、ゲイン調整の対象となる範囲の座標情報を画像処理部6から受けると、その範囲のゲインを決定する。このゲインの決定手法については、上記第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同じであるため、説明を省略する。そして、制御部8は、走査線の位置を示す情報とゲインを送信部3の送信信号強度調整部31に出力する。
【0076】
(ステップS26)
送信部3の送信信号強度調整部31は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、そのゲインに従って、その走査線上の送信信号の強度を調整する。例えば、送信信号強度調整部31は、送信信号の振幅の大きさをゲインに従って大きくする。これにより、送信信号の強度が高くなる。
【0077】
(ステップS27)
そして、超音波プローブ2は、ゲインが調整された後の送信信号でボリュームスキャンを実行する。
【0078】
(ステップS28)
スキャンによって得られた受信信号は受信部4及び信号処理部5を介して画像処理部6に出力される。画像処理部6は、ボリュームデータに対してボリュームレンダリングなどの画像処理を施すことにより、3次元画像データなどの画像データを生成する。この画像データに基づく画像は表示部71に表示される。この画像はゲイン調整された送信信号によって得られた画像であるため、輝度が調整された画像となっている。例えば、暗部のゲインが調整されている場合は、その暗部の輝度が高くなるため、全体的に輝度が均一になった画像が得られることになる。
【0079】
(ステップS29)
操作者は、このゲイン調整後の画像を観察し、設定したゲインの変更が必要か否かの判断を行う(ステップS29)。例えば、関心領域の輝度が適切になっていない場合は、ゲインの変更が必要であると判断し、操作者は、再び、ゲイン調整の指示を与える(ステップS29、Yes)。これにより、ステップS22からステップS28までの処理が繰り返されることになる。このとき、操作者はゲイン調整を行う範囲を変えたり、ゲインカーブを変えたりすることで、輝度調整を指示する。一方、操作者が、ゲインの変更が不要であると判断した場合には、送信信号強度調整部31は、ステップS22からステップS28によって設定されたゲインとゲイン調整の範囲に従って、以後のゲイン調整を行う。
【0080】
以上のように、走査線が通過するC面画像を表示し、そのC面画像上でゲイン調整を行う範囲を指定することで、3次元空間における範囲指定を簡便に行うことが可能となる。
【0081】
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1と同様に、C面に直交する面(断層面)に沿った画像(断層像)をC面画像と同時に表示部71に表示しても良い。これにより、3次元空間における位置の把握が更に容易になる。さらに、C面画像以外の画像であって、走査線と交差する面の画像を作成し、その画像上でゲイン調整を行う範囲を指定しても良い。
【0082】
(送信開口の変更)
次に、超音波の送信開口の大きさを変えることで送信信号の強度を調整する方法について説明する。送信部3のアパーチャ設定部32は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、超音波プローブ2の超音波振動子において、その走査線の位置に対応する部分の超音波の開口面積を大きくする。送信部3は、アパーチャ設定部32によって設定された開口の大きさに従って、超音波プローブ2に超音波の送受信を実行させる。これにより、超音波の送信信号の強度は高くなるため、暗部の輝度を高くすることが可能となる。なお、通常のスキャンでは超音波の全開口を使用しないでスキャンを行ない、暗部の輝度を高めるときに、通常よりも開口面積を大きくすることで、通常のスキャンよりも送信信号の強度を高めることが可能となる。
【0083】
なお、送信信号強度調整部31、アパーチャ設定部32、画像処理部6、及び制御部8は、ハードウェアで構成されていても良く、ソフトウェアで構成されていても良い。例えば、送信信号強度調整部31、アパーチャ設定部32、画像処理部6、及び制御部8をそれぞれCPUで構成する。そして、図示しない記憶部に、送信信号強度調整部31の機能を実行するための送信信号調整プログラム、アパーチャ設定部32の機能を実行するためのアパーチャ設定プログラム、画像処理部6の機能を実行するための画像処理プログラム、及び制御部8の機能を実行するためのプログラムを予め記憶させておく。そして、CPUが、図示しない記憶部に記憶されている送信信号調整プログラムを実行することで、送信信号強度調整部31の機能を実行する。また、CPUが、アパーチャ設定プログラムを実行することで、アパーチャ設定部32の機能を実行する。また、CPUが、画像処理プログラムを実行することで画像処理部6の機能を実行する。また、CPUが、制御部8の機能を実行するプログラムを実行することで、制御部8の機能を実行する。
【0084】
[変形例]
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0085】
(変形例1)
まず、変形例1として、第2の実施形態に係る超音波診断装置1Aの変形例について図9を参照して説明する。図9は、超音波プローブの開口を説明するための図であり、図9(a)は超音波振動子の断面図、図9(b)は超音波プローブから見た図(トップビューの図)である。
【0086】
図9(a)に示すように、関心領域に暗部102が発生する要因として、肋骨などの高反射部(障害物)101が考えられる。超音波プローブ2の走査範囲内に肋骨などの高反射部(障害物)101が存在すると、その高反射部101によって超音波が反射されてしまうため、高反射部101の背後は暗部102となってしまう。このような場合、超音波の送信信号の強度を高めることにより、超音波画像の輝度を高めることができるが、障害物による超音波の反射波は避けられない。
【0087】
そこで、変形例1では、暗部102の領域を超音波プローブ2でスキャンする際には、暗部102の領域に近い超音波振動子を使用せずに、他の部分の超音波振動子によって暗部102の領域をスキャンする。一方、暗部102以外の領域をスキャンする際には、全ての超音波振動子を用いてスキャンを行なう。つまり、暗部102の領域をスキャンする際には、暗部102の領域に近い部分の開口を使わず、他の部分の開口によって暗部102の領域をスキャンし、暗部102以外の領域をスキャンする際には、全ての開口を使ってその領域をスキャンする。
【0088】
アパーチャ設定部32は、走査線の位置を示す情報(暗部102の位置を示す情報)を制御部8から受けると、その位置に近い開口以外の開口を設定する。例えば、アパーチャ設定部32は、走査線の位置を示す情報を制御部8から受けると、その走査線の位置を含む範囲であって、予め設定された幅の範囲を使用しない開口に設定する。暗部102をスキャンするときには、送信部3は、アパーチャ設定部32によって設定された開口に従って超音波プローブ2に超音波の送受信を実行させる。一方、暗部102以外の領域をスキャンするときには、送信部3は、全ての開口を使って超音波プローブ2に超音波の送受信を実行させる。
【0089】
例えば、図9(a)、(b)に示す例では、暗部102の領域をスキャンするときには、その暗部102に近い超音波振動子の群2Bを使用せず、他の部分の超音波振動子の群2Aを使用して暗部102の領域をスキャンする。これにより、障害物による超音波の反射の影響を低減することが可能となる。一方、暗部102以外の領域をスキャンするときには、全ての超音波振動子によってスキャンを行なう。
【0090】
以上のように暗部102の領域をスキャンする際には開口が小さくなるため、超音波の送信信号の強度が低下する。従って、その低下を補うため、送信信号強度調整部31は、送信信号の振幅を大きくする。この場合、制御部8は、走査線の位置を示す情報をアパーチャ設定部32に出力するとともに、信号強度の低下を補うためのゲインを送信信号強度調整部31に出力する。アパーチャ設定部32は、走査線の位置を示す情報に従って使用又は不使用の開口を設定し、送信信号強度調整部31はゲインに従って送信信号の振幅の大きさを変更する。
【0091】
以上のように、指定した範囲(暗部)に近い超音波振動子を用いずにスキャンを行なうことで、障害物による超音波の反射の影響を低減することが可能となる。さらに、開口が小さくなった分、超音波の送信信号の強度を高めることにより、超音波画像の輝度の均一化を図ることが可能となる。
【0092】
また、上記第1の実施形態と第2の実施形態に係る手法を組み合わせても良い。例えば、送信信号の強度を高めると共に、受信信号の強度を高めることにより、送信時と受信時とでゲイン調整を行っても良い。
【0093】
(変形例2)
次に、変形例2として、ゲイン調整の対象となる範囲を自動的に検出する例について、図10から図14を参照して説明する。図10は、変形例2に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。図11から図13は、C面画像上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。図14は、輝度値の分布を示す図である。
【0094】
図10に示す超音波診断装置1Bにおいて、第1実施形態に係る超音波診断装置1と同じ符号を示すものは同じ機能を有するため、ここでは説明を省略する。変形例2では、第1実施形態に係る超音波診断装置1に、ゲイン調整の対象となる範囲を自動的に検出する検出部10を設けた。以下、検出部10の構成について説明する。
【0095】
検出部10は、領域抽出部11、平均輝度値算出部12、ばらつき判定部13、組分け部14、及び重心位置算出部15を備えて構成されている。検出部10は、C面画像を予め設定された複数の領域に分け、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求め、その平均値が予め設定されたばらつきの範囲外にある領域を特定する。さらに、検出部10は、その特定した領域に接する領域を1つの組に組分けし、その組に属する領域における輝度値の分布に基づいて輝度の重心位置を求める。そして、制御部8は、その重心位置を中心とした所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。
【0096】
領域抽出部11は、画像処理部6から出力されたC面画像データを受けると、C面画像内において、所定の閾値以上の輝度値を有する領域を抽出する。この閾値は、被検体の組織を検出するために設定される値であり、画像の輝度値が閾値以上となる領域は、被検体の組織を表していることになる。例えば、領域抽出部11は、輝度値が閾値未満となる領域の境界を検出することで、輝度値が閾値以上となる領域を抽出する。
【0097】
領域抽出部11による境界の検出処理について図11を参照して説明する。例えば図11に示すように、領域抽出部11は、C面画像40の境界41を検出し、その境界41の内側に含まれる領域を抽出する。境界41の外側では、輝度値が閾値未満となっており、境界41の内側では、輝度値が閾値以上となっている。図11に示す例では、境界41の内側の画像が被検体の組織を表している。
【0098】
平均輝度値算出部12は、領域抽出部11にて抽出された領域に含まれる各画素の座標情報と各画素の輝度値を受け、さらに、C面画像を複数の領域に分けて、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求める。制御部8が、C面画像を複数の領域に分ける設定を行う。制御部8には、分割のパターンが予め設定されている。平均輝度値算出部12は、分割パターンを表す情報を制御部8から受けて、その分割パターンに従ってC面画像を複数の領域に分けて、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求める。そして、平均輝度値算出部12は、各領域における輝度値の平均値をばらつき判定部13に出力する。
【0099】
なお、制御部8には複数の分割パターンが予め設定されており、操作者はそれら複数の分割パターンから所望の分割パターンを選択することができる。例えば、制御部8は、予め設定されている複数の分割パターンを表示部71に表示させる。そして、操作者が、複数の分割パターンのうち所望の分割パターンを、入力部72を用いて指定すると、制御部8は指定された分割パターンを示す情報を平均輝度算出部12に出力する。平均輝度値算出部12は、その分割パターンに従ってC面画像を複数の領域に分けて、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求める。
【0100】
ここで、C面画像上に設定される複数の領域について図11から図13を参照して説明する。
【0101】
例えば図11に示す分割パターン42は、格子状のパターンを有している。格子状の分割パターン42によって分割された各領域は同じ形状、同じ大きさを有している。平均輝度値算出部12は、領域抽出部11によって抽出された領域に含まれる各画素の座標情報と各画素の輝度値を受け、さらに、制御部8から分割パターン40を示す情報を受けて、その分割パターン42によって分けられた各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求める。
【0102】
なお、制御部8は、画像処理部6によって生成されたC面画像40を表示部71に表示させ、さらに、分割パターン42をC面画像40に重ねて表示部71に表示させても良い。
【0103】
分割パターンの他の例を図12と図13に示す。例えば図12に示す分割パターン43は、同心円状のパターンと、円の中心から放射状に延びる線とを有している。また、図13に示す分割パターン44は、円状のパターンと、円の中心から放射状に延びる線とを有している。分割パターン43、44は制御部8に設定されている。操作者によって分割パターン43又は分割パターン44が指定されると、制御部8は指定された分割パターン43(44)を示す情報を平均輝度値算出部12に出力する。平均輝度値算出部12は、分割パターン43(44)に従ってC面画像を複数の領域に分けて、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求める。
【0104】
ばらつき判定部13は、平均輝度値算出部12によって求められた各領域の輝度値の平均値を受けると、それぞれの平均値がばらつきの範囲内に含まれるか否かを判定する。このばらつきの範囲は、ばらつき判定部13に予め設定されている。例えば、ばらつき判定部13は、各領域の輝度値の平均値を受けると、その平均値の平均をさらに算出し、算出された平均値をばらつきの基準値とする。ばらつき判定部13は、各領域の輝度値の平均値が、その基準値を基準として所定のばらつきの範囲内に含まれているか否かを判定する。そして、ばらつき判定部13は、輝度値の平均値がばらつきの範囲外となる領域を特定する。ばらつき判定部13は、輝度値の平均値がばらつきの範囲外となる領域の座標情報を組分け部14に出力する。
【0105】
このばらつきの範囲を図14に示す。図14において、平均値は、ばらつき判定部13によって求められたばらつき判定の基準となる基準値である。上限値(上限の閾値)と下限値(下限の閾値)は、ばらつきの基準値を基準として、ばらつきの範囲を規定する値である。上限値(上限の閾値)と下限値(下限の閾値)は、ばらつき判定部13に予め設定されている。ばらつき判定部13は、各領域の輝度値の平均値が上限値と下限値の間に含まれれば、その領域の輝度値の平均値はばらつきの範囲内であると判定する。一方、ばらつき判定部13は、各領域の輝度値の平均値が上限値又は下限値を超えた値であれば、その領域の輝度値の平均値はばらつきの範囲外であると判定する。例えば図14に示すように、ばらつき判定部13は、下限値(下限の閾値)未満となっている平均値を、ばらつきの範囲外であると判定する。そして、ばらつき判定部13は、輝度値の平均値がばらつきの範囲外となる領域の座標情報を組分け部14に出力する。
【0106】
組分け部14は、平均値がばらつきの範囲外と判定された領域に接する領域を1つの組として関連付ける。
【0107】
重心位置算出部15は、組分け部14によって1つの組として関連付けられた各領域における輝度の分布に基づいて、輝度の重心位置を求める。例えば、重心位置算出部15は、組分け部14によって1つの組として関連付けられた各領域に含まれる各画素の輝度値、各画素の位置、及びその組に属する領域が占める面積に基づいて、その組に属する領域の輝度の重心位置を求める。そして、重心位置算出部15は、輝度の重心位置の座標情報を制御部8に出力する。
【0108】
制御部8は、その重心位置の座標情報を重心位置算出部15から受けると、その重心位置を中心として予め設定された所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。例えば、制御部8は、図5に示すように予め設定されたゲインカーブに従って、その重心位置を中心として所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。
【0109】
そして、第1実施形態と同様に、制御部8は、走査線の位置を示す情報とゲインを受信部4の受信信号強度調整部41に出力する。受信部4の受信信号強度調整部41は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、超音波プローブ2から出力される信号のうち、その走査線上の信号の強度をゲインに従って変更する。また、制御部は、走査線の位置を示す情報とゲインを、受信信号強度調整部41に出力する代わりに、信号処理部5の受信信号強度調整部51に出力しても良い。受信信号強度調整部51は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、デジタル変換後の信号であって、その走査線上の信号の強度をゲインに従って変更する。また、第2実施形態と同様に、制御部8は、走査線の位置を示す情報とゲインを、受信信号強度調整部41又は受信信号強度調整部51に出力する代わりに、図7に示す送信信号強度調整部31に出力しても良い。送信信号強度調整部31は、走査線の位置を示す情報とゲインを制御部8から受けると、その走査線における送信信号の振幅を、そのゲインに従って大きくする。これにより、送信信号の強度が大きくなる。
【0110】
以上のように、変形例2においても、アナログゲインの調整、デジタルゲインの調整、又は送信信号の調整のいずれの調整を行う。
【0111】
また、組分け部14によって、各領域が複数の組に分けられた場合、重心位置算出部15は、組ごとに輝度の重心位置を求め、各組の重心位置の座標情報を制御部8に出力する。制御部8は、複数の重心位置の座標情報を受けると、予め設定されたゲインカーブに従って、各重心位置を中心に所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを調整する。
【0112】
以上の構成を有する超音波診断装置1Bによると、局所的な陰影による輝度の低下がある場合であっても、その陰影となる部分を自動的に検出し、全体の輝度を自動的に調整することが可能となる。
【0113】
また、上記変形例2では、C面画像データを求め、C面画像の輝度値に基づいてゲイン調整の対象となる範囲を求めた。この他、変形例2では、C面を通過する各走査線上の信号の値に基づいてゲイン調整の対象となる範囲を求めても良い。
【0114】
また、検出部10はハードウェアで構成されていても良く、ソフトウェアで構成されていても良い。例えば、検出部10をCPUで構成し、図示しない記憶部に検出部10の機能を実行するための検出プログラムを予め記憶させておく。この検出プログラムには、領域抽出部11の機能を実行するための領域抽出プログラム、平均輝度値算出部12の機能を実行するための平均輝度値算出プログラム、ばらつき判定部13の機能を実行するためのばらつき判定プログラム、組分け部14の機能を実行するための組分けプログラム、及び重心位置算出部15の機能を実行するための重心位置算出プログラムを含んで構成されている。そして、CPUが、図示しない記憶部に記憶されている検出プログラムを実行することで、検出部10の機能を実行する。すなわち、CPUが、検出プログラムに含まれている各プログラムを実行することで、領域抽出部11の機能、平均輝度値算出部12の機能、ばらつき判定部13の機能、組分け部14の機能、及び重心位置算出部15の機能をそれぞれ実行する。
【0115】
(変形例3)
次に、変形例3に係る超音波診断装置について説明する。この変形例3に係る超音波診断装置は、上述した変形例2に係る超音波診断装置と同じ構成を有し、重心位置を中心とした所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。さらに、変形例3に係る超音波診断装置は、深さが異なる複数のC面ごとに重心位置を求め、各深さにおける重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定し、その決定したゲインに対して重み付け処理を行うことで各走査線上の信号に対するゲインを求める。
【0116】
まず、操作者が入力部72を用いて複数の深さを指定すると、画像処理部6はその指定に従って、深さが異なる複数のC面画像データを生成する。そして、画像処理部6は、それら複数のC面画像データを検出部10に出力する。
【0117】
検出部10は、画像処理部6にて生成された複数のC面画像データに対して、変形例2と同じ処理を施すことで、輝度調整を行う範囲の重心位置を各深さのC面画像ごとに求める。そして、輝度調整設定部10は、各深さのC面画像ごとに求めた重心位置の座標情報を制御部8に出力する。
【0118】
制御部8は、各深さのC面画像ごとに求められた重心位置を重心位置算出部15から受けると、重心位置を中心として所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを、深さごとに決定する。例えば、制御部8は、図5に示すように予め設定されたゲインカーブに従って、重心位置を中心として所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを、深さごとに決定する。すなわち、制御部8は、各深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定する。
【0119】
さらに、制御部8は、各深さのC面に対して設定された重み付けに従って、各走査線上の信号に対するゲインを求める。各深さのC面に対する重み付けは、操作者が入力部72を用いて指定することができる。具体的には、制御部8は、各深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して、各深さのC面に対する重み付けを行い、重み付けを行ったゲインの平均値を求める。
【0120】
そして、制御部8は、ゲインの平均値を全体の走査線上の信号に対するゲインとし、走査線の位置を示す情報とゲインの平均値を、受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、又は送信信号強度調整部31に出力する。受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、又は送信信号強度調整部31は、制御部8から出力されたゲインの平均値を用いて、第1実施形態及び第2実施形態と同様にゲインの調整を行う。
【0121】
例えば、深さ方向に3番目、4番目、及び5番目に深い位置のC面に対して設定された重みが「1」であり、他の深さのC面に対して設定された重みが「0」の場合、制御部8は、各深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して、各深さの重み付けを行う。さらに、制御部8は、重み付けを行なった各深さのゲインの平均値を求める。この例では、深さ方向に3番目、4番目、及び5番目に深い位置のC面に対して設定された重みが「1」であるため、制御部8は、3番目、4番目、及び5番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインの平均値を求める。より詳しく説明すると、制御部8は、3番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲイン、4番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲイン、及び、5番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインの平均値を求める。そして、制御部8は、そのゲインの平均値を全体の走査線上の信号に対するゲインとし、走査線の位置を示す情報とゲインの平均値を、受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、又は送信信号強度調整部31に出力する。
【0122】
また、深さ方向に、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、及び6番目に深い位置のC面に対して設定された重みがそれぞれ、「0.0」、「0.1」、「0.3」、「0.7」、「0.8」、「0.3」の場合、制御部8は、各深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して、各深さの重み付けを行う。さらに、制御部8は、重み付けを行なった各深さのゲインの平均値を求める。より詳しく説明すると、制御部8は、1番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.0」の重み付けを行い、2番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.1」の重み付けを行い、3番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.3」の重み付けを行い、4番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.7」の重み付けを行い、5番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.8」の重み付けを行い、さらに、6番目の深さの重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインに対して「0.3」の重み付けを行う。そして、制御部8は、重み付け後のゲインの平均値を求める。そして、制御部8は、そのゲインの平均値を全体の走査線上の信号に対するゲインとし、走査線の位置を示す情報とゲインの平均値を、受信信号強度調整部41、受信信号強度調整部51、又は送信信号強度調整部31に出力する。
【0123】
以上のように、深さが異なる複数のC面ごとに重心位置を求め、各深さにおける重心位置を中心とする所定範囲を通過する各走査線上の信号に対するゲインを決定し、その決定したゲインに対して重み付け処理を行うことで各走査線上の信号に対するゲインを求める。これにより、より局所的なゲインの調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】超音波プローブが走査する実空間を示す模式図である。
【図3】C面画像の表示例を示す図である。
【図4】断層像とC面画像の表示例を示す図である。
【図5】ゲインカーブの一例を示す図である。
【図6】この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の動作を順番に示すフローチャートである。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の動作を順番に示すフローチャートである。
【図9】超音波プローブの開口を説明するための図であり、図9(a)は超音波振動子の断面図、図9(b)は、超音波プローブから見た図(トップビューの図)である。
【図10】変形例2に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】C面画像上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。
【図12】C面画像上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。
【図13】C面画像上に設定される複数の領域を模式的に示す図である。
【図14】輝度値の分布を示す図である。
【図15】断層像における高輝度部と暗部を説明するための図である。
【符号の説明】
【0125】
1、1A、1B 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送信部
4 受信部
5 信号処理部
6 画像処理部
7 ユーザインターフェイス
8 制御部
9 設定情報記憶部
10 検出部
11 領域抽出部
12 平均輝度値算出部
13 ばらつき判定部
14 組分け部
15 重心位置算出部
31 送信信号強度調整部
32 アパーチャ設定部
41、51 受信信号強度調整部
71 表示部
72 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子が配列されて、3次元的に超音波を送受信する超音波プローブと、
前記超音波の送受信によって得られた信号に基づいて、超音波の走査線と交差する面に沿った第1の超音波画像を生成する画像処理手段と、
前記第1の超音波画像を表示する表示手段と、
前記第1の超音波画像上で設定された輝度調整の対象となる輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更する信号強度調整手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記信号強度調整手段によって変更された信号に基づいて、第2の超音波画像を生成し、
前記表示手段は、前記第2の超音波画像を表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記表示手段に表示されている第1の超音波画像上において所望の輝度調整範囲を指定するための指定手段を更に有し、
前記信号強度調整手段は、前記指定された輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記指定手段によって前記第1の超音波画像の中心から所望の方向が指定されると、
前記信号強度調整手段は、前記所望の方向に沿って、前記第1の超音波画像の周辺部から中心側にかけた範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記第1の超音波画像を予め設定された複数の領域に分け、各領域に含まれる画素の輝度値の平均値を領域ごとに求め、その平均値が予め設定されたばらつきの範囲外にある領域を特定する検出手段を更に有し、
前記信号強度調整手段は、前記特定された領域を含む領域を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記特定した領域に接する領域を1つの組に組分けし、その組に属する領域における輝度の分布に基づいて輝度の重心位置を求め、
前記信号強度調整手段は、前記輝度の重心位置を中心とした所定範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記第1の超音波画像として、前記超音波振動子が配列された面と略平行な面に沿った画像を生成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記画像処理手段は、前記超音波の送受信によって得られた信号に基づいて、前記第1の超音波画像を生成するとともに、前記走査線を含む面に沿った第3の超音波画像を生成し、
前記表示手段は、前記第1の超音波画像と前記第3の超音波画像を表示することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記信号強度調整手段は、前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を位置に応じて段階的に変更することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記信号強度調整手段は、前記超音波の送受信によって得られた信号がデジタル信号に変換される前、デジタル信号に変換された後、又はデジタル信号に変換される前後において、前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記信号強度調整手段は、前記超音波の送受信によって得られた信号のうち前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号に対するゲインを変更することで、前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記信号強度調整手段は、前記超音波プローブによる超音波の送信時における信号の強度を変更することで、前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記信号強度調整手段は、前記超音波プローブによって送信される超音波の振幅の大きさ、超音波の送信開口の大きさ、又は超音波の振幅の大きさと送信開口の大きさを変更することで、前記送信時における前記輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更することを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
コンピュータに、
3次元的に超音波を送受信することによって得られた信号に基づいて、超音波の走査線と交差する面に沿った第1の超音波画像を生成する第1の画像処理機能と、
前記第1の超音波画像を表示手段に表示させる第1の表示機能と、
前記第1の超音波画像上で設定された輝度調整の対象となる輝度調整範囲を通過する走査線上の信号の強度を変更する信号強度調整機能と、
前記信号強度調整機能によって変更された信号に基づいて、第2の超音波画像を生成する第2の画像処理機能と、
前記第2の超音波画像を前記表示手段に表示させる第2の表示機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−313294(P2007−313294A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67960(P2007−67960)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】