説明

超音波診断装置

【課題】
複数の熱源から生じる温度変化を個別に予測して、超音波プローブの動作パラメータを適切に設定する。
【解決手段】
実施態様によれば、超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、前記プローブに内蔵され、動作パラメータ及び駆動電圧に従って超音波を送受信する超音波振動子と、前記プローブに内蔵され、動作パラメータに従って駆動する部品と、前記超音波振動子に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記部品に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、前記入力部が受け付けた動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、前記駆動電圧を設定する制御部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波により被検体の体内を画像化し診断を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブ(以下、単にプローブと記載する。)から超音波を被検体に対して送信し、被検体を構成する組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波を受信して表示部に表示する医用装置である。この超音波診断装置による診断は、プローブを被検体の体表に接触させることでリアルタイムの超音波画像を生成して、超音波画像をディスプレイに表示することで行われる。
【0003】
超音波の送信は、プローブ内に内蔵された超音波振動子を振動させることにより行われるが、超音波振動子の振動は発熱を伴う。発熱するプローブに接触する被検体の安全を確保するために、プローブ表面温度についての許容温度の上限が安全規格により定められている。許容温度の範囲内でプローブを使用するため、超音波振動子の付近に温度センサを取り付け、温度センサの温度検出結果に応じて超音波の送信条件を設定する発明が公開されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−202077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述した超音波診断装置においては、1次元配列された超音波振動子から超音波を送受信することで、2次元の超音波画像を生成していた。近年、超音波振動子の構成を変更して超音波を2次元方向に対して送受信することで、3次元の超音波画像を生成する手法が実用化されている。超音波の送受信及び超音波画像の生成を連続的に行うことで、3次元の超音波画像をリアルタイムに生成することが可能となる。
【0006】
3次元の超音波画像を生成する超音波振動子の構成は、例えば次の2つが考えられる。1つ目は、1次元配列された超音波振動子を配列方向に対して直交する方向に揺動させながら超音波を送受信することで、超音波の送受信方向を2次元方向に広げる構成である。超音波振動子の揺動は、プローブに内蔵したステッピングモータなどのモータを超音波振動子に取り付けて、これを駆動させることにより行われる。そして2つ目は、超音波振動子自体を2次元のアレイ状に並べる構成である。アレイを構成する各超音波振動子はアレイ駆動基板によって束ねられて接続され、アレイ駆動基板が各超音波振動子へ電気信号の出力を行う。
【0007】
これらの方法を用いて3次元画像の生成を行う場合を考えると、1つ目の方法ではモータが超音波振動子を揺動させる動作を継続して行わなければならない。モータの揺動動作は発熱を伴うためモータは熱源として働き、プローブ表面の温度を更に上昇させる。一方2つ目の方法では拡張音波振動子を束ねるアレイ駆動基板に電気信号が集中して入出力されるため、電気信号の入出力が原因となって発熱が生じる。アレイ駆動基板も同様に熱源として働き、プローブ表面の温度を更に上昇させる。これらの熱源の働きによって、プローブ表面温度の上昇量は2次元の超音波画像を生成する従来の超音波診断装置に比べ更に高いものとなる。
【0008】
ところで、プローブ表面温度の管理を行うために、超音波振動子の超音波送信波形、送信間隔、あるいは送信駆動電圧などの送信条件が変化した場合に超音波振動子の温度上昇がどの程度発生するかを予め測定しておき、温度上昇と送信条件とを対応付けた温度上昇テーブルを作成しておく方法が考えられる。テーブルを用いることで、設定された送信条件におけるプローブ表面温度が許容温度の上限を超えるか否かを送信条件の設定段階で判断することができる。送信条件を許容温度の範囲内に収まる値へと抑制することで、超音波診断装置はプローブ表面温度を安全な範囲内で保つことができる。熱源による温度上昇を考慮してプローブ表面温度を管理するため、熱源の温度上昇が最大となる場合を想定し、熱源が最大の発熱を行っている際の温度上昇と送信条件とを対応付けた温度上昇テーブルを作成すると、確実に許容温度の上限を超える事態を防止できる。しかし、熱源の発熱量が小さい駆動パラメータでモータを動作する場合には、上述の温度テーブルを用いると送信条件が過剰に抑制されてしまうため、超音波振動子の感度が低下し画質が低下するという課題がある。
【0009】
これらの課題を解決するため、本願は複数の熱源から生じる温度変化を個別に予測して、超音波プローブの動作パラメータを適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願は、超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、前記プローブに内蔵され、動作パラメータ及び駆動電圧に従って超音波を送受信する超音波振動子と、前記プローブに内蔵され、動作パラメータに従って駆動する部品と、前記超音波振動子に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記部品に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、前記入力部が受け付けた動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、前記駆動電圧を設定する制御部とを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願の実施形態に係る超音波診断装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】本願の実施形態に係るメカニカル4Dプローブの構成を示す図。
【図3】本願の実施形態に係るメカニカル4Dプローブの超音波振動子の構成を示す図。
【図4】本願の実施形態に係る2Dアレイプローブの構成を示す図。
【図5】本願の実施形態に係る2Dアレイプローブの超音波振動子の構成を示す図。
【図6】本願の実施形態に係る駆動電圧と最大飽和温度との関係を示す図。
【図7】本願の実施形態に係る駆動電圧と最大飽和温度とを関連付けた温度変化情報を示す図。
【図8】本願の実施形態に係る揺動パラメータと相対飽和温度との関係を示す図。
【図9】本願の実施形態に係る揺動パラメータと許容温度上限との関係を示す図。
【図10】本願の実施形態に係る揺動パラメータと許容温度上限とを関連付けた温度変化情報を示す図。
【図11】本願の実施形態に係る列パラメータと相対飽和温度との関係を示す図。
【図12】本願の実施形態に係る列パラメータと許容温度上限との関係を示す図。
【図13】本願の実施形態に係る列パラメータと許容温度上限とを関連付けた温度変化情報を示す図。
【図14】本願の実施形態に係る送受信条件の設定処理を示すフローチャート。
【図15】本願の実施形態に係る揺動パラメータと相対飽和温度との関係を示す図。
【図16】本願の実施形態に係る送受信条件の別の設定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(超音波診断装置1の内部構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置1の内部構成を示したブロック図である。超音波診断装置1は、図1に示すようにシステム制御部10とプローブ20とを組み合わせることにより構成される。
【0014】
システム制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)から構成される。操作部11、記憶部12、表示部13、超音波画像生成部15、送受信部16、Bモード処理部17、及びドプラ処理部18から構成される。なお、本発明における超音波診断装置1の構成はこれに限られるものではなく、適宣構成要素を追加しても構わない。あるいは、構成要素を省略あるいは統合しても構わない。
【0015】
プローブ20は、送受信部16から出力された駆動信号に基づいて超音波を発生し、また被検体から反射された超音波を受信して電気信号(以下、エコー信号と記載する)に変換する部材である。プローブ20内には超音波振動子21が内蔵され、プローブ20は送受信部16から受信した超音波の送信条件と、駆動電圧に基づいて特定の超音波振動子21から超音波信号を送信する。
【0016】
なお、本実施例におけるプローブ20は後に詳述する2つの構成のうちいずれかの構成を用いることにより、超音波振動子21が送受信する超音波の志向性を2次元方向に対して制御する。1つ目の構成は、超音波振動子21を1次元方向に配列し、配列方向に対して直交する向きに対して超音波振動子21を揺動させる駆動部25を取り付ける構成である(以下、駆動部25により超音波振動子21を揺動させるプローブ20を、メカ4Dプローブ30と記載する)。駆動部25は揺動運動によって超音波振動子21を傾け、超音波の送受信方向を変化させる。この送受信方向の変化によって、メカ4Dプローブ30は超音波の送受信方向を2次元的に変化させる。一方2つ目の構成は、超音波振動子21を2次元アレイ状に配列する構成である(以下、2次元アレイ上に超音波振動子21を配列したプローブ20を、2Dアレイプローブ40と記載する)。超音波の送受信を行う超音波振動子21の列を切り替えることにより、2Dアレイプローブ40は超音波の送受信方向を2次元的に変化させる。メカ4Dプローブ30及び2Dアレイプローブ40の構成は後に詳しく述べる。
【0017】
なお後述の実施例においては、超音波の送信条件、超音波振動子21の駆動電圧、駆動部25の揺動パラメータ、及び列パラメータを総称してプローブ20の動作パラメータと記載し、動作パラメータの集合を動作パラメータ群と記載する。
【0018】
送受信部21は、プローブ20へ駆動信号を出力する際に用いるパルサ回路及び遅延回路を備える。パルサ回路は、プローブ20に超音波を送信させるレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波をビーム状に収束して送信指向性を決定する遅延時間をレートパルスに付加する。送受信部21はこの遅延時間を付加されたレートパルスを、駆動信号としてプローブ20へ出力する。この駆動信号には、超音波振動子21の駆動パラメータを指定する送信条件の情報が含まれる。送信条件は具体的には、超音波の送信波形、送信間隔、送信周波数、超音波の焦点位置などから構成される。
【0019】
なお、システム制御部10に接続されるプローブ20がメカ4Dプローブ30である場合には、この駆動信号には駆動部25を揺動させる条件を指定する揺動パラメータの情報が含まれる。揺動パラメータは具体的には、駆動部25による超音波振動子21の揺動角度、揺動速度、及び角度解像度などの情報が含まれる。なお角度解像度とは、超音波振動子21の傾き角度について、何度おきに超音波の送受信を行うかを指定するパラメータである。一方、システム制御部10に接続されるプローブ20が2Dアレイプローブ40である場合には、この駆動信号には2次元アレイのどの列に属する超音波振動子21を駆動するかを指定する列パラメータの情報が含まれる。列パラメータとは具体的には、駆動基板28が超音波振動子21の電気信号の導通経路を切り替えるスイッチング速度や、切り替える順番などの情報が含まれる。
【0020】
また、送受信部21は、プローブ20が受信したエコー信号を受信する際に用いるアンプ回路、A/D変換器、加算器を備える。アンプ回路は、プローブ20が受信したエコー信号を増幅し、A/D変換器へ出力する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号の受信指向性を決定するために必要な遅延時間をエコー信号に与え、加算器へと出力する。加算器は遅延時間を与えられたエコー信号を加算することで、超音波を送信するスキャンラインに対応したエコー信号を生成する。送受信部21はエコー信号を生成すると、これをBモード処理部17あるいはドプラ処理部18へと出力する。
【0021】
なお、システム制御部10に接続されるプローブ20がメカ4Dプローブ30である場合には、エコー信号の出力は超音波振動子21が超音波を受信した時点における、超音波振動子21の傾き角度と関連付けて行われる。この傾き角度の情報は、超音波画像生成部15による3次元画像の生成処理に用いられる。一方、システム制御部10に接続されるプローブ20が2Dアレイプローブ40である場合には、エコー信号の出力は超音波を受信した超音波振動子21が属する列の情報と関連付けて行われる。この列の情報は、超音波画像生成部15による3次元画像の生成処理に用いられる。
【0022】
Bモード処理部17は、送受信部16が出力したエコー信号の振幅強度に応じて変化するBモード信号を生成する。Bモード処理部17は生成したBモード信号を超音波画像生成部15へ出力する。
【0023】
ドプラ処理部18は、エコー信号の周波数遷移を検出して、組織あるいは血流の移動速度を抽出したドプラ信号を生成する。ドプラ処理部18はドプラ信号を超音波画像生成ユニット15へ出力する。
【0024】
超音波画像生成ユニット15は、Bモード処理部17とドプラ処理部18から出力されたBモード信号やドプラ信号に基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像の生成は、操作部12から指示されたモード切替信号に応じて画像生成モードを切り替えながら行う。例えば操作部12がBモードを指示した場合、超音波画像生成ユニット15は、Bモード信号を超音波の送受信に対応した座標にマッピングしてBモード画像を生成する。操作部12がドプラモードを指示した場合、超音波画像生成ユニット15は、ドプラ信号を超音波の送受信に対応した座標にマッピングし、更にBモード画像上に重畳したドプラ画像を生成する。超音波画像生成ユニット15はこれらの超音波画像を生成して、表示部14へと出力する。
【0025】
なお、システム制御部10に接続されるプローブ20がメカ4Dプローブ30である場合には、超音波画像生成ユニット15は、エコー信号を受信した時点における超音波振動子21の傾き角度に応じて、別々の超音波画像を生成する。例えば超音波振動子21が128種の異なる傾き角度でエコー信号を受信した場合、超音波画像生成ユニット15は傾き角度ごとに128枚の超音波画像を生成する。更に、超音波画像生成ユニット15は傾き角度の情報を用いて各超音波画像を合成することで、3次元のボリュームデータを生成する。具体的にはボリュームデータの生成は、超音波画像を構成する各画素を、傾き情報を用いて所定の位置のボクセルへとマッピングすることにより行われる。
【0026】
一方、システム制御部10に接続されるプローブ20が2Dアレイプローブ40である場合には、超音波画像生成ユニット15は、エコー信号を受信した超音波振動子21が属する列に応じて、別々の超音波画像を生成する。例えば64列に並べられた超音波振動子21がそれぞれエコー信号を受信した場合、超音波画像生成ユニットは列ごとに64枚の超音波画像を生成する。更に、超音波画像生成ユニット15は列情報を用いて各超音波画像を合成することで、3次元のボリュームデータを生成する。具体的にはボリュームデータの生成は、超音波画像を構成する各画素を、列情報を用いて所定の位置のボクセルへとマッピングすることにより行われる。超音波画像生成ユニット15は種々のレンダリング処理に基づいてボリュームデータを画像データへと変換して、表示部13あるいは記憶部12へと出力する。
【0027】
なお、ここではモード切替信号に応じてBモード画像とドプラ画像とを切り替えて生成する例を示したが、超音波画像生成ユニット15が生成する超音波画像はこれに限られない。例えばエコー信号のうち周波数遷移が生じている領域について、周波数遷移から組織あるいは血流の移動速度・分散・エコー信号の振幅を算出し、これらのパラメータに基づいて色付けを行い表示するCDI(Color Doppler Imaging)モード、特定の診断領域の反射波強度変化を時系列化して表示するMモードなどの、様々なモードに基づいて超音波画像を生成するものであっても構わない。あるいは、Bモード画像やドプラ画像などの超音波画像を生成した後に、別モードの超音波画像を並べて新たな超音波画像を表示する並列表示モードを備えていても構わない。
【0028】
表示部13は、例えばLCD(Lucid Cristal Display)や有機EL(Electro Luminescence)から構成されるディスプレイである。表示部13は、超音波画像生成部15から出力された超音波画像を表示する。あるいは、超音波画像生成部15が超音波画像を表示するためのパラメータや、プローブ20が超音波を送受信する際のパラメータなどを表示する。
【0029】
記憶部12は、例えばROM、RAMや電気的に書き換えや消去が可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ、及びHDD(Hard Disk Drive)などから構成される記憶媒体である。記憶部12はシステム制御部10により実行される種々のアプリケーションデータや制御データ、及び超音波画像生成部15から出力されたボリュームデータや画像データを記憶する。また、記憶部12は送信条件と最大飽和温度とを関連付ける送信条件対最大飽和温度テーブルを記憶する。送信条件対最大飽和温度テーブルは、ある送信条件において超音波振動子21を駆動し続けて、プローブ20の表面温度が平衡状態になったときの超音波振動子21の温度(飽和温度)と、送信条件とを対応付けて記録するテーブルである。
【0030】
なお、システム制御部10に接続されるプローブ20がメカ4Dプローブ30である場合には、記憶部12は揺動パラメータと許容温度とを関連付ける揺動パラメータ対許容温度テーブルを記憶する。揺動パラメータ対許容温度テーブルは、ある揺動パラメータにおいてメカ4Dプローブ30を駆動した際に、プローブの接触する被検体に危険を及ぼさない限界の超音波振動子21の温度(許容温度)と、揺動パラメータとを対応付けて記録するテーブルである。
【0031】
一方、システム制御部10に接続されるプローブ20が2Dアレイプローブ40である場合には、記憶部12は列パラメータと許容温度とを関連付ける列パラメータ対許容温度テーブルを記憶する。列パラメータ対許容温度テーブルは、ある列パラメータにおいて2Dアレイプローブ40を駆動した際に、プローブの接触する被検体に危険を及ぼさない限界の超音波振動子21の温度(許容温度)と、列パラメータとを対応付けて記録するテーブルである。
【0032】
なお、記憶部12に記録されるテーブルはこの2つに限られず、例えば揺動パラメータと駆動部25の温度変化とを対応付けて記録する揺動パラメータ対相対飽和温度テーブルや、列パラメータと駆動基板28の温度変化とを対応付けて記録する列パラメータ対相対飽和温度テーブルなどが記録されていても構わない。
【0033】
操作部11は、例えば機械的なボタン、ダイヤル、トラックボール、スライダやホイールなどの種々の操作デバイスを用いて構成され、使用者が行った入力を電気信号に変換してシステム制御部10へ出力する部材である。操作部11は入力に応じて、例えば送受信部16に超音波の送受信の開始・停止を指示する指示信号や、超音波画像生成部15が超音波画像を生成するモードを切り替える指示信号、及び送信条件や揺動パラメータを指定する指示信号を出力する。
【0034】
(メカ4Dプローブ30の構成)
以下、メカ4Dプローブ30の具体的な構成につき図2及び図3を用いて述べる。図2は、メカ4Dプローブ30の内部構成の概略を示す図である。超音波振動子21の配列方向をx軸、超音波振動子21による超音波の放射方向の中心をz軸とおいたとき、図2(a)はxz平面におけるメカ4Dプローブ30の断面図、図2(b)はyz平面におけるメカ4Dプローブ30の断面図を示している。
【0035】
メカ4Dプローブ30は、x軸に沿って一次元的に並べて配列した超音波振動子21をバッキング材23に接続し、更に駆動部25とバッキング材23とをアーム24で接続することにより構成される。さらに、これらの部材はプローブ外殻29によって機能可能なように梱包される。
【0036】
超音波振動子21は送受信部16から行われる電気信号の入力に応じて超音波をz方向に向けて送信し、また被検体から反射してきたエコー信号を受信して電気信号へと変換し、送受信部16へと出力する。送受信部16は超音波振動子21へ出力する電気信号に適当な遅延を与えることで、超音波振動子21から送信される超音波の志向性を変化させる。この超音波の志向性は、z軸を中心とするx軸方向の傾きとして+θ〜−θの間を変化する。
【0037】
超音波振動子21はバッキング材23に接続される。バッキング材は、超音波振動子21を固定する支持体としての機能を持ち、また超音波振動子21から−z方向に向かって放射される不要な超音波を吸収する機能を持つ。バッキング材は超音波を吸収するフェライトゴムなどを用いて構成される。
【0038】
バッキング材23はアーム24を介して駆動部25に接続される。駆動部25は電気信号を受けて回転運動を行うモータであり、その一端がアーム24に接続される。駆動部25は送受信部16から出力された電気信号に応じて、図2中の軸X´を中心とした回転運動を行う。この回転運動はより詳しくは、駆動部25に接続されたアームの傾きをz軸を中心とするy軸方向の傾きとして+Φ〜−Φの間で変化させることにより行われる(以降、この回転運動を単に揺動と記載する)。超音波振動子21が送受信する超音波の志向性は、この駆動部25の揺動と共に+Φ〜−Φの間を変化することとなる。超音波振動子21は電気信号の遅延を用いてx軸方向の志向性を変化させ、また駆動部25の揺動によってy軸方向の志向性を変化させる。従って、電気信号の遅延量と揺動を制御しながら超音波の送受信を行うことで、超音波振動子21はxy平面に対して2次元的に超音波を送受信することができる。
【0039】
ところで、駆動部25に揺動を行わせる場合は、送受信部16が電気信号を駆動部25へと印加する。駆動部25はこの電気信号の電気的エネルギーを揺動運動へと変換して超音波振動子21を揺動させるが、このとき電気的エネルギーの一部は熱となって駆動部25から放射される。放射された熱は駆動部25に接続された各部品を伝播し、結果としてプローブ外殻29の温度、即ちメカ4Dアレイプローブ30の表面温度を上昇させることとなる。
【0040】
図3に超音波振動子21のより詳しい構成を示す。超音波振動子21は、音響レンズ216、整合層215、アース電極214、振動子213、信号電極212、リード線211とを組み合わせて構成される。音響レンズ216は、送信超音波及び受信超音波を所定距離に収束させる機能を有する部品であり、生体組織と略等しい音響インピーダンスのシリコンゴムなどを用いて構成される。整合層215は、振動子213と生体組織との音響インピーダンス整合を行うための部品であり、音響インピーダンスの異なる複数の部品を張り合わせて振動子213と音響レンズ216との間に設けられる。アース電極214はリード線211の接地ラインを介して超音波診断装置1の図示しない接地端子に接続される。振動子213は信号電極212から入力された電気信号に応じた周波数で振動して、超音波を発信する部品である。信号電極212はリード線211と振動子213との間に設けられ、リード線211から入力された電気信号を振動子213へ伝達する電極である。リード線211は例えばバッキング材211の表面や内部に設けられた電線であり、電気信号を送受信部16及び信号電極212との間で伝達する。
【0041】
図3に述べた超音波振動子21を用いて超音波の送受信を行う場合、送受信部16は振動子213へと電気信号を印加する。振動子213はこの電気信号の電気的エネルギーを音響振動へ変換するが、この変換に伴い電気的エネルギーの一部は熱となって振動子213から放射される。振動子213から放射された熱は振動子213に接続された各部品へと伝播し、結果としてプローブ外殻29の温度を上昇させることとなる。また、振動子213が送信した超音波はバッキング材23によって吸収され、また被検体を反射したエコー信号は音響レンズ216を介して振動子213によって吸収される。この超音波の吸収に伴う振動は熱を発し、各部品を伝播することでプローブ外殻29の温度、即ちメカ4Dアレイプローブ30の表面温度を上昇させることとなる。
【0042】
(2Dアレイプローブ40の構成)
以下、2Dアレイプローブ40の具体的な構成につき図4及び図5を用いて述べる。図4は、2Dアレイプローブの内部構成の概略を示す図である。先述したメカ4Dプローブ40と異なり、超音波振動子21はx軸とy軸の2軸に沿って2次元的に並べられる。超音波振動子21による超音波の放射方向の中心をz軸とおいたとき、図4(a)はxz平面における2Dアレイプローブ40の断面図、図4(b)はyz平面における2Dアレイプローブ40の断面図を示している。
【0043】
2Dアレイプローブ40は、x軸とy軸に沿って2次元的に並べて配列した超音波振動子21をバッキング材23に接続し、更に超音波振動子21に印加する電気信号をスイッチングする駆動基板28をリード線211を介して接続することにより構成される。さらに、これらの部品はプローブ外殻29によって機能可能なように梱包される。
【0044】
超音波振動子21は送受信部16から行われる電気信号の入力に応じて超音波をz方向に向けて送信し、また被検体から反射してきたエコー信号を受信して電気信号へと変換し、送受信部16へと出力する。送受信部16は超音波振動子21へ出力する電気信号に適当な遅延を与えることで、超音波振動子21から送信される超音波の志向性を変化させる。この超音波の志向性は、z軸を中心とするx軸方向の傾きとして+θ〜−θの間を、y軸方向の傾きとして+Φ〜−Φの間を変化する。
【0045】
超音波振動子21はバッキング材23及びリード線211を介して、駆動基板28に接続される。駆動基板28は例えば、電気信号を印加する超音波振動子21の列を切り替えるためのスイッチング素子として働く。駆動基板28は送受信部16から出力された駆動信号に応じて、電気信号を印加する超音波振動子21の列を次々と切り替える。従って、駆動基板28を用いて超音波を送受信する超音波振動子21を選択することにより、xy平面に対して2次元的に超音波を送受信することができる。
【0046】
図5に超音波振動子21のより詳しい構成を示す。超音波振動子21は、音響レンズ216、整合層215、アース電極214、振動子213、信号電極212、リード線211とを組み合わせて構成され、各部品の構成は先述したメカ4Dプローブと同様である。超音波振動子21は2次元状に配列され、各々の信号電極212に接続されたリード線211は、駆動基板28へと接続される。
【0047】
ところで、駆動基板28がスイッチング動作を行う場合には、送受信部16が電気信号を駆動基板28へと印加する。駆動基板28はこの電気信号に含まれる列パラメータに応じてスイッチング処理を行うが、スイッチング処理に合わせて駆動基板28へは多数の電気信号が高速で入出力されることとなる。この電気信号の入出力は熱となって駆動基板28から放射される。放射された熱は駆動基板28に接続された各部品を伝播し、結果としてプローブ外殻29の温度、即ち2Dアレイプローブ40の表面温度を上昇させることとなる。
【0048】
更に、図5に述べた超音波振動子21を用いて超音波の送受信を行う場合、振動子213の音響振動への変換は発熱の原因となる。振動子213から放射された熱は振動子213に接続された各部品へと伝播し、結果としてプローブ外殻29の温度を上昇させることとなる。また、振動子213が送信した超音波はバッキング材23によって吸収され、また被検体を反射したエコー信号は音響レンズ216を介して振動子213によって吸収される。この超音波の吸収に伴う振動は熱を発し、各部品を伝播することでプローブ外殻29の温度、即ち2Dアレイプローブ40の表面温度を上昇させることとなる。
【0049】
(プローブ20の温度管理)
以上述べたように、2次元的に超音波を送受信するプローブ20内には、超音波振動子21の他にも熱源が存在することとなる。メカ4Dプローブ30においては駆動部25が熱源となり、また2Dアレイプローブ40においては駆動基板28が熱源となる。超音波振動子21と、これらの熱源が原因となっておこるプローブ20の温度上昇を適切に管理するため、超音波診断装置1の記憶部12には送信条件対最大飽和温度テーブル、及び許容温度テーブルが記憶される。送信条件対最大飽和温度テーブルは、ある動作パラメータで超音波振動子21を駆動した際の、超音波振動子21に起因しておこる温度変化を記録したテーブルである。一方許容温度テーブルは、ある動作パラメータで駆動部25や駆動基板28などの熱源を駆動した際の、熱源に起因しておこる温度変化及び許容温度の変化を記憶したテーブルである。システム制御部10はまず許容温度テーブルを読み出して、指定された揺動パラメータあるいは列パラメータでプローブ20を駆動させた際の許容温度上限を算出する。次に、システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出して、最大飽和温度が許容温度の範囲内に収まる超音波振動子21の駆動電圧を決定する。システム制御部10は駆動電圧を決定すると、指定された揺動パラメータあるいは列パラメータと、送信条件と、決定した駆動電圧を用いてプローブ20を駆動する。
【0050】
図6に、送信条件と最大飽和温度との関連を表すグラフを示す。図6(a)は送信波形をサイン波とし、送信周波数を10MHzとし、送信間隔を0.1msとしたときの駆動電圧と最大飽和温度との関連を示している。一方図6(b)は送信波形をサイン波とし、送信周波数を10MHzとし、送信間隔を0.2msとしたときの駆動電圧と最大飽和温度との関連を示している。なお本実施例において最大飽和温度とは、同一の送信条件で超音波振動子21を駆動させ続けた場合に、温度が平衡状態に至ったときの温度を指す。超音波振動子21は、印加される駆動電圧によってその発熱量を大きく変化させる。具体的には、図6に示すように駆動電圧が大きくなるほどその発熱量が大きくなる。また最大飽和温度は超音波振動子21を駆動させる送信条件によっても変化する。例えば超音波の送信間隔を0.1msから0.2msへと広げた場合は、図6(a)(b)の両グラフから分かるように最大飽和温度は低い値で変遷することとなる。
【0051】
記憶部12は図6に示したような送信条件及び駆動電圧と最大飽和温度との関連を、テーブルに関連付けて記憶する。図7に送信条件対最大飽和温度テーブルの例を示す。送信条件対最大飽和温度テーブルには、駆動電圧と最大飽和温度との関連を示すテーブルが送信条件の数だけ記憶される。なお図面の都合のため図示を省略するが、別の送信条件をとる場合、例えば送信波形を矩形波とし、送信周波数を12MHzとし、送信間隔を0.3msとした場合などの駆動電圧と最大飽和温度との関連を示すテーブルも、同様に送信条件対最大飽和温度テーブルとして記憶部12に記憶される。
【0052】
システム制御部10はこの送信条件対最大飽和温度テーブルを記憶部12から読み出すことによって、送信条件と駆動電圧が定まった際の超音波振動子21の最大飽和温度を算出することができる。
【0053】
以下、メカ4Dプローブ30における駆動条件の設定の流れについて示す。
【0054】
図8に、揺動パラメータと相対飽和温度との関連を表すグラフを示す。図8は揺動角度をそれぞれ10度、20度、30度としたときの揺動速度と相対飽和温度との関連を示している。なお本実施例において相対飽和温度とは、同一の揺動パラメータで駆動部25を駆動させ続けて温度が平衡状態に至った場合の超音波振動子21の温度と、駆動部25を駆動しないときの超音波振動子21の温度との差を指す。駆動部25は、揺動速度及び揺動角度が大きくなるほどその発熱量が大きくなる。駆動部25の発熱が大きくなるに従って相対飽和温度が上昇し、超音波振動子21の温度も上昇することとなる。
【0055】
超音波振動子21の発熱と駆動部25の発熱は、プローブ外殻29の温度を上昇させてしまう。このため被検体の安全を確保するためには、2つの熱源から生じる温度変化を予測して、プローブ外殻29の温度を一定の値以下に保つ必要がある。そこで本実施例の超音波診断装置においては、許容温度というパラメータを設定して温度の管理を行う。本実施例において許容温度とは、被検体の安全を保つことができる超音波振動子21の温度範囲のことを指す。システム制御部10は許容温度の上限値に収まる範囲内で超音波振動子の駆動電圧を最大化する。これにより、プローブ外殻29の温度を被検体の安全を確保できる温度以下に保ったまま、生成される超音波画像の感度や画質を向上させることができる。
【0056】
ここで、プローブ20内に存在する熱源が超音波振動子21だけである場合には、許容温度は一定の値となる。この場合、システム制御部10は指定された送信条件で、許容温度上限に収まる最大の駆動電圧を設定すればよい。しかし、プローブ20内に駆動部25や駆動基板28などの他の熱源が存在する場合には、この熱源の発熱が大きくなるにつれて超音波振動子21の許容温度は低くなる。本実施例においては、先述した許容温度テーブルを用いて熱源の温度変化を予測し、許容温度の設定を行う。
【0057】
図9に、揺動パラメータと許容温度との関連を表すグラフを示す。図8のグラフを用いて先述したように、駆動部25の発熱は、揺動速度及び揺動角度に比例して大きくなる。従って、被検体の安全を保つことが出来る超音波振動子21の温度、即ち許容温度は、図9に示すように揺動速度及び揺動角度に比例して小さくなる。換言すれば、図9に示す許容温度の変遷は、駆動部25を有しないときの許容温度と、駆動部25の相対飽和温度との差分を取ることにより求められる。図9は揺動パラメータ対許容温度テーブルの例を示す。揺動パラメータ対許容温度テーブルには、駆動部25の揺動パラメータに応じた超音波振動子21の許容温度が記憶される。
【0058】
システム制御部10は、この揺動パラメータ対許容温度テーブルと送信条件対最大飽和温度テーブルを用いて、プローブ外殻29の温度が被検体の安全を保てる温度を下回るように、超音波画像の感度や画質を最大化する駆動電圧を決定する。具体的には、操作部11などから揺動パラメータが指定されると、システム制御部10は揺動パラメータ対許容温度テーブルを用いて許容温度の上限値を算出する。次にシステム制御部10は操作部11などから指定された送信条件に対応する、送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出す。システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルを用いて、算出した許容温度の上限に収まる最大の駆動電圧を算出する。システム制御部10が駆動電圧を算出すると、送受信部16は設定された揺動パラメータで駆動部25を駆動し、また設定された送信条件及び駆動電圧で超音波振動子21を駆動する。
【0059】
以上の動作によって、システム制御部10はメカ4Dプローブ30を駆動する際の駆動電圧を設定することができる。2Dアレイプローブ40においても動作の流れは同様である。
【0060】
図11に、列パラメータと相対飽和温度との関連を表すグラフを示す。図11は駆動基板28のスイッチング速度と相対飽和温度との関連を示している。駆動基板28は、スイッチング速度が遅くなるにつれその発熱量が少なくなる。駆動基板28の発熱が小さくなるにつれて相対飽和温度が下がり、超音波振動子21の温度も下がることとなる。
【0061】
図12に、列パラメータと許容温度との関連を表すグラフを示す。図11のグラフを用いて先述したように、駆動基板28の発熱は、スイッチング速度に比例して小さくなる。従って、被検体の安全を保つことができる超音波振動子21の温度、即ち許容温度は、図12に示すようにスイッチング速度に比例して大きくなる。換言すれば、図12に示す許容温度の変遷は、駆動基板28を有しないときの許容温度と、駆動基板38の相対飽和温度との差分を取ることにより求められる。図13に列パラメータ対許容温度テーブルの例を示す。列パラメータ対許容温度テーブルには、2Dアレイプローブ40を駆動する列パラメータに応じた超音波振動子21の許容温度が記憶される。なお本実施例においては省略したが、他の列パラメータ、例えば列の切替順などの情報に対応した列パラメータ対許容温度テーブルを複数記憶しても構わない。
【0062】
システム制御部10は、この列パラメータ対許容温度テーブルと送信条件対最大飽和温度テーブルを用いて、被検体の安全を保つプローブ外殻29の温度の範囲内で、超音波画像の感度や画質を最大化する駆動電圧を決定する。具体的には、操作部11などから列パラメータが指定されると、システム制御部10は列パラメータ対許容温度テーブルを用いて許容温度の上限値を算出する。次にシステム制御部10は操作部11などから指定された送信条件に対応する、送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出す。システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルを用いて、算出した許容温度の上限に収まる最大の駆動電圧を算出する。システム制御部10が駆動電圧を算出すると、送受信部16は設定された揺動パラメータで駆動部25を駆動し、また設定された送信条件及び駆動電圧で超音波振動子21を駆動する。
【0063】
(駆動電圧設定処理)
図14はメカ4Dプローブ30を用いる際の、駆動電圧を設定して超音波の送受信を行う処理を示したフローチャートである。なお、2Dアレイプローブ30を用いる際の処理も図14に示すものと同様である。2Dアレイプローブ30を用いる場合には、以下に述べる「揺動パラメータ」を「列パラメータ」に読み替えればよい。
【0064】
以下、図14を用いて駆動電圧の設定処理について述べる。まずシステム制御部10が処理を開始すると(ステップ1000)、システム制御部10は操作部11などから行われる揺動パラメータと送信条件の入力を待ち受ける(ステップ1001)。揺動パラメータ及び送信条件が入力されると、システム制御部10は記憶部12から揺動パラメータ対許容温度テーブルを読み出す(ステップ1002)。システム制御部10は揺動パラメータ対許容温度テーブルを読み出すと、指定された揺動パラメータにおける許容温度を算出する(ステップ1003)。次にシステム制御部10は、記憶部12から送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出す(ステップ1004)。システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出すと、指定された送信条件で、算出した許容温度の上限値を満たす最大の駆動電圧を算出する(ステップ1005)。システム制御部10は駆動電圧を算出すると、指定された揺動パラメータ及び送信条件と、算出した駆動電圧を用いてプローブ20を駆動し(ステップ1006)、処理を終了する(ステップ1007)。
【0065】
以上の処理により、システム制御部10は指定された熱源の駆動パラメータ及び送信条件における最大の駆動電圧を算出する処理を行う。なお、熱源の駆動パラメータとはメカ4Dプローブ30においては揺動パラメータを、2Dアレイプローブにおいては列パラメータのことを指す。許容温度を満たす最大の駆動電圧でプローブ20を駆動することにより、被検体の安全を保障する温度を保ちつつ、超音波画像の感度や画質を最大化することが可能となる。
【0066】
また、システム制御部10による駆動電圧の算出は、熱源の駆動パラメータ対許容温度テーブルと送信条件対最大飽和温度テーブルという、熱源ごとに独立したテーブルを組み合わせることで算出される。従来の超音波診断装置のように熱源の駆動パラメータと送信条件と最大飽和温度と1つのテーブルに関連付けようとすると、送信条件と揺動パラメータとの組み合わせが膨大であるためにテーブルのデータ量が大きくなり、駆動電圧の算出が困難となる。本実施例によれば、2つの熱源に対して独立したテーブルを設けてこれらを組み合わせることで、駆動電圧を容易な計算で算出することができる。
【0067】
(相対飽和温度を用いた駆動電圧の算出)
図14を用いて述べた駆動電圧の算出処理においては、記憶部12に熱源の駆動パラメータ対許容温度テーブルを設けて駆動電圧の算出を行っていた。しかし、駆動電圧の算出処理はこれに限られるものではない。例えば熱源の駆動パラメータ対許容温度テーブルの替わりに、熱源の駆動パラメータ対相対飽和温度テーブルを設けて駆動電圧の算出を行っても構わない。相対飽和温度テーブルは、ある動作パラメータで熱源を駆動した際の、熱源に起因しておこる温度変化を記録したテーブルである。
【0068】
図15に4Dメカプローブ30における揺動パラメータ対相対飽和温度テーブルの例を示す。揺動パラメータ対相対飽和温度テーブルは、図8のグラフを用いて説明した揺動パラメータと相対飽和温度とを関連付けて記憶するテーブルである。システム制御部10は、操作部11などから指定された揺動パラメータに応じて相対飽和温度を読み出し、超音波振動子21の温度が相対的に何度上昇するかを算出することができる。
【0069】
システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルに、この相対飽和温度を加算する処理を行う。相対飽和温度を加算することで、駆動部25からの発熱を考慮した超音波振動子21の最大飽和温度を算出することができる。システム制御部10は相対飽和温度を加算された送信条件対最大飽和温度テーブルを用いて、許容温度を満たす最大の駆動電圧を決定する処理を行う。なお、この場合の許容温度は、予め定められた一意の温度が用いられる。
【0070】
以下、図16を用いて駆動電圧の設定処理について述べる。図16はメカ4Dプローブ30を用いる際の、駆動電圧を設定して超音波の送受信を行う処理を示したフローチャートである。なお、2Dアレイプローブ30を用いる際の処理も図16に示すものと同様である。2Dアレイプローブ30を用いる場合には、以下に述べる「揺動パラメータ」を「列パラメータ」に読み替えればよい。まずシステム制御部10が処理を開始すると(ステップ2000)、システム制御部10は操作部11などから行われる揺動パラメータと送信条件の入力を待ち受ける(ステップ2001)。揺動パラメータ及び送信条件が入力されると、システム制御部10は記憶部12から揺動パラメータ対相対飽和温度テーブルを読み出す(ステップ2002)。システム制御部10は揺動パラメータ対相対飽和温度テーブルを読み出すと、指定された揺動パラメータにおける相対飽和温度を算出する(ステップ2003)。次にシステム制御部10は、記憶部12から送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出す(ステップ2004)。システム制御部10は送信条件対最大飽和温度テーブルを読み出すと、このテーブルの値に算出した相対飽和温度を加算する(ステップ2005)。システム制御部10は加算処理を行うと、加算された送信条件対最大飽和温度テーブルの値を用いて許容温度上限を満たす最大の駆動電圧を算出する(ステップ2006)。システム制御部10は駆動電圧を算出すると、指定された揺動パラメータ及び送信条件と、算出した駆動電圧を用いてプローブ20を駆動し(ステップ2007)、処理を終了する(ステップ2008)。
【0071】
なお、上述の実施例においては熱源が超音波振動子21と、駆動部25あるいは駆動基板28の2つのみである場合について述べたが、本実施例の構成はこれに限定されない。例えばプローブ20内に温度変化の大きな熱源が別に複数存在する場合には、熱源ごとに設けた駆動パラメータ対相対飽和温度テーブルを記憶部12に記憶してもよい。システム制御部10が各駆動パラメータに応じて算出した相対飽和温度を送信条件対最大飽和温度テーブルへそれぞれ加算してゆくことで、2つ以上の熱源がプローブ20内に存在する場合であっても容易に駆動電圧を算出する処理が行える。
【0072】
以上の処理により、システム制御部10は指定された熱源の駆動パラメータ及び送信条件における最大の駆動電圧を算出する処理を行う。許容温度を満たす最大の駆動電圧でプローブ20を駆動することにより、被検体の安全を保障する温度を保ちつつ、超音波画像の感度や画質を最大化することが可能となる。
【0073】
また、システム制御部10による駆動電圧の算出は、送信条件対最大飽和温度テーブルの値に相対飽和温度テーブルから算出された相対温度を加算することで、駆動電圧の算出を行う。2つの熱源に対して独立したテーブルを設けてこれらを組み合わせることで、駆動電圧を容易な計算で算出することができる。
【0074】
また、システム制御部10による最大飽和温度は、相対飽和温度テーブルから算出された相対飽和温度を足し合わせることにより算出される。熱源ごとに独立して算出された相対飽和温度を足し合わせるという簡便な構成により、熱源がプローブ20内に複数存在する場合であっても容易な計算で最大飽和温度を算出することが可能となる。
【0075】
なお、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宣な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、最大飽和温度や相対飽和温度、許容温度などの温度変化情報はテーブルの形で記憶部12に記憶されると述べたが、テーブルの替わりに係数などを組み合わせた温度算出関数を記憶部12に記憶し、入力された熱源の駆動パラメータや送信条件から最大飽和温度、相対飽和温度、及び許容温度などをその都度算出する構成を取っても構わない。
【0076】
また、本実施例においてプローブ20内の熱源は超音波振動子21、駆動部25、及び駆動基板28の3つについて述べた。しかし熱源の種類はこれに限られるものではなく、超音波振動子21の動作基板や、電気信号を伝播するケーブル、あるいはプローブ20内に空気や液体を循環させる冷却機構などの、プローブ20内に内蔵される様々な部品を熱源とみなし、これに対する許容温度テーブルや相対飽和温度テーブルを記憶部12に記憶しても構わない。また例えば、本実施例においてはシステム制御部10が算出する動作パラメータを駆動電圧であるとして述べた。しかし動作パラメータはこれに限られるものではなく、超音波振動子21を駆動する駆動信号の波形、駆動信号の電流、駆動信号の電力、駆動信号の入出力間隔、あるいは送信条件や熱源の駆動パラメータなど、種々の動作パラメータをテーブルを用いて算出する構成を取っても構わない。また例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。あるいは、異なる実施例にわたる構成要素を適宣組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 超音波診断装置
10 システム制御部
11 操作部
12 記憶部
13 表示部
15 超音波画像生成部
16 送受信部
17 Bモード処理部
18 ドプラ処理部
20 超音波プローブ
21 超音波振動子
23 バッキング材
24 アーム
25 駆動部
28 駆動基板
29 プローブ外殻
30 メカ4Dプローブ
40 2Dアレイプローブ
211 リード線
212 信号電極
213 振動子
214 アース電極
215 整合層
216 音響レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、
動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、
前記プローブに内蔵され、動作パラメータ及び駆動電圧に従って超音波を送受信する超音波振動子と、
前記プローブに内蔵され、動作パラメータに従って駆動する部品と、
前記超音波振動子に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記部品に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、
前記入力部が受け付けた動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、前記駆動電圧を設定する制御部と
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、
第1及び第2の動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、
前記プローブに内蔵され、超音波の送信波形、送信間隔、送信周波数、超音波の焦点位置の少なくともいずれか1つを含む第1の動作パラメータ、及び駆動電圧に従って超音波を送受信する超音波振動子と、
前記プローブに内蔵され、揺動角度、揺動速度、及び角度解像度の少なくともいずれか1つを含む第2の動作パラメータに基づいて前記超音波振動子を揺動させることにより、超音波の送受信方向を変化させるモータと、
前記超音波振動子に起因する温度変化に第1の動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記モータに起因する温度変化に第2の動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、
前記入力部が受け付けた第1の動作パラメータ、第2の動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、駆動電圧を設定する制御部と
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、
第1及び第2の動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、
前記プローブに内蔵され、超音波の送信波形、送信間隔、送信周波数、超音波の焦点位置の少なくともいずれか1つを含む第1の動作パラメータ、及び駆動電圧に従って、2次元配列された振動子を駆動して超音波を送受信する超音波振動子と、
前記プローブに内蔵され、前記振動子へ送る電気信号の導通経路を、スイッチング速度を含む第2の動作パラメータに基づいて切り替えるスイッチング部と、
前記超音波振動子に起因する温度変化に第1の動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記スイッチング部に起因する温度変化に第2の動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、
前記入力部が受け付けた第1の動作パラメータ、第2の動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、駆動電圧を設定する制御部と
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
前記部品は、
動作パラメータに従って前記超音波振動子を揺動させることにより、超音波の送受信方向を変化させるモータである
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波振動子は超音波を送受信する振動子を2次元配列して構成されるものであって、
前記部品は、
前記振動子へ送る電気信号の導通経路を動作パラメータに従って切り替えるスイッチング部である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記プローブはメカ4Dプローブである
ことを特徴とする請求項1、2、または4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記プローブは2Dアレイプローブである
ことを特徴とする請求項1、3、または5のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記第2の温度変化情報は、前記部品に起因する、前記超音波振動子の許容温度の温度変化を記憶するものであって、
前記制御部は、前記超音波振動子に起因する温度変化が前記許容温度に収まるように前記駆動電圧を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の温度変化情報に基づく温度変化の値と前記第2の温度変化情報に基づく温度変化の値とを加算した値が許容温度に収まるように前記駆動電圧を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波振動装置。
【請求項10】
超音波を送受信するプローブを備えた超音波診断装置において、
複数の動作パラメータの入力を受け付ける入力部と、
前記プローブに内蔵され、動作パラメータに従って超音波を送受信する超音波振動子と、
前記プローブに内蔵され、動作パラメータに従って駆動する部品と、
前記超音波振動子に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第1の温度変化情報と、前記部品に起因する温度変化に動作パラメータを関連付ける第2の温度変化情報とを記憶する記憶部と、
動作パラメータ、前記第1の温度変化情報、及び前記第2の温度変化情報に基づいて、動作パラメータのうち少なくともいずれか1つを設定する制御部と
を有することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−188956(P2011−188956A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56750(P2010−56750)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】