説明

超高温赤外線熱処理装置

【課題】一般の研究室レベルでも使用できる低価格で省電力で行える新規な超高温超高速赤外線熱処理装置を提供する。
【解決手段】赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー2と赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー2とからなる赤外線加熱部1を構成し、赤外線ランプ4を赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー2の焦点位置に設けてあり、加熱試料を赤外線集光側1/2楕円集光ミラー3の焦点位置に配置し、上記加熱試料を真空下に配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば炭化珪素(SiC)材料の熱処理を真空中または各種ガス雰囲気下で超高速度でしかも超高温度に加熱する超高温赤外線熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーと赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラーとからなる赤外線加熱部を構成し、赤外線ランプを赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーの焦点位置に設けてあり、赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラーの焦点位置に透明石英の棒状体からなる導光部材の入射部を配置し、この導光部材の出射部を真空チャンバー内の試料台に載置する加熱試料に臨ませた赤外線熱処理装置は公知である(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第2517218号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の先行例も加熱試料を超高速で高温まで加熱することができる。即ち、1KWの所要電力を使い、1分程度で1500℃程まで加熱できる。しかし、この先行例ではSiC材料の熱処理に必要な1700℃以上まで超高速昇温の熱処理ができない。また、数十KWの所要電力を使用して1分程度で1700℃以上にまで加熱する大型の熱処理装置も知られているが、装置価格として3000〜4000万円程も必要であり、上記の通り数十KWの大電力を要するから、一般の研究室レベルでの使用は困難であるという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、一般の研究室レベルでも使用できる低価格で省電力で行える新規な超高温超高速赤外線熱処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのために、本発明超高温赤外線熱処理装置は、赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーと赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラーとからなる赤外線加熱部を構成し、赤外線ランプを赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーの焦点位置に設けてあり、加熱試料を赤外線集光側1/2楕円集光ミラーの焦点位置に配置し、上記加熱試料を真空下に配置してあるものである。
【0005】
本発明超高温赤外線熱処理装置は、上記加熱試料を載置する試料台を設け、この試料台を包囲する透明石英からなる炉芯管を上記赤外線集光側1/2楕円集光ミラー内に張り出して設け、この炉芯管を真空チャンバーに連通して上記加熱試料を真空下に配置するものである。
上記赤外線加熱部を上部に位置付けてあるとよい。
上記赤外線加熱部を下部に位置付けてあってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明超高温赤外線熱処理装置は、赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーと赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラーとからなる赤外線加熱部を構成し、赤外線ランプを赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーの焦点位置に設けてあり、加熱試料を赤外線集光側1/2楕円集光ミラーの焦点位置に配置し、上記加熱試料を真空下に配置してあるから、赤外線加熱部内で直接加熱処理できるから、加熱試料を1分程度の超高速でしかも2KW程の所要電力で超高温に加熱処理できる効果がある。即ち、一般の研究室でも使用できる低価格で省電力の超高温超高速赤外線熱処理装置を提供できる効果がある。
【0007】
また、本発明超高温赤外線熱処理装置は、上記加熱試料を載置する試料台を設け、この試料台を包囲する透明石英からなる炉芯管を上記赤外線集光側1/2楕円集光ミラー内に張り出して設け、この炉芯管を真空チャンバーに連通して上記加熱試料を真空下に配置するから、赤外線加熱部内で加熱試料を容易に真空下に置くことができる利点を有する。
さらに、本発明超高温赤外線熱処理装置は、上記赤外線加熱部を上部に又は下部に位置付けてあるから、目的に応じて適宜選択できる効果がある。
上記加熱試料をただ真空下に置くとのみ表現してあるが、真空に代えて各種ガス雰囲気下において加熱してもよいことは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面に示した実施例により本発明の詳細を説明する。
図1及び図2に赤外線加熱部1を上部に位置付けた超高温赤外線熱処理装置を示してある。この赤外線加熱部1は、赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー2と、赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3とからなり、この赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー2と、赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3とを突き合わせて分離連結可能に組み合わせてある。赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー2の焦点位置に赤外線ランプ4を設けてあり、赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の焦点位置に加熱試料を配置するようにしてある。そのために、この赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の焦点位置側に開口部を設けて、後述する試料台及び炉芯管が介入するようにしてある。この赤外線加熱部1は当然に高温になるため図示しない水冷冷却機構を具備してある。
【0009】
図中5が架台で、この架台5の上壁に支持支柱6を起立させてある。この支持支柱6は架台5上に起立設立した支持円筒7中に回動可能に支持されており、この支持支柱6内に操作ハンドル8によって回転する螺軸9とこの螺軸9に螺合する螺合部材10とからなる上下作動機構13を設け、該螺合部材10に支持支柱6から水平に張り出して支持アーム11を設けてあり、螺軸9の回転により螺合部材10を上下作動し支持アーム11を上下作動するようにしてある。
上記支持アーム11に支持板12を設け、この支持板12上に上記赤外線加熱部1を載置支持してある。即ち、操作ハンドル8の操作により上下作動機構13を上下作動し、赤外線加熱部1を上下作動し、且つ、支持支柱6を回動させて、赤外線加熱部1を支持支柱6の回りに旋回回動できるようにしてある。
また、上記支持アーム11の先端には後述する位置合わせガイド棒と協働してこのガイド棒を受け入れ、赤外線加熱部1の位置決めのためのガイド棒挿入孔14を設けてある。
【0010】
架台5上に真空フランジ15により真空チャンバー16を載置固定してある。この真空チャンバー16には接続フランジ17を設けて、図示しない真空ポンプに接続してある。また、真空チャンバー16上にも真空フランジ15を設けてあり、この真空フランジ15上に支持フランジ18をネジ止め固定してある。支持フランジ18上に真空チャンバー16に通ずる支持パイプ19を起立して設けてあり、この支持パイプ19の上端に後述する炉芯管支持用真空フランジ20,21を設けてある。この炉芯管支持用真空フランジ20,21間に炉芯管22を気密に支持するようにしてある。炉芯管22は透明石英により形成され、頂部を半球状に閉じて形成され、下端に鍔状に形成した真空シール部23を有し、この真空シール部23を上下の炉芯管支持用真空フランジ20,21間に気密に挟持するようにしてある。そしてこの炉芯管22の半球状の頂部を赤外線加熱部1の赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の下部の開口部から赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3内に張り出して設けてある。
一方、下部の炉芯管支持用真空フランジ20に支持アーム33を水平に張り出して設け、この支持アーム33に位置合わせガイド棒34を起立し、この位置合わせガイド棒34が支持アーム11の先端に設けたガイド棒挿入孔14に挿入することにより、赤外線加熱部1が正しい位置に位置合わせするようにしてある。
【0011】
真空チャンバー16の下方の真空フランジ15の下方にフレキシブルチューブ24を設け、その下端に支持パイプ25を設け、されにこの支持パイプ25の下端に透明石英管6の下端を真空下に支持する透明石英管支持真空フランジ27を設けてある。即ち、透明石英管26はその下端を透明石英管支持真空フランジ27に支持され、その上端を赤外線加熱部1の赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3内に位置付け、試料台28とし、この試料台28上の加熱試料が赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の焦点位置に位置付くようにしてある。フレキシブルチューブ24の回りには、試料台28の位置を微調整する、位置調整部29が設けてあり、3ヵ所の微調整ネジ30の調整により、透明石英管26の僅かな傾きを微調整し、試料台28の位置を微調整できるようにしてある。
この他図中31は透明石英管支持真空フランジ27の下部に設けた熱電対端子支持真空フランジで、熱電対導入端子32を支持してあり、熱電対を試料台28位置に位置付けてある。
【0012】
上記の通りの構成からなる本発明の超高温赤外線熱処理装置では、赤外線加熱部1の赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の焦点位置で、真空下に置いた加熱試料を加熱するから、超高速で超高温に加熱試料を加熱できる。そこで次の加熱試料を加熱するためには、赤外線加熱部1を支持する支持アーム11の上下作動機構13を操作ハンドル8を回動して上動し、試料台28及び炉芯管22が赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー3の下部開口部から外に出るまで赤外線加熱部1を上昇する。この際赤外線加熱部1の上昇は、位置合わせガイド棒34がガイド棒挿入孔14から完全に抜け出すまで上昇する。このように赤外線加熱部1を充分に上昇させて、赤外線加熱部1を支持支柱6の回りに旋回させ、赤外線加熱部1を試料台28及び炉芯管22から離れた位置まで移動する。
【0013】
このように試料台28及び炉芯管22の上部に何もない状態にし、炉芯管支持用真空フランジ20,21による炉芯管22の真空シール部23の挟持を外し、炉芯管22を試料台28から外し、試料台28を露呈させる。そこで加熱した加熱試料を取り除き、新たな加熱試料を試料台28上に載置する。次いで炉芯管22を試料台28に被せ、下端の真空フランジ部23を炉芯管支持用真空フランジ20,21間に挟持し、再び試料台28位置を真空下に置き加熱作業をする。
【0014】
図3及び図4に赤外線加熱部1を下部に位置付けた超高温赤外線熱処理装置の実施例を示してある。この図3及び図4に示した超高温赤外線熱処理装置の実施例は、図1及び図2に示した実施例と天地を逆転しただけであり、同一符合を付した部分は同一部分である。この実施例で図1及び図2の実施例と具体的に相違する構成は、赤外線加熱部1を上下方向に移動させるための構成が相違する。即ち、この実施例では、赤外線加熱部1を上下方向に移動させるために炉芯管支持用真空フランジ20に支持板35を固定し、この支持板35に下向きに2本以上の支持支柱36を垂下固定してある。そしてこの支持支柱36に上下摺動パイプ37を摺動自在に嵌装し、この上下摺動パイプ37に赤外線加熱部1を取り付けてある。ここで上下摺動パイプ37は、その上動定位置で固定するようにしてある。
【0015】
この実施例では加熱試料は透明石英管26の下端に設けた試料台28上に載置される。そのために、透明石英管26の上端の熱電対導入端子32を取り付けた蓋38を開閉可能とし、この蓋38を開放して透明石英管26の上端を開口し,図示しない加熱試料ホルダーを透明石英管26内に挿入して加熱試料の取り出し及び載置を行うようにしてある。また、上記した上下摺動パイプ37を下動して赤外線加熱部1を下動し、炉芯管22を着脱自在にしてある。この実施例にあっても、試料台28上の加熱試料を超高速、超高温に加熱処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】赤外線加熱部を上部に位置付けた本発明超高温赤外線熱処理装置の正面図。
【図2】図1図示の本発明超高温赤外線熱処理装置の要部の拡大図。
【図3】赤外線加熱部を下部に位置付けた本発明超高温赤外線熱処理装置の正面図。
【図4】図3図示の本発明超高温赤外線熱処理装置の要部の拡大図。
【符号の説明】
【0017】
1 赤外線加熱部
2 赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラー
3 赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラー
4 赤外線ランプ
5 架台
6 支持支柱
7 支持円筒
8 操作ハンドル
9 螺軸
10 螺合部材
11 支持アーム
12 支持板
13 上下作動機構
14 ガイド棒挿入孔
15 真空フランジ
16 真空チャンバー
17 接続フランジ
18 支持フランジ
19 支持パイプ
20 炉芯管支持用真空フランジ
21 炉芯管支持用真空フランジ
22 炉芯管
23 真空シール部
24 フレキシブルチューブ
25 支持パイプ
26 透明石英管
27 透明石英管支持真空フランジ
28 試料台
29 位置調節部
30 微調整ネジ
31 熱電対端子支持真空フランジ
32 熱電対導入端子
33 支持アーム
34 位置合わせガイド棒
35 支持板
36 支持支柱
37 上下摺動パイプ
38 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーと赤外線集光側1/2回転楕円集光ミラーとからなる赤外線加熱部を構成し、赤外線ランプを赤外線放射側1/2回転楕円反射ミラーの焦点位置に設けてあり、加熱試料を赤外線集光側1/2楕円集光ミラーの焦点位置に配置し、上記加熱試料を真空下に配置してある超高温赤外線熱処理装置。
【請求項2】
上記加熱試料を載置する試料台を設け、この試料台を包囲する透明石英からなる炉芯管を上記赤外線集光側1/2楕円集光ミラー内に張り出して設け、この炉芯管を真空チャンバーに連通して上記加熱試料を真空下に配置する上記請求項1に記載の超高温赤外線熱処理装置。
【請求項3】
上記赤外線加熱部を上部に位置付けてある上記請求項1又は2に記載の超高温赤外線熱処理装置。
【請求項4】
上記赤外線加熱部を下部に位置付けてある上記請求項1又は2に記載の超高温赤外線熱処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−27721(P2008−27721A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198841(P2006−198841)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(390013240)株式会社サーモ理工 (4)
【Fターム(参考)】