説明

路面摩擦係数推定装置、駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車

【課題】操舵角の中立位置が確定していなくても、路面摩擦係数を推定することが可能な路面摩擦係数推定装置、駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車を提供する。
【解決手段】駆動力配分制御装置1は、左右後輪105L,105Rの回転速度差に基づいて直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段321と、操舵角に基づいて直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段322と、第1及び第2の直進判定手段321,322のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段323と、選択手段323により選択された第1又は第2の直進判定手段321,322が直進走行中であると判定したとき、路面の摩擦係数μを推定する摩擦係数推定手段324と、摩擦係数推定手段324によって推定された摩擦係数μに基づいて後輪105に伝達すべき駆動力を演算により求める駆動力演算手段325とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定装置、四輪駆動車の前後輪間の駆動力配分を制御する駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪駆動車の前輪及び後輪の回転差から低μ路か否かを判定し、この判定結果に基づいて後輪側へ伝達する駆動力を制御する制御回路を備えた四輪駆動車がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の四輪駆動車は、後輪に駆動力を伝達するクラッチの係合力を低減することにより大舵角旋回時のタイトコーナーブレーキング現象を回避するタイトコーナーブレーキング防止手段と、低μ路か否かを判定する低μ路判断手段と、低μ路と判定された際にタイトコーナーブレーキング防止手段によるクラッチの係合力を低減を行わない低μ路手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−312289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前輪と後輪との回転差は、旋回時における内輪差によっても生じるため、低μ路か否かの判定は、直進走行時でなければ正確に行うことができない。つまり、直進走行時である場合には、前輪の駆動力と後輪の駆動力との差によって、後輪よりも大きな駆動力が伝達される前輪の方がスリップが生じやすく、前輪と後輪との回転差に基づいて路面の摩擦係数を推定することができるが、旋回時には後輪が前輪よりも内側を通るため、この内輪差による回転差に基づいて路面の摩擦係数を算出すると、高μ路であっても誤って低μ路であると判定してしまうことがある。
【0006】
このような誤判定を防ぐためには、例えば操舵装置の操舵角を参照して直進走行であるか否かを判定し、直進走行であると判定された場合に前輪と後輪との回転差に基づいて路面の摩擦係数を判定することが考えられる。しかし、操舵装置の形式によっては、イグニッションをオンして走行を開始した後、しばらくの間は操舵角の中立位置(直進走行時におけるステアリングホイールの角度位置)を確定できず、操舵角を正確に検出できないことがある。これは、操舵角の絶対値を検出可能な絶対角センサではなく、操舵の速度及び方向を検出することが可能な比較的簡素な構成の相対角センサが適用された操舵装置に特有の課題である。
【0007】
つまり、この形式の操舵装置では、イグニッションオフ後のエンジン停止状態で操舵操作がされることがあり得るため、イグニッションオン時に前回のイグニッションオフ前の操舵角の情報を用いることなく、イグニッションオンの度に走行状態に基づいて中立位置を確定しているので、この中立位置が確定するまでは操舵角の情報を正確に得ることができない。
【0008】
このような操舵装置では、車両のヨーレートや横加速度等の検出値に基づいて、ステアリングホイールの位置が車両の直進状態に対応するか否かを判断し、ステアリングホイールの位置が車両の直進状態に対応すると判断された時点の操舵角を中立位置として記憶することが行われている。従って、走行開始後、車両が安定した直進走行状態となって操舵角の中立位置が確定するまでは、操舵角に基づいて直進走行であるか否かを判定することができない。このため、路面の摩擦係数の推定も行えないこととなり、例えば駐車場からの出庫時のように発進直後に大舵角で旋回する必要があるとき等に、路面の摩擦係数に応じた適切な制御を行うことができない場合がある。
【0009】
従って、本発明は、操舵角の中立位置が確定していなくても、路面摩擦係数を推定することが可能な路面摩擦係数推定装置、駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、[1]〜[5]の路面摩擦係数推定装置、駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車を提供する。
【0011】
[1]車両の複数の車輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、前記車両の操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、を備えた路面摩擦係数推定装置。
【0012】
[2]前記車両は、駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪とを備え、前記第1の直進判定手段は、前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する、前記[1]に記載の路面摩擦係数推定装置。
【0013】
[3]前記選択手段は、前記操舵角の中立位置が確定していないときは前記第1の直進判定手段の判定結果を採用し、前記操舵角の中立位置が確定したときは前記第2の直進判定手段の判定結果を採用する、前記[1]又は[2]に記載の路面摩擦係数推定装置。
【0014】
[4]駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪とを備えた車両に搭載され、前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を求める制御装置と、前記制御装置が求めたトルク値に応じたトルクを前記補助駆動輪に伝達する駆動力伝達装置とを備え、前記制御装置は、前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、前記車両の操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、前記摩擦係数推定手段によって推定された前記摩擦係数に基づいて前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を演算により求める駆動力演算手段と、を備えた駆動力配分制御装置。
【0015】
[5]駆動力を発生する駆動源と、前記駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪と、ステアリングホイールの操作に応じて前記左右一対の主駆動輪及び前記左右一対の補助駆動輪の一方である前輪を操舵する操舵装置と、前記ステアリングホイールの操舵角を検出するための操舵角センサと、前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を求める制御装置と、前記制御装置が求めたトルク値に応じたトルクを前記補助駆動輪に伝達する駆動力伝達装置とを備え、前記制御装置は、前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、前記操舵角センサによって検出した前記操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、前記摩擦係数推定手段によって推定された前記摩擦係数に基づいて前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を演算により求める駆動力演算手段と、を備えた四輪駆動車。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操舵角の中立位置が確定していなくても、路面摩擦係数を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の構成例を示す概略図である。
【図2】図2は、制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、制御装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る四輪駆動車の構成例を示す概略図である。図1に示すように、この四輪駆動車100は、駆動源としてのエンジン101と、エンジン101の出力を変速する変速装置としてのトランスミッション103と、エンジン101の出力軸101aとトランスミッション103の入力軸103aとを締結するクラッチ102と、トランスミッション103の出力を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切替可能に左右一対の前輪104(左前輪104L及び右前輪104R)及び左右一対の後輪105(左後輪105L及び右後輪105R)に伝達する駆動力伝達系110と、駆動力配分制御装置1と、前輪104を操舵する操舵装置4とを搭載している。駆動力配分制御装置1は、伝達トルクを調節可能な駆動力伝達装置2と、駆動力伝達装置2を制御する制御装置3とを備えて構成されている。この駆動力伝達装置2は、四輪駆動車100の走行状態を二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切替可能としている。また、制御装置3は、路面の摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定装置としての機能を有している。
【0019】
また、四輪駆動車100の車室内には、運転者が操作を行うためのステアリングホイール120、アクセルペダル121、ブレーキペダル122、クラッチペダル123、及びシフトレバー124が配置されている。
【0020】
エンジン101は、アクセルペダル121の踏み込み量に応じた燃料が供給される内燃機関であり、四輪駆動車100が走行するための駆動力を発生し、この駆動力をクランクシャフトに連結された出力軸101aから出力する。なお、エンジン101に替えて電気モータを四輪駆動車100の駆動源としてもよい。
【0021】
クラッチ102は、エンジンの出力軸101aに連結された第1ディスク102aと、トランスミッション103の入力軸103aに連結された第2ディスク102bとを有し、第1ディスク102aと第2ディスク102bとが圧接されることにより、エンジンの出力軸101aとトランスミッション103の入力軸103aとを締結する。トランスミッション103は、シフトレバー124による運転者のギヤ操作に応じて、複数の段階にギヤ比を変化させ、入力軸103aの回転を変速する。
【0022】
操舵装置4は、運転者によるステアリングホイール120の回転操作に応じて左前輪104L及び右前輪104Rを転舵する。操舵装置4としては、ラックアンドピニオン式のものや、ボールねじ式のもの、あるいはギヤ比可変式のもの等、種々の形式のものを適用することができる。
【0023】
(駆動力伝達系の構成)
駆動力伝達系110は、左前輪104L及び右前輪104Rにトルクを配分するフロントデファレンシャル装置112と、トランスミッション103の出力軸のトルクをフロントデファレンシャル装置112のデフケース112aに伝達するギヤ機構111と、デフケース112aに連結された入力ギヤ113a、及び入力ギヤ113aと回転軸を直交させて噛み合う出力ギヤ113bを有するトランスファ113と、出力ギヤ113bに連結されたプロペラシャフト114と、駆動力伝達装置2と、駆動力伝達装置2を介してプロペラシャフト114のトルクが伝達されるピニオンギヤシャフト115と、ピニオンギヤシャフト115に伝達されたトルクを左後輪105L及び右後輪105Rに配分するリヤデファレンシャル装置116とを備えている。
【0024】
また、駆動力伝達系110は、フロントデファレンシャル装置112の一対のサイドギヤにそれぞれ連結されたドライブシャフト112L,112R、及びリヤデファレンシャル装置116の一対のサイドギヤにそれぞれ連結されたドライブシャフト116L,116Rを有している。ドライブシャフト112L,112Rは左前輪104L及び右前輪104Rにトルクを伝達し、ドライブシャフト116L,116Rは左後輪105L及び右後輪105Rトルクを伝達する。
【0025】
リヤデファレンシャル装置116のデフケース116aの外周部には、リングギヤ116bが相対回転不能に設けられている。リングギヤ116bは、ピニオンギヤシャフト115のギヤ部115aと噛み合わされ、ピニオンギヤシャフト115からのトルクをデフケース116aに伝達する。
【0026】
上記した駆動力伝達系110の各構成要素のうち、トランスファ113、プロペラシャフト114、ピニオンギヤシャフト115、リヤデファレンシャル装置116、及びドライブシャフト116L,116Rは、後輪105にエンジン101の駆動力を伝達する駆動力伝達部材の一例である。
【0027】
駆動力伝達系110は、上記構成により、左前輪104L及び右前輪104Rには常にトランスミッション103から出力されたトルクが伝達される。また、左後輪105L及び右後輪105Rには、駆動力伝達装置2の作動により、四輪駆動車100の走行状態に応じて必要時にトルクを伝達される。つまり、本実施の形態の四輪駆動車100では、左前輪104L及び右前輪104Rが主駆動輪、左後輪105L及び右後輪105Rが補助駆動輪である。
【0028】
(制御装置の構成)
駆動力配分制御装置1を構成する制御装置3は、ROMやRAM等からなる記憶部31と、CPU等の演算処理装置からなる制御部32と、制御部32によって制御される電流出力回路33とを備えている。制御装置3は、制御部32が記憶部31に記憶されたプログラムに基づいて動作することにより、四輪駆動車100の前輪104と後輪105との回転差及び運転者の加速操作量等に基づいて、後輪105側へ伝達すべき指令トルクの値を演算により求める。
【0029】
電流出力回路33は、制御部32の演算処理によって求めた指令トルクに応じた電流を駆動力伝達装置2に供給する。電流出力回路33は、例えば図略のバッテリーから供給される電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御により電流量を調節して出力するインバータ回路である。
【0030】
制御装置3には、ステアリングホイール120に連結されたステアリングシャフト120aの操舵角を検出するための操舵角センサ300、アクセルペダル121の踏み込み量に応じたアクセル開度(加速操作量)を検出するアクセル開度センサ301の検出信号が入力される。また、制御装置3には、左前輪104L,右前輪104R,左後輪105L,右後輪105Rの各車輪に対応して設けられ、これら各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ302〜305の検出信号が入力される。
【0031】
またさらに、制御装置3には、四輪駆動車100の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ306、横方向(車幅方向)の加速度を検出する横加速度センサ307、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ308、及び外気温を検出する外気温センサ309、及び左右前輪104L,104R、及び左右後輪105L,105Rの荷重を検出する荷重センサ331、332、333、334の検出信号が入力される。外気温センサ309は、例えば四輪駆動車100のフロントバンパー(図示せず)の内側に配置されている。
【0032】
これら各センサ300〜308の検出信号は、センサ本体に接続された信号線を介して直接制御装置3に入力してもよく、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを通じた通信によって制御装置3に入力してもよい。
【0033】
(駆動力伝達装置2の構成)
駆動力伝達装置2は、プロペラシャフト114に連結された有底円筒状のアウタハウジング21と、ピニオンギヤシャフト115に連結された円筒状のインナシャフト22と、アウタハウジング21の内周面とインナシャフト22の外周面との間に配置された複数の摩擦板からなるメインクラッチ23とを有している。メインクラッチ23は、アウタハウジング21に相対回転不能にスプライン嵌合された複数のアウタクラッチプレート23aと、インナシャフト22に相対回転不能にスプライン嵌合された複数のインナクラッチプレート23bとを交互に配列して構成されている。
【0034】
また、アウタハウジング21とインナシャフト22との間には、メインクラッチ23を軸方向に押圧する押圧力を発生するための環状の電磁コイル24,電磁コイル24の電磁力により押圧されるパイロットクラッチ25,及びパイロットクラッチ25を介して伝達される回転力をメインクラッチ23を押圧する軸方向のスラスト力に変換するカム機構26が配置されている。
【0035】
電磁コイル24には、制御装置3の電流出力回路33から励磁電流が供給される。電磁コイル24に励磁電流が供給されると、その電磁力によりパイロットクラッチ25を介してアウタハウジング21の回転力がカム機構26に伝達され、カム機構26が作動することにより、メインクラッチ23を押圧するスラスト力が発生する。これにより、アウタハウジング21からインナシャフト22に伝達される駆動力は、電磁コイル24に供給される励磁電流に応じて変化する。
【0036】
(制御装置3の構成)
図2は、制御装置3の機能構成を示すブロック図である。制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラム310に基づいて動作することにより、第1の直進判定手段321、第2の直進判定手段322、選択手段323、摩擦係数推定手段324、駆動力演算手段325として機能する。
【0037】
(第1の直進判定手段321の機能)
第1の直進判定手段321は、左後輪105Lと右後輪105Rとの回転速度差に基づいて、四輪駆動車100が直進走行中であるか否かを判定する。より具体的には、車輪速センサ304,305の検出信号に基づいて左後輪105L及び右後輪105Rの回転速度を算出し、左後輪105Lと右後輪105Rとの回転速度差が所定の閾値以下である場合に四輪駆動車100が直進走行中であると判定する。
【0038】
この所定の閾値は、四輪駆動車100が実質的に直進走行している場合に発生し得る左後輪105Lと右後輪105Rとの回転速度差に対応して設定されている。例えば左後輪105L及び右後輪105Rの回転速度の平均値に対する回転速度差(左後輪105Lの回転速度と右後輪105Rの回転速度の差の絶対値)の割合に基づいて直進走行中であるか否かを判定する場合、所定の閾値を例えば1〜3%とすることができる。また、左後輪105Lの回転速度と右後輪105Rの回転速度との差の絶対値が所定の閾値以下である場合に直進走行中であると判定してもよい。
【0039】
(第2の直進判定手段322の機能)
第2の直進判定手段322は、操舵角センサ300の検出信号に基づいて、四輪駆動車100が直進走行中であるか否かを判定する。この操舵角センサ300は、ステアリングホイール120の回転方向及び回転速度を検出することが可能な相対角センサであり、ステアリングホイール120の回転に伴って所定の角度(例えば2°)ごとにパルス信号を発生するように構成されている。従って、第2の直進判定手段322は、直進走行時におけるステアリングホイール120の角度位置に相当する中立位置を基準とし、この中立位置からの正方向への回転時にはパルス数を加算し、逆方向への回転時にはパルス数を減算することで、操舵角を検出することが可能である。なお、操舵装置4から操舵角の情報を取得してもよい。
【0040】
そして、第2の直進判定手段322は、操舵角が中立位置を含む所定の範囲内であるときに、四輪駆動車100が直進走行中であると判定する。この所定の範囲は、例えばステアリングホイール120の中立位置からの回転角度が±2°以内となる範囲に設定することができる。
【0041】
(選択手段323の機能)
選択手段323は、第1の直進判定手段321及び第2の直進判定手段322のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する。この選択は、第1の直進判定手段321及び第2の直進判定手段322の何れか一方を選択して動作させ、当該選択された直進判定手段(第1の直進判定手段321又は第2の直進判定手段322)による判定結果を採用するものでもよく、第1の直進判定手段321及び第2の直進判定手段322のそれぞれの判定結果のうち、何れか一方を採用するものでもよい。
【0042】
本実施の形態では、操舵角の中立位置が確定していないときは第1の直進判定手段321の判定結果を採用し、操舵角の中立位置が確定した後は第2の直進判定手段322の判定結果を採用する。
【0043】
この中立位置の確定は、例えば四輪駆動車100の走行中に操舵角が所定時間以上変化しない場合に、そのステアリングホイール120の角度位置を操舵角の中立位置とすることにより行うことができる。また、四輪駆動車100の走行中に、横加速度センサ311によって検出した横方向の加速度が直進走行を示す値(ゼロ付近)となったときのステアリングホイール120の回転位置を操舵角の中立位置として確定してもよい。
【0044】
あるいは、操舵装置4から取得した情報に基づいて中立位置が確定しているか否かを判定し、操舵角の中立位置が確定していないときは第1の直進判定手段321の判定結果を採用し、操舵角の中立位置が確定した後は第2の直進判定手段322の判定結果を採用してもよい。
【0045】
(摩擦係数推定手段324の機能)
摩擦係数推定手段324は、選択手段323により選択された第1の直進判定手段321又は第2の直進判定手段322が直進走行中であると判定したとき、四輪駆動車100が走行している走行路面の摩擦係数μを推定する。この摩擦係数μの推定は、例えば左右前輪104L,104R及び左右後輪105L,105Rに伝達されるトルクの総和(駆動トルク)と、左右後輪105L,105Rに伝達されるトルクと、左右前輪104L,104Rの荷重センサ331,332の検出信号から検出される主駆動輪の荷重と、左右前輪104L,104Rのタイヤ径と、に基づいて行うことができる。左右後輪105L,105Rに伝達されるトルクは、駆動力伝達装置2の動作状態等に基づいて演算してもよく、トルクセンサによって検出してもよい。左右前輪104L,104Rのタイヤ径は、例えば予め設定された値を用いることができる。
【0046】
摩擦係数μの計算は例えば次のように行う。まず、摩擦係数推定手段324は、駆動トルクから補助駆動輪である後輪105L,105Rのトルクを減算し、主駆動輪である前輪104L,104Rのトルクを求める。そして、摩擦係数推定手段324は、主駆動輪のトルクをタイヤ径で除算し、さらに主駆動輪の荷重で除算することで、タイヤに対する走行路面の摩擦係数μを演算する。
【0047】
そして、演算された摩擦係数μは閾値と比較され、出力された摩擦係数μが閾値よりも大きい場合には走行路面が高μ路であると判定でき、出力された摩擦係数μが閾値以下の場合には走行路面がウエット路や凍結路等の低μ路であると判定することができる。
【0048】
なお、摩擦係数推定手段324は、さらに例えば外気温センサ309によって検出した外気温を加味して路面の摩擦係数を推定してもよい。つまり、路面凍結や積雪が発生し得る低温時には、路面の摩擦係数を低めに推定してもよい。
【0049】
(駆動力演算手段325の機能)
駆動力演算手段325は、摩擦係数推定手段324によって推定された路面の摩擦係数μに基づいて後輪105側に伝達すべき駆動力を演算により求める。以下、駆動力演算手段325が演算する後輪105側に伝達すべき駆動力を「指令トルクtc」という。
【0050】
より具体的には、駆動力演算手段325は、前輪104と後輪105の回転速度差、駆動トルク、及び操舵角に基づいて指令トルクtcを演算する通常制御機能と、摩擦係数推定手段324によって推定された路面の摩擦係数μに基づいて通常制御機能により演算した指令トルクtcを補正する補正機能とを有している。次に、通常制御機能と補正機能の具体例について説明する。
【0051】
(通常制御機能)
制御装置3の制御部32は、前輪104と後輪105の回転速度差に基づく第1トルクt1と、エンジン101の出力トルクや選択されたトランスミッション103のギヤ段等に基づく第2トルクt2と、操舵角に基づく第3トルクt3と、の和により指令トルクtcを演算する。
【0052】
第1トルクt1の演算では、左右前輪104L,104Rに対応して設けられた車輪速センサ302,303の検出信号に基づいて前輪104の回転速度Vf(左右前輪104L,104Rの平均回転速度)を算出し、左右後輪105L,105Rに対応して設けられた車輪速センサ304,305の検出信号に基づいて後輪105の回転速度Vr(左右後輪105L,105Rの平均回転速度)を算出し、前輪104の回転速度Vfから後輪105の回転速度Vrを減算して前後輪の回転速差ΔV(ΔV=Vf−Vr)を得る。
【0053】
そして、記憶部31に記憶された回転速差ΔVと第1トルクt1との関係を示す第1トルクマップ311を参照して第1トルクt1を求める。この第1トルクマップ311は、回転速差ΔVが大きいほど第1トルクt1が大きくなるように設定されている。これにより、例えば左前輪104L又は右前輪104Rにスリップが発生した場合に、エンジン101の駆動力を後輪105側により多くの割合で配分し、スリップを抑制することが可能となる。なお、第1トルクt1はさらに車速Sによって変更してもよい。車速Sは、例えば前輪104の回転速度Vfと後輪105の回転速度Vrの和に所定の係数を乗じて得ることができる。
【0054】
第2トルクt2の演算では、左右前輪104L,104R及び左右後輪105L,105Rに伝達されるトルクの総和(駆動トルク)と第2トルクt2との関係を示す、記憶部31に記憶された第2トルクマップ312を参照して第2トルクt2を求める。駆動トルクは、例えばエンジン101の出力トルク,選択されたトランスミッション103のギヤ段,及び駆動力伝達系110における最終減速比に基づいて演算により求めることができる。
【0055】
第2トルクマップ312は、駆動トルクが所定値未満の場合には、駆動トルクの増大に応じて第2トルクt2が増加又は一定の値となり、駆動トルクが上記所定値以上の場合には、駆動トルクが上記所定値未満の場合よりも大きな増加割合で、駆動トルクの増大に応じて第2トルクt2が増加するように設定されている。この所定値は、左右前輪104L,104Rのグリップ限界トルクに対応して設定された値である。
【0056】
これにより、例えば急加速時におけるエンジン101の大きな駆動力を前輪104側及び後輪105側に均等に配分し、主駆動輪である左右前輪104L,104Rに駆動力が集中した場合に生じ得る左前輪104L又は右前輪104Rのスリップを回避することが可能となる。なお、第2トルクt2はさらに車速Sによって変更してもよい。
【0057】
第3トルクt3の演算では、操舵角センサ300の検出信号からステアリングシャフト120aの操舵角を検出し、記憶部31に記憶された操舵角と第3トルクt3との関係を示す第3トルクマップ313を参照して第3トルクt3を求める。この第3トルクマップ313は、操舵角が大きいほど第3トルクt3が大きくなるように設定されている。
【0058】
これにより、操舵角が大きい旋回時の四輪駆動車100の車両挙動を安定させるとともに、操舵角が小さい旋回時や直進時の補助駆動輪である後輪への指令トルクtcを小さくすることで燃費が増大することを抑制できる。なお、第3トルクt3はさらに車速Sによって変更してもよい。
【0059】
(補正機能)
制御部32はまた、上記のように求めた指令トルクtcを、摩擦係数推定手段324によって推定した路面の摩擦係数μに基づいて、摩擦係数μが低いほど指令トルクtcが大きくなるように補正する。この補正は、例えば摩擦係数μが低いほど大きくなるように変化する変数の値を補正前の指令トルクtcに加算して補正後の指令トルクtcとするものでもよく、あるいは補正前の指令トルクtcに所定の係数k(k>1)を乗じて補正後の指令トルクtcとするものでもよい。また、摩擦係数μが所定の閾値よりも低い場合に、補正前の指令トルクtcに所定の値を加算して補正後の指令トルクtcとするものでもよい。これにより、スリップが発生しやすい低μ路の走行時に駆動力配分を四輪駆動傾向とすることができ、スリップの発生を抑制することが可能となる。
【0060】
また、制御部32が、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制すべく、小さな旋回半径での旋回時に指令トルクtcを低減するタイトコーナーブレーキング現象抑制機能を有している場合には、摩擦係数μが所定の閾値よりも低いときに、指令トルクtcの低減量を小さくする補正を行うようにしてもよい。これにより、低μ路における小さな旋回半径での旋回時に、後輪105側に適切な駆動力を配分することができ、スリップの発生を抑制することが可能となる。
【0061】
そして、制御装置3は、制御部32が電流出力回路33を制御して、補正後の指令トルクtcに応じた電流を励磁電流として駆動力伝達装置2の電磁コイル24に供給する。
【0062】
(制御装置の処理手順)
図3は、制御装置3の制御部32が第1の直進判定手段321,第2の直進判定手段322,選択手段323,摩擦係数推定手段324,及び駆動力演算手段325として実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部32は、このフローチャートに示す処理を所定の制御周期(例えば100ms)ごとに繰り返し実行する。
【0063】
まず、駆動力演算手段325は、前述の通常制御機能により、第1トルクマップ311を参照して回転速差ΔVに応じた第1トルクt1を演算し、第2トルクマップ312を参照して駆動トルクに応じた第2トルクt2を演算し、第3トルクマップ313を参照して操舵角に応じた第3トルクt3を演算する。またさらに、駆動力演算手段325は、第1トルクt1に第2トルクt2と第3トルクt3とを加算して指令トルクtcを求める(ステップS100)。
【0064】
次に、選択手段323は、操舵角の中立位置が確定しているか否かを判定する(ステップS101)。
【0065】
操舵角の中立位置が確定していない場合(S101:No)、第1の直進判定手段321は、左後輪105Lの回転速度と右後輪105Rの回転速度の差に基づいて、直進走行状態であるか否かを判定する(ステップS102)。また、操舵角の中立位置が確定している場合(S101:Yes)、第2の直進判定手段322は、操舵角センサ300の検出信号によって算出した操舵角に基づいて、直進走行状態であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0066】
第1の直進判定手段321が直進走行状態であると判定した場合(ステップS103:Yes)、又は第2の直進判定手段322が直進走行状態であると判定した場合(ステップS105:Yes)には、摩擦係数推定手段324が路面の摩擦係数μを推定する(ステップS106)。
【0067】
一方、第1の直進判定手段321が直進走行状態でないと判定した場合(ステップS103:No)、又は第2の直進判定手段322が直進走行状態でないと判定した場合(ステップS105:No)には、摩擦係数推定手段324による路面の摩擦係数μの推定を行わない。この場合、摩擦係数μは、前回の制御周期における摩擦係数μから更新されないこととなる。
【0068】
次に、駆動力演算手段325は、前述の補正機能により、摩擦係数μに基づいて、ステップS100で算出した指令トルクtcを補正する(ステップS107)。
【0069】
そして、駆動力演算手段325は、補正後の指令トルクtcの信号を電流出力回路33に出力し(ステップS108)、処理を終了する。
【0070】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、操舵角の中立位置が確定していないときには左後輪105Lと右後輪105Rとの回転速差に基づいて直進判定を行うので、中立位置の未確定により操舵角による直進走行判定が行えない状況であっても、四輪駆動車100が直進走行状態であるか否かを判定することができる。そして、直進走行状態であると判定された場合には、前輪104と後輪105との回転速差に基づいて、路面の摩擦係数μを適切に推定することができる。これにより、四輪駆動車100のイグニッションをオンして走行を開始した後、操舵角の中立位置が確定する前であっても路面の摩擦係数μに基づく指令トルクtcの補正を行うことが可能となり、四輪駆動車100の走行を安定化させることができる。
【0071】
[他の実施の形態]
以上、本発明の駆動力配分制御装置、及び四輪駆動車を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態では、摩擦係数推定手段324が推定した摩擦係数μを、制御装置3の内部で、制御部32による駆動力配分制御のために用いる場合について説明したが、他の制御装置等に摩擦係数μの情報を出力するようにしてもよい。例えば、摩擦係数μの情報を操舵装置4に出力し、操舵装置4がこの摩擦係数μの情報に基づいて操舵アシスト力の調整等を行うようにしてもよい。この場合、制御装置3は、路面摩擦係数推定装置として機能する。
【0073】
また、上記実施の形態では、第1の直進判定手段321,第2の直進判定手段322,選択手段323,摩擦係数推定手段324,及び駆動力演算手段325の各機能をプログラム310に従った制御部32の動作により実現する場合について説明したが、第1の直進判定手段321,第2の直進判定手段322,選択手段323,摩擦係数推定手段324,及び駆動力演算手段325の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)等のハードウェアによって実現してもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、前輪104を主駆動輪とし、後輪105を補助駆動輪とした場合について説明したが、これに限らず、前輪104を補助駆動輪とし、後輪105を主駆動輪とする四輪駆動車にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…駆動力配分制御装置、2…駆動力伝達装置、3…制御装置(路面摩擦係数推定装置)、4…操舵装置、21…アウタハウジング、22…インナシャフト、23…メインクラッチ、23a…アウタクラッチプレート、23b…インナクラッチプレート、24…電磁コイル、25…パイロットクラッチ、26…カム機構、31…記憶部、32…制御部、33…電流出力回路、100…四輪駆動車、101…エンジン、101a…出力軸、102…クラッチ、102a…第1ディスク、102b…第2ディスク、103…トランスミッション、103a…入力軸、104…前輪、104L…左前輪、104R…右前輪、105…後輪、105L…左後輪、105R…右後輪、110…駆動力伝達系、111…ギヤ機構、112…フロントデファレンシャル装置、112L,112R…ライブシャフト、112a…デフケース、113…トランスファ、113a…入力ギヤ、113b…出力ギヤ、114…プロペラシャフト、115…ピニオンギヤシャフト、115a…ギヤ部、116…リヤデファレンシャル装置、116L,116R…ドライブシャフト、116a…デフケース、116b…リングギヤ、120…ステアリングホイール、120a…ステアリングシャフト、121…アクセルペダル、122…ブレーキペダル、123…クラッチペダル、124…シフトレバー、300…操舵角センサ、301…アクセル開度センサ、302〜305…車輪速センサ、306…前後加速度センサ、307…横加速度センサ、308…ヨーレートセンサ、309…外気温センサ、310…プログラム、311…第1トルクマップ、312…第2トルクマップ、321…第1の直進判定手段、322…第2の直進判定手段、323…選択手段、324…摩擦係数推定手段、325…駆動力演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の車輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、
前記車両の操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、
前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、
を備えた路面摩擦係数推定装置。
【請求項2】
前記車両は、駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪とを備え、
前記第1の直進判定手段は、前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する、
請求項1に記載の路面摩擦係数推定装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記操舵角の中立位置が確定していないときは前記第1の直進判定手段の判定結果を採用し、前記操舵角の中立位置が確定したときは前記第2の直進判定手段の判定結果を採用する、
請求項1又は2に記載の路面摩擦係数推定装置。
【請求項4】
駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪とを備えた車両に搭載され、
前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を求める制御装置と、
前記制御装置が求めたトルク値に応じたトルクを前記補助駆動輪に伝達する駆動力伝達装置とを備え、
前記制御装置は、
前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、
前記車両の操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、
前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、
前記摩擦係数推定手段によって推定された前記摩擦係数に基づいて前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を演算により求める駆動力演算手段と、
を備えた駆動力配分制御装置。
【請求項5】
駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源の駆動力が常時伝達される左右一対の主駆動輪と、
車両走行状態に応じて前記駆動源の駆動力が伝達される左右一対の補助駆動輪と、
ステアリングホイールの操作に応じて前記左右一対の主駆動輪及び前記左右一対の補助駆動輪の一方である前輪を操舵する操舵装置と、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出するための操舵角センサと、
前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を求める制御装置と、
前記制御装置が求めたトルク値に応じたトルクを前記補助駆動輪に伝達する駆動力伝達装置とを備え、
前記制御装置は、
前記左右一対の補助駆動輪の回転速度差に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第1の直進判定手段と、
前記操舵角センサによって検出した前記操舵角に基づいて前記車両が直進走行中であるか否かを判定する第2の直進判定手段と、
前記第1の直進判定手段及び前記第2の直進判定手段のうち、何れの判定結果を採用するかを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記第1又は第2の直進判定手段が直進走行中であると判定したとき、前記車両の走行路面の摩擦係数を推定する摩擦係数推定手段と、
前記摩擦係数推定手段によって推定された前記摩擦係数に基づいて前記補助駆動輪に伝達すべき駆動力を演算により求める駆動力演算手段と、
を備えた四輪駆動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32059(P2013−32059A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168201(P2011−168201)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】