説明

車両および非接触給電システム

【課題】非接触給電システムにおいて、給電時の電磁場によって車両に搭載された機器の昇温を行なう。
【解決手段】車両外部に設けられる給電装置200に含まれる送電ユニット225と、車両100に搭載された受電ユニット105との間で、電磁場を介して電力の伝送を行なう非接触給電システム10において、車両100に搭載される昇温を必要とする機器400は、電磁場によって昇温されるように、受電ユニット105に近接して設置される。そして、車両100を制御する車両ECU180は、車両外部の気温の変化に応じて停車目標位置を設定するとともに、設定した停車目標位置に従って停車動作を行なうことにより、非接触給電時に昇温を必要とする機器400の昇温量、昇温速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および非接触給電システムに関し、より特定的には、給電時の電磁場による車両搭載機器の昇温に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した車両として、電気自動車やハイブリッド車などの電動車両が大きく注目されている。これらの車両は、走行駆動力を発生する電動機と、その電動機に供給される電力を蓄える再充電可能な蓄電装置とを搭載する。なお、ハイブリッド車には、電動機とともに内燃機関をさらに動力源として搭載した車両や、車両駆動用の直流電源として蓄電装置とともに燃料電池をさらに搭載した車両が含まれる。
【0003】
ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置を充電可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。
【0004】
一方、送電方法として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電が近年注目されている。このワイヤレス送電技術としては、有力なものとして、電磁誘導を用いた送電、電磁波を用いた送電、および共鳴法による送電の3つの技術が知られている。
【0005】
このうち、共鳴法は、一対の共鳴器(たとえば一対の自己共振コイル)を電磁場(近接場)において共鳴させ、電磁場を介して送電する非接触の送電技術であり、数kWの大電力を比較的長距離(たとえば数m)送電することも可能である(国際公開第2007/008646号パンフレット:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/008646号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の非接触給電システムのうち、送電装置と受電装置との間で電磁場を介して給電を行なう場合には、周囲に少なからず漏洩電磁場が発生する。この漏洩電磁場は、電力の送電効率を低下させるだけでなく、電磁場内に導電性の物質があると電磁誘導によって物質自体が温められてしまう。
【0008】
一方、車両においては、排気系の触媒装置のように、その性能を発揮するために一定以上の温度までの昇温が必要とされる機器がある。そのため、車両の冷間運転時においては、このような機器の性能が十分に発揮されないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、非接触給電システムにおいて、給電時の電磁場によって車両に搭載された機器の昇温を行なうことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による車両は、受電ユニットと、電気駆動装置と、昇温を必要とする機器とを備える。受電ユニットは、車両外部に設けられる給電装置に含まれる送電ユニットから電磁場を介して非接触で受電する。電気駆動装置は、受電ユニットによって受電された電力を用いて車両推進のための駆動力を発生する。そして、昇温を必要とする機器は、電磁場によって昇温されるように、受電ユニットに近接して設置される。
【0011】
好ましくは、受電ユニットは、送電ユニットとの電磁共鳴および電磁誘導のいずれか一方によって受電する。
【0012】
また好ましくは、昇温を必要とする機器は、オイルパン、冷却水路のうち少なくとも1つを含み、受電ユニットの外周に沿った位置、および受電ユニットの内側のいずれか一方に設置される。
【0013】
あるいは好ましくは、昇温を必要とする機器は、蓄電装置、触媒装置のうち少なくとも1つを含み、車両の前進方向に直交する方向に沿って受電ユニットに並んで設置される。
【0014】
また好ましくは、車両は、電磁場による電磁波を吸収する電磁波吸収材をさらに備える。そして、電磁波吸収材は、昇温を必要とする機器の外表面に接するように設置される。
【0015】
さらに好ましくは、車両は、昇温が不要である機器と、電磁波を反射する電磁波遮蔽材とをさらに備える。そして、電磁波遮蔽材は、昇温が不要である機器を覆うように設置される。
【0016】
本発明による非接触給電システムは、車両外部の電源からの電力を、電磁場を介して送電する給電装置と、上記の車両とを備える。
【0017】
好ましくは、車両は、車両外部の気温に関連する温度を検出するための温度検出器と、車両が受電する際の停車位置を制御するための制御装置とをさらに備える。また、制御装置は、温度検出器によって検出された気温に関連する温度の変化に応じて、昇温を必要とする機器の昇温の要否を判定するように構成された昇温判定部と、昇温判定部の判定結果に従って、車両の前進方向に直交する方向に沿った停車目標位置を設定するように構成された停車位置設定部と、停車位置設定部によって設定された停車目標位置に従って、車両の停車動作を制御するための車両制御部とを含む。
【0018】
また好ましくは、制御装置は、受電ユニットと送電ユニットとの間の受電距離を検出するように構成された距離検出部をさらに含む。そして、停車位置設定部は、気温に関連する温度が高いほど、車両の前進方向に直交する方向の受電距離が遠くなるように停車目標位置を設定する。
【0019】
あるいは好ましくは、車両制御部は、停車目標位置への停車を誘導するための停車に関連する情報を、運転者に対して通知するように構成された通知部を有する。そして、電動車両は、通知部から出力される停車に関連する情報を表示するように構成された表示装置をさらに含む。
【0020】
また好ましくは、車両制御部は、停車位置設定部によって設定された停車目標位置に従って、停車動作の自動運転を行なうように構成された自動停車制御部を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、非接触給電システムにおいて、給電時の電磁場によって車両に搭載された機器の昇温ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に従う非接触給電システムの全体構成図である。
【図2】共鳴法による送電の原理を説明するための図である。
【図3】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図4】受電ユニットと昇温が必要である機器との位置関係の第1の例を示す図である。
【図5】受電ユニットと昇温が必要である機器との位置関係の第2の例を示す図である。
【図6】受電ユニットと昇温が必要である機器との位置関係の第3の例を示す図である。
【図7】車両停車位置と機器の昇温度合いの関係を示す図である。
【図8】車両停車位置と送電ユニットとの位置関係の第1の例を示す図である。
【図9】車両停車位置と送電ユニットとの位置関係の第2の例を示す図である。
【図10】車両停車位置と送電ユニットとの位置関係の第3の例を示す図である。
【図11】本実施の形態による、停車位置制御について説明するための機能ブロック図である。
【図12】受電ユニットおよび送電ユニット間の距離と一次電圧との関係を示した図である。
【図13】受電ユニットおよび送電ユニット間の距離と二次電圧との関係を示した図である。
【図14】本実施の形態における送電ECUにおいて行なわれる停車位置制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図15】ステップS650における自動停車制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に従う非接触給電システム10の全体構成図である。図1を参照して、非接触給電システム10は、電動車両100と、給電装置200とを備える。電動車両100は、受電ユニット105と、整流器130と、DC/DCコンバータ140と、蓄電装置150と、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」とも称する。)160と、モータ170と、車両ECU(Electronic Control Unit)180とを含む。また、電動車両100は、通信装置190と、表示装置195と、温度検出器135と、電圧検出器145と、カメラ185と、機器400とをさらに含む。また、受電ユニット105は、二次自己共振コイル110と、二次コイル120とを含む。
【0025】
なお、電動車両100の構成は、モータにより駆動される車両であれば、図1に示される構成に限らない。たとえば、モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両や、燃料電池を備える燃料電池自動車などを含む。
【0026】
二次自己共振コイル110は、たとえば車体下部に設置される。二次自己共振コイル110は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電装置200の一次自己共振コイル240(後述)と電磁場を介して共鳴することにより給電装置200から電力を受電する。なお、二次自己共振コイル110の容量成分は、コイルの浮遊容量であるが、所定の容量を得るために別途コンデンサ(図示せず)をコイルの両端に接続してもよい。
【0027】
二次自己共振コイル110は、給電装置200の一次自己共振コイル240との距離や、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の共鳴周波数等に基づいて、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴強度を示すQ値(たと
えば、Q>100)およびその結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0028】
二次コイル120は、二次自己共振コイル110と同軸上に設置され、電磁誘導により二次自己共振コイル110と磁気的に結合可能である。この二次コイル120は、二次自己共振コイル110によって受電された電力を電磁誘導によって取出して整流器130へ出力する。
【0029】
整流器130は、二次コイル120から受ける交流電力を整流する。DC/DCコンバータ140は、車両ECU180からの制御信号に従って、整流器130によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。なお、車両の走行中に給電装置200から受電する場合には、DC/DCコンバータ140は、整流器130によって整流された電力をシステム電圧に変換してPCU160へ直接供給してもよい。また、DC/DCコンバータ140は、必ずしも必要ではなく、二次コイル120によって取出された交流電力が整流器130によって整流された後に直接蓄電装置150に与えられるようにしてもよい。
【0030】
蓄電装置150は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池が含まれる。蓄電装置150は、DC/DCコンバータ140から供給される電力を蓄えるほか、モータ170によって発電される回生電力も蓄える。そして、蓄電装置150は、その蓄えた電力をPCU160へ供給する。なお、蓄電装置150として大容量のキャパシタも採用可能であり、給電装置200から供給される電力やモータ170からの回生電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をPCU160へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0031】
PCU160は、蓄電装置150から出力される電力、あるいはDC/DCコンバータ140から直接供給される電力によってモータ170を駆動する。また、PCU160は、モータ170により発電された回生電力を整流して蓄電装置150へ出力し、蓄電装置150を充電する。モータ170は、PCU160によって駆動され、車両駆動力を発生して駆動輪へ出力する。また、モータ170は、駆動輪や、ハイブリッド車両の場合には図示されないエンジンから受ける運動エネルギーによって発電し、その発電した回生電力をPCU160へ出力する。
【0032】
温度検出器135は、車両外部の気温に関連する温度を検出し、その検出値を車両ECU180に出力する。
【0033】
電圧検出器145は、整流器130の二次側の直流電圧(すなわち受電電圧)を検出し、その検出値を車両ECU180に出力する。
【0034】
カメラ185は、電動車両100が送電ユニット225上に停車される際に、車両100の後方の映像を撮影し、その画像信号を車両ECU180へ出力する。
【0035】
車両ECU180は、給電装置200から電動車両100への給電時、DC/DCコンバータ140を制御する。車両ECU180は、たとえば、DC/DCコンバータ140を制御することによって、整流器130とDC/DCコンバータ140との間の電圧を所定の目標電圧に制御する。また、車両ECU180は、車両の走行時、車両の走行状況や蓄電装置150の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称される。)に基づ
いてPCU160を制御する。
【0036】
また、車両ECU180は、図12および図13で後述するように、送電側の一次電圧と受電側の二次電圧とに基づいて、送電ユニット225と受電ユニット105との間の受電距離を検出する。そして、車両ECU180は、検出した受電距離およびカメラ185から受ける車両後方の画像信号に応じて、電動車両100の停車制御を行なう。
【0037】
車両ECU180および後述する送電ECU260は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、入出力バッファとを含む。そして、車両ECU180および送電ECU260は、各センサの入力や各機器への制御指令の出力を行ない、電動車両100および給電装置200の制御をそれぞれ行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、一部を専用のハードウェア(電子回路)で構築して処理することも可能である。
【0038】
通信装置190は、給電装置200と無線通信を行なうための通信インターフェイスである。通信装置190は、給電装置200に関する情報を給電装置200より無線通信によって受けて、車両ECU180に出力する。
【0039】
表示装置195は、車両ECU180から送信される、停車に関連する情報や車両後方の画像などを運転者に対して表示する。表示装置195としては、たとえば液晶表示パネルやテレビモニタなどが適用できる。
【0040】
機器400は、車両に搭載される、昇温が必要な機器を総括的に示したものである。昇温が必要な機器としては、たとえば、オイルパン、冷却水路、蓄電装置、触媒装置などが含まれる。本実施の形態においては、これらの昇温が必要な機器は受電ユニット105に近接して設置される。そして、給電時に送電ユニット225と受電ユニット105との間で発生する電磁場によって、機器400が温められる。なお、機器400には、効率的に昇温されるように、機器本体の外表面に接するように電磁波を吸収する電磁波吸収材405が設置される。
【0041】
また、車両ECU180は、電磁場によって昇温されないように、車両ECU180本体の外表面を覆うように、電磁波を反射する電磁波遮蔽材181が設置される。本実施の形態においては、図7で後述するように、機器400の昇温度合いを調整するために、停車目標位置が変化される。車両ECU180に代表されるような、熱に比較的弱い電子部品などが搭載されており昇温を行ないたくない機器についても、電磁場の内部に位置する可能性がある。そのため、このような昇温を必要としない機器については、電磁波を反射する電磁波遮蔽材181にて覆われるように設置することで、電磁場内に位置した場合でも昇温されることが防止できる。
【0042】
一方、給電装置200は、交流電源210と、高周波電力ドライバ220と、送電ユニット225と、通信装置250と、送電ECU260と、電圧検出器235とを含む。また、送電ユニット225は、一次コイル230と、一次自己共振コイル240とを含む。
【0043】
交流電源210は、車両外部の電源であり、たとえば商用電源である。高周波電力ドライバ220は、交流電源210から受ける電力を高周波の電力に変換し、その変換した高周波電力を一次コイル230へ供給する。なお、高周波電力ドライバ220が生成する高周波電力の周波数は、たとえば1M〜数十MHzである。
【0044】
一次コイル230は、一次自己共振コイル240と同軸上に設置され、電磁誘導により一次自己共振コイル240と磁気的に結合可能である。
【0045】
一次コイル230は、高周波電力ドライバ220から供給される高周波電力を電磁誘導により一次自己共振コイル240へ給電する。
【0046】
一次自己共振コイル240は、たとえば地面近傍に設置される。一次自己共振コイル240は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、電動車両100の二次自己共振コイル110と電磁場を介して共鳴することにより電動車両100へ電力を送電する。なお、一次自己共振コイル240の容量成分も、コイルの浮遊容量であるが、二次自己共振コイル110と同様に別途コンデンサ(図示せず)をコイルの両端に接続してもよい。
【0047】
この一次自己共振コイル240も、電動車両100の二次自己共振コイル110との距離や、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の共鳴周波数等に基づいて、Q値(たとえば、Q>100)および結合度κ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0048】
通信装置250は、電動車両100と無線通信を行なうための通信インターフェイスである。
【0049】
電圧検出器235は、高周波電力ドライバ220から出力される一次側電圧を検出し、その検出値を送電ECU260へ出力する。
【0050】
送電ECU260は、電動車両100に給電を行なう際、および受電ユニット105と送電ユニット225との間の受電距離を検出する際に、高周波電力ドライバ220を制御する。
【0051】
なお、上記の説明においては、電磁共鳴によって給電される場合の構成について説明したが、電磁誘導によって給電される場合には、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110は設置されない場合がある。電磁誘導による給電の場合には、一次コイル230と二次コイル120とが磁気結合することによって電力が伝送される。
【0052】
図2は、共鳴法による送電の原理を説明するための図である。図2を参照して、この共鳴法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが電磁場(近接場)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ電磁場を介して電力が伝送される。
【0053】
具体的には、高周波電源310に一次コイル320を接続し、電磁誘導により一次コイル320と磁気的に結合される一次自己共振コイル330へ、1M〜数十MHzの高周波電力を給電する。一次自己共振コイル330は、コイル自身のインダクタンスと浮遊容量(コイルにコンデンサが接続される場合には、コンデンサの容量を含む)とによるLC共振器であり、一次自己共振コイル330と同じ共鳴周波数を有する二次自己共振コイル340と電磁場(近接場)を介して共鳴する。そうすると、一次自己共振コイル330から二次自己共振コイル340へ電磁場を介してエネルギー(電力)が移動する。二次自己共振コイル340へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導により二次自己共振コイル340と磁気的に結合される二次コイル350によって取出され、負荷360へ供給される。なお、共鳴法による送電は、一次自己共振コイル330と二次自己共振コイル340との共鳴強度を示すQ値がたとえば100よりも大きいときに実現される。
【0054】
なお、図1との対応関係について説明すると、図1の交流電源210および高周波電力ドライバ220は、図2の高周波電源310に相当する。また、図1の一次コイル230および一次自己共振コイル240は、それぞれ図2の一次コイル320および一次自己共振コイル330に相当し、図1の二次自己共振コイル110および二次コイル120は、それぞれ図2の二次自己共振コイル340および二次コイル350に相当する。そして、図1の整流器130以降が負荷360として総括的に示されている。
【0055】
図3は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図3を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。
【0056】
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、共鳴法では、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、同じ固有振動数を有する一対の共鳴器(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、一方の共鳴器(一次自己共振コイル)から他方の共鳴器(二次自己共振コイル)へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0057】
図4には、受電ユニット105と昇温が必要である機器400との位置関係の第1の例が示される。図4においては、電動車両100がエンジン410(後述)を有するハイブリッド車両の場合において、機器400が排気系の触媒装置400Aの場合について示される。また、図4は、電動車両100が送電ユニット225上に停車が完了した際の、車両上部から見た図であり、受電ユニット105と送電ユニット225との位置ずれがない場合が示されている。
【0058】
図4を参照して、電動車両100は、エンジン410と、触媒装置400Aと、エキゾーストパイプ420と、マフラー430とを含む。
【0059】
エンジン410は、電動車両100に駆動力を与えるとともに、モータ170を駆動して発電を行なう。
【0060】
エキゾーストパイプ420は、エンジン410に接続される。そして、エンジン410から排出される排気ガスを車両外部へ放出する。
【0061】
触媒装置400Aは、エキゾーストパイプ420の中間部に設置される。触媒装置400Aは、いわゆる三元触媒ユニットであり、排気ガス中の窒素酸化物等の有害物質を除去する。
【0062】
マフラー430は、エキゾーストパイプ420の触媒装置400Aよりも後方に設置される。そして、マフラー430は、エンジン410の排気音を消音する。
【0063】
ここで、触媒装置400A内の三元触媒は、活性化温度以上にならないと触媒としての機能が十分に発現できない。すなわち、昇温が必要な機器である。そして、触媒装置400Aは、受電ユニット105の車両100の前進方向に直交する方向(たとえば、図4では右方向)に沿って近接して設置される。
【0064】
図4中の斜線で示された領域R1は、送電ユニット225から給電する際に電磁場が発生する領域である。そして、図4に示される状態においては、触媒装置400Aはこの電磁場の発生する領域R1内にある。そのため、触媒装置400Aのケース等が導電性である場合には、この電磁場による電磁誘導によって導電性のケース等が温められる。これにより、たとえば車両の運転を開始する直前に蓄電装置150への充電が完了するように設定されているような場合であれば、運転開始時には触媒装置400Aがすでに温められているので、触媒装置400Aは速やかに触媒としての機能を発現することができる。
【0065】
また、このように、昇温が必要な機器を、受電ユニット105に対して電動車両100の前進方向に直交する方向(左右方向)に沿って近接して設置することで、図7で後述するように、電動車両100の停車位置を左右方向にずらすことによって、昇温の度合いや昇温速度を変化させることができる。
【0066】
ここで、昇温を必要とする機器400については、上述のように、必要に応じて電磁場による放射電磁波を吸収する電磁波吸収材405(図1)が機器400の外表面に接するように設置される。電磁波吸収材405は、たとえば誘電材料であり、誘電材料の誘電損失と磁性損失とによって電磁波がジュール熱に変換される。したがって、電磁波吸収材405を機器400の外表面に貼付することによって、機器400を効率的に昇温することができる。また、電磁波吸収材405としては、誘電材料以外にも軟磁性体などがある。なお、機器400が導電性の物質でない場合であっても、電磁波吸収材405を貼付することによって昇温が可能となる。
【0067】
一方、電子部品を搭載した制御装置などのように、昇温を必要としない機器、または昇温してはいけない機器については、放射電磁波を反射する電磁波遮蔽材181(図1)により覆われる。これにより、これらの機器が、電磁場により温められることを防止できる。電磁波遮蔽材181は、低インピーダンスの物質であり、たとえば銅箔などが使用される。
【0068】
なお、上記においては、蓄電装置150に充電する際の漏洩電磁場によって機器400が昇温される場合について説明したが、蓄電装置150を充電することは必須ではない。すなわち、機器400を昇温する、いわばヒーターの役目とすることのみを目的として、給電装置200から電磁場を発生させる構成としてもよい。たとえば、DC/DCコンバータ140の動作を停止させた状態にして蓄電装置150への充電を停止させたり、二次自己共振コイル110のインダクタンスを変更できるようにして電磁共鳴を起こさせない状態にした上で、給電装置200から給電を行なうことによって、上記の構成を実現することができる。
【0069】
図5には、機器400が冷却水路400Bの場合の、受電ユニット105との位置関係の第2の例が示される。
【0070】
図5を参照して、冷却水路400Bは、受電ユニット105の周囲に沿うように設置される。このように設置することで、送電ユニット225から給電されている間は、常に冷却水路400Bが温められることになる。
【0071】
このような冷却水路400Bを昇温させる場合としては、寒冷地などで、車両の停車中に低温によってエンジン内の冷却水が凍ってしまうのを防止する場合などがある。また、同様の例としては、潤滑油の配管(図示せず)を、受電ユニット105の周囲に設置する場合がある。この場合は、車両の停車中に低温によって潤滑油の粘度が増加してしまい、車両の冷間運転時に十分な潤滑性能が発揮されなくなることを防止できる。
【0072】
また、図6には、機器400がオイルパン400Cの場合の、受電ユニット105との位置関係の第3の例が示される。この場合は、図5の説明において、潤滑油の配管の例で示したのと同様に、車両の停車中に低温によって潤滑油の粘度が増加してしまうことを防止することを目的としている。
【0073】
図6では、オイルパン400Cは、受電ユニット105の二次自己共振コイル110の内側となる位置に設置される。これによって、送電ユニット225から給電されている間は、常にオイルパン400Cが温められる。
【0074】
図5および図6で説明したように、送電ユニット225からの給電中に常に昇温されることが好ましい機器については、受電ユニット105の周囲に沿うように、または受電ユニット105の内側に機器を設置することによって、車両の停車位置が多少ずれた場合であっても給電中の電磁場の発生する領域に常に含まれるようにできる。これによって、給電中に常にこのような機器を昇温させることができる。
【0075】
なお、図5および図6の例においても、図4での説明同様に、必要に応じて冷却水路400Bおよびオイルパン400Cに、電磁波吸収材が設置される。
【0076】
次に、図7には、車両停車位置と機器の昇温度合いの関係を説明するための図が示される。図7では、送電ユニット225の一次自己共振コイル240に対する、受電ユニット105の二次自己共振コイル110の位置ずれが横軸に示される。そして、縦軸には、伝送効率ηおよび機器400の昇温度が示される。
【0077】
以下の説明においては、機器400が、車両の前進方向に向かって二次自己共振コイル110の右側に設置される場合について説明する。そして、図7の上部に示されるように二次自己共振コイル110が、一次自己共振コイル240と位置ずれしていない場合を(A)、左にずれている場合を(B)、そして右にずれている場合を(C)とする。
【0078】
伝送効率ηは、位置ずれのない(A)の場合に最大となり(図7中のA10)、左右への位置ずれが大きくなるにしたがって低下する。
【0079】
また、機器400の昇温度については、位置ずれのない(A)の場合(図7中のA1)から、二次自己共振コイル110が一次自己共振コイル240に対して左にずれていくにつれて(すなわち機器400が一次自己共振コイル240の中心部に近づくにつれて)増加する(たとえば、図7中のB1)。そして、機器400が一次自己共振コイル240の中心部からさらに左へずれると、昇温度は徐々に低下していく。
【0080】
一方、位置ずれのない(A)の場合から、二次自己共振コイル110が一次自己共振コイル240に対して右にずれていくにつれて(すなわち機器400が一次自己共振コイル240の中心部から遠ざかるにつれて)昇温度は減少する(たとえば、図7中のC1)。
【0081】
このように、送電ユニット225と受電ユニット105との位置ずれの大きさによって、機器400の昇温度を可変にすることが可能なので、給電時の車両停止位置を適切に設定することによって、機器400の昇温度合いを制御することができる。
【0082】
図8〜図10には、図4同様に機器400が触媒装置400Aである場合の、車両停車位置と送電ユニット225との位置関係の例が示される。図7と同じように、触媒装置400Aは、受電ユニット105の車両前進方向に向かって右側に近接して設置される。
【0083】
図8は、送電ユニット225および受電ユニット105の位置ずれがない場合の図である。そして、送電ユニット225の車両前後方向の中心線CL20と受電ユニット105の車両前後方向の中心線CL10とが一致している。斜線で示される領域R10は、給電時に送電ユニット225によって発生される電磁場を示している。また、破線で示されたP1は、位置ずれのない場合の車両停止位置を示している。
【0084】
図8の状態の場合、触媒装置400Aは、電磁場の領域R10内の外周付近に位置しているので、この電磁場によって触媒装置400Aは温められる。この状態は、図7における(A)に対応する。
【0085】
図9には、電動車両100の停車位置が車両の前進方向に向かって、左側にずれた状態(図7における(B)に対応)となった場合の例が示される。この状態においては、触媒装置400Aは、図8の状態と比較して、電磁場の領域R10の中心部により近く位置している。そのため、図7で説明したように、触媒装置400Aの昇温度は図8の場合に比べて大きくなるので、触媒装置400Aの昇温量を増加させたり、昇温速度を速くさせたりすることができる。
【0086】
図10には、電動車両100の停車位置が車両の前進方向に向かって、右側にずれた状態(図7における(C)に対応)となった場合の例が示される。この状態においては、触媒装置400Aは、電磁場の領域R10の外側に位置している。そのため、図7で説明したように、触媒装置400Aは昇温されない。このように。送電ユニット225と受電ユニット105との距離を遠ざけることによって、触媒装置400Aの昇温量を減少させたり、昇温速度を遅くさせたりすることができる。
【0087】
上記のように、電動車両100を送電ユニット225上に停車させる場合に、たとえば停車時や次回運転開始時の予測気温などに基づいて、電動車両100の停止位置を送電ユニット225に対して車両の前進方向に向かって左右方向にずらすことで、受電ユニット105の左右方向に設置された機器400の昇温量および昇温速度を可変とする停車位置制御を行なうことができる。
【0088】
図11には、上記の停車位置制御を説明するための機能ブロック図が示される。図11に記載された各機能ブロックは、車両ECU180によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
【0089】
図1および図11を参照して、車両ECU180は、温度検出部500と、昇温判定部510と、停車位置設定部520と、車両制御部530と、距離検出部560と、記憶部570とを含む。また、車両制御部530は、通知部540と、自動停車制御部550とを含む。
【0090】
温度検出部500は、温度検出器135によって検出された、車両外部の気温に関連する温度Tの入力を受ける。そして、温度検出部500は、入力を受けた車両外部の気温に関連する温度Tを、昇温判定部510に出力する。
【0091】
昇温判定部510は、温度検出部500より受けた車両外部の気温に関連する温度Tに基づいて、機器400の昇温の要否を判定する。
【0092】
具体的には、昇温判定部510は、入力を受けた気温に関連する温度Tが、基準値t1より低いか否かを判定する。基準値t1より車両外部の気温に関連する温度Tが低い場合には昇温が必要と判断され、昇温フラグHUPがオンとされて停車位置設定部520に出力される。一方、車両外部の気温に関連する温度Tが基準値t1以上の場合には昇温は不要と判断され、昇温フラグHUPがオフとされて停車位置設定部520に出力される。
【0093】
なお、上記の説明では、昇温判定部510は、気温に関連する温度Tが基準値t1より低いか否かによって昇温要否を判定したが、判定方法はこれに限られない。たとえば、気温に関連する温度Tと基準値t1との差(すなわち昇温量)によって、昇温度合いを複数設定してもよい。また、停車時の気温に関連する温度Tに代えて、運転開始予定時刻における直近数日間の気温の平均値やその季節の平均気温などと、上記基準値t1とを比較することによって昇温要否を判定してもよい。さらに、運転開始予定時刻までの時間に応じて、急速昇温が必要か否かを判定してもよい。
【0094】
停車位置設定部520は、昇温判定部510から、昇温要否の判定結果である昇温フラグHUPの入力を受ける。そして、昇温が不要である場合には、停車位置設定部520は、機器400が送電ユニット225の発生する電磁場の外に位置するように停車目標位置を設定する。一方、昇温が必要である場合には、停車位置設定部520は、機器400が電磁場内に位置するように停車目標位置を設定する。このとき、昇温度合い(昇温量,昇温速度)に応じて、停車目標位置をさらに詳細に設定してもよい。
【0095】
そして、停車位置設定部520は、設定した停車目標位置POSを車両制御部530に出力する。
【0096】
距離検出部560は、給電装置200の給電電力の一次側電圧VSを、通信装置190を介して受ける。また、距離検出部560は、電圧検出器145によって検出される受電電圧(二次側電圧)VHの入力を受ける。そして、距離検出部560は、一次側電圧VSおよび二次側電圧VHに基づいて、送電ユニット225と受電ユニット105との間の受電距離Lを検出する。そして、距離検出部560は、検出した受電距離Lを車両制御部530へ出力する。
【0097】
ここで、図12および図13を用いて、距離検出部560での距離検出の概要について説明する。
【0098】
図12は、受電ユニット105および送電ユニット225の間の距離と一次電圧との関係を示した図である。
【0099】
また、図13は、受電ユニット105および送電ユニット225の間の距離と二次電圧との関係を示した図である。
【0100】
電動車両100で受電される二次側電圧VHは、図12に示すような一定の一次側電圧(給電装置200からの出力電圧)に対して、図13に示すように、送電ユニット225と受電ユニット105との間の受電距離Lに応じて変化する。そこで、送電ユニット225側の一次自己共振コイル240に対応した、図12および13に示されるような一次側電圧および二次側電圧の関係を予め実験などによって測定して、記憶部570にマップ等として記憶しておく。そして、電圧検出器145によって検出される二次側電圧VHに基づいて、このマップを参照することによって送電ユニットと受電ユニットとの間の受電距離Lを検知することができる。なお、一次自己共振コイル240についての情報は、上述の送電ECU260から通信装置190を介して電動車両100に送信される情報に含まれる。
【0101】
また、二次側電圧VHに代えて、給電装置200側の一次電流を検出することによっても、同様に距離検出をすることができる。
【0102】
再び図11を参照して、車両制御部530に含まれる通知部540は、停車位置設定部520からの停車目標位置POS、および距離検出部からの送電ユニット225と受電ユニット105との受電距離Lの入力を受ける。また、通知部540は、カメラ185から車両100の後方の画像信号CAMの入力を受ける。
【0103】
そして、通知部540は、入力を受けた上記の情報を表示するための表示指令DSPを生成し、表示装置195へ出力する。
【0104】
車両制御部530に含まれる自動停車制御部550は、停車位置設定部520からの停車目標位置POS、および距離検出部からの送電ユニット225と受電ユニット105との受電距離Lとの入力を受ける。また、通知部540は、カメラ185から車両100の後方の画像信号CAMの入力を受ける。さらに、通知部540は、運転車によるスイッチ操作等によって自動停車モードであることを示す信号MODの入力を受ける。
【0105】
そして、自動停車制御部550は、信号MODによって自動停車モードが選択されているときには、カメラ185の画像信号CAMおよび検出された受電距離Lに応じて、送電ユニット225と受電ユニット105との車両前進方向に直交する方向に沿った位置が停車目標位置POSとなるように、車両のステアリング、モータおよびブレーキを制御することによって停車動作を自動で行なう。一方、自動停車モードが選択されていない場合には、自動停車動作を行なわれず、表示装置195によって運転者の停車操作の誘導が行なわれる。
【0106】
図14には、車両ECU180で行なわれる、停車位置制御処理の詳細を説明するためのフローチャートが示される。図14および後述する図15に示すフローチャートは、車両ECU180に予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出され、所定周期で実行することによって処理が実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0107】
図1、図11および図14を参照して、車両ECU180は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)600にて、温度検出器135によって検出される気温に関連する温度に基づいて、温度検出部500により現在の気温Tを検出する。
【0108】
そして、車両ECU180は、S610にて気温Tが所定の基準値t1より小さいか否かを昇温判定部510によって判定する。
【0109】
気温Tが基準値t1より低い場合(S610にてYES)は、車両ECU180は機器400の昇温が必要と判定し、S620に処理を進める。そして、S620にて、車両ECU180は、停車位置設定部520によって送電ユニット225と受電ユニット105との間の目標距離を、機器400が電磁場内に位置するようなXに設定する。そして、処理がS630に進められる。
【0110】
なお、目標距離Xについては、上述のように昇温量や昇温速度に基づいて、さらに細かく設定してもよい。
【0111】
一方、気温Tが基準値t1以上の場合(S610にてNO)は、車両ECU180は昇温は不要と判定し、S625に処理を進める。そして、S625にて、車両ECU180は、停車位置設定部520によって、昇温対象の機器400が送電ユニット225の発生する電磁場の領域の外側となるように、送電ユニット225と受電ユニット105との間の目標距離をY(Y>X)に設定する。そして、処理がS630に進められる。
【0112】
S630では、車両ECU180は、S620またはS621で設定された停車目標位置に関連する情報を、表示装置195に表示して運転者に通知する。
【0113】
次に車両ECU180は、S640にて、設定された停車目標位置への停車動作を自動で行なうか否か、すなわち自動停車モードであるか否かを、信号MODに従って自動停車制御部550によって判定する。
【0114】
自動モードである場合(S640にてYES)は、車両ECU180は、処理をS650に進める。そして、車両ECU180は自動停車制御を行なって(S650)、処理をS660に進める。自動停車制御処理の詳細は図15にて後述する。
【0115】
一方、自動停車モードでない場合(S640にてNO)は、自動運転制御は行なわれず、運転者によって停車目標位置への停車が行なわれる。したがって、S650はスキップされて、処理はS660に進められる。なお、運転者による停車が行なわれる際には、運転者は、表示装置195によって通知される停車位置に関連するガイダンス情報を参照しながら停車動作を行なうことができる。
【0116】
S660にて、車両ECU180は、電動車両100が目標とする停車位置に停車したか否かを判定する。
【0117】
目標停車位置に停車していない場合(S660にてNO)は、処理はS640に戻され、車両ECU180は、電動車両100が目標とする停車位置に停車するのを待つ。
【0118】
一方、停車目標位置に停車している場合(S660にてYES)は、車両ECU180は、処理をS670に進める。そして、車両ECU180は、給電装置200に対して給電開始指令を出力することによって、給電が開始される。
【0119】
図15には、ステップS650における自動停車制御処理の詳細を説明するためのフローチャートが示される。
【0120】
図1、図11および図15を参照して、自動停車モードであることが認識されると、車両ECU180は、S651にて、カメラ185からの画像信号CAMに応じて、目標停車位置に近づけるように、ステアリング、モータ170およびブレーキを制御する。
【0121】
そして、車両ECU180は、次にS652にて、カメラ185によって送電ユニット225が認識不可能となったか否か、すなわち送電ユニット225が車両下部に入り込んだか否かを判定する。
【0122】
送電ユニット225の認識が可能な場合(S652にてNO)は、処理がS651に戻され、画像信号CAMに応じた停車制御が継続される。
【0123】
一方、送電ユニット225が車両下部に入り込んで認識不可となった場合(S652にてYES)は、車両ECU180は、画像信号CAMに応じた停車制御を停止して、S653に処理を進める。
【0124】
S653では、車両ECU180は、距離検出部560で検出された送電ユニット225と受電ユニット105との間の受電距離Lに応じて、ステアリング、モータ170およびブレーキを制御する。
【0125】
そして、車両ECU180は、S654にて、受電距離LがS620またはS625で設定された停車目標位置以下であるか否かを判定する。
【0126】
受電距離Lが停車目標位置より大きい場合(S654にてNO)は、処理がS653に戻されて、受電距離Lに応じた停車制御が継続される。
【0127】
受電距離Lが停車目標位置以下の場合(S654にてYES)は、処理がS655に進められる。そして、車両ECU180は、電動車両100を停車するとともに、電動パーキングブレーキ(図示せず)を動作させて停車制御を完了する。
【0128】
以上説明したように、本実施の形態においては、車両外部に設けられる給電装置200に含まれる送電ユニット225と、車両100に搭載された受電ユニット105との間で、電磁場を介して電力の伝送を行なう非接触給電システム10において、車両100に搭載される昇温を必要とする機器400は、電磁場によって昇温されるように、受電ユニット105に近接して設置される。そして、車両100を制御する車両ECU180は、上記のような処理によって、車両外部の気温の変化に応じて停車目標位置を設定するとともに、設定した停車目標位置に従って停車動作を行なうことにより、非接触給電時に昇温を必要とする機器400の昇温量、昇温速度を制御することが可能となる。
【0129】
なお、本実施の形態におけるPCU160およびモータ170は、本発明の「電気駆動装置」の一例である。また、車両ECU180および送電ECU260は、本発明の「制御装置」の一例である。
【0130】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
10 非接触給電システム、100 電動車両、105 受電ユニット、110,340 二次自己共振コイル、120,350 二次コイル、130 整流器、135 温度検出器、140 コンバータ、145,235 電圧検出器、150 蓄電装置、160 PCU、170 モータ、180 車両ECU、181 電磁波遮蔽材、185 カメラ、190,250 通信装置、195 表示装置、200 給電装置、210 交流電源、220 高周波電力ドライバ、225 送電ユニット、230,320 一次コイル、240,330 一次自己共振コイル、260 送電ECU、310 高周波電源、360 負荷、400 機器、400A 触媒装置、400B 冷却水路、400C オイルパン、405 電磁波吸収材、410 エンジン、420 エキゾーストパイプ、430 マフラー、500 温度検出部、510 昇温判定部、520 停車位置設定部、530 車両制御部、540 通知部、550 自動停車制御部、560 距離検出部、570 記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部に設けられる給電装置に含まれる送電ユニットから電磁場を介して非接触で受電する受電ユニットと、
前記受電ユニットによって受電された電力を用いて車両推進のための駆動力を発生する電気駆動装置と、
昇温を必要とする機器とを備え、
前記昇温を必要とする機器は、前記電磁場によって昇温されるように、前記受電ユニットに近接して設置される、車両。
【請求項2】
前記受電ユニットは、
前記送電ユニットとの電磁共鳴および電磁誘導のいずれか一方によって受電する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記昇温を必要とする機器は、オイルパン、冷却水路のうち少なくとも1つを含み、前記受電ユニットの外周に沿った位置、および前記受電ユニットの内側のいずれか一方に設置される、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記昇温を必要とする機器は、蓄電装置、触媒装置のうち少なくとも1つを含み、前記車両の前進方向に直交する方向に沿って前記受電ユニットに並んで設置される、請求項1または2に記載の車両。
【請求項5】
前記電磁場による電磁波を吸収する電磁波吸収材をさらに備え、
前記電磁波吸収材は、前記昇温を必要とする機器の外表面に接するように設置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
昇温が不要である機器と、
前記電磁波を反射する電磁波遮蔽材とをさらに備え、
前記電磁波遮蔽材は、前記昇温が不要である機器を覆うように設置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
車両外部の電源からの電力を、前記電磁場を介して送電する給電装置と、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両とを備える、非接触給電システム。
【請求項8】
前記車両は、
車両外部の気温に関連する温度を検出するための温度検出器と、
前記車両が受電する際の停車位置を制御するための制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記温度検出器によって検出された前記気温に関連する温度の変化に応じて、前記昇温を必要とする機器の昇温の要否を判定するように構成された昇温判定部と、
前記昇温判定部の判定結果に従って、前記車両の前進方向に直交する方向に沿った停車目標位置を設定するように構成された停車位置設定部と、
前記停車目標位置に従って、前記車両の停車動作を制御するための車両制御部とを含む、請求項7に記載の非接触給電システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記受電ユニットと前記送電ユニットとの間の受電距離を検出するように構成された距離検出部をさらに含み、
前記停車位置設定部は、前記気温に関連する温度が高いほど、前記車両の前進方向に直交する方向に沿った前記受電距離が遠くなるように前記停車目標位置を設定する、請求項8に記載の非接触給電システム。
【請求項10】
前記車両制御部は、
前記停車目標位置への停車を誘導するための停車に関連する情報を、運転者に対して通知するように構成された通知部を有し、
前記車両は、
前記通知部から出力される前記停車に関連する情報を表示するように構成された表示装置をさらに含む、請求項8または9に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
前記車両制御部は、
前記停車目標位置に従って、前記停車動作の自動運転を行なうように構成された自動停車制御部を有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の非接触給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−268664(P2010−268664A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120123(P2009−120123)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】