説明

車両のカウル構造

【課題】仕切壁の設計を容易にすることができる車両のカウル構造を得る。
【解決手段】本カウル構造では、カウル本体18とカウルルーバ(図示省略)との間に形成されたカウル空間22が、カウル本体18に取り付けられた仕切壁24によって車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切られている。この仕切壁24は、自動車12に対して斜めに傾いた状態でカウル本体18に取り付けられており、カウルルーバに上から所定値以上の衝撃力が作用した際には、カウル本体18に対する取付状態を解除されて倒れる。したがって、カウルルーバは仕切壁24と関係なく変形することができるので、仕切壁24を適度に弱体化する必要がなく、これにより、仕切壁24の設計を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のカウル構造では、箱形断面のカウルボックスの車幅方向中央部に遮蔽壁(仕切壁)を設け、この仕切壁によってカウルボックス内(カウル空間)を車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このカウル構造では、仕切壁の車幅方向一側にエアコンの外気導入ダクトが設けられ、仕切壁の車幅方向他側にはエンジンルームから排出される熱風が導入されるようになっている。これにより、エンジンルームから排出される熱風がエアコンの外気導入ダクトへ侵入するのを防ぐようにしている。
【特許文献1】特開平8−127365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カウルボックスに上から衝撃力が作用した場合、カウルボックスの上壁を変形させることで、衝撃力を吸収することができる。しかしながら、上記構成のカウル構造では、カウルボックスの車幅方向中央部に仕切壁が設けられているので、仕切壁が上壁の変形に大きな抵抗力を付与しないようにするために、仕切壁を弱体化させる必要がある。その反面、仕切壁の通常の使用状態での剛性も確保する必要があり、仕切壁の設計が煩雑になる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、仕切壁の設計を容易にすることができる車両のカウル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両のカウル構造は、フロントガラスの下側に車幅方向に沿って設けられるカウル本体と、前記カウル本体の上側に設けられ、前記カウル本体との間にカウル空間を形成する上壁と、前記カウル本体と前記上壁との間に取り付けられ、前記カウル空間を車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切ると共に、前記上壁に所定値以上の衝撃力が作用した際には前記取付状態を解除されて倒れる仕切壁と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両のカウル構造では、カウル本体と上壁との間に形成されたカウル空間が、カウル本体と上壁との間に取り付けられた仕切壁によって、車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切られている。この仕切壁は、上壁に所定値以上の衝撃力が作用した際に、前記取付状態を解除されて倒れるので、上壁は仕切壁と関係なく変形することができる。したがって、仕切壁を適度に弱体化させる必要がなく、これにより、仕切壁の設計を容易にすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両のカウル構造は、請求項1に記載の車両のカウル構造において、前記仕切壁は、車両の垂直方向に対して斜めに傾いて取り付けられることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の車両のカウル構造では、仕切壁が予め車両の垂直方向に対して斜めに傾いて取り付けられているので、上壁に所定値以上の衝撃力が作用した際に、仕切壁を容易に倒すことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両のカウル構造は、請求項1に記載の車両のカウル構造において、前記仕切壁は、前記衝撃力が作用する上端部と、前記衝撃力によって倒れる際に支点となる下端部とが車両の垂直方向に対してオフセットして配置されることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両のカウル構造では、仕切壁の上端部に衝撃力が作用すると、仕切壁には、下端部(倒れる際の支点)周りの回転力が作用する。このため、前記回転力によって仕切壁を容易に倒すことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る車両のカウル構造では、仕切壁の設計を容易に設定することができる。
【0013】
本発明の請求項2に係る車両のカウル構造では、仕切壁を容易に倒すことができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る車両のカウル構造では、仕切壁を容易に倒すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両のカウル構造が適用されて構成された自動車12(車両)の部分的な構成が斜視図にて示されている。なお、図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車幅方向を示している。
【0016】
本第1の実施形態に係る自動車12は、フロントガラス14とエンジンフード16との間に設けられたカウル本体18を有している。カウル本体18は、フロントガラス14の下側に車幅方向に沿って配置されている。
【0017】
図2に示されるように、カウル本体18は、カウルロア18Aを有しており、カウルロア18Aは、自動車12のエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル(いずれも図示省略)の上端部に連結されている。カウルロア18Aの車両後方側端部には、カウルインナ18Bの下端部が連結されており、カウルインナ18Bは、上側へ向けて立設されている。カウルインナ18Bの上端部には、カウルアウタ18Cの下端部が連結されており、カウルアウタ18Cの上端側には、フロントガラス14の下端部が連結されている。カウルロア18A及びカウルアウタ18Cは、カウルインナ18Bに対して車両前方側へ延設されており、カウルロア18Aは、カウルアウタ18Cよりも車両前方側へ突出している。
【0018】
カウル本体18の上側には、上壁としてのカウルルーバ20が、車幅方向に沿って設けられている。カウルルーバ20は、車両前方側端部がカウルロア18Aの車両前方側端部に連結されており、車両後方側端部がフロントガラス14の下端部に連結されている。
【0019】
カウル本体18とカウルルーバ20との間には、車幅方向に沿って延びるカウル空間22が形成されており、このカウル空間22には、板状の仕切壁24が設けられている。仕切壁24は、カウル空間22の断面形状に対応する異形形状に形成され、カウル本体18の車幅方向中央部に取り付けられている。このため、カウル空間22は、仕切壁24によって、車幅方向一側(本第1の実施形態では運転席側、図2では左側)の一側カウル空間22Aと、車幅方向他側(本第1の実施形態では助手席側、図2では右側)の他側カウル空間22Bとに仕切られている。
【0020】
一側カウル空間22Aは、エンジンルームに連通しており、エンジンルームから排出される熱風が一側カウル空間22Aに導入されるようになっている。一側カウル空間22Aに導入された熱風はカウルルーバ20の車幅方向一側に形成された熱風排出孔26からフロントガラス14へ向けて排出される。
【0021】
また、カウルルーバ20の車幅方向他側には、外気導入口28が設けられており、他側カウル空間22Bには、外気が導入されるようになっている。他側カウル空間22Bに導入された外気はカウル本体18に形成された外気導入孔30を介して図示しないダクト内へ入り込み、自動車12に搭載された図示しない空調装置へと送り込まれる構成になっている。
【0022】
ここで、本第1の実施形態では、上述した仕切壁24は、図3に示されるように、自動車12の垂直方向(上下方向)に対して斜めに傾いた状態で、カウル本体18に対して脱落可能に取り付けられている。このため、仕切壁24は、上端部と下端部とが、自動車12の垂直方向に対して車幅方向にオフセットして配置されている。また、仕切壁24の上端部は、カウルルーバ20の下面に当接している。このため、例えばカウルルーバ20に上から物32(図4参照。なお、図4ではカウルルーバ20は図示省略)が衝突して(図4の矢印A参照)、カウルルーバ20に所定値以上の衝撃力が作用すると、仕切壁24の上端部には下側へ向いた衝撃力が作用し、仕切壁24には下端部を支点とする回転力が作用するようになっている。この場合、仕切壁24は、上記衝撃力(回転力)によってカウル本体18に対する取付状態を解除され、図4に示されるように倒れるようになっている(図4の矢印B参照)。
【0023】
なお、仕切壁24のカウル本体18に対する取付方法としては、例えば、仕切壁24に設けた破断ピンを、カウル本体18に形成した孔に挿入することで、仕切壁24を上記傾斜状態に支持する構成としてもよい。この場合、上記衝撃力によって破断ピンが破断されることで、仕切壁24のカウル本体18に対する取付状態が解除される構成になる。また、仕切壁24とカウル本体18とを部分的に接着することで、仕切壁24を上記傾斜状態に支持する構成としてもよい。この場合、上記衝撃力によって上記接着部分が剥がれることで、仕切壁24のカウル本体18に対する取付状態が解除される構成になる。
【0024】
また、仕切壁24の外周部には、フランジが設けられているが、このフランジは、仕切壁24がカウル本体18に対して斜めに傾いて取り付けられた状態で、上部及び下部がカウルルーバ20の下面及びカウルロア18Aの上面に対して平行に当接するように設定されており、仕切壁24によってカウル空間22が気密に仕切られる構成になっている。
【0025】
次に、本第1の実施形態の作用について説明する。
【0026】
本第1の実施形態では、カウル本体18とカウルルーバ20との間に形成されたカウル空間22が、カウル本体18に取り付けられた仕切壁24によって一側カウル空間22Aと他側カウル空間22Bとに仕切られている。したがって、一側カウル空間22Aに導入される熱風が、他側カウル空間22B側に設けられた外気導入孔30へ侵入することが抑制される。
【0027】
しかも、仕切壁24は、自動車12に対して斜めに傾いた状態でカウル本体18に取り付けられており、カウルルーバ20に上から所定値以上の衝撃力が作用した際には、カウル本体18に対する取付状態を解除されて倒れる。したがって、カウルルーバ20は、仕切壁24とは関係なく変形することができるので、通常の使用状態における仕切壁24の剛性を充分に確保しつつ、カウルルーバ20を適切に変形させて衝撃吸収を図ることができる。
【0028】
このように、本第1の実施形態では、カウルルーバ20に衝撃力が作用した際に、仕切壁24を変形させるのではなく、仕切壁24そのものを倒す構成になっている。したがって、仕切壁24の適度な弱体化と、通常使用状態での剛性の確保とを両立させる必要がなく、これにより、仕切壁24の設計・製造を容易にすることができる。
【0029】
また、仕切壁24を変形させる構成の場合には、仕切壁24が設けられる部位と、その他の部位とでカウルルーバ20の衝撃吸収効率に差が生じてしまうが、本第1の実施形態では、衝撃力が作用する部位の違いによってカウルルーバ20の衝撃吸収効率に差が生じることを抑制できる。
【0030】
しかも、本第1の実施形態では、仕切壁24の形状を変更して弱体化させるのではなく、仕切壁24のカウル本体18に対する取り付け方を変更する構成であるので、従来の製造工程で実施可能である。
【0031】
なお、上記第1の実施形態では、仕切壁24がカウル本体18に取り付けられ、衝撃力の作用時にカウル本体18に対する取付状態を解除される構成としたが、これに限らず、仕切壁24がカウルルーバ20に取り付けられ、衝撃力の作用時にカウルルーバ20に対する取付状態を解除される構成としてもよい。この点は、以下に説明する本発明の他の実施形態においても同様である。
【0032】
また、上記第1の実施形態では、カウルルーバ20に衝撃力が作用した際に、仕切壁24が全く変形を伴わずに倒れる構成としたが、これに限らず、仕切壁24が倒れる際に、仕切壁24の一部が変形する構成としてもよい。この点は、以下に説明する本発明の他の実施形態においても同様である。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
<第2の実施形態>
図5には、本発明の第2の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成が正面図にて示されている。この実施形態は、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成とされているが、仕切壁40の構成が前記第1の実施形態に係る仕切壁24とは異なっている。仕切壁40は、前記第1の実施形態に係る仕切壁24と同様に、カウル空間22を一側カウル空間22Aと他側カウル空間22Bとに仕切っている。但し、この仕切壁40は、上下方向中間部に屈曲部が設けられて「く字形」に折れ曲がっており、上側が車両の垂直方向に対してほぼ平行で、下側が車両の垂直方向に対して斜めに傾いた状態で、カウル本体18に対して脱落可能に取り付けられている。このため、仕切壁40は、上端部と下端部とが、自動車12の垂直方向に対して車幅方向にオフセットして配置されている。
【0034】
また、仕切壁40の上端部は、図示しないカウルルーバの下面に当接しており、カウルルーバに上から物32が衝突して(図5の矢印C参照)、カウルルーバに所定値以上の衝撃力が作用すると、仕切壁40の上端部には下側へ向いた衝撃力が作用し、仕切壁40には下端部を支点とする回転力が作用するようになっている。この場合、仕切壁40は、上記衝撃力(回転力)によってカウル本体18に対する取付状態を解除され、図5の矢印D方向へ倒れるようになっている。したがって、この実施形態においても、前記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第3の実施形態>
図6には、本発明の第3の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成が正面図にて示されている。この実施形態は、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成とされているが、仕切壁50の構成が前記第1の実施形態に係る仕切壁24とは異なっている。仕切壁50は、前記第1の実施形態に係る仕切壁24と同様に、カウル空間22を一側カウル空間22Aと他側カウル空間22Bとに仕切っている。但し、この仕切壁50は、上下方向中間部に屈曲部が2箇所設けられ、クランク状に屈曲しており、カウル本体18に対して脱落可能に取り付けられている。このため、仕切壁50は、上端部と下端部とが、自動車12の垂直方向に対して車幅方向にオフセットして配置されている。
【0035】
また、仕切壁50の上端部は、図示しないカウルルーバの下面に当接しており、カウルルーバに上から物32が衝突して(図6の矢印E参照)、カウルルーバに所定値以上の衝撃力が作用すると、仕切壁50の上端部には下側へ向いた衝撃力が作用し、仕切壁50には下端部を支点とする回転力が作用するようになっている。この場合、仕切壁50は、上記衝撃力(回転力)によってカウル本体18に対する取付状態を解除され、図6の矢印F方向へ倒れるようになっている。したがって、この実施形態においても、前記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両のカウル構造が適用されて構成された自動車の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両のカウル構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成を示し、仕切壁が倒れた状態を示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成を示す正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車両のカウル構造の部分的な構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
12 自動車(車両)
14 フロントガラス
18 カウル本体
20 カウルルーバ(上壁)
22 カウル空間
24 仕切壁
40 仕切壁
50 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下側に車幅方向に沿って設けられるカウル本体と、
前記カウル本体の上側に設けられ、前記カウル本体との間にカウル空間を形成する上壁と、
前記カウル本体と前記上壁との間に取り付けられ、前記カウル空間を車幅方向一側と車幅方向他側とに仕切ると共に、前記上壁に所定値以上の衝撃力が作用した際には前記取付状態を解除されて倒れる仕切壁と、
を有する車両のカウル構造。
【請求項2】
前記仕切壁は、車両の垂直方向に対して斜めに傾いて取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の車両のカウル構造。
【請求項3】
前記仕切壁は、前記衝撃力が作用する上端部と、前記衝撃力によって倒れる際に支点となる下端部とが車両の垂直方向に対してオフセットして配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56106(P2008−56106A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235820(P2006−235820)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】