説明

車両のサブフレーム構造

【課題】前後方向の剛性を維持しながら軽量化を可能にした車両のサブフレーム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】自動車のサブフレーム1は、車幅方向に延びる一対のフロント車幅方向メンバ2およびリア車幅方向メンバ3と、車体前後方向に延びる一対の前後方向メンバ4、5と、フロント車幅方向メンバ2のロアアーム支持部11と、リア車幅方向メンバ3とを連結する連結メンバ6、7と、フロント車幅方向メンバ2のアッパアーム支持部10と、一対の前後方向メンバ4、5との間をそれぞれ連結する一対の連結ブラケット8、9と
を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後に一対の車幅方向メンバを備えた車両のサブフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
3本以上のサスペンションアームを有するマルチリンク型サスペンションは、自動車等の車両に従来より広く用いられているが、これらのサスペンションアームを支持するサブフレーム構造として、種々の構造が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2006−347338号公報)に記載されているサブフレーム構造では、車幅方向に延びる一対のクロスメンバと車体前後方向に延びる一対のサイドメンバにより構成されたサスペンションクロスメンバの左右両端には、それぞれ合計5本のサスペンションアームを支持するための別体のブラケットが取り付けられている。しかし、この構造では、部品点数が多いので、軽量化および生産性の向上が難しいという問題があった。
【0004】
そこで、かかる問題を解消する構造として、特許文献2(特開2009−255902号公報)に記載されている構造では、フロント車幅方向メンバに、アッパアーム支持部およびロアアーム支持部が一体形成されており、これらの支持部にそれぞれサスペンションアームを直接取り付けることにより、部品点数を削減し、軽量化を図っている。
【0005】
この特許文献2記載の構造では、サブフレームの前後方向の剛性を上げるために、フロント車幅方向メンバのアッパアーム支持部およびロアアーム支持部をリア車幅方向メンバの中間部分に連結するための傾斜補強メンバを備えている。
【0006】
この傾斜補強メンバは、フロント車幅方向メンバのほぼ全体を支持している。具体的には、傾斜補強メンバは、車幅方向の左右両側において、フロント車幅方向メンバのアッパアーム支持部の上端からロアアーム支持部の下端まで覆うことにより、サブフレームの前後方向の剛性を補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−347338号公報
【特許文献2】特開2009−255902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の特許文献2に記載の構造では、サブフレームの前後方向の剛性を補強するために、傾斜補強メンバは、フロント車幅方向メンバのアッパアーム支持部の上端からロアアーム支持部の下端まで覆っているので、傾斜補強メンバの寸法および重量が大きくならざるを得ない。そのため、サブフレームの軽量化を困難にしている。一方、傾斜補強メンバの寸法を小さくすれば、前後方向の剛性を維持することが難しくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、前後方向の剛性を維持しながら軽量化を可能にした車両のサブフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の車両のサブフレーム構造は、マルチリンク型サスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサブフレーム構造であって、
左右両端部において上下に離間したアッパアーム支持部およびロアアーム支持部を有し、車幅方向に延びる第1車幅方向メンバと、
前記第1車幅方向メンバから車体前後方向に間隔をおいて設けられ、車幅方向に延びる第2車幅方向メンバと、
前記アッパアーム支持部とロアアーム支持部との間に取り付けられ、前記第1及び第2車幅方向メンバの左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結して車体前後方向に延びる一対の前後方向メンバと、
前記第1車幅方向メンバの前記ロアアーム支持部またはその近傍部分と、前記第2車幅方向メンバとを連結する連結メンバと、
前記第1車幅方向メンバのアッパアーム支持部またはその近傍部分と、前記一対の前後方向メンバとの間をそれぞれ連結する一対の連結部と
を備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明によれば、荷重が集中する第1車幅方向メンバの下側を構成するロアアーム支持部の付近を、連結メンバによって第2車幅方向メンバと強固に連結して前後方向の剛性を向上させ、一方、下側と比較して相対的に荷重がかからない第1車幅方向メンバの上側を構成するアッパアーム支持部の付近とその近くに配置されている前後方向メンバとを、連結部によって連結メンバよりも短い距離で連結している。
【0012】
これにより、荷重の大きさに対して構造を最適化することにより、前後方向においての剛性を向上させることができ、軽量化を達成することが可能である。
【0013】
また、本発明の車両のサブフレーム構造では、前記第1車幅方向メンバは、前記ロアアーム支持部において、前記第2車幅方向メンバに対して反対側に屈曲して延び、前記前後方向メンバと接合されるフランジ部を有するのが好ましい(請求項2)。
【0014】
この構成によれば、フランジ部により前後方向メンバを支持することができるので、第1車幅方向メンバの前後方向の剛性をさらに向上することができる。
【0015】
また、本発明の車両のサブフレーム構造では、前記第1車幅方向メンバのアッパアーム支持部の少なくとも一部は、前記第1車幅方向メンバの他の部分とは別の部材からなり、前記前後方向メンバの上面から車幅方向外側にかけて接合されているのが好ましい(請求項3)。
【0016】
この構成によれば、アッパアーム支持部を前後方向メンバと上下方向に重ねて配設できると共に、前後方向との接合面積を拡大することができるので、ねじれ剛性を向上できる。また、設計自由度も向上する。
【0017】
また、本発明の車両のサブフレーム構造では、前記第1車幅方向メンバは、その左側のアッパアーム支持部と右側のロアアーム支持部との間で荷重を略対角線的に荷重を受け止めると共にその右側のアッパアーム支持部と左側のロアアーム支持部との間で荷重を略対角線的に荷重を受け止める構造を有するのが好ましい(請求項4)。
【0018】
この構成によれば、左右のアッパアーム支持部とロアアーム支持部を略対角線的に配置して、第1車幅方向メンバをタスキ掛け形状にしているので、車幅方向の剛性を向上することが可能である。
【0019】
また、本発明の車両のサブフレーム構造では、前記連結メンバは、前記第2車幅方向メンバに向かって車幅方向内側に傾斜して配置されているのが好ましい(請求項5)。
【0020】
この構成によれば、連結メンバが第2車幅方向メンバに向かって車幅方向内側に傾斜して配置されているので、自動車の旋回時による荷重を、荷重が集中するサブフレームの下部で効果的に受け止めることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の車両のサブフレーム構造によれば、前後方向の剛性を維持しながら軽量化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両のサブフレーム構造の第1実施形態に係る2WD用のサブフレーム構造の正面図である。
【図2】図1のサブフレーム構造の背面図である。
【図3】図1のサブフレーム構造の底面図である。
【図4】図1のサブフレーム構造の右側面図である。
【図5】図1のフロント車幅方向メンバ、リア車幅方向メンバ、およびそれらの間の連結メンバからなる中間体の分解斜視図である。
【図6】図5の中間体、一対の前後方向メンバ、および一対の連結ブラケットの分解斜視図である。
【図7】図5の中間体、一対の前後方向メンバ、および一対の連結ブラケットを結合して得られた図1のサブフレーム構造の上面図である。
【図8】図1の連結ブラケット付近の拡大斜視図である。
【図9】図8のIV―IV断面図である。
【図10】図1のフロント車幅方向メンバの仮スポット溶接をする作業を示す断面説明図である。
【図11】本発明の車両のサブフレーム構造の第2実施形態に係る4WD用のサブフレーム構造において、サブフレーム構造にリアデフ支持ブラケットを取り付けた状態の斜視図である。
【図12】図11のサブフレーム構造の底面図である。
【図13】図11のサブフレーム構造の正面図である。
【図14】図13のリア車幅方向メンバと前後方向メンバの結合部分付近の拡大断面図である。
【図15】図13の連結メンバの結合部分を斜め下方から見た図である。
【図16】本発明の車両のサブフレーム構造の第3実施形態に係る別体のアッパアーム支持部を用いた4WD用のサブフレーム構造の正面図である。
【図17】図16のサブフレーム構造の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の車両のサブフレーム構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1〜4に示される本発明の車両のサブフレーム構造の実施形態であるサブフレーム1は、二輪駆動(2WD)のうちの前輪二輪駆動(FF)の自動車の車体後部を支持するサブフレームを構成している。なお、図3における矢印FRは、車両前方の向きを示している(以下同様)。
【0025】
このサブフレーム1は、フロント車幅方向メンバ2(第1車幅方向メンバ)およびリア車幅方向メンバ3(第2車幅方向メンバ)と、それらの左右両端に連結される一対の前後方向メンバ4、5と、一対の連結メンバ6、7と、一対の連結ブラケット8、9とを備えている。
【0026】
また、このサブフレーム1には、マルチリンクサスペンション機構50が支持されている。マルチリンクサスペンション機構50は、複数のサスペンションアームを有するマルチリンク型サスペンションであり、サブフレーム1の左右両端において、アッパサスペンションアーム51と、ロアサスペンションアーム52と、リアロアアーム53と、スプリング54と、ダンパ55とをそれぞれ一対ずつ備えている。
【0027】
フロント車幅方向メンバ2は、車幅方向D1(図1参照)に延びる部材であり、左右両端部において上下に離間したアッパアーム支持部10およびロアアーム支持部11を有しており、略X字状の形状をしている。
【0028】
アッパアーム支持部10のアーム支持孔10aには、アッパサスペンションアーム51の内側端部(サブフレーム1側の端部)がボルト等により上下に揺動自在に支持されている。一方、ロアアーム支持部11のアーム支持孔11aには、ロアサスペンションアーム52の内側端部がボルト等により上下に揺動自在に支持されている。
【0029】
アッパサスペンションアーム51およびロアサスペンションアーム52は、それぞれの外側端部(サブフレーム1に対して反対側の端部)が車輪Wを回転自在に支持する支持部材Sを上下に揺動自在に支持している。
【0030】
リア車幅方向メンバ3は、車幅方向D1(図2参照)に延びる部材であり、フロント車幅方向メンバ2から車体前後方向に間隔をおいて設けられている。
【0031】
このリア車幅方向メンバ3には、車幅方向D1に延びる一対のリアロアアーム53がボルト等により上下に揺動自在に支持されている。また、リア車幅方向メンバ3の下面側の中央付近には、補強ブラケット12(図3参照)が溶接されている。
【0032】
リアロアアーム53は、その外側端部が支持部材Sに取り付けられ、その内側端部がリア車幅方向メンバ3に取り付けられている。このリアロアアーム53には、スプリング54が取り付けられている。スプリング54は、その下端部がリアロアアーム53のスプリング受け部53aに受け入れられ、その上端部が車体(図示せず)に取り付けられている。一方、ダンパ55は、その下端部が支持部材Sに直接取り付けられ、その上端部が車体(図示せず)に取り付けられている。
【0033】
一対の前後方向メンバ4、5は、アッパアーム支持部10とロアアーム支持部11との間に取り付けられ、フロント車幅方向メンバ2及びリア車幅方向メンバ3の左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結して車体前後方向D2(図3参照)に延びる部材である。
【0034】
前後方向メンバ4、5は、フロント車幅方向メンバ2におけるアッパアーム支持部10とロアアーム支持部11との間に形成された凹部31に挿入された状態でフロント車幅方向メンバ2に接合され、それとともにリア車幅方向メンバ3の両端に形成された凹部32に挿入された状態でリア車幅方向メンバ3に接合されている。
【0035】
前後方向メンバ4、5のそれぞれの前端部および後端部には、マウント部4a、4b、5a、5bが設けられている。これらの4a、4b、5a、5bを介して、サブフレーム1が車体(図示せず)に取り付けられている。
【0036】
また、図4に示されるように、前後方向メンバ4、5におけるアッパアーム支持部10との連結部位は、後上方(図4における右上)に傾斜している。この構成によって、サブフレーム1の前後方向の剛性が向上している。
【0037】
また、図3〜7に示されるように、一対の連結メンバ6、7は、フロント車幅方向メンバ2における左右両側のロアアーム支持部11またはその近傍部分とリア車幅方向メンバ3の中間部分との間を連結している。
【0038】
フロント車幅方向メンバ2とリア車幅方向メンバ3は、それらの下部に荷重がかかりやすいが、それらの下部同士を一対の連結メンバ6、7で部分的に強固に連結しているので、前後方向の剛性を向上している。
【0039】
また、連結メンバ6、7は、図3の車幅方向D1で見て車幅方向内側に傾斜して配置されている。具体的には、フロント車幅方向メンバ2との連結部分では間隔が広く、リア車幅方向メンバ3との連結部分では間隔が狭くなるように配置されている。これにより、自動車の旋回時による荷重を、荷重が集中するサブフレーム1の下部で効果的に受け止めることができる。
【0040】
さらに、図1〜4および図6〜8に示されるように、一対の連結ブラケット8、9は、フロント車幅方向メンバ2のアッパアーム支持部10またはその近傍部分と、前後方向メンバ4,5との間をそれぞれ連結している。
【0041】
連結ブラケット8、9は、連結メンバ6、7よりも長さも短く、剛性も低く、かつ軽量の部材である。この連結ブラケット8、9は、アッパアーム支持部10とその近くに配置された前後方向メンバ4,5との間を連結メンバ6、7より短い距離で斜めに連結している。
【0042】
また、図6〜8に示されるように、連結ブラケット8、9の前側には、それぞれ三角形の爪状の突起38が形成されている。
【0043】
そして、図6に示されるように、車幅方向外側の突起38は、フロント車幅方向メンバ2の上面と後面とに沿った形状に形成されている。また図7に示されるように連結ブラケット8、9の後側部位は、前後方向メンバ4,5の上面および車幅方向内側の側面とに連結される形状に形成されている。
この構成によって、フロント車幅方向メンバ2の後方側及び前後方向メンバ4,5との溶接の際に接合面積が増えるので、車両前後方向の剛性がさらに向上している。
【0044】
また、連結ブラケット8、9の前側の車幅方向外側の突起38と前側車幅方向メンバ2との接合面積が増える一方、連結ブラケット8、9の後側部位と前後方向メンバ4,5の車幅方向内側の側面との接合面積が増えることにより、連結ブラケット8、9は車両後方且つ車幅方向内側に向う方向に荷重を伝達し易くなっている。
【0045】
さらに、連結ブラケット8、9の上面には、埋込みボルト39が設けられている。この埋込みボルト39を介して、スタビライザ35のバー37を回転自在に取り付けるためのブラケット36(図2および図4参照)が固定されている。
【0046】
この構成によれば、荷重が集中するフロント車幅方向メンバ2の下側を構成するロアアーム支持部11の付近を、連結メンバ6、7によってリア車幅方向メンバと強固に連結して前後方向の剛性を向上させている。それとともに、下側と比較して相対的に荷重がかからないフロント車幅方向メンバ2の上側を構成するアッパアーム支持部10の付近とその近くに配置された前後方向メンバ4、5との間の短い距離(連結ブラケット8、9よりもきわめて短い距離)を、連結ブラケット8、9によって連結している。
【0047】
これにより、荷重の大きさに対して構造を最適化することにより、前後方向においての剛性を向上させることができ、軽量化を達成することが可能である。
【0048】
また、このように連結ブラケット8、9でフロント車幅方向メンバ2の上側を支持する構造では、構造の簡略化が可能になり、軽量化および生産性の向上を図ることが可能である。
【0049】
また、図5〜6に示されるように、フロント車幅方向メンバ2は、車幅方向に延びる一対の断面コ字状のパネル21、22を互いの端縁付近を接合して組み合わせた中空体である。具体的には、図6に示されるように、アッパアーム支持部10およびロアアーム支持部11の車幅方向外側には、連続した開口26が形成されている。しかも、フロント車幅方向メンバ2の中間部分の前面2aおよび後面2bは、閉じた平面を有しており、かつ、一対の断面コ字状のパネル21、22は、上面23および下面24のみで互いにスポット溶接で仮溶接された後にシーム溶接されている。同様に、リア車幅方向メンバ3も、2枚のパネル28、29を接合して中空体形状に形成されている。
【0050】
この構成によれば、フロント車幅方向メンバ2およびリア車幅方向メンバ3は、中空体であり、かつ、その中間部分の前面2aおよび後面2bが閉じた平面を有しているので、中央部が剛くなり、軽量化を達成することができる。
【0051】
しかも、フロント車幅方向メンバ2の両端部は、その車幅方向外側において、アッパアーム支持部10からロアアーム支持部11にかけて連続した開口26を大きく形成することが可能である。そのため、図10に示されるように、仮スポット溶接用の溶接ガンGの電極Eを開口26に挿入して車幅方向中央近傍までスポット仮溶接をすることが可能である。また、図10には、パネル21、22の重ね合わせた部分における複数のスポット溶接部分33が示されている。
【0052】
ここで、図8〜9に示されるように、仮接合のためのスポット溶接部分33は、フロント車幅方向メンバ2を構成するパネル21、22を重ね合せた部分のうち、パネル22の切起し部分22aにパネル21の先端が突き当たった付近に形成される。一方、パネル21と22とをシーム溶接により強固に接合するためのシーム溶接部分34は、スポット溶接部分33から離間したパネル22の先端付近に形成される。これにより、生産性を向上しつつ、溶接箇所が増えることによって断面係数を向上することができる。しかも、シーム溶接部分34は、スポット溶接部分33から離れているので、スポット仮溶接およびその後のシーム溶接を行ってもパネル21、22への熱による影響(変形や剛性低下等)が少ない。
【0053】
また、このように前後のパネル21、22を重ね合わせて接合するフランジレス構造なので、溶接しろのためにフランジを設ける必要がなくなり、材料歩留まりおよび軽量化の向上が可能である。
【0054】
しかも、本実施形態では、図8に示されるように、前後パネル21、22の位置決めのための切起し部分22aおよびスポット溶接部分33は、両側の連結ブラケット8、9の近傍に位置しているので、前側のパネル21の荷重を連結ブラケット8、9に伝達するのに寄与する。
【0055】
なお、リア車幅方向メンバ3も、フロント車幅方向メンバ2と同様の溶接方法により、製造されている。
【0056】
また、図3〜4に示されるように、フロント車幅方向メンバ2は、ロアアーム支持部11において、リア車軸方向メンバ3に対して反対側に車体前後方向D2に屈曲して延び、前後方向メンバ4、5と接合されるフランジ部25を有している。
【0057】
この構成によれば、フランジ部25により前後方向メンバ4、5を支持することができ、それにより、開口26を狭めることなくフロント車幅方向メンバ2の前後方向の剛性をさらに向上することができる。
【0058】
さらに、フロント車幅方向メンバ2は、図1に示されるように、その左側のアッパアーム支持部10と右側のロアアーム支持部11との間で略対角線的に荷重を受け止めると共にその右側のアッパアーム支持部10と左側のロアアーム支持部11との間で荷重を対角線L1、L2上に荷重を受け止める構造(いわば、タスキ掛け構造)を有している。なお、図1における符号27は、ジャッキポイントであり、上記のタスキ掛け構造に影響を与えるものではない。
【0059】
このようにフロント車幅方向メンバ2をタスキ掛け形状にすることにより、車幅方向D1の剛性を向上することが可能である。具体的には、接地点同相の右旋回時には、左側のロアアーム支持部11にフロント車幅方向メンバ2を圧縮する荷重が加わる一方、その対角線上L2の右側のアッパアーム支持部10にもフロント車幅方向メンバ2を圧縮する荷重が加わる。また、左側のアッパアーム支持部10にフロント車幅方向メンバ2を引っ張る荷重が加わる一方、その対角線L1上の右側のロアアーム支持部11にもフロント車幅方向メンバ2を引っ張る荷重が加わる。このような車幅方向に加わる荷重に対して、フロント車幅方向メンバ2は、対角線L1、L2上に荷重を受け止めるので、左右のサスペンションアーム51、52に加わる荷重をフロント車幅方向メンバ2が効率的に受け止め、それにより、左右の荷重同士を有効に打ち消すことができる。
【0060】
さらに、図1に示されるように、タスキ掛けにX字状に結ぶ対角線L1とL2との交点Pは、フロント車幅方向メンバ2の中央に位置するのが好ましい。具体的には、フロント車幅方向メンバ2の中央部断面中心として、図1では、フロント車幅方向メンバ2の左右両端におけるアッパアーム支持部10のアーム支持孔10aとロアアーム支持部11のアーム支持孔11aとの中間位置を通る中心線L3が示されており、この中心線L3が交点Pの直上またはその近傍を通るのが好ましい。これにより、車幅方向および前後方向の剛性を向上することができる。
【0061】
(サブフレーム1の製造方法の説明)
つぎに本実施形態のサブフレーム1の製造方法について説明する。
【0062】
まず、図5に示されるように、フロント車幅方向メンバ2のそれぞれ断面コ字状の前パネル21と後パネル22とをそれぞれの端縁同士を当接させて支持するとともに、リア車幅方向メンバ3の前パネル28と後パネル29とを当接させて支持する。このとき、リア車幅方向メンバ3の下面側に補強ブラケット12も当接させて支持する。そして、フロント車幅方向メンバ2と、リア車幅方向メンバ3と、連結メンバ7、8とを互いに当接させて支持する。
【0063】
このとき、フロント車幅方向メンバ2の各アーム支持部10、11のアーム支持孔10a、11aは、製造時にフロント車幅方向メンバ2の位置決め孔として用いられるので、それにより、製造時の誤差を小さくすることができる。
【0064】
つぎに、図6に示されるように、各メンバ2、3、6、7およびそれらの間をスポット溶接により一括して仮接合して中間体40(図6参照)を仮止めする。
【0065】
つぎに、図6に示されるように、各メンバ2、3、6、7の間の連続接合部位を一括してシーム溶接して中間体40(図6参照)を形成する。
【0066】
つぎに、中間体40に、左右一対の前後方向メンバ4、5と連結ブラケット8、9とを位置決めして仮止めする。
【0067】
その後、前後方向メンバ5、6および連結ブラケット8、9と中間体40とをそれらの接合部位を一括してシーム溶接することにより、サブフレーム1が完成する。
【0068】
以上のような製造方法により、スポット仮溶接による中間体40の一括組立により、工程数を大幅に削減することができ、生産ラインをスリム化することができる。
【0069】
すなわち、従来の製造方法では、各メンバ2、3、6、7をそれぞれ、スポット仮溶接およびシーム溶接してメンバ単体ごとに溶接を終了した後、さらに、各メンバ2,3,6、7の間をスポット仮溶接およびシーム溶接して中間体40を製造し、その後、中間体40と前後方向メンバ5、6および連結ブラケット8、9との間のシーム溶接を行っていたので、非常に工程数が多かった。
【0070】
しかし、上記の本実施形態の製造方法では、メンバ2、3、6、7を中間体40の状態までスポット溶接で一括して仮止めし、さらに一括してシーム溶接することにより、中間体40を形成するので、大幅に工程数を削減でき、生産ラインをスリム化できる。
【0071】
しかも、個々のメンバ2、3、6、7の溶接時に生じる誤差が、サブフレーム1の全体の誤差に蓄積するおそれも少なくなる。
【0072】
(第2実施形態)
上記実施形態では、FF用のサブフレームを例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、四輪駆動(4WD)用のサブフレームについても本発明を適用することが可能である。
【0073】
すなわち、図11〜15に示される本発明の車両のサブフレーム構造の他の実施形態であるサブフレーム101は、四輪駆動(4WD)用の自動車の車体後部を支持するサブフレームを構成している。
【0074】
このサブフレーム101は、一対のフロント車幅方向メンバ102およびリア車幅方向メンバ103と、それらの左右両端に連結される一対の前後方向メンバ104、105と、一対の連結メンバ106、107と、一対の連結ブラケット108、109とを備えている。
【0075】
また、このサブフレーム101には、上述のマルチリンクサスペンション機構50(図1参照)が支持される。
【0076】
フロント車幅方向メンバ102は、車幅方向D1に延びる部材であり、左右両端部において上下に離間したアッパアーム支持部110およびロアアーム支持部111を有しており、略X字状の形状をしている。
【0077】
アッパアーム支持部110のアーム支持孔110aには、アッパサスペンションアーム51(図1参照)の内側端部がボルト等により上下に揺動自在に支持され、ロアアーム支持部111のアーム支持孔111aには、ロアサスペンションアーム52(図1参照)の内側端部がボルト等により上下に揺動自在に支持される。
【0078】
なお、4WD用のサブフレーム1の場合、車体後部には、後輪を駆動させるためのリアデファレンシャルユニットおよびドライブシャフトが配置される関係上、フロント車幅方向メンバ102の中央下部には、空間部102aが形成されている。
【0079】
なお、図11〜12の符号130は、リア側のデファレンシャルユニットを支持するためのリアデフ支持ブラケットを示している。
【0080】
リア車幅方向メンバ103は、車幅方向D1に延びる部材であり、フロント車幅方向メンバ102から車体前後方向に間隔をおいて設けられている。
【0081】
このリア車幅方向メンバ103には、車幅方向D1に延びる一対のリアロアアーム53(図1参照)がボルト等により上下に揺動自在に支持される。また、リア車幅方向メンバ103の下面側の中央付近には、補強ブラケット112が溶接されている。
【0082】
一対の前後方向メンバ104、105は、アッパアーム支持部110とロアアーム支持部111との間に取り付けられ、フロント車幅方向メンバ102及びリア車幅方向メンバ103の左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結して車体前後方向D2(図3参照)に延びる部材である。
【0083】
前後方向メンバ104、105は、フロント車幅方向メンバ102におけるアッパアーム支持部110とロアアーム支持部111との間に形成された凹部131に挿入された状態でフロント車幅方向メンバ102に接合され、それとともにリア車幅方向メンバ103の両端に形成された凹部132に挿入された状態でリア車幅方向メンバ103に接合されている。
【0084】
この4WD用の前後方向メンバ104、105は、上述のFF用の前後方向メンバ4、5(図1参照)よりも上方に位置しているので、アッパアーム支持部110は、前後方向メンバ104、105を側方から組み付けるために、図1のアッパアーム支持部10よりも細くなっている。そこで、補強のために、アッパアーム支持部110と前後方向メンバ104、105の上部との間には、補強ブラケット141(図13参照)が設けられている。
【0085】
なお、補強ブラケット141,141は、前後方向メンバ104,105の上面および車幅方向D1の外側面と接合されている。
【0086】
さらに、図14に示されるように、前後方向メンバ104、105の下部とリア車幅方向メンバ103との間には、補強ブラケット142が設けられている。
【0087】
また、図11〜12および図15に示されるように、一対の連結メンバ106、107は、フロント車幅方向メンバ102における左右両側のロアアーム支持部111とリア車幅方向メンバ103の左右両端付近との間を連結している。また、図15に示されるように、連結メンバ107のフランジ部107aは、フロント車幅方向メンバ102の下面に接合しているので、さらに前後方向の剛性を向上させている。
【0088】
フロント車幅方向メンバ102とリア車幅方向メンバ103は、それらの下部に荷重がかかりやすいが、それらの下部同士を一対の連結メンバ106、107で部分的に強固に連結しているので、前後方向の剛性を向上している。
【0089】
また、連結メンバ106、107は、図12の車幅方向D1で見て車幅方向内側に傾斜して配置されているので、自動車の旋回時による荷重を、荷重が集中するサブフレーム101の下部で効果的に受け止めることができる。
【0090】
さらに、一対の連結ブラケット108、109は、フロント車幅方向メンバ102のアッパアーム支持部110またはその近傍部分と、前後方向メンバ104、105との間をそれぞれ連結している。
【0091】
連結ブラケット108、109は、連結メンバ106、107よりも長さも短く、軽量の部材である。この連結ブラケット108、109は、アッパアーム支持部110と前後方向メンバ104、105との間の短い距離を斜めに連結している。
【0092】
また、連結ブラケット108、109の前側には、それぞれ突起138が形成されているので、フロント車幅方向メンバ102の後方側との溶接の際に接合面積が増えるので、前後方向の剛性がさらに向上している。
【0093】
さらに、連結ブラケット108、109の上面には、スタビライザ固定用のブラケット36(図2参照)を取り付けるための埋込みボルト139が設けられている。
【0094】
図11〜15に示される4WD用のサブフレーム101においても、荷重が集中するフロント車幅方向メンバ102の下側を構成するロアアーム支持部111の付近を、連結メンバ106、107によってリア車幅方向メンバ103と強固に連結して前後方向の剛性を向上させている。それとともに、下側と比較して相対的に荷重がかからないフロント車幅方向メンバ102の上側を構成するアッパアーム支持部110の付近とその近くに配置された前後方向メンバ104、105との間の短い距離(連結ブラケッ108、109よりもきわめて短い距離)を、連結ブラケット108、109によって連結している。
【0095】
これにより、荷重の大きさに対して構造を最適化することにより、前後方向においての剛性を向上させることができ、軽量化を達成することが可能である。
【0096】
これにより、荷重の大きさに対して構造を最適化することにより、前後方向においての剛性を向上させることができ、軽量化を達成することが可能である。
【0097】
また、このように連結ブラケット108、109でフロント車幅方向メンバ102の上側を支持する構造では、構造の簡略化が可能になり、軽量化および生産性の向上を図ることが可能である。
【0098】
さらに、4WD用のサブフレーム101においても、上側の左右のアーム支持孔110a,110aを通るラインL5と、下側の左右のアーム支持孔111a,111aを通るラインL6の間に、フロント車幅方向メンバ102の車幅方向中心部位における断面中心Qが設けられ、この断面中心Qと各アーム支持孔110a、111aとが直線的に連結(すなわち、空間部102aなどを横切ったり迂回しないで直線的に連結)されることで、略対角線的に構成されていることにより、フロント車幅方向メンバ102のアッパアーム支持部110およびロアアーム支持部111をタスキ掛けの配置(X字状の配置)にすることができるので、車幅方向D1の剛性を向上することが可能である。
【0099】
また、この4WD用のサブフレーム101も、上述のFF用のサブフレーム1(図1参照)と同じ工程で製造することができるので、これらの生産ラインを共通化することも容易である。
【0100】
(第3実施形態)
上記の図11〜15に示される4WD用のサブフレーム101では、フロント車幅方向メンバ102のアッパアーム支持部110が他の部材とともに一体形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、別部材で形成してもよい。
【0101】
すなわち、図16〜17に示されるように、フロント車幅方向メンバ102のアッパアーム支持部110の少なくとも一部(図16〜17の例では全部)が、フロント車幅方向メンバ102の他の部分とは別の部材143からなり、前後方向メンバ104、105の上面から車幅方向D1における外側(前後方向メンバ104、105が互いに離反する方向の側)にかけて接合されている。
【0102】
アッパアーム支持部110を構成する部材143は、前後方向メンバ104、105をフロント車幅方向メンバ102の左右両側の所定位置に位置決めされた後に、フロント車幅方向メンバ102の他の部材および前後方向メンバ104、105に対して、後付けで溶接されている。
【0103】
この構成によれば、アッパアーム支持部110を前後方向メンバ104、105と上下方向に重ねて配設できると共に、前後方向メンバ104、105との接合面積を拡大することができるので、ねじれ剛性を向上できる。また、設計自由度も向上する。
【0104】
なお、上記の第1〜第3実施形態では、自動車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の車両のサブフレーム構造は、複数のサスペンションを有する車両であれば、自動車以外の車両の車体にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 サブフレーム
2 フロント車幅方向メンバ
2a 前面
2b 後面
3 リア車幅方向メンバ
4、5 前後方向メンバ
4a、4b、5a、5b マウント部
6、7 連結メンバ
8、9 連結ブラケット
10 アッパアーム支持部
10a アーム支持孔
11 ロアアーム支持部
11a アーム支持孔
12 補強ブラケット(リア車幅方向メンバ下側)
21、22 パネル
23 上面
24 下面
25 フランジ部
26 開口
27 ジャッキポイント
28、29 パネル
31 凹部(フロント車幅方向メンバ側)
32 凹部(リア車幅方向メンバ側)
33 スポット溶接部分
34 シーム溶接部分
35 スタビライザ
36 ブラケット
37 バー
38 突起
40 中間体
50 マルチリンクサスペンション機構
51 アッパサスペンションアーム
52 ロアサスペンションアーム
53 リアロアアーム
53a スプリング受け部
54 ダンパ
55 スプリング
101 サブフレーム
102 フロント車幅方向メンバ
103 リア車幅方向メンバ
104、105 前後方向メンバ
110 アッパアーム支持部
111 ロアアーム支持部
143 部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチリンク型サスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサブフレーム構造であって、
左右両端部において上下に離間したアッパアーム支持部およびロアアーム支持部を有し、車幅方向に延びる第1車幅方向メンバと、
前記第1車幅方向メンバから車体前後方向に間隔をおいて設けられ、車幅方向に延びる第2車幅方向メンバと、
前記アッパアーム支持部とロアアーム支持部との間に取り付けられ、前記第1及び第2車幅方向メンバの左側端部同士及び右側端部同士をそれぞれ連結して車体前後方向に延びる一対の前後方向メンバと、
前記第1車幅方向メンバの前記ロアアーム支持部またはその近傍部分と、前記第2車幅方向メンバとを連結する連結メンバと、
前記第1車幅方向メンバのアッパアーム支持部またはその近傍部分と、前記一対の前後方向メンバとの間をそれぞれ連結する一対の連結部と
を備えている、
車両のサブフレーム構造。
【請求項2】
前記第1車幅方向メンバは、前記ロアアーム支持部において、前記第2車幅方向メンバに対して反対側に屈曲して延び、前記前後方向メンバと接合されるフランジ部を有する、
請求項1に記載の車両のサブフレーム構造。
【請求項3】
前記第1車幅方向メンバのアッパアーム支持部の少なくとも一部は、前記第1車幅方向メンバの他の部分とは別の部材からなり、前記前後方向メンバの上面から車幅方向外側にかけて接合されている、
請求項1または2に記載の車両のサブフレーム構造。
【請求項4】
前記第1車幅方向メンバは、その左側のアッパアーム支持部と右側のロアアーム支持部との間で荷重を略対角線的に荷重を受け止めると共にその右側のアッパアーム支持部と左側のロアアーム支持部との間で荷重を略対角線的に荷重を受け止める構造を有する、
請求項1から3のいずれかに記載の車両のサブフレーム構造。
【請求項5】
前記連結メンバは、前記第2車幅方向メンバに向かって車幅方向内側に傾斜して配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の車両のサブフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−207351(P2011−207351A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77382(P2010−77382)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】