説明

車両のテールエンドトリム取付構造

【課題】車体剛性の低下を招くことなく、テールエンドメンバの傾斜部に係合孔を容易且つ高精度に形成することができる車両のテールエンドトリム取付構造を提供すること。
【解決手段】車体後部に形成されたバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバ4の上面を覆うテールエンドトリム5の前記テールエンドメンバ4への取付構造であって、車幅方向両端部が外側方に向かって斜め上方に傾斜したテールエンドメンバ4の左右の傾斜部に形成された係合孔7に、テールエンドトリム5の左右両端下面に突設された取付クリップ10を係合することによってテールエンドトリム5をテールエンドメンバ4に取り付ける構造において、前記テールエンドメンバ4に前記係合孔7の車幅方向両端縁に沿うビード8を形成し、該ビード8の水平部8aに前記係合孔7の車幅方向両端縁が位置するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部に形成されたバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバの上面を覆うテールエンドトリムの前記テールエンドメンバへの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体後部にバックドア開口部が形成された車両においては、バックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバの上面がテールエンドトリムによって覆われているが、このテールエンドトリムのテールエンドメンバへの取付構造の従来例を図8に示す。
【0003】
即ち、図8は従来のテールエンドトリム取付構造を示す部分背断面図であり、車体後部に形成されたバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバ(リヤスカートパネル)104は、その左右が車体外側方に向かって円弧状を成して斜め上方に傾斜している(図8には右側部分のみ図示)。そして、図示例では、このテールエンドメンバ104の水平部に車幅方向に長い矩形状の係合孔107が形成されている。
【0004】
上記テールエンドメンバ104の上面はテールエンドトリム105によって覆われており、該テールエンドトリム105は、その下面に突設された複数の取付クリップ110(図8には1つのみ図示)をテールエンドメンバ104に形成された前記係合孔107に上方から差し込んで係合させることによってテールエンドメンバ104に取り付けられている。又、このテールエンドトリム105の左右の端縁(図8には右側部分のみ図示)は、荷室の左右壁を覆うクオータトリム106(図8には一方のみ図示)の内端縁に形成された段部106a上に載置されてクオータトリム106に接続されており、これらのテールエンドトリム105とクオータトリム106の意匠面を成す上面同士はフラットフェース状に連続している。
【0005】
上記クオータトリム106の内端部には、テールエンドトリム105とテールエンドメンバ104の間に入り込むとともにテールエンドメンバ104の上面に当接する延出部106Aが一体に形成されており、この延出部106Aの端部には下方に突出する位置決めピン112が一体に形成されている。そして、クオータトリム106は、位置決めピン112をテールエンドメンバ104に形成された前記係合孔107に上方から挿入することによってテールエンドメンバ104に対して位置決めされている。
【0006】
而して、組み付けに際してはテールエンドメンバ104、クオータトリム106、テールエンドトリム105の順に重ねられ、クオータトリム106の位置決めピン112をテールエンドメンバ104の係合孔107に挿入することによってクオータトリム106が位置決めされ、テールエンドトリム105の下面に突設された取付クリップ110をテールエンドメンバ104の係合孔107に係合させることによってテールエンドトリム105がテールエンドメンバ104に取り付けられる。
【特許文献1】特開2005−324759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示す例では、係合孔107がテールエンドメンバ104の水平部に形成されているため、テールエンドメンバ104のプレス加工等による孔あけによって係合孔107を容易に形成することができるが、図9に示すように係合孔207がテールエンドメンバ204の傾斜部に形成されている構成では、テールエンドメンバ104の傾斜部に斜めの係合孔207を孔あけ作業によって形成することは容易ではなく、又、斜めの係合孔207の周縁を精度良く切断することができないために係合孔207に高精度を期待することはできない。
【0008】
上記問題を解決するには、テールエンドメンバ104の傾斜部の一部に平面部を形成すれば良いが、車体の剛性が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車体剛性の低下を招くことなく、テールエンドメンバの傾斜部に係合孔を容易且つ高精度に形成することができる車両のテールエンドトリム取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車体後部に形成されたバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバの上面を覆うテールエンドトリムの前記テールエンドメンバへの取付構造であって、車幅方向両端部が外側方に向かって斜め上方に傾斜した前記テールエンドメンバの左右の傾斜部に形成された係合孔に、前記テールエンドトリムの左右両端下面に突設された取付用クリップを係合することによってテールエンドトリムを前記テールエンドメンバに取り付ける車両のテールエンドトリム取付部構造において、前記テールエンドメンバに前記係合孔の車幅方向両端縁に沿うビードを形成し、該ビードの水平部に前記係合孔の車幅方向両端縁が位置するよう構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記取付クリップを前記テールエンドメンバの傾斜部に沿って傾斜する形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、テールエンドメンバに係合孔の車幅方向両端縁に沿うビードを形成し、該ビードの水平部に係合孔の車幅方向両端縁が位置するよう構成したため、ビードの水平部を孔あけすることによって係合孔を容易且つ高精度に形成することができる。又、テールエンドメンバには、係合孔の車幅方向両端縁に沿うビードを部分的に形成したため、車体剛性の低下を招くことがない。因みに、テールエンドメンバに係合孔の周囲に沿うビードを形成するとビード形状が大きくなるため、該ビード部分に応力が集中して該部分が変形の起点となり、車体の剛性が低下する可能性がある。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、テールエンドトリムの下面に突設された取付クリップをテールエンドメンバの傾斜部に沿って傾斜させたため、上方からの荷重に対しても取付クリップには均等な荷重が作用することとなり、該取付クリップの耐久性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係るテールエンドトリム取付構造を備えた車両の斜視図、図2はテールエンドメンバの部分斜視図、図3はテールエンドトリムの平面図、図4は同テールエンドトリムの部分背面図(図3の矢視A方向の図)、図5は図3のB−B線断面図、図6は図4のC−C線断面図、図7は図4のD−D線断面図である。
【0016】
図1に示す車両1は所謂ワンボックスカーであって、その車体後面にはバックドア開口部2が形成されており、このバックドア開口部2は、不図示のヒンジによって上端縁を中心として上下に回動するバックドア3によって開閉される。そして、バックドア開口部2の下縁には、図5に示すように、板金のプレス成形品であるテールエンドメンバ(リヤスカートパネル)4が車幅方向に沿って配設されており、このテールエンドメンバ4の上面は樹脂成形品であるテールエンドトリム5によって覆われている。
【0017】
又、図5に示すように、テールエンドトリム5は、これの左右に配されたクオータトリム6(図5には一方のみ図示)に接続されている。ここで、クオータトリム6は、荷室の左右壁を覆う樹脂成形品であって、これは車幅方向外側に向かって円弧状を成して斜め上方に傾斜している。同様にテールエンドメンバ4とテールエンドトリム5もその左右端部(図2、図4及び図5には右側端部のみ図示)が車幅方向外側に向かって円弧状を成して斜め上方に傾斜している。
【0018】
ところで、図2及び図5に示すように、テールエンドメンバ4の上面の外側方に向かって斜め上方に立ち上がる左右(図2及び図5には右側のみ示す)の傾斜部には車幅方向に長い矩形の傾斜した係合孔7がそれぞれ形成されている。
【0019】
而して、本実施の形態では、図2及び図5に示すように、テールエンドメンバ4の上面には前記係合孔7の車幅方向両端縁(車幅方向において係合孔7の高さが高い端縁と高さの低い端縁)に沿うビード8がそれぞれ形成されており、各ビード8の水平部8aに前記係合孔7の車幅方向両端縁が位置するよう構成されている。即ち、係合孔7は、テールエンドメンバ4の上面の各ビード8の水平部8aをプレス加工等によって孔あけすることによって形成されている。
【0020】
他方、前記テールエンドトリム5においては、図3に示すように、その幅方向中央にバックドアストライカ孔9が形成されており、その左右の底面の各2箇所には取付クリップ10が幅方向に適当な間隔で下方に向かってそれぞれ一体に突設されている。又、テールエンドトリム5の底面の左右端に形成された取付クリップ10の幅方向外側には、図3、図4及び図6に示すように、下方に向かって一体に突出する係合爪11が車体前後方向に各2つずつ突設されている。
【0021】
而して、本実施の形態では、図5に示すように、各取付クリップ10(図5には一方のみ図示)は、テールエンドメンバ4の傾斜部に沿って傾斜する形状に形成されている。但し、取付クリップ10の挿入方向(鉛直下方)を考慮して該取付クリップ10の全体形状は鉛直に形成されている。
【0022】
又、前記各クオータトリム6の内端部には、図5に示すように(図5には右側のみ図示)、テールエンドトリム5とテールエンドメンバ4の間に入り込むとともにテールエンドメンバ4の上面に当接する延出部6Aが一体に形成されており、この延出部6Aの基端部には、テールエンドトリム5の意匠面である上面から該テールエンドトリム5の厚さ分だけ低い段部6aが形成され、延出部6Aの端部には、下方に突出する位置決めピン12が一体に形成されている。
【0023】
而して、組み付けに際してはテールエンドメンバ4、クオータトリム6、テールエンドトリム5の順に重ねられ、図5に示すように、クオータトリム6の位置決めピン12をテールエンドメンバ4の係合孔7に上方から挿入することによってクオータトリム6がテールエンドメンバ4に対して位置決めされる。この場合、後述のようにテールエンドトリム5の取り付けに際して取付クリップ10が係合するテールエンドメンバ4の係合孔7を位置決め用として共用するため、クオータトリム6の位置決めが正確になされ、テールエンドトリム5とクオータトリム6の接合部の外観品質が高められて商品性が向上する。
【0024】
次に、図5に示すように、テールエンドトリム5の左右端縁を各クオータトリム6の延出部6Aの段部6a上に載置するとともに、図6に示すように、テールエンドトリム5の下面の左右端に突設された前記係合爪11をクオータトリム6の前後端縁に係合させるとともに、図5及び図7に示すように、テールエンドトリム5の下面に突設された前記取付クリップ10をテールエンドメンバ4に形成された係合孔7に上方から差し込んで係合させることによって、該テールエンドトリム5をテールエンドメンバ4に取り付ける。このとき、前述のようにクオータトリム6の延出部6Aに形成された段部6aの高さは、テールエンドトリム5の意匠面である上面から該テールエンドトリム5の厚さ分だけ低く設定されているため、テールエンドトリム5がテールエンドメンバ4に取り付けられた状態では、図5に示すように、テールエンドトリム5とクオータトリム6の意匠面を成す上面同士はフラットフェース状に連続しており、両者の接続部に段差は発生せず、その部分の外観性が高められている。又、テールエンドトリム5とクオータトリム6の接続部には、これらのテールエンドトリム5とクオータトリム6の熱による膨張と収縮を考慮して車幅方向に遊びδが形成され、その遊びδ分だけテールエンドトリム5とクオータトリム6が相対移動し得るよう構成されている。このため、テールエンドトリム5とクオータトリム6の熱変形が効果的に防がれる。
【0025】
以上において、本実施の形態では、テールエンドメンバ4に係合孔7の車幅方向両端縁に沿うビード8を形成し、該ビード8の水平部8aに係合孔7の車幅方向両端縁が位置するよう構成したため、ビード8の水平部8aを孔あけすることによって係合孔7を容易且つ高精度に形成することができる。
【0026】
又、テールエンドメンバ4には、係合孔7の車幅方向両端縁に沿うビード8を部分的に形成したため、車体剛性の低下を招くことがない。因みに、テールエンドメンバ4に係合孔7の周囲に沿うビートを形成するとビート形状が大きくなるため、該ビート部分に応力が集中して該部分が変形の起点となり、車体の剛性が低下する可能性がある。
【0027】
更に、本実施の形態では、テールエンドトリム5に突設された取付クリップ10をテールエンドメンバ4の傾斜部に沿って傾斜させたため、上方からの荷重に対しても取付クリップ10には均等な荷重が作用することとなり、該取付クリップ10の耐久性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るテールエンドトリム取付構造を備えた車両の斜視図である。
【図2】テールエンドメンバの部分斜視図である。
【図3】テールエンドトリムの平面図である。
【図4】テールエンドトリムの部分背面図(図3の矢視A方向の図)である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図4のC−C線断面図である。
【図7】図4のD−D線断面図である。
【図8】従来のテールエンドトリム取付構造を示す部分背断面図である。
【図9】従来のテールエンドトリム取付構造を示す部分背断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
2 バックドア開口部
3 バックドア
4 テールエンドメンバ
5 テールエンドトリム
6 クオータトリム
6A クオータトリムの延出部
6a 延出部の段部
7 係合孔
8 ビード
8a ビードの水平部
9 バックドアストライカ孔
10 取付クリップ
11 係合爪
12 位置決めピン
δ テールエンドトリムとクオータトリム間の遊び

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に形成されたバックドア開口部の下縁に車幅方向に沿って配設されたテールエンドメンバの上面を覆うテールエンドトリムの前記テールエンドメンバへの取付構造であって、車幅方向両端部が外側方に向かって斜め上方に傾斜した前記テールエンドメンバの左右の傾斜部に形成された係合孔に、前記テールエンドトリムの左右両端下面に突設された取付クリップを係合することによってテールエンドトリムを前記テールエンドメンバに取り付ける車両のテールエンドトリム取付部構造において、
前記テールエンドメンバに前記係合孔の車幅方向両端縁に沿うビードを形成し、該ビードの水平部に前記係合孔の車幅方向両端縁が位置するよう構成したことを特徴とする車両のテールエンドトリム取付構造。
【請求項2】
前記取付クリップを前記テールエンドメンバの傾斜部に沿って傾斜する形状としたことを特徴とする請求項1記載の車両のテールエンドトリム取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120029(P2009−120029A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296217(P2007−296217)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】