説明

車両のバッテリ交換装置

【課題】車両の停止状態において昇降手段により、バッテリを車両に設けられたバッテリ収納部から取り出し、新たなバッテリを前記バッテリ収納部に収納する車両のバッテリ交換装置において、バッテリ交換を従来技術に比べて短時間で行うことを可能にする。
【解決手段】昇降手段14は、バッテリ42が載置されるテーブル16をバッテリが車両に当接しても支障の無い第1速度及び、第1速度より速い第2速度の2段階に変速可能に構成されている。テーブル16の第2速度での上昇移動時に上昇位置を車両との接触により検出する交換装置側スイッチ25がテーブル16と一体移動可能に複数設けられ、制御装置26は昇降手段14の上昇駆動時に交換装置側スイッチ25の少なくとも1個がオンになると第2速度から第1速度への減速を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリ交換装置に係り、詳しくは動力源として大型のバッテリを搭載した車両のバッテリ交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーのように動力源として大型のバッテリ(バッテリユニット)を搭載した車両のうち電気自動車においては、バッテリの充電量が所定量以下になると電気自動車に搭載された状態でバッテリの充電を行うか、消耗したバッテリを充電されたバッテリと交換することによりバッテリを満充電の状態にする必要がある。電気自動車のバッテリ交換装置として、所定位置に設けられた昇降手段の上方にバッテリ収納部が位置するように電気自動車が停止した状態で、昇降手段を用いてバッテリユニットを出し入れするものが公開されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示されたバッテリ交換装置では、バッテリ収納部からバッテリユニットを取り出す際、あるいはバッテリ収納部にバッテリユニットを収納する際、バッテリユニットのロック装置のロックあるいはロック解除は、昇降手段の交換テーブルがバッテリユニットを適切な位置で支持していることを確認した状態で行われる。
【0003】
また、特許文献1のバッテリ交換装置は、バッテリユニットを交換できる場所がバッテリ交換装置の設置場所に限定されるという問題がある。これを解消するためのバッテリ交換装置も提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に開示されたバッテリ交換装置は、昇降機能付きの搬送台車を用いてバッテリユニット(バッテリ装置)を、電気自動車のバッテリ取り付け部に進入させた後、昇降機能によりバッテリユニットを上昇させてバッテリ取り付け部にバッテリユニットを取り付ける。電気自動車には、バッテリユニットが上昇開始位置に至ったことを検知するための上昇開始位置確認センサと、搬送台車の昇降機能によりバッテリユニットが上昇開始位置から上昇して取り付け位置に至ったことを検知するための取り付け位置確認センサとが設けられている。電気自動車には、上昇開始位置確認センサの出力信号に基づいてバッテリ装置が上昇開始位置に至ったことを報知する上昇開始位置確認ランプと、取り付け位置確認センサの出力信号に基づいてバッテリ装置が取り付け位置に至ったことを報知する取り付け位置確認ランプを備えている。このバッテリ交換装置は、作業者が搬送台車を任意の位置に停止している電気自動車のバッテリ取り付け部と対向する位置へ移動させるとともに、昇降機能を手動操作により作動させることでバッテリ交換作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−262951号公報
【特許文献2】特開2002−362263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリを車両に搭載したまま充電を行なう方式に対し、バッテリ交換方式のメリットは、ガソリン車の給油と同程度未満の短時間にバッテリを満充電の状態にできる点にある。このため、バッテリ交換方式においては、バッテリ交換をより短時間で完了できるほど好ましい。前述した従来技術においては、特許文献1のバッテリ交換装置が、より短時間の交換に適するが、さらにバッテリ交換を短時間で完了する為には、昇降手段によるバッテリの昇降速度を速くすることが有効である。ところが、昇降速度を速くすると、バッテリ収納部(バッテリ取り付け部)及び車両本体に大きな衝撃を加えることなく停止させることが難しくなる。
【0006】
また、車両に取り付けられた複数のタイヤの状態(空気圧や摩耗の状態)やサスペンションの状態は異なる。さらに、乗員及び積載物を含めた車両左右又は前後の重量バランスにはバラツキが存在する為に、車両がバッテリ交換位置に停止すると、車両のバッテリ収納部には上下方向の位置のバラツキ、および、水平方向の微小な傾きが存在する。この上下方向の位置のバラツキ、および、水平方向の傾きが、昇降手段の昇降制御をさらに難しくする。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の停止状態において昇降手段により、バッテリを車両に設けられたバッテリ収納部から取り出し、新たなバッテリをバッテリ収納部に収納する車両のバッテリ交換装置において、バッテリ交換を従来技術に比べて短時間で行うことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両の停止状態において昇降手段により、バッテリを車両に設けられたバッテリ収納部から取り出し、新たなバッテリを前記バッテリ収納部に収納する車両のバッテリ交換装置である。そして、前記昇降手段は、バッテリが載置されるテーブルをバッテリが車両に当接しても支障の無い第1速度及び、第1速度より速い第2速度の2段階に変速可能に構成され、前記テーブルの第2速度での上昇移動時に上昇位置を検出する交換装置側スイッチが前記テーブルと一体移動可能に複数設けられ、前記昇降手段の上昇駆動時に前記交換装置側スイッチの少なくとも1個がオンになると第2速度から第1速度への減速を行う制御手段を備えている。ここで、「バッテリ」とは、1個の裸の状態のバッテリに限らず、複数のバッテリがバッテリケースに搭載されたバッテリユニットをも意味し、一般にはバッテリユニットの状態で使用される。
【0009】
この発明では、バッテリが載置されるテーブルは、テーブルが停止すべき位置まで最初から一定速度で上昇するのではなく、2段階に変速されて上昇し、停止すべき位置での停止はバッテリが車両に当接しても支障の無い第1速度で上昇中に行われる。そして、第1速度に減速されるまでは第1速度より速い第2速度で上昇されるため、バッテリが載置されるテーブルはバッテリ収納部との間でバッテリの授受を行う適正位置まで、1段の速度で移動する構成より短時間で移動する。したがって、バッテリ交換を従来技術に比べて短時間で行うことができる。また、車両がバッテリ交換位置に停止した際、タイヤの状態等の関係で車両のバッテリ収納部には上下方向の位置のバラツキ、および、水平方向の微小な傾きが基本的に存在する。そのため、テーブルが上昇移動する際、先ず複数の交換装置側スイッチの少なくとも1個がオンになるが、そのとき第2速度から第1速度への減速が行われるため、減速が適正な時期に行われる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記交換装置側スイッチは、一平面上に存在するように少なくとも3個設けられ、前記制御手段は前記テーブルの上昇時に、交換装置側スイッチが全てオンになったときには、所定の微小時間だけ駆動を継続した後、昇降手段の駆動を停止する。ここで、「所定の微小時間」とは、例えば、リミットスイッチのプランジャがオフの状態からオンの状態になるまでに、リミットスイッチのアクチュエータが移動する距離を前記第1速度で移動するのに要する時間と同程度の時間を意味する。
【0011】
第1速度に減速した後、テーブルの上昇を停止する時期を、複数の交換装置側スイッチが全てオンになったときにする構成では、レアケースとしてバッテリ収納部が水平な状態で車両がバッテリ交換位置に停止した際、テーブルの上昇時に、交換装置側スイッチが全て同時にオンになる。そして、昇降手段は第2速度から第1速度への減速と同時に駆動停止を行うに制御されるため、テーブルの停止時における衝撃が大きくなる。しかし、この発明では、車両がバッテリ交換位置に停止した際、バッテリ収納部が水平な状態になり、テーブルの上昇時に、交換装置側スイッチが全て同時にオンになっても、昇降手段は第2速度から第1速度へ減速制御された後、所定の微小時間後に停止制御される。そのため、テーブルの停止時における衝撃が小さくなる。また、所定の微小時間とは、前述のように短いため、交換装置側スイッチが全て同時にオンになった時点で直ちに停止しなくても、バッテリ交換は短時間で行われる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記車両はバッテリがバッテリ収納部の適正位置に収納されている状態でオンになるバッテリ検知スイッチを備えており、バッテリを前記バッテリ収納部に収納するための収納作業時には、前記バッテリ検知スイッチがオンになると前記バッテリ収納部に収納されたバッテリをロックするロック装置がロック作動される。ここで、「バッテリがバッテリ収納部の適正位置に収納されている」とは、バッテリ収納部に収納されたバッテリの位置が、バッテリをロックするロック装置が支障なく、ロックあるいはロック解除を行うことが可能な位置であることを意味する。
【0013】
この発明では、昇降手段により新たなバッテリがバッテリ収納部に収納される際、車両に設けられたバッテリ検知スイッチがオンの状態でロック装置がロック作動され、バッテリが適正位置に収納された状態でバッテリのロックが行われる。したがって、車両に設けられたロック装置のロックあるいはロック解除時期をバッテリ交換装置側に設けられたセンサの検知情報に基づいて判断する必要がなく、通信手段の通信異常に起因したロック装置の不正作動を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に記載の発明によれば、車両の停止状態において昇降手段により、バッテリを車両に設けられたバッテリ収納部から取り出し、新たなバッテリをバッテリ収納部に収納する車両のバッテリ交換装置において、バッテリ交換を従来技術に比べて短時間で行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はバッテリ交換装置の模式平面図、(b)はバッテリ交換装置の模式側面図、(c)は車両と昇降手段との関係を示す模式正面図。
【図2】バッテリ取り出し手順を示し、(a)は車両がバッテリ交換位置に停止した状態のバッテリ交換装置と車両の関係を示す模式図、(b)は一部の交換装置側スイッチがオンになる位置までテーブルが移動した状態の模式図、(c)はロック装置のロックが解除された状態の模式図、(d)はバッテリが載置されたテーブルが下降位置に移動された状態の模式図。
【図3】バッテリ収納手順を示し、(a)は下降位置に位置するテーブル上にバッテリが移載された状態の模式図、(b)は一部の交換装置側スイッチがオンになる位置までバッテリを載置したテーブルが上昇した状態の模式図、(c)はバッテリがバッテリ収納部に収納されてロック装置によりロックされた状態の模式図、(d)はテーブルが下降位置に移動された状態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を電気自動車のバッテリ交換装置に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、バッテリ交換装置11は地上に設けられ、バッテリ交換装置11の上方には車両としての電気自動車41を支持する支持プレート12(図1(c)に図示)が、バッテリ交換の際に電気自動車41が水平状態で停止可能に設けられている。支持プレート12上にはバッテリ交換の際に電気自動車41の後輪に当接して電気自動車41のバッテリ交換位置への位置決めを行う車輪止め(図示せず)が設けられている。支持プレート12は、図示しないスロープから電気自動車41がバック(後退移動)で走行してバッテリ交換位置に停止するように構成されている。
【0017】
電気自動車41にはバッテリ42を車体の下方から出し入れ可能に収納するバッテリ収納部43が設けられている。バッテリ42としては、複数のバッテリがバッテリケースに搭載されたバッテリユニットが使用されているが、単にバッテリと称す。バッテリ収納部43の周囲には、バッテリ収納部43に収納されたバッテリ42の落下を防止するロック装置44が設けられている。ロック装置44は、ピストンロッド44aがバッテリケースに形成された掛止孔(図示せず)に進入、離脱可能に配設されたシリンダで構成され、バッテリ42を4箇所でロック可能に構成されている。ロック装置44は、ピストンロッド44aが掛止孔に進入した状態でロック状態になるが、掛止孔は、ロック状態において昇降手段が下降移動した場合、バッテリ42の下降移動を許容可能に長孔で形成されている。掛止孔は、ロック状態におけるバッテリ42の下降量が、昇降手段14の上昇終了状態でオンになったバッテリ検知スイッチ45がオフになるように形成されている。
【0018】
電気自動車41はバッテリ42がバッテリ収納部43の適正位置に収納されている状態でオンになるバッテリ検知スイッチ45を備えている。バッテリ42がバッテリ収納部43の適正位置に収納されているとは、バッテリ収納部43に収納されたバッテリ42の位置が、バッテリ42をロックするロック装置44が支障なく、ロックあるいはロック解除を行うことが可能な位置であることを意味する。バッテリ検知スイッチ45は複数個、この実施形態ではバッテリ42の上面の四隅にそれぞれ当接可能に4個設けられている。ロック装置44は、バッテリ交換装置11の昇降手段14の上昇駆動時に、全てのバッテリ検知スイッチ45がオンになるとバッテリ収納部43に収納されたバッテリ42をロックするように作動される。
【0019】
支持プレート12には、電気自動車41が後輪を車輪止めに当接させてバッテリ交換位置に停止した状態において、バッテリ収納部43とバッテリ交換装置11との間におけるバッテリ42の移動に支障を来さない大きさの開口12aが形成されている。
【0020】
バッテリ交換装置11は、バッテリ交換位置に停止した電気自動車41のバッテリ収納部43と対向する位置でバッテリ42を昇降する昇降手段14と、昇降手段14との間でバッテリ42の授受が可能で、搬送方向がバッテリ交換位置に停止した電気自動車41の前後方向と平行に(同じに)なるように設けられた搬送手段15とを備えている。
【0021】
昇降手段14はパンタグラフ式の構成で、バッテリ42が載置されるテーブル16を昇降させるパンタグラフ機構は2組の第1リンク17及び第2リンク18を備えている。両リンク17,18は、同じ長さで中央部が軸により回動可能に連結され、上端がテーブル16に固定された一対の上側支持部材19に連結され、下端が一対の下側支持部材20に連結されている。第1リンク17は下端が下側支持部材20に回動可能に連結され、上端が上側支持部材19に形成された長孔19aに沿って移動可能に設けられた上側支軸21に回動可能に連結されている。第2リンク18は下端が下側支持部材20に形成された長孔20aに沿って移動可能に設けられた下側支軸22に回動可能に連結され、上端が上側支持部材19に回動可能に連結されている。下側支軸22はモータ23(図1(b)にのみ図示)により回動されるねじ軸24によりねじ軸24に沿って移動するスライダ(図示せず)に固定されている。そして、モータ23の正転駆動時には第1リンク17及び第2リンク18の端部の間隔が狭くなってテーブル16が上昇し、モータ23の逆転駆動時には第1リンク17及び第2リンク18の端部の間隔が広くなってテーブル16が下降するようになっている。
【0022】
モータ23は、バッテリ42が載置されるテーブル16をバッテリ42が車両、例えばバッテリ収納部43の一部や、バッテリ収納部43の外縁に配置されたテーパ状の案内プレート(図示せず)に当接しても支障のない第1速度と、第1速度より速い第2速度の2段階に変速可能に構成されている。テーブル16には、テーブル16の第1速度での上昇移動時に上昇位置を車両との接触により検出する交換装置側スイッチ25がテーブル16と一体移動可能に複数(この実施形態では4個)一平面上に存在するように設けられている。交換装置側スイッチ25は、昇降手段14の上昇駆動時に、テーブル16上に載置されたバッテリ42の上部がバッテリ収納部43に収納され、かつバッテリ42の上面がバッテリ検知スイッチ45に検知されない状態で、バッテリ収納部43の周囲において電気自動車41の下面に接触してオンになるリミットスイッチで構成されている。即ち、各交換装置側スイッチ25は、バッテリ収納部43内に侵入しないように、テーブル16の周囲の側面に固定されている。
【0023】
テーブル16は、電気自動車41がバッテリ交換位置に、バッテリ収納部43が水平から傾いた状態で停止した場合、テーブル16の上昇移動時にテーブル16がバッテリ収納部43の周縁の一部に当接して、バッテリ収納部43が水平状態になるまで電気自動車41を押し上げ、電気自動車41の傾きを修正可能に構成されている。
【0024】
昇降手段14を駆動する制御手段としての制御装置26(図1(c)に図示)、即ちモータ23を制御する制御装置26は、交換装置側スイッチ25のオン・オフに基づいて昇降手段14の上昇駆動時におけるモータ23の変速時期及び停止時期を判断する。制御装置26は、昇降手段14の上昇駆動時にモータ23を先ず第2速度で駆動し、交換装置側スイッチ25の少なくとも1個がオンになると第2速度から第1速度への減速を行う。また、制御装置26はテーブル16の上昇時に、交換装置側スイッチ25が全てオンになったときには、所定の微小時間だけ駆動を継続した後、昇降手段14の駆動を停止する。所定の微小時間は、交換装置側スイッチ25が全てオンになったときから全てのバッテリ検知スイッチ45がオンになる位置までテーブル16が第1速度で上昇するのに要する時間に設定されている。即ち、所定の微小時間は、バッテリ検知スイッチ45として使用されているリミットスイッチのプランジャがオフの状態からオンの状態になるまでに、リミットスイッチのアクチュエータが移動する距離をテーブル16が第1速度で移動するのに要する時間と同程度の時間に設定されている。
【0025】
昇降手段14は、搬送手段15との間でバッテリ42の授受(移載)を行うが、テーブル16の周囲に固定された交換装置側スイッチ25との干渉を避けるため、図1(a),(b)に示すように、搬送手段15は昇降手段14とオーバーラップしない状態で、かつ搬送手段15の一端が昇降手段14の近傍に位置するように設けられている。
【0026】
搬送手段15は、一対のチェーン27aを備えたチェーンコンベア27で構成され、一対のチェーン27a間にバッテリ42を載置した状態でバッテリ42を搬送する。両チェーン27aは脚部28aを備えたフレーム28に支持され、正逆回転可能な駆動モータ29により同時に駆動される。搬送手段15は、バッテリ42を昇降手段14との間の移載位置と、バッテリ貯蔵部へのバッテリ搬送手段(いずれも図示せず)との間で搬送する。バッテリ貯蔵部とは、回収された使用済みバッテリを一時貯蔵するとともに、充電された充電済みバッテリを貯蔵する装置で、例えば、自動倉庫で構成される。
【0027】
搬送手段15の昇降手段14寄りには、搬送手段15の一端まで搬送された新たなバッテリ42を搬送手段15上から昇降手段14のテーブル16上に移載する移載装置30が設けられている。移載装置30は、リフタ31により昇降される支持部材32と、支持部材32上にピストンロッド33aが搬送手段15の搬送方向に延びるように固定されたシリンダ33とを備えている。ピストンロッド33aの先端には押圧板34が固定されている。シリンダ33は、押圧板34が搬送手段15上のバッテリ42に係合してテーブル16上へ移動可能な上昇位置と、押圧板34が搬送手段15上のバッテリ42に係合不能な待機位置(下降位置)とにリフタ31により移動される。上昇位置においてピストンロッド33aが突出することにより押圧板34がバッテリ42を搬送手段15上から昇降手段14上に移載する。
【0028】
なお、昇降手段14を挟んで移載装置30と反対側には、昇降手段14のテーブル16上に載置されたバッテリ42を搬送手段15上に移載する移載装置(図示せず)が設けられている。また、制御装置26は、昇降手段14だけでなく、搬送手段15及び移載装置30の制御も行う。
【0029】
次に前記のように構成されたバッテリ交換装置11の作用を説明する。
電気自動車41は、図示されないスロープを経由して支持プレート12上まで走行し、支持プレート12の車輪止めに後輪を載せた状態で停止する。電気自動車41がバッテリ交換のためバッテリ交換位置に停止すると、図2(a)に示すように、バッテリ収納部43が昇降手段14のテーブル16と対向する状態になる。電気自動車41は、複数のタイヤの状態(空気圧や摩耗の状態)やサスペンションの状態、さらには、乗員及び積載物を含めた車両左右又は前後の重量バランスにはバラツキが存在する為に、車両がバッテリ交換位置に停止すると、バッテリ収納部43には上下方向の位置のバラツキ、および、水平方向の微小な傾きが存在する状態が基準状態になる。この状態からバッテリ交換装置11はバッテリ交換を開始する。
【0030】
先ず、昇降手段14が高速の第2速度で上昇駆動される。制御装置26は、図2(b)に示すように、交換装置側スイッチ25の少なくとも1個がオンになった時点で第1速度に減速する。この時点では他の交換装置側スイッチ25及びバッテリ収納部43の上側に設けられているバッテリ検知スイッチ45は、まだオフ状態にある。また、テーブル16は、一部がバッテリ42の一部及びバッテリ収納部43の周縁の一部に当接した状態になっている。この状態からさらに昇降手段14が第1速度で上昇駆動され、テーブル16の上昇に伴って車体の傾きが修正されて水平になった時点で全ての交換装置側スイッチ25がオンになる。制御装置26は全ての交換装置側スイッチ25がオンになったときには、所定の微小時間だけモータ23の駆動を継続した後、昇降手段14の駆動を停止する。その結果、図2(c)に示すように、車体の傾きが水平に修正されてバッテリ42が全てのバッテリ検知スイッチ45をオンにする状態でテーブル16が停止する。電気自動車41の下側は走行時等に汚れ易く、交換装置側スイッチ25に光電スイッチを用いて反射部を電気自動車41の下側に設けると、反射部の汚れにより誤動作の虞がある。しかし、交換装置側スイッチ25がリミットスイッチで構成されているため、光電スイッチを使用した場合に比べて、誤動作が少なくなる。
【0031】
そして、全てのバッテリ検知スイッチ45がオンになると、図2(c)に示すように、ロック装置44がロック解除駆動され、ピストンロッド44aはバッテリ42の下降に支障を来さない位置に移動されてロックが解除される。この状態ではバッテリ42はテーブル16により水平に支持されているため、ロック装置44のロック解除動作が円滑に行われる。次に昇降手段14が下降駆動され、図2(d)に示すように、バッテリ42はテーブル16に載置されて搬送手段15への移載位置まで下降される。また、テーブル16の下降により、電気自動車41は傾いた状態になる。次に図示しない移載装置が駆動されて、バッテリ42がテーブル16上から搬送手段15上に移載される。その後、搬送手段15が駆動されて使用済みのバッテリ42はバッテリ交換装置11から搬出される。
【0032】
次に満充電された新たなバッテリ42がバッテリ貯蔵部からバッテリ搬送手段により搬送手段15上に移載されてバッテリ交換装置11に搬入される。そして、新たなバッテリ42は搬送手段15により昇降手段14の近傍の移載位置まで搬送される。その状態で移載装置30が駆動され、新たなバッテリ42は搬送手段15上から昇降手段14のテーブル16上に移載されて図3(a)に示す状態になる。
【0033】
次に昇降手段14が高速の第2速度で上昇駆動される。そして、図3(b)に示すように、バッテリ42がバッテリ収納部43に進入し、交換装置側スイッチ25の少なくとも1個がオンになる位置までテーブル16が上昇すると、昇降手段14は第1速度に減速される。この時点では他の交換装置側スイッチ25及び全てのバッテリ検知スイッチ45はオフ状態にある。また、テーブル16は、一部がバッテリ収納部43の周縁の一部に当接した状態になっている。この状態からさらに昇降手段14が第1速度で上昇駆動され、テーブル16の上昇に伴って車体の傾きが修正されて水平になった時点で全ての交換装置側スイッチ25がオンになる。制御装置26は全ての交換装置側スイッチ25がオンになったときには、所定の微小時間だけモータ23の駆動を継続した後、昇降手段14の駆動を停止する。その結果、図3(c)に示すように、車体の傾きが水平に修正されてバッテリ42が全てのバッテリ検知スイッチ45をオンにする状態でテーブル16が停止する。
【0034】
そして、全てのバッテリ検知スイッチ45がオンになると、図3(c)に示すように、ロック装置44がロック駆動され、ピストンロッド44aはバッテリ42と係合してバッテリ42を保持可能なロック位置に移動される。次に昇降手段14が下降駆動され、図3(d)に示すように、新たなバッテリ42はバッテリ収納部43内にピストンロッド44aにより支持されたロック状態で収納され、テーブル16が下降位置に配置されることによりバッテリ交換作業が完了する。
【0035】
なお、電気自動車41がバッテリ交換位置に停止した際、レアケースとしてバッテリ収納部43が水平状態となるように停止する場合がある。その場合、テーブル16が第2速度で上昇中に全ての交換装置側スイッチ25が同時にオンになる。全ての交換装置側スイッチ25がオンになったときにテーブル16を停止させる構成では、第2速度から第1速度への減速と、停止制御とが同時に行われるため衝撃が大きくなる。しかし、制御装置26は、全ての交換装置側スイッチ25がオンになったときから所定の微小時間駆動を継続した後、昇降手段14の駆動を停止するため、テーブル16は確実に第1速度に減速した後、停止する。
【0036】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)バッテリ42を昇降する昇降手段14は、バッテリ42が載置されるテーブル16をバッテリが車両に当接しても支障の無い第1速度及び、第1速度より速い第2速度の2段階に変速可能に構成されている。そのため、バッテリ42が載置されるテーブル16はバッテリ収納部43との間でバッテリ42の授受を行う適正位置まで、1段の速度で移動する構成より短時間で移動する。したがって、バッテリ交換を従来技術に比べて短時間で行うことができる。
【0037】
(2)バッテリ交換装置11は、テーブル16の第1速度での上昇移動時に上昇位置を検出する交換装置側スイッチ25がテーブル16と一体移動可能に複数設けられ、昇降手段14の上昇駆動時に交換装置側スイッチ25の少なくとも1個がオンになると第2速度から第1速度への減速を行う制御手段(制御装置26)を備えている。したがって、タイヤの状態等の関係でバッテリ収納部43が水平から傾いた状態で電気自動車41がバッテリ交換位置に停止した状態で、その傾きを利用して第2速度から第1速度への適切な減速時期を設定することができる。
【0038】
(3)交換装置側スイッチ25は、一平面上に存在するように少なくとも3個設けられ、制御装置26はテーブル16の上昇時に、交換装置側スイッチ25が全てオンになったときには、所定の微小時間だけ駆動を継続した後、昇降手段14の駆動を停止する。したがって、車両がバッテリ交換位置に停止した際、レアケースであるバッテリ収納部43が水平な状態になった場合でも、昇降手段14は第2速度から第1速度へ減速制御された後、所定の微小時間後に停止制御されるため、テーブル16停止時における衝撃が小さくなる。また、所定の微小時間とは、前述のように短いため、交換装置側スイッチ25が全て同時にオンになった時点で直ちに停止しなくても、バッテリ交換は短時間で行われる。
【0039】
(4)電気自動車41はバッテリ42がバッテリ収納部43の適正位置に収納されている状態でオンになるバッテリ検知スイッチ45を備えている。そして、バッテリ42をバッテリ収納部43に収納するための昇降手段14の上昇駆動時には、バッテリ検知スイッチ45がオンの状態でバッテリ収納部43に収納されたバッテリ42をロックするロック装置44がロック作動される。したがって、電気自動車41に設けられたロック装置44のロックあるいはロック解除時期をバッテリ交換装置側に設けられたセンサの検知情報に基づいて判断する必要がなく、バッテリ交換装置側の情報を入手する際の通信手段の通信異常に起因したロック装置44の不正作動を防止することができる。
【0040】
(5)交換装置側スイッチ25は車両との接触によりテーブル16の上昇位置の検出を行うように、例えば、リミットスイッチで構成され、バッテリ収納部43の周縁において電気自動車41の下面と係合することでオンになる。したがって、車両と非接触の状態で上昇位置の検出を行う構成に比べて、取付位置の設定が容易になる。
【0041】
(6)交換装置側スイッチ25はリミットスイッチで構成されているため、光電スイッチを使用した場合に比べて、誤動作が少なくなる。
(7)ロック装置44は、ロック状態においてテーブル16に当接しているバッテリ42が、テーブル16の昇降にともなって移動可能に構成されている。したがって、バッテリ収納部43が水平から傾いた状態で電気自動車41がバッテリ交換位置に停止した場合でも、テーブル16は傾いたバッテリ42に当接した後、バッテリ42を水平に支持する上昇停止位置まで円滑に移動することができる。
【0042】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 昇降手段14はパンタグラフ式の構成に限らず、例えば、鉛直方向に延びるボールねじを利用してテーブル16を昇降させる構成としてもよい。
【0043】
○ 車両側にバッテリ検知スイッチ45を設けずに、昇降手段14の上昇駆動時にテーブル16がバッテリ42をバッテリ収納部43の適正位置において支持する状態になった事の情報を通信手段でバッテリ交換装置11から車両側に送信するようにしてもよい。
【0044】
○ ロック装置44は、ロックピン(ピストンロッド44a)を水平にスライドさせてバッテリ42側に形成された長孔に挿入してロックする構成に限らない。例えば、バッテリ42側にピンを突設し、車両側にピンをつかむ把持装置を設けてもよい。また、ツメ形状のロック部材が垂直面内で回転することでバッテリを支えるロック位置と、ロック解除位置とに配置される構成の装置としてもよい。
【0045】
○ 交換装置側スイッチ25やバッテリ検知スイッチ45はリミットスイッチに限らず、リードスイッチや光電スイッチ等の他のスイッチを用いてもよい。しかし、光電スイッチよりリードスイッチが好ましい。例えば、交換装置側スイッチ25としてリードスイッチを用い、車両側にはテーブル16が第2速度から第1速度への減速を行うべき位置に達したときリードスイッチをオンにさせる位置に永久磁石を設ける。また、光電スイッチの場合は、例えば、投受光部を光が略水平に進む状態でテーブル上面より下側においてテーブル16に取り付ける。また、車両側(電気自動車41側)には、テーブル上面がバッテリ収納部43に収容された状態のバッテリ42に当接する状態において、前記投受光部からの投光を投受光部に反射可能な状態で反射部を設ける。
【0046】
○ 昇降手段14を搬送手段15の一対のチェーン27aの間に配置してもよい。この場合、テーブル16の搬送手段15の搬送方向と直交する方向の長さを、一対のチェーン27a間の長さより短く形成する。また、交換装置側スイッチ25と搬送手段15との干渉を避けるため、交換装置側スイッチ25はテーブル16の上昇移動時にフレーム28と干渉しない特殊な形状のブラケット、例えば、U字状のブラケットを介してテーブル16に固定される。
【0047】
○ 搬送手段15の搬送方向と、バッテリ交換位置に停止した車両の前後方向との関係は、平行(同方向)に限らず直交であってもよい。
○ 車両が後退移動でバッテリ交換位置へ進んで停止するのではなく、前進移動でバッテリ交換位置へ進んで停止する構成としてもよい。この場合、車輪止めは、車両の前輪に当接して車両のバッテリ交換位置への位置決めを行う。
【0048】
○ 搬送手段15はチェーンコンベアに限らず、ベルトコンベアやローラコンベアで構成してもよい。ローラコンベアの場合、移載装置30は、シリンダ33が上昇位置と搬送手段15の下方の下降位置とにリフタ31により移動される構成は採用できず、ローラコンベアの上方で押圧板34がバッテリ42を押圧可能な位置と、押圧板34がローラコンベア上のバッテリ42と干渉しない位置とに移動可能に構成される。
【0049】
○ バッテリ交換の際に車両がバッテリ交換装置11の上方で停止する構成として、バッテリ交換装置11を地上に形成したピット内に設け、車両はそのピットを覆うプレート上、あるいはピットを跨ぐように地上で停止する構成としてもよい。
【0050】
○ 車両は動力源として大型のバッテリを搭載した車両であればよく、バッテリのみを走行用動力源として備えた電気自動車41に限らず、モータ及びエンジンの両方を備えたハイブリッドカーであってもよい。
【0051】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記交換装置側スイッチは車両との接触により検出を行う。
【0052】
(2)請求項3に記載の発明において、前記ロック装置は、ロック状態において前記テーブルに当接しているバッテリが、テーブルの昇降にともなって移動可能に構成されている。
【符号の説明】
【0053】
11…バッテリ交換装置、14…昇降手段、16…テーブル、25…交換装置側スイッチ、26…制御手段としての制御装置、41…車両としての電気自動車、42…バッテリ、43…バッテリ収納部、44…ロック装置、45…バッテリ検知スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停止状態において昇降手段により、バッテリを車両に設けられたバッテリ収納部から取り出し、新たなバッテリを前記バッテリ収納部に収納する車両のバッテリ交換装置であって、
前記昇降手段は、バッテリが載置されるテーブルをバッテリが車両に当接しても支障の無い第1速度及び、第1速度より速い第2速度の2段階に変速可能に構成され、前記テーブルの第2速度での上昇移動時に上昇位置を検出する交換装置側スイッチが前記テーブルと一体移動可能に複数設けられ、前記昇降手段の上昇駆動時に前記交換装置側スイッチの少なくとも1個がオンになると第2速度から第1速度への減速を行う制御手段を備えていることを特徴とする車両のバッテリ交換装置。
【請求項2】
前記交換装置側スイッチは、一平面上に存在するように少なくとも3個設けられ、前記制御手段は前記テーブルの上昇時に、交換装置側スイッチが全てオンになったときには、所定の微小時間だけ駆動を継続した後、昇降手段の駆動を停止する請求項1に記載の車両のバッテリ交換装置。
【請求項3】
前記車両はバッテリがバッテリ収納部の適正位置に収納されている状態でオンになるバッテリ検知スイッチを備えており、バッテリを前記バッテリ収納部に収納するための収納作業時には、前記バッテリ検知スイッチがオンになると前記バッテリ収納部に収納されたバッテリをロックするロック装置がロック作動される請求項1又は請求項2に記載の車両のバッテリ交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−51432(P2011−51432A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200831(P2009−200831)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】