説明

車両の上部車体構造

【課題】ルーフパネルより車幅方向内側までルーフサイドレール延長部を設けて、車幅方向に長いルーフサイドレールを形成し、側突に対して高い剛性を確保すると共に、ルーフサイドレール延長部をフロントヘッダと直接接続して、接合部の剛性向上を図り、捩り剛性が向上する車両の上部車体構造の提供を目的とする。
【解決手段】ルーフサイドレール4が、ルーフサイドアウタ12とルーフサイドインナ13とが接合されて形成された外側接合部JOと、外側接合部JOより車幅方向車内側に位置するルーフサイドアウタ12とルーフパネル5とが接合されて形成されたルーフパネル接合部J1と、を有し、ルーフサイドインナ13の一部が、ルーフパネル接合部J1より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部13Aを形成し、ルーフサイドレール延長部13Aが、ルーフパネル5前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダ8と接続されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体上部の車幅方向両側において、車両前後方向に延設されたルーフサイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとから形成される一対のルーフサイドレールと、これら一対のルーフサイドレール間に跨って配設されたルーフパネルとを備えたような車両の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ルーフサイドは、車体側部の骨格の一部を形成する重要な部位であって、所定の剛性が要求される。特に、該ルーフサイドは側突時に最初に荷重が入力される部位であり、この側突荷重に対する充分な耐力が要求される。
【0003】
一方、ルーフサイドから車両前方へ延出するフロントピラーは、フロントウインドの側部に設けられてフロントウインドガラスの両側を支持すると共に、車体前部の剛性、および前面衝突に対する衝突性能を確保する部材として設けられている。
ここで、上述のフロントピラーは、ドライバが着座する運転席よりも前方に配設される関係上、該フロントピラーの車幅方向寸法と車両前後方向の寸法とのバランスにより、剛性要件と死角要件とを満足させるように形成されている。
このように、車両の上部車体構造においては、充分な剛性確保が望まれている。
【0004】
従来、車両の上部車体構造において、その剛性を確保する構造としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設された左右一対のルーフサイドレールを設け、これら左右一対のルーフサイドレール間に跨って配設されたルーフパネルを備え、上述のルーフサイドレールは、ルーフサイドアウタパネルと、ルーフサイドインナパネルと、これら両者間に挟持された補強パネルとを有しており、車外側においてルーフサイドアウタパネル、補強パネル、ルーフサイドインナパネルの三者を溶接固定し、この溶接箇所よりも車幅方向内側においてルーフパネルと、ルーフサイドアウタパネルと、補強パネルとの三者を溶接固定し、この溶接箇所よりもさらに車幅方向内側において、ルーフパネルの下方に位置するルーフリヤレールと、補強パネルと、補強ブラケットとの三者を溶接固定したものであって、このように溶接部を車幅方向に複数設け、かつ、溶接部を補強ブラケットで支持することで、剛性の確保を図ったものである。
【0005】
この特許文献1に開示された従来構造は、上述したように、溶接構造の工夫により上部車体構造の剛性向上を図るものであるが、この従来構造のルーフサイド閉断面は凹部(ルーフサイドアウタパネルの車幅方向内側の上端部と、ルーフパネルの端部との間に形成された溝部)までしか形成されておらず、側突に対する剛性の向上が未だ不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−40100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、ルーフパネルより車幅方向内側までルーフサイドレール延長部を設けて、車幅方向に長いルーフサイドレールを形成でき、側突に対して高い剛性を確保できると共に、ルーフサイドレール延長部をフロントヘッダと直接接続して、接合部の剛性向上を図り、特に、捩り剛性が向上する車両の上部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両の上部車体構造は、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設されたルーフサイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとから形成される一対のルーフサイドレールと、該一対のルーフサイドレール間に跨って配設されたルーフパネルと、を備えた車両の上部車体構造であって、上記ルーフサイドレールが、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルとが接合されて形成された外側接合部と、該外側接合部より車幅方向車内側に位置する上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフパネルとが接合されて形成されたルーフパネル接合部と、を有すると共に、上記ルーフサイドインナパネルの一部が、該ルーフパネル接合部より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部を形成し、該ルーフサイドレール延長部が、上記ルーフパネル前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダと接続されたものである。
【0009】
上記構成によれば、ルーフパネルより車幅方向内側までルーフサイドレール延長部を設けたので、車幅方向に長いルーフサイドレールを形成でき、側突に対して高い剛性を確保できる。
また、このような効果を有しつつ、ルーフサイドレール延長部をフロントヘッダと直接接続して、接合部の剛性向上を図り、特に、捩り剛性が向上する。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフサイドアウタパネルには、上記ルーフパネル接合部よりも車幅方向車内側に延設されたアウタパネル延長部が形成されると共に、上記ルーフサイドレール延長部と上記アウタパネル延長部が接合されて内側接合部を形成し、上記ルーフサイドレールが、該内側接合部と上記外側接合部とで閉断面構造を形成しているものである。
上記構成によれば、上述の内側接合部と外側接合部とで車幅方向に長い閉断面構造のルーフサイドレールとなるため、側突に対する剛性のさらなる向上を図ることができると共に、車体の捩り剛性をより一層高めることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフサイドレールは、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルとの間に設けられたレインフォースメントを有し、該レインフォースメントが、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルと共に上記外側接合部を形成すると共に、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフパネルと共に、上記ルーフパネル接合部を形成し、かつ該ルーフパネル接合部より車幅方向車内側に延設されたレインフォースメント延長部を有し、該レインフォースメント延長部が上記ルーフサイドレール延長部と接合されており、上記ルーフサイドレールを閉断面構造に構成しているものである。
【0012】
上記構成によれば、レインフォースメント用いて閉断面構造のルーフサイドレールを構成したので、車体剛性を高めることができる。
つまり、レインフォースメントは他のパネル部材と比較して板厚が厚く、強度が高いので、該レインフォースメントを用いることで、上部車体剛性の向上を図ることができ、さらに、ルーフサイドレールの中を外側接合部から内側接合部にわたって設けられることで、ルーフパネルとの溶接強度を高め、上部車体剛性の向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフパネルの車両下方側に車幅方向に沿って配設されたルーフレインフォースメントが設けられ、該ルーフレインフォースメントの車幅方向両端部を上記ルーフサイドレール延長部と連結したものである。
上記構成によれば、ルーフレインフォースメントとルーフサイドレール延長部とを連結したので、それぞれの車種に対応して異なる車幅方向長さのルーフレインフォースメントを形成する必要がなくなり、車両デザインの自由度に左右されることなく、ルーフレインフォースメント共通化を図ることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフサイドインナパネルの上記ルーフサイドレール延長部と対応する部位には、側突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置が設けられたものである。
上記構成によれば、乗員の側頭部の圧迫感を抑制しつつ上記エアバッグ装置の配設を行なうことができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフサイドレールの前端には、フロントウインドの両側部を支持すると共に該ルーフサイドレールと連続して形成されたフロントピラーが設けられており、上記ルーフサイドレール延長部は、該フロントピラー領域においては車幅方向で上記ルーフパネル接合部の位置となるように形成されたものである。
上記構成によれば、フロントピラーによる死角を増大することなく、側突に対する剛性を高めることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記フロントピラーは閉断面を有し、該閉断面はその車幅方向の長さよりも前後方向の長さが長く形成されたものである。
上記構成によれば、フロントピラーの閉断面により車両前方からの衝撃に対して剛性を高めることができると共に、該閉断面はその車幅方向の長さよりも前後方向の長さが長く形成されているので、前方視界を阻害することもない。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ルーフパネルより車幅方向内側までルーフサイドレール延長部を設けたので、車幅方向に長いルーフサイドレールを形成でき、側突に対して高い剛性を確保できると共に、ルーフサイドレール延長部をフロントヘッダと直接接続して、接合部の剛性向上を図り、特に、捩り剛性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の車両の上部車体構造を備えた車体の側面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1、図2のA−A線矢視断面図
【図4】図1、図2のB−B線矢視断面図
【図5】図1、図2のC−C線矢視断面図
【図6】図1、図2のD−D線矢視断面図
【図7】車両の上部車体構造を示す斜視図
【図8】図7の分解斜視図
【図9】エアバッグ装置配設の比較例を示す断面図
【図10】車両の上部車体構造の他の実施例を示すC−C線断面相当部位の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
側突に対して高い剛性を確保できると共に、ルーフサイドレール延長部をフロントヘッダと直接接続して、接合部の剛性向上を図り、特に、捩り剛性が向上するという目的を、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設されたルーフサイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとから形成される一対のルーフサイドレールと、該一対のルーフサイドレール間に跨って配設されたルーフパネルと、を備えた車両の上部車体構造において、上記ルーフサイドレールが、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルとが接合されて形成された外側接合部と、該外側接合部より車幅方向車内側に位置する上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフパネルとが接合されて形成されたルーフパネル接合部と、を有すると共に、上記ルーフサイドインナパネルの一部が、該ルーフパネル接合部より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部を形成し、該ルーフサイドレール延長部が、上記ルーフパネル前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダと接続されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0020】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の上部車体構造を示し、図1は車体略全体を示す側面図、図2は図1の要部平面図、図3は図1、図2のA−A線矢視断面図、図4は図1、図2のB−B線矢視断面図、図5は図1、図2のC−C線矢視断面図、図6は図1、図2のD−D線矢視断面図である。
【0021】
図1、図2において、フロントウインド1の左右両側部を支持する左右のフロントピラー2,2を設け、これらフロントピラー2の下部を上下方向に延びるヒンジピラー3に連結している。
このヒンジピラー3は、ヒンジピラーアウタとヒンジピラーインナとを接合固定して、上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0022】
上述の左右のフロントピラー2,2の後端には、車両の前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール4,4を連続して形成し、これら左右一対のルーフサイドレール4,4間に跨ってルーフパネル5を配設している。
【0023】
図1、図2に示すように、車両前後方向に延びるルーフサイドレール4の前後方向中間部には、上下方向に延びるセンタピラー6を連続して形成し、ルーフサイドレール4の後端部には、上下方向に延びるリヤピラー7を連続して形成している。
【0024】
また、図2に平面図で示すように、ルーフパネル5の前部には略閉断面構造のフロントヘッダ8を接合している。このフロントヘッダ8はルーフパネル5の前部下側において車幅方向に延びる車体剛性部材である。
さらに、図2に平面図で示すように、ルーフパネル5の車両下方側(車室面側)には、車幅方向に沿って配設されたルーフレインフォースメント9を設けている。この実施例では、該ルーフレインフォースメント9は、センタピラー6の配設位置と対応してルーフパネル5の下方側一箇所のみに設けたが、このルーフレインフォースメント9とフロントヘッダ8との間、並びに該ルーフレインフォースメント9とリヤヘッダとの間にそれぞれ同様のルーフレインフォースメントを設けてもよい。
【0025】
図1に示すように、ヒンジピラー3、フロントピラー2、ルーフサイドレール4、センタピラー6、サイドシルで囲繞されたフロント側のドア開口10と、センタピラー6、ルーフサイドレール4、リヤピラー7、サイドシルで囲繞されたリヤ側のドア開口11と、を形成している。
【0026】
図3、図4、図5に示すように、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設された左右一対のルーフサイドレール4(但し、図2以外では車両の左側のルーフサイドレール4のみを示す)は、アウタパネルとしてのルーフサイドアウタパネル12(以下、単にルーフサイドアウタと略記する)と、インナパネルとしてのルーフサイドインナパネル13(以下、単にルーフサイドインナと略記する)と、これらルーフサイドアウタ12およびルーフサイドインナ13間に挟まれたレインフォースメント14(詳しくは、ルーフサイドレールレインフォースメント)とを備えた車体剛性部材である。
【0027】
図3、図4、図5に示すように、上述のルーフサイドレール4は、上述のルーフサイドアウタ12と上述のルーフサイドインナ13とが接合されて形成された外側接合部JOと、この外側接合部JOより車幅方向車内側に位置してルーフサイドアウタ12とルーフパネル5とが接合されて形成されたルーフパネル接合部J1と、を有すると共に、ルーフサイドインナ13の一部が、該ルーフパネル接合部J1より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部13Aを形成し、このルーフサイドレール延長部13Aが、上述のルーフパネル5前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダ8と接続されている。
なお、ルーフパネル接合部J1は、ルーフサイドアウタパネルの車幅方向内側の上端部と、ルーフパネルの端部との間に形成された凹部に設けられており、この凹部には、ルーフパネル接合部J1を覆うようにルーフモールが取付けられている。
【0028】
さらに、ルーフサイドレール4は、ルーフサイドアウタ12とルーフサイドインナ13との間に設けられた上述のレインフォースメント14を有し、該レインフォースメント14が、ルーフサイドアウタ12とルーフサイドインナ13と共に上記外側接合部JOを形成すると共に、該レインフォースメント14がルーフサイドアウタ12とルーフパネル5と共に、ルーフパネル接合部J1を形成し、かつ該ルーフパネル接合部J1より車幅方向車内側に延設されたレインフォースメント延長部14Aを有し、該レインフォースメント延長部14Aが上記ルーフサイドレール延長部13Aと接合されて内側接合部J2を形成すると共に、上記ルーフサイドレール4を閉断面15構造に構成している。
【0029】
そして、上述のルーフサイドレール4の閉断面15の一部が、ルーフパネル接合部J1よりも車幅方向内側に位置する延長閉断面部15aを形成するように構成したものであって、この延長閉断面部15aを含む閉断面15が凹部J1よりも車幅方向内側まで延びるように形成されており、かつ該閉断面15は車幅方向いわゆる横方向に長い横長形状に形成されており、側突に対する充分な耐力を有するように構成されている。
【0030】
図4に示すように、外側接合部J0は、ルーフサイドインナ13とレインフォースメント14とを接合して形成されており、ルーフパネル接合部J1は、ルーフサイドアウタ12とレインフォースメント14とルーフパネル5とを接合して形成されており、内側接合部J2は、ルーフサイドインナ13とレインフォースメント14とを接合して形成されている。
【0031】
上述のルーフサイドアウタ12は、上下のエッジ部12a,12bと、上側のエッジ部12aから下方に延びる縦片部12cと、縦片部12cの下端から車幅方向内方に延びる接合フランジ部12dと、下側のエッジ部12bから下方かつ車幅方向内方に延びる斜片部12eと、この斜片部12eの下端から下方かつ車幅方向外方に延びる接合フランジ部12fと、を備えている。
【0032】
上述のルーフパネル5は、車幅方向端部に形成されたエッジ部5aと、このエッジ部5aから下方に延びる段下げ部5bと、段下げ部5bの下端から車幅方向外方に延びる接合フランジ部5cと、を備えている。
上述のルーフサイドインナ13は、その車幅方向内外の両端部に接合フランジ部13a,13bをそれぞれ備えている。
【0033】
同様に、レインフォースメント14は、その車幅方向内外の両端部に接合フランジ部14a,14bをそれぞれ備えている。
そして、上述の外側接合部J0は、図4に示すセンタピラー6の対応部位においては、ルーフサイドインナ13の接合フランジ部13bと、センタピラーインナ16と、レインフォースメント14の接合フランジ部14bとを接合して形成しており、図3に示すA−A線断面部位および図5に示すC−C線断面図部位においては、ルーフサイドインナ13の接合フランジ部13bと、レインフォースメント14の接合フランジ部14bと、ルーフサイドアウタ12の接合フランジ部12fとを接合して形成している。
【0034】
ここで、上述のセンタピラー6は、図4に示すように、センタピラーインナ16と、センタピラーアウタ17とを接合固定して、上下方向に延びるセンタピラー閉断面18を備えた車体剛性部材であって、センタピラーアウタ17は同図に示すように、ルーフサイドアウタ12と連続形成されている。
【0035】
また、上述のルーフパネル接合部J1は、図3に示すA−A線断面部位、図4に示すB−B線断面部位、図5に示すC−C線断面部位のそれぞれにおいて、ルーフサイドアウタ12の接合フランジ部12dと、レインフォースメント14と、ルーフパネル5の接合フランジ部5cと、を接合して形成している。
【0036】
さらに、上述の内側接合部J2は、図5に示すように、ルーフサイドインナ13の接合フランジ部13aと、レインフォースメント14の接合フランジ部14aとを接合して形成しており、図3に示すフロントヘッダ8の配設部位においては、ルーフサイドインナ13の接合フランジ部13aと、レインフォースメント14の接合フランジ部14aと、フロントヘッダ8の車幅方向の端部と、を接合して形成している。
つまり、上述のルーフサイドレール延長部13Aが、ルーフパネル5前部に形成された略閉断面図構造のフロントヘッダ8と接続されたものである。
【0037】
また、上述の内側接合部J2は、図4に示すルーフレインフォースメント9の配設部位においては、ルーフサイドインナ13の接合フランジ部13aと、レインフォースメント14の接合フランジ部14aと、ルーフレインフォースメント9の車幅方向の端部と、を接合して形成している。
すなわち、ルーフパネル5の車両下方側に車幅方向に沿って配設されたルーフレインフォースメント9が設けられ、該ルーフレインフォースメント9の車幅方向両端部(但し、図4ではルーフレインフォースメント9の左側部のみを示す)を上述の内側接合部J2と連結したものである。
【0038】
ところで、図1に示すように、ルーフサイドレール4の前端には、フロントウインド1の両側部を支持すると共に該ルーフサイドレール4と前後方向に連続して形成されたフロントピラー2が設けられている。
【0039】
図1のD−D線矢視断面図を図6に示すように、該フロントピラー2は、フロントピラーアウタ19と、フロントピラーインナ20と、これら両パネル部材間に挟持されたフロントピラーレインフォースメント21とを有し、これら各要素19,20,21を接合して前後の接合部J3,J4を形成すると共に、該フロントピラー2内には、その長手方向に延びる閉断面22(フロントピラー閉断面)が形成されている。
しかも、この閉断面22はその車幅方向の長さL1に対して、前後方向の長さL2が長く形成されており、この閉断面22を車両前方からの衝撃に対して剛性を高めるように車両前後方向に長い所謂縦長形状に構成すると共に、L2>L1の関係式が成立するように形成することで、死角の増大を抑止し、かつ衝突耐力の向上を図りつつ前方視界を可及的阻害しないように構成している。
【0040】
ここで、上述のフロントピラーアウタ19はルーフサイドアウタ12と前後方向に連続し、フロントピラーインナ20はルーフサイドインナ13と前後方向に連続し、フロントピラーレインフォースメント21はルーフサイドレール4のレインフォースメント14と前後方向に連続し、前側の接合部J3はルーフパネル接合部J1と前後方向に連続し、後側の接合部J4は外側接合部J0と前後方向に連続し、フロントピラー2の閉断面22は、ルーフサイドレール4の閉断面15と前後方向に連続するものである。
この実施例においては、ルーフサイドレール4の内側接合部J2が、フロントピラー4領域においては車幅方向でルーフパネル接合部J1の位置となるように形成されているので、以下、図7、図8を参照して、この点について説明する。
【0041】
図7、図8に示すように、ルーフパネル5が配設される領域においては、レインフォースメント14の接合フランジ部14a,14b間の間隔、並びにルーフサイドインナ13の接合フランジ13a,13b間の間隔は、各接合部J0,J2間の間隔と一致するが、ルーフパネル5の前部においてフロントウインド1が配設される領域においては、レインフォースメント14の接合フランジ部14a,14b間の間隔、並びにルーフサイドインナ13の接合フランジ13a,13b間の間隔は、各接合部J0,J1間の間隔、換言すれば、フロントピラー2の前後の接合部J3,J4の間の間隔と一致するように形成されている。
これにより、ルーフサイドレール4の内側接合部J2は、フロントピラー4領域においては車幅方向でルーフパネル接合部J1の位置となるように構成されたものである。なお、図8において仮想線の矢印は接合箇所同士を結んだものである。
【0042】
一方、図5に示すように、ルーフサイドインナ13のルーフサイドレール延長部13Aと対応する下部には、車幅方向車外側から入力される衝撃、すなわち、側突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置30が設けられている。
【0043】
このエアバッグ装置30は、ルーフサイドインナ13のルーフサイドレール延長部13Aと対応する部位に、ボルト、ナット31などの取付け部材、および略ハット断面形状のブラケット32を用いて取付けられたインフレータ33と、このインフレータ33に取付けられ車両側突時に展開するエアバッグ34(つまり袋体)とを備えており、インフレータ33とエアバッグ34とを略車幅方向に並設している。このエアバッグ装置は、ルーフサイドレール4に取付けられることによって支持剛性を確保しており、車両側突時に確実にインフレータ33およびエアバッグ34が機能するように構成されている。
【0044】
ここで、上述のインフレータ33、エアバッグ34、ルーフサイドインナ13、フロントヘッダ8、ルーフレインフォースメント9およびルーフパネル5は車室側からトップシーリング35で覆われている。
【0045】
図9は比較例を示し、ルーフサイドレール延長部13Aが存在しない従来構造のものにおいては、ルーフサイドレール閉断面15がルーフパネルより車幅方向外側までしか形成されておらず、またエアバッグ装置を支持剛性が高い部位に支持する必要があるため、インフレータ33とエアバッグ34とを、凹部もしくは凹部より車幅方向外側と対応する位置において上下方向に並設している。このため、これら各要素33,34を車室側から覆うトップシーリング35の車幅方向端部側が車室内方に向けて下方に膨らむ。なお、エアバッグ34をインフレータ33に対してトップシーリング35の車幅方向端部側に設けるのは、側突時に迅速にトップシーリング35より車室内側に展開するためである。
【0046】
このため、図9に示す比較例のものでは、乗員は側頭部に圧迫感を覚えることになる。なお。説明の便宜上、図9において図5と同一の部分には、同一符号を付している。
図9で示した比較例のトップシーリング35の位置を図5に仮想線αで併記している。
【0047】
図5に示すこの実施例では、ルーフサイドインナ13のルーフサイドレール延長部13Aと対応してエアバッグ装置30を構成するところのインフレータ33とエアバッグ34とを略車幅方向に並設したので、エアバッグ装置30の支持剛性を確保しながらもトップシーリング35は比較例の仮想線αの位置と対比して、これら両者33,34の下部に沿って同図に実線で示すように可及的車室内の上方に配設することができる。
これにより、トップシーリング35の車幅方向端部側が車室内方に向けて下方に膨らむのを防止することができるので、乗員の側頭部の圧迫感を抑制することができる。
【0048】
なお、図中、40,41はフロントウインド1とフロントピラーアウタ19との間をシールするシール部材、42はフロントピラートリム、43はドア開口10,11の口縁に設けられてボディとフロントドアとの間、並びにボディとリヤドアとの間をシールするウエザストリップである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0049】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両の上部車体構造は、車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設されたルーフサイドアウタ12とルーフサイドインナ13とから形成される一対のルーフサイドレール4,4と、該一対のルーフサイドレール4,4間に跨って配設されたルーフパネル5と、を備えた車両の上部車体構造であって、上記ルーフサイドレール4が、上記ルーフサイドアウタ12と上記ルーフサイドインナ13とが接合されて形成された外側接合部J0と、該外側接合部JOより車幅方向車内側に位置する上記ルーフサイドアウタ12と上記ルーフパネル5とが接合されて形成されたルーフパネル接合部J1と、を有すると共に、上記ルーフサイドインナ13の一部が、該ルーフパネル接合部J1より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部13Aを形成し、該ルーフサイドレール延長部13Aが、上記ルーフパネル5前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダ8と接続されたものである(図3、図4参照)。
この構成によれば、モヒカン溝部よりも車幅方向内側までルーフサイドレール延長部13Aを設けたので、車幅方向に長いルーフサイドレール4を形成でき、側突に対して高い剛性を確保できると共に、ルーフサイドレール延長部13Aをフロントヘッダ8と直接接続して、接合部の剛性向上を図り、特に、捩り剛性が向上する効果がある。
【0050】
また、上記ルーフサイドレール4は、上記ルーフサイドアウタ12と上記ルーフサイドインナ13との間に設けられたレインフォースメント14を有し、該レインフォースメント14が、上記ルーフサイドアウタ12と上記ルーフサイドインナ13と共に上記外側接合部JOを形成すると共に、上記ルーフサイドアウタ12と上記ルーフパネル5と共に、上記ルーフパネル接合部J1を形成し、かつ該ルーフパネル接合部J1より車幅方向車内側に延設されたレインフォースメント延長部14Aを有し、該レインフォースメント延長部14Aが上記ルーフサイドレール延長部13Aと接合されており、上記ルーフサイドレール4を閉断面15構造に構成しているものである(図4参照)。
この構成によれば、レインフォースメント14を用いて、閉断面15構造のルーフサイドレール4を形成したので、車体剛性を充分に高めることができる。
つまり、レインフォースメント14は他のパネル部材と比較して板厚が厚く、強度が高いので、該レインフォースメント14を利用することで、上部車体剛性の向上を図ることができ、さらに、ルーフサイドレールの中を外側接合部J0から内側接合部J1にわたって設けられることで、ルーフパネルとの接続強度を高め、上部車体剛性の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、上記ルーフパネル5の車両下方側に車幅方向に沿って配設されたルーフレインフォースメント9が設けられ、該ルーフレインフォースメント9の車幅方向両端部を上記ルーフサイドレール延長部13Aと連結したものである(図4参照)。
この構成によれば、ルーフレインフォースメント9とルーフサイドレール延長部13Aとを連結したので、それぞれの車種に対応してルーフレインフォースメントを形成する必要がなくなり、車両デザインの自由度に左右されることなく、部品の共通化を図ることができる。
【0052】
加えて、上記ルーフサイドインナ13の上記ルーフサイドレール延長部13Aと対応する部位には、側突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置30が設けられたものである(図5参照)。
この構成によれば、乗員の側頭部の圧迫感を抑制しつつ上記エアバッグ装置30の配設を行なうことができる。
【0053】
また、上記ルーフサイドレール4の前端には、フロントウインド1の両側部を支持すると共に該ルーフサイドレール4と連続して形成されたフロントピラー2が設けられており、上記ルーフサイドレール延長部13Aは、該フロントピラー2領域においては車幅方向でルーフパネル接合部J1の位置となるように形成されたものである(図6、図7、図8参照)。
この構成によれば、フロントピラー2による死角を増大することなく、側突に対する剛性を高めることができる。
【0054】
さらに、上記フロントピラー2は閉断面22を有し、該閉断面22はその車幅方向の長さL1よりも前後方向の長さL2が長く形成されたものである(図6参照)。
この構成によれば、フロントピラー2の閉断面22により車両前方からの衝撃に対して剛性を高めることができると共に、該閉断面22はその車幅方向の長さL1よりも前後方向の長さL2が長く形成されているので、前方視界を阻害することもない。
【0055】
図10は車両の上部車体構造の他の実施例を示す。なお、図10においては図1、図2のC−C線に相当する部位の断面図を示している。
図10に示すこの実施例においては、先の実施例のレインフォースメント14を用いない構成を示している。
【0056】
すなわち、この実施例においては、上述のルーフサイドアウタ12には、上記ルーフパネルJ1接合部よりも車幅方向車内側に延設されたアウタパネル延長部12Aが形成されると共に、上述のルーフサイドレール延長部13Aと上述のアウタパネル延長部12Aが接合されて内側接合部J2を形成し、上記ルーフサイドレール4が、該内側接合部J2と上記外側接合部JOとで閉断面15構造を形成しているものである。
このように構成しても、上述の内側接合部J2と外側接合部JOとで車幅方向に長い閉断面15構造のルーフサイドレール4となるため、側突に対する剛性の確保、向上を図ることができると共に、車体の捩り剛性向上を図ることができる。
【0057】
図10で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については、図1〜図8で示した実施例とほぼ同様であるから、図10において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
なお、上述の各実施例においては主として車両左側の上部車体構造について説明したが、車両右側の上部車体構造は、左側のそれと左右対称に形成されるものである。
【符号の説明】
【0058】
J0…外側接合部
J1…ルーフパネル接合部
J2…内側接合部
1…フロントウインド
2…フロントピラー
4…ルーフサイドレール
5…ルーフパネル
8…フロントヘッダ
9…ルーフレインフォースメント
12…ルーフサイドアウタ(ルーフサイドアウタパネル)
12A…アウタパネル延長部
13…ルーフサイドインナ(ルーフサイドインナパネル)
13A…ルーフサイドレール延長部
14…レインフォースメント
14A…レインフォースメント延長部
15…閉断面
22…閉断面
30…エアバッグ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部の車幅方向両側において車両前後方向に延設されたルーフサイドアウタパネルとルーフサイドインナパネルとから形成される一対のルーフサイドレールと、
該一対のルーフサイドレール間に跨って配設されたルーフパネルと、を備えた車両の上部車体構造であって、
上記ルーフサイドレールが、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルとが接合されて形成された外側接合部と、
該外側接合部より車幅方向車内側に位置する上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフパネルとが接合されて形成されたルーフパネル接合部と、を有すると共に、
上記ルーフサイドインナパネルの一部が、該ルーフパネル接合部より車幅方向車内側に延設されてルーフサイドレール延長部を形成し、
該ルーフサイドレール延長部が、上記ルーフパネル前部に形成された略閉断面構造のフロントヘッダと接続されたことを特徴とする
車両の上部車体構造。
【請求項2】
上記ルーフサイドアウタパネルには、上記ルーフパネル接合部よりも車幅方向車内側に延設されたアウタパネル延長部が形成されると共に、
上記ルーフサイドレール延長部と上記アウタパネル延長部が接合されて内側接合部を形成し、
上記ルーフサイドレールが、該内側接合部と上記外側接合部とで閉断面構造を形成している
請求項1記載の車両の上部車体構造。
【請求項3】
上記ルーフサイドレールは、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルとの間に設けられたレインフォースメントを有し、該レインフォースメントが、上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフサイドインナパネルと共に上記外側接合部を形成すると共に、
上記ルーフサイドアウタパネルと上記ルーフパネルと共に、上記ルーフパネル接合部を形成し、
かつ該ルーフパネル接合部より車幅方向車内側に延設されたレインフォースメント延長部を有し、
該レインフォースメント延長部が上記ルーフサイドレール延長部と接合されており、上記ルーフサイドレールを閉断面構造に構成している
請求項1または2記載の車両の上部車体構造。
【請求項4】
上記ルーフパネルの車両下方側に車幅方向に沿って配設されたルーフレインフォースメントが設けられ、
該ルーフレインフォースメントの車幅方向両端部を上記ルーフサイドレール延長部と連結した
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項5】
上記ルーフサイドインナパネルの上記ルーフサイド延長部と対応する部位には、側突時の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置が設けられた
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項6】
上記ルーフサイドレールの前端には、フロントウインドの両側部を支持すると共に該ルーフサイドレールと連続して形成されたフロントピラーが設けられており、
上記ルーフサイドレール延長部は、該フロントピラー領域においては車幅方向で上記ルーフパネル接合部の位置となるように形成された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の上部車体構造。
【請求項7】
上記フロントピラーは閉断面を有し、該閉断面はその車幅方向の長さよりも前後方向の長さが長く形成された
請求項6記載の車両の上部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−131661(P2011−131661A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291550(P2009−291550)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】